(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20220913BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20220913BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F01M13/04 F
F01M13/04 H
F01M13/00 H
F01M13/00 G
F02F7/00 J
(21)【出願番号】P 2018139963
(22)【出願日】2018-07-26
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】羽田 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】野田 寛史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃生
(72)【発明者】
【氏名】倉持 竹晴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政嗣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝文
(72)【発明者】
【氏名】岩間 理
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166597(JP,A)
【文献】特開2006-207389(JP,A)
【文献】特開2007-071048(JP,A)
【文献】特開昭62-228612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
F01M 13/00
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガスを吸気経路に還流するよう構成されたエンジンであって、
クランクシャフトと、
カムシャフトと、
前記クランクシャフトと前記カムシャフトとに巻き掛けられ前記クランクシャフトの回転を前記カムシャフトに伝達するよう構成された伝達部材と、
前記クランクシャフトおよび前記カムシャフトを回転可能に支持するよう構成されたエンジン本体と、
前記伝達部材を覆うよう前記エンジン本体に締結されるカバー部材と、
を備え、
前記エンジン本体と前記カバー部材との間には、前記伝達部材を収容する収容室と、前記ブローバイガスからオイル成分を分離するための気液分離室と、が構成されており、
前記気液分離室は、前記ブローバイガスが導入される導入口と前記ブローバイガスが排出される排出口と
前記導入口に連続する導入口近傍流路と該導入口近傍流路から前記排出口に至る中間流路とを有すると共に、
前記導入口近傍流路を前記気液分離室の延在方向に直交する面で切った際の断面積が、前記中間流路を前記延在方向に直交する面で切った際の断面積よりも大きくなり、前記伝達部材が前記クランクシャフト側から前記カムシャフト側へ向かう側の前記伝達部材に隣接した位置において、前記クランクシャフトが配置された下方側から前記カムシャフトが配置された上方側まで延在するよう構成されており、
前記導入口は、前
記延在方向の前記上方側において、前記収容室と前記気液分離室とを連通するよう構成されており、
前記排出口は、前記延在方向の前記下方側において、前記気液分離室と前記吸気経路とを連通するよう構成されている
エンジン。
【請求項2】
前記気液分離室は、前記排出口の上部を覆うよう構成された庇部をさらに有している
請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記庇部は、前記排出口のうち前記延在方向に沿う部分を覆うよう構成されている
請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記気液分離室は、前記庇部によって、前記延在方向に直交する面で切った際の断面積が縮小される縮小部を有している
請求項2または3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記エンジンの各部を潤滑するためのオイルを貯留可能に構成され、前記エンジン本体の下部に締結されるオイルパンをさらに備え、
前記気液分離室は、前記延在方向の下方において、前記オイルパンに連通接続するオイル戻し口をさらに有している
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項6】
前記エンジン本体には、前記気液分離室の延在方向と平行な方向に沿って延在し、一端が前記オイルパンに開口されると共に他端が閉じられた袋小路空間が形成されており、
該袋小路空間は、前記クランクシャフトの軸線方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記気液分離室の投影領域の内側に配置されており、
前記排出口は、前記袋小路空間に開口されており、
前記オイル戻し口は、前記袋小路空間を介して前記オイルパンと連通するよう構成されており、
前記排出口から排出された前記ブローバイガスを前記袋小路空間を介して前記吸気経路に還流するよう構成されている
請求項5に記載のエンジン。
【請求項7】
前記袋小路空間は、前記排出口から排出された前記ブローバイガスを前記吸気経路に向けて導出する導出口を有しており、
該導出口は、前記袋小路空間の延在方向において、前記排出口よりも上方側に配置されている
請求項6に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガスを吸気経路に還流するよう構成されたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001-248416号公報(特許文献1)には、クランクシャフトおよびカムシャフトを回転可能に支持するエンジン本体と、クランクシャフトの軸線方向の一端部およびカムシャフトの軸線方向一端部に巻き掛けられたタイミングチェーンを覆うようにエンジン本体に締結されるフロントカバーと、を備え、稼働によって生じたブローバイガスをフロントカバーに設けた気液分離室を介して吸気経路に還流するように構成されたエンジンが記載されている。
【0003】
上述した公報に記載のエンジンでは、気液分離室をクランクシャフトが配置された下方側からカムシャフトが配置された上方側まで延在するように構成し、ブローバイガスが気液分離室へ導入される導入口を下方側に設けると共に、ブローバイガスが気液分離室から排出される排出口を上方側に設ける構成とすることによって、ブローバイガスとオイル成分との移動速度差を利用して効果的にブローバイガスからオイル成分を分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した公報に記載のエンジンでは、ブローバイガスがエンジン本体の下方側から上方側に向かって流れる構成、即ち、タイミングチェーンの回転に起因してフロントカバーとエンジン本体との間に構成されたタイミングチェーン収容室内で生じる上昇気流方向と同方向にブローバイガスが流れる構成であるため、ブローバイガスの流速が速く、ブローバイガスからオイル成分を効果的に分離すためには気液分離室内に複数のバッフルプレートを要し、気液分離室内の構造が複雑化してしまうという点において、なお改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、気液分離室内の構成を簡易なものとしながらブローバイガスからオイル成分を効果的に分離することができるエンジンに関する改良技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンジンは、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係るエンジンの好ましい形態によれば、ブローバイガスを吸気経路に還流するエンジンが構成される。当該エンジンは、クランクシャフトと、カムシャフトと、クランクシャフトとカムシャフトとに巻き掛けられクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達するように構成された伝達部材と、クランクシャフトおよびカムシャフトを回転可能に支持するように構成されたエンジン本体と、伝達部材を覆うようにエンジン本体に締結されるカバー部材と、を備えている。エンジン本体とカバー部材との間には、伝達部材を収容する収容室と、ブローバイガスからオイル成分を分離するための気液分離室と、が構成されている。気液分離室は、ブローバイガスが導入される導入口とブローバイガスが排出される排出口と導入口に連続する導入口近傍流路と導入口近傍流路から排出口に至る中間流路とを有すると共に、導入口近傍流路を気液分離室の延在方向に直交する面で切った際の断面積が、中間流路を気液分離室の延在方向に直交する面で切った際の断面積よりも大きくなり、伝達部材がクランクシャフト側からカムシャフト側へ向かう側の伝達部材に隣接した位置において、クランクシャフトが配置された下方側からカムシャフトが配置された上方側まで延在するように構成されている。また、導入口は、気液分離室の延在方向の上方側において、収容室と気液分離室とを連通するように構成されている。そして、排出口は、気液分離室の延在方向の下方側において、気液分離室と吸気経路とを連通するように構成されている。
【0009】
ここで、本発明における「吸気経路」とは、典型的には、インテークマニホールドがこれに該当するが、エンジン本体に形成される吸気通路や、インテークマニホールドに空気を供給するための吸気配管などを好適に包含する。また、本発明における「気液分離室と吸気経路とを連通する」態様としては、気液分離室と吸気経路とが排気口を介して直接的に連通する態様の他、間接的に連通する態様を好適に包含する。ここで、気液分離室と吸気経路とが排気口を介して間接的に連通する態様としては、例えば、排気口と吸気経路とが配管や内蔵通路などを介して接続される態様がこれに該当する。
【0010】
本発明によれば、伝達部材の回転に起因して収容室内に生じた上昇気流を利用して、導入口からオイル成分を含むブローバイガスを効率的に気液分離室に導入することができる一方、気液分離室においては、収容室内の上昇気流とは真逆方向、即ち、カムシャフト側からクランクシャフト側に向かう方向にオイル成分を含むブローバイガスを流して、気液分離室内に流入したオイル成分を含むブローバイガスの流速を急激に低下させる構成であるため、ブローバイガスからオイル成分を効果的に分離することができる。しかも、ブローバイガスとオイル成分との流速の差を利用できるため、より効果的にブローバイガスからオイル成分を分離することができる。これにより、気液分離室内には、複数のバッフルプレートを設ける必要がなくなる。この結果、気液分離室内の構造を簡素化することができる。また、気液分離室のうち導入口に連続する導入口近傍流路を、中間流路を含む気液分離室の他の部分よりも大きな容積を有する空間に形成するのみという簡易な構成で、ブローバイガスから効果的にオイル成分を分離することができる。
【0011】
本発明に係るエンジンの更なる形態によれば、気液分離室は、排出口の上部を覆うように構成された庇部をさらに有している。ここで、本発明における「排出口の上部」とは、排出口に関して、気液分離室の延在方向における導入口が配置された側の部分、換言すれば、排出口のうち気液分離室の上流側に対向する部分がこれに該当する。
【0012】
本形態によれば、ブローバイガスから分離されたオイル成分が排出口から排出されることを防止することができる。なお、ブローバイガスが庇部に衝突することによって、ブローバイガスからのオイル成分の分離がさらに促進されるため、気液分離性能の向上も図ることができる。
【0013】
本発明に係るエンジンの更なる形態によれば、庇部は、排出口のうち気液分離室の延在方向に沿う部分を覆うように構成されている。
【0014】
本形態によれば、排出口の上部および側部を庇部によって覆う構成であるため、ブローバイガスから分離されたオイル成分が排出口から排出されることをより効果的に防止することができる。なお、ブローバイガスは、庇部を回り込まないと排出口に到達できない構成、即ち、ブローバイガスは、一端、排出口の下流側まで流れた後に、上昇して排出口から排出される構成であるため、ブローバイガスからのオイル成分の分離がより一層促進される。
【0015】
本発明に係るエンジンの更なる形態によれば、気液分離室は、庇部によって、気液分離室の延在方向に直交する面で切った際の断面積が縮小される縮小部を有している。
【0016】
本形態によれば、縮小部でブローバイガスの流速が一端速められた後に減速させることによって、ブローバイガスからのオイル成分の分離を促進させることができる。これにより、気液分離性能をより向上させることができる。
【0017】
本発明に係るエンジンの更なる形態によれば、エンジンの各部を潤滑するためのオイルを貯留可能に構成されると共に、エンジン本体の下部に締結されるオイルパンをさらに備えている。そして、気液分離室は、延在方向の下方において、オイルパンに連通接続するオイル戻し口をさらに有している。
【0018】
本形態によれば、気液分離室内においてブローバイガスから分離されたオイル成分をオイル戻し口からオイルパンに戻すことができる。
【0019】
本発明に係るエンジンの更なる形態によれば、エンジン本体には、気液分離室の延在方向と平行な方向に沿って延在し、一端がオイルパンに開口されると共に他端が閉じられた袋小路空間が形成されている。当該袋小路空間は、クランクシャフトの軸線方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における気液分離室の投影領域の内側に配置されている。また、排出口は、袋小路空間に開口されている。さらに、オイル戻し口は、袋小路空間を介してオイルパンと連通するように構成されている。そして、当該エンジンは、排出口から排出されたブローバイガスを袋小路空間を介して吸気経路に還流するように構成されている。
【0020】
本形態によれば、袋小路空間を第2気液分離室として利用することができるため、ブローバイガスからのオイル成分の分離をより一層促進することができる。なお、袋小路空間がクランクシャフトの軸線方向において、気液分離室に重なるように配置されるため、エンジンの幅方向(クランクシャフトの軸線方向およびシリンダボアの軸線方向の両方に直交する方向)に大型化することを防止できる。
【0021】
本発明に係るエンジンの更なる形態によれば、袋小路空間は、排出口から排出されたブローバイガスを吸気経路に向けて導出する導出口を有している。そして、当該導出口は、袋小路空間の延在方向において、排出口よりも上方側に配置されている。
【0022】
本形態によれば、導出口を排出口よりも上方に配置するのみという簡易な構成で、ブローバイガスから効果的にオイル成分を分離することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、気液分離室内の構成を簡易なものとしながらブローバイガスからオイル成分を効果的に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン1のうちフロントカバー12を取り除いた状態を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン1をフロントカバー12側から見た正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン1を排気側から見た側面図である。
【
図4】シリンダヘッド2を上方から見た平面図である。
【
図5】シリンダヘッド2を吸気および排気カムシャフト2a,2bの軸線方向に沿う方向の一方側から見た正面図である。
【
図6】シリンダブロック6の外観を示す斜視図である。
【
図7】シリンダブロック6をクランクシャフトCSの軸線方向に沿う方向の一方側から見た正面図である。
【
図8】フロントカバー12を表面側から見た正面図である。
【
図9】フロントカバー12の裏面側から見た背面図である。
【
図10】シリンダヘッド2およびシリンダブロック6にフロントカバー12を組み付ける際の様子を示す説明図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に係るエンジン100のうちフロントカバー12を取り除いた状態を示す説明図である。
【
図13】本発明の第2実施の形態に係るエンジン100を排気側から見た側面図である。
【
図15】本発明の第3の実施の形態に係るエンジン200のうちフロントカバー12を取り除いた状態を示す説明図である。
【
図16】本発明の第3実施の形態に係るエンジン200を排気側から見た側面図である。
【
図18】変形例の延出リブ367,377の構成の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明の第1の実施の形態に係るエンジン1は、
図1に示すように、吸気および排気カムシャフト2a,2bと、当該吸気および排気カムシャフト2a,2bを回転可能に支持するように構成されたシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の上部に取り付けられるロッカーカバー4と、シリンダヘッド2の下部に取り付けられたシリンダブロック6と、シリンダブロック6の下部に取り付けられたオイルパン8と、シリンダブロック6に回転可能に支持されたクランクシャフトCSと、クランクシャフトCSと吸気および排気カムシャフト2a,2bとに巻き掛けられたチェーン10と、チェーン10を覆うようにシリンダヘッド2,シリンダブロック6およびオイルパン8に取り付けられたフロントカバー12(
図2および
図3参照)と、シリンダヘッド2の側壁(後述する側壁部22c)に取り付けられたインテークマニホールド14と、を備えている。エンジン1は、図示しない燃焼室で生じる燃焼圧力によって往復運動するピストン(図示せず)の直線運動をクランクシャフトCSの回転運動に変換することにより動力を出力する。なお、本実施の形態では、便宜上、ロッカーカバー4側、即ち、
図1中の上方を、「上側」ないし「上方」として規定し、オイルパン8側、即ち、
図1中の下方を、「下側」ないし「下方」として規定する。チェーン10は、本発明における「伝達部材」に対応し、インテークマニホールド14は、本発明における「吸気経路」に対応する実施構成の一例である。
【0029】
シリンダヘッド2は、エンジン1を構成する主要部品の一つであり、
図4に示すように、吸気および排気カムシャフト2a,2bの軸線方向に直交する方向に延在するように構成された前壁部22aおよび後壁部22bと、吸気および排気カムシャフト2a,2bの軸線方向に平行な方向に延在するように構成された二つの側壁部22c,22dと、を有している。シリンダヘッド2は、本発明における「エンジン本体」に対応し、吸気および排気カムシャフト2a,2bは、本発明における「カムシャフト」に対応する実施構成の一例である。
【0030】
前壁部22aの幅方向の両端部(一対の側壁部22c,22dとの接続側であって、
図2および
図3の左右方向の端部)には、
図4に示すように、フロントカバー12が締結される取付フランジ部24a,24bが一体に形成されている。
【0031】
取付フランジ部24a,24bは、
図4に示すように、前壁部22aから吸気および排気カムシャフト2a,2bの軸線方向(
図4の左右方向)に沿う方向に突出するように構成されている。取付フランジ部24a,24bの突出端が、フロントカバー12と当接する当接面を構成する。また、取付フランジ部24a,24bは、
図5に示すように、前壁部22aの上端から下端まで上下方向(
図5の上下方向)に延在している。前壁部22aのうち取付フランジ部24a,24b間は、チェーン10を収容可能な収容部25を構成する。なお、当該収容部25には、
図1、
図4および
図5に示すように、吸気および排気カムシャフト2a,2bの軸方向一端部が突出され、その突出端部にはカムスプロケット3a,3bが取り付けられる。
【0032】
また、前壁部22aには、
図5に示すように、取付フランジ部24bよりも取付フランジ部24a側に所定距離隔てた位置にリブ26が立設されている。当該リブ26は、延在方向(
図5の上下方向)の一端26aが取付フランジ部24bの上端24b1よりも下方(
図5の下方)側に所定距離隔てた位置に配置され、取付フランジ部24bと略平行に前壁部22aの下端まで延在している。リブ26は、前壁部22aから取付フランジ部24a,24bと同方向に突出しており、その突出高さは、取付フランジ部24a,24bと同じに設定されている。即ち、取付フランジ部24a,24bの突出端面とリブ26の突出端面とは面一に構成されている。
【0033】
取付フランジ部24bとリブ26とによって、
図5に示すように、収容部25とは区画された領域28が構成される。換言すれば、領域28は、リブ26を挟んで収容部25に隣接配置されている。なお、領域28は、取付フランジ部24bの上端24b1とリブ26の一端26aとの間に構成された間隙27を介して収容部25と連通している。
【0034】
シリンダブロック6は、シリンダヘッド2同様、エンジン1を構成する主要部品であり、
図6に示すように、概略ブロック状に構成されている。シリンダブロック6は、クランクシャフトCSの軸線方向に直交するように構成された前壁部62aおよび後壁部62bと、クランクシャフトCSの軸線方向と平行に構成された二つの側壁部62c,62dと、図示しないピストンが摺動するシリンダボア63aを構成するシリンダボア壁63と、を有している。
【0035】
前壁部62aの幅方向の両端部(一対の側壁部62c,62dとの接続側であって、
図7の左右方向の端部)および下端部(
図8の下方の端部)には、
図7に示すように、フロントカバー12が締結される取付フランジ部64a,64b,64cが一体に形成されている。なお、前壁部62aのうち取付フランジ部64bが形成された部分は、
図6に示すように、側壁部62dよりも外方へ張り出すように構成されている。
【0036】
取付フランジ部64a,64b,64cは、前壁部62aからクランクシャフトCSの軸線方向(
図7の紙面方向手前側)の一方側に突出するように構成されている。また、取付フランジ部64a,64b,64cの突出端には、フロントカバー12が当接する当接面が構成されている。取付フランジ部64a,64bは、
図7に示すように、前壁部62aの上端から下端まで上下方向(
図7の上下方向)に延在するように構成されており、取付フランジ部64cは、前壁部62aの下端において取付フランジ部64a,64bを接続するように幅方向(
図7の左右方向)に延在している。即ち、取付フランジ部64a,64b,64cは、クランクシャフトCSの軸線方向に沿う方向の一方側から見た場合に、略U字状に形成されている。前壁部62aのうち取付フランジ部64a,64b,64cによって囲まれた領域は、チェーン10を収容可能な収容部65を構成する。当該収容部65には、
図1に示すように、クランクシャフトCSの軸線方向一端部が突出され、その突出端部にはクランクスプロケット61が取り付けられる。
【0037】
また、前壁部62aには、
図7に示すように、取付フランジ部64bよりも取付フランジ部64a側に所定距離隔てた位置にリブ66が立設されている。取付フランジ部64bの上端部分とリブ66の上端部分との間の距離は、上述したシリンダヘッド2の取付フランジ部24bの下端部分とリブ26の下端部分との間の距離に等しくなるように設定されている。
【0038】
リブ66は、取付フランジ部64aに対して略平行に前壁部62aの上端から下端まで上下方向(
図7の上下方向)に延在している。また、リブ66は、前壁部62aから取付フランジ部64a,64b,64cと同方向に突出しており、その突出高さは、取付フランジ部64a,64b,64cと同じに設定されている。即ち、取付フランジ部64a,64b,64cの突出端面とリブ66の突出端面とは面一に構成されている。
【0039】
取付フランジ部64bとリブ66とによって、
図7に示すように、収容部65とは区画された領域68が構成される。換言すれば、領域68は、リブ66を挟んで収容部65に隣接して配置されており、前壁部62aの上端から下端まで上下方向(
図7の上下方向)に延在している。なお、領域68は、前壁部62aのうち側壁部62dよりも外方へ張り出した部分に亘って構成される。
【0040】
また、前壁部62aのうち領域68内には、
図7に示すように、2つの貫通孔69a,69bが形成されている。貫通孔69aは、領域68の延在方向(
図7の上下方向)のほぼ中央部に形成されており、
図11に示すように、前壁部62aを貫通している。当該貫通孔69aの貫通先(領域68側とは反対側の開口)には、配管P1が取り付けられる。貫通孔69aは、本発明における「排出口」に対応し、貫通孔69bは、本発明における「オイル戻し口」に対応する実施構成の一例である。
【0041】
また、貫通孔69aは、
図7に示すように、取付フランジ部64bと当該取付フランジ部64bから領域68内に枝分かれ状に延出された延出リブ67とによって、領域68の延在方向(
図7の上下方向)の下方を除いて領域68とは隔離されている。換言すれば、貫通孔69aは、領域68のうち取付フランジ部64bの一部と延出リブ67とによって構成された逆U字状の領域内に形成されていると言うことができる。延出リブ67は、本発明における「庇部」に対応する実施構成の一例である。
【0042】
延出リブ67は、取付フランジ部64bから領域68の延在方向(
図7の上下方向)に交差する方向に延出された第1部分67aと、当該第1部分67aから領域68の延在方向(
図7の上下方向)の下方(
図7の下方向)に向かって延出された第2部分67bと、から構成されている。なお、延出リブ67の第2部分67bとリブ66との間の距離は、取付フランジ部64bとリブ66との間の距離よりも小さくなるように構成されている。
【0043】
貫通孔69bは、領域68のうち延在方向(
図7の上下方向)の下端部に形成されている。貫通孔69bは、
図11に示すように、前壁部62aを貫通している。当該貫通孔69aによって、領域68がオイルパン8内と連通する。
【0044】
こうして構成されたシリンダブロック6にシリンダヘッド2が締結されると、
図10に示すように、シリンダヘッド2の取付フランジ部24bおよびリブ26がシリンダブロック6の取付フランジ部64bおよびリブ66にそれぞれ接続されて、領域28と領域68とが連続する一つの領域が構成される。
【0045】
チェーン10は、クランクスプロケット61およびカムスプロケット3a,3bに巻き掛けられて、クランクシャフトCSの回転を吸気および排気カムシャフト2a,2bに伝達する。チェーン10を介して吸気および排気カムシャフト2a,2bを回転することにより、図示しない吸気弁および排気弁を開閉して、燃料および空気の燃焼室(図示せず)への供給と、燃焼ガスの燃焼室(図示せず)からの排気とが行われる。
【0046】
フロントカバー12は、
図8に示すように、上下方向(
図8の上下方向)に長手方向を有しており、チェーン10を覆うカバー部材として構成されている。フロントカバー12は、
図9に示すように、主に、本体部72と、取付フランジ部74a,74b,74cと、から構成されている。
【0047】
取付フランジ部74a,74b,74cは、本体部72に対して突出するように構成されており、その突出端がシリンダヘッド2およびシリンダブロック6の各取付フランジ部24a,24b,64a,64b,64cと当接する当接面を構成する。取付フランジ部74a,74bは、
図9に示すように、本体部72の上端から下端まで上下方向(
図9の上下方向)に延在するように構成されており、取付フランジ部74cは、本体部72の下端において取付フランジ部74a,74bを接続するように幅方向(
図9の左右方向)に延在している。即ち、取付フランジ部74a,74b,74cは、平面視略U字状に形成されている。本体部72のうち取付フランジ部74a,74b,74cによって囲まれた領域は、チェーン10を収容可能な収容部75を構成する。
【0048】
また、フロントカバー12には、
図9に示すように、取付フランジ部74bよりも取付フランジ部74a側に所定距離隔てた位置にリブ76が立設されている。当該リブ76は、延在方向(
図9の上下方向)の一端76aが取付フランジ部74bの上端74b1よりも下方(
図9の下方)側に所定距離隔てた位置に配置され、取付フランジ部74bと略平行に本体部72の下端、即ち、取付フランジ部74cまで延在している。リブ76は、本体部72から取付フランジ部74a,74b,74cと同方向に突出しており、その突出高さは、取付フランジ部74a,74b,74cと同じに設定されている。即ち、取付フランジ部74a,74b,74cの突出端面とリブ76の突出端面とは面一に構成されている。
【0049】
取付フランジ部74bとリブ76とによって、
図9に示すように、収容部75とは区画された領域78が構成される。換言すれば、領域78は、リブ76を挟んで収容部75に隣接配置されている。なお、領域78は、取付フランジ部74bの上端74b1とリブ76の一端76aとの間に構成された間隙79を介して収容部75と連通している。なお、取付フランジ部74bの上端74b1とリブ76の一端76aとの位置関係は、シリンダヘッド2の取付フランジ部24bの上端24b1とリブ26の一端26aとの位置関係と同じになるように構成されており、取付フランジ部74bの上端74b1とリブ76の一端76aとの間に構成された間隙79は、シリンダヘッド2の取付フランジ部24bの上端24b1とリブ26の一端26aとの間に構成された間隙27とほぼ同じ形状・大きさに構成されている。
【0050】
また、本体部72のうち領域78内であって、領域78の延在方向(
図9の上下方向)のほぼ中央部には、
図9に示すように、取付フランジ部74bから領域78内に枝分かれ状に延出された延出リブ77が形成されている。当該延出リブ77は、取付フランジ部74bから領域78の延在方向(
図9の上下方向)に交差する方向に延出された第1部分77aと、当該第1部分77aから領域78の延在方向(
図9の上下方向)の下方に向かって延出された第2部分77bと、から構成されている。なお、延出リブ77の第2部分77bとリブ76との間の距離は、取付フランジ部74bとリブ76との間の距離よりも小さくなるように構成されている.当該延出リブ77の形状は、シリンダブロック6の延出リブ67とほぼ同じ形状に形成されている。延出リブ77は、本発明における「庇部」に対応する実施構成の一例である。
【0051】
こうして構成されたフロントカバー12が、シリンダヘッド2およびシリンダブロック6おに締結されると、フロントカバー12の取付フランジ部74a,74b,74c、リブ76および延出リブ77が、シリンダヘッド2およびシリンダブロック6の取付フランジ部24a,24b,64a,64b,64c、リブ26,66および延出リブ67それぞれに当接する。これにより、シリンダヘッド2およびシリンダブロック6の収容部25,65とフロントカバー12の収容部75とによってチェーン室90(
図1参照)が形成されると共に、
図1および
図11に示すように、シリンダヘッド2およびシリンダブロック6の領域28,68とフロントカバー12の領域78とによって気液分離室92が形成される。気液分離室92は、シリンダヘッド2の間隙27およびフロントカバー12の間隙79によって構成される開口92aを介して、チェーン室90に連通接続されている。チェーン室90は、本発明における「収容室」に対応する実施構成の一例である。また、開口92aは、本発明における「導入口」に対応する実施構成の一例である。
【0052】
即ち、気液分離室92は、
図1に示すように、チェーン室90のうちチェーン10の回転方向が上り方向側、即ち、チェーン10がクランクシャフトCS側から吸気および排気カムシャフト2a,2b側へ向かう方向側において、シリンダヘッド2の上端部からシリンダブロック6の下端部に亘って延在しており、排気カムシャフト2bに取り付けられたカムスプロケット3bの側方、換言すれば、チェーン10の巻き掛け方向がクランクシャフトCS側から排気カムシャフト2b側に向かう上方向から排気カムシャフト2b側から吸気カムシャフト2a側へ向かう左右方向に変更される位置の近傍において、開口92aを介してチェーン室90に開口されている。
【0053】
なお、気液分離室92内において、貫通孔69aは、延出リブ67,77によって、その上部および側部とが覆われた状態、換言すれば、貫通孔69aのうち気液分離室92の上流側の部分と、貫通孔69aのうち気液分離室92の延在方向に沿う部分と、が延出リブ67,77によって覆われた状態となる。また、気液分離室92を当該気液分離室92の延在方向に沿う方向に直交する仮想平面で切った際の通路断面積が、延出リブ67,77、具体的には、第2部分67b,77bによって縮小された状態となる。即ち、気液分離室92をは、延出リブ67,77の第2部分67b,77bとリブ66,76との間で縮小された状態となる。気液分離室92のうち第2部分67b,77bによって縮小された部分は、本発明における「縮小部」に対応する実施構成の一例である。
【0054】
さらに、気液分離室92は、
図11に示すように、貫通孔69aに接続された配管P1、当該配管P1に接続された外付けの気液分離室EGSC、当該外付けの気液分離室EGSCに接続された内部配管IP(
図1参照)および当該内部配管IP(
図1参照)に接続された配管P2を介してインテークマニホールド14(
図1参照)に連通接続されている。ここで、外付けの気液分離室EGSCは、配管P3を介してオイルパン8に連通接続されている。また、気液分離室92は、
図11に示すように、貫通孔69bを介してオイルパン8に連通接続されている。
【0055】
次に、こうして構成された第1の実施の形態に係るエンジン1の動作、特に、ブローバイガスがインテークマニホールド14に還流される際の動作について、
図1を参照しながら説明する。なお、
図1では、フロントカバー12が省略されているため、フロントカバー12を構成する部分の符号については、
図9を適宜参照する。また、本実施の形態では、チェーン10は
図1において時計回りに回転する構成とした。
【0056】
エンジン1の稼働に伴いシリンダボア63a(
図6参照)と図示しないピストンとの間からクランク室(図示せず)を介してチェーン室90内に漏出したブローバイガスは、チェーン10の回転によってエンジン1の上方(
図1の上方)へと向かう。このブローバイガスの上方への流れは、チェーン10の回転によって生じた上昇気流によって促進される。
【0057】
チェーン室90の上方(
図1の上方)に向かって流れたブローバイガスは、開口92aを介して気液分離室92に導入される。ここで、気液分離室92内には、インテークマニホールド14から負圧が配管P2、内部配管IP、外付けの気液分離室EGSC(
図11参照)および配管P1(
図11参照)を介して作用しているため、開口92aを介した気液分離室92へのブローバイガスの導入が促進される。
【0058】
気液分離室92に導入されたブローバイガスは、クランクシャフトCS側から排気カムシャフト2b側に向かう上方向の流れから、排気カムシャフト2b側からクランクシャフトCS側へ向かう下方向への流れに変更されるため、流速が急激に低下する。これにより、ブローバイガスに含まれているオイル成分が効果的に分離される。また、気液分離室92を下方向(排気カムシャフト2b側からクランクシャフトCS側)に流される際に、重力の作用によってもブローバイガス中のオイル成分が効果的に分離される。
【0059】
さらに、オイル成分が分離されながら気液分離室92を下流側に向かって流れるブローバイガスは、延出リブ67,77(
図1および
図9参照)に衝突して、さらにブローバイガスからオイル成分が分離される。分離されたオイル成分は油滴となって、延出リブ67,77(
図1および
図9参照)を伝って気液分離室92の下流に流下される。なお、貫通孔69aが延出リブ67,77(
図1および
図9参照)によって覆われているため、分離されたオイル成分や油滴が貫通孔69aに流入することを良好に防止することができる。
【0060】
そして、延出リブ67,77(
図1および
図9参照)に衝突して、さらにオイル成分が分離されたブローバイガスは、延出リブ67,77(
図1および
図9参照)とリブ66,76(
図1および
図9参照)との間に構成された通路断面積が縮小された部分を通った後、取付フランジ部64b,74b(
図1および
図9参照)とリブ66,76(
図1および
図9参照)とによって構成された通路断面積が広い部分に流出される。このように、ブローバイガスが、通路断面積が縮小された部分で流速を一端速められた後、通路断面積が広い部分に流出されるため、ブローバイガスからのオイル成分の分離が促進される。
【0061】
こうして、効果的にオイル成分が分離された状態のブローバイガスが、貫通孔69aから排出されて、配管P1(
図11参照)、外付けの気液分離室EGSC(
図11参照)、内部配管IP(
図1参照)および配管P2(
図1参照)を通ってインテークマニホールド14(
図1参照)に還流される。なお、ブローバイガスから分離された油滴を含むオイル成分は、
図11に示すように、貫通孔69bを介してオイルパン8内に戻される。
【0062】
以上説明した本発明の第1の実施の形態に係るエンジン1によれば、チェーン室90のうちチェーン10がクランクシャフトCS側から吸気および排気カムシャフト2a,2b側へ向かう上り方向側において、シリンダヘッド2の上端部からシリンダブロック6の下端部に亘って延在するように気液分離室92を構成し、当該気液分離室92の延在方向の上方、具体的には、チェーン10の巻き掛け方向がクランクシャフトCS側から排気カムシャフト2b側に向かう上方向から排気カムシャフト2b側から吸気カムシャフト2a側へ向かう左右方向に変更される位置の近傍に、ブローバイガスの導入口としての開口92aを設けると共に、気液分離室92の延在方向の中央部にブローバイガスの排出口としての貫通孔69aを設ける構成であるため、チェーン室90において、クランクシャフトCS側から排気カムシャフト2b側に向かう上方向に流れるブローバイガスの流れが、気液分離室92では、排気カムシャフト2b側からクランクシャフトCS側へ向かう下方向への流れに変更される。これにより、ブローバイガスの流速を急激に低下させることができるため、ブローバイガスに含まれているオイル成分を効果的に分離することができる。また、ブローバイガスが気液分離室92を下方向(排気カムシャフト2b側からクランクシャフトCS側)に流される際に、重力の作用によってもオイル成分を効果的に分離できる。この結果、気液分離室92内の構造を複雑化することなくブローバイガスからオイル成分を良好に分離することができる。
【0063】
また、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン1によれば、ブローバイガスの排出口としての貫通孔69aの上部および側部を延出リブ67,77によって覆う構成であるため、ブローバイガスから分離されたオイル成分が貫通孔69aから流出されることを良好に防止することができる。なお、延出リブ67,77の第1部分67a,77aにブローバイガスが衝突することによってオイル成分の分離が促進されると共に、延出リブ67,77の第2部分67b,77bによって気液分離室92の通路断面積が一端縮小されるため、さらにオイル成分の分離が促進される。
【0064】
さらに、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン1によれば、貫通孔69bを介して、分離されたオイル成分をオイルパン8に戻す構成であるため、気液分離室92を流れるブローバイガスが分離された後のオイル成分を再び巻き込むことを良好に抑制できる。
【実施例2】
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るエンジン100について説明する。第2の実施の形態に係るエンジン100は、
図1を用いて説明した第1の実施の形態に係るエンジン1に対して、シリンダブロック6をシリンダブロック106に置き換えた点を除いて、第1の実施の形態に係るエンジン1と同じ構成を有している。したがって、第2の本実施の形態に係るエンジン100のうち第1の実施の形態に係るエンジン1の構成と同一部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
第2の実施の形態に係るエンジン100のシリンダブロック106は、
図13および
図14に示すように、側壁部162dのうち前壁部162aとの接続部に対応する部分に、筒状空間192が形成されている。当該筒状空間192は、
図14に示すように、側壁部162dのうちオイルパン8が締結される下端から延出リブ67が形成された位置まで延在している。筒状空間192は、下端が開口され上端が閉じられた袋小路空間に構成されている。即ち、筒状空間192は、シリンダブロック106にオイルパン8が締結された際に、当該オイルパン8に開口される。シリンダブロック106は、本発明における「エンジン本体」に対応し、筒状空間192は、本発明における「袋小路空間」に対応する実施構成の一例である。
【0067】
また、筒状空間192は、
図12に示すように、クランクシャフトCSの軸線方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における領域68の内側に配置されている。換言すれば、筒状空間192は、領域68の真裏において当該領域68に重なるように配置されている。
【0068】
シリンダブロック106の前壁部162aの領域68には、
図14に示すように、貫通孔69a,69bに換えて貫通孔169a,169bが形成されている。貫通孔169a,169bは、領域68から筒状空間192まで貫通されている。また、シリンダブロック106には、筒状空間192に関して貫通孔169aが形成された側とは反対側から筒状空間192内まで貫通する貫通孔169cが形成されている。当該貫通孔169cは、貫通孔169aよりも高さ方向(
図14の上下方向)において低い位置に形成されている。当該貫通孔169cには、配管P1が接続されている。貫通孔169aは、本発明における「排出口」に対応し、貫通孔169bは、本発明における「オイル戻し口」に対応する実施構成の一例である。また、貫通孔169cは、本発明における「導出口」に対応する実施構成の一例である。
【0069】
次に、こうして構成された第2の実施の形態に係るエンジン100の動作、特に、ブローバイガスがインテークマニホールド14に還流される際の動作について説明する。チェーン室90から開口92aを介して気液分離室92に導入され、流速の変化、重力の作用、延出リブ67,77による衝突効果、および、延出リブ67,77による通路断面積の縮小効果などによってオイル成分が分離されたブローバイガスが、貫通孔169aから排出されるまでの作用は第1の実施の形態に係るエンジン1と同様である。
【0070】
第2の実施の形態に係るエンジン100では、貫通孔169aから排出されたブローバイガスは、筒状空間192に導入される。このとき、流速が急激に減速されるため、オイル成分の分離が促進される。こうして筒状空間192でオイル成分が分離されたブローバイガスは、貫通孔169cから排出されて、配管P1(
図13および
図14参照)、外付けの気液分離室EGSC(
図13および
図14参照)、内部配管IP(
図12参照)および配管P2(
図12参照)を通ってインテークマニホールド14(
図12参照)に還流される。なお、ブローバイガスから分離された油滴を含むオイル成分は、
図14に示すように、貫通孔169bから筒状空間192を介してオイルパン8内に戻される。
【0071】
以上説明した本発明の第2の実施の形態に係るエンジン1によれば、気液分離室92に加えて筒状空間192によってもオイル成分が分離されるため、第1の実施の形態に係るエンジン1と同様の効果に加えて、ブローバイガスが還流される際に持ち出されるオイルを効果的に低減することができるという効果を奏することができる。なお、筒状空間192が、クランクシャフトCSの軸線方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における領域68の内側に配置される、換言すれば、筒状空間192が領域68の真裏において当該領域68に重なるように配置される構成であるため、エンジン1が幅方向(クランクシャフトCSの軸線方向およびシリンダボア63aの軸線方向の両方に直交する方向)に大型化することを防止できる。
【0072】
第2の実施の形態に係るエンジン1では、貫通孔169cを貫通孔169aよりも高さ方向(
図14の上下方向)において低い位置に形成する構成としたが、これとは逆に、貫通孔169cを貫通孔169aよりも高さ方向(
図14の上下方向)において高い位置に形成する構成としても良い。当該構成によれば、気液分離室92を上方から下方(排気カムシャフト2b側からクランクシャフトCS側であって、
図14の上方から下方)に向かって流れてきて、貫通孔169aから筒状空間192内に導入されたブローバイガスの流れ方向を、上方(
図14の上方)に向かう流れに変更することができるため、ブローバイガスの流速が低下してブローバイガスからオイル成分の分離をより一層促進することができる。
【実施例3】
【0073】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るエンジン200について説明する。第3の実施の形態に係るエンジン200は、
図1を用いて説明した第1の実施の形態に係るエンジン1に対して、シリンダヘッド2をシリンダヘッド202に置き換えた点を除いて、第1の実施の形態に係るエンジン1と同じ構成を有している。したがって、第3の本実施の形態に係るエンジン200のうち第1の実施の形態に係るエンジン1の構成と同一部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
第3の実施の形態に係るエンジン200のシリンダヘッド202は、
図15ないし
図17に示すように、前壁部222aに形成された領域28に深底凹部228が形成されている。深底凹部228は、取付フランジ部24a,24b(
図15参照)の突出端面からの距離(深さ)が収容部25における取付フランジ部24a,24b(
図15参照)の突出端面からの距離(深さ)よりも深く形成されている。換言すれば、深底凹部228は、当該深底凹部228と領域78によって構成される気液分離室92の通路を、当該気液分離室92の延在方向(シリンダヘッド2の上下方向であって、
図15の上下方向)に直交する仮想平面で切った際の通路断面積が、領域68,78によって構成される気液分離室92の通路を、当該気液分離室92の延在方向(シリンダブロック6およびフロントカバー12の上下方向であって、
図15の上下方向)に直交する仮想平面で切った際の通路断面積よりも十分に大きくなるように形成されている。シリンダヘッド202は、本発明における「エンジン本体」に対応する実施構成の一例である。また、深底凹部228と領域78によって構成される気液分離室92の通路は、本発明における「導入口近傍流路」に対応し、領域68,78によって構成される気液分離室92の通路は、本発明における「中間流路」に対応する実施構成の一例である。
【0075】
次に、こうして構成された第3の実施の形態に係るエンジン200の動作、特に、ブローバイガスがインテークマニホールド14に還流される際の動作について説明する。シリンダボア63a(
図6参照)と図示しないピストンとの間からクランク室(図示せず)を介してチェーン室90内に漏出し、チェーン10の回転によってエンジン1の上方(
図1の上方)へ向かう流れとなったブローバイガスは、開口92aを介して気液分離室92に流入する。
【0076】
開口92aから気液分離室92に流入したブローバイガスは、まず、領域28の深底凹部228と領域78によって構成された大容積部を通る。このとき、流速が大幅に低下するため、ブローバイガスからオイル成分が効果的に分離される。また、ブローバイガスの流れ方向が、クランクシャフトCS側から排気カムシャフト2b側へと向かう上方向の流れから、排気カムシャフト2b側からクランクシャフトCS側へと向かう下方向の流れに変更されるため、流速の急激な低下を伴って、ブローバイガスに含まれているオイル成分がより効果的に分離される。なお、重力の作用、延出リブ67,77による衝突効果、および、延出リブ67,77による通路断面積の縮小効果などによってオイル成分の分離が促進される点は第1の実施の形態に係るエンジン1と同様である。
【0077】
こうしてオイル成分が分離されたブローバイガスが、貫通孔69aから排出されて、配管P1(
図17参照)、外付けの気液分離室EGSC(
図17参照)、内部配管IP(
図15参照)および配管P2(
図15参照)を通ってインテークマニホールド14(
図15参照)に還流される。なお、ブローバイガスから分離された油滴を含むオイル成分は、
図17に示すように、貫通孔69bからオイルパン8内に戻される。
【0078】
以上説明した本発明の第3の実施の形態に係るエンジン200においても、第1の実施の形態に係るエンジン1と同様の作用効果を奏することができる。即ち、気液分離室92内の構造を複雑化することなくブローバイガスからオイル成分を良好に分離することができる。
【0079】
第1、第2および第3の実施の形態に係るエンジン1,100,200では、取付フランジ部64b,74bと延出リブ67,77とによって構成された略逆U字状の領域内に貫通孔69a,169aを配置する構成としたが、これに限らない。例えば、貫通孔69a,169aを、当該貫通孔69a,169aの上部(ブローバガスの流れ方向において上流側)に配置された直線状のリブのみによって覆う構成としても良い。あるいは、
図18に例示する変形例に示すように、延出リブ367,377自体を略逆U字状に構成して、当該略逆U字状の領域内に貫通孔69a,169aを配置する構成としても良い。この場合、延出リブ367,377を、領域68,78の延在方向(
図18の上下方向)に交差する方向に延出された第1部分367a,377aと、当該第1部分367a,377aから領域68,78の延在方向(
図18の上下方向)の下方(
図18の下方向)に向かって延出された第2部分367b,377bおよび第3部分367c,377cと、から構成し、第2部分367b,377bとリブ66,76との間の距離、および、第3部分367c,377cと取付フランジ部64b,74bとの間の距離を取付フランジ部64b,74bからリブ66,76間の距離よりも小さくなるように構成することが望ましい。延出リブ367,377は、本発明における「庇部」に対応する実施構成の一例である。
【0080】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジン(エンジン)
2 シリンダヘッド(エンジン本体、シリンダヘッド)
2a 吸気カムシャフト(カムシャフト)
2b 排気カムシャフト(カムシャフト)
3a カムスプロケット
3b カムスプロケット
4 ロッカーカバー
6 シリンダブロック(エンジン本体、シリンダブロック)
8 オイルパン(オイルパン)
10 チェーン(伝達部材)
12 フロントカバー(カバー部材)
14 インテークマニホールド(吸気経路)
22a 前壁部
22b 後壁部
22c 側壁部
22d 側壁部
24a 取付フランジ部
24b 取付フランジ部
24b1 上端
25 収容部
26 リブ
26a 一端
27 間隙
28 領域
61 クランクスプロケット
62a 前壁部
62b 後壁壁
62c 側壁部
62d 側壁部
63 シリンダボア壁
63a シリンダボア
64a 取付フランジ部
64b 取付フランジ部
64c 取付フランジ部
65 収容部
66 リブ
67 延出リブ(庇部)
67a 第1部分
67b 第2部分
68 領域
69a 貫通孔(排出口)
69b 貫通孔(オイル戻し口)
72 本体部
74a 取付フランジ部
74b 取付フランジ部
74b1 上端
74c 取付フランジ部
75 収容部
76 リブ
76a 一端
77 延出リブ(庇部)
77a 第1部分
77b 第2部分
78 領域
79 間隙
90 チェーン室(収容室)
92 気液分離室(気液分離室)
92a 開口(導入口)
100 エンジン(エンジン)
106 シリンダブロック(エンジン本体、シリンダブロック)
162a 前壁部
162d 側壁部
169a 貫通孔(排出口)
169b 貫通孔(オイル戻し口)
169c 貫通孔(導出口)
192 筒状空間(袋小路空間)
200 エンジン(エンジン)
202 シリンダヘッド(エンジン本体、シリンダヘッド)
228 深底凹部(導入口近傍流路)
367 延出リブ(庇部)
367a 第1部分
367b 第2部分
367c 第3部分
377 延出リブ(庇部)
377a 第1部分
377b 第2部分
377c 第3部分
CS クランクシャフト(クランクシャフト)
P1 配管
P2 配管
EGSC 外付けの気液分離室
IP 内部配管
P3 配管