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特許7139759画像形成用セット、画像形成装置および画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】画像形成用セット、画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20220913BHJP
   C09D 11/32 20140101ALI20220913BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20220913BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B41M5/00 132
C09D11/32
C09D11/54
B41J2/01 123
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 110
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018143589
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020019183
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】玉井 崇詞
(72)【発明者】
【氏名】渡会 幸隆
(72)【発明者】
【氏名】張 東植
(72)【発明者】
【氏名】花澤 宏文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】前川 勉
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-076430(JP,A)
【文献】特開2010-036579(JP,A)
【文献】特開2011-121315(JP,A)
【文献】特開2009-137056(JP,A)
【文献】特開2011-056884(JP,A)
【文献】特開2016-022706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体と、前記記録媒体に付与する処理液と、を有する画像形成用セットであって、前記処理液は、多価金属塩と界面活性剤とを含有するとともに15msの動的表面張力(A)と静的表面張力(B)の関係として59≧A≧50mN/m、27≦B≦38mN/m、2.1≧A/B≧1.5の関係を満たし、かつ、前記記録媒体および前記処理液は、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係として1.5≦(Vi/Vr)≦2.5の関係を満たし、
前記処理液中に含まれる前記界面活性剤が0.0001質量%以上0.0010質量%以下であることを特徴とする画像形成用セット。
【請求項2】
前記処理液中の多価金属塩が、マグネシウム塩およびカルシウム塩のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成用セット。
【請求項3】
前記処理液中の多価金属塩の含有量が、10質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成用セット。
【請求項4】
前記処理液が水溶性有機溶剤を含み、前記処理液中に含まれる前記水溶性有機溶剤の含有量が、10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の画像形成用セット。
【請求項5】
更にインクを有し、前記インクが、色材、水溶性有機溶剤、樹脂および界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の画像形成用セット。
【請求項6】
記録媒体上に処理液を付与する工程と、前記処理液が付与された記録媒体にインクを付与する工程とを備えてなる画像形成方法であって、
前記処理液は、多価金属塩と界面活性剤とを含有するとともに15msの動的表面張力(A)と静的表面張力(B)の関係として59≧A≧50mN/m、27≦B≦38mN/m、2.1≧A/B≧1.5の関係を満たし、かつ、前記記録媒体および処理液は、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係として1.5≦(Vi/Vr)≦2.5の関係を満たし、
前記処理液中に含まれる前記界面活性剤が0.0001質量%以上0.0010質量%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
記録媒体上に処理液を付与する手段と、前記処理液が付与された記録媒体にインクを付与する手段とを備えてなる画像形成装置であって、
前記処理液は、多価金属塩と界面活性剤とを含有するとともに15msの動的表面張力(A)と静的表面張力(B)の関係として59≧A≧50mN/m、27≦B≦38mN/m、2.1≧A/B≧1.5の関係を満たし、かつ、前記記録媒体および処理液は、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係として1.5≦(Vi/Vr)≦2.5の関係を満たし、
前記処理液中に含まれる前記界面活性剤が0.0001質量%以上0.0010質量%以下であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成用セット、画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、微細なノズルから少量のインク液滴を飛翔させ、紙などの記録媒体に付着させて文字や画像を記録する方式であり、低騒音、プロセスが簡便かつカラー化が容易であることから家庭用プリンターとして広く普及している。
【0003】
近年、インクジェット記録方式は、可変印刷や幅広いメディア対応可能といった利点から、商用印刷としても拡大している。商用印刷においては、多種多様な紙に対して印字を行っており、その紙は大きく分けて普通紙とコート紙に分けられる。しかし、普通紙の光学濃度(OD)の確保とコート紙の光沢性の確保とは、必要とされるインクの機能が異なっている。したがって、画像形成において、画像の色再現性、耐擦過性、耐久性、耐光性、画像の乾燥性、文字にじみ(フェザリング)、色境界にじみ(カラーブリード)、ビーディング、両面印刷性、吐出安定性などの要求される全ての特性を満足することは非常に難しく、用途に応じて優先される特徴により用いるインクが選択されている。
【0004】
そこで、色材を凝集させる機能を有する処理液を記録媒体上に予め付与し、その部分にインクを噴射して印字することにより、普通紙やコート紙においても画像濃度や彩度を高くすることができるインクジェット記録方法が提案されている。
例えば下記特許文献1には、被記録材のコックリングの発生の防止等を目的として、塗工紙に特定の粘度を有する処理液を、ブリストー法による前記塗工紙の粗さ指数Vrおよび吸収係数の値が変化する屈曲点における転移量Viの指標に基づき、ロールコート法により付与した後、前記塗工紙にインクを吐出するインクジェット記録方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された方法では、処理液がローラ上および塗工紙上に均一に濡れ広がらず、処理液に含まれる凝集剤が塗工紙上にムラになって存在してしまい、画質にもムラが見えてしまうという問題点がある。
【0006】
また、特許文献1に開示された技術以外にも、表面に白色顔料や水溶性ポリマーを塗工した記録媒体が提案されている。しかし、該提案は記録媒体に対し特殊な処理を施す必要があることから高価であるため、写真画像出力等の特殊な用途に限定され、広く普及するには至っていない。
【0007】
一方、本発明者らの検討によれば、処理液およびインクが記録媒体内部に浸透してしまうと、発色が悪くなったり、ビーディングが発生することが判明した。
【0008】
本発明の目的は、ビーディングの発生を抑制し、カールの発生も防止可能な画像形成用セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、下記構成1)により解決される。
1)記録媒体と、前記記録媒体に付与する処理液と、を有する画像形成用セットであって、前記処理液は、多価金属塩と界面活性剤とを含有するとともに15msの動的表面張力(A)と静的表面張力(B)の関係として59≧A≧50mN/m、27≦B≦38mN/m、2.1≧A/B≧1.5の関係を満たし、かつ、前記記録媒体および前記処理液は、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係として1.5≦(Vi/Vr)≦2.5の関係を満たし、前記処理液中に含まれる前記界面活性剤が0.0001質量%以上0.0010質量%以下であることを特徴とする画像形成用セット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ビーディングの発生を抑制し、カールの発生も防止可能な画像形成用セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、インクジェット記録装置の一例を示す斜視説明図である。
図2図2は、インクジェット記録装置におけるメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、処理液の記録媒体への浸透の度合いがビーディング、記録媒体のカールおよびコックリングに大きく影響することを見い出し、これら悪影響を防止するには、処理液における凝集剤の種類、処理液の動的表面張力および静的表面張力の関係、記録媒体の粗さ、並びに、記録媒体への処理液の吸液量を特定の範囲に定めることが有効であることを見い出した。
【0013】
前記知見に基づき、本発明の画像形成用セットは、記録媒体と、前記記録媒体に付与する処理液と、を有し、下記条件(1)~(3)をすべて満たす必要がある。
(1)前記処理液は、多価金属塩を含有する。
(2)前記処理液は、15msの動的表面張力(A)と静的表面張力(B)の関係として59≧A≧50mN/m、27≦B≦38mN/m、2.1≧A/B≧1.5の関係を満たす。
(3)前記記録媒体および前記処理液は、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係として1.5≦(Vi/Vr)≦2.5の関係を満たす。
【0014】
本発明の画像形成用セットは、前記条件(1)~(3)をすべて満たすことにより、記録媒体表面上への塗布直後の処理液の液量を十分に確保するとともに、時間経過による処理液の浸透を抑制し、少量の塗布量でインクの色材の凝集性を高め、ビーディングの発生を抑制できる。また、記録媒体に処理液が浸透する前にインクの色材の凝集が完了するため、記録媒体のカールやコックリングを抑えることもできる。
【0015】
本発明で使用する処理液は、凝集剤として多価金属塩を含有する。また処理液は、有機溶剤、水を含有することが好ましく、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有してもよい。有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、下記で説明するインクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
【0016】
とくに、処理液が水溶性有機溶剤を含有する場合、水分蒸発を抑制し金属塩の析出を抑制するという効果を奏する。この形態において、処理液中に含まれる前記水溶性有機溶剤の含有量が、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
また、処理液が界面活性剤を含有する場合、記録媒体上に処理液を均一に塗布できるという効果を奏する。この形態において、処理液中に含まれる前記界面活性剤の含有量は、界面活性剤が分離しない5質量%以下であることが好ましい。
【0018】
多価金属塩は、2価以上の特定の多価金属イオンと、これら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成されるものであることができる。塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、ホウ素塩、亜鉛塩等が挙げられ、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩であり、さらに好ましくはマグネシウム塩である。なお、処理液に含まれる多価金属塩は1種類である必要はなく、2種類以上から構成されてもよい。
多価金属塩の具体例としては、下記の無機金属塩および有機酸金属塩が挙げられる。
【0019】
無機金属塩としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
有機酸金属塩としては、パントテン酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、酢酸、および乳酸のカルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
【0020】
処理液における多価金属塩の含有量としては、例えば10~40質量%であり、15~30質量%が好ましい。
【0021】
本発明における処理液は、15msの動的表面張力(A)と静的表面張力(B)の関係として59≧A≧50mN/m、27≦B≦38mN/m、2.1≧A/B≧1.5の関係を満たす。15msの動的表面張力(A)を50mN/m以上にすることで、処理液の記録媒体内部への浸透を抑制することができ、59mN/m以下にすることで、記録媒体上に処理液を均一に塗布することを可能にする。
また、静的表面張力(B)を27mN/m以上にすることで、記録媒体上に凝集剤成分を均一に残すことを可能にし、38mN/m以下にすることで、記録媒体上に処理液が均一に濡れ拡がり塗布できるようになる。
【0022】
15msの動的表面張力(A)は、最大泡圧法によって温度25℃およびバブルライフタイム15msで測定した値であり、例えば、動的表面張力計SITA DynoTester(英弘精機株式会社製)を用いて測定することができる。
また、静的表面張力(B)は、表面張力計DY300(協和界面株式会社製)を用いて、温度25℃の条件で測定することができる。
【0023】
処理液における動的表面張力(A)の調整方法はとくに制限されないが、例えば処理液に添加する界面活性剤の種類および量を適宜変更することにより所望の値に制御することができる。
また、処理液における静的表面張力(B)の調整方法はとくに制限されないが、例えば処理液に添加するジオールの種類および量や、界面活性剤の種類および量を適宜変更することにより所望の値に制御することができる。
【0024】
また本発明における記録媒体および処理液は、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係として1.5≦(Vi/Vr)≦2.5の関係を満たす必要がある。(Vi/Vr)を1.5以上とすることで、処理液の吸収を記録媒体の種類に関係なく抑えて凝集成分を記録媒体上に残すことが可能となり、2.5以下とすることで、余分な処理液が記録媒体内部に侵入することを抑制でき、カールやコックリングを防止できる。
【0025】
ブリストー法とはJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.51-87「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」に記載された方法であり、公知である。ブリストー法による粗さ指数と吸液量は、いずれも、印字する記録媒体と、使用する処理液を用いて測定する。
【0026】
なお、本発明の効果向上の観点から、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係は、1.8≦(Vi/Vr)≦2.5であることが好ましく、1.9≦(Vi/Vr)≦2.2であることがさらに好ましい。
【0027】
粗さ指数Vrと吸液量Viの関係を前記のような範囲に調整するには、使用する水溶性有機溶剤と界面活性剤の配合量を調整する方法が挙げられる。
また、前処理液の記録媒体への塗布量は、例えば10mg~80mg/A4であり、好ましくは20mg~60mg/A4である。
【0028】
本発明の画像形成用セットは、インクを備えることができる。以下、本発明で使用されるインクについて説明する。
【0029】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0030】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0031】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0032】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0033】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0034】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0035】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0036】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0037】
顔料をインク中に分散させるには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料等が使用できる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
<顔料分散体>
色材に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0039】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0041】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0042】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0043】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0045】
【化1】
【0046】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは整数を表わす。R及びR’はアルキル基、アルキレン基を表わす。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0047】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0048】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0049】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0050】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0051】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0052】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0053】
<記録媒体>
記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0054】
<画像形成方法および画像形成装置>
本発明の画像形成方法は、記録媒体上に前記処理液を付与する工程と、前記処理液が付与された記録媒体にインクを付与する工程とを備えてなり、本発明の画像形成装置は、記録媒体上に処理液を付与する手段と、前記処理液が付与された記録媒体にインクを付与する手段とを備えてなる。
本発明における処理液を記録媒体上に付与するには、公知の前処理装置を用いることができる。例えば、前処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置を設ける態様がある。
次に、前記インク(本発明のインクとも言う)の記録装置および記録方法について説明する。
【0055】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本願において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0056】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【実施例
【0057】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に記載の各成分の量(%)は特に記載の無い場合は固形分で質量基準である。
【0058】
(処理液の調製)
下記表1および2に示す割合(質量基準)で、各成分を混合攪拌し、各種処理液を得た。
【0059】
(処理液の動的表面張力(A)および静的表面張力(B)の測定)
前記記載の方法により、処理液の動的表面張力(A)および静的表面張力(B)を測定した。結果を表1および2に示す。
【0060】
(粗さ指数Vrおよび吸液量Viの測定)
前記記載の方法により、処理液の粗さ指数Vrおよび吸液量Viを測定した。結果を表1および2に示す。
なお、記録媒体に対する処理液の塗布は、印字前に小林製作所社製のワイヤーバー(巻線径:0.02mm)を用い、40mg/A4の塗布量で行い、その後、90℃で30秒、オーブン乾燥を行った。
オーブン乾燥後は、直ちにインクを用いた印字を行い、下記の試験に供した。
【0061】
インク処方は以下の通りである。
【0062】
(調製例1)
-ブラック顔料分散液の調製-
カーボンブラック(三菱化学製MA100)90gを、2.5規定の硫酸ナトリウム溶液3,000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。得られた反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。得られたカーボンブラックを水洗し、乾燥させて、顔料濃度が20%となるように純水中に分散させた。以上により、調製例1のブラック顔料分散液を調製した。
【0063】
(調製例2)
-イエロー顔料分散液の調製-
イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー128を低温プラズマ処理しカルボン酸基を導入したイエロー顔料を作製した。これをイオン交換水に分散したものを限外濾過膜により脱塩濃縮して、顔料濃度15%の調製例2のイエロー顔料分散液を得た。
【0064】
(調製例3)
-マゼンタ顔料分散液の調製-
C.I.ピグメントイエロー128の代りにC.I.ピグメントレッド122を用いた以外は、調製例2と同様にして、表面改質されたマゼンタ顔料を作製した。これをイオン交換水に分散したものを限外濾過膜により脱塩濃縮して、顔料濃度15%の調製例3のマゼンタ顔料分散液を得た。
【0065】
(調製例4)
-シアン顔料分散液の調製-
C.I.ピグメントイエロー128の代りにC.I.ピグメントシアン15:3を用いた以外は、調製例2と同様にして、表面改質されたシアン顔料を作製した。これをイオン交換水に分散したものを限外濾過膜により脱塩濃縮して、顔料濃度15%の調製例4のシアン顔料分散液を得た。
【0066】
下記処方のインク組成物を調製し、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、各インクを作製した。
〔インク組成〕
・各調製例で得た顔料分散液 20.00%
・1,3-ブタンジオール 23.00%
・グリセリン 8.00%
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール 2.00%
・プロキセルLV 0.20%(アビシア社製、防かび剤)
・2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール 0.30%
・スーパーフレックス(第一工業製薬社製、ウレタン系樹脂) 10.00%
・Capstone FS-30(Dupont社製) 1.00%(ブラックは0.80%)
・イオン交換水 残量(合計:100%)
【0067】
<評価>
<ビーディング>
画像形成装置として株式会社リコー製IPSIO GXe5500を、記録媒体としてStora Enso社製Lumi Art Gross130を用い、光沢紙-きれいモード、色補正なしを選択し、ベタ画像を印字し、濃度ムラ(ビーディング)の目視判定を行った。
[評価基準]
AA:全く無し。
A:15cm離れたところから濃度ムラが僅かに確認できる。
B:30cm離れたところから濃度ムラが僅かに確認できる。
C:1m離れたところからでも濃度ムラが確認できる。
D:1.5m以上離れたところからでも濃度ムラが確認できる。
【0068】
<カール>
Lumi Art Gross130上に処理液を塗布し、乾燥させずに、水平の台に置いて30秒後の、台から垂直方向に最大の距離の部分の用紙のそり高さを測定した。
[評価基準]
A:0~3mm。
B:3mmより高く、5mm以下。
C:5mmより高く、10mm以下。
D:10mmより高い。
【0069】
ビーディングの評価はB判定以上で、カールの評価はB判定以上で、実使用上問題ないレベルとなる。
結果を表1および2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1、2中、ハイマックスSC-506は、ハイモ株式会社製ポリアルキルアミン系カチオン性ポリマーであり、Capstone-FS3100およびCapstone-FS34は、ケマーズ株式会社製ノニオン系フッ素含有界面活性剤であり、LS-106は、花王株式会社製ポリオキシアルキレンアルキルエーテルであり、WET-270は、信越化学工業株式会社製ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤である。
【0073】
表1、2の結果から、各実施例の処理液は、多価金属塩を含有するとともに15msの動的表面張力(A)と静的表面張力(B)の関係として59≧A≧50mN/m、27≦B≦38mN/m、2.1≧A/B≧1.5の関係を満たし、かつ、前記記録媒体および前記処理液は、ブリストー法で求められる粗さ指数Vrと20ms0.5の吸液量Viの関係として1.5≦(Vi/Vr)≦2.5の関係を満たしているので、比較例の処理液に比べて、ビーディングの発生を抑制し、カールの発生も同時に防止可能であることが示された。
【符号の説明】
【0074】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【文献】特許第5513031号公報
図1
図2