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  • 特許-巻き取りライナー 図1
  • 特許-巻き取りライナー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】巻き取りライナー
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
B29D30/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018157532
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029073
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中辻 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩二
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-516786(JP,A)
【文献】特開平01-167140(JP,A)
【文献】特開2000-301546(JP,A)
【文献】特開平09-234737(JP,A)
【文献】特開2002-144445(JP,A)
【文献】国際公開第96/037427(WO,A2)
【文献】国際公開第2003/006350(WO,A1)
【文献】特表2003-512213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00
B29D 30/26
B29C 33/68
B65H 3/00
B65H 39/14
B65H 75/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のゴムシートと共に巻き取られるライナーであって、
長手方向において、前記ライナーの端部における2%伸びの引張応力が、前記ライナーの中央部における2%伸びの引張応力より大きい、巻き取りライナー。
【請求項2】
前記端部の厚さが前記中央部の厚さより厚い、請求項1に記載のライナー。
【請求項3】
前記端部の厚さが0.3mm以上1.0mm以下である請求項2に記載のライナー。
【請求項4】
前記端部の材質が前記中央部の材質と異なっている、請求項1から3のいずれかに記載のライナー。
【請求項5】
前記端部の長手方向長さが15m以上である、請求項1から4のいずれかに記載のライナー。
【請求項6】
長手方向において端部における2%伸びの引張応力が中央部における2%伸びの引張応力より大きい、ライナーを準備し、帯状のゴムシートを前記ライナーと共に巻回してゴムシート巻回体を形成する工程と、
前記ゴムシート巻回体から前記ゴムシートとライナーとを繰り出し、ゴムシートからライナーを剥がす工程と、
前記ゴムシートを切断し、前記ゴムシートからゴム部材を得る工程と、
前記ゴム部材と他のゴム部材とを組み合わせ、ローカバーを形成する工程と、
前記ローカバーを加硫し、ローカバーからタイヤを得る工程と
を備えるタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き取りライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの各部を形成するゴム部材は、帯状のゴムシートとして準備される。このゴムシートは、リールに巻回されて準備される。このゴムシートは、未加硫のゴムからなり、粘着性を有する。リールに巻回されるときに、ゴムシートに巻き取りライナー(以下、単にライナーとも称する)が重ね合わされて巻回される。このライナーによって、巻回されたゴムシートの粘着が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-47587公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リールに巻回されたゴムシートは、リールから繰り出されて使用される。このリールに巻かれたゴムシートでは、リールの中心に近い巻き芯部で、大きな締め付け力が作用する。この締め付け力によって、この巻き芯部で、特に、ライナー及びゴムシートは変形し易い。この変形したゴムシートは、タイヤの成形精度を損なう。
【0005】
本発明の目的は、ゴムシートの変形を抑制する巻き取りライナーの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る巻き取りライナーは、帯状のゴムシートと共に巻き取られる。このライナーでは、長手方向において、前記ライナーの端部における2%伸びの引張応力が、前記ライナーの中央部における2%伸びの引張応力より大きい。
【0007】
好ましくは、前記端部の厚さは、前記中央部の厚さより厚い。
【0008】
好ましくは、前記端部の厚さは、0.3mm以上1.0mm以下である。
【0009】
好ましくは、前記端部の材質は、前記中央部の材質と異なっている。
【0010】
好ましくは、前記端部の長手方向長さは、15m以上である。
【0011】
好ましくは、前記端部は、長手方向の縦糸と幅方向の横糸との織り構造を備えている。前記縦糸のコード強力は60N以上100N以下であり、切断伸度は1.0%以上2.0%以下である。前記横糸のコード強力は120N以上190N以下であり、切断伸度が0.5%以上1.0%以下である。
【0012】
好ましくは、前記縦糸及び前記横糸は、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド又はレーヨンからなる。
【0013】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
長手方向において端部における2%伸びの引張応力が中央部における2%伸びの引張応力より大きい、ライナーを準備し、帯状のゴムシートを前記ライナーと共に巻回してゴムシート巻回体を形成する工程と、
前記ゴムシート巻回体から前記ゴムシートとライナーとを繰り出し、ゴムシートからライナーを剥がす工程と、
前記ゴムシートを切断し、前記ゴムシートからゴム部材を得る工程と、
前記ゴム部材と他のゴム部材とを組み合わせ、ローカバーを形成する工程と、
前記ローカバーを加硫し、ローカバーからタイヤを得る工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る巻き取りライナーでは、長手方向において端部における2%伸びの引張応力が中央部における2%伸びの引張応力より大きい、この端部に、変形が生じ難い。この端部は、ゴムシートの変形を抑制する。このライナーは、巻回体の芯部において、ゴムシートが変形することを抑制する。このライナーは、タイヤの成形精度の向上に寄与する。更に、このライナーでは、端部の伸び量が小さくされている。このライナーは、この端部を、従来のライナーに付加することで、ゴムシートの変形を抑制しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る巻き取りライナーが示された説明図である。
図2図2(a)は図1の巻き取りライナーの部分拡大図であり、図2(b)は図2(a)の線分B-Bに沿った断面図である。
図3図3は、図1の巻き取りライナーの使用状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1に示された巻き取りライナー2は、本体部4と、一対の端部6とを備えている。このライナー2は、長い帯状の形状を備えている。図1の矢印Xはライナー2の長手方向を表し、矢印Yはライナー2の幅方向を表し、矢印Zはライナー2の厚さを表している。
【0018】
このライナー2では、長手方向において、本体部4は一対の端部6に挟まれている。長手方向において、本体部4の長さは、端部6のそれに比べて、遙かに大きい。この本体部4の一端と一方の端部6とが接続されている。本体部4の他端と他方の端部6とが接続されている。
【0019】
本体部4は、長い帯状の形状を備えている。両矢印Wcは、本体部4の幅を表している。この幅Wcは、幅方向において、本体部4の一端から他端までの直線距離として測定される。両矢印Lcは、本体部4の長さを表している。この長さLcは、長手方向において、本体部4の一端から他端までの直線距離として測定される。両矢印Tcは、本体部4の厚さを表している。この幅Tcは、厚さ方向において、本体部4の一端から他端までの直線距離として測定される。
【0020】
それぞれの端部6は、長い帯状の形状を備えている。両矢印Weは、端部6の幅を表している。この幅Weは、幅方向において、端部6の一端から他端までの直線距離として測定される。両矢印Leは、端部6の長さを表している。この長さLeは、長手方向において、端部6の一端から他端までの直線距離として測定される。両矢印Teは、端部6の厚さを表している。この幅Teは、厚さ方向において、端部6の一端から他端までの直線距離として測定される。
【0021】
両矢印Ltは、ライナー2の長さを表している。この長さLtは、本体部4の長さLcと一対の端部6の長さ2Leとを合わせた長さである。このライナー2の幅は、幅Wcと幅Weと同じ大きさにされている。このライナー2は一対の端部6を備えているが、端部6はいずれか一方のみであってもよい。この場合、長さLtは、本体部4の長さLcと端部6の長さLeとを合わせた長さである。
【0022】
図1では、便宜上、幅Wc及び厚さTcが長さLcに対して比較的に大きく表されているが、本体部4では、幅Wc及び厚さTcは、長さLcに対して遙かに小さい。幅We及び厚さTeが長さLeに対して比較的に大きく表されているが、端部6では、幅We及び厚さTeは、長さLeに対して遙かに小さい。
【0023】
図2(a)及び図2(b)に示される様に、端部6は、の部分拡大図が示されている。図2(a)では、上下方向が端部6の長手方向であり、左右方向が端部6の幅方向である。図2(b)は、図2(a)の長手方向に垂直な断面が示されている。
【0024】
図2(a)及び図2(b)に示される様に、この端部6は、縦糸8と横糸10とを備えている。この端部6は、長手方向に延びる縦糸8と幅方向に延びる横糸10とが織られた布12として、形成されている。言い換えると、この端部6は、縦糸8と横糸10との織り構造を備えている。
【0025】
この縦糸8は、化学繊維を撚って形成したコードからなっている。この縦糸8の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、レーヨン等が例示される。横糸10は、化学繊維のコードからなっている。横糸10は、化学繊維が撚られて形成されている。この横糸10の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、レーヨン等が例示される。
【0026】
図示されないが、本体部4は、薄い樹脂シートからなっている。この本体部4は、縦糸と横糸とが織られた布からなるものではない。この本体部4は、端部6と同様に、縦糸と横糸とが織られた布からなっていてもよい。例えば、この縦糸及び横糸のそれぞれは、端部6と同様に、化学繊維を撚って形成されたコードからなる。この縦糸及び横糸のそれぞれの材料としては、端部6と同様に、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、レーヨン等が例示される。
【0027】
図3では、このライナー2がゴムシート14との共に、リール16に巻回されている。このゴムシート14は、未加硫のゴムからなる。ゴムシート14は、長い帯状の形状を備えている。ゴムシート14は、長手方向に垂直な断面において、所定の断面形状を備えている。このゴムシート14は、ガイドローラ18及びガイドローラ20に案内されて、リール16に送られている。
【0028】
軸22に巻回されたライナー2が軸22から繰り出されている。このライナー2は、ガイドローラ18及びガイドローラ20に案内されて、リール16に送られている。このライナー2は、ゴムシート14と重ねられて、リール16に巻き取られている。このライナー2とゴムシート14とが巻回されて、ゴムシート巻回体24を形成する。
【0029】
ここで、このライナー2を用いたタイヤの製造方法が説明される。ここでは、ゴムシート14からトレッドを形成するトレッド部材が得られる製造方法を例に説明がされる。このタイヤの製造方法は、ゴムシート準備工程、ゴムシート巻回工程、ゴムシート繰り出し工程、ゴムシート切断工程、ゴム部材準備工程、予備成形工程及び加硫工程を備える。
【0030】
ゴムシート準備工程では、ゴムシート14を準備する。ゴムシート14は、例えば、図示されない成形機で押し出し成形される。ゴムシート巻回工程では、図3に示される様に、このゴムシート14とライナー2とを巻回する。この巻回により、ゴムシート巻回体24を形成する。ゴムシート繰り出し工程では、このゴムシート巻回体24からゴムシート14とライナー2とを繰り出す。ゴムシート14とライナー2とが、ゴムシート巻回体24から引き出される。ゴムシート14とライナー2とを剥がす。ライナー2は、軸22に巻き取られる。ゴムシート切断工程では、ゴムシート14を所定の長さに切断する。この切断より、ゴムシート14からトレッド部材を得る。ゴム部材準備工程では、他のゴム部材を準備する。予備成形工程では、トレッド部材と他のゴム部材とを組み合わせてローカバーを形成する。加硫工程では、このローカバーを加硫してタイヤを得る。
【0031】
このタイヤでは、トレッド部材からトレッドが形成されている。このライナー2は、伸び難い端部6を備えている。この端部6によって、ゴムシート巻回体24の巻き芯部24aにおいて、トレッド部材の変形が抑制されている。このトレッド部材は、ローカバーの成形精度を損なうことを抑制する。このトレッド部材は、タイヤのRFV(ラジアルフォースバリエーション)を損なうことを抑制する。
【0032】
このタイヤの製造方法では、トレッド部材を例に説明がされたが、これに限られない。このゴムシート14から得られるゴム部材は、サイドウォールを形成するサイドウォール部材、クリンチを形成するクリンチ部材、インナーライナーを形成するインナーライナー部材等であってもよい。このライナー2は、タイヤの各部を形成するゴム部材に用いられる、ゴムシート14に広く適用される。
【0033】
ゴムシート繰り出し工程では、ゴムシート巻回体24からゴムシート14及びライナー2が引き出される。このとき、ゴムシート14及びライナー2には引張応力が作用する。ゴムシート繰り出し工程では、ゴムシート14及びライナー2の繰り出しと停止が繰り返される。この繰り返しによって、ゴムシート14及びライナー2には繰り返し引張応力が作用する。ゴムシート14及びライナー2は、伸長と元の長さに縮む変形を繰り返す。この縮む変形によって、ゴムシート14に波打ちや皺等の変形が生じやすい。このライナー2の端部6は伸び難いので、端部6に重ねられたゴムシート14の変形を抑制しうる。
【0034】
更に、ゴムシート巻回体24の巻き芯部24aでは、締め付け力が大きい。この巻き芯部24aでは、ゴムシート14及びライナー2に大きな締め付け力が作用する。このライナー2では、大きな締め付け力が作用しても、端部6は変形し難い。このゴムシート巻回体24の巻き芯部24aでは、端部6がゴムシート14の変形を抑制する。
【0035】
このライナー2では、長手方向において、端部6における2%伸びの引張応力が、本体部4における2%伸びの引張応力より大きい。このライナー2では、この巻き芯部24aに、端部6が位置している。この巻き芯部24aにおいて、このライナー2の変形が抑制されている。これにより、この巻き芯部24aにおいて、ゴムシート14の変形が抑制されている。この変形が抑制されているので、ゴムシート14の端部から形成されるトレッド部材で、その形状精度が損なわれることが抑制されている。このゴムシート14は、長手方向端部まで、無駄なく、タイヤのゴム部材として使用できる。
【0036】
2%伸びの引張応力は、所定の形状の試験片を用いて求められる。具体的には、本体部4から作成された複数の試験片と、端部6から作成された複数の試験片と、が準備される。これらの試験片は、ライナー2の長手方向を長手方向として作成される。これらの試験片が試験機にセットされ、長手方向に引張荷重が負荷される。2%の伸びが生じたときの、引張応力が測定される。端部6の試験片と本体部4の試験片とのそれぞれについて、引張応力の平均値が求められる。この様にして求められた平均値が、端部6と本体部4とのそれぞれの2%伸びの引張応力とされる。
【0037】
厚い端部6では、引張荷重に対して伸び量が小さい。伸び量が小さい端部6は、ゴムシート巻回体24の巻き芯部24aにおいて、ゴムシート14の変形を抑制する。この変形を抑制する観点から、端部6の厚さは厚いことが好ましい。一方で、本体部4の厚さを薄くすることで、ゴムシート巻回体24の外径を小さくできる。これらの観点から、ライナー2では、本体部4の厚さは、端部6の厚さがより薄いことが好ましい。
【0038】
端部6の伸び量を小さくする観点から、縦糸8のコード強力は、好ましくは60N以上である。一方で、リール16に小さい曲率半径で巻き取り易くする観点から、この縦糸8のコード強力は好ましくは100N以下である。この縦糸8のゴード強力は、本体部4の縦糸のそれより大きいことが好ましい。縦糸8の切断伸度は、好ましくは1.0%以上である。この縦糸8の切断伸度は、好ましくは2.0%以下である。端部6の伸び量を小さくする観点から、横糸10のコード強力は、好ましくは120N以上である。一方で、リール16に小さい曲率半径で巻き取り易くする観点から、この縦糸8のコード強力は好ましくは190N以下である。この横糸10のゴード強力は、本体部4の横糸のそれより大きいことが好ましい。横糸10の切断伸度は好ましくは0.5%以上である。この横糸10の切断伸度は、好ましくは1.0%以下である。
【0039】
縦糸8のコード強力は、一本の縦糸8に引張力を負荷して破断させたときに、破断するまでの引張力の最大値である。また、縦糸8の切断伸度は、一本の縦糸8に引張力を負荷したときに、元の長さに対する切断時の伸び量の比として求められる。横糸10のコード強力及び破断伸度は、この縦糸8のそれらと同様にして求められる。
【0040】
ゴムシート巻回体24の巻き芯部24aにおいてゴムシート14の変形を抑制する観点から、端部6の長さLeは好ましくは15m以上であり、更に好ましくは20m以上である。一方で、端部6の長さLeが短いライナー2は、ゴムシート巻回体24の外径を小さくできる。この観点から、この長さLeは、好ましくは50m以下である。
【0041】
ライナー2の長さLtは、特に限定されないが、一般に500以上600m以下である。低コストでライナー2を形成する観点から、長さLtに対する端部6の長さLeの比(Le/Lt)は、好ましくは0.10以下であり、更に好ましくは0.05以下であり、特に好ましくは0.03以下である。
【0042】
従来のライナーの厚さは、一般に0.1mm以上0.3mm以下である。このライナー2の本体部4の厚さTcは、特に限定されないが、従来のライナーの厚さと同様にされている。ゴムシート巻回体24の外径を小さくする観点から、厚さTcは、好ましくは0.2mm以下である。また、ゴムシートの変形を抑制する観点から、端部6の厚さTeは、好ましくは0.3mm以上であり、更に好ましくは0.4mm以上であり、特に好ましくは0.5mm以上である。一方で、ゴムシート巻回体24の外径を小さくする観点から、厚さTeは、好ましくは1.0mm以下であり、更に好ましくは0.9mm以下であり、特に好ましくは0.8mm以下である。
【0043】
このライナー2では、端部6の材質と本体部4の材質とが異なってもよい。端部6は、本体部4の材質より伸び量が小さい材質からなることが好ましい。例えば、本体部4の縦糸及び横糸がポリアミドからなり、端部6の縦糸8及び横糸10がポリエチレンテレフタレート又はレーヨンからなってもよい。端部6の縦糸8及び横糸10は、本体部4の縦糸及び横糸より、伸び難くくされる。これにより、端部6の厚さTeを比較的に小さくして、端部6における単位長さあたりの伸び量は、本体部4におけるそれより小さくされうる。
【0044】
ライナー2の軽量化の観点から、端部6の縦糸8及び横糸10は、一般に化学繊維が用いられる。ゴムシート巻回体24の巻き芯部24aでは、放熱し難い。この熱は、ゴムシート14にブルーミング(ゴム組成物中の添加剤が析出する現象)を生じさせる。このブルーミングは、ゴムシート14から得られるゴム部材の粘着性を低下させる。この粘着性の低下は、予備成形工程でのローカバーの成形を阻害する。織り構造を備える端部6は、一枚のシート形状からものに比べて放熱性に優れる。この端部6は、ブルーミングの抑制に寄与する。
【実施例
【0045】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0046】
[比較例1]
従来のライナーと帯状のゴムシートとが準備された。このライナーは樹脂シートからなる。このライナーとゴムシートとが重ね合わされて、リールに巻回された。
【0047】
[実施例1]
図1に示されたライナーが準備された。このライナーは、比較例1のライナーを本体部とし、その長手方向両端に後述する比較例4のライナーが接続されていた。このライナーとゴムシートとが重ね合わされて、リールに巻回された。
【0048】
[比較例2]
比較例1と異なる別の従来のライナーが準備された。このライナーは、比較例1と異なる樹脂シートからなる。その他は実施例1と同様にして、ゴムシートがリールに巻回された。
【0049】
[比較例3]
本体部として比較例1のライナーを用い、端部として較例2のライナーを用いたライナーが準備された。比較例2のライナーは、比較例1のライナーに比べて、引張強さが小さい。その他は、実施例1と同様にして、ゴムシートがリールに巻回された。
【0050】
[比較例4]
実施例1の端部に用いられた材料からなるライナーが準備された。このライナーとゴムシートとが重ね合わされて、リールに巻回された。
【0051】
[波打ち評価]
これらのリールからゴムシートを繰り出して、ゴムシートの波打ちの発生が検査された。その結果が波打ちの発生率として、表1に示されている。この発生率は、小さいほど好ましい。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるように、実施例1のライナーでは、比較例1から3のライナーに比べて評価が高い。また、実施例1のライナーは、既存のライナーの端に伸び難い端部を接続することで、高い評価が得られている。本発明に係るライナーは、既存のライナーを活用して、波打ちの発生を抑制している。また、実施例1のライナーを用いたゴムシート巻回体の外径は、比較例4のゴムシート巻回体の外径より小さかった。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明されたライナーは、タイヤに使用されるゴムシートの巻き取りライナーとして、広く適用されうる。
【符号の説明】
【0055】
2・・・ライナー
4・・・本体部
6・・・端部
8・・・縦糸
10・・・横糸
12・・・布
14・・・ゴムシート
16・・・リール
18、20・・・ガイドローラ
22・・・軸
図1
図2
図3