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特許7140009自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20220913BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220913BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20220913BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20220913BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20220913BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20220913BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20220913BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C09K3/10 G
C08K3/013
C08K5/5415
C08K5/544
C08K5/541
C08L83/06
C08L83/08
C08K3/26
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019045709
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020147665
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 宜良
(72)【発明者】
【氏名】松澤 隆行
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-019794(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107033835(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107523257(CN,A)
【文献】特表2018-515634(JP,A)
【文献】特表2016-516101(JP,A)
【文献】特表2010-537015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K,C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :(A)成分中のケイ素原子に結合した水酸基と(B)成分とのモル比が1:3~1:11となる量、及び
【化1】
(式中、R1は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
(C)下記一般式(3)、(4)及び(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物 :0.1~10質量部
【化2】
(式中、R 3 、R 4 はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。R 6 は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R 7 はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR 7 中の芳香環に直結していない。R 8 はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基であり、R 9 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の2価炭化水素基であり、R 10 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の1価炭化水素基である。)
の反応混合物と、
(D)塩基性充填剤 :(A)成分100質量部に対して1~500質量部と、
(E)硬化触媒 :(A)成分100質量部に対して0.001~20質量部と
を含有する自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
反応混合物が、(A’)分子鎖末端が-O-CH(CH3)-C(=O)-O-R2(R2は上記と同じである。)で示される加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンを含む請求項1に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、
【化3】
(式中、R1は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
C’)下記一般式(2’)で示される窒素原子を含まない加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~10質量部、
【化4】
(式中、R3、R4はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、R5 は硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する官能性基で置換された炭素数1~10の置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
(D)塩基性充填剤 :1~500質量部、及び
(E)硬化触媒 :0.001~20質量部
を含有し、(B)成分の配合量が、(A)成分中のケイ素原子に結合した水酸基と(B)成分とのモル比が1:3~1:11となる量であることを特徴とする自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(C’)成分が、下記一般式で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化5】
(式中、R 3 、R 4 、bは上記と同じである。R 6 は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R 14 は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。)
【請求項5】
(D)成分の一部又は全部が、表面処理された炭酸カルシウムである請求項1~のいずれか1項に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
更に、(F)架橋密度向上剤を(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部含有する請求項1~のいずれか1項に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
(F)成分が、R11 3SiO1/2単位(式中、R11は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。)及びSiO4/2単位を含有し、SiO4/2単位に対するR11 3SiO1/2単位のモル比が0.6~1.2であって、ヒドロキシ基の含有量が0.7質量%未満である三次元網状構造のオルガノシロキサンレジンである請求項に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
(F)成分が、下記一般式(6)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物である請求項に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
12 4-cSi(OR13c (6)
(式中、R12はメチル基又はビニル基であり、R13は非置換又は置換アルキル基であり、cは3又は4である。)
【請求項9】
(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :(A)成分中のケイ素原子に結合した水酸基と(B)成分とのモル比が1:3~1:11となる量、及び
【化6】
(式中、R 1 は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R 2 は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
(C)下記一般式(3)、(4)及び(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物 :0.1~10質量部
【化7】
(式中、R 3 、R 4 はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。R 6 は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R 7 はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR 7 中の芳香環に直結していない。R 8 はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基であり、R 9 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の2価炭化水素基であり、R 10 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の1価炭化水素基である。)
を0~60℃で20~120分間混合して反応混合物を調製し、更に該反応混合物に、
(D)塩基性充填剤 :(A)成分100質量部に対して1~500質量部と、
(E)硬化触媒 :(A)成分100質量部に対して0.001~20質量部と
を混合することを特徴とする自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸エステル(2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル)を脱離可能な加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を硬化剤(架橋剤)として含有する、安全性、保存安定性、耐薬品性等に優れる自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン周辺のオイルシールでは、従来コルク、有機ゴム、アスベストなどで作られた耐油性のガスケット、パッキング材が使用されているが、これらは在庫管理及び作業工程が煩雑であり、更にはそのシール性能にも信頼性がない。そのため、この種の用途には室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物の硬化物を利用したFIPG(Formed In Place Gaskets)方式が採用され、作業性、密閉性、耐熱性の面で高い評価が得られている。
【0003】
室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物の縮合硬化タイプとしては、一般的に、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型等が知られており、各種用途で使用されている。脱アルコール型は他の硬化タイプに比べて硬化が遅く、保存安定性に問題がある。脱酢酸型や脱オキシム型は硬化性が比較的早いため、主に建材用シーリング材での使用例が多い。しかし、脱酢酸型は架橋中に不快である刺激臭である酸を放出し、更に金属を腐食する。また、脱オキシム型は一般的に架橋中にブタン-2-オン=オキシムを放出するが、これは発がん性の懸念がある。
【0004】
上記以外の他の硬化タイプとして、最近特許第5399392号公報(特許文献1)で、縮合反応により脱乳酸エステルタイプの室温硬化型(RTV)シリコーンゴム組成物が開示されている。該特許では、分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖されたジメチルポリシロキサンとエチルラクタートシランからなる室温硬化型(RTV)シリコーンゴム組成物が、従来の脱オキシムタイプ等と比較して人体健康面、環境面において優位であることが示されている。しかしながら、該特許では、当該シリコーンゴム組成物が建築用シーラントへの応用として構成されており、保存安定性や他用途への応用については触れられていない。また、特表2018-515634号公報(特許文献2)では、硬化触媒と接着促進剤の量を規定することにより保存安定性が向上することが開示されている。しかし、硬化触媒と接着促進剤の量を規定するだけでは、十分な保存安定性を満たすことはできなかった。
【0005】
一方、自動車のエンジン周辺のオイルシール材として用いられる室温硬化型シリコーンゴム組成物は、自動車用オイルに対する耐性を有することが必須である。油による該組成物の硬化物のゴム物性や接着性の低下は、シール部位からのオイル滲み、オイル漏れに繋がる。一般に、自動車用オイルには、極圧添加剤としてリン酸金属塩、亜リン酸金属塩等の酸性添加物が用いられており、その影響により該組成物の硬化物のゴム物性が劣化したり、密着性が低下したりする。そのため、該組成物には、酸性添加物の中和剤として通常、カルシウム、亜鉛、マグネシウム等の酸化物、水酸化物又は炭酸塩が添加されている。しかし、自動車用オイルは、ますます高性能化し、上記酸性添加物が増量されたり、前記の酸化物、水酸化物又は炭酸塩では中和できない硫黄又はモリブデン系化合物が添加されたり、省燃費化を目的として低粘度の基油が用いられたりしているため、前記中和剤を自動車用オイルに添加しただけでは、上記硬化物のゴム物性や接着性の低下を防止することはできなかった。
【0006】
この解決策として、特開昭57-076055号公報(特許文献3)、特許第2568406号公報(特許文献4)、特公昭61-023942号公報(特許文献5)に開示されている塩基性充填剤の使用が検討されている。また、特許第5902574号公報(特許文献6)、特開2015-067647号公報(特許文献7)では、特殊なシランカップリング剤の使用が開示されている。しかし、これらは耐薬品性に優れるものの、人体健康面については一切考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5399392号公報
【文献】特表2018-515634号公報
【文献】特開昭57-076055号公報
【文献】特許第2568406号公報
【文献】特公昭61-023942号公報
【文献】特許第5902574号公報
【文献】特開2015-067647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物では達成できなかった、人体や周辺環境への影響が低い、つまり安全性が高く、保存安定性に優れると共に、自動車用エンジンオイル(LLC)に含まれる各種の腐食性物質等に対する耐性等の耐薬品性に優れる自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、乳酸エステル(2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル)を脱離可能な加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を硬化剤(架橋剤)として用いることによって、安全性に優れる自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができることを見出した。更に主剤(ベースポリマー)であるジオルガノポリシロキサンの分子鎖末端を封鎖するシラノール基と架橋剤である乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を有する加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物とのモル比を特定の範囲に設定することにより保存安定性が向上することを見出した。また、分子鎖末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンと、乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を有する加水分解性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、アミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を事前に予備混合・反応して予め主剤(ベースポリマー)の分子鎖両末端のシラノール基を特定の加水分解性シリル基で封鎖する工程を経ることによって、従来の脱乳酸エステルタイプの室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物では達成できなかった、硬化性、接着性、作業性等の全ての特性に更に優れる組成物となり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、安全性が高く、保存安定性、耐薬品性に優れる、下記の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法を提供する。
[1]
(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :(A)成分中のケイ素原子に結合した水酸基と(B)成分とのモル比が1:3~1:11となる量、及び
【化1】
(式中、R1は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
(C)下記一般式(3)、(4)及び(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物 :0.1~10質量部
【化2】
(式中、R 3 、R 4 はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。R 6 は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R 7 はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR 7 中の芳香環に直結していない。R 8 はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基であり、R 9 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の2価炭化水素基であり、R 10 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の1価炭化水素基である。)
の反応混合物と、
(D)塩基性充填剤 :(A)成分100質量部に対して1~500質量部と、
(E)硬化触媒 :(A)成分100質量部に対して0.001~20質量部と
を含有する自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[2]
反応混合物が、(A’)分子鎖末端が-O-CH(CH3)-C(=O)-O-R2(R2は上記と同じである。)で示される加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンを含む[1]に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、
【化3】
(式中、R1は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
C’)下記一般式(2’)で示される窒素原子を含まない加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~10質量部、
【化4】
(式中、R3、R4はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、R5 は硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する官能性基で置換された炭素数1~10の置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
(D)塩基性充填剤 :1~500質量部、及び
(E)硬化触媒 :0.001~20質量部
を含有し、(B)成分の配合量が、(A)成分中のケイ素原子に結合した水酸基と(B)成分とのモル比が1:3~1:11となる量であることを特徴とする自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

(C’)成分が、下記一般式で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である[3]に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化5】
(式中、R 3 、R 4 、bは上記と同じである。R 6 は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R 14 は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。)

(D)成分の一部又は全部が、表面処理された炭酸カルシウムである[1]~[]のいずれかに記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

更に、(F)架橋密度向上剤を(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部含有する[1]~[]のいずれかに記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

(F)成分が、R11 3SiO1/2単位(式中、R11は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。)及びSiO4/2単位を含有し、SiO4/2単位に対するR11 3SiO1/2単位のモル比が0.6~1.2であって、ヒドロキシ基の含有量が0.7質量%未満である三次元網状構造のオルガノシロキサンレジンである[]に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

(F)成分が、下記一般式(6)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物である[]に記載の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
12 4-cSi(OR13c (6)
(式中、R12はメチル基又はビニル基であり、R13は非置換又は置換アルキル基であり、cは3又は4である。)
[9]
(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :(A)成分中のケイ素原子に結合した水酸基と(B)成分とのモル比が1:3~1:11となる量、及び
【化16】
(式中、R 1 は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R 2 は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
(C)下記一般式(3)、(4)及び(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物 :0.1~10質量部
【化17】
(式中、R 3 、R 4 はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。R 6 は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R 7 はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR 7 中の芳香環に直結していない。R 8 はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基であり、R 9 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の2価炭化水素基であり、R 10 はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の1価炭化水素基である。)
を0~60℃で20~120分間混合して反応混合物を調製し、更に該反応混合物に、
(D)塩基性充填剤 :(A)成分100質量部に対して1~500質量部と、
(E)硬化触媒 :(A)成分100質量部に対して0.001~20質量部と
を混合することを特徴とする自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、安全性が高く、保存安定性、耐薬品性に優れるシリコーンゴム硬化物を与えるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、及び
【化6】
(式中、R1は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
(C)下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物
【化7】
(式中、R3、R4はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、R5は窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する官能性基で置換された炭素数1~10の置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
の反応混合物と、
(D)塩基性充填剤と、
(E)硬化触媒と
を特定割合で含有してなるものである。
【0013】
また、本発明においては、上記組成物(以降、これを組成物[I]とする)の実施態様に加えて、更に上記(A)~(E)成分を単に均一に混合した実施態様、即ち、
(A)分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン、
(B)上記一般式(1)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、
(C)上記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、
(D)塩基性充填剤、及び
(E)硬化触媒
を特定割合で含有してなる自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(以降、これを組成物[II]とする)も用いることができる。
【0014】
組成物[I]
[(A)成分]
(A)成分は、分子鎖末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖されたジオルガノポリシロキサンであり、本発明の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主剤(ベースポリマー)である。該ジオルガノポリシロキサンの分子構造は特に制限されるものでなく、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよいが、好ましくは、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなり、分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。該直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、分岐構造を少量有していてもよい。また、該ジオルガノポリシロキサンは分子鎖中(特には、分子鎖両末端のシラノール基と主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位の繰返し構造との連結部等)にシルアルキレン構造(-SiRSi-)などを有するものであってもよい。前記Rは、炭素数1~20、好ましくは炭素数2~6の2価炭化水素基(例えば、直鎖状又は分岐状のアルキレン基等)である。また、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、又はシアノ基で置換されているものであってもよい。
なお、ケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)は、通常、ヒドロキシ(ジメチル)シロキシ基、ヒドロキシ(ジフェニル)シロキシ基、ヒドロキシ(メチルフェニル)シロキシ基などのヒドロキシ(ジオルガノ)シロキシ基等の形態で分子鎖末端に存在することが好ましい。
【0015】
ここで、ジオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合する水酸基以外の有機基としては、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又は置換の1価炭化水素基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基などである。これらの中では、特にメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が好ましい。これらは同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0016】
該(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が20~1,000,000mPa・s、好ましくは100~300,000mPa・s、更に好ましくは1,000~200,000mPa・s、特に10,000~100,000mPa・sであるものがよい。ジオルガノポリシロキサンの粘度が上記下限値(20mPa・s)未満であると、硬化物に十分な機械特性が得られない場合がある。また、ジオルガノポリシロキサンの粘度が上記上限値(1,000,000mPa・s)超では、作業性が低下するので、好ましくない。なお、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)などによって測定した値である。
【0017】
また、(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、上記と同様な理由で、該ジオルガノポリシロキサンの主鎖を構成する2価のジオルガノシロキサン単位の繰り返し数(又は重合度)が、通常、20~2,000、好ましくは50~1,500、より好ましくは100~1,200、更に好ましくは200~1,000程度であることが望ましい。なお、本発明において、重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0018】
上記(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、従来公知の方法で製造することができる。該ジオルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に、分子鎖両末端にヒドロキシシリル基を有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンを(A)成分100質量部中に10~100質量部となる量で含有することが好ましく、50~100質量部となる量で含有することが更に好ましい。
【0019】
[(B)成分]
(B)成分は、下記一般式(1)で示される、一分子中に-O-CH(CH3)-C(=O)O-R2(R2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基)で示される乳酸エステル(2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル)を脱離可能な加水分解性基を3個又は4個有する加水分解性(オルガノ)シラン化合物(即ち、ラクタートシラン化合物)及び/又はその部分加水分解縮合物であり、本発明の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化剤(架橋剤)として作用する。
【化8】
(式中、R1は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、R2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、aは3又は4である。)
【0020】
上記式(1)中、R1は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、メチル基、エチル基、ビニル基が好ましい。
aは3又は4であり、特には3が好ましい。
【0021】
2は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、これらの中ではエチル基が好ましい。
ここで、-O-CH(CH3)-C(=O)O-R2で示される乳酸エステル(2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル)を脱離可能な加水分解性基としては、例えば、2-ヒドロキシプロピオン酸メチルエステル基、2-ヒドロキシプロピオン酸エチルエステル基、2-ヒドロキシプロピオン酸プロピルエステル基、又は2-ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルエステル基である。好ましくは2-ヒドロキシプロピオン酸エチルエステル基(乳酸エチル基)である。
【0022】
(B)成分の加水分解により生成する2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステルのうち、2-ヒドロキシプロピオン酸エチルエステルは食品添加物にも使用され、人や動物に対して無害である。
また、式(1)のメチル基が結合しているメチン炭素は不斉中心となり得るが、(R)体、(S)体、ラセミ体のいずれであっても構わない。
【0023】
(B)成分の具体例としては、メチルトリス(エチルラクタート)シラン、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン、エチルトリス(エチルラクタート)シラン、n-プロピルトリス(エチルラクタート)シラン、n-ブチルトリス(エチルラクタート)シラン、メチルトリス(メチルラクタート)シラン、ビニルトリス(メチルラクタート)シラン、エチルトリス(メチルラクタート)シラン、n-プロピルトリス(メチルラクタート)シラン、n-ブチルトリス(メチルラクタート)シラン、メチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、ビニルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、エチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、n-プロピルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、n-ブチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン等の化合物並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。
これらの中では、メチルトリス(エチルラクタート)シラン、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン、メチルトリス(メチルラクタート)シラン、ビニルトリス(メチルラクタート)シランが好ましく、メチルトリス(エチルラクタート)シラン、ビニルトリス(エチルラクタート)シランが特に好ましい。
【0024】
なお、本発明において、「部分加水分解縮合物」とは、原料の加水分解性オルガノシラン化合物を部分的に加水分解縮合して生成する、分子中に残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する(以下、同じ)。
【0025】
(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(B)成分は、(A)成分中の水酸基(シラノール基)に対してモル比で3~11倍、好ましくは4~10倍、即ち、(A)成分中のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)に対する(B)成分のモル比が1:3~1:11、好ましくは1:4~1:10となる比率で添加する。通常、組成物中には水分が微量含まれ、架橋剤が消費される。更に自動車オイルシール用組成物では塩基性充填剤を多量に配合する必要があるが、これらの充填剤にも水分を0.1質量%以上含有するため、より多くの架橋剤が消費されることになる。そのため、(A)成分中の水酸基(シラノール基)に対して(B)成分はモル比で3倍以上必要となる。それよりも少ないと十分な保存安定性が得られない。また、(A)成分の水酸基に対して(B)成分がモル比で11倍を超えると得られる硬化物は機械特性が低下し易く、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化速度も遅くなるなどの欠点がある。
【0026】
[(C)成分]
(C)成分は、下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物であり、本発明の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の接着向上剤として作用する重要な効果を発揮する化合物である。
【化9】
(式中、R3、R4はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、R5は窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する官能性基で置換された炭素数1~10の置換1価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
【0027】
上記式(2)中、R3、R4はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、上記式(1)のR1における非置換の1価炭化水素基と同様のものが例示できる。これらの中でも、R3としてはメチル基、エチル基が好ましく、R4としてはメチル基、エチル基が好ましい。
【0028】
また、R5は窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する官能性基で置換された炭素数1~10の置換1価炭化水素基である。具体的には、例えば、下記に示すものが例示できる。
-R6NH2
-R6NHR7NH2
-R8-N=R9
-R8-NH-R10
【化10】
-R6OC(=O)C(CH3)=CH2
-R6OC(=O)CH=CH2
-R6SH
-R6C(=O)OSiR14 3
(式中、R6は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R7はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR7中の芳香環に直結していない。R8はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基であり、R9はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の2価炭化水素基であり、R10はその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の1価炭化水素基であり、R14は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。)
【0029】
ここで、R6は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の2価炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基とが結合した基などが挙げられるが、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
【0030】
また、R7はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、フェニレン基(-C64-)と、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1~4のアルキレン基とが結合した基が好ましく、例えば下記で示されるものが挙げられる。
-CH2-C64
-CH2-C64-CH2
-CH2-C64-CH2-CH2
-CH2-C64-CH2-CH2-CH2
-CH2-CH2-C64
-CH2-CH2-C64-CH2
-CH2-CH2-C64-CH2-CH2
-CH2-CH2-CH2-C64
-CH2-CH2-CH2-C64-CH2
これらの中で、特に好ましくは-CH2-C64-CH2-である。
【0031】
8は酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1~10、特には炭素数1~6の、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等又はこれらが組み合わされた基などの非置換又は置換の2価炭化水素基である。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基が結合した基、ケトン、エステル、アミド等が介在した上記アルキレン基などが挙げられるが、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、アミド結合を介したプロピレン基等であり、特に好ましくはプロピレン基である。
【0032】
9はその構造中に窒素原子を2個以上、好ましくは2~5個、より好ましくは2~4個含む炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10の2価炭化水素基であり、例えば、下記式
(R15 2N)2C=
(式中、R15は独立に、水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基もしくはアリール基である。)
で示されるN-置換又は非置換のグアニジル基等の強塩基性を示すものなどが挙げられる。
【0033】
ここで、上記式中のR15はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0034】
また、R10はその構造中に窒素原子を2個以上、好ましくは2~5個、より好ましくは2~4個含む炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10の1価炭化水素基であり、例えば、下記式
【化11】
で示される1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エンの部分構造からなる基などが挙げられる。なお、上記式において、波線部は、窒素原子との結合部位である。
【0035】
14は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換1価炭化水素基であり、上記式(1)のR1における非置換の1価炭化水素基と同様のものが例示できる。これらの中でも、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。
【0036】
(C)成分の加水分解性オルガノシラン化合物は、分子中に、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する官能性基で置換された1価炭化水素基とアルコキシ基等の複数の加水分解性基とを有する官能性基含有加水分解性シラン化合物、いわゆるカーボンファンクショナルシラン(又はシランカップリング剤)であり、このシランカップリング剤の具体例としては、数多くのシランカップリング剤を例示することが可能であるが、その中でも特に、下記一般式で示される窒素原子を含むアミノ基含有シランカップリング剤を使用すると、良好な接着性を得ることができる。また、これらは1種類に限定されず、2種類以上を同時に使用してもよい。
【0037】
【化12】
(式中、R3、R4、R6~R10、bは上記と同じである。)
【0038】
また、(C)成分は、(A)成分の末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンの末端封鎖触媒としても効果を発揮する化合物である。この場合、下記一般式(3)又は(4)、(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらは組成物[I]に配合することが特に好ましい。
【化13】
(式中、R3~R10、bは上記と同じである。)
【0039】
まず、一般式(3)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物において、このアミノ基含有加水分解性オルガノシランは、1級と2級アミンの間に芳香環を含み、更に少なくとも一方が芳香環に直結していない構造をしており、詳しくは特開平5-105689号公報に記載されている。
【0040】
次に、一般式(4)及び(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、1分子中に窒素原子を3個以上、好ましくは3~6個、より好ましくは3~5個含み、末端封鎖触媒機能を発現する1価又は2価の塩基性部位(R9又はR10)を有するアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物である。
【0041】
また、(C)成分は、窒素原子を含まないシラン化合物又はその部分加水分解物を用いることにより、耐薬品性が向上する。このような窒素原子を含まないシラン化合物としては、下記一般式で示されるエポキシ基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、カルボン酸シリルエステル基を含有する加水分解性シランカップリング剤が挙げられる。
【化14】
(式中、R3、R4、R6、R14、bは上記と同じである。)
これらは1種類に限定されず、2種類以上を同時に使用してもよい。
【0042】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。配合量が少なすぎると、硬化物の接着性が低下する。多すぎると得られる組成物の耐薬品性が低下する。
【0043】
[(A)~(C)成分の反応混合物]
本発明の組成物[I]の実施態様では、上記(A)成分と(B)成分とを、末端封鎖の触媒としての(C)成分の存在下に反応させた反応混合物を用いる。
ここで、反応混合物の調製方法としては、上記(A)、(B)及び(C)成分を上述した配合割合で混合し、反応させる。反応条件としては、通常、0~60℃、好ましくは10~40℃の温度範囲で、10~120分、好ましくは20~90分の混合時間とすることができる。
【0044】
これにより、(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A)成分中の分子鎖末端のシラノール基が、-O-CH(CH3)-C(=O)O-R2(R2は上記と同じ)で示される乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン、より具体的には、(A)成分中の分子鎖末端のシラノール基が、-Si(R13-a’(O-CH(CH3)-C(=O)O-R2a’(R1、R2は上記と同じ。a’は2又は3である。)で示される加水分解性シリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン)である(A’)成分と、(B)成分の残部と、(C)成分を含む反応混合物が得られる。
【0045】
上記(A)成分と(B)成分との反応生成物である(A’)成分は、分子鎖末端が、-O-CH(CH3)-C(=O)-O-R2(R2は上記と同じ。)で示される加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンであり、例えば、下記一般式(7)で示される化合物を例示することができる。
【化15】
(式中、R1、R2は上記と同じである。R16は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、dは10以上の整数であり、a’は2又は3である。)
【0046】
上記式(7)中、R16は独立に炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基などである。これらの中では、特にメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が好ましい。R16は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0047】
また、dは10以上(通常、10~5,000)、好ましくは50~3,000、より好ましくは100~2,000程度の整数であり、また該ジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が25~100,000mPa・sの範囲、好ましくは500~80,000mPa・sの範囲となる整数であることが好ましい。
【0048】
この(A’)成分は、本発明の組成物[I]中、25~75質量%、好ましくは30~70質量%、より好ましくは35~65質量%含有することが望ましい。
【0049】
[(D)成分]
(D)成分の塩基性充填剤は、本組成物の耐薬品性を向上させると共にゴム物性を付与するための補強性、非補強性充填剤を指す。種類としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、微粒子状アルミナなどが挙げられ、炭酸カルシウムや炭酸亜鉛、酸化マグネシウムが好ましい。また、表面は、処理の有無によらず、使用できる。表面処理剤としては、脂肪酸類、パラフィン類、シラン類、シラザン類、低重合度シロキサン類、有機化合物などが使用できる。
【0050】
予め表面処理された塩基性充填剤を使用してもよく、また本組成物の製造時に処理してもよい。本組成物の特性を維持するためには、処理時の副生成物及び触媒などが本組成物中に実質的に残留しないようにすることも重要である。
【0051】
(D)成分は、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(D)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して1~500質量部の範囲、好ましくは5~300質量部の範囲で使用される。多すぎると組成物の粘度が上がりすぎて混合及び施工時の作業性が悪くなるおそれがあり、また、少なすぎると十分な耐薬品性、硬化後のゴム物性が得られないため、使用用途に適さない。
【0052】
[(E)成分]
(E)成分の硬化触媒は、錫、チタン、ジルコニウム、鉄、アンチモン、ビスマス、マンガン等の金属の有機カルボン酸塩、アルコキサイド;有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物が例示され、より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートエステル、ジメチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジネオデカノエート、スタナスオクトエート等の錫化合物;テトラブチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタン化合物などが例示される。本発明組成物の速硬化性や深部硬化性などの硬化特性が優れることから、有機錫化合物を添加することが好ましく、中でも、ジアルキル錫ジアルコキサイド、ジアルキル錫ジカルボン酸塩であることが好ましい。
【0053】
(E)成分は、同一であっても異種のものであってもよく、また、1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。
(E)硬化触媒の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.001~20質量部、好ましくは0.01~5質量部、特に好ましくは0.05~3質量部である。0.001質量部未満では、得られる組成物において十分な架橋性が得られない。20質量部を超えると、組成物の硬化が速すぎるため、組成物塗布後の作業時間が短くなったり、機械特性が低下したりする。
【0054】
[(F)成分]
本発明の組成物には、必要に応じて、架橋密度向上剤(耐薬品性向上剤)として作用し、耐薬品性向上に寄与する(F)成分を任意成分として含有させることができる。
【0055】
この(F)成分としては、例えば、R11 3SiO1/2単位(式中、R11は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基であり、上述したR1における非置換の1価炭化水素基と同様のものが例示できる。)及びSiO4/2単位を含有し、SiO4/2単位に対するR11 3SiO1/2単位のモル比が0.6~1.2であって、ヒドロキシ基の含有量が0.7質量%未満である三次元網状構造のオルガノシロキサンレジンを配合することが好ましい。
【0056】
また、(F)成分の架橋密度向上剤(耐薬品性向上剤)としては、下記一般式(6)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を用いることもできる。
12 4-cSi(OR13c (6)
(式中、R12はメチル基又はビニル基であり、R13は非置換又は置換アルキル基であり、cは3又は4である。)
【0057】
上記式(6)中、R13は非置換又は置換アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基等の非置換アルキル基や、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシ置換アルキル基などの、炭素数1~4程度のものが挙げられ、(F)成分の加水分解性基(OR13)としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基等の非置換アルコキシ基や、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基などの、炭素数1~4程度の非置換又は置換アルコキシ基が挙げられるが、その中でもメトキシ基がより好ましい。
【0058】
上記式(6)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物の部分加水分解縮合物は、25℃における比重が1.04~1.25の範囲内であることが好ましく、特に1.06~1.10の範囲内がより好ましい。25℃における比重が1.04以上であれば、十分な速硬化性と耐薬品性を付与することができ、目的とするゴム弾性を有する組成物となる。また、25℃における比重が1.25以下であれば、架橋点が適度であるため、得られるゴム物性の機械特性が低下するおそれがなく好ましい。
【0059】
(F)成分を配合する場合、その添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部の範囲であり、好ましくは2~40質量部の範囲である。添加量が少なすぎると添加効果が得られず、多すぎると硬化が遅くなったり、十分なゴム物性が得られないおそれがある。
【0060】
[その他の成分]
本発明においては、前記の(A)~(F)成分に加えて、その他の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、公知の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、補強剤として(D)成分以外の煙霧質シリカ、沈降性シリカ、石英粉末、炭素粉末等、ウェッターやチキソトロピー向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としての非反応性ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン等が挙げられる。
更に、必要に応じて、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、ブリードオイルとしての非反応性フェニルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加してよい。
【0061】
[組成物[I]の製造]
組成物[I]は、上記(A)、(B)、(C)成分の反応混合物に、(D)、(E)成分、任意に(F)成分、その他の成分を混合、好ましくは乾燥雰囲気(実質的に湿分の不存在)下において均一に混合することにより製造できる。
【0062】
組成物[II]
[(A)~(F)成分]
組成物[II]の実施態様に用いられる(A)~(F)成分は、上述した組成物[I]の(A)~(F)成分で例示したものと同様のものが例示できるが、(C)成分としては、窒素原子を含まないシラン化合物又はその部分加水分解物を用いることがより好ましい。
また、(A)~(F)成分の使用割合は、上記組成物[I]の配合量と同様である。なお、(A)成分は、本発明の組成物[II]中、25~75質量%、好ましくは30~70質量%、より好ましくは35~65質量%含有することが望ましい。
【0063】
[その他の成分]
組成物[II]には、前記の(A)~(F)成分に加えて、その他の添加剤を配合してもよい。その他の添加剤としては、上述した組成物[I]で例示したものと同様のものが例示できる。
【0064】
[組成物[II]の製造]
本発明の組成物[II]は、上記(A)~(E)成分、任意に(F)成分、その他の成分を混合、好ましくは乾燥雰囲気(実質的に湿分の不存在)下において均一に混合することにより製造できる。
【0065】
本発明の自動車オイルシール用室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物[I]、[II])は、湿分を避けた雰囲気で保存することができ、これを室温(23℃±10℃)に放置することにより、空気中の水分存在下で通常5分~1週間で硬化する。
【0066】
上記で得られた脱乳酸エステルタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、安全性、保存安定性、耐薬品性等の全ての特性に優れることから、自動車オイルシール用として好適に用いることができる。
【実施例
【0067】
以下、本発明を具体的に説明する実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、粘度は25℃における回転粘度計の測定値を示す。また、常温は23℃±10℃を、常圧は0.1MPaを意味する。なお、下記の例において「1質量部」は「1g」に相当する。
【0068】
[実施例1]
25℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(水酸基濃度;0.0044モル/100g)100質量部と、ビニルトリス(エチルラクタート)シランをジメチルポリシロキサンの水酸基に対して4倍モルになる7質量部と、(A)成分の末端封鎖触媒として下記式(8)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン2.5質量部を常温・常圧下にて60分混合して、分子鎖両末端がビニルビス(エチルラクタート)シリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンを含有する反応混合物を調製した。次いで、該反応混合物に、表面が脂肪酸で処理された重質炭酸カルシウム80質量部と表面が脂肪酸で処理されたコロイダル炭酸カルシウム20質量部、及び煙霧質シリカ10質量部を減圧下(0.08MPa以下、以下同様。)にて30分混合した。減圧混合後、ジオクチル錫ジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧下にて15分混合して組成物1を得た。
2N-CH2-C64-CH2-NH-C36-Si(OCH33 (8)
【0069】
[実施例2]
25℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(水酸基濃度;0.0044モル/100g)100質量部、表面が脂肪酸で処理された重質炭酸カルシウム80質量部と表面が脂肪酸で処理されたコロイダル炭酸カルシウム20質量部、及び煙霧質シリカ10質量部を減圧下にて30分混合した。次いでビニルトリス(エチルラクタート)シランをジメチルポリシロキサンの水酸基に対して5倍モルになる9質量部とジオクチル錫ジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧下にて30分混合した。減圧混合後、下記式(9)で示される加水分解性オルガノシラン1質量部を加え、更に減圧下にて15分混合して組成物2を得た。
(H3CO)3SiC36C(=O)OSi(CH33 (9)
【0070】
[実施例3]
25℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(水酸基濃度;0.0044モル/100g)100質量部と、ビニルトリス(エチルラクタート)シランをジメチルポリシロキサンの水酸基に対して5倍モルになる9質量部と、(A)成分の末端封鎖触媒として式(8)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン2.5質量部を常温・常圧下にて60分混合して、分子鎖両末端がビニルビス(エチルラクタート)シリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンを含有する反応混合物を調製した。次いで、該反応混合物に、架橋密度向上剤としてSiO4/2単位に対する(CH33SiO1/2単位のモル比が0.7、ヒドロキシシリル基を0.6質量%未満有するオルガノシロキサン15質量部を加え、減圧下にて15分混合した。次いで表面が脂肪酸で処理された重質炭酸カルシウム80質量部と表面が脂肪酸で処理されたコロイダル炭酸カルシウム20質量部、及び煙霧質シリカ10質量部を減圧下にて30分混合した。減圧混合後、ジオクチル錫ジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧下にて15分混合して組成物3を得た。
【0071】
[実施例4]
実施例3の架橋密度向上剤をメチルトリメトキシシランの4量体と5量体を主体とした加水分解混合物2.0質量部に変えた以外は、実施例3と同様の条件にて調製し、組成物4を得た。
【0072】
[実施例5]
実施例1のビニルトリス(エチルラクタート)シランをジメチルポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基量に対して10倍モルになる18.0質量部添加した以外は、実施例1と同様の条件にて調製し、組成物5を得た。
【0073】
[比較例1]
実施例1のビニルトリス(エチルラクタート)シランをジメチルポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基量に対して2.5倍モルになる4.5質量部添加した以外は、実施例1と同様の条件にて調製し、組成物6を得た。
【0074】
[比較例2]
実施例1の表面が脂肪酸で処理された重質炭酸カルシウムと表面が脂肪酸で処理されたコロイダル炭酸カルシウムを除いた以外は、実施例1と同様の条件にて調製し、組成物7を得た。
【0075】
[比較例3]
実施例1のアミノ基含有加水分解性オルガノシランを除いた以外は、実施例1と同様の条件にて調製し、組成物8を得た。
【0076】
[比較例4]
実施例1のビニルトリス(エチルラクタート)シランをジメチルポリシロキサンの水酸基に対して14倍モルになる25質量部添加した以外は、実施例1と同様の条件にて調製し、組成物9を得た。
【0077】
調製した組成物1~9を用いて、以下の特性を確認した。
[試験方法]
上記実施例、比較例で得られた組成物1~9を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生して2mm厚のゴムシートを得た。JIS K 6249に準じて2mm厚のゴムシートよりゴム物性(硬さ、切断時伸び、引張強さ)を測定した。
【0078】
また、この組成物より、幅25mm、長さ100mmの被着体(アルミニウム)を用いて接着面積2.5mm2、接着厚さ1mmの剪断接着試験体を作製し、23℃、50%RHで7日間養生した後に測定を行い、剪断接着力を確認した。
【0079】
組成物1~9の粘度はJIS K 2220に準拠して測定した。
【0080】
硬化速度試験は、内径が10mmのガラスシャーレに組成物1~9をそれぞれ充填し、23℃、50%RH×1日後に空気に触れた部分から硬化した厚さを測定した。
【0081】
保存劣化試験は、得られた組成物1~9を密封条件下、未硬化状態にて70℃×7日間放置し、その後、製造初期の測定方法と同様にして粘度と硬化速度を測定した。
【0082】
また、得られた2mm厚のゴムシートは、耐薬品性能を確認するため、エンジンオイルに浸漬したまま120℃にて10日間劣化させ、耐薬品性の確認試験を行った。耐薬品性の確認試験は、製造初期の測定方法と同様にして硬さ、切断時伸び、引張強さ、剪断接着力を測定した。
【0083】
実施例の結果を表1、比較例の結果を表2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1の結果から、実施例1~5は、保存安定性、耐薬品性に優れる結果であった。一方、表2の結果から、比較例1は、オルガノポリシロキサンの水酸基に対する硬化剤のモル比が本発明の範囲外で低く、70℃×7日後の粘度上昇が大きく保存安定性が低く、比較例2は、塩基性充填剤を添加していないため、保存安定性に優れるが耐薬品性が低い結果であった。また、比較例3では、(C)成分を添加していないため、自動車オイルシール用として重要な接着性に劣り、比較例4は、オルガノポリシロキサンの水酸基に対する硬化剤のモル比が本発明の範囲外で高く、硬化速度や伸びが低くなり、自動車オイルシール用としては使用できない組成物となる。