(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】果菜類植物及び果樹栽培管理装置、学習装置、果菜類植物及び果樹栽培管理方法、学習モデル生成方法、果菜類植物及び果樹栽培管理プログラム及び学習モデル生成プログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20220913BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20220913BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2019184104
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細見 心一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昌
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】宮浦 宏之
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-299351(JP,A)
【文献】特開平11-313594(JP,A)
【文献】特開2016-101117(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報と、
前記果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する情報である計画栽培評価指標情報と、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴とを学習した学習モデルを用いて、前記環境状態情報及び前記計画栽培評価指標情報の入力に対して、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定し
出力部に出力する演算部と、
前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理装置。
【請求項2】
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報と、
前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する作業履歴情報と、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴とを学習した学習モデルを用いて、前記環境状態情報及び前記作業履歴情報の入力に対して、前記果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を
出力部に出力する演算部と、
前記果菜類植物又は果樹の前記予測栽培評価指標を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理装置。
【請求項3】
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する学習用環境状態情報を取得する学習用環境状態情報取得部と、
前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する学習用作業履歴情報を
取得する学習用作業履歴情報取得部と、
前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標に関する学習用栽培評価指標情報を取得する学習用栽培評価指標取得部と、
前記学習用環境状態情報、前記学習用作業履歴情報及び前記学習用栽培評価指標情報を少なくとも含む学習データを学習させて、前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態情報及び予め計画された栽培評価指標情報の入力に対して、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定し出力する学習モデルを生成する学習処理部と、
を備えたことを特徴とする学習装置。
【請求項4】
コンピュータが、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する情報である計画栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の前記栽培評価指標と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記環境状態と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記計画栽培評価指標情報に基づいて、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定するステップと、
を実行することを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理方法。
【請求項5】
コンピュータが、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する作業履歴情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記作業履歴情報に基づいて、前記果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力するステップと、
を実行することを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理方法。
【請求項6】
コンピュータが、
果菜類植物又は果樹を栽培した際の栽培評価指標に関する学習用栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する学習用環境状態情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する学習用作業履歴情報を取得するステップと、
前記学習用栽培評価指標情報、前記学習用環境状態情報及び前記学習用作業履歴情報を少なくとも含む学習データを学習させて、前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報及び該果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する情報である計画栽培評価指標情報に基づいて、前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する学習モデルを生成するステップと、
を実行することを特徴とする学習モデル生成方法。
【請求項7】
前記学習モデルを生成するステップは、前記環境状態情報を環境の状態とし、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を環境に対する行動とし、前記栽培評価指標を報酬とする強化学習により該学習モデルを生成するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の学習モデル生成方法。
【請求項8】
コンピュータに、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する計画栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の前記栽培評価指標と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記環境状態と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記計画栽培評価指標情報に基づいて、前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業を決定するステップと、
を実行させることを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する作業履歴情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該
栽培された前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記作業履歴情報に基づいて、前記果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力するステップと、
を実行させることを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
果菜類植物又は果樹を栽培した際の栽培評価指標に関する学習用栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する学習用環境状態情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は
果樹に対する作業の履歴に関する学習用作業履歴情報を取得するステップと、
前記学習用栽培評価指標情報、前記学習用環境状態情報、前記学習用作業履歴情報を少なくとも含む学習データを学習させて、前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報及び該果菜類植物の予め計画された栽培評価指標に関する情報である計画栽培評価指標に基づいて、前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する学習モデルを生成するステップと、
を実行させることを特徴とする学習モデル生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜類植物及び果樹栽培管理装置、学習装置、果菜類植物及び果樹栽培管理方法、学習モデル生成方法、果菜類植物及び果樹栽培管理プログラム及び学習モデル生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の栽培を管理する方法として、特許文献1には、将来の気象条件と、ユーザが作業計画テーブルに登録した作業計画と、圃場条件の算出式に基づいて、圃場条件を算出し、予測開始時日から予測対象日までの期間における圃場条件から予測モデルを用いて、予測対象日における予測対象作付の生育状況を算出する技術が提案されている。ここでは、このようにして得られた予測生育状況を評価する指標の取り得る範囲である予測生育範囲が、農作物の生育が成功であるか否かを判断する基準である管理可能範囲内に含まれているか否かにより、予想対象作付が、ユーザが望むような生育状況になるか否かを示している。
【0003】
しかし、上述のような従来技術では、ユーザが登録した作業計画テーブルに基づいて栽培を行った場合に、ユーザが望むような生育状況となるか否かという結果が示されるが、ユーザが望むような生育状況にならない場合に、作業計画をどのように変更すればよいかを指示するものではなかった。
【0004】
また、トマトやイチゴやメロン等の草本植物の果実も含む果菜類植物の栽培では、単に植物自体が大きく育てばよいというわけではなく、果実の収穫個数に加えて各果実に栄養がいきわたり味の良い果実にすることが求められるなど複雑なパラメータがあり、その栽培は難しい。このような果菜類植物をユーザが望むように生育するためにはさらに複雑な栽培が必要であるが、従来技術ではこのような複雑な栽培を対象としていない。そのため、作業計画通りに作業をしてもユーザが望むような生育状況にならない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、適切な作業指示が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報と、
前記果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する計画栽培評価指標情報と、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、前記環境状態情報及び前記計画栽培評価指
標情報の入力に対して、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定し出力する演算部と、
前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする果菜類及び果樹植物栽培管理装置である。
【0008】
本発明では、栽培された果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、環境状態情報及び計画栽培評価指標情報の入力に対して、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹に対する作業を決定し出力する。従って、本発明の果菜類及び果樹栽培管理装置によれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する作業履歴を考慮した学習モデルにより、形態変更作業を含む作業が決定されて出力されるので、適切な作業指示が可能となる。
【0009】
ここでは、環境状態情報とは、栽培対象である植物が置かれた環境の状態に関する情報である。環境状態情報としては、温度、湿度、照度等を含んでもよいがこれらに限られない。作業履歴情報とは、形態変更作業のように作業量を連続値で表せない作業を含む作業の履歴を含んだ情報である。形態変更作業とは、栽培される果菜類植物又は果樹の形態を変更し、若しくは該果菜類植物又は果樹の形態と要素又は組織とをともに変更する作業であり、摘芽、摘葉、摘花、摘芯、摘果、摘株、除草等の摘除や誘引を含む。栽培評価指標とは、果菜類植物又は果樹の栽培結果を評価するための指標であり、果菜類植物又は果樹を栽培した結果として得られた収穫量に関する情報である収穫量を含む。栽培評価指標としては、糖度、糖酸比、単果重、葉面積(leaf area)、茎の太さなどを用いることがで
きるが、これらに限られない。
【0010】
また、本発明は、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報と、
前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する作業履歴情報と、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴とを学習した学習モデルを用いて、前記環境状態情報及び前記作業履歴情報の入力に対して、前記果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力する演算部と、
前記果菜類植物又は果樹の前記予測栽培評価指標を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理装置である。
【0011】
本発明では、栽培された果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業履歴を学習した学習モデルを用いて、環境状態情報及び作業履歴情報の入力に対して、果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力する。従って、本発明の果菜類植物及び果樹栽培管理装置によれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する作業履歴を考慮した学習モデルにより、予測栽培評価指標が出力されるので、精度の高い栽培評価指標の予測が可能となる。
【0012】
また、本発明は、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する学習用環境状態情報を取得する学習用環境状態情報取得部と、
前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する学習用作業履歴情報を
取得する学習用作業履歴情報取得部と、
前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標に関する学習用栽培評価指標情報を取得する学習用栽培評価指標取得部と、
前記学習用環境状態情報、前記学習用作業履歴情報及び前記学習用栽培評価指標情報を少なくとも含む学習データを学習させて、前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態情報及び予め計画された栽培評価指標情報の入力に対して、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定し出力する学習モデルを生成する学習処理部と、
を備えたことを特徴とする学習装置である。
【0013】
本発明では、学習用環境情報、学習用作業履歴情報及び学習用栽培評価指標情報を含む学習データを学習させて学習モデルを生成する。従って、本発明の学習装置によれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する人の作業による介入を考慮した学習モデルを生成することができる。
【0014】
ここでは、学習用環境状態情報とは、学習モデルを学習させるための学習データとして用いられる環境情報である。学習用作業履歴情報とは、学習モデルに学習させるための学習データとして用いられる作業履歴情報である。学習用栽培評価指標情報とは、学習モデルを学習させるための学習データとして用いられる栽培評価指標情報である。
【0015】
また、本発明は、
コンピュータが、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する計画栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の前記栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記計画栽培評価指標情報に基づいて、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定するステップと、
を実行することを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理方法である。
【0016】
本発明では、栽培された果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業履歴を学習した学習モデルを用いて、環境状態情報及び計画栽培評価指標情報の入力に対して、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する。従って、本発明の果菜類植物及び果樹栽培管理方法によれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する作業履歴を考慮した学習モデルにより、形態変更作業を含む作業が決定されて出力されるので、適切な作業指示が可能となる。
ここでは、環境状態情報、計画栽培評価指標情報を取得する順番は上述のものに限られない。
【0017】
また、本発明は、
コンピュータが、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に
対する作業の履歴に関する作業履歴情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記作業履歴情報に基づいて、前記果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力するステップと、
を実行することを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理方法である。
【0018】
本発明では、栽培された果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業履歴を学習した学習モデルを用いて、環境状態情報及び作業履歴情報の入力に対して、果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力する。従って、本発明の果菜類植物及び果樹栽培管理方法によれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する作業履歴を考慮した学習モデルにより、予測栽培評価指標が出力されるので、精度の高い栽培評価指標の予測が可能となる。
ここでは、環境状態情報、作業履歴情報を取得する順番は、上述のものに限られない。
【0019】
また、本発明は、
コンピュータが、
果菜類植物又は果樹を栽培した際の栽培評価指標に関する学習用栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する学習用環境状態情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する学習用作業履歴情報を取得するステップと、
前記学習用栽培評価指標情報、前記学習用環境状態情報及び前記学習用作業履歴情報を少なくとも含む学習データを学習させて、前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報及び該果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する情報である計画栽培評価指標に基づいて、前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する学習モデルを生成するステップと、
を実行することを特徴とする学習モデル生成方法である。
【0020】
本発明では、学習用栽培評価指標、学習用環境状態情報に加えて、学習用作業履歴情報を少なくとも含む学習データを学習させて、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する学習モデルを生成している。従って、本発明の学習モデル生成方法によれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する人の作業による介入を考慮した学習モデルを生成することができる。
ここでは、学習用栽培評価指標、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報を取得する順番は上述のものに限られない。
また、学習モデルを生成するステップが、前記環境状態情報を環境の状態とし、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を環境に対する行動とし、前記栽培評価指標を報酬とする強化学習により該学習モデルを生成するステップを含むようにしてもよい。
【0021】
また、本発明は、
コンピュータに、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する計画栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の前記栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記計画栽培評価指標情報に基づいて、前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業を決定するステップと、
を実行させることを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理プログラムである。
【0022】
本発明では、栽培された果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業履歴を学習した学習モデルを用いて、環境状態情報及び計画栽培評価指標情報の入力に対して、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する。従って、本発明の果菜類植物及び果樹栽培管理プログラムによれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する作業履歴を考慮した学習モデルにより、形態変更作業を含む作業が決定されて出力されるので、適切な作業指示が可能となる。
ここでは、環境状態情報、計画栽培評価指標情報を取得する順番は上述のものに限られない。
【0023】
また、本発明は、
コンピュータに、
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報を取得するステップと、
前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する作業履歴情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴を学習した学習モデルを用いて、取得された前記環境状態情報及び前記作業履歴情報に基づいて、前記果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力するステップと、
を実行させることを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理プログラムである。
【0024】
本発明では、栽培された果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業履歴を学習した学習モデルを用いて、環境状態情報及び作業履歴情報の入力に対して、果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力する。従って、本発明の果菜類植物及び果樹栽培管理プログラムによれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する作業履歴を考慮した学習モデルにより、予測栽培評価指標が出力されるので、精度の高い栽培評価指標の予測が可能となる。
ここでは、環境状態情報、作業履歴情報を取得する順番は、上述のものに限られない。
【0025】
また、本発明は、
コンピュータに、
果菜類植物又は果樹を栽培した際の栽培評価指標に関する学習用栽培評価指標情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する学習用環境状態情報を取得するステップと、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する学習用作業履歴情報を取得するステップと、
前記学習用栽培評価指標情報、前記学習用環境状態情報及び前記学習用作業履歴情報を少なくとも含む学習データを学習させて、前記果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報及び該果菜類植物の予め計画された栽培評価指標に関する情報である計画栽培評価指標に基づいて、前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する学習モデルを生成するステップと、
を実行させることを特徴とする学習モデル生成プログラムである。
【0026】
本発明では、学習用栽培評価指標、学習用環境情状態報に加えて、学習用作業履歴情報を少なくとも含む学習データを学習させて、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹に対する作業を決定する学習モデルを生成している。従って、本発明の学習モデル生成プログラムによれば、形態変更作業を含む果菜類植物又は果樹の栽培に対する人の作業による介入を考慮した学習モデルを生成することができる。
ここでは、学習用栽培評価指標、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報を取得する順番は上述のものに限られない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、適切な作業指示が可能な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1における学習装置のハードウエア構成図である。
【
図2】本発明の実施例1における学習装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施例1における学習モデル生成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例1における学習器の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1における栽培管理システムの概略構成図である。
【
図6】本発明の実施例1における栽培管理装置のハードウエア構成図である。
【
図7】本発明の実施例1における栽培管理装置の機能ブロック図である。
【
図8】本発明の実施例1における栽培管理方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施例2における学習装置のハードウエア構成図である。
【
図10】本発明の実施例2における学習モデル生成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例2における栽培管理システムの概略構成図である。
【
図12】本発明の実施例2における栽培管理装置の機能ブロック図である。
【
図13】本発明の実施例2における栽培管理方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施例3における栽培管理システムの概略構成図である。
【
図15】本発明の実施例3における栽培管理装置の機能ブロック図である。
【
図16】本発明の実施例3における栽培管理方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
本発明が適用される栽培管理装置200,300を含む栽培管理システム1を
図5に示す。また、栽培管理装置200の機能ブロック図を
図6に示す。ここでは、栽培管理装置200が、果菜類植物又は果樹の作業の指示を出力する場合について説明するが、後述するように、栽培管理装置200により収穫量を出力するようにすることもできる。
【0030】
作業の指示を出力する学習器25は、学習装置100において生成される。学習装置1
00(
図2参照)では、学習処理部24において、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報を学習データとして学習させて、環境状態情報及び計画収穫量を入力することにより、形態変更作業を含む作業の指示を出力する学習器25を生成する。この学習器25は、学習用環境状態情報及び学習用収穫量情報を入力データとし、形態変更作業を含む作業の履歴を教師データとして学習させているので、適切な作業指示が可能となる。
【0031】
栽培管理装置200では、このようにして生成された学習器25に対して、栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態情報と、計画収穫量情報を入力することにより、形態変更作業を含む作業の指示を出力する。上述のように、生成された学習器25は、学習用環境状態情報及び学習用収穫量情報を入力データとし、形態変更作業を含む作業の履歴を教師データとして学習させているので、適切な作業指示が可能となる。
【0032】
また、学習装置100と栽培管理装置200,300とによって栽培管理システムを構成することにより、栽培管理装置200,300から学習データを収集し、学習器をさらに学習させて性能を向上させることができる。そして、更新された学習器を栽培管理装置200,300に提供することにより、より精度の高い栽培が可能となる。
【0033】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係る学習装置及び栽培管理装置について、図面を用いて、より詳細に説明する。以下、果菜類植物及び果樹栽培管理装置、果菜類植物及び果樹栽培管理方法、果菜類植物及び果樹栽培管理プログラムを、それぞれ単に栽培管理装置、栽培管理方法、栽培管理プログラムという。
【0034】
まず、栽培管理に用いるモデルを学習により生成する過程について説明する。
<装置構成>
図1は、本実施例に係る学習装置100のハードウエア構成図である。
学習装置100は、プロセッサ11、主記憶部12、補助記憶部13、入力部14、出力部15、外部インタフェース16、通信インタフェース17、バス18を含んで構成されるコンピュータ装置である。
【0035】
プロセッサ11は、CPUやDSP等である。
主記憶部12はROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等から構成される。
補助記憶部13は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドラ
イブ(HDD、Hard Disk Drive)、リムーバブルメディア等を含む。リムーバブルメデ
ィアは、例えば、USBメモリやSDカード等のフラッシュメモリ、あるいは、CD-ROMやDVDディスク、ブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。補助記憶部13には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶部12の作業領域にロードしてプロセッサ11によって実行され、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に果たす各機能部を実現することができる。ただし、一部または全部の機能部はASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPG
A(Field Programmable Gate Array)のようなハードウエア回路によって実現されても
よい。ただし、学習装置100は必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。以下では、主記憶部12と、該主記憶部12の作業領域にロードされた所定のプログラムを実行するプロセッサ11を併せて制御部10とも称する。
【0036】
入力部14は、キーボード、マウスやマイク等を含み、ユーザからの入力操作を受け付
ける。
出力部15は、ディスプレイやスピーカ等を含み、ユーザに対して情報を提供する。
外部インタフェース(図ではI/Fと表記)16は、種々の外部装置と接続するためのインタフェースである。
通信インタフェース17は学習装置100をネットワークに接続するためのインタフェースである。通信インタフェース17は、ネットワークとの接続方式に応じて適宜の構成を採用することができる。
バス18は、学習装置100の各部を接続する信号の伝送路である。
【0037】
図2は、学習装置100の機能ブロック図である。
学習装置100は、学習用環境状態情報取得部21、学習用作業履歴情報取得部22、学習用収穫量取得部23、学習処理部24、学習器25を含む。
【0038】
学習用環境状態情報取得部21は、栽培対象である果菜類植物又は果樹が置かれた環境状態に関する情報である環境状態情報を取得する手段である。環境状態情報には、温度、湿度、照度等を含んでもよいがこれらに限られない。学習データとしての環境状態情報を学習用環境状態情報と称する。以下では、果菜類植物又は果樹を、単に「植物」とのみ表記する。
学習用作業履歴情報取得部22は、栽培対象である植物に対する形態変更作業のように作業量を連続値で表せない作業を含む作業の履歴を定量化した作業履歴情報を取得する手段である。学習データとしての作業履歴情報を学習用業履歴情報と称する。
学習用収穫量取得部23は、栽培対象である植物を栽培した結果として得られた収穫量に関する情報である収穫量情報を取得する手段である。学習データとしての収穫量情報を学習用収穫量情報と称する。学習用収穫量取得部23は、本発明の学習用栽培評価指標取得部に対応する。ここでは、栽培評価指標の一例として収穫量について説明しているが、栽培評価指標は果菜類植物又は果樹の栽培結果を評価するための指標であり、糖度、糖酸比、単果重、葉面積(leaf area)、茎の太さなどを含んでもよく、これらに限られない
。
【0039】
ここでは、入力部14を介して、ユーザが入力した学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報を、制御部10が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部14及び制御部10が、学習用環境状態情報取得部21、学習用作業履歴情報取得部22、学習用収穫量取得部23を構成する。このとき、ユーザが、学習用作業履歴情報を、入力部14を介して直接入力するようにしてもよい。また、ユーザが入力部14を介して入力した情報を、制御部10が学習用作業履歴情報に変換して取得するようにしてもよい。ここでは、制御部10が定量化手段として機能する。このようにすれば、ユーザは定量化された形式で作業の履歴を入力する必要がなく、ユーザの入力作業の負担が軽減される。例えば、ユーザが、出力部15としてのディスプレイに表示されたプルダウンメニューから作業の種類を選択し、選択された作業の種類に応じて表示される作業量のプルダウンメニューから作業量を選択することにより、作業履歴を入力する。学習装置100では、例えば、選択された作業の種類に対応する作業種類フラグ(例えば、作業が摘花であれば摘花フラグ)をオンに設定するともに、作業の種類に応じて定められた単位(ここでは個数)に基づいて定量化された数値(例えば3)を学習用作業履歴情報として取得する。植物の栽培における作業は、植物に対して直接又は土壌等の環境を通して間接的に作用を及ぼす行為であり、植物の形態を変更するという不可逆的な作用を及ぼすものもあれば、植物の形態には変更を加えず繰り返し行えるものもある。このような作業には、概略、摘除、土作り、栽培管理、散布が含まれる。摘除には、摘芽、摘葉、摘花、摘芯、摘果、摘株、除草が含まれる。土作りには、土壌消毒、畝立て、耕起、元肥が含まれる。栽培管理には、播種、定植、支柱立て、誘引が含まれる。このような作業のうち、植物の形態を変更する作業を形態変更作業と称する。形態変更作業には、植物の要素又は組織と植物の
形態の両者を変更する上述の摘除と、植物の形態のみを変更する誘引が含まれる。散布には、施肥、灌水、農薬散布、天敵散布が含まれる。摘芽、摘花、摘芯、摘果は個数により定量化できる。摘葉は枚数により、摘株は株数、除草は本数により定量化することができる。土壌消毒、耕起、元肥は回数等により定量化することができる。畝立ては、間隔や深さにより定量化することができる。播種、定植は個数により定量化することができる。支柱立て、誘引は、本数等により定量化することができる。施肥、灌水、農薬散布、天敵散布は、散布量等により定量化することができる。
【0040】
また、環境状態情報である温度、湿度、照度のように、温度センサ、湿度センサ、照度センサ等の検知手段によって検知し得る情報については、制御部10が、外部インタフェース16を通じて、これらのセンサを制御して学習用環境状態情報を取得するようにしてもよい。この場合には、センサに接続される外部インタフェース16及び制御部10が、学習用環境状態情報取得部21を構成する。学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報についても、ユーザの入力を介さず、外部装置から取得するようにしてもよい。
また、環境状態情報である外気の温度や湿度のようにネットワークを介して外部サーバから取得し得る情報については、制御部10が、通信インタフェース17を通じて、インターネット等のネットワークを介して外部サーバから取得するようにしてもよい。この場合には、通信インタフェース17及び制御部10が学習用環境状態情報取得部21を構成する。
【0041】
学習用環境状態情報取得部21、学習用作業履歴情報取得部22、学習用収穫量取得部23を介して取得された学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報は、補助記憶部13の所定領域である学習データ記憶部131に記憶される。
ここで、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報は、栽培対象である植物について、時系列で関連付けられている。すなわち、ある植物に対する、特定の日時の環境状態に関する環境状態情報、特定の日時に行った作業の履歴に関する作業履歴情報、特定の日時における収穫量情報として時系列で互いに関連付けられている。また、これらの情報は、栽培対象である植物の株ごとに取得されるようにしてもよいし、所定の区画や所定のハウスにおいて栽培される複数の株ごとに一括して取得されるようにしてもよい。それぞれの場合に対応して、個々の株や、複数の株を識別する情報により、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報は関連付けられる。
【0042】
学習処理部24は、学習データ記憶部131に記憶された学習用環境状態情報及び学習用収穫量情報を入力すると、作業を出力するように、学習器の機械学習を行う。学習処理部24は、制御部10が、補助記憶部13の所定領域に記憶された学習モデル生成プログラムを読み出して実行することにより実現される。ここで、学習器は、学習用環境状態情報及び学習用収穫量情報を学習データ、学習用作業履歴情報を教師データとして、目標とする収穫量を達成するために必要な作業を予測するモデルであり、例えば、モデルをニューラルネットワークにより計算するプログラムであるが、これに限られない。
【0043】
学習処理部24における学習器の機械学習が、多数の学習データに対して繰り返されることにより、学習済みの学習器25が得られる。このようにして得られた学習済みの学習器25は、補助記憶部13の所定領域である学習結果データ記憶部132に記憶される。ここでは、学習器25が、本発明の学習モデルに対応する。
【0044】
<学習モデル生成方法>
図3は、学習モデル生成方法の処理手順を示すフローチャートである。この学習モデル生成方法は、学習装置100において学習モデル生成プログラムとして実行される。
まず、制御部10が、学習用環境状態情報を取得する(ステップS101)。
次に、制御部10が、学習用作業履歴情報を取得する(ステップS102)。
次に、制御部10が、学習用収穫量情報を取得する(ステップS103)。
【0045】
そして、学習処理部24が、取得した学習用環境状態情報及び学習用収穫量情報を入力データ、学習用作業履歴情報を教師データとして、上述の学習器の学習処理を行う(ステップS104)。
ここで、学習器25が、ニューラルネットワークによって構成される場合を例に説明する。
図4(A)に示すように、入力から順に、入力層Li、中間層Lh、出力層Loを備える。中間層Lhの数は1層に限られなくてもよく、中間層Lhを2層以上備えるようにしてもよい。
【0046】
入力層Liは複数のノードを備えている。入力層のノードには、学習用環境状態情報として、特定の植物の特定の日時又は時間帯における湿度、温度、照度等の情報がそれぞれ入力される。また、入力層のノードには、特定の植物の特定の日時又は時間帯における収穫量がそれぞれ入力される。
【0047】
中間層Lhのノードの数は、適宜設定することができる。出力層Loのノードの数は、出力するデータに応じて設定する。
【0048】
隣接する層のノード同士は適宜結合され、各結合には重みが設定されている。出力層のノードには、形態変更作業を含む作業が含まれており、教師データである学習用作業履歴情報との差を示す損失関数が小さくなるように、重みを調整しつつ形態変更作業を含む作業の算出を繰り返す。
【0049】
多数の学習データに対してステップS101~S104の処理を繰り返すことにより、学習済みの学習器25が学習処理部24から出力され、制御部10が、学習済みの学習器25を取得し、学習結果データ記憶部132に記憶する(ステップS105)。
このようにすれば、形態変更作業を含む対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮して、適切な作業指示が可能な学習器が生成される。
【0050】
上述の学習モデル生成方法では、ニューラルネットワークによって構成される学習器25について説明したが、学習モデル生成方法はこれに限られない。
図4(B)に示すように、いわゆる強化学習によって学習器25に学習させるようにしてもよい。
図4(B)は強化学習の一般的な仕組みを示す模式図である。
本実施例では、環境Enは植物411,421が栽培されるハウス410,420等を含む環境に対応し、学習装置100又は栽培管理装置200,300がエージェントAgに対応する。このとき、環境状態情報が環境Enの状態Stに対応し、形態変更作業を含む作業がエージェントAgの環境Enに対する行動Anに対応し、収穫量情報が報酬Rwに対応する。学習器25にある状態Stに対する報酬Rwが最大化するような行動Anを学習させる。すなわち、ある環境状態に対して、収穫量が最大化するような形態変更作業を含む作業を学習させる。この強化学習において、
図4(A)に示すようなニューラルネットワークを用いてもよい。
このように、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報及び学習用収穫量情報を用いて強化学習させることにより、環境状態情報と収穫量情報を入力することにより、形態変更作業を含む作業を出力する学習器25を生成することができる。
【0051】
次に、学習により生成したモデルを用いた推論により栽培管理を行う過程について以下に説明する。
<栽培管理システム>
図5は、本実施例に係る学習装置100と栽培管理装置200,300とを含む栽培管理システム1の概略構成を示す模式図である。
学習装置100と栽培管理装置200及び栽培管理装置300はそれぞれネットワーク4を介して接続されている。栽培管理装置200は、植物411が栽培されるハウス410のコントローラ412に接続されている。栽培管理装置300も、同様に植物421が栽培されるハウス420のコントローラ422に接続されている。以下では、栽培管理装置200について説明するが、栽培管理装置300についても同様である。また、栽培管理装置200は、一つのハウス410のコントローラ412に接続されている場合に限られず、複数のハウスのコントローラに接続されていてもよい。学習装置100において生成された学習器25は、ネットワーク4を通じて、栽培管理装置200,300に送信される。また、栽培管理装置200,300から、学習装置100に対して、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報がネットワーク4を通じて送信される。学習装置100と栽培管理装置200,300とによって栽培管理システムを構成することにより、栽培管理装置200,300から学習データを収集し、学習器をさらに学習させて性能を向上させることができる。そして、更新された学習器を栽培管理装置200,300に提供することにより、より精度の高い栽培が可能となる。
ここでは、栽培対象である植物411の環境状態に関するハウス410の温度と湿度を計測する温湿度センサ413が設けられている。温湿度センサ413はコントローラ412に接続されており、温湿度センサ413によって計測された温度及び湿度は、コントローラ412を介して、栽培管理装置200に送信され、環境状態情報ととして取得される。ハウス420にも同様に温湿度センサ423が設けられている。
【0052】
<栽培管理装置>
図6は、栽培管理装置200のハードウエア構成図である。
栽培管理装置200は、プロセッサ211、主記憶部212、補助記憶部213、入力部214、出力部215、外部インタフェース216、通信インタフェース217、バス218を含んで構成されるコンピュータ装置である。
プロセッサ211、主記憶部212、補助記憶部213、入力部214、出力部215、外部インタフェース216、通信インタフェース217、バス218及び制御部210については、学習装置100について説明したところと同様であるため、詳細な説明は省略する。
ここでは、補助記憶部213には、学習装置100において生成された学習済みの学習器25が記憶されている。
【0053】
図7(A)は、栽培管理装置200の第1の機能ブロック図である。
栽培管理装置200は、少なくとも環境状態情報取得部220、計画収穫量取得部221及び演算部223を含む。
環境状態情報取得部220は、栽培対象である植物が置かれた環境に関する情報である環境状態情報を取得する手段である。ここでは、ユーザが入力部214を介して入力した環境状態情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が、環境状態情報取得部220を構成する。また、環境状態情報であるハウス410内の温度、湿度、照度のように、ハウスに設置された温度センサ、湿度センサ、照度センサ等の環境検知手段によって検知し得る情報については、制御部210が、外部インタフェース216を通じて接続されたハウス410のコントローラ412から、ハウス410に設置された温湿度センサ413等の環境検知手段によって検知された環境状態情報を取得するようにしてもよい。この場合には、
図4の例では、温湿度センサ413及びコントローラ412に接続される外部インタフェース216及び制御部210が環境状態情報取得部220を構成する。また、環境状態情報である外気の温度や湿度のようにネットワークを介して外部サーバから取得し得る情報については、制御部210が、通信インタフェース217を通じて、インターネット等のネットワークを介して外部サーバから取得するようにしてもよい。この場合には、通信インタフェース217及び制御部210が環境状態情報取得部220を構成する。
【0054】
計画収穫量取得部221は、ユーザが栽培計画において予定している収穫量に関する情報である計画収穫量情報を取得する手段である。ここでは、ユーザが入力部214を介して入力した計画収穫量情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が、計画収穫量取得部221を構成する。また、ユーザがネットワーク4を介して接続されるスマートフォン等の携帯端末から入力した環境状態情報や計画収穫量情報を、通信インタフェース217を介して制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、通信IF217及び制御部210が環境状態情報取得部220、計画収穫量取得部221を構成する。また、ユーザが予め入力部214を介して入力した計画収穫量情報を、補助記憶部213の所定領域に記憶しておき、制御部210がこれを読み出して取得するようにしてもよい。
【0055】
栽培管理装置200の演算部223は、環境状態情報取得部220によって取得された環境状態情報と、計画収穫量取得部221によって取得された計画収穫量情報とが入力されると、上述の学習済みの学習器25を用いて環境状態情報によって特定される環境状態のもとで、計画収穫量を実現するために必要な形態変更作業を含む作業に関する情報を作業指示情報224として出力部215に出力することができる。作業指示情報224は、例えば、出力部215としてのディスプレイに表示されたり、出力部215としてのプリンタからドキュメントとしてプリントアウトされたりする。外部インタフェース216や通信インタフェース217を介して、外部の装置に送信するようにしてもよい。例えば、通信インタフェース217を介してネットワークに接続される作業者のスマートフォン等の携帯端末に、作業の内容(個数等を含む)を送信するようにしてもよい。ここで、演算部223は、演算プログラムを実行する制御部210によって構成される。
【0056】
図7(B)は、栽培管理装置200の第2の機能ブロック図である。
栽培管理装置200は、少なくとも環境状態情報取得部220、作業履歴情報取得部222及び演算部223を含む。
図7(A)に示す第1のブロック図と同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0057】
作業履歴情報取得部222は、栽培対象である植物に対して人が行った作業の履歴を定量化した作業履歴情報を取得する手段である。ここでは、ユーザが入力部214を介して入力した作業履歴情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が、作業履歴情報取得部222を構成する。また、ユーザが入力部214を介して入力した情報を、制御部210が作業履歴情報に変換して取得するするようにしてもよい。ここでは、制御部210が定量化手段として機能する。このようにすれば、ユーザは定量化された作業履歴情報の形式で作業の履歴を入力する必要がなく、ユーザの入力作業の負担が軽減される。例えば、ユーザが、出力部215としてのディスプレイに表示されたプルダウンメニューから作業の種類を選択し、選択された作業の種類に応じて表示される作業量のプルダウンメニューから作業量を選択することにより、作業履歴を入力する。栽培管理装置200では、学習装置100と同様に、例えば、選択された作業の種類に対応する作業種類フラグ(例えば、作業が摘花であれば摘花フラグ)をオンに設定するともに、作業の種類に応じて定められた単位(ここでは個数)に基づいて定量化された数値(例えば3)を作業履歴情報として取得する。ユーザが入力した作業履歴情報が補助記憶部213の所定領域に逐次記憶されており、演算部223が収穫量の予測を行う際に、制御部210が当該領域から読み出して取得するようにしてもよい。また、制御部210が、外部インタフェース216又は通信インタフェース217を通じて、外部の装置から取得するようにしてもよい。この場合には、外部インタフェース216又は通信インタフェース217及び制御部210が作業履歴情報取得部222を構成する。
【0058】
栽培管理装置200の演算部223は、環境状態情報取得部220によって取得された
環境状態情報と、作業履歴情報取得部222によって取得された作業履歴情報とが入力されると、上述の学習済みの学習器25を用いて、環境状態情報によって特定される環境状態及びそれまでの作業履歴のもとで、予測される収穫量を予測収穫量情報225として出力部215に出力することができる。予測収穫量情報225は、例えば、出力部215としてのディスプレイに表示されたり、出力部215としてのプリンタからドキュメントとしてプリントアウトされたりする。外部インタフェース216や通信インタフェース217を介して、外部の装置に送信するようにしてもよい。例えば、通信インタフェース217を介してネットワークに接続される管理者のスマートフォン等の携帯端末に、予測収穫量情報225を送信するようにしてもよい。ここで、演算部223は、演算プログラムを実行する制御部210によって構成される。
環境状態情報によって特定される環境状態及びそれまでの作業履歴のもとで、予測される収穫量を予測収穫量情報225として出力する学習器25は、
図1及び
図2に示す学習装置100及び
図3に示す学習モデル生成方法と同様の構成及び方法によって生成することができる。ただし、予測される収穫量を出力する学習器25は、学習用環境状態情報及び学習用作業履歴情報を学習データとし、学習用収穫量情報を教師データとして生成される学習モデルである。
【0059】
<栽培管理方法>
図8(A)は、栽培管理方法の処理手順を示すフローチャートである。この栽培管理方法は、栽培管理装置200において栽培管理プログラムとして実行される。
まず、環境状態情報取得部220が、環境状態情報を取得する(ステップS201)。
次に、計画収穫量取得部221が、計画収穫量情報を取得する(ステップS202)。
【0060】
そして、演算部223が環境状態情報及び計画収穫量情報を学習済み学習器25に入力し、演算処理を行う(ステップS203)。
先に、学習装置100によって生成された学習済みの学習器である栽培モデルをf(x1,x2)とする。ここで、x1は環境状態情報、x2は計画収穫量情報を示す(ここでは、説明のために入力データを単純化して示している。)。
ここで、ステップS201で取得された環境状態情報(x1)と、ステップS202で取得された計画収穫量情報(x2)のもとでの形態変更作業を含む作業がf(x1,x2)によって算出できる。具体的には、ニューラルネットワークであれば、x1、x2を含む入力層を含む各層のノード間の各結合に設定された重みを計算することにより出力である作業f(x1、x2)を算出することができる。また、統計的手法ならば、入力x1、x2を含む回帰式の重み係数を計算することにより、作業f(x1、x2)を算出することができる。
【0061】
このようにして必要な作業を指示する作業指示情報が演算処理により出力されるので、制御部210がこれを取得し(ステップS204)、例えば出力部215に出力する。
このようにすれば、対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮した学習器を用いることにより、栽培作業の指示の精度が向上する。また、栽培作業に関する知識・経験の少ない作業者であっても、この作業指示に基づいて、栽培を行うことにより、計画収穫量を実現することが可能となる。
【0062】
図8(B)は、他の栽培管理方法としての収穫量予測方法の処理手順を示すフローチャートである。
図8(A)に示す栽培管理方法と同様の処理については同様の符号を用いて説明を省略する。ここで、用いられる学習済みの学習器25は、環境状態情報及び作業履歴情報を学習データとし、収穫量情報を教師データとして学習させたものであり、このような学習済み学習器25により構成される収穫量予測モデルは、環境状態情報及び作業履歴情報を入力することにより、予測収穫量を出力する。
まず、環境状態情報取得部220が、環境状態情報を取得する(ステップS201)。
次に、作業履歴情報取得部222が、作業履歴情報を取得する(ステップS205)。
【0063】
そして、演算部223が環境状態情報及び作業履歴情報を学習済み学習器25に入力し、演算処理を行う(ステップS203)。ここでは、環境状態情報によって特定される環境状態及びそれまでの作業履歴のもとでの予測収穫量情報225が演算処理によって出力される。ここで、ステップS201で取得された環境状態情報(x1)と、ステップS205で取得された作業履歴情報(x3)のもとでの収穫量がg(x1,x3)によって算出できる。具体的には、ニューラルネットワークであれば、x1、x2を含む入力層を含む各層のノード間の各結合に設定された重みを計算することにより出力である収穫量g(x1、x3)を算出することができる。また、統計的手法ならば、入力x1、x3を含む回帰式の重み係数を計算することにより、収穫量g(x1、x3)を算出することができる。
【0064】
このようにして予測収穫量情報が演算処理により出力されるので、制御部210がこれを取得し(ステップS206)、例えば出力部215に出力する。
このようにすれば、対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮した学習器を用いることにより、収穫量予測の精度が向上する。
【0065】
〔実施例2〕
以下では、実施例2に係る学習装置500及び栽培管理装置600,700について、説明する。
【0066】
まず、栽培管理に用いるモデルを学習により生成する過程について説明する。
<装置構成>
実施例2に係る学習装置500のハードウエア構成は、
図1に示す実施例1に係る学習装置100のハードウエア構成と共通であるため、説明は省略する。
図9は、学習装置500の機能ブロック図である。
図1に示す学習装置100と共通の構成については同様の符号を用いて説明を省略する。
学習装置500は、学習用環境状態情報取得部521、学習用作業履歴情報取得部522、学習用収穫量取得部523に加えて、学習用生育状態情報取得部524を含む。
学習用生育状態情報取得部524は、栽培対象である植物自体の生育状態に関する情報である生育状態情報を取得する手段である。生育状態情報は、例えば、樹液流センサによって計測される樹液流量、吸収養分センサによって計測される吸収養分量等であり、植物自体から計測・検知できる生育状態に関する情報である。また、栽培対象である植物をカメラ等の撮像装置によって撮像した画像を画像解析手段によって解析することにより検知される樹勢も生育状態情報に含まれる。ここでは、樹液流センサ、吸収養分センサ、撮像装置及び画像解析手段が生育状態検知手段を構成する。また、学習データとしての生育状態情報を学習用生育状態情報と称する。
【0067】
上述のように、樹液流センサ、吸収養分センサ等の生育状態検知手段によって計測・検知し得る情報については、制御部10が外部インタフェース16を通じて、これらの生育状態検知手段を制御して生育状態情報を取得するようにしてもよい。この場合には、生育状態検知手段に接続される外部インタフェース16及び制御部10が、学習用生育状態情報取得部524を構成する。すでに計測・検知され外部装置に記憶された学習用生育状態情報を取得するようにしてもよい。この場合には、外部装置に接続された外部インタフェース16又は通信インタフェース17が学習用生育状態情報取得部524を構成する。また、ユーザが入力部14を介して入力した学習用生育状態情報を、所定のプログラムを実行するプロセッサ11が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部14及び制御部10が学習用生育状態情報取得部524を構成する。
【0068】
このように、実施例2に係る学習データは、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報に加えて、学習用生育状態情報を含む。これらの学習データは、補助記憶部13の所定領域である学習データ記憶部131に記憶される。
ここで、学習用生育状態情報も、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報とともに、栽培対象である植物について、時系列で関連付けられている。また、これらの情報は、栽培対象である植物の株ごとに取得されるようにしてもよいし、所定の区画や所定のハウスにおいて栽培される複数の株ごとに一括して取得されるようにしてもよい。それぞれの場合に対応して、個々の株や、複数の株を識別する情報により、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報、学習用生育状態情報は関連付けられる。
【0069】
学習処理部525は、学習データ記憶部131に記憶された学習用環境状態情報、学習用生育状態情報及び学習用収穫量情報を入力すると、作業情報に対応する出力値を出力するように、学習器の機械学習を行う。学習処理部525は、制御部10が、補助記憶部13の所定領域に記憶された学習モデル生成プログラムを実行することにより実現される。ここで、学習器は、例えば、学習用環境状態情報、学習用生育状態情報、学習用収穫量情報を学習データ、学習用作業履歴情報を教師データとして、目標とする収穫量を達成するために必要な作業を予測するモデルであり、例えば、モデルをニューラルネットワークによりにより計算するプログラムであるが、これに限られない。例えば、学習用環境状態情報(x1)、学習用収穫量情報(x2)、学習用生育状態情報(x4)のもとでの形態変更作業を含む作業h(x1、x2、x4)によって算出できる。具体的には、ニューラルネットワークであれば、x1、x2、x4を含む入力層を含む各層のノード間の各結合の重みを、出力である作業h(x1、x2、x4)と学習用作業履歴情報(x3)との誤差関数を最小化するように調整することによりモデルh(x1、x2、x4)を得ることができる。また、統計的手法ならば、入力x1、x2、x4を含む回帰式の重み係数を、最小二乗法等により計算することにより、モデルh(x1、x2、x4)を得ることができる。
【0070】
学習処理部525における学習器の機械学習が、多数の学習データに対して繰り返されることにより、学習済み学習器526が得られる。このようにして得られた学習済みの学習器526は、補助記憶部13の所定領域である学習結果データ記憶部132に記憶される。
【0071】
<学習モデル生成方法>
図10は、学習モデル生成方法の処理手順を示すフローチャートである。この学習モデル生成方法は、学習装置500において学習モデル生成プログラムとして実行される。
まず、学習用環境状態情報取得部521が、学習用環境状態情報を取得する(ステップS401)。
次に、学習用生育状態情報取得部524が、学習用生育状態情報を取得する(ステップS402)。
次に、学習用作業履歴情報取得部522が、学習用作業履歴情報を取得する(ステップS403)。
次に、学習用収穫量取得部523が、学習用収穫量情報を取得する(ステップS404)。
そして、取得した学習用環境状態情報、学習用生育状態情報、学習用収穫量情報を入力データ、学習用作業履歴情報を教師データとして、学習処理部525が上述の学習器の学習処理を行う(ステップS405)。学習器の学習処理は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
多数の学習データに対してステップS401~S405の処理を繰り返すことにより、学習済みの学習器526が学習処理部525から出力され、制御部10が学習済みの学習
器526を取得し、学習結果データ記憶部132に記憶する(ステップS406)。
このようにすれば、対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮して、適切な作業指示が可能な学習器が生成される。
【0072】
次に、学習により生成したモデルを用いた推論により栽培管理を行う過程について説明する。
<栽培管理システム>
図11は、実施例2に係る学習装置500と栽培管理装置600,700とを含む栽培管理システム2の概略構成を示す模式図である。
学習装置500と栽培管理装置600及び栽培管理装置700はそれぞれネットワークを介して接続されている。栽培管理装置600は、植物が栽培されるハウス410のコントローラ412に接続されている。栽培管理装置700も同様に植物が栽培されるハウス420のコントローラ422に接続されている。以下では、栽培管理装置600について説明するが、栽培管理装置700についても同様である。また、栽培管理装置600は、一つのハウス410のコントローラ412に接続されている場合に限られず、複数のハウスのコントローラに接続されてもよい。学習装置500において生成された学習器526は、ネットワーク4を通じて、栽培管理装置600,700に送信される。また、栽培管理装置600,700から、学習装置500に対して、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報、学習用生育状態情報がネットワーク4を通じて送信される。学習装置500と栽培管理装置600,700とによって栽培管理システムを構成することにより、栽培管理装置600,700から学習データを収集し、学習器をさらに学習させて性能を向上させることができる。そして、更新された学習器を栽培管理装置600,700に提供することにより、より精度の高い栽培が可能となる。
ここでは、栽培対象である植物411の樹液流量を計測する生育状態検知手段としての樹液流センサ414が設けられている。樹液流センサ414はコントローラ412に接続されており、樹液流センサ414によって計測された樹液流量はコントローラ412を介して栽培管理装置600に送信され、生育状態情報として取得される。ハウス420の植物421にも樹液流センサ424が設けられ、コントローラ422に接続されている。
【0073】
実施例2に係る栽培管理装置600のハードウエア構成は、
図5に示す実施例1に係る栽培管理装置200と共通であるため、同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0074】
図12(A)は、実施例2に係る栽培管理装置600の第1の機能ブロック図である。
栽培管理装置600は、少なくとも環境状態情報取得部620、生育状態情報取得部621、計画収穫量取得部622及び演算部624を含む。
【0075】
環境状態情報取得部620は、栽培対象である植物が置かれた環境に関する情報である環境状態情報を取得する手段である。ここでは、ユーザが入力部214を介して入力した環境状態情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が、環境状態情報取得部620を構成する。また、環境状態情報であるハウス内の温度、湿度、照度のように、ハウスに設置された温度センサ、湿度センサ、照度センサ等の環境検知手段によって検知し得る情報については、制御部210が、外部インタフェース216を通じて接続されたハウス410のコントローラ412から、ハウス410に設置された温度センサ、湿度センサ、照度センサ等の環境検知手段によって検知された環境状態情報を取得するようにしてもよい。この場合には、
図11の例では、温湿度センサ413及びコントローラ412に接続される外部インタフェース216が環境状態情報取得部620を構成する。また、環境状態情報である外気の温度や湿度のようにネットワークを介して外部サーバから取得し得る情報については、制御部210が、通信インタフェース217を通じて、インターネット等のネットワークを介して外部サーバから取得するようにしてもよい。この場合には、通信インタフェース217及び制御部21
0が環境状態情報取得部620を構成する。
【0076】
生育状態情報取得部621は、栽培対象である植物自体の生育状態に関する情報である生育状態情報を取得する手段である。生育状態情報は、例えば、樹液流センサによって計測される樹液流量、吸収養分センサによって計測される吸収養分量等であり、植物自体から計測・検知できる生育状態に関する情報である。また、栽培対象である植物をカメラ等の撮像装置によって撮像した画像を画像解析手段によって解析することにより検知される樹勢も生育状態情報に含まれる。ここでは、樹液流センサ、吸収養分センサ、撮像装置及び画像解析手段が生育状態検知手段を構成する。
上述のように、樹液流センサ、吸収養分センサ等の生育状態検知手段によって計測・検知し得る情報については、制御部210が外部インタフェース216を通じて、これらの生育状態検知手段を制御して生育状態情報を取得するようにしてもよい。この場合には、生育状態検知手段に接続される外部インタフェース216が、生育状態情報取得部621を構成する。すでに計測・検知された外部装置に記憶された生育状態情報を取得するようにしてもよい。この場合には、外部装置に接続された外部インタフェース216又は通信インタフェース217が生育状態情報取得部621を構成する。ユーザが入力部214を介して入力した生育状態情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が生育状態情報取得部621を構成する。
【0077】
作業履歴情報取得部623は、栽培対象である植物に対して人が行った作業の履歴を定量化した作業履歴情報を取得する手段である。こでは、ユーザが入力部214を介して入力した作業履歴情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が、作業履歴情報取得部623を構成する。また、ユーザが入力部214を介して入力した情報を、制御部210が作業履歴情報に変換して取得するするようにしてもよい。ここでは、制御部210が定量化手段として機能する。このようにすれば、ユーザは定量化された作業履歴情報の形式で作業の履歴を入力する必要がなく、ユーザの入力作業の負担が軽減される。例えば、ユーザが、出力部215としてのディスプレイに表示されたプルダウンメニューから作業の種類を選択し、選択された作業の種類に応じて表示される作業量のプルダウンメニューから作業量を選択することにより、作業履歴を入力する。栽培管理装置600では、学習装置500と同様に、例えば、選択された作業の種類に対応する作業種類フラグ(例えば、作業が摘花であれば摘花フラグ)をオンに設定するともに、作業の種類に応じて定められた単位(ここでは個数)に基づいて定量化された数値(例えば3)を学習用作業履歴情報として取得する。ユーザが入力した作業履歴情報が補助記憶部213の所定領域に逐次記憶されており、演算部624が収穫量の予測を行う際に、制御部210が当該領域から読み出して取得するようにしてもよい。また、制御部210が、外部インタフェース216又は通信インタフェース217を通じて、外部の装置から取得するようにしてもよい。この場合には、外部インタフェース216又は通信インタフェース217及び制御部210が作業履歴情報取得部623を構成する。
【0078】
計画収穫量取得部622は、ユーザが栽培計画において予定している収穫量に関する情報である計画収穫量情報を取得する手段である。ここでは、ユーザが入力部214を介して入力した計画収穫量情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が、計画収穫量取得部622を構成する。また、ユーザが予め入力部214を介して入力した計画収穫量情報を、補助記憶部213の所定領域に記憶しておき、制御部210がこれを読み出すようにしてもよい。
【0079】
栽培管理装置600の演算部624は、環境状態情報取得部620によって取得された環境状態情報と、生育状態情報取得部621によって取得された生育状態情報と、計画収穫量取得部622によって取得された計画収穫量情報とを、上述の学習器526に入力す
ることにより、環境状態情報によって特定される環境状態及び生育状態情報によって特定される生育状態のもとで、計画収穫量を実現するために必要な形態変更作業を含む作業に関する作業指示情報625を出力部215に出力することができる。作業指示情報625は、例えば、出力部215としてのディスプレイに表示されたり、出力部215としてのプリンタからドキュメントとしてプリントアウトされたりする。外部インタフェース216や通信インタフェース217を介して、外部の装置に送信するようにしてもよい。ここで、演算部624は、演算プログラムを実行する制御部210によって構成される。
【0080】
図12(B)は、実施例2に係る栽培管理装置600の第2の機能ブロック図である。
栽培管理装置600は、少なくとも環境状態情報取得部620、生育状態情報取得部621、作業履歴情報取得部623及び演算部624を含む。
図12(A)に示す第1の機能ブロック図と同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0081】
作業履歴情報取得部623は、栽培対象である植物に対して人が行った作業の履歴を定量化した作業履歴情報を取得する手段である。こでは、ユーザが入力部214を介して入力した作業履歴情報を、制御部210が取得するようにしてもよい。この場合には、入力部214及び制御部210が、作業履歴情報取得部623を構成する。また、ユーザが入力部214を介して入力した情報を、制御部210が作業履歴情報に変換して取得するようにしてもよい。ここでは、制御部210が定量化手段として機能する。このようにすれば、ユーザは定量化された作業履歴情報の形式で作業の履歴を入力する必要がなく、ユーザの入力作業の負担が軽減される。例えば、ユーザが、出力部215としてのディスプレイに表示されたプルダウンメニューから作業の種類を選択し、選択された作業の種類に応じて表示される作業量のプルダウンメニューから作業量を選択することにより、作業履歴を入力する。栽培管理装置600では、学習装置500と同様に、例えば、選択された作業の種類に対応する作業種類フラグ(例えば、作業が摘花であれば摘花フラグ)をオンに設定するともに、作業の種類に応じて定められた単位(ここでは個数)に基づいて定量化された数値(例えば3)を学習用作業履歴情報として取得する。ユーザが入力した作業履歴情報が補助記憶部213の所定領域に逐次記憶されており、演算部624が収穫量の予測を行う際に、制御部210が当該領域から読み出して取得するようにしてもよい。また、制御部210が、外部インタフェース216又は通信インタフェース217を通じて、外部の装置から取得するようにしてもよい。この場合には、外部インタフェース216又は通信インタフェース217及び制御部210が作業履歴情報取得部623を構成する。
【0082】
栽培管理装置600の演算部624は、環境状態情報取得部620によって取得された環境状態情報と、生育状態情報取得部621によって取得された生育状態情報と、作業履歴情報取得部623によって取得された作業履歴情報とを、上述の学習器526に入力することにより、環境状態情報によって特定される環境状態及び生育状態情報によって特定される生育状態及びそれまでの作業履歴のもとでの予測収穫量情報626を出力部215に出力することができる。予測収穫量情報626は、例えば、出力部215としてのディスプレイに表示されたり、出力部215としてのプリンタからドキュメントとしてプリントアウトされたりする。外部インタフェース216や通信インタフェース217を介して、外部の装置に送信するようにしてもよい。ここで、演算部624は、演算プログラムを実行する制御部210によって構成される。
【0083】
<栽培管理方法>
図13(A)は、栽培管理方法の処理手順を示すフローチャートである。の栽培管理方法は、栽培管理装置600において栽培管理プログラムとして実行される。
まず、環境状態情報取得部620が、環境状態情報を取得する(ステップS401)。
次に、生育状態情報取得部621が、生育状態情報を取得する(ステップS402)。
次に、計画収穫量取得部622が、計画収穫量情報を取得する(ステップS403)。
そして、演算部624が、環境状態情報、生育状態情報及び計画収穫量情報を学習済み学習器526に入力し、演算処理を行う(ステップS404)。
そして、演算部624が、入力された環境状態情報及び生育状態情報により特定される環境状態及び生育状態のもとで、計画収穫量を実現するために必要な形態変更作業を含む作業を指示する作業指示情報625が演算処理により出力されるので、制御部210がこれを取得し、例えば出力部215に出力する(ステップS405)。作業指示情報625の演算処理は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
このようにすれば、対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮した学習器を用いることにより、栽培作業の指示の精度が向上する。また、栽培作業に関する知識・経験の少ない作業者であっても、この作業指示に基づいて、栽培を行うことにより、計画収穫量を実現することが可能となる。
【0084】
図13(B)は、他の栽培管理方法としての収穫量予測方法の処理手順を示すフローチャートである。
図13(A)に示す栽培管理方法と同様の処理については同様の符号を用いて説明を省略する。
まず、環境状態情報取得部620が、環境状態情報を取得する(ステップS401)。
次に、生育状態情報取得部621が、生育状態情報を取得する(ステップS402)。
次に、作業履歴情報取得部623が、作業履歴情報を取得する(ステップS406)。
そして、演算部624が、環境状態情報、生育状態情報及び作業履歴情報を学習済み学習器526に入力し、演算処理を行う(ステップS404)。
そして、演算部624が、入力された環境状態情報及び生育状態情報により特定される環境状態及び生育状態並びにそれまでの作業履歴のもとでの予測収穫量情報626が演算処理により出力されるので、制御部210がこれを取得し、例えば出力部215に出力する(ステップS407)。
このようにすれば、対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮した学習器を用いることにより、収穫量予測の精度が向上する。
【0085】
〔実施例3〕
以下では、実施例3に係る学習装置800及び栽培管理装置900,1000について、説明する。
【0086】
実施例3に係る学習装置800のハードウエア構成、機能ブロック及び学習モデル生成方法は、実施例2と共通であるので、栽培管理に用いるモデルを学習により生成する過程については同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。以下に、学習により生成したモデルを用いた推論により栽培管理を行う過程について以下に説明する。
【0087】
<栽培管理システム>
図14は、実施例3に係る学習装置800と栽培管理装置900,1000とを含む栽培管理システム3の概略構成を示す模式図である。
学習装置800と栽培管理装置900及び栽培管理装置1000はそれぞれネットワーク4を介して接続されている。栽培管理装置900は、植物411が栽培されるハウス410のコントローラ412に接続されている。栽培管理装置1000も同様に植物421が栽培されるハウス420のコントローラ422に接続されている。以下では、栽培管理装置900について説明するが、栽培管理装置1000についても同様である。また、栽培管理装置900は、一つのハウス410のコントローラ412に接続されている場合に限られず、複数のハウスのコントローラに接続されてもよい。学習装置800において生成された学習器526は、ネットワーク4を通じて、栽培管理装置900,1000に送信される。また、栽培管理装置900,1000から、学習装置800に対して、学習用環境状態情報、学習用作業履歴情報、学習用収穫量情報がネットワーク4を通じて送信される。学習装置800と栽培管理装置900,1000とによって栽培管理システムを構
成することにより、栽培管理装置900,1000から学習データを収集し、学習器をさらに学習させて性能を向上させることができる。そして、更新された学習器を栽培管理装置900,1000に提供することにより、より精度の高い栽培が可能となる。
ここでは、開度を調整することにより、栽培対象である植物への日射量を制御する環境状態制御手段として遮光カーテン415が設けられている。この遮光カーテン415はコントローラ412に接続されており、栽培管理装置900から送信される状態制御指示情報に基づいて開度が制御される。これによって、植物に対する日射量が制御される。ハウス420にも遮光カーテン425が設けられており、コントローラ422に接続されている。
【0088】
実施例3に係る栽培管理装置900のハードウエア構成は
図6に示す実施例1に係る栽培管理装置200と共通であるため、同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0089】
図15(A)は、栽培管理装置900の第1の機能ブロック図である。
栽培管理装置900は、少なくとも環境状態情報取得部920、生育状態情報取得部921計画収穫量取得部922、演算部924及び状態制御指示部925を含む。
演算部924は、環境状態情報取得部920によって取得された環境状態情報、生育状態情報取得部921によって取得された生育状態情報及び計画収穫量取得部922によって取得された計画収穫量を、学習済み学習器526に入力し、作業指示情報926を出力部215に出力するとともに、状態制御指示情報927を状態制御指示部925に出力する。
状態制御指示部925は、制御部210が、この状態制御指示情報927を取得して、外部インタフェース216を通じて接続されたコントローラ412に対し、ハウス410の環境状態や生育状態を制御する状態制御手段(例えば、遮光カーテン415)の制御を指示するための情報を送信するものである。
ここで、状態制御手段は、栽培対象である植物が置かれた環境状態である温度や湿度を制御する加温湿器や、日射量を制御する遮光カーテンや、二酸化炭素量を制御する二酸化炭素発生器のように環境状態を制御する環境状態制御手段を含む。また、状態制御手段は、植物の吸収養分量に影響を与える土中の養分を制御する施肥器や、樹液流量に影響を与える土中の水分を制御する灌水器のように生育状態を制御する生育状態制御手段も含む。
【0090】
図16(A)は、栽培管理方法の処理手順を示すフローチャートである。この栽培管理方法は、栽培管理装置900において栽培管理プログラムとして実行される。
まず、環境状態情報取得部920が、環境状態情報を取得する(ステップS501)。
次に、生育状態情報取得部921が、生育状態情報を取得する(ステップS502)。
次に、計画収穫量取得部922が、計画収穫量情報を取得する(ステップS503)。
【0091】
そして、演算部924が、環境状態情報、生育状態情報及び計画収穫量情報を学習済み学習器526に入力し、演算処理を行う(ステップS504)。
そして、演算部924がステップS505の演算処理により、入力された環境状態情報及び生育状態情報により特定される環境状態及び生育状態のもとで、計画収穫量を実現するために必要な形態変更作業を含む作業を指示する作業指示情報926(ステップS505)及び状態制御指示情報927(ステップS506)が出力される。必要な作業指示情報や状態制御指示情報の演算処理は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。制御部210は作業指示情報926を取得し、例えば出力部215に出力し、また、状態制御指示情報927を取得し、例えば状態制御指示部925に出力する。
【0092】
このようにすれば、対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮した学習器を用いることにより、栽培作業の指示の精度が向上するとともに環境状態や生育状態の制御の指示の精度が向上する。また、栽培作業に関する知識・経験の少ない作業者であっても
、この作業指示に基づいて、栽培を行うことにより、計画収穫量を実現することが可能となる。
【0093】
図15(B)は、栽培管理装置900の第2の機能ブロック図である。
栽培管理装置900は、少なくとも環境状態情報取得部920、生育状態情報取得部921、作業履歴情報取得部923及び演算部924を含む。
図15(A)に示す第1のブロック図と同様の構成については同様の符号を用いて説明を省略する。
【0094】
図16(B)は、他の栽培管理方法としての収穫量予測方法の処理手順を示すフローチャートである。
図16(A)に示す栽培管理方法と同様の処理については同様の符号を用いて説明を省略する。
まず、環境状態情報取得部920が、環境状態情報を取得する(ステップS501)。
次に、生育状態情報取得部921が、生育状態情報を取得する(ステップS502)。
次に、作業履歴情報取得部923が、作業履歴を取得する(ステップS507)。
【0095】
そして、演算部924が、環境状態情報、生育状態情報及び作業履歴情報を学習済み学習器526に入力し、演算処理を行う(ステップS504)。
そして、演算部924がステップS704の演算処理により、入力された環境状態情報及び生育状態情報により特定される環境状態及び生育状態並びにそれまでの作業履歴のもとでの予測収穫量が出力される。制御部210は予定収穫量情報928を取得し、例えば出力部215に出力する。
【0096】
このようにすれば、対象とする植物の栽培への人の作業による介入を考慮した学習器を用いることにより、収穫量予測の精度が向上する。
【0097】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報と、
前記果菜類植物又は果樹の予め計画された栽培評価指標に関する情報である計画収栽培評価指標と、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴とを学習した学習モデル(25)を用いて、前記環境状態情報及び前記計画栽培評価指標情報の入力に対して、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定し出力する演算部(223)と、
前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理装置(200)。
<発明2>
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する環境状態情報と、
前記果菜類植物又は果樹の形態を変更する形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴に関する作業履歴情報と、
栽培された前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態と、該果菜類植物又は果樹を栽培する際の前記形態変更作業を含む該果菜類植物又は果樹に対する作業の履歴である作業履歴とを学習した学習モデル(25)を用いて、前記環境状態情報及び前記作業履歴情報の入力に対して、前記果菜類植物又は果樹の予測栽培評価指標を出力する演算部(223)と、
前記果菜類植物又は果樹の前記予測栽培評価指標を出力する出力部(215)と、
を備えたことを特徴とする果菜類植物及び果樹栽培管理装置(200)。
<発明3>
栽培対象である果菜類植物又は果樹の環境状態に関する学習用環境状態情報を取得する学習用環境状態情報取得部(21)と、
前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物の形態を変更する形態変更作業を含む前記果菜類植物に又は果樹対する作業の履歴に関する学習用作業履歴情報を取得する学習用作業履歴情報取得部(22)と、
前記果菜類植物又は果樹の栽培評価指標に関する学習用栽培評価指標情報を取得する学習用栽培評価指標取得部(23)と、
前記学習用環境状態情報、前記学習用作業履歴情報及び前記学習用栽培評価指標情報を少なくとも含む学習データを学習させて、前記果菜類植物又は果樹を栽培する際の該果菜類植物又は果樹の環境状態情報及び予め計画された栽培評価指標情報の入力に対して、前記形態変更作業を含む前記果菜類植物又は果樹に対する作業を決定し出力する学習モデル(25)を生成する学習処理部(24)と、
を備えたことを特徴とする学習装置(100)。
【符号の説明】
【0098】
100 学習装置
21 学習用環境状態情報取得部
22 学習用作業履歴情報取得部
23 学習用収穫量取得部
24 学習処理部
25 学習器
500 学習装置
521 学習用環境状態情報取得部
522 学習用作業履歴情報取得部
523 学習用収穫量取得部
524 学習用生育状態情報取得部
525 学習処理部
526 学習器
200 栽培管理装置
220 環境状態情報取得部
221 計画収穫量取得部
223 演算部
224 作業指示情報
600 栽培管理装置
620 環境状態情報取得部
621 生育状態情報取得部
622 計画収穫量取得部
624 演算部
625 作業指示情報