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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220913BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021501112
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2019000172
(87)【国際公開番号】W WO2020169998
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 公洋
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 晋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 礼
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-121457(JP,A)
【文献】特開2003-018864(JP,A)
【文献】特開2008-067546(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気部品から構成されるインバータと、
電力を平滑化する平滑コンデンサと、
前記インバータ及び前記平滑コンデンサを収容する筐体と、
前記平滑コンデンサと前記インバータとを接続する第1導体部と、を備える電力変換装置であって、
前記筐体は、前記インバータ及び前記平滑コンデンサを載置し、絶縁性を有する樹脂材料により形成されるベース部と、前記インバータ及び前記平滑コンデンサを覆うように前記ベース部に取り付けられるカバー部と、から構成され、
前記第1導体部は、前記平滑コンデンサと前記インバータとを接続する途中において、前記筐体の前記ベース部に近接または接触する、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記平滑コンデンサと前記筐体の外部の電源とを接続する第2導体部をさらに備え、
前記第2導体部は、前記平滑コンデンサと前記電源とを接続する途中において、前記筐体の前記ベース部に近接または接触する、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置であって、
前記平滑コンデンサを冷却するための第3導体部をさらに備え、
前記第3導体部は、前記平滑コンデンサに接続するとともに、前記筐体の前記ベース部に近接または接触する部分を有する、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記平滑コンデンサと前記筐体の外部の電源とを接続する第2導体部と
前記筐体の前記ベース部に接触する弾性導電部材と、をさらに備え、
前記第2導体部は、前記平滑コンデンサと前記電源とを接続する途中において、前記筐体の前記ベース部に近接または接触し、
前記第1導体部、前記第2導体部、前記第3導体部の少なくともいずれかは、前記ベース部に近接する部分において前記弾性導電部材に接触する、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の電力変換装置であって、
前記ベース部は、前記インバータを載置した部分の下方に、前記インバータを冷却する冷媒が流れる第1冷媒流路を備える、
電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記平滑コンデンサと前記筐体の外部の電源とを接続する第2導体部と
前記平滑コンデンサを冷却するための第3導体部と、をさらに備え、
前記第2導体部は、前記平滑コンデンサと前記電源とを接続する途中において、前記筐体の前記ベース部に近接または接触し、
前記第3導体部は、前記平滑コンデンサに接続するとともに、前記筐体の前記ベース部に近接または接触する部分を有し、
前記ベース部は、前記第1導体部、前記第2導体部、前記第3導体部の少なくともいずれかに対向する部分の下方に、冷媒が流れる第2冷媒流路を備える、
電力変換装置。
【請求項7】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記ベース部は、前記弾性導電部材に接触する金属部材と、前記インバータを載置した部分の下方に形成されるとともに、前記インバータを冷却する冷媒が流れる第1冷媒流路と、前記弾性導電部材が接触する部分の下方に形成されるとともに、冷媒が流れる第2冷媒流路とを備え、
前記金属部材は前記第2冷媒流路に対向する位置に設けられる、
電力変換装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電力変換装置であって、
前記第3導体部は、前記第2冷媒流路近傍と対向する位置において前記ベース部に挿入される、
電力変換装置。
【請求項9】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記ベース部は、前記インバータ及び前記平滑コンデンサを載置する側の面から突出する突出部を有し、
前記第1導体部及び前記第2導体部の少なくともいずれかには、前記突出部が挿入される位置決め孔が設けられる、
電力変換装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の電力変換装置であって、
前記平滑コンデンサのコンデンサケース上面は、弾性部材を介して前記筐体の前記カバー部に接触している、
電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置であって、
前記弾性部材は、前記コンデンサケースよりも熱伝導率の高い材料で構成される、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2018-121457Aには、インバータと、平滑コンデンサと、インバータ及び平滑コンデンサを収容する金属筐体とを有する電力変換装置が開示されている。この電力変換装置では、平滑コンデンサとインバータとが導体部により接続され、導体部と金属筐体との間の絶縁性を確保するために、導体部と筐体との間に絶縁材を介在させている。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、上記した電力変換装置は、導体部と筐体の間に別部材である絶縁材を介在させているため、構成部品数が多くなり、製造コストが増大する。
【0004】
一方、絶縁材を用いずに、導体部と金属筐体との絶縁空間距離を大きくして絶縁性を確保することも可能であるが、この場合、大きなスペースが必要となり、装置が大型化してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、平滑コンデンサに接続する導体部と筐体との間の絶縁性を確保しつつ、低コスト化及び省スペース化が可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様によれば、複数の電気部品から構成されるインバータと、電力を平滑化する平滑コンデンサと、インバータ及び平滑コンデンサを収容する筐体と、平滑コンデンサとインバータとを接続する第1導体部と、を備える電力変換装置が提供される。筐体は、樹脂材料により形成され、インバータ及び平滑コンデンサを載置するベース部と、インバータ及び平滑コンデンサを覆うようにベース部に取り付けられるカバー部と、から構成される。第1導体部は、平滑コンデンサとインバータとを接続する途中において、筐体のベース部に近接または接触する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態による電力変換装置の断面模式図である。
図2図2は、図1とは異なる位置における、第1実施形態による電力変換装置の断面模式図である。
図3図3は、平滑コンデンサの底面斜視図である。
図4図4は、カバー部が取り付けられる前の筐体のベース部の断面図である。
図5図5は、平滑コンデンサの取付図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例による電力変換装置の断面模式図である。
図7図7は、第2実施形態による電力変換装置の断面模式図である。
図8図8は、平滑コンデンサの底面斜視図である。
図9図9は、第2実施形態の変形例による電力変換装置の断面模式図である。
図10図10は、第3実施形態による電力変換装置の断面模式図である。
図11図11は、第4実施形態による電力変換装置の断面模式図である。
図12図12は、第4実施形態の変形例による電力変換装置の断面模式図である。
図13図13は、平滑コンデンサの底面斜視図である。
図14図14は、第5実施形態による電力変換装置の断面模式図である。
図15図15は、平滑コンデンサの底面斜視図である。
図16図16は、第6実施形態による電力変換装置の断面模式図である。
図17図17は、平滑コンデンサの外観を示す電力変換装置の断面模式図である。
図18図18は、その他の実施形態の電力変換装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置100について説明する。
【0010】
図1及び図2は、第1実施形態による電力変換装置の断面模式図であり、図1は入力用の導体部を含む部分の断面図、図2は出力用の導体部を含む部分の断面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、電力変換装置100は、インバータ1、平滑コンデンサ2、筐体3から構成され、車両等に搭載される。
【0012】
インバータ1及び平滑コンデンサ2は筐体3に収容される。また、インバータ1と平滑コンデンサ2とは複数の導体部10(第1導体部)により電気的に接続され、平滑コンデンサ2と筐体外部の電源4とは複数の導体部20,30(第2導体部)により電気的に接続される。
【0013】
インバータ1は複数の電気部品で構成され、半導体素子を内蔵するパワーモジュール11及び制御回路を備える制御基板12を備え、電力を直流または交流に変換する機能を有している。
【0014】
パワーモジュール11は複数の半導体素子を組み合わせて構成される。パワーモジュール11は基板111に載置され、ボルト等により基板111上に固定される。基板111は後述する筐体3のベース部31にボルト等で固定される。また、パワーモジュール11は、制御基板12に電気的に接続するとともに、導体部10を介して平滑コンデンサ2に接続する。導体部10は、パワーモジュール11に設けられた端子部112においてボルト等によりパワーモジュール11に固定される。
【0015】
平滑コンデンサ2は、コンデンサ素子21、充填材22、コンデンサケース23から構成され、インバータ1と略水平方向に並んで配置される。コンデンサケース23は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリフタルアミド(PPA)等の樹脂により構成され、コンデンサ素子21を収容する。コンデンサ素子21は、導体部10を介してインバータ1のパワーモジュール11に接続するとともに、導体部20及び導体部30を介して筐体3外部の電源4に接続する。充填材22は例えばシリコーン含有のポッティング材であり、コンデンサ素子21の周囲を満たし、コンデンサ素子21をコンデンサケース23内に固定する。
【0016】
筐体3は、インバータ1及び平滑コンデンサ2を載置するベース部31と、インバータ1及び平滑コンデンサ2を覆うようにベース部31に取り付けられるカバー部32と、ベース部31の下面に設けられ、カバー部32の底板として機能する薄板33から構成される。
【0017】
ベース部31は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリフタルアミド(PPA)等の電気絶縁性の樹脂材料により板状部材として構成され、載置面311にインバータ1及び平滑コンデンサ2を搭載する。ベース部31は、インバータ1を搭載した部分の下方に、インバータ1を冷却する冷却水(冷媒)が流れる冷却路34(第1冷媒流路)を備える。ベース部31の下面312には、下面312の外形よりも大きいアルミニウム等からなる金属製の薄板33が設けられる。
【0018】
ベース部31の冷却路34の上面には、冷却路34よりも大きな外形を有する基板111が設置され、基板111はボルト等によりベース部31に締結される。パワーモジュール11の下部にはフィン113が設けられる。基板111にはフィン113を通す複数の孔が設けられ、フィン113は孔を通して冷却路34内の冷却水に接触している。なお、パワーモジュール11にはフィン113を設けて冷却水に接触させることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、フィン113を設けていなくてもよい。
【0019】
カバー部32は、例えばアルミニウム等の金属材料により形成され、インバータ1及び平滑コンデンサ2の周囲を覆うようにベース部31に取り付けられる。カバー部32は、上壁321及び側壁322から構成され、側壁322には、電源4に接続する入力用の導体部30aが通るように開口された開口部323a(図1)及び、電源4に接続する出力用の導体部30bが通るように開口された開口部323b(図2)が形成される。また、側壁322の内側部位には、ベース部31の載置面311に当接する端面を有する段部324が形成される。側壁322の先端面325は、ベース部31の下面312に設けられた薄板33の外周縁331に当接する。カバー部32、ベース部31及び薄板33は、カバー部32の段部324とベース部31の載置面311とが当接する部分において薄板33の外側からボルト等により共締めされることにより締結される。このようにして、金属材料により形成されたカバー部32と薄板33とによってインバータ1及び平滑コンデンサ2を完全に覆うことで、電力変換装置100の電磁シールド性を高めることができる。なお、カバー部32の上壁321に、開閉可能な蓋部326を設けて、後述する導体部20と導体部30との締結をメンテナンスできるようにしてもよい。
【0020】
図3は平滑コンデンサ2の底面斜視図である。
【0021】
平滑コンデンサ2のコンデンサケース23は内部にコンデンサ素子21を収容し、コンデンサ素子21の周囲は充填材22で満たされている。充填材22の周囲は、コンデンサケース23の上面231、前面232、後面233、及び側面234により覆われている。コンデンサケース23の底面は開口し、平滑コンデンサ2の底面において充填材22がポッティング面221を形成する。
【0022】
また、コンデンサケース23は、前面232及び後面233から外側方向に突出するブラケット24及び底面から下方に突出する位置決めピン25を備える。ブラケット24は平滑コンデンサ2を筐体3に締結するための部材である。ブラケット24には、平滑コンデンサ2をベース部31に締結するためのボルト等が通る穴部241が設けられる。位置決めピン25は、筐体3内における平滑コンデンサ2の水平方向の位置を決定する部材である。位置決めピン25は、平滑コンデンサ2の底面におけるコンデンサケース23の一方側側面234bと前面232が接続する角部235、及び平滑コンデンサ2の底面におけるコンデンサケース23の一方側側面234bと後面233が接続する角部236からそれぞれ底面の下方に向かって突出する。位置決めピン25がベース部31に挿通されることで、平滑コンデンサ2の筐体3に対する水平方向の位置が位置決めされる。
【0023】
なお、本実施形態では、位置決めピン25は、平滑コンデンサ2の底面におけるコンデンサケース23の一方側側面234bと前面232及び後面233が接続する角部235,236にそれぞれ設けられるが、位置決めピン25の個数及び位置はこれに限らない。例えば平滑コンデンサ2の底面における4つの角部すべてに設けても良い。
【0024】
ポッティング面221からは、コンデンサ素子21に接続する複数の導体部10及び導体部20が平滑コンデンサ2の外部へと延在される。導体部10、導体部20及び後述する導体部30は、例えば導電性の良い銅やアルミニウム等で構成された金属バスバーである。導体部10は、ポッティング面221におけるコンデンサケース23の一方側側面234aの近傍から平滑コンデンサ2の外部に突出し、コンデンサ素子21とインバータ1のパワーモジュール11とを電気的に接続する。また、導体部20は、ポッティング面221におけるコンデンサケース23の他方側側面234bの近傍から平滑コンデンサ2の外部に突出し、導体部30を介してコンデンサ素子21と電力変換装置100外部の電源4とを電気的に接続する。導体部20及び導体部30は、それぞれ電源4からの電力を入力する入力用の導体部20a及び導体部30aと、電源4に電力を出力する出力用の導体部20b及び導体部30bとを備える。なお、導体部の配置の詳細については後述する。
【0025】
図4は筐体3のベース部31の断面図であり、カバー部32が取り付けられる前のベース部31を示す図である。また、図5は電力変換装置100の断面図であり、平滑コンデンサ2の取付図である。
【0026】
ベース部31は電気絶縁性の樹脂材料により形成され、図4に示すように、本体部313及び底板部314から構成される。本体部313は、冷却路34を形成するための開口部315、底板部314を接合するための接合部316、導体部20と導体部30とを締結するための端子部317を有する。また、図5に示すように、本体部313はさらに、平滑コンデンサ2を保持するための保持部318及び平滑コンデンサ2を位置決めする位置決めピン25が挿通されるピン受け部319を有する。
【0027】
本体部313の開口部315は、ベース部31におけるインバータ1を載置する箇所に設けられ、上面及び底面が開口している。接合部316は、後述する底板部314の凸部3141が挿通され接合される部分である。接合部316は下面が開口した孔であり、開口部315の周りに設けられる。
【0028】
底板部314は、本体部313の開口部315よりも大きな外形を有するとともに、本体部313の接合部316に対応する位置に底板部314の上面から上方に突出する凸部3141を有する。凸部3141と本体部313の接合部316とは、溶着等により接合され、本体部313と底板部314とが接合されることにより、開口部315の位置に凹部341が形成される。凹部341は、インバータ1を冷却する冷却水を流す冷却路34を構成するための溝である。図5に示すように、凹部341の上部をパワーモジュール11の基板111により覆うことで、本体部313、底板部314及び基板111に囲まれた冷却路34(第1冷媒流路)が形成される。
【0029】
図5に示すように、本体部313の端子部317は、平滑コンデンサ2に接続する導体部20と、電源4に接続する導体部30とが接続される部分であり、平滑コンデンサ2が設置される箇所と筐体3の側壁322との間の位置に設けられる。端子部317は、ベース部31の載置面311から上方に向かって突出するようにベース部31と一体的に設けられ、導体部20と導体部30とは、端子部317の上面3171において、ボルト等によりベース部に共締めされることで締結される。このように、筐体3を構成するベース部31と一体的に端子部317を設けることで、端子部317を別部材として設ける場合に比べコストダウンを図ることができる。
【0030】
本体部313の保持部318は、平滑コンデンサ2を保持するための部分であり、平滑コンデンサ2のブラケット24が対向する位置に、ベース部31の載置面311から上方に向かって突出するように設けられる。平滑コンデンサ2は、ブラケット24の穴部241を介してボルト等により保持部318に締結される。これにより、特に筐体3に対する平滑コンデンサ2の上下方向の動きが規制される。
【0031】
本体部313のピン受け部319は、平滑コンデンサ2の位置決めピン25に対応する位置に、ベース部31の載置面311から上方に向かって突出するように設けられる。ピン受け部319に位置決めピン25が挿通されることで、筐体3に対する平滑コンデンサ2の水平方向の位置が位置決めされる。
【0032】
なお、平滑コンデンサ2の位置決めを容易にするために、上記のようにコンデンサケース23に位置決めピン25を、ベース部31にピン受け部319をそれぞれ設けることが好ましいが、これらは必ずしも設ける必要はない。
【0033】
ベース部31の冷却路34を設けない部分には、底面が開放された空洞部3101を形成してもよい。これにより、電力変換装置100が軽量化される。なお、空洞部3101の個数や形状は特に限定されず、例えば大きな空洞部を一つ設けてもよく、また底面が閉じられた構造であってもよい。
【0034】
次に導体部の配置の詳細について説明する。
【0035】
図1及び図2に示すように、インバータ1と平滑コンデンサ2とを電気的に接続する導体部10は、一端が平滑コンデンサ2のコンデンサ素子21に接続し、平滑コンデンサ2のポッティング面221から下方に向かって突出する。導体部10の他端はインバータ1のパワーモジュール11に設けられた端子部112において、ボルト等によりパワーモジュール11に固定される。これにより、インバータ1と平滑コンデンサ2とは、導体部10により電気的に接続される。
【0036】
また、導体部10は、平滑コンデンサ2のコンデンサ素子21とインバータ1のパワーモジュール11とを接続する途中において、筐体3のベース部31に近接する。このように、導体部10をベース部31に近接する位置に配置しても、ベース部31は絶縁性の材料により形成されているため、導体部10と筐体3との間の絶縁性は確保される。また、導体部10はベース部31に近接するため、導体部10の熱はベース部31と導体部10の間の空間を介してベース部31にも抜熱される。ここで、ベース部31は冷却路34を備えるため、冷却路34を流れる冷却水により、ベース部31も冷却されている。従って、冷却水により冷却されたベース部31と導体部10との間で熱交換がされ、導体部10が接続する平滑コンデンサ2が冷却される。
【0037】
導体部20及び導体部30は、平滑コンデンサ2と筐体3の外部の電源4とを電気的に接続する部材である。導体部20は、入力用の導体部20a及び出力用の導体部20bから構成され、導体部30は入力用の導体部30a及び出力用の導体部30bから構成される。図1図3に示すように、導体部20a,20bは、一端が平滑コンデンサ2のコンデンサ素子21に接続し、平滑コンデンサ2のポッティング面221から下方に向かって突出する。導体部20a,20bの他端は、ベース部31の載置面311から上方に向かって突出する端子部317a,317bの上面3171a,3171bにおいて、導体部30a,30bに接続する。導体部20a,20bと導体部30a,30bとは、端子部317a,317bの上面3171a,3171bにおいて、ボルト等によりベース部31に共締めされる。
【0038】
また、導体部20a,20bは、平滑コンデンサ2のコンデンサ素子21と導体部30a,30bとを接続する途中において、筐体3のベース部31に近接する。このように、導体部20a,20bをベース部31に近接する位置に配置しても、ベース部31は絶縁性の材料により形成されているため、導体部20a,20bと筐体3との間の絶縁性は確保される。また、導体部10と同様に、導体部20a,20bはベース部31に近接するため、導体部20a,20bの熱はベース部31と導体部20a,20bとの間の空間を介してベース部31にも抜熱される。即ち導体部10と同様に、冷却水により冷却されたベース部31と導体部20a,20bとの間で熱交換がされ、導体部20a,20bが接続する平滑コンデンサ2が冷却される。
【0039】
導体部30a,30bは、一端が端子部317a,317bの上面3171a,3171bにおいて導体部20a,20bに接続されるとともに、筐体3の側壁322に形成された開口部323a,323bから筐体3の外部に延設される。導体部30a,30bの他端は外部の電源4に接続される。このように平滑コンデンサ2と電源4とは、入力用の導体部20aと導体部30a、及び出力用の導体部20bと30bを介して電気的に接続される。
【0040】
なお、導体部10及び導体部20がベース部31に近接する部分の長さは特に限定されないが、冷却水による冷却効果をより大きくするために、近接する部分の距離はできるだけ長い方が好ましい。
【0041】
また、図3では、6つの導体部10、それぞれ2つの導体部20a及び導体部20bが平滑コンデンサ2から突出しているが、導体部の個数はこれに限らない。
【0042】
上記した第1実施形態の電力変換装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0043】
電力変換装置100は、筐体3が樹脂材料により形成され、インバータ1及び平滑コンデンサ2を載置するベース部31と、インバータ1及び平滑コンデンサ2を覆うようにベース部31に取り付けられるカバー部32と、から構成される。そして、平滑コンデンサ2とインバータ1とを接続する導体部10(第1導体部)は、平滑コンデンサ2とインバータ1とを接続する途中において、筐体3のベース部31に近接する。このように、ベース部31を絶縁性の材料により形成することで導体部10と筐体3との間の絶縁性を確保し、導体部10はベース部31に近接する位置に配置している。従って、導体部10と筐体3との間に絶縁材等の別部材を介在させる必要がないため低コスト化が可能となり、且つ導体部10をベース部31に近接する位置に配置しているため、導体部10と筐体3との絶縁空間距離を大きくする場合に比べ省スペース化が可能となる。即ち、平滑コンデンサ2に接続する導体部10と筐体3との間の絶縁性を確保しつつ、低コスト化及び省スペース化された電力変換装置を提供することができる。
【0044】
次に、電力変換装置100は、平滑コンデンサ2と筐体3の外部の電源4とを接続する導体部20,30(第2導体部)を備え、導体部20は、平滑コンデンサ2と電源4とを接続する途中において、筐体3のベース部31に近接する。ベース部31は絶縁性の材料により形成されているため、導体部10と同様に、導体部20と筐体3との間においても絶縁材等の別部材を介在させる必要がなく、低コスト化が可能となる。また、導体部20をベース部31に近接する位置に配置しているため、導体部20と筐体3との絶縁空間距離を大きくする場合に比べ省スペース化が可能となる。即ち、平滑コンデンサ2に接続する導体部20と筐体3との間の絶縁性を確保しつつ、低コスト化及び省スペース化された電力変換装置を提供することができる。
【0045】
また、電力変換装置100のベース部31は、インバータ1を冷却する冷却水(冷媒)が流れる冷却路34(第1冷媒流路)を備える。これによりインバータ1が直接冷却されるとともに、冷却水とベース部31との間の熱交換によりベース部31も冷却される。一方、導体部10,20はベース部31に近接するため、導体部10,20の熱はベース部31と導体部10,20との間の空間を介してベース部31にも抜熱される。従って、冷却水により冷却されたベース部31と導体部10,20との間で熱交換がされ、導体部10,20が接続する平滑コンデンサ2の冷却性能を向上させることができる。即ち、平滑コンデンサ2に接続する導体部10,20と筐体3との間の絶縁性を確保しつつ、平滑コンデンサ2の冷却効果を向上させた電力変換装置を提供することができる。
【0046】
(第1実施形態の変形例)
図6を参照して、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置100の変形例について説明する。
【0047】
図6は、第1実施形態の変形例による電力変換装置100の断面模式図である。図6に示すように、本変形例では、導体部10が平滑コンデンサ2のコンデンサ素子21とインバータ1のパワーモジュール11とを接続する途中において、筐体3のベース部31に接触するように配置される。このように、導体部10をベース部31に接触させても、ベース部31は絶縁性の材料により形成されているため、導体部10と筐体3との間の絶縁性は確保される。
【0048】
上記した第1実施形態の変形例によれば、さらに以下の効果を得ることができる。
【0049】
電力変換装置100は、筐体3のベース部31を絶縁性の樹脂材料により形成し、平滑コンデンサ2とインバータ1とを接続する導体部10(第1導体部)は、平滑コンデンサ2とインバータ1とを接続する途中において、筐体3のベース部31に接触する。即ち、ベース部31を絶縁性の材料により形成することで導体部10と筐体3との間の絶縁性を確保し、導体部10はベース部31に接触するように配置している。このように導体部10を筐体3に接触させることで導体部10と筐体3の間の空間をなくしているため、電力変換装置をより省スペース化することができる。即ち、平滑コンデンサ2に接続する導体部10と筐体3との間の絶縁性を確保しつつ、より省スペース化された電力変換装置を提供することができる。
【0050】
また、導体部10が筐体3のベース部31に接触しているため、ベース部31を介して冷却路34(第1冷媒流路)を流れる冷却水と導体部10との間で熱交換が行われる。即ち、導体部10とベース部31との間の空間を介することなく冷却水と導体部10との間の熱交換が行われる。従って、導体部10が筐体3のベース部31に接触していない場合に比べ、冷却路34を流れる冷却水による冷却効果がより導体部10に伝わりやすく、導体部10に接続される平滑コンデンサ2の冷却性能をより向上することができる。即ち、筐体3と導体部10との間の絶縁性を確保しつつ平滑コンデンサ2の冷却性能をより向上させた電力変換装置を提供することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、導体部10のみをベース部31に接触させているが、導体部10及び導体部20のいずれもベース部31に接触させる配置にしてもよく、また導体部20のみをベース部31に接触させ、導体部10はベース部31に近接させるように配置してもよい。
【0052】
(第2実施形態)
図7及び図8を参照して、第2実施形態による電力変換装置100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図7は第2実施形態による電力変換装置100の断面模式図であり、図8は平滑コンデンサ2の底面斜視図である。図7及び図8に示すように、本実施形態では、冷却専用の導体部40(第3導体部)を設けた点が第1実施形態及び第1実施形態の変形例と異なる。
【0054】
図8に示すように、平滑コンデンサ2は底面に充填材22により形成されるポッティング面221を有し、ポッティング面221からは、導体部10及び導体部20に加えて導体部40がコンデンサの外部に延在される。
【0055】
導体部40は、コンデンサを冷却するための部材であり、例えば導電性の良い銅やアルミニウム等で構成される。図7に示すように、導体部40は一端がコンデンサ素子21に接続し、他端はベース部31に接触する。また、導体部40は、ポッティング面221におけるコンデンサケース23の一方側側面234aの近傍から平滑コンデンサ2の外部に突出し、ベース部31に接触する位置まで延設される。ベース部31に接する位置において、導体部40は曲げ加工がされ、ベース部31に接触したまま平滑コンデンサ2の内側方向に延設される。これにより、導体部40とベース部31とが接触する接触面401が形成される。
【0056】
このように、導体部40はベース部31と接触するため、ベース部31を介して冷却路34を流れる冷却水と導体部40との間で熱交換が行われ、導体部40及び導体部40に接続する平滑コンデンサ2が冷却される。即ち、冷却専用の導体部40を設けることで、冷却水による冷却効果がベース部31を介して導体部40に伝わるため、平滑コンデンサ2の冷却性能がより向上される。また、このように導体部40をベース部31に接触する位置に配置しても、ベース部31は絶縁性の材料により形成されているため、導体部40と筐体3との間の絶縁性は確保される。
【0057】
また、導体部40はベース部31と接触する位置において曲げ加工が施され、導体部40とベース部31との間には接触面401が形成されるため、導体部40とベース部31との接触面積が拡大され、平滑コンデンサ2の冷却性能はさらに向上される。
【0058】
上記した第2実施形態による電力変換装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
電力変換装置100は、筐体3のベース部31を絶縁性の樹脂材料により形成するとともに、平滑コンデンサ2を冷却するための導体部40を備える。導体部40は、平滑コンデンサ2に接続するとともに、筐体3のベース部31に接触する部分を有する。即ち、ベース部31を絶縁性の材料により形成することで導体部40と筐体3との間の絶縁性を確保し、導体部40はベース部31に接触させている。これにより、ベース部31を介して冷却路34を流れる冷却水と導体部40との間で熱交換が行われる。このように、冷却路34流れる冷却水による冷却効果がベース部31を介して導体部40に伝わるため、導体部40に接続される平滑コンデンサ2の冷却性能がより向上される。従って、筐体3と導体部40との絶縁性を確保しつつ平滑コンデンサ2の冷却効果がより向上した電力変換装置を提供することができる。
【0060】
なお、平滑コンデンサ2の冷却性能をより高めるために、導体部40は本実施形態のようにベース部31に接触させて配置するのが好ましいが、必ずしもこれに限られず、導体部40をベース部31に近接する位置に配置してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、導体部40は平滑コンデンサ2の内側方向に曲げ加工が施されているが、曲げ加工の方向は平滑コンデンサ2の外側方向であってもよい。
【0062】
また、本実施形態では、導体部40はコンデンサケース23の一方側側面234aの近傍から平滑コンデンサ2の外部に突出するように設けているが、導体部40をコンデンサケース23の他方側側面234bの近傍から突出するように設けてもよい。
【0063】
また、図8では、コンデンサケース23に位置決めピン25を設けていないが、第1実施形態のように位置決めピン25及びピン受け部319を設けて平滑コンデンサ2の位置決めを行ってもよい。
【0064】
(第2実施形態の変形例)
図9を参照して、第2実施形態の変形例による電力変換装置100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図9は第2実施形態の変形例による電力変換装置100の断面模式図である。図9に示すように、本変形例では、導体部10(第1導体部)及び導体部40(第3導体部)とベース部31とは直接には接触せず、導体部10及び導体部40と筐体3のベース部31との間に弾性導電部材5が挟まれている。
【0066】
図9に示すように、平滑コンデンサ2の底面に形成されるポッティング面221から突出する導体部10は、平滑コンデンサ2とインバータ1とを接続する途中において、筐体3のベース部31に近接する。また、平滑コンデンサ2の底面に形成されるポッティング面221から突出する導体部40は、筐体3のベース部31に近接する位置で平滑コンデンサ2の内側方向に曲げ加工が施されている。なお、第2実施形態と同様に、曲げ加工の方向は平滑コンデンサ2の外側方向であってもよい。
【0067】
また、図9に示すように、導体部10,40とベース部31との間には、弾性導電部材5が介在している。弾性導電部材5は、例えば導電性の高いグリス、接着剤、シート等であり、導体部10,40とベース部31とが近接する部分において、各導体部とベース部31との間にそれぞれ設けられる。弾性導電部材5の上表面51は導体部10,40に接触し、底面52はベース部31に接触する。
【0068】
このように、導電性の高い弾性導電部材5を導体部10,40とベース部31との間に介在させることにより、弾性導電部材5は導体部10,40とベース部31との間の寸法の公差吸収機能を果たす。これにより、導体部10,40をベース部31に直接接触させる場合に比べ、導体部10,40とベース部31との間の熱伝達率を向上させることができる。即ち、ベース部31を介して行われる冷却路34を流れる冷却水と導体部10,40との間の熱交換率が向上する。また、このように導体部10,40を導電性の高い弾性導電部材5を介して筐体3のベース部31に接触させていても、ベース部31は絶縁性の材料により形成されているため、導体部10,40と筐体3との間の絶縁性は確保される。
【0069】
上記した第2実施形態の変形例によれば、さらに以下の効果を得ることができる。
【0070】
電力変換装置100は、筐体3のベース部31を絶縁性の樹脂材料により形成するとともに、ベース部31に接触する弾性導電部材5を備え、導体部10(第1導体部)及び導体部40(第3導体部)はベース部31に近接する部分において弾性導電部材5に接触する。即ち、ベース部31を絶縁性の材料により形成することで導体部10,40と筐体3との間の絶縁性を確保し、導体部10,40は弾性導電部材5を介してベース部31に接触させている。このように、導体部10,40とベース部31とが近接する部分に、ベース部31及び導体部10,40に接触する弾性導電部材5を設けることで、弾性導電部材5は導体部10,40とベース部31との間の寸法の公差吸収機能を果たす。これにより、導体部10,40をベース部31に直接接触させる場合に比べ、導体部10,40とベース部31との間の熱伝導率を向上させることができる。従って、ベース部31を介して行われる冷却路34を流れる冷却水と導体部10,40との間の熱交換率が向上し、平滑コンデンサ2の冷却性能をさらに向上させることができる。即ち、筐体3と導体部10,40との間の絶縁性を確保しつつ平滑コンデンサ2の冷却性能をさらに向上させた電力変換装置を提供することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、導体部10,40とベース部31との間に弾性導電部材5を介在させているが、導体部20とベース部31とが近接する部分に、導体部20及びベース部31に接触する弾性導電部材5を設けてもよい。
【0072】
(第3実施形態)
図10を参照して、第3実施形態による電力変換装置100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
図10は第3実施形態による電力変換装置100の断面模式図である。図10に示すように、本実施形態では、ベース部31が、弾性導電部材5の下方に冷却水(冷媒)が流れる第2の冷却路35(第2冷媒流路)を備える。
【0074】
図10に示すように、ベース部31の本体部313は、導体部10,40が対向する位置の下方、即ち、弾性導電部材5の下方に底面が開口した凹部351を有する。また、本体部313は、開口部315の周り及び凹部351の周りに下面が開口した孔である接合部316を有する。
【0075】
また、ベース部31の底板部314は、本体部313の開口部315及び凹部351のいずれの底面も覆うことができる大きさの外形を有するとともに、接合部316に対応する位置に、底板部314の上面から上方に突出する凸部3141を有する。凸部3141と本体部313の接合部316とは溶着等により接合され、本体部313と底板部314とが接合されることにより、開口部315の位置に本体部313、底板部314及びパワーモジュール11の基板111により囲まれる冷却路34が形成される。また、凹部351の位置に本体部313及び底板部314により囲まれる第2の冷却路35が形成される。
【0076】
冷却路35は平滑コンデンサ2を冷却するための冷却水が流れる流路であって、導体部10,40が対向する位置の下方、即ち、弾性導電部材5の下方に形成されるとともに、冷却路34に接続する。従って、冷却水は、冷却路34と冷却路35とを循環して流れる。このように、導体部10,40が対向する位置の下方に第2の冷却路35を設けることで、ベース部31が冷却路34のみを有する場合に比べ、導体部10,40と冷却水との間の伝熱経路が短縮され、平滑コンデンサ2の冷却性能をさらに向上させることができる。また、第2実施形態の変形例と同様に、導体部10,40は導電性の高い弾性導電部材5を介して筐体3のベース部31に接触させているが、ベース部31は絶縁性の材料により形成されているため、導体部10,40と筐体3との間の絶縁性は確保される。
【0077】
なお、冷却路34と冷却路35とは、平滑コンデンサ2よりもインバータ1(パワーモジュール11)をより冷却したい場合は冷却路34を上流側に、平滑コンデンサ2をより冷却したい場合は冷却路35を上流側にすればよい。
【0078】
上記した第3実施形態による電力変換装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0079】
電力変換装置100は、筐体3のベース部31を絶縁性の樹脂材料により形成するとともに、ベース部31は、導体部10、40に対向する部分の下方、即ち、弾性導電部材5の下方に冷却水(冷媒)が流れる冷却路35(第2冷媒流路)を備える。即ち、ベース部31を絶縁性の材料により形成することで導体部10,40と筐体3との間の絶縁性を確保し、導体部10,40が接触する弾性導電部材5の下方には第2の冷却路35を設けている。これにより、ベース部31がインバータ1を冷却するための冷却路34のみを有する場合に比べ、導体部10,40と冷却水との間の伝熱経路が短縮され、平滑コンデンサ2の冷却性能はさらに向上する。即ち、筐体3と導体部10,40との絶縁性を確保しつつ平滑コンデンサ2の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、導体部10,40とベース部31との間に弾性導電部材5を介在させているが、弾性導電部材5を介在させずに導体部10,40を直接ベース部31に接触させてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、冷却路34と冷却路35とが接続し、冷却水が冷却路34と冷却路35との間で循環する構成としたが、冷却路34と冷却路35とをそれぞれ独立した別の流路にして、両流路が接続しない構成にしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、ベース部31の導体部10,40に対向する部分に冷却路35を設けているが、導体部10または導体部40のいずれか一方に対向する位置のみに冷却路35を設けてもよく、また、導体部20に対向する部分に冷却路35を設けてもよい。また、ベース部31の導体部10,40に対向する部分に冷却路45を、導体部20に対向する部分にさらに別の冷却路を設ける構成であってもよい。
【0083】
(第4実施形態)
図11を参照して、第4実施形態による電力変換装置100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0084】
図11は第4実施形態による電力変換装置100の断面模式図である。図11に示すように、本実施形態では、ベース部31が金属部材6を備える点が第3実施形態と異なる。
【0085】
図11に示すように、ベース部31は、平滑コンデンサ2を冷却する冷却水が流れる冷却路35(第2冷媒流路)及び冷却路35に対向する位置に設けられる金属部材6を備える。冷却路35は、正面方向から見た断面の中央に凹部352が形成された略U字型の断面形状を有する。
【0086】
金属部材6は、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料で構成され、弾性導電部材5直下の冷却路35に対向する位置に設けられる。金属部材6は、冷却路35の正面方向から見た断面においてT字型の形状を有し、弾性導電部材5に接触する上面611を有する上部61及び冷却路35の凹部351に向かって突出する凸部62から構成される。金属部材6は、インサート成形や圧入によるアウトサート成形等により、ベース部31に一体化して設けられる。
【0087】
このように熱伝導率の高い金属部材6を、冷却路35に対向する位置に、冷却路35に向かって突出するように設けているため、平滑コンデンサ2に接続する導体部10,40の熱を弾性導電部材5及び金属部材6を介して冷却路35の近傍まで効率良く伝熱することができる。また、金属部材6と冷却路35との間には、樹脂材料により形成されるベース部31が介在しているため、金属部材6と筐体3及び冷却水との間の絶縁性が確保され、導体部10,40と筐体3との絶縁性が確保される。
【0088】
また、冷却路35は正面方向から見た断面において略U字型の形状に設けられているため、丸形や四角形の冷却路を設けた場合に比べ、冷却水とベース部31との接触表面積が大きくなる。これにより、冷却水とベース部31との間の熱交換率が向上し、ベース部31を介して行われる冷却水と導体部10,40との間の熱交換率も向上する。従って、導体部10,40に接続される平滑コンデンサ2の冷却性能がさらに向上する。
【0089】
上記した第4実施形態による電力変換装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0090】
電力変換装置100は、筐体3のベース部31を絶縁性の樹脂材料により形成するとともに、ベース部31は弾性導電部材5に接触する金属部材6を備え、金属部材6は冷却路35に対向する位置に設けられる。このように、弾性導電部材5に接触する金属部材6を冷却路35に対向する位置に設けているため、平滑コンデンサ2に接続する導体部10,40の熱を弾性導電部材5及び金属部材6を介して冷却路35の近傍まで効率良く伝熱することができる。また、金属部材6と冷却路35との間には、樹脂材料により形成されるベース部31が介在しているため、金属部材6と筐体3及び冷却水との間の絶縁性が確保され、導体部10,40と筐体3との絶縁性が確保される。従って、導体部10,40と筐体3との間の絶縁性を確保しつつ、平滑コンデンサ2の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態による電力変換装置100は、弾性導電部材5に接触する金属部材6が導体部10,40の熱を蓄積する熱マスとしても機能する。従って、金属部材6によりベース部31の熱容量が増加するため、導体部10,40に接続する平滑コンデンサ2の温度上昇を低く抑えることができ、平滑コンデンサ2の過渡熱性能が向上する。
【0092】
なお、本実施形態では、金属部材6を導体部10,40に接触する弾性導電部材5の直下に設けているが、導体部20の下に弾性導電部材5、弾性導電部材5に接触する金属部材6及び冷却路35を設けてもよい。
【0093】
また、冷却水とベース部31との接触表面積を大きくするため、冷却路35の断面は略U字型に形成し、金属部材6をより冷却水に近づけるために金属部材6の断面をT字形に形成することが好ましいが、冷却路35及び金属部材6の形状は必ずしもこれに限らない。金属部材6が弾性導電部材5に接触し、金属部材6と冷却路35との間にベース部31が介在していれば冷却路35及び金属部材6はいかなる形状であってもよい。
【0094】
(第4実施形態の変形例)
図12及び図13を参照して、本発明の第4実施形態に係る電力変換装置100の変形例について説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
図12は第4実施形態の変形例による電力変換装置100の断面模式図、図13は平滑コンデンサ2の底面斜視図である。図12及び図13に示すように、本変形例では、ベース部31が平滑コンデンサ2を位置決めするための突出部310を有し、導体部10,20には突出部310挿入される孔101,201(位置決め孔)が形成される。
【0096】
図12に示すように、ベース部31は、後述する導体部10,20の孔101,201に対応する位置に、インバータ1及び平滑コンデンサ2を載置する側の面(載置面311)から突出する突出部310を有する。突出部310はベース部31と一体的に設けられ、導体部10,20の孔101,201に挿入される。
【0097】
図12及び図13に示すように、平滑コンデンサ2のポッティング面221から下方に向かって突出する導体部10,20は、ベース部31に近接する箇所に、それぞれベース部31の突出部310が挿入される孔101,201を備える。
【0098】
孔101,201は、複数の導体部10,20のうち、対向して配置されている導体部10及び導体部20に設けられ、導体部10の孔101の中心点と、導体部10に対向する導体部20の孔201の中心点とは、平滑コンデンサ2の前面232及び後面233に平行な直線上に配置される。孔101,201にベース部31の突出部310が挿入されることで、平滑コンデンサ2が位置決めされるともに、導体部10,20も位置決めされる。
【0099】
なお、孔101,201は、平滑コンデンサ2の位置決めの安定性を確保する観点から、対向して配置される導体部10及び導体部20に設けることが好ましいが、これに限らない。例えば、互いに対向しない導体部に設けてもよく、また、導体部40に位置決め孔を設けてもよい。さらに本実施形態では、孔101,201をそれぞれ導体部10及び導体部20に一つずつ設けているが、孔101,201を設ける導体部の個数はこれに限定されず、例えばすべての導体部に位置決め孔を設けてもよい。
【0100】
上記した第4実施形態の変形例によれば、さらに以下の効果を得ることができる。
【0101】
電力変換装置100は、筐体3のベース部31がインバータ1及び平滑コンデンサ2を載置する側の面(載置面311)から突出する突出部310を有し、導体部10,20に突出部310が挿入される孔(位置決め孔)101,201が設けられる。導体部10,20の孔101,201にベース部31の突出部310が挿入されることで平滑コンデンサ2が位置決めされるとともに、導体部10,20も位置決めされる。このように、導体部10,20が直接位置決めされるため、端子部112,317に対する導体部10,20の位置決め精度が向上し、端子部112,317における導体部の接続品質が向上する。
【0102】
(第5実施形態)
図14及び図15を参照して、第5実施形態による電力変換装置100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
図14は第5実施形態による電力変換装置100の断面模式図であり、図15は平滑コンデンサ2の底面斜視図である。図14及び図15に示すように、本実施形態では、平滑コンデンサ2を冷却するための導体部40A(第3導体部)が平滑コンデンサ2のポッティング面221から突出し、冷却路35と対向する位置においてベース部31に挿入されている点が他の実施形態と異なる。
【0104】
図14に示すように、ベース部31は、熱伝導率の高い金属部材6A、正面方向から見た断面において略U字型状に形成される冷却路35及び平滑コンデンサ2を冷却するための導体部40Aが挿入される溝402を有する。
【0105】
冷却路35は、第4実施形態と同様に、正面方向から見た断面の中央に凹部352が形成された略U字型の断面形状を有する。
【0106】
金属部材6Aは、弾性導電部材5直下の冷却路35に対向する位置に設けられ、冷却路35の正面方向から見た断面においてL字型の形状を有する。金属部材6Aは、弾性導電部材5に接触する上面611Aを有する上部61A及び冷却路35の凹部352に向かって突出する凸部62Aから構成される。凸部62Aは冷却路35の近傍まで延設され、導体部10及び弾性導電部材5を介して金属部材6Aに伝わる平滑コンデンサ2の熱を、冷却路35を流れる冷却水の近傍まで伝熱する。なお、金属部材6Aと冷却路35との間には、樹脂材料により形成されるベース部31が介在しているため、金属部材6Aと筐体3及び冷却水との間の絶縁性が確保され、導体部10と筐体3との絶縁性が確保される。
【0107】
ベース部に形成された溝402は、平滑コンデンサ2を冷却するための導体部40Aが挿入されるための溝であり、冷却路35の凹部352に向かって冷却路35の近傍まで形成される。
【0108】
導体部40Aはコンデンサを冷却するための部材であり、一端が平滑コンデンサ2のコンデンサ素子21に接続し、平滑コンデンサ2のポッティング面221におけるコンデンサケース23の一方側側面234aの近傍から平滑コンデンサ2の外部に下方に向かって突出する。導体部40Aの他端はベース部31の溝402に軽圧入等により挿入される。図14及び図15に示すように、導体部40Aには曲げ加工は施されず、平滑コンデンサ2のポッティング面221から突出し、冷却路35の近傍まで延設される。これにより、平滑コンデンサ2の熱は、導体部40Aにより冷却路35を流れる冷却水の近傍まで伝熱される。なお、ベース部31は絶縁性の樹脂材料で形成されているため、ベース部31に挿入される導体部40Aと筐体3との絶縁性は確保されている。また、導体部40Aがベース部31に挿入されることで、平滑コンデンサ2の位置決め及び端子部112,317に対する導体部10,20の位置決めをすることができる。
【0109】
上記した第5実施形態による電力変換装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0110】
電力変換装置100は、筐体3のベース部31を絶縁性の樹脂材料により形成するとともに、一端が平滑コンデンサ2に接続される導体部40A(第3導体部)は冷却路35と対向する位置においてベース部31に挿入される。これにより、平滑コンデンサ2の熱は、導体部40Aによって冷却路35を流れる冷却水の近傍まで伝熱される。一方、ベース部31は絶縁性の樹脂材料で形成されているため、ベース部31に挿入される導体部40Aと筐体3との絶縁性は確保される。従って、導体部40Aと筐体3との間の絶縁性を確保しつつ、平滑コンデンサ2の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0111】
また、導体部40Aがベース部31に挿入されることで、平滑コンデンサ2の位置決め及び端子部112,317に対する導体部10,20の位置決めをすることができる。このように、コンデンサケース23の位置決めピン25ではなく、導体部40Aによって位置決めされることで、端子部112,317に対する導体部10,20の位置決め精度が向上し、端子部112,317における導体部の接続品質が安定する。
【0112】
なお、本実施形態では、金属部材6Aの断面形状をL字型に、冷却路35の断面形状を略U字型に構成しているが、金属部材6A及び冷却路35の形状はこれに限られない。導体部40A及び金属部材6Aの一端が冷却路35の近傍に位置する構成であれば金属部材6A及び冷却路35はどのような形状であってもよい。
【0113】
(第6実施形態)
図16及び図17を参照して、第5実施形態による電力変換装置100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0114】
図16は第6実施形態による電力変換装置100の断面模式図であり、図17は平滑コンデンサ2の外観を示す電力変換装置100の断面模式図である。図16及び図17に示すように、本実施形態では、平滑コンデンサ2の上面231と筐体3のカバー部32との間に弾性部材7を挟み込む点、平滑コンデンサ2と筐体3とをボルト等で締結していない点が他の実施形態と異なる。
【0115】
図16に示すように、平滑コンデンサ2(コンデンサケース23)の上面231と、筐体3のカバー部32の上部327との間には、弾性部材7が挟み込まれる。弾性部材7はコンデンサケース23よりも熱伝導性の良い弾性材料で構成され、下面71が平滑コンデンサ2の上面231に、上面72がカバー部32の上部327の内側面に接触する。このように平滑コンデンサ2の上面231は、弾性部材7を介して筐体3のカバー部32に接触しているため、平滑コンデンサ2の上下方向の動きが規制される。このように、弾性部材7により平滑コンデンサ2の上下方向の動きが規制されるため、本実施形態では、図17に示すように、平滑コンデンサ2のブラケット24とベース部31の保持部318とをボルト等で締結していない。
【0116】
なお、弾性部材7は、熱伝導性の良い弾性材料であれば導電性の部材であっても、絶縁性の部材であってもよい。
【0117】
上記した第6実施形態による電力変換装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0118】
電力変換装置100は、平滑コンデンサ2の上面231は、弾性部材7を介して筐体3のカバー部32に接触している。これにより、平滑コンデンサ2の上下方向の動きが規制されるため、平滑コンデンサ2のコンデンサケース23と筐体3のベース部31とをボルト等で締結する必要がない。従って、製造時のタクトタイムを短縮することができる。
【0119】
また、平滑コンデンサ2と筐体3のカバー部32との間に介在する弾性部材7はコンデンサケース23よりも熱伝導性の良い弾性材料で構成される。従って、平滑コンデンサ2の熱を、弾性部材7から金属材料により形成されるカバー部32に抜熱することができ、平滑コンデンサ2の温度上昇を抑制することができる。
【0120】
なお、いずれの実施形態においても、電力変換装置100の搭載方向は必ずしも筐体3のベース部31を下側に配置する必要はなく、電力変換装置100が搭載される車両のレイアウトに応じて自由な方向に配置してよい。例えば図18に示すように、ベース部31が上、カバー部32が下となるように図1等に示した電力変換装置100を上下反転した状態で設置してもよく、また電力変換装置100を傾けた状態で設置してもよい。
【0121】
また、いずれの実施形態においても、冷却路を流れる冷媒を冷却水としたが、冷媒はこれに限られず、例えば冷媒ガスでもよい。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0123】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18