(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電動車両制御方法及び電動車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20220913BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20220913BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L9/18 J
(21)【出願番号】P 2022504951
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009868
(87)【国際公開番号】W WO2021176731
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 弘征
(72)【発明者】
【氏名】本杉 純
(72)【発明者】
【氏名】澤田 彰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 唯
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180231(JP,A)
【文献】特開2017-85706(JP,A)
【文献】特開2020-10454(JP,A)
【文献】特開2019-22339(JP,A)
【文献】特開2017-175853(JP,A)
【文献】特開2017-85730(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138780(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを走行駆動源として搭載した電動車両において、トルク指令値に基づいて前記モータを制御する電動車両制御方法であって、
路面勾配の影響を含む外乱トルクの推定値を算出する外乱トルク推定処理と、
車速に相関する速度パラメータを取得する速度パラメータ取得処理と、
前記速度パラメータの低下に応じて前記トルク指令値を前記外乱トルクの推定値に収束させるように停車時基本トルク目標値を算出する停車処理、及び前記停車時基本トルク目標値をフィルタリング処理して停車時補正トルク目標値を算出する制振処理を含む車両状態制御と、を有し、
前記車両状態制御では、
相対的に高い車速域に設定される第1停車間際においては、前記トルク指令値を前記停車時基本トルク目標値に基づいて設定し、
相対的に低い車速域に設定される第2停車間際においては、前記トルク指令値を前記停車時補正トルク目標値に基づいて設定する、
電動車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両制御方法であって、
電動車両に対する要求駆動力に基づいた基本トルク目標値を算出する基本トルク目標値算出処理をさらに有し、
前記第1停車間際は、前記停車時基本トルク目標値が前記基本トルク目標値と等しくなる第1車速閾値以下であって且つ前記第1車速閾値よりも低い第2車速閾値を超える車速域として設定され、
前記第2停車間際は、前記第2車速閾値以下の車速域として設定される、
電動車両制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両制御方法であって、
前記制振処理では、
前記第1停車間際から前記第2停車間際へ移行した後の最初の演算タイミングにおいて、前記停車時補正トルク目標値の演算のためのフィルタリング処理の際の入力値及び出力値の前回値を、前記演算タイミングで演算される前記停車時基本トルク目標値で初期化する、
電動車両制御方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電動車両制御方法であって、
前記制振処理では、
前記トルク指令値を前記停車時補正トルク目標値に基づいて設定した場合、前記停車時基本トルク目標値が前記基本トルク目標値未満となるまで該設定を維持する、
電動車両制御方法。
【請求項5】
モータを走行駆動源として搭載した電動車両において、トルク指令値に基づいて前記モータを制御する電動車両制御方法であって、
路面勾配の影響を含む外乱トルクの推定値を算出する外乱トルク推定処理と、
車速に相関する速度パラメータを取得する速度パラメータ取得処理と、
前記速度パラメータの低下に応じて前記トルク指令値を前記外乱トルクの推定値に収束させるように停車時基本トルク目標値を算出する停車処理、及び前記停車時基本トルク目標値をフィルタリング処理して停車時補正トルク目標値を算出する制振処理を含む車両状態制御と、を有し、
前記車両状態制御では、
前記路面勾配の絶対値が所定値を超える場合に、前記トルク指令値を前記停車時基本トルク目標値に基づいて設定し、
前記路面勾配の絶対値が所定値以下となる場合に、前記トルク指令値を前記停車時補正トルク目標値に基づいて設定する、
電動車両制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電動車両制御方法であって、
前記制振処理では、
前記路面勾配の絶対値が所定値以下であるか否かの判定を、前記停車時基本トルク目標値の絶対値又は前記外乱トルクの推定値が所定のトルク閾値以下であるか否かに基づいて実行する、
電動車両制御方法。
【請求項7】
モータを走行駆動源として搭載した電動車両において、トルク指令値に基づいて前記モータを制御する電動車両制御装置であって、
路面勾配の影響を含む外乱トルクの推定値を算出する外乱トルク推定部と、
車速に相関する速度パラメータを取得する速度パラメータ取得部と、
前記速度パラメータの低下に応じて前記トルク指令値を前記外乱トルクの推定値に収束させるように停車時基本トルク目標値を算出する停車処理、及び前記停車時基本トルク目標値をフィルタリング処理して停車時補正トルク目標値を算出する制振処理を実行する車両状態制御部を有し、
前記車両状態制御部は、
相対的に高い車速域に設定される第1停車間際においては、前記トルク指令値を前記停車時基本トルク目標値に基づいて設定し、
相対的に低い車速域に設定される第2停車間際においては、前記トルク指令値を前記停車時補正トルク目標値に基づいて設定する、
電動車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両制御方法及び電動車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JP6492399Bでは、電動車両が停車間際になった時に、速度の低下に応じてモータトルク指令値をゼロに収束させる停車処理を行うと共に、電動車両の動力伝達系の特性に基づく振動を抑制する制振処理を行う電動車両制御方法が提案されている。特に、この制御方法では、制御ロジック上において停車処理の後に制振処理を実行する。より詳細には、停車処理において車両を停止させる観点から定められたトルク目標値(第2のトルク目標値)を定め、この定められたトルク目標値に基づいて制振処理を実行することで最終的なモータトルク指令値を定める。
【発明の概要】
【0003】
JP6492399Bの制御方法における制振処理では、動力伝達系の特性に起因する振動を抑制ためのフィードフォワード補償として、所定の線形フィルタを上述のトルク目標値にしてモータトルク指令値を定めている。しかしながら、本発明者らは、この制御構成では、特に緩い登り勾配などの特定の路面状況における停車シーンにおいて制御安定性が低下し、車両の持続振動が生じるという問題点を見出した。
【0004】
このような事情に鑑み、本発明は、停車時の制振処理における制御安定性をより向上させることのできる電動車両制御方法及び電動車両制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、モータを走行駆動源として搭載した電動車両において、トルク指令値に基づいてモータを制御する電動車両制御方法が提供される。この電動車両制御方法は、路面勾配の影響を含む外乱トルクの推定値を算出する外乱トルク推定処理と、車速に相関する速度パラメータを取得する速度パラメータ取得処理と、速度パラメータの低下に応じてトルク指令値を外乱トルクの推定値に収束させるように停車時基本トルク目標値を算出する停車処理と、停車時基本トルク目標値をフィルタリング処理して停車時補正トルク目標値を算出する制振処理と、を含む。そして、制振処理では、相対的に高い車速域に設定される第1停車間際においては、トルク指令値を停車時基本トルク目標値に基づいて設定する。また、車速が第1低速域よりも低い第2低速域に含まれる第2停車間際においては、トルク指令値を停車時補正トルク目標値に基づいて設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態による電動車両制御方法が適用される電動車両の構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、電動車両制御方法の全体的な処理を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、アクセル開度-トルクテーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、電動車両の力学系モデルを説明する図である。
【
図5】
図5は、車両状態制御における各処理を説明するブロック図である。
【
図6】
図6は、回転速度FBトルク設定処理を説明するブロック図である。
【
図7】
図7は、外乱トルク推定処理を説明するブロック図である。
【
図8】
図8は、停止処理状態判定処理を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、持続振動対策ON/OFF判定処理を説明するフローチャートである。
【
図10】
図10は、持続振動対策処理を説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、トルク指令値算出処理を説明するフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施例による制御結果を説明するタイミングチャートである。
【
図13】
図13は、従来例による制御結果を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本実施形態による制御方法が適用される電動車両10の主要な構成を説明するブロック図である。
【0009】
なお、本実施形態における電動車両10としては、車両の駆動源としての駆動モータ4(電動モータ)を備え、当該駆動モータ4の駆動力により走行可能な車両が想定される。このような車両には、電気自動車(EV)、又はハイブリッド自動車(HEV)などが含まれる。
【0010】
図1に示すように、電動車両10は、主に、バッテリ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、駆動モータ4と、各種センサ類(回転センサ6及び電流センサ7)と、を含む。
【0011】
バッテリ1は、駆動モータ4に駆動電力を供給(放電)する電力源として機能する一方で、当該駆動モータ4から回生電力の供給を受けることで充電が可能となるように、インバータ3に接続されている。
【0012】
モータコントローラ2は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)から構成されるコンピュータである。
【0013】
モータコントローラ2には、アクセル開度Apo、駆動モータ4の回転子位相α、及び駆動モータ4に流れる電流(以下、単に「モータ電流Im」とも称する)等の車両状態を示す各種車両変数の信号がデジタル信号として入力される。モータコントローラ2は、入力された各種信号に基づいて駆動モータ4が出力すべきトルクとしてトルク指令値Tm
**を算出する。さらに、モータコントローラ2は、算出したトルク指令値Tm
**に基づいてインバータ3を駆動させるためのPWM信号を生成する。
【0014】
インバータ3は、各相に対応して具備された2個のスイッチング素子(例えば、IGBTやMOS-FET等のパワー半導体素子)を有する。インバータ3は、モータコントローラ2で生成されたPWM信号に基づいて、上記スイッチング素子をオン/オフすることにより、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換あるいは逆変換し、駆動モータ4に供給する電流を所望の値に調節する。
【0015】
駆動モータ4は、三相交流モータとして構成される。駆動モータ4は、インバータ3により供給される交流電流によって電動車両10の駆動力(又は回生制動力)を生成する。なお、この駆動モータ4により生成される駆動力(又は回生制動力)は、電動車両10の動力伝達系(減速機5及びドライブシャフト8など)を介して各駆動輪9(左駆動輪9f及び右駆動輪9r)に伝達する。
【0016】
なお、駆動モータ4は、車両の走行時に駆動輪9に連れ回されて回転するときに、回生制動力を発生させることで、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。この場合、インバータ3は、回生運転時に発生する交流電流を直流電流に変換して、バッテリ1に供給する。
【0017】
回転センサ6は、駆動モータ4の回転子位相αをそれぞれ検出し、モータコントローラ2に出力する。なお、回転センサ6は、例えば、レゾルバやエンコーダなどにより構成される。
【0018】
電流センサ7は、モータ電流Im、特に三相交流電流(iu,iv,iw)の各位相成分をそれぞれ検出する。なお、三相交流電流(iu,iv,iw)の和は0であるため、電流センサ7により任意の2相の電流を検出して、残りの1相の電流は演算により求めてもよい。以下では、この三相交流電流(iu,iv,iw)の検出値を「三相電流検出値(iu_d,iv_d,iw_d)」とも称する。
【0019】
以下、本実施形態による電動車両制御方法に関する各種処理について説明する。なお、以下で説明する各種処理は、モータコントローラ2が記憶領域(ROMなど)に記憶されたプログラムにしたがい実行する。
【0020】
図2は、本実施形態による電動車両制御方法に係る全体的な処理を説明するフローチャートである。なお、以下の各処理は、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0021】
ステップS201において、モータコントローラ2は、ステップS202以降の処理を実行するために用いる各種パラメータを取得する入力処理を行う。
【0022】
具体的に、モータコントローラ2は、上記各種センサ又はモータコントローラ2とは異なる他の任意のコントローラ(例えば、上位の車両制御コントローラ)との通信により、アクセル開度Apo(%)、回転子位相α[rad]、三相電流検出値(iu_d,iv_d,iw_d)[A]、及びバッテリ1の直流電圧値Vdc[V]を取得する。
【0023】
なお、アクセル開度Apoは、図示しないアクセル開度センサの検出値として取得されるか、又はモータコントローラ2とは異なる他の任意のコントローラ(例えば、上位の車両制御コントローラ)との通信により取得される。また、直流電圧値Vdcは、例えば、バッテリ1の直流電源ラインに設けられる電圧センサの検出値として取得されるか、又はモータコントローラ2とは異なる他の任意のコントローラ(例えば、バッテリコントローラ)との通信により取得される。
【0024】
次に、モータコントローラ2は、取得した各パラメータに基づいて、駆動モータ4の電気角速度ωe[rad/s]、モータ回転速度ωm[rad/s]、及び直流電圧値Vdc[V]、並びに車速V[km/h]を以下の(i)~(iii)のように演算する。
【0025】
(i)電気角速度ωe
回転子位相αを時間微分することで演算する。
【0026】
(ii)モータ回転速度ωm[rad/s]
電気角速度ωeを駆動モータ4の極対数で除することで演算する。すなわち、モータ回転速度ωmは、駆動モータ4の機械的な角速度に相当する。
【0027】
(iii)車速V[km/h]
モータ回転速度ωmにタイヤ動半径Rを乗算し、この乗算により得られた値と減速機5のギア比(入力回転数/出力回転数)を乗じて車速v[m/s]を演算する。さらに、演算した車速v[m/s]に単位変換係数(3600/1000)を乗じることで車速V[km/h]を得る。
【0028】
次に、ステップS202において、モータコントローラ2は、基本トルク目標値算出処理を実行する。具体的に、モータコントローラ2は、予め内部メモリなどに記憶された
図3に例示するアクセル開度-トルクテーブルを参照し、ステップS201で取得したアクセル開度Apo及びモータ回転速度ω
mに基づいて、基本トルク目標値としての第1トルク目標値T
m1
*を算出する。すなわち、第1トルク目標値T
m1
*とは、電動車両10の走行中においてドライバ操作又は自動運転コントローラの指令に応じた要求駆動力から定まるモータトルクTの基本的な目標値である。
【0029】
ステップS203において、モータコントローラ2は、停車処理を実行する。具体的に、モータコントローラ2は、車速V(モータ回転速度ωm)の低下に応じてトルク指令値Tm
**を後述する外乱トルク推定値Tdに収束させるように停車時基本トルク目標値(第2トルク目標値Tm2
*)を算出する。なお、この停車処理の詳細については後に説明する。
【0030】
さらに、上述のように車速Vとモータ回転速度ωmは、駆動モータ4と駆動輪9の間の動力伝達経路における減速比分を除いて相互にほぼ同等の制御パラメータ(速度パラメータ)とみなすことができる。したがって、説明の簡略化の観点から、以下の処理は速度パラメータとしてモータ回転速度ωmを採用した例についてフォーカスする。一方で、以下の説明は、上述した減速比分の相違を考慮することで車速Vを速度パラメータとした場合にも同様に適用が可能である。
【0031】
次に、ステップS204において、モータコントローラ2は、制振処理を実行する。具体的に、モータコントローラ2は、上述の第2トルク目標値Tm2
*をフィルタリング処理した停車時補正トルク目標値(フィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*)を算出する。
【0032】
そして、モータコントローラ2は、車速V(モータ回転速度ωm)が後述する第1車速閾値Vth1以下(第1回転速度閾値ωth1)の車速域となる第1停車間際においては、ステップS203で算出した第2トルク目標値Tm2
*及びモータ回転速度ωmに基づいて、駆動軸トルクの応答を犠牲にすることなく、トルク伝達系の振動(ドライブシャフト8の捩じり振動等)を抑制するようにトルク指令値Tm
**を算出する。
【0033】
一方、モータコントローラ2は、上述の第1停車間際よりも低い車速域に設定される第2停車間際においては、フィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*及びモータ回転速度ωmに基づいて、同様の観点からトルク指令値Tm
**を算出する。
【0034】
ここで、本実施形態に係る車両状態制御は、上記ステップS203の停車処理及びステップS204の制振処理から構成される。なお、本発明者らは、電動車両10が特定の路面状況(緩い登り勾配)において停車する場合に、当該停車がギアのバックラッシュ区間で行われることに起因して制御安定性が損なわれ、各制御値がハンチングして車両の持続振動につながることを見出している。そして、この制御安定性の低下は特に、停車処理中に通信や演算遅れを抑制するため観点からゲインを高く設定したフィードフォワード補償器が含まれている場合などに顕著に表れる。
【0035】
したがって、本実施形態に係る車両状態制御では、制御安定性の低下を抑制するための処理を規定する。この車両状態制御のさらなる詳細については後に説明する。
【0036】
ステップS205において、モータコントローラ2は、電流指令値算出処理を実行する。具体的に、モータコントローラ2は、ステップS201で求めたモータ回転速度ωm及び直流電圧値Vdc、並びにステップS204で算出したトルク指令値Tm
**に基づいて、予め内部メモリ等に記憶させたテーブルを参照して、dq軸電流目標値(id
*,iq
*)を算出する。
【0037】
ステップS206において、モータコントローラ2は、電流制御処理を実行する。具体的に、モータコントローラ2は、先ず、ステップS201で取得した三相電流検出値(iu_d,iv_d,iw_d)及び回転子位相αに基づいて、dq軸電流値(id,iq)を算出する。次に、モータコントローラ2は、このdq軸電流値(id,iq)とステップS205で求めたdq軸電流目標値(id
*,iq
*)との偏差からdq軸電圧指令値(vd,vq)を算出する。なお、dq軸電圧指令値(vd,vq)の演算にあたり、適宜、公知の非干渉制御を実行しても良い。
【0038】
さらに、モータコントローラ2は、dq軸電圧指令値(vd,vq)及び回転子位相αに基づいて、三相交流電圧指令値(vu,vv,vw)を算出する。そして、モータコントローラ2は、算出した三相交流電圧指令値(vu,vv,vw)及び直流電圧値Vdcに基づいてPWM信号(tu,tv,tw)[%]を求める。このようにして求めたPWM信号(tu,tv,tw)により、インバータ3のスイッチング素子の開閉制御が実行されることによって、駆動モータ4をトルク指令値Tm
**で規定される所望のトルクで駆動することができる。
【0039】
次に、上記ステップS203の停車処理の詳細について説明する。
【0040】
<車両状態制御>
先ず、本実施形態における停車処理において用いられる車両の駆動力伝達系をモデルについて基づく各伝達特性について説明する。
【0041】
1.車両応答Gr(s)
先ず、電動車両システム100において、車両の駆動力伝達系をモデル化した車両モデルに基づく車両応答Gr(s)の設定について説明する。なお、モータコントローラ2は、以下で説明する演算アルゴリズムにしたがい定まる車両応答Gr(s)を、後述する外乱トルク推定値Tdの演算などの停車処理に係る種々の処理に必要に応じて適用する。
【0042】
図4は、電動車両システム100にかかる電動車両10の駆動力伝達系をモデル化した図である。
図4における各パラメータは以下のとおりである。
J
m:駆動モータ4のイナーシャ
J
w:駆動輪9のイナーシャ
M:車体重量
K
d:駆動系のねじり剛性
K
t:タイヤと路面の摩擦に関する係数
N:オーバーオールギヤ比
r:タイヤ荷重半径
ω
m:モータ回転速度
T
m:モータトルク(トルク指令値T
m
**)
T
d:駆動輪9のトルク
F:車両に加えられる力
V:車速
ω
w:駆動輪9の角速度
【0043】
図4より、電動車両10の運動方程式は、以下の式(1)~(5)で表される。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0044】
そして、トルク指令値Tm
**からモータ回転速度ωmまでの伝達特性Gp(s)は、上記式(1)~(5)をラプラス変換しつつ変形した以下の式(6)で表される。
【0045】
【0046】
ただし、式(6)中の各パラメータは、それぞれ以下の式(7)のように定義される。
【0047】
【0048】
式(6)に示す伝達関数の極と零点を調べるために、式(6)をラプラス演算子sについて因数分解すると次式(8)となる。
【0049】
【0050】
ただし、式中、「α」、「β」、「a´2」、「a´1」、「a´0」、「b´2」、「b´1」、及び「b´0」はラプラス演算子sに依存しない上記各パラメータにより定まる定数である。
【0051】
ここで、式(8)の「α」と「β」は相互に極めて近い値をとることが分かっている。したがって、極零相殺、すなわち、零点(s=-β)と極(s=-α)が相互に略一致するものと近似することで、以下の(9)のように伝達特性Gp(s)を(2次)/(3次)の伝達関数として表現することができる。
【0052】
【0053】
さらに、式(9)中の各係数に式(7)で定義された各パラメータを当てはめることで伝達特性Gp(s)を以下の式(10)のように書き換えることができる。
【0054】
【0055】
ただし、式(10)中の「Mp」はラプラス演算子sに依存しない定数である。また、「ζz」、「ζp」、「ωz」、及び「ωp」は以下の式(11)のように定まる。
【0056】
【0057】
式(10)に伝達特性Gp(s)に制振制御アルゴリズム(ζp≒1とすると)を適用すると、車両応答Gr(s)は次式(12)のように表すことができる。なお、制振制御に関しては、例えば、特開2001-45613号公報又は特開2002-152916号公報などに記載されている公知の方法を適宜用いることができる。
【0058】
【0059】
2.車両状態制御の詳細
図5は、本実施形態の車両状態制御における各処理を説明するブロック図である。本実施形態の車両状態制御は、回転速度FBトルク設定処理(ステップS510)、外乱トルク推定処理(ステップS520)、第2トルク目標値算出処理(ステップS530)、停止処理状態判定処理(ステップS540)、振動持続対策ON/OFF判定処理(ステップS550)、及び振動持続対策処理(ステップS560)を含む。そして、モータコントローラ2は、これら各処理を実行可能にプログラムされている。
【0060】
先ず、ステップS510において、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωmに基づいてモータ回転速度フィードバックトルクTωを算出する。なお、記載の簡略化のため、以下の説明ではこれを単に「FBトルクTω」とも称する。FBトルクTωは、回生制動時などにおいて、電動車両10を適切な減速度で停車させる観点から定まるモータトルクTmに関するフィードバック値である。
【0061】
図6は、回転速度FBトルク設定処理を説明するブロック図である。図示のように、モータコントローラ2は、モータ回転速度ω
mに対して予め定められるゲインK
Vを乗算することによりFBトルクTωを算出する。ここで、ゲインK
Vは、実験等により電動車両10を停車させる観点から好適な値(固定ゲイン又は可変ゲイン)に定められる。特に、ゲインK
Vは、電動車両の停車間際に電動車両を停止させるのに必要な負の値であって、モータ回転速度ω
mが大きいほど制動力が得られるように(FBトルクTωの絶対値が大きくなるように)設定される。
【0062】
なお、
図6で説明したFBトルクTωの算出態様に代えて、モータ回転速度ω
mに応じて好適な回生トルクを定めた回生トルクテーブルや、モータ回転速度ωmの減衰率を予め記憶した減衰率テーブル等を用いて、FBトルクTωを算出しても良い。
【0063】
図5に戻り、次に、ステップS520において、モータコントローラ2は、外乱トルク推定処理を実行する。
【0064】
図7は、外乱トルク推定処理を説明するブロック図である。図示のように、外乱トルク推定処理は、第1フィルタ処理(ステップS521)、第2フィルタ処理(ステップS522)、及び偏差演算処理(ステップS523)を含む。
【0065】
先ず、モータコントローラ2は、第1フィルタ処理(ステップS521)において、モータ回転速度ωmに基づいて第1モータトルク推定値Tm1
^を算出する。具体的に、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωmを、ローパスフィルタH(s)及び式(12)の車両応答Gr(s)に基づいて定まるフィルタH(s)/Gr(s)を用いてフィルタリング処理することで、第1モータトルク推定値Tm1
^を算出する。
【0066】
なお、ローパスフィルタH(s)の次数は、フィルタH(s)/Gr(s)の分母の次数が分子の次数以上となるように定められる。
【0067】
次に、モータコントローラ2は、第2フィルタ処理(ステップS522)において、トルク指令値Tm
**の前回値(モータトルク前回値T**
m_k-1)に基づいて第2モータトルク推定値Tm2
^を算出する。具体的に、モータコントローラ2は、モータトルク前回値T**
m_k-1をローパスフィルタH(s)でフィルタリング処理することで第2モータトルク推定値Tm2
^を算出する。
【0068】
そして、モータコントローラ2は、偏差演算処理(ステップS523)において、第1モータトルク推定値T^m1と第2モータトルク推定値T^m2の偏差(すなわち、「T^m2-T^m1」)を演算することで、外乱トルク推定値Tdを求める。
【0069】
なお、
図7で説明した演算ロジックに代えて、又はこれとともに外乱トルク推定値T
dを、車両前後Gセンサなどの計測器類による計測結果から演算しても良い。
【0070】
ここで、車両に作用する外乱としては、空気抵抗、乗員数や積載量に起因する車両質量の変動によるモデル化誤差、タイヤの転がり抵抗、路面外乱(路面摩擦及び勾配抵抗等)が考えられるが、本実施形態で想定される車両の停車間際において支配的となる外乱要因は勾配抵抗である。
【0071】
一般的に外乱要因は車両の運転条件により異なる。これに対して、本実施形態の外乱トルク推定処理(ステップS520)においては、トルク指令値Tm
**、モータ回転速度ωm、並びに制振制御アルゴリズム及び伝達特性Gp(s)から導かれる車両応答Gr(s)に基づいて、外乱トルク推定値Tdが算出される。したがって、上記種々の外乱要因を一括して推定することができる。結果として、このように算出した外乱トルク推定値Tdを用いて電動車両10の停車処理を行うことで、様々な走行シーンにおいて減速からの滑らかな停車を実現できる。
【0072】
図5に戻り、モータコントローラ2は、ステップS520で算出した外乱トルク推定値T
d及びステップS510で算出したFBトルクTωに基づいて第2トルク目標値算出処理(ステップS530)を実行する。
【0073】
具体的に、モータコントローラ2は、外乱トルク推定値TdとFBトルクTωを加算することで第2トルク目標値Tm2
*を算出する。すなわち、第2トルク目標値Tm2
*は、上述のように電動車両10を適切な減速度で停車させるように設定されたFBトルクTωに対し、勾配抵抗相当の外乱トルク推定値Tdを考慮した上で、電動車両10を停車に至らしめてその状態を維持するように定められるトルクである。このため、第2トルク目標値Tm2
*は、登坂路(Td<0)では正値、降坂路(Td>0)では負値、及び平坦路(Td=0)では概ねゼロに収束するように設定される。
【0074】
図5に戻り、モータコントローラ2は、ステップS202で算出した第1トルク目標値T
m1
*及びステップS530で算出した第2トルク目標値T
m2
*に基づいて停止処理状態判定処理(ステップS540)を実行する。
【0075】
図8は、停止処理状態判定処理を説明するフローチャートである。
【0076】
先ず、モータコントローラ2は、第1トルク目標値Tm1
*と第2トルク目標値Tm2
*の大小関係の判定を行う(ステップS541)。そして、モータコントローラ2は、第2トルク目標値Tm2
*が第1トルク目標値Tm1
*以上であると判断した場合(ステップS541のYes)には、停止処理状態フラグfsをONに設定する(ステップS542)。一方、第2トルク目標値Tm2
*が第1トルク目標値Tm1
*より小さいと判断した場合(ステップS541のNo)には、停止処理状態フラグfsをOFFに設定する(ステップS543)。
【0077】
ここで、本実施形態において、第2トルク目標値Tm2
*が第1トルク目標値Tm1
*と等しくなるタイミングにおけるモータ回転速度ωmを「第1回転速度閾値ωth1」と称する。そして、本実施形態における停車間際とは、モータ回転速度ωmが第1回転速度閾値ωth1以下となる車速域を意味する。さらに、停車間際には、相対的に高い車速域の第1停車間際と相対的に低い速域の第2停車間際が含まれる。これについては後述する。
【0078】
したがって、停止処理状態フラグfsがONに設定される場合とは、電動車両10が停車間際である場合を意味する。
【0079】
図5に戻り、モータコントローラ2は、モータ回転速度ω
m、ステップS530で算出した第2トルク目標値T
m2
*、及びステップS540で設定した停止処理状態フラグf
sに基づいて持続振動対策ON/OFF判定処理(ステップS550)を実行する。
【0080】
図9は、持続振動対策ON/OFF判定処理を説明するフローチャートである。
【0081】
先ず、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωmと第2回転速度閾値ωth2との大小関係の判定を行う(ステップS551)。
【0082】
ここで、第2回転速度閾値ωth2とは、停車間際において、モータ回転速度ωmが上記第1回転速度閾値ωth1から一定以上低下し、電動車両10がより停車に近づいたか否かを判断する観点から定められるモータ回転速度ωmの閾値である。
【0083】
特に、第2回転速度閾値ωth2は、電動車両10がギアのバックラッシュ区間において停車することに起因して生じる制御値のハンチングを抑制する観点から、上述のフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*を求めるために用いたローパスフィルタLPFの時定数τlpfとの関係を考慮された好適な値に設定される。なお、この第2回転速度閾値ωth2は、例えば、実験又はシミュレーションの結果などに基づいて定められる。
【0084】
そして、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωmが第2回転速度閾値ωth2以下であると判断すると(ステップS551のYes)、ステップS552の判定に移行する。一方、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωmが第2回転速度閾値ωth2を超えると判断すると(ステップS551のNo)、ステップS554の判定に移行する。
【0085】
ここで、本実施形態における第1停車間際は、
図8のステップS541の判定結果が肯定的であって且つ
図9のステップS551の判定結果が否定的である場合として定義される。すなわち、第1停車間際は、モータ回転速度ω
mが第1回転速度閾値ω
th1以下であって且つ第2回転速度閾値ω
th2を超える場合として定義される。また、第2停車間際は、ステップS541及びステップS551の双方判定結果が何れも肯定的である場合として定義される。すなわち、第2停車間際はモータ回転速度ω
mが第2回転速度閾値ω
th2以下の場合(特に、0を超えて第2回転速度閾値ω
th2以下の場合)として定義される。
【0086】
したがって、ステップS551における判定結果が否定的である場合が第1停車間際に相当し、肯定的である場合が第2停車間際に相当する。
【0087】
そして、モータコントローラ2は、第2トルク目標値Tm2
*の絶対値(以下、単に「トルク絶対値|Tm2
*|」とも称する)とトルク閾値Tth_slとの大小関係の判定を行う(ステップS552)。ここで、「トルク閾値Tth_sl」とは、路面勾配が、ギアのバックラッシュ区間内の停車に起因した制御値のハンチングをもたらす程度に緩い勾配であるか否かを判断する観点から、実験又はシミュレーションの結果などに基づいて定められる。
【0088】
すなわち、上述のように、第2トルク目標値Tm2
*は、勾配抵抗相当の外乱トルク推定値TdとFBトルクTωとの和として演算される。したがって、第2トルク目標値Tm2
*の絶対値は勾配抵抗の大きさに相関する。このため、本実施形態では、第2トルク目標値Tm2
*とトルク閾値Tth_slの大小関係を参照することで、路面勾配が問題となる緩い勾配であるか否かを推定する構成をとっている。なお、この第2トルク目標値Tm2
*に基づく緩い勾配の判定に代え、外乱トルク推定値Tdに基づいて緩い勾配を判定しても良い。また、路面勾配を検出するための各種センサの検出値に基づいて当該判定を実行しても良い。
【0089】
そして、モータコントローラ2は、トルク絶対値|Tm2
*|がトルク閾値Tth_sl以下であると判断すると(ステップS552のYes)、持続振動対策フラグfpをONに設定する(ステップS553)。すなわち、本実施形態では、第2停車間際であって走行路面が緩い勾配を持つ場合に、持続振動対策フラグfpがONに設定される。
【0090】
一方、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωmが回転速度閾値ωthを超えるか(ステップS551のNo)、又はトルク絶対値|Tm2
*|がトルク閾値Tth_slを超えると判断すると(ステップS552のNo)、ステップS554の判定に移行する。
【0091】
そして、モータコントローラ2は、一制御周期前の演算タイミングにおける停止処理状態フラグfs(以下、「前回停止処理状態フラグfs_k-1」とも称する)がONであるか否かの判定(ステップS554)、及び一制御周期前の演算タイミングにおける持続振動対策フラグfp(以下、「前回持続振動対策フラグfp_k-1」とも称する)がONであるか否かの判定(ステップS555)を実行する。
【0092】
そして、モータコントローラ2は、前回停止処理状態フラグfs_k-1及び持続振動対策フラグfp_k-1の双方がONであると判断すると(ステップS554且つステップS55が何れもYes)、持続振動対策フラグfpをONに設定する(ステップS553)。
【0093】
一方、モータコントローラ2は、前回停止処理状態フラグfs_k-1及び持続振動対策フラグfp_k-1の少なくとも何れか一方がOFFであると判断すると(ステップS554又はステップS555がNo)、持続振動対策フラグfpをOFFに設定する(ステップS556)。
【0094】
これにより、持続振動対策フラグfpがONに設定されると、停止処理状態フラグfsがOFFに設定されるまで当該持続振動対策フラグfpがONに維持される状態が継続する。
【0095】
図5に戻り、モータコントローラ2は、ステップS530で算出した第2トルク目標値T
m2
*及びステップS550で設定した持続振動対策フラグf
pに基づいて、持続振動対策処理(ステップS560)を実行して第3トルク目標値T
m3
*を算出する。
【0096】
図10は、持続振動対策処理を説明するフローチャートである。
【0097】
先ず、モータコントローラ2は、持続振動対策フラグfpがONに設定されているか否かを判定する(ステップS561)。そして、モータコントローラ2は、持続振動対策フラグfpがONに設定されていると判断すると(ステップS561のYes)、第1の演算方法で第3トルク目標値Tm3
*を算出する第1演算処理(ステップS562)を実行する。
【0098】
一方、モータコントローラ2は、持続振動対策フラグfpがOFFに設定されていると判断すると(ステップS561のNo)、第2の演算方法で第3トルク目標値Tm3
*を算出する第2演算処理(ステップS563)を実行する。以下、第1演算処理及び第2演算処理の詳細について説明する。
【0099】
[第1演算処理]
モータコントローラ2は、第2トルク目標値Tm2
*を、ローパスフィルタLPFでフィルタリング処理して得られるフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*を第3トルク目標値Tm3
*として演算する。具体的に、モータコントローラ2は、以下の式(13)に基づいて第3トルク目標値Tm3
*を演算する。
【0100】
【0101】
式(13)の右辺の伝達関数は、ローパスフィルタLPFを制御周期に応じた離散変数「z」を用いて近似的に表したものである。そして、式(13)中の[k]は、k(k=1,2・・・)番目の演算タイミング(第k演算タイミング)において定まる制御値であることを表す記号である。さらに、式(13)中の「slpf」は、以下の式(14)により定義される。
【0102】
【0103】
ここで、式(14)中の「Tsmp」は設定される演算タイミングを表す。また、「τlpf」は時定数を表す。
【0104】
ここで、時定数τlpfは、電動車両19におけるギアのバックラッシュ区間内において制御安定性を確保する観点から好適な値に設定される。特に、時定数τlpfは、実際の車両における官能評価試験の結果を参照するなどして定められ、モータコントローラ2の内部メモリ等に予め記憶される。
【0105】
すなわち、持続振動対策フラグfpがONに設定されている場合には、第3トルク目標値Tm3
*が、第2トルク目標値Tm2
*に対して時定数τlpfのローパスフィルタLPFによるフィルタリング処理を施したフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*として定まることとなる。
【0106】
[第2演算処理]
モータコントローラ2は、基本的には、上記式(13)及び以下の式(15)の双方を満たすように、第2トルク目標値Tm2
*から第3トルク目標値Tm3
*を演算する。
【0107】
【0108】
式(15)における[k]を[k+1]に置き換えると理解されるように、第k演算タイミングの第3トルク目標値Tm3
*[k]は、入力である第k演算タイミングの第2トルク目標値Tm2
*[k]と同一の値に設定されることとなる。
【0109】
したがって、モータコントローラ2は、持続振動対策フラグfpがOFFに設定されている場合には、実質的に第2トルク目標値Tm2
*をそのまま第3トルク目標値Tm3
*として算出することとなる。
【0110】
さらに、上記式(15)により規定される演算ロジックによれば、前回の第k-1演算タイミングにおける入力値である第2トルク目標値Tm2
*[k-1]及び出力値である第3トルク目標値Tm3
*[k-1]が何れも、第k演算タイミングにおける第2トルク目標値Tm2
*[k]と同一の値に設定される。すなわち、持続振動対策フラグfpがOFFからONに切り替わった後の最初の演算タイミングにおいて、ローパスフィルタLPFの入出力前回値が、第2トルク目標値Tm2
*[k]で初期化されることとなる。すなわち、持続振動対策フラグfpがOFFからONに切り替わったタイミングにおける第3トルク目標値Tm3
*[k]は、前回演算タイミングにおける入力値としての第2トルク目標値Tm2
*[k-1]及び出力値としての第3トルク目標値Tm3
*[k-1]の双方に等しい第2トルク目標値Tm2
*[k]をフィルタリング処理して演算されることとなる。したがって、持続振動対策フラグfpのOFFからONへの切り替わりの際における最終的なトルク指令値Tm
**の急激な変化を抑制することができるため、トルク段差の発生が抑制される。
【0111】
図5に戻り、モータコントローラ2は、ステップS202で算出した第1トルク目標値T
m1
*、ステップS560で設定した停止処理状態フラグf
s、及びステップS560で算出した第3トルク目標値T
m3
*に基づいて、トルク指令値算出処理(ステップS570)を実行する。
【0112】
図11は、トルク指令値算出処理を説明するフローチャートである。
【0113】
図示のように、モータコントローラ2は停止処理状態フラグfsがONに設定されているか否かを判定する(ステップS571)。そして、モータコントローラ2は、停止処理状態フラグfsがONに設定されていると判断すると(ステップS571のYes)、第3トルク目標値Tm3
*を、上述のトルク伝達系の振動する処理を適用しつつトルク指令値Tm
**に設定する(ステップS572)。
【0114】
一方、モータコントローラ2は、停止処理状態フラグfsがOFFに設定されていると判断すると(ステップS571のNo)、第1トルク目標値Tm1
*を、上述のトルク伝達系の振動する処理を適用しつつトルク指令値Tm
**に設定する(ステップS573)。
【0115】
そして、モータコントローラ2は、算出したトルク指令値T
m
**に基づいて、
図2のステップS205以降の処理を実行する。
【0116】
上述した停車処理によれば、上記第1停車間際からより低速域の第2停車間際になったタイミングで、トルク指令値Tm
**に第2トルク目標値Tm2
*をフィルタ処理したフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*が設定されることとなる。このため、停車シーンにおける前半は電動車両10を好適な減速プロフィールで滑らかに減速させることができる一方、停車シーンにおける後半においてはギアのバックラッシュ区間内の停車に起因した振動を抑制することのできる停車態様を実現することができる。
【0117】
次に、本実施形態の電動車両制御方法による制御結果について、比較例と対比しつつ説明する。
【0118】
図12は、本実施形態に係る電動車両制御方法を実行した場合シミュレーション結果を示すタイミングチャートである。また、
図13は、比較例に係る電動車両制御方法を実行した場合シミュレーション結果を示すタイミングチャートである。特に、
図12及び
図13では、何れも、電動車両10が緩い登り勾配を走行しているシーンにおける制御結果が示されている。
【0119】
より詳細には、
図12(A)~
図12(D)にはそれぞれ、モータトルクT
m、フラグ(停止処理状態フラグf
s及び持続振動対策フラグf
p)のON/OFF状態、電動車両10の前後方向における加速度a、及びモータ回転速度ω
mの経時変化が示されている。また、
図13(A)~
図13(D)に関しても、
図13(B)に停止処理状態フラグf
sのON/OFF状態のみの経時変化が示されている点以外は、
図12(A)~
図12(D)と同様の各パラメータにおける経時変化が示されている。
【0120】
また、
図12及び
図13におけるタイミングチャートにおいて、モータトルクT
m、加速度a、及びモータ回転速度ω
mはいずれも電動車両10の前進方向を正方向としている。
【0121】
(比較例)
1.シミュレーション条件
図5における振動持続対策ON/OFF判定処理(ステップS550)及び振動持続対策処理(ステップS560)を実行せず、停止処理状態フラグf
sがONである場合には第2トルク目標値T
m2
*に基づいて電流指令値算出処理(ステップS205)を実行し、OFFである場合には第1トルク目標値T
m1
*に基づいて電流指令値算出処理(ステップS205)を実行する制御方法に対してシミュレーションを行った。特に、本シミュレーションにおいては、電動車両10が緩い登り勾配において停車に至る条件下において各制御値を観察した。
【0122】
2.結果
比較例の制御方法では、時刻t0~時刻t1の期間において、停止処理状態フラグfsがOFFに維持されつつ、電動車両10は第1トルク目標値Tm1
*に基づいたトルク指令値Tm
**により減速(モータ回転速度ωmが減少)した。
【0123】
また、停止処理状態フラグfsがOFFからONに切り替わる時刻t1(第1停車間際)にて、トルク指令値Tm
**が第1トルク目標値Tm1
*から第2トルク目標値Tm2
*に切り替わった。そして、時刻t1~時刻t3の期間において、電動車両10は第2トルク目標値Tm2
*に基づいたトルク指令値Tm
**により減速した。この期間において、トルク指令値Tm
**は外乱トルク推定値Tdに、モータ回転速度ωmはゼロにそれぞれ収束するように変化した。
【0124】
さらに、時刻t3(停車タイミング)において、トルク指令値Tm
**及びモータ回転速度ωmがそれぞれ外乱トルク推定値Td及びゼロにほぼ収束した。一方、各制御値が収束するはずの時刻t3以降においても、各制御値は持続的に振動した。
【0125】
3.考察
緩い登り勾配における停車シーンにおいては、停車タイミング(時刻t3)における外乱トルク推定値Tdがギアのバックラッシュ区間に含まれることに起因して制御安定性が低下し、上記振動につながることが見出された。
【0126】
(実施例)
1.シミュレーション条件
本実施形態で説明した構成の制御方法に関して、比較例と同様に電動車両10が緩い登り勾配に至る条件下においてシミュレーションを実行し各制御値を観察した。
【0127】
2.結果
時刻t0~時刻t1(第1停車間際)、及び時刻t1(第1停車間際)~時刻t2(第2停車間際)までは、各制御値とも比較例と同様の挙動を示した。一方、時刻t2(第2停車間際)~時刻t3(停車タイミング)におけるトルク指令値Tm
**は、比較例と異なり、フィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*に設定されている。実施例では、比較例の場合に生じていた時刻t3以降における各制御値の持続的振動は見られなかった。
【0128】
3.考察
実施例の制御方法では、時刻t2(第2停車間際)において持続振動対策フラグf
pがOFFからONに切り替わることで、上述の
図10で説明した持続振動対策処理に係る制御ロジックにしたがい、トルク指令値T
m
**が第2トルク目標値T
m2
*からフィルタ処理されたフィルタ処理トルク目標値T
m_sf
*に切り替わったものと考えられる。その結果、ギアのバックラッシュ区間における停車の際に生じる各制御値の持続的振動が抑制された。
【0129】
以上説明した本実施形態の電動車両制御方法の各構成及び作用効果についてまとめて説明する。
【0130】
本実施形態では、モータ(駆動モータ4)を走行駆動源として搭載した電動車両10において、トルク指令値Tm
**に基づいて駆動モータ4を制御する電動車両制御方法が提供される。
【0131】
この電動車両制御方法は、路面勾配の影響を含む外乱トルクの推定値としての外乱トルク推定値T
dを算出する外乱トルク推定処理(ステップS520)と、駆動モータ4の回転速度又は車速Vに相関する速度パラメータ(モータ回転速度ω
m又は車速V)を取得する速度パラメータ取得処理(ステップS201)と、モータ回転速度ω
mの低下に応じてトルク指令値T
m
**を外乱トルク推定値T
dに収束させるように停車時基本トルク目標値としての第2トルク目標値T
m2
*を算出する停車処理(ステップS203及びステップS530)、及び第2トルク目標値T
m2
*をフィルタリング処理して停車時補正トルク目標値(フィルタ処理トルク目標値T
m_sf
*)を算出する制振処理(ステップS204及びステップS560)を含む車両状態制御(
図5)と、を有する。
【0132】
そして、制振処理では、相対的に高い車速域に設定される第1停車間際(ωth2<ωm≦ωth1)においては、トルク指令値Tm
**を第2トルク目標値Tm2
*に基づいて設定する。また、相対的に低い車速域に設定される第2停車間際(ωm≦ωth2)においては、トルク指令値Tm
**をフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*に基づいて設定する(ステップS570)。
【0133】
これにより、電動車両10の停車シーンにおける前半(第1停車間際)では、停車時の減速に適した第2トルク目標値Tm2
*の特性に応じて電動車両10を滑らかに減速させる一方、後半(第2停車間際)では、フィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*の特性に応じて持続振動を抑制するように駆動モータ4を作動させることができる。
【0134】
特に、フィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*がトルク指令値Tm
**として設定されることで、電動車両10のギアのバックラッシュ区間内における停車に起因する制御値の振動を抑制し、制御安定性をより向上させることができる。
【0135】
また、本実施形態の電動車両制御方法は、電動車両10に対する要求駆動力(アクセル開度Apo)に基づいて基本トルク目標値(第1トルク目標値Tm1
*)を算出する基本トルク目標値算出処理(ステップS202)をさらに有する。
【0136】
そして、第1停車間際は、第2トルク目標値Tm2
*が第1トルク目標値Tm1
*と等しくなる第1車速閾値(第1回転速度閾値ωth1)以下であって且つ第1車速閾値よりも低い第2車速閾値Vth2(第2回転速度閾値ωth2)を超える車速域に設定する(ステップS541のYes且つステップS551のNo)。
【0137】
また、第2停車間際は、第2車速閾値(第2回転速度閾値ωth2)以下の車速域として設定する(ステップS551のYes)。
【0138】
これにより、トルク指令値Tm
**としてフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*を設定するシーンである第2停車間際を、上述した制御安定性の低下が生じ得る区間に限定するための具体的な制御ロジックが実現されることとなる。このため、停車シーンにおいて、減速に適した第2トルク目標値Tm2
*と上記制御安定性の低下を確保に適したフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*の間におけるトルク指令値Tm
**のより好適な切り替えタイミングが実現されることとなる。
【0139】
例えば、ギアのバックラッシュ区間内における停車に起因する制御安定性の低下を抑制する観点から想定されるタイミングよりも前に、トルク指令値Tm
**が第2トルク目標値Tm2
*からフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*に切り替わることに起因した応答遅れなどの意図しない制御結果の発生が抑制される。
【0140】
特に、制振処理では、第1停車間際から第2停車間際へ移行した後の最初の演算タイミング(第k演算タイミング)において、停車時基本トルク目標値(第3トルク目標値Tm3
*)の演算のためのフィルタリング処理(ローパスフィルタLPFによる処理)の際の入力値及び出力値の前回値(第2トルク目標値Tm2
*[k-1]及び第3トルク目標値Tm3
*[k-1])を、上記第k演算タイミングで演算される第2トルク目標値Tm2
*で初期化する(式(15))。
【0141】
これにより、第1停車間際から第2停車間際への移行にともない、トルク指令値Tm
**が切り替わる際に生じるトルク段差をより好適に抑制することができる。
【0142】
さらに、本実施形態の制振処理では、トルク指令値Tm
**をフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*に基づいて設定した場合、第2トルク目標値Tm2
*が第1トルク目標値Tm1
*となるまで該設定を維持する(ステップS555)。
【0143】
これにより、第2トルク目標値Tm2
*とフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*が相互に頻繁な切り替わりによるトルク指令値Tm
**のハンチングが抑制される。
【0144】
また、本実施形態では、モータ(駆動モータ4)を走行駆動源として搭載した電動車両10において、トルク指令値Tm
**に基づいて駆動モータ4を制御する他の態様の電動車両制御方法が提供される。
【0145】
この電動車両制御方法は、路面勾配の影響を含む外乱トルクの推定値としての外乱トルク推定値Tdを算出する外乱トルク推定処理(ステップS520)と、駆動モータ4の回転速度又は車速Vに相関する速度パラメータ(モータ回転速度ωm又は車速V)を取得する速度パラメータ取得処理(ステップS201)と、モータ回転速度ωmの低下に応じてトルク指令値Tm
**を外乱トルク推定値Tdに収束させるように停車時基本トルク目標値としての第2トルク目標値Tm2
*を算出する停車処理(ステップS203及びステップS530)、及び第2トルク目標値Tm2
*をフィルタリング処理して停車時補正トルク目標値(フィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*)を算出する制振処理(ステップS204及びステップS560)を含む車両状態制御と、を有する。
【0146】
そして、制振処理では、路面勾配の絶対値が所定値を超える場合に、トルク指令値Tm
**を第2トルク目標値Tm2
*に基づいて設定する(ステップS552のNO、ステップS556、及びステップS570)。また、路面勾配の絶対値が所定値以下となる場合に、トルク指令値Tm
**をフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*に基づいて設定する(ステップS552のYes、及びステップS553)。
【0147】
これにより、ギアのバックラッシュ区間内における停車に起因する制御安定性の低下が生じる可能性の低い路面勾配(急な路面勾配)において電動車両10を停車させる場合には、停車時の減速に適した第2トルク目標値Tm2
*を停車に至るまで維持して滑らかな減速態様を実現することができる一方、上記制御安定性の低下が生じ得る緩い路面勾配において電動車両10を停車させる場合には、フィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*を設定して制御安定性をより向上させることができる。
【0148】
このため、トルク指令値Tm
**をフィルタ処理されたフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*に設定するシーンを、より確実に上記制御安定性の低下が生じ得る緩い登り勾配における停車シーンに限定することができる。このため、緩い登り勾配において上述のギアのバックラッシュ区間内における停車に起因した制御値の振動を好適に抑制し、電動車両10の停車時における持続振動の発生が防止される。
【0149】
また、本実施形態の制振処理では、路面勾配の絶対値が所定値以下であるか否かの判定を、第2トルク目標値Tm2
*の絶対値(|Tm2
*|)が所定のトルク閾値Tth_sl以下であるか否かに基づいて実行する(ステップS552)。
【0150】
これにより、トルク指令値Tm
**としてフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*を設定すべき路面勾配の大きさを推定するための、具体的な制御ロジックが実現されることとなる。このため、上述の制御値の振動が生じ得る緩い登り勾配において停車において、減速に適した第2トルク目標値Tm2
*と上記制御安定性の低下を確保に適したフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*の間におけるトルク指令値Tm
**のより好適な切り替えを実現し得る制御ロジックが提供されることとなる。
【0151】
さらに、本実施形態では、モータ(駆動モータ4)を走行駆動源として搭載した電動車両10において、トルク指令値Tm
**に基づいて駆動モータ4を制御する電動車両制御装置(モータコントローラ2)が提供される。
【0152】
このモータコントローラ2は、路面勾配の影響を含む外乱トルクの推定値としての外乱トルク推定値T
dを算出する外乱トルク推定部(ステップS520)と、駆動モータ4の回転速度又は車速Vに相関する速度パラメータ(モータ回転速度ω
m又は車速V)を取得する速度パラメータ取得部(ステップS201)と、モータ回転速度ω
mの低下に応じてトルク指令値T
m
**を外乱トルク推定値T
dに収束させるように停車時基本トルク目標値としての第2トルク目標値T
m2
*を算出する停車処理(ステップS203及びステップS530)と、第2トルク目標値T
m2
*をフィルタリング処理して停車時補正トルク目標値(フィルタ処理トルク目標値T
m_sf
*)を算出する制振処理(ステップS204及びステップS560)を含む車両状態制御部(
図5)を有する。
【0153】
そして、モータコントローラ2の車両状態制御部は、制振処理として、相対的に高い車速域に設定される第1停車間際(ωth2<ωm≦ωth1)においては、トルク指令値Tm
**を第2トルク目標値Tm2
*に基づいて設定する。また、相対的に低い車速域に設定される第2停車間際(ωm≦ωth2)においては、トルク指令値Tm
**をフィルタ処理トルク目標値Tm_sf
*に基づいて設定する(ステップS570)。
【0154】
これにより、上記電動車両制御方法の実行に適した構成(特にプログラム構成)を備えた電動車両制御装置がモータコントローラ2として実現されることとなる。
【0155】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0156】
例えば、上記実施形態においてモータコントローラ2により実行される各処理(
図2のステップS201~ステップS206)の少なくとも一部は、電動車両10に搭載される他のコントローラ(上位の車両制御コントローラなど)との間で分散させる構成を採用しても良い。特に、この構成を採用する場合には、モータコントローラ2と他のコントローラの間における必要な信号の通信にはCAN(Controller Area Network)などの好適な通信プロトコルを採用することができる。
【0157】
また、上記実施形態において持続振動対策(ステップS560)におけるフィルタ処理を第2トルク目標値Tm2
*に対して施す例を説明した。しかしながら、このフィルタ処理を、トルク指令値算出処理(ステップS570)から出力されるトルク目標値に対して実行する構成としても良い。