(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220921BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 209
B41J2/01 401
B41J2/01 129
B41J2/17 103
(21)【出願番号】P 2018092800
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】行本 知仁
(72)【発明者】
【氏名】山口 真広
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 彰一
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196586(JP,A)
【文献】特開2014-124830(JP,A)
【文献】特開2016-163984(JP,A)
【文献】米国特許第06582072(US,B1)
【文献】特開2010-155457(JP,A)
【文献】特開2017-154381(JP,A)
【文献】特開2004-090487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0238249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に沿って記録媒体を搬送する搬送ベルトを含む搬送部と、
搬送される前記記録媒体に向けてインクを吐出する少なくとも1つ以上のヘッド部と、
前記記録媒体を前記搬送ベルトに吸着させるための吸引部と、を備え、
前記搬送部には、前記記録媒体の画像形成領域に対応して前記ヘッド部がインクを吐出する領域を少なくとも含む第1吸引領域と前記第1吸引領域の周囲に位置する第2吸引領域とが設けられ、
前記第2吸引領域は、前記搬送方向における前記第1吸引領域の上流側で前記第1吸引領域に隣接する上流側隣接領域と、前記搬送方向における前記第1吸引領域の下流側で前記第1吸引領域に隣接する下流側隣接領域とを含み、
前記吸引部による吸引力が、前記上流側隣接領域および前記下流側隣接領域の各々よりも前記第1吸引領域の方が大きくなって
おり、
前記ヘッド部よりも前記搬送方向上流側に配置され、搬送される前記記録媒体を前記搬送ベルトに向けて押し当てる押し当て部材をさらに備え、
前記押し当て部材は、前記搬送方向における前記第2吸引領域と前記第1吸引領域との境界部に配置され、
前記記録媒体は、前記押し当て部材によって前記搬送ベルトに向けて押しつけられた状態で前記第1吸引領域に搬送される、画像形成装置。
【請求項2】
前記吸引部の吸引動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記画像形成領域の大きさ、および/または画像形成態様に応じて前記吸引動作を制御することにより、前記第1吸引領域の大きさを変更する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記ヘッド部と向かい合うように配置され、前記ヘッド部との間を前記搬送ベルトが通過するように前記搬送ベルトを支持する支持部材を含み、
前記搬送ベルトには、複数の吸引孔が設けられ、
前記支持部材には、当該支持部材に当接する部分の前記搬送ベルトに設けられた複数の前記吸引孔に連通する複数の貫通孔が設けられ、
前記支持部材において、前記複数の貫通孔が設けられた領域は複数の区画領域に区画されており、
前記吸引部は、前記区画領域ごとに前記吸引孔および前記貫通孔を介して気体を吸引可能に構成され、
前記制御部は、前記複数の区画領域のうちの前記第1吸引領域に対応する一部の前記区画領域における吸引力が前記複数の区画領域のうちの他の前記区画領域における吸引力よりも大きくなるように、前記吸引動作を制御する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記押し当て部材は、ローラー部材によって構成されている、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ローラー部材が前記搬送方向に向けて前記記録媒体を搬送する搬送速度は、前記搬送部が前記記録媒体を搬送する速度と同等以上である、請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つ以上のヘッド部は、第1ヘッド部と、前記第1ヘッド部よりも前記搬送方向の下流側に配置された第2ヘッド部とを含み、
前記押し当て部材は、少なくとも前記第1ヘッド部と前記第2ヘッド部との間に配置されており、
前記搬送方向において前記第1ヘッド部と前記押し当て部材との間に配置され、前記第1ヘッド部から前記記録媒体に吐出されたインクを硬化させるための光照射部をさらに備える、請求項
1、4、5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1ヘッド部と前記光照射部との間に配置された仕切部材をさらに備え、
前記仕切部材は、前記光照射部から照射されて前記第1ヘッド部に向かう光を遮光する、請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記仕切部材を移動させるための移動機構と、
前記移動機構の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記移動機構の動作を制御して、前記記録媒体の厚みに応じて前記仕切部材と前記搬送ベルトとの間の間隔を調整する、請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記光照射部および前記第1ヘッド部の周辺に浮遊する浮遊物を回収可能なダクトをさらに備えた、請求項
6から
8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
搬送方向に沿って記録媒体を搬送する搬送ベルトを含む搬送部と、
搬送される前記記録媒体に向けてインクを吐出する少なくとも1つ以上のヘッド部と、
前記記録媒体を前記搬送ベルトに吸着させるための吸引部と、を備え、
前記搬送部には、前記記録媒体の画像形成領域に対応して前記ヘッド部がインクを吐出する領域を少なくとも含む第1吸引領域と前記第1吸引領域の周囲に位置する第2吸引領域とが設けられ、
前記吸引部による吸引力が、前記第2吸引領域よりも前記第1吸引領域の方が大きくなっており、
前記ヘッド部よりも前記搬送方向上流側に配置され、搬送される前記記録媒体を前記搬送ベルトに向けて押し当てる押し当て部材をさらに備え、
前記押し当て部材は、前記搬送方向における前記第2吸引領域と前記第1吸引領域との境界部に配置され、
前記記録媒体は、前記押し当て部材によって前記搬送ベルトに向けて押しつけられた状態で前記第1吸引領域に搬送される、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクを吐出するヘッド部を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業目的で取り扱われる印刷物を印刷可能な画像形成装置として、産業用インクジェット記録装置が開発されている。この産業用インクジェット記録装置においては、一般消費者向けインクジェット記録装置と比べて、より高い画像品質が要求される。
【0003】
パッケージ印刷製品の分野においては、たとえば0.3mm~1.5mm程度の厚さを有する厚紙(フルート紙、および段ボール等)に対して画像を形成する場合がある。このような場合であっても、より高い画像品質が要求される。
【0004】
このような厚紙に対して高画質の画像を形成するためには、用紙を水平な状態で搬送し、用紙と、当該用紙に向けてインクを吐出するヘッドとの間の距離を一定に保つことが必要となる。用紙とヘッドとの間の距離を一定に保つことにより、所望の箇所に適量のインクを付着させることができる。
【0005】
一般的に、用紙は、搬送ベルトによって搬送される。搬送ベルトに搬送される用紙の平面性(より具体的には用紙ヘッドとの間の距離)は、搬送ベルトの平面性、当該搬送ベルトを支持する支持部材の平面性、および用紙と搬送ベルトとの吸着性に左右される。
【0006】
このうち吸着性は、複数の穴を有する搬送ベルトおよび複数の吸引孔を有するベルト支持部材に対して負圧を発生させ、搬送ベルトと用紙との間を真空状態に近づけることで確保される。
【0007】
上述のような搬送機構を具備するインクジェット記録装置が開示された文献として、たとえば、特開2016-150794号公報(特許文献1)、WO2013/150677(特許文献2)、および特開2016-107435号公報(特許文献3)等が挙げられる。
【0008】
特許文献1に開示のインクジェット記録装置においては、搬送ベルトが巻回される一対の巻回ローラーの間に、複数のローラーが設けられた吸引チャンバ(ベルト支持部材)が配置されている。
【0009】
特許文献2に開示のインクジェット記録装置においては、搬送ベルトに非接触の状態で搬送ベルトを保持する保持機構が設けられている。当該保持機構は、気体が吸引される気体吸引部と、気体が供給される気体供給部とを備え、搬送ベルトに負圧を与える一方で、部分的に正圧を与える。
【0010】
特許文献3に開示のインクジェット記録装置においては、搬送ベルトが支持部材に摺動可能に構成されており、搬送ベルトを支持する支持部材は、ヘッド部に対向する対向領域よりも搬送方向の上流側に位置する第1領域と、当該第1領域の搬送方向下流側に位置し上記対向領域を含む第2領域とを有する。第1領域に負荷される負圧は、第2領域に負荷される負圧よりも大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2016-150794号公報
【文献】WO2013/150677
【文献】特開2016-107435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、用紙が支持部材上を通過する通過領域の全域において搬送ベルトと用紙との間を真空状態にする場合には、搬送ベルトと支持部材との間に作用する摩擦力が増大する。このような場合には、搬送ベルトの摩耗量が増加するため、搬送ベルトの寿命が短くなってしまう。また、搬送ベルトの駆動負荷も増大する。
【0013】
上記特許文献1に開示のインクジェット記録装置においては、複数のローラーによって搬送ベルトが送られるため、搬送ベルトとベルト支持部材との間に作用する摩擦を低減することができる。しかしながら、複数のローラーを使用するため組付性が悪く、ベルトの平面性を確保するのが困難となり、この結果、用紙の平面性を確保することも困難となる。
【0014】
上記特許文献2に開示のインクジェット記録装置においては、搬送ベルトと保持機構との間に摩擦力が作用しない。しかしながら、負圧が与えられない領域(すなわち正圧が与えられる領域)では、用紙と搬送ベルトとの吸着性が低下するため、用紙の平面性を確保することが困難となる。
【0015】
上記特許文献3に開示のインクジェット記録装置においては、支持部材がヘッド部に対向しない領域において吸引力を強め、支持部材がヘッド部に対向する領域において吸引力が弱くなる。このため、用紙にインクが吐出される領域で用紙の平面性を確保することが困難となる。
【0016】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、記録媒体を搬送する搬送ベルトに作用する摩擦を軽減しつつ、記録媒体の平面性を確保することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示に基づく画像形成装置は、搬送方向に沿って記録媒体を搬送する搬送ベルトを含む搬送部と、搬送される上記記録媒体に向けてインクを吐出する少なくとも1つ以上のヘッド部と、上記記録媒体を上記搬送ベルトに吸着させるための吸引部と、を備える。上記搬送部には、上記記録媒体の画像形成領域に対応して上記ヘッド部がインクを吐出する領域を少なくとも含む第1吸引領域と上記第1吸引領域の周囲に位置する第2吸引領域とが設けられている。上記吸引部による吸引力が、上記第2吸引領域よりも上記第1吸引領域の方が大きくなっている。
【0018】
上記本開示に基づく画像形成装置は、上記吸引部の吸引動作を制御する制御部をさらに備える。上記制御部は、上記画像形成領域の大きさ、および/または画像形成態様に応じて上記吸引動作を制御することにより、上記第1吸引領域の大きさを変更する。
【0019】
上記本開示に基づく画像形成装置にあっては、上記搬送部は、上記ヘッド部と向かい合うように配置され、上記ヘッド部との間を上記搬送ベルトが通過するように上記搬送ベルトを支持する支持部材を含んでいてもよい。この場合には、上記搬送ベルトには、複数の吸引孔が設けられることが好ましく、上記支持部材には、当該支持部材に対向する部分の上記搬送ベルトに設けられた複数の上記吸引孔に連通する複数の貫通孔が設けられていることが好ましい。さらに、上記支持部材において、上記複数の貫通孔が設けられた領域は複数の区画領域に区画されていることが好ましい。上記吸引部は、上記区画領域ごとに上記吸引孔および上記貫通孔を介して気体を吸引可能に構成されていることが好ましい。さらにこの場合には、上記制御部は、上記複数の区画領域のうちの上記第1吸引領域に対応する一部の上記区画領域における吸引力が上記複数の区画領域のうちの他の上記区画領域における吸引力よりも大きくなるように、上記吸引動作を制御することが好ましい。
【0020】
上記本開示に基づく画像形成装置は、上記ヘッド部よりも上記搬送方向上流側に配置され、搬送される上記記録媒体を上記搬送ベルトに向けて押し当てる押し当て部材をさらに備えていてもよい。また、上記押し当て部材は、上記搬送方向における上記第2吸引領域と上記第1吸引領域との境界部に配置されていてもよい。この場合には、上記記録媒体は、上記押し当て部材によって上記搬送ベルトに向けて押しつけられた状態で上記第1吸引領域に搬送されることが好ましい。
【0021】
上記本開示に基づく画像形成装置にあっては、上記押し当て部材は、ローラー部材によって構成されていてもよい。
【0022】
上記本開示に基づく画像形成装置にあっては、上記ローラー部材が上記搬送方向に向けて上記記録媒体を搬送する搬送速度は、上記搬送部が上記記録媒体を搬送する速度と同等以上であることが好ましい。
【0023】
上記本開示に基づく画像形成装置にあっては、上記少なくとも1つ以上のヘッド部は、第1ヘッド部と、上記第1ヘッド部よりも上記搬送方向の下流側に配置された第2ヘッド部とを含んでいてもよい。この場合には、上記押し当て部材は、少なくとも上記第1ヘッド部と上記第2ヘッド部との間に配置されていることが好ましい。さらに上記画像形成装置は、上記第1ヘッド部と上記押し当て部材との間に配置され、上記第1ヘッド部から上記記録媒体に吐出されたインクを硬化させるための光照射部をさらに備えることが好ましい。
【0024】
上記本開示に基づく画像形成装置は、上記第1ヘッド部と上記光照射部との間に配置された仕切部材をさらに備えていてもよい。この場合には、上記仕切部材は、上記光照射部から照射されて上記第1ヘッド部に向かう光を遮光することが好ましい。
【0025】
上記本開示に基づく画像形成装置は、上記搬送方向と交差する方向に上記仕切部材を移動させるための移動機構と、上記移動機構の動作を制御する制御部をさらに備えていてもよい。この場合には、上記制御部は、上記移動機構の動作を制御して、上記記録媒体の厚みに応じて上記仕切部材と上記搬送部との間の間隔を調整することが好ましい。
【0026】
上記本開示に基づく画像形成装置は、上記光照射部および上記第1ヘッド部の周辺に浮遊する浮遊物を回収可能なダクトをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、記録媒体を搬送する搬送ベルトに作用する摩擦を軽減しつつ、記録媒体の平面性を確保することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態1に係るインクジェット記録装置の概略図である。
【
図2】実施の形態1に係るインクジェット記録装置が有する画像形成部の構成を示す概略図である。
【
図3】実施の形態1に係る画像形成部が有するヘッド部の周辺構造を示す概略図である。
【
図4】実施の形態1に係る画像形成部における第1の搬送態様を示す概略平面図である。
【
図5】実施の形態1に係る画像形成部における第2の搬送態様を示す概略平面図である。
【
図6】実施の形態1に係る画像形成部における第3の搬送態様を示す概略平面図である。
【
図7】実施の形態2に係るインクジェット記録装置が有するヘッド部の周辺構造を示す概略図である。
【
図8】実施の形態3に係るインクジェット記録装置が有するヘッド部の周辺構造を示す概略図である。
【
図9】
図8に示す矢視IX方向から見た場合の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、画像形成装置として、インクジェット記録装置を例示して説明する。以下に示す、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るインクジェット記録装置の概略図である。
図1を参照して、実施の形態1に係るインクジェット記録装置1について説明する。
【0031】
図1に示すように、実施の形態1に係るインクジェット記録装置1は、複数の処理部を備え、記録媒体が複数の処理部に順次搬送されるように構成されている。複数の処理部には、供給部2、放電部3、加熱部4、レジスト部5、画像形成部6、照射部7、検査部8、およびスタッカー部9が含まれる。
【0032】
供給部2、放電部3、加熱部4、レジスト部5、画像形成部6、照射部7、検査部8、およびスタッカー部9は、記録媒体Mの搬送方向に沿ってこの順で配置されている。
【0033】
供給部2は、搬送方向の下流側に位置する放電部3に向けて記録媒体Mを供給する。供給部2には、複数の記録媒体Mが収容されている。記録媒体Mとしては、枚葉紙、厚紙、段ボール材や樹脂板などを用いることができる。
【0034】
放電部3は、記録媒体Mに向けて放電する。放電部3は、たとえば記録媒体Mに向けてプラズマ等を照射することにより、記録媒体Mの表面を改質する。これにより、記録媒体Mとインクとの親和性が高められる。放電部3は、表面が改質された記録媒体Mを加熱部4に向けて搬送する。
【0035】
加熱部4は、記録媒体Mが所望の温度範囲内の温度となるように記録媒体Mを加熱する。加熱部4は、加熱された記録媒体Mをレジスト部5に向けて搬送する。レジスト部5は、搬送方向に対して斜行した記録媒体Mの姿勢を整える。レジスト部5は、姿勢が整えられた記録媒体Mを画像形成部6に向けて搬送する。
【0036】
画像形成部6は、搬送される記録媒体Mの表面に画像を形成する。画像形成部6においては、記録媒体Mの表面にインクが吐出される。画像形成部6は、画像が形成された記録媒体Mを照射部7に向けて搬送する。
【0037】
照射部7は、記録媒体Mに向けてUV等の光を照射し、記録媒体Mに吐出されたインクを硬化させる。これにより、記録媒体M上に画像を定着させる。照射部7は、画像が定着された記録媒体Mを検査部8に搬送する。
【0038】
検査部8は、ラインセンサー等を用いて記録媒体Mに定着された画像を検査する。検査部8は、検査された記録媒体Mをスタッカー部9に排出する。スタッカー部9には、画像が定着された記録媒体Mが収容される。
【0039】
図2は、実施の形態1に係るインクジェット記録装置が有する画像形成部の構成を示す概略図である。
図2を参照して、画像形成部6について説明する。
【0040】
図2に示すように、画像形成部6は、複数のヘッド部11Y,11M,11C,11K、搬送部20、吸引部30、および制御部50を備える。
【0041】
複数のヘッド部11Y,11M,11C,11Kは、記録媒体Mの搬送方向に沿ってこの順で配置されている。複数のヘッド部11Y,11M,11C,11Kは、後述する搬送ベルト21に沿って配置されている。
【0042】
複数のヘッド部11Y,11M,11C,11Kは、搬送される記録媒体Mに向けてインクを吐出する。ヘッド部11Yは、黄色のインクを吐出する。ヘッド部11Mは、マゼンタ色のインクを吐出する。ヘッド部11Cは、シアン色のインクを吐出する。ヘッド部11Kは、黒色のインクを吐出する。各色のインクは、光硬化性材料で構成されている。
【0043】
画像形成部6は、複数のローラー部材12、および複数の光照射部13をさらに備える。複数のローラー部材12は、それぞれ、ヘッド部11Y,11M,11C,11Kに対して搬送方向上流側に配置される。
【0044】
ローラー部材12は、搬送部20側に向けて付勢されており、押し当て部材として機能する。ローラー部材12は、搬送される記録媒体Mを搬送ベルト21に向けて押し当てる。
【0045】
複数の光照射部13は、それぞれ、ヘッド部11Y,11M,11C,11Kに対して搬送方向下流側に配置される。各ヘッド部に対して搬送方向下流側に配置された光照射部13は、各ヘッド部から吐出されたインクを半硬化させる。
【0046】
搬送部20は、搬送方向に沿って記録媒体を搬送する。搬送部20は、搬送ベルト21、駆動ローラー22、従動ローラー23、テンションローラー24、および支持部材25を含む。
【0047】
搬送ベルト21は、無端状のベルトである。搬送ベルト21は、駆動ローラー22、従動ローラー23、およびテンションローラー24に巻回されている。駆動ローラー22が回転することにより、搬送ベルト21が回転し、記録媒体Mを搬送する。
【0048】
搬送ベルト21には、複数の吸引孔が設けられている。吸引孔を通して空気を吸い込むことにより、搬送ベルト21に記録媒体Mを吸着させることができる。
【0049】
駆動ローラー22および従動ローラー23は、搬送方向に離間して配置されている。駆動ローラー22は、たとえばモーター(図示しない)によって回転駆動される。駆動ローラー22の回転に連動して、搬送ベルト21および従動ローラー23が回転する。
【0050】
テンションローラー24は、支持部材25の下方に配置されている。テンションローラー24は、上下方向に移動可能に設けられている。テンションローラー24の上下方向の位置を設定することにより、搬送ベルト21に適切にテンションを与えることができる。
【0051】
支持部材25は、複数のヘッド部11Y,11M,11C,11Kに向かい合うように配置されている。支持部材25は、駆動ローラー22と従動ローラー23との間に隙間に配置されている。
【0052】
支持部材25は、複数のヘッド部11Y,11M,11C,11Kとの間を搬送ベルト21が通過するように搬送ベルト21を支持する。支持部材25は、搬送ベルト21を支持する支持面を有する。当該支持面は、搬送ベルト21の内周面に当接する。
【0053】
支持部材25には、複数の貫通孔が設けられている。複数の貫通孔は、支持面に貫通するように設けられている。複数の貫通孔は、支持部材25に当接する部分の搬送ベルト21に設けられた複数の吸引孔に連通する。支持部材25において、複数の貫通孔が設けられた領域は、複数の区画領域に区画されている。複数の区画領域は、たとえば格子状に配置される。
【0054】
吸引部30は、記録媒体Mを搬送部20に吸着させる。具体的には、吸引部30は、上記吸引孔および貫通孔から空気を吸い込むことにより、記録媒体Mを搬送ベルト21に吸着させる。吸引部30は、上記区画領域ごとに吸引孔および貫通孔を介して空気を吸引可能に構成されている。
【0055】
吸引部30は、第1ポンプ31、第2ポンプ32、第1配管34、および第2配管35を含む。第1配管34の一端側は、第1ポンプ31に接続されている。第1配管34の他端側は分岐しており、分岐した先端が上記複数の区画領域のうち一部の区画領域に接続されている。第2配管35の一端側は、第2ポンプ32に接続されている。第2配管35の他端側は分岐しており、分岐した先端が上記複数の区画領域のうち他の区画領域に接続されている。
【0056】
なお、吸引部30は、複数の電磁弁を備えている。当該各電磁弁は、分岐されて各区画領域に接続される第1配管34および第2配管35の先端側に設けられる。
【0057】
制御部50は、吸引部30の吸引動作を制御する。具体的には、制御部50は、第1ポンプ31および第2ポンプ32の吸引力、および/または、電磁弁の開閉度を適宜制御することにより、区画領域毎の吸引力を制御する。これにより、制御部50は、搬送部20に吸引力が異なる第1吸引領域R1と第2吸引領域R2とを形成する。第1吸引領域R1における吸引力は、第2吸引領域R2における吸引力よりも大きくなっている。
【0058】
制御部50は、記録媒体Mの画像形成領域の大きさに応じて上記のように吸引部30の吸引動作を制御することにより、第1吸引領域R1の大きさおよび第2吸引領域R2の大きさを変更することができる。
【0059】
なお、ポンプの個数および配管の個数は、2つに限定されず、適宜変更することができる。
【0060】
図3は、実施の形態1に係る画像形成部に含まれるヘッド部の周辺構造を示す概略図である。なお、
図3においては便宜上のため、画像形成部に含まれる複数のヘッド部のうち1つのヘッド部11Yの周辺構造を示している。
【0061】
図3に示すように、ローラー部材12は、第1吸引領域R1と第2吸引領域R2との境界部に配置されている。なお、第1吸引領域R1は、記録媒体において画像が形成される画像形成領域に対応してインクを吐出する領域R3を少なくとも含む領域である。第2吸引領域R2は、第1吸引領域R1の周囲に位置する。
【0062】
上記のようにローラー部材12が配置されることにより、記録媒体Mは、ローラー部材12によって搬送ベルト21に押し付けられた状態で第1吸引領域R1に搬送される。
【0063】
これにより、搬送方向の下流側における記録媒体Mの先端の浮きを抑制することができ、上記第1吸引領域R1において記録媒体Mを確実に搬送ベルト21に吸着させることができる。
【0064】
また、ローラー部材12が搬送方向に向けて記録媒体を搬送する搬送速度は、搬送部20が記録媒体Mを搬送する速度と同等以上であることが好ましい。これにより、記録媒体Mを搬送方向に確実に案内しつつ、記録媒体Mに張力を発生できるため、記録媒体Mが撓むことを抑制できる。
【0065】
さらに、ヘッド部11Yに対して搬送方向下流側には光照射部13およびローラー部材12が配置されている。ヘッド部11Yに対して搬送方向下流側に位置するローラー部材12は、ヘッド部11Yとヘッド部11Mとの間に配置されている。
【0066】
また、上記光照射部13は、ヘッド部11Yと当該ヘッド部11Yの搬送方向下流側に位置するローラー部材12との間に配置されている。この光照射部13は、ヘッド部11Yから吐出されたインクに紫外線等の光を照射することによりインクを半硬化させる。
【0067】
当該インクを半硬化させることにより、ヘッド部11Yに対して搬送方向下流側に位置するローラー部材12が、ヘッド部11Yを通過して次のヘッド部11Mに向けて移動する記録媒体Mに当接する際に、インクがローラー部材12に付着することを抑制することができる。
【0068】
図4から
図6は、実施の形態1に係る画像形成部における第1から第3の搬送態様を示す概略平面図である。
図4から
図6を参照して、画像形成部6における搬送態様について説明する。なお、
図4から
図6においては、便宜上のため、ローラー部材12、光照射部13等を省略している。
【0069】
図4に示すように、第1の搬送態様においては、記録媒体Mのサイズが小さいものを搬送する。この場合には、搬送方向に直交する第1吸引領域R1の幅は、小さくなっている。
【0070】
図5に示すように、第2の搬送態様においては、記録媒体Mのサイズが大きいものを搬送する。この場合には、上記第1吸引領域R1の幅は、大きくなっている。
【0071】
図6に示すように、第3の搬送態様は、画像形成態様がモノクロ印刷である場合の搬送態様である。この場合には、モノクロ印刷に使用されるヘッド部11Kがインクを吐出する領域の周辺のみを第1吸引領域R1としている。
【0072】
図4から
図6に示すように、制御部50は、画像形成領域、および/または画像形成態様に応じて吸引部30の吸引動作を制御することにより、第1吸引領域R1の大きさを適宜変更することができる。
【0073】
以上のように、実施の形態1に係るインクジェット記録装置1にあっては、搬送部20に、記録媒体Mの画像形成領域に対応してヘッド部がインクを吐出する領域R3を少なくとも含む第1吸引領域R1と当該第1吸引領域R1の周囲に位置する第2吸引領域R2が設けられており、吸引部30における吸引力が、第2吸引領域R2よりも第1吸引領域R1の方が大きくなっている。
【0074】
このため、ヘッド部からインクが吐出される領域R3を含む第1吸引領域R1においては、記録媒体Mを搬送ベルト21に確実に吸引することができる。これにより、ヘッド部からインクを吐出する際に、記録媒体Mの平面性を確保することができる。
【0075】
また、第1吸引領域R1の周囲に位置する第2吸引領域R2においては、吸引力が第1吸引領域R1より小さくなっている。このため、第2吸引領域R2を搬送ベルト21が通過する際に搬送ベルト21が支持部材25摺動することで発生する摩擦力を低減させることができる。
【0076】
以上のように、実施の形態1に係るインクジェット記録装置1は、記録媒体Mを搬送する搬送ベルトに作用する摩擦を軽減しつつ、記録媒体の平面性を確保することができる画像形成装置を提供することができる。
【0077】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係るインクジェット記録装置が有するヘッド部の周辺構造を示す概略図である。なお、
図7においては、便宜上のため、インクジェット記録装置に含まれる複数のヘッド部のうち1つのヘッド部11Yの周辺構造を示している。
図7を参照して、実施の形態2に係るインクジェット記録装置について説明する。
【0078】
図7に示すように、実施の形態2に係るインクジェット記録装置は、実施の形態1に係るインクジェット記録装置1と比較して、画像形成部6Aの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。画像形成部6Aは、実施の形態1に係る画像形成部6と比較した場合に、主として複数の仕切部材14を備える点において相違する。
【0079】
複数の仕切部材14は、それぞれ、ヘッド部11Y,11M,11C,11Kと、これらヘッド部に対して搬送方向下流側に配置された光照射部13との間に配置されている。仕切部材14は、光照射部から照射されて当該光照射部よりも搬送方向上流側に位置するヘッド部に向かう光を遮光する。
【0080】
仕切部材14は、搬送ベルト21との間の隙間を記録媒体Mが通過可能となるように、搬送ベルト21の上方に配置されている。
【0081】
画像形成部6は、仕切部材14を移動させる移動機構60をさらに備える。移動機構60は、たとえば、上下方向に仕切部材14を移動させる。移動機構60としては、仕切部材14の移動を案内する案内部を有するスライド機構等を採用することができる。
【0082】
移動機構60の動作は、制御部50によって制御される。制御部50は、移動機構60の動作を制御して、記録媒体Mの厚みに応じて仕切部材14と搬送ベルト21との間の間隔を調整する。
【0083】
以上のように構成される場合であっても、実施の形態2に係るインクジェット記録装置は、実施の形態1に係るインクジェット記録装置1とほぼ同様の効果が得られる。
【0084】
さらに、仕切部材14を備えた構成とすることにより、光照射部13から照射された光が、ヘッド部に直接入射されることを抑制することができる。これにより、ヘッド部でインクが硬化されることを抑制することができる。
【0085】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3に係るインクジェット記録装置が有するヘッド部の周辺構造を示す概略図である。
図9は、
図8に示す矢視IX方向から見た場合の正面図である。
図8および
図9を参照して、実施の形態3に係るインクジェット記録装置について説明する。
【0086】
図8に示すように、実施の形態3に係るインクジェット記録装置は、実施の形態2に係るインクジェット記録装置と比較して、画像形成部6Bの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。画像形成部6Bは、実施の形態2に係る画像形成部6Aと比較した場合に、主として複数のダクト15を備える点において相違する。
【0087】
複数のダクト15は、それぞれ、ヘッド部11Y,11M,11C,11Kと、これらヘッド部に対して搬送方向下流側に配置されている。具体的には、ダクト15は、光照射部13よりも搬送方向下流側に配置されている。
【0088】
ヘッド部および当該ヘッド部よりも搬送方向下流側に配置された光照射部の周辺に浮遊する浮遊物を回収可能に構成されている。浮遊物は、ヘッドからインクを吐出する差に発生するインクミストや、光照射部によって発生するオゾン等である。
【0089】
図9に示すように、ダクト15は、ヘッド部11Yおよび光照射部13に向かう吸込口15aを有する。ダクト15には、ファン16が設けられており、当該ファン16が回転することにより、吸込口15aから周辺の空気が吸引される。
【0090】
以上のように構成される場合であっても、実施の形態3に係るインクジェット記録装置は、実施の形態2に係るインクジェット記録装置とほぼ同様の効果が得られる。
【0091】
さらに、浮遊物を回収可能なダクト15を備えた構成とすることにより、オゾンによるローラー部材12の劣化やインクミストによるインク汚染を抑制することができる。さらに、光照射部13に対して搬送方向下流側にダクト15を配置することにより、光照射部13からの光が、当該光照射部13よりも搬送方向下流側に位置するヘッド部に直接入射されることを抑制することができる。これにより、ヘッド部でインクが硬化されることを抑制することができる。
【0092】
なお、上述した実施の形態1から3においては、押し当て部材として、記録媒体Mに当接するローラー部材が用いられる場合を例示して説明したが、これに限定されず、送風装置が用いられてもよい。この場合には、送風装置は、記録媒体Mに風を吹き付けることにより、記録媒体Mを搬送ベルト21に向けて押し当てる。
【0093】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 インクジェット記録装置、2 供給部、3 放電部、4 加熱部、5 レジスト部、6,6A,6B 画像形成部、7 照射部、8 検査部、9 スタッカー部、11C,11K,11M,11Y ヘッド部、12 ローラー部材、13 光照射部、14 仕切部材、15 ダクト、15a 吸込口、16 ファン、20 搬送部、21 搬送ベルト、22 駆動ローラー、23 従動ローラー、24 テンションローラー、25 支持部材、30 吸引部、31 第1ポンプ、32 第2ポンプ、34 第1配管、35 第2配管、50 制御部、60 移動機構、M 記録媒体、R1 第1吸引領域、R2 第2吸引領域、R3 領域。