(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】定着装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
G03G15/20 530
(21)【出願番号】P 2018106854
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 亮
(72)【発明者】
【氏名】河手 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 洋朗
(72)【発明者】
【氏名】篠村 将人
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-347825(JP,A)
【文献】特開昭60-247672(JP,A)
【文献】特開2001-219919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
B65H 29/54-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部を有する回転体である定着部材と、
前記定着部材を押圧する加圧部材と、
前記定着部材と前記加圧部材とで形成される定着ニップ部よりも用紙搬送方向の下流側に配置された、用紙搬送方向の順方向に回転可能であって、外周面の軸方向に沿って空気の噴射が可能な噴射口が形成された
、第1の円筒と、前記第1の円筒の外周側に配置された第2の円筒とからなる筒状部材を有する空気噴射部と、
前記空気噴射部の前記筒状部材の内部に空気を供給する空気供給部と、
前記定着ニップ部から排出された用紙の搬送に応じて前記空気噴射部を用紙搬送方向の順方向に回転させ、前記空気噴射部の前記噴射口から噴射される空気を前記用紙の前端部に吹き付け
、前記定着部材から前記用紙を剥離させる位置から前記用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲では、前記空気供給部を制御して空気の供給量を多くし、それ以外の範囲では空気の供給量を少なくする制御を行う制御部と、を備
え、
前記第1の円筒又は前記第2の円筒のいずれか一方の円筒が、前記定着部材から前記用紙を剥離させる位置から前記用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲に対応して形成された開口部、を有し、
他方の円筒が前記噴射口を有する
定着装置。
【請求項2】
前記空気噴射部の前記筒状部材は、前記軸方向に垂直な断面形状が円環である請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記空気噴射部の前記噴射口から噴射される空気を、少なくとも前記定着部材から前記用紙を剥離させる位置から前記用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲で前記用紙の前端部に吹き付ける制御を行う
請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記空気噴射部には、前記噴射口が周方向に所定の間隔で複数形成されている
請求項1から3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着ニップ部に搬送される前記用紙を検知する用紙検知部、を更に備え、
前記制御部は、前記用紙検知部による検知結果に基づいて、前記定着ニップ部から排出された前記用紙の前端部に空気が吹き付けられるように、前記空気噴射部の前記噴射口が形成された前記筒状部材の回転を制御する
請求項1から4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記用紙検知部による検知結果に基づいて、前記空気噴射部の前記噴射口が形成された前記筒状部材の回転速度を制御する
請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記用紙検知部による検知結果に基づいて、前記空気噴射部の前記噴射口が形成された前記筒状部材の回転速度、及び、回転のON/OFFを制御する
請求項5に記載の定着装置。
【請求項8】
前記噴射口は、前記筒状部材の前記軸方向に沿う一つの長孔、又は前記軸方向に沿って連続する複数の孔である
請求項1から7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
用紙に画像を形成する画像形成部と、前記用紙に前記画像を定着させる定着装置と、を有し、
前記定着装置が、
加熱部を有する回転体である定着部材と、
前記定着部材を押圧する加圧部材と、
前記定着部材と前記加圧部材とで形成される定着ニップ部よりも用紙搬送方向の下流側に配置された、用紙搬送方向の順方向に回転可能であって、外周面の軸方向に沿って空気の噴射が可能な噴射口が形成された
、第1の円筒と、前記第1の円筒の外周側に配置された第2の円筒とからなる筒状部材を有する空気噴射部と、
前記空気噴射部の前記筒状部材の内部に空気を供給する空気供給部と、
前記定着ニップ部から排出された用紙の搬送に合わせて前記空気噴射部を用紙搬送方向の順方向に回転させ、前記空気噴射部の前記噴射口から噴射される空気を前記用紙の前端部に吹き付け
、前記定着部材から前記用紙を剥離させる位置から前記用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲では、前記空気供給部を制御して空気の供給量を多くし、それ以外の範囲では空気の供給量を少なくする制御を行う制御部と、を備
え、
前記第1の円筒又は前記第2の円筒のいずれか一方の円筒が、前記定着部材から前記用紙を剥離させる位置から前記用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲に対応して形成された開口部、を有し、
他方の円筒が前記噴射口を有する
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を噴射して定着部材のニップ部を通過した用紙を、定着部材から分離させることが可能な定着装置、及び、この定着装置を備える画像形成装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、定着装置としてハロゲンヒーター等の加熱部を内蔵した定着ローラーと、定着ローラーを押圧する加圧ローラーとを備える構成が知られている。この構成では、定着ローラーと加圧ローラーとによって形成されたニップ部において、トナー像が転写された用紙を挟持及び搬送しながら、トナー像に加熱及び加圧を行う。
【0003】
上記構成の定着装置では、加熱によって用紙に融着するトナーが定着ローラーに接触する。このため、一般的に定着装置では、定着ローラーの表面に離型性に優れたフッ素系樹脂等からなる離型層が形成され、さらに、定着ローラーから用紙を剥離するための剥離爪を備えている。しかし、この構成の定着装置では、剥離爪の鋭利な前端部が定着ローラーの表面に当接するため、定着ローラーの表面の離型層にキズが付き、用紙にも疵に基づく画像スジが転写されてしまう。
【0004】
このような問題を防止するために、定着ローラーのニップ部から排出される用紙の前端部に対して空気を噴射し、空気の風圧によって定着ローラーから用紙を剥離するとともに、用紙を冷却する定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載された定着装置では、ニップ部を通過した用紙の前端部に空気を噴射する空気噴射部を備える。空気噴射部として、1つの噴射口のみを有し、ニップ部を通過した用紙の前端と、搬送される用紙の面部との2方向に噴射口を往復回動させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の空気噴射部は、噴射口の往復回動が必要となることから制御が煩雑となる。このため、特許文献1に記載された従来の構成の定着装置では、近年要求される用紙の処理の高速化への対応が難しく、画像形成装置における生産性の向上が難しい。
【0008】
上述した問題の解決のため、本発明においては、用紙の処理の高速化への対応が可能な定着装置、及び、画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の定着装置は、加熱部を有する回転体である定着部材と、定着部材を押圧する加圧部材と、定着部材と加圧部材とで形成される定着ニップ部よりも用紙搬送方向の下流側に配置された、用紙搬送方向の順方向に回転可能であって、外周面の軸方向に沿って空気の噴射が可能な噴射口が形成された筒状部材を有する空気噴射部と、空気噴射部の筒状部材の内部に空気を供給する空気供給部と、定着ニップ部から排出された用紙の搬送に応じて空気噴射部を用紙搬送方向の順方向に回転させ、空気噴射部の噴射口から噴射される空気を用紙の前端部に吹き付ける制御を行う制御部とを備える。
また、本発明の画像形成装置は、上記定着装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、用紙の処理の高速化への対応が可能な定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す画像形成装置における定着装置の構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態における空気噴射部の全体と、空気噴射部に接続される空気供給部の構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態の空気噴射部に設けられる第1の筒状部材の構成を示す図である。
【
図5】第1実施形態の空気噴射部の回転軸に垂直な面の方向に沿った断面図である。
【
図6】第1実施形態の定着装置における、空気噴射部の制御部の機能ブロック図である。
【
図7】第1実施形態の定着装置における空気噴射部の動作の制御を表すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態の定着装置の空気噴射部の動作を説明するための図である。
【
図9】第1実施形態の定着装置の空気噴射部の動作を説明するための図である。
【
図10】第1実施形態の定着装置の空気噴射部の動作を説明するための図である。
【
図11】第2実施形態の定着装置の構成を示す図である。
【
図12】第2実施形態の定着装置の空気噴射部の構成を示す図である。
【
図13】第2実施形態の定着装置の空気噴射部の動作を説明するための図である。
【
図14】第2実施形態の定着装置の空気噴射部の動作を説明するための図である。
【
図15】第2実施形態の定着装置の空気噴射部の動作を説明するための図である。
【
図16】第3実施形態の空気噴射部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.画像形成装置、及び、定着装置の第1実施形態
2.画像形成装置、及び、定着装置の第2実施形態
3.画像形成装置、及び、定着装置の第3実施形態
【0013】
〈1.画像形成装置、及び、定着装置の第1実施形態〉
[画像形成装置の構成]
図1 に、画像形成装置の概略構成を示す。
図1に示す画像形成装置は、画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。
画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色対応した画像形成部10Y,10M,10C,10K、中間転写ベルト6、給紙搬送部及び定着装置9等からなる。
【0014】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から構成された画像読取装置YSが設置されている。画像読取装置YSでは、自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿dが搬送部によって搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系によって原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光部3Y,3M,3C,3Kに送られる。
【0015】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yの周囲に帯電部2Y、露光部3Y、現像部4Y及びクリーニング部8Yを有している。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に帯電部2M、露光部3M、現像部4M及びクリーニング部8Mを有している。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に帯電部2C、露光部3C、現像部4C及びクリーニング部8Cを有している。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に帯電部2K、露光部3K、現像部4K及びクリーニング部8Kを有している。そして、帯電部2Yと露光部3Y、帯電部2Mと露光部3M、帯電部2Cと露光部3C、及び帯電部2Kと露光部3Kは、潜像形成部を構成する。
【0016】
中間転写ベルト6は、無端状のベルトであり、中間転写ベルト6を駆動するための複数のローラーに張架されて、回動可能に支持されている。画像形成部10Y,10M,10C,10Kで形成された各色のトナー像は、転写部7Y,7M,7C,7Kにより中間転写ベルト6上に位置を合わせて逐次転写される(1次転写)。
【0017】
給紙カセット20内に収容された用紙Pは、給紙部21により給紙され、給紙ローラー22A,22B,22C,22D,レジストローラ23等を経て、転写部7Aに搬送される。そして、中間転写ベルト6上に形成されたカラーのトナー像が、用紙Pに転写される(2次転写)。
【0018】
定着装置9は、カラーのトナー像(カラー画像)が形成された用紙Pに定着処理を行う装置であり、搬送された用紙Pを加圧及び加熱して、転写されたカラー画像を用紙Pに定着させる。定着装置9は、例えば、ハロゲンヒーター等の加熱部によって加熱される定部材である定着ローラー91と、定着ローラー91を加圧する加圧部材である加圧ローラー94とを備える。定着ローラー41と加圧ローラー94とは、互いに圧接された状態で配置され、これらの圧接部として定着ニップ部が形成される。
【0019】
また、定着装置9は、定着ニップ部の用紙搬送方向の下流側に、定着ニップ部から排出される用紙Pの前端部に空気を噴射する空気噴射部100を備える。空気噴射部100は、カラー画像が定着され、定着ニップ部から排出される用紙Pを定着ローラー91から剥離するために、用紙P前端部に空気を噴射する。また、空気噴射部100は、定着ニップ部から排出された用紙Pが定着ローラー91側に湾曲し、用紙Pの全端部が再び定着ローラー91に接触しないように、用紙Pの排出角度が安定する位置まで、用紙P前端部への空気の噴射を継続する。
【0020】
転写部7Aにおいてカラー画像が転写された用紙Pは、定着装置9において加熱・加圧され、用紙P上にカラー画像が定着される。その後、用紙Pは、排紙ローラー24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
一方、転写部7Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した中間転写ベルト6は、クリーニング部8Aにより残留トナーが除去される。
なお、以上はカラー画像を形成する画像形成装置であったが、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよいし、中間転写ベルトを用いても用いなくてもよい。
【0021】
[定着装置の構成]
図2に、
図1に示す画像形成装置における、定着装置9の構成を示す。
図2に示す定着装置9 は、加熱部を内蔵する定着部材として定着ローラー91を備え、定着部材を押圧する加圧部材として加圧ローラー94を備える。
【0022】
また、定着装置9は、定着ローラー91と加圧ローラー94とによって形成された定着ニップ部に対し、用紙搬送方向の上流側に、定着ニップ部に搬送される用紙Pを検知する用紙検知部として給紙センサー111を備える。また、定着ニップ部から排出される用紙Pを検知する用紙検知部として排紙センサー112を備える。
【0023】
定着ニップ部の用紙搬送方向の下流側において、用紙Pの搬送路の上方(定着ローラー91が配置される側)には、空気噴射部100が配置されている。また、定着ニップ部の用紙搬送方向の下流側において、用紙Pの搬送路の下方(加圧ローラー94が配置される側)には、支持部材 93を備える。支持部材93は、例えば、表面にフッ素樹脂等がコーティングされ、支持部材93の前端部を加圧ローラー94の表面近傍に配置することで、定着ニップ部から排出される用紙Pを下から支えることができる。
【0024】
また、定着装置9は、排出された用紙Pの搬送路上に、用紙Pの搬送を安定させるためのガイド95を備える。ガイド95は、用紙搬送方向に延在する上部材と下部材とからなり、用紙Pが上部材と下部材との間に案内される。ガイド95は、定着ニップ部に対して用紙搬送方向の下流側において、空気噴射部100、及び、排紙センサー112よりも下流側に設けられている。そして、排紙センサー112の検知範囲内に入る位置に、ガイド95の定着ニップ部側の前端が配置されている。これにより、排紙センサー112によって、定着ニップ部から排出された用紙Pがガイド95まで到達したことを確認できる。
【0025】
定着ローラー91は、中央に内蔵したハロゲンヒーター等の加熱部を備える。そして、例えば定着ローラー91は、加熱部の周囲にアルミニウムや鉄等によって円筒状に形成された芯金と、芯金の外周面を被覆するシリコーンゴムやフッ素ゴム等から形成された耐熱性の弾性層を備える。さらに、弾性層を被覆するPFA(パーフルオロアルコキシ)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成された離型層を備える。
【0026】
加圧ローラー94は、例えばステンレス等によって円筒状に形成された芯金と、芯金の外周面を被覆するシリコーンゴム等の発泡体からなる弾性層を備える。さらに、弾性層の外周面を被覆するPFAチューブ等から形成された離型層を備える。なお、定着部材としては、上記定着ローラー91や加圧ローラー94に替えて、用紙にトナーを定着させることが可能なベルト等を用いた他の構成を適用することもできる。
【0027】
上記構成により、ハロゲンヒーター等の加熱部によって加熱され、不図示のモーター等によって回転駆動された定着ローラー91が図中時計方向に回転すると、加圧ローラー94が反時計方向に回転する。従って、トナー画像が形成された用紙Pは、定着ローラー91と加圧ローラー94とにより形成された定着ニップ部において挟持及び搬送されるとともに、加熱及び加圧されることにより、用紙P上のカラー画像が定着される。
【0028】
空気噴射部100は、不図示のモーター等の回転駆動部に接続され、図中の時計方向の一方向に回転可能に設けられている。空気噴射部100は、上記一方向に回転することにより、空気の噴射方向を、定着ローラー91と加圧ローラー94との定着ニップ部の方向から、ガイド95の方向に移動させることができる。このため、空気噴射部100は、定着ニップ部から排出される用紙Pの前端部に空気を噴射することにより、定着ローラー91から用紙Pを剥離させることができる。さらに、空気噴射部100は、用紙Pが定着ニップ部からガイド95まで搬送される間、用紙Pの搬送に追従して回転することで空気の噴射方向を移動させて、用紙Pの前端部への空気の噴射を継続することができる。
【0029】
従って、定着装置9は、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで、空気噴射部100から用紙Pの前端部に、空気を噴射し続けることができる。このように、定着装置9では、空気噴射部100から用紙Pの前端部に噴射する空気によって、定着ローラー91に損傷を与えずに、用紙Pを定着ローラー91から剥離することができる。さらに、ガイド95まで用紙Pの前端部への空気の噴射を継続することで、用紙Pの定着ローラー91側への湾曲を防ぎ、定着ニップ部から排出された用紙Pの前端部が、再び定着ローラー91に接触することを防ぐことができる。
【0030】
[空気噴射部の構成]
次に、定着装置9に配置される空気噴射部100の構成について説明する。
図3に、空気噴射部100の全体図 と、空気噴射部100に接続される空気供給部104の構成を示す。
図4に、空気噴射部100に設けられる第1の筒状部材102Aの構成を示す。
図5に、空気噴射部100の回転軸に垂直な面の断面図を示す。
【0031】
図3及び
図5に示すように、空気噴射部100は、第1の筒状部材102Aと、第1の筒状部材102Aの外周側に沿って配置された第2の筒状部材102Bとを有する。そして、
図3に示すように、空気噴射部100の外部に、空気噴射部100から噴射される空気を供給するコンプレッサー等からなる空気供給部104を備える。空気供給部104は、空気噴射部100の第1の筒状部材102Aと通風可能に接続され、空気供給部104から第1の筒状部材102A内に空気が供給される。
【0032】
図5に示すように、空気噴射部100を構成する第1の筒状部材102A、及び、第2の筒状部材102Bは、軸方向に垂直な断面形状が円環である。そして、空気噴射部100には、噴射口101A,101B,101Cが第2の筒状部材102Bの周方向に所定の間隔で複数形成されている。噴射口101A,101B,101Cの各々は、第2の筒状部材102Bの軸方向に沿う一つの長孔、又は、軸方向に沿って連続する複数の孔によって形成されている。なお、
図3に示す空気噴射部100は、空気噴射口101A,101B,101Cが1つの長孔によって形成されている例である。また、空気噴射部100において、噴射口101A,101B,101Cを区別しない場合には、噴射口101と記す。
【0033】
また、
図4及び
図5に示すように、空気噴射部100を構成する第1の筒状部材102Aは、定着ローラー91から用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲に対応して形成された開口部105を有する。即ち、第1の筒状部材102Aの開口部105は、上述の
図2に示す、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95の端部までの範囲に、空気噴射部100から空気を噴射できるように形成されている。また、噴射口101A,101B,101C、開口部105の幅方向(軸方向)の長さは定着ローラー91及び加圧ローラー94の軸方向の長さより長いことが好ましい。
【0034】
空気噴射部100において、噴射口101A,101B,101Cを有する第2の筒状部材102Bは、不図示のモーター等の回転駆動部に接続され、図面矢印の方向(定着ローラー91の回転方向と同じ方向)の一方向に回転可能に設けられている。一方、空気噴射部100において、開口部105を有する第1の筒状部材102Aは、第2の筒状部材102Bの回転に依らず、回転しないように固定されている。
【0035】
空気噴射部100では、第2の筒状部材102Bが回転し、噴射口101A,101B,101Cの位置が、第1の筒状部材102Aの開口部105の形成位置と重なる期間のみ、噴射口101A,101B,101Cから、空気が噴射される。また、第2の筒状部材102Bが回転することにより、噴射口101A,101B,101Cの位置が回転方向に移動する。このため、噴射口101A,101B,101Cから噴射される空気の方向は、回転中に第1の筒状部材102Aの開口部105の形成位置と重なる範囲内において、第2の筒状部材102Bの回転方向に移動する。
【0036】
つまり、開口部105が、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで形成されている。このため、第2の筒状部材102Bが回転することにより、噴射口101A,101B,101Cからの空気の噴射方向が、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで連続して変化する。そして、定着ニップ部から用紙Pが排出されるタイミング、及び、用紙Pの搬送速度に合わせて、第2の筒状部材102Bの回転を調整する。それにより、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで、用紙Pの前端部分に、噴射口101A,101B,101Cから空気を噴射することができる。
【0037】
なお、空気噴射部100において、第1の筒状部材102Aと第2の筒状部材102Bとは、構成が逆であってもよい。例えば、空気噴射部100において、内側に配置された第1の筒状部材に噴射口101A,101B,101Cが形成され、外側に配置された第2の筒状部材に開口部105が形成され、内側の第1の筒状部材が回転し、外側の第2の筒状部材が固定された構成であってもよい。このように、筒状部材の一方に開口部が形成され、他方に噴射口が形成され、噴射口が形成された筒状部材が用紙搬送方向の一方向に回転可能に設けられていれよい。噴射口が形成された筒状部材を回転させることにより、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで、用紙Pの前端に空気を吹き付けることができる。
【0038】
[制御部の構成]
図6に、定着装置9における、空気噴射部100の動作を制御するための制御部の機能ブロック図を示す。
制御部110は、主な構成要素として、CPU(Central Processing Unit)、通信インターフェース(I/F)部、ROM(Read Only Memory)、RAM(random access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等を内部に備える。通信I/F部は、LANカード、LANボードといったLAN(Local Area Network)に接続するためのインターフェースであり、外部からのプリントジョブのデータを受信する。ROMには、上記各部の制御に必要なプログラムなどが格納され、RAMは、CPUによるプログラム実行時のワークエリアとなる。EEPROMは、不揮発性メモリであり、通信I/F部で受信したプリントジョブのデータであるページ記述言語(以下、「PDL」という)データを一時的に保存する。CPUは、ROMから必要なプログラムを読み出し、空気噴射部100の制御を実行する。
【0039】
オペレーターの操作によって画像形成が開始され、用紙Pの給紙が開始されると、定着ローラー91の上流側に配置された給紙センサー111は、用紙Pの前端部の通過を検知した信号を制御部110に出力する。
制御部110は、給紙センサー111の出力信号によって用紙Pの到達を検知すると、タイマー113を起動する。タイマー113は、用紙Pの前端部が給紙センサー111を通過してからの経過時間を計測し、経過時間を制御部110に出力する。
【0040】
制御部110は、タイマー113の経過時間とプロセス速度(搬送速度)を基に、給紙センサー111から定着ニップ部出口までの距離や用紙Pの搬送速度によって予め決められた用紙Pが定着ニップ部から排出される時間に合わせて、空気噴射部100を回転駆動するためのモーター等からなる回転駆動部114を制御する。
【0041】
具体的には、制御部110は、給紙センサー111による検知結果に基づいて、回転駆動部114の制御を行い、空気噴射部100の噴射口101A,101B,101Cが形成された第2の筒状部材102Bの回転速度を調整する。そして、用紙Pが定着ニップ部から排出されるタイミングにおいて、噴射口101A,101B,101Cのいずれかからの空気の噴射方向が、定着ローラー91から用紙Pを剥離させる位置、即ち、定着ニップ部の出口を含む範囲となるように、空気噴射部100の筒状部材102の回転を調整する。これにより、定着ニップ部から排出された用紙Pの前端部に、噴射口101A,101B,101Cのいずれかから空気が吹き付けられる。
【0042】
また、制御部110は回転駆動部114の制御を行うことで、空気噴射部100の噴射口101A,101B,101C(
図5参照)から噴射される空気を、少なくとも定着ローラー91から用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲で、用紙Pの前端部に吹き付けられるように、空気噴射部100の回転速度を調整する。このとき、制御部110は、用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲では、空気供給部104を制御して空気の供給量を多くし、それ以外の範囲では空気の供給量を少なくする制御を行ってもよい。これにより、コンプレッサー等からなる空気供給部104の電力消費を抑えることができる。
さらに、制御部110は、給紙センサー111による検知結果に基づいて、空気噴射部100の噴射口101A,101B,101Cが形成された筒状部材102Bの回転のON/OFFを制御してもよい。
【0043】
また、制御部110は、用紙Pの搬送に合わせて、空気供給部104を駆動する。空気供給部104は、エアタンク103等の空気貯溜部において加圧された空気を、空気噴射部100の筒状部材102に供給する。そして、筒状部材102に供給された空気が、開口部105(
図5参照)を介して噴射口101から噴射される。
【0044】
定着ローラー91の下流側に配置された排紙センサー112は、用紙Pの前端部の通過を検知した信号を制御部110に出力する。制御部110は、排紙センサー112の出力信号により、用紙Pの前端部がガイド95(
図5参照)に到達したことを検知する。また、制御部110は、用紙Pがガイド95に到達するまで、回転駆動部114を制御し、用紙Pの前端部への空気の噴射が継続されるように、空気噴射部100の筒状部材102の回転を調整する。
【0045】
[空気噴射部の制御]
次に、定着装置9における空気噴射部100の動作の制御について、
図7に示すフローチャートを参照して説明する。また、
図7に示すフローチャートに合わせて、
図8から
図10 に示す定着装置9の構成を参照して空気噴射部100の動作を説明する。
【0046】
図8から
図10に示す定着装置9は、定着ローラー91と加圧ローラー94とによって形成される定着ニップ部に、用紙Pが搬送される様子を示している。
図8から
図10に示す定着装置9は、定着ニップ部の上流に給紙センサー111が配置され、定着ニップ部の下流側に空気噴射部100と排紙センサー112とガイド95が配置されている。また、
図8から
図10では、空気噴射部100として、第2の筒状部材102Bと、第2の筒状部材102Bの周方向に所定の間隔で形成された噴射口101A,101B,101Cとを示している。
【0047】
図7に示すように、制御部110(
図6参照)は、画像形成装置の操作パネルから入力された用紙Pの情報や、給紙カセット20で検知された用紙Pの情報を元に、用紙Pのサイズを取得する(ステップS1)。画像形成装置は、用紙Pを給紙カセット20から転写部7Aを経由して定着装置9に搬送する(ステップS2)。
【0048】
次に、ステップS2によって用紙Pが定着装置9まで搬送されると、制御部110は、定着ニップ部の上流側に配置された給紙センサー111において、用紙Pの前端部の位置情報を取得する(ステップS3)。そして、制御部110は、給紙センサー111で得られた用紙Pの前端部の位置情報を元に、回転駆動部114の駆動を制御して、空気噴射部100の筒状部材102の回転速度を調節する(ステップS4)。ステップS4では、空気噴射部100の噴射口101が、定着ニップ部から用紙Pの前端部が排出されるときに、用紙Pの前端部に空気を噴射できる位置となるように、筒状部材102の回転速度を調整する。
【0049】
次に、
図8に示すように、定着ニップ部から用紙Pの前端部が排出される(ステップS5)。そして、定着ニップ部から用紙Pの前端部が排出されるタイミングで、空気噴射部100の噴射口101Aから用紙Pの前端部に空気を噴射する(ステップS6)。上述のステップS4において筒状部材102の回転速度を調整することで、ステップS5の用紙Pの前端部が定着ニップ部から排出されるタイミングにおいて、ステップS6の噴射口101Aから用紙Pの前端部への空気の噴射が可能となる。
【0050】
制御部110は、ステップS5における定着ニップ部から用紙Pの前端部が排出されるタイミングにおいて、空気噴射部100に形成されたいずれか一つの噴射口(
図8では噴射口101A)が、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口に向けて空気を噴射できるように、空気噴射部100(
図8では第2の筒状部材102B)の回転を制御する。これにより、定着ローラー91から用紙Pの前端部を剥離することができる。
【0051】
次に、制御部110は、設定された用紙Pの搬送速度や、定着ニップ部の下流側に配置された排紙センサー112で取得した用紙Pの前端部の位置情報を元に、用紙Pの搬送速度に合わせて空気噴射部100の筒状部材102を回転させ、搬送路上を移動する用紙Pの前端部に向けて噴射口101から空気を噴射する(ステップS7)。ステップS7では、制御部110が用紙Pの搬送速度に合わせて回転駆動部114の駆動を制御することにより、
図9に示すように、噴射口101からの空気の噴射方向を、定着ニップ部から排出された用紙Pの前端部に追従して移動させる。このとき、制御部110が、移動する用紙Pの前端部と、噴射口101Aからの空気の噴射方向を一致させるために、用紙Pの搬送速度と空気噴射部100の筒状部材102の回転速度が合うように、回転駆動部114の駆動を制御する。
【0052】
次に、制御部110は、排紙センサー112で取得した用紙Pの前端部の位置情報を元に、用紙Pの前端部がガイド95への到達したことを確認する(ステップ8)。また、制御部110は、次の用紙Pの前端部が、定着ニップ部から排出されるタイミングを算出し、そのタイミングに合わせ、空気噴射部100の筒状部材102の回転速度を調整する(ステップS9)。
【0053】
図10に示すように、噴射口101Aから用紙Pへ空気が噴射されなくても、用紙Pがガイド95まで到達すると用紙の排出角度が安定し、用紙Pがカールする等によって定着ローラー91に再び接触しない。一方、ガイド95に到達した用紙Pに続いて、次の用紙Pが定着ニップ部から排出される。このため、制御部110は、次の用紙Pが定着ニップ部から排出されるタイミングに合わせて、噴射口101Bが定着ニップ部の出口に向けて空気を噴射できる位置となるように、回転駆動部114の駆動を制御し、第2の筒状部材102Bの回転を調整する。
【0054】
上述した第1実施形態では、以上のように定着装置9を動作させることにより、定着装置9において、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで、空気噴射部100から用紙Pの前端部に、空気を噴射し続けることができる。
【0055】
また、空気噴射部100は、筒状部材102を一方向に回転させることによって、噴射口101からの空気の噴射方向を、用紙Pの搬送に追従させることができる。さらに、用紙Pの搬送に追従させた位置から一方向に筒状部材102を回転させることによって、用紙Pが定着ニップ部から排出されるタイミングで、噴射口101からの空気の噴射方向を、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口に合わせることができる。このため、空気噴射部100は、往復回動運動や噴射方向の切り替え等の複雑な動作を行わずに、筒状部材102を一方向に回転させることによって、噴射口101の位置や噴射口101からの空気の噴射方向を制御することができる。さらに、空気噴射部100は、一方向への回転動作の制御という簡便な方法によって空気の噴射方向を制御することができる。このため、容易に筒状部材102の回転速度を可変して噴射口101の位置と移動速度を調整することができるため、画像形成装置の高速化に対応することが可能となる。従って、上述の構成の空気噴射部100によれば、画像形成装置における用紙の処理の高速化への対応が容易となる。
【0056】
また、空気噴射部100は、回転方向に複数の噴射口101A,101B,101Cを有していることにより、筒状部材102が1回転する間に、定着ニップ部の出口に対して噴射口101が複数回の空気噴射を行うことができる。このため、定着ニップ部の出口に対する噴射口101からの空気噴射の時間間隔を小さくすることができ、より高速化への対応が可能となる。
【0057】
また、空気噴射部100の筒状部材102が一方向に回転することにより、噴射口101からの空気の噴射方向が、定着ニップ部からガイド95の方向に移動する。このように、空気の噴射方向が移動するため、定着ローラー91に空気を噴射し続けることがなく、空気噴射による定着ローラー91の温度低下を抑制することができる。なお、早めに噴射口101が定着ニップ部に空気を吹き付ける位置まで空気噴射部100を回転させて、この位置で空気噴射部100の回転を停止した後、定着ニップ部から排出される用紙に合わせて空気噴射部100の回転を再開してもよい。
【0058】
〈2.画像形成装置、及び、定着装置の第2実施形態〉
[定着装置、及び、空気噴射部の構成]
次に、画像形成装置、及び、定着装置の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の画像形成装置、及び、定着装置は、空気噴射部の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成を適用することができる。このため、以下では、重複する説明を省略して画像形成装置に搭載される定着装置、及び、空気噴射部の構成について説明する。
【0059】
図11に、第2実施形態における定着装置9の構成を示す。また、
図12に、定着装置9における空気噴射部100の構成を示す。なお、
図11に示す定着装置9は、空気噴射部100の構成と、空気噴射部100の周囲に形成された遮蔽板106の構成を除き、上述の
図2に示す定着装置9と同様の構成である。このため、以下の説明では、空気噴射部100の及び遮蔽板106に係わる構成について説明し、重複する説明を省略する。
【0060】
図11に示すように、定着装置9は、噴射口101から噴射された空気を遮蔽するため、空気噴射部100の周囲に遮蔽板106を有する。遮蔽板106は、少なくとも、定着ローラー91から用紙Pを剥離させる位置の空気噴射部100の回転方向の下流側から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置の空気噴射部100の回転方向の上流側までの回転範囲を除く範囲に形成されている。
【0061】
また、遮蔽板106は、少なくとも定着ニップ部の出口からガイド95までの範囲に対応して形成された、開口部107を有している。このため、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95までの範囲に、空気噴射部100から空気を噴射することができる。
【0062】
また、
図12に示すように、空気噴射部100は、噴射口101が1つだけ設けられた筒状部材102を有する。筒状部材102は、不図示のモーター等の回転駆動部に接続され、図面矢印の方向(定着ローラー91の回転方向と同じ方向)の一方向に回転可能に設けられている。
【0063】
空気噴射部100は、筒状部材102が回転し、噴射口101から空気が常に噴射可能に形成されている。また、筒状部材102が回転することにより、噴射口101の位置が回転方向に移動するため、噴射口101からの空気の噴射方向が回転方向に移動する。このため、噴射口101からの空気の噴射方向が遮蔽板106の開口部107と重なる期間は、噴射口101から遮蔽板106の外部に空気が噴射される。また、遮蔽板106の開口部107内では、噴射口101からの空気の噴射方向が用紙Pの搬送方向に移動する。
【0064】
上述の第2実施形態の定着装置9では、遮蔽板106の開口部107が、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで形成されている。このため、空気噴射部100の筒状部材102が回転することにより、噴射口101からの空気の噴射方向が、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで連続して移動する。このため、定着ニップ部から用紙Pが排出されるタイミング、及び、用紙Pの搬送速度に合わせて、筒状部材102の回転を調整することにより、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで、用紙Pの前端部分に噴射口101から空気を噴射することができる。
【0065】
また、遮蔽板106により、用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までの回転範囲を除く範囲では、空気噴射部100から噴射される空気が、遮蔽板106によって遮蔽される。このため、用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までを除く範囲への空気噴射を抑制することができる。それにより、定着ローラー91への空気の吹き付けが行われず、定着ローラーの温度低下を抑えられる。
なお、遮蔽板106は、用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までを除く範囲を完全に遮蔽していなくてもよく、画像形成装置において必要な範囲で設けられていればよい。このため、遮蔽板106には、空気が通過する孔部やスリット等の隙間が設けられていてもよい。これにより、遮蔽板106内の圧力の上昇を抑えられる。
【0066】
画像形成装置において、制御部110(
図6参照)は、空気噴射部100からの空気の噴射方向が用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲では、空気供給部104を制御して空気の供給量を多くし、それ以外の範囲では空気の供給量を少なくする制御を行ってもよい。これにより、コンプレッサー等からなる空気供給部104の電力消費を抑えることができる。
また、制御部110は、給紙センサー111による検知結果に基づいて空気供給部104を制御し、噴射口101からの空気の噴射のON/OFFを制御してもよい。さらに、空気噴射部100の噴射口101が形成された筒状部材102の回転速度、及び、回転のON/OFFを制御してもよい。
【0067】
なお、定着装置9は、遮蔽板106を備えずに、空気噴射部100の回転方向の全方向に、噴射口から空気が噴射される構成であってもよい。また、上記の空気供給量を調整する制御や、空気の噴射のON/OFFを制御する場合には、用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲だけ、空気の供給量を多くする又は空気の噴射をONし、それ以外の範囲の空気の供給量を少なくする又は空気噴射をOFFにする制御を行うことで、遮蔽板106を用いなくても、遮蔽板106を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0068】
[空気噴射部の動作]
図13に、第2実施形態の定着装置9において、定着ローラー91と加圧ローラー94とによって形成される定着ニップ部に、用紙Pが搬送される様子を示す。
図13から
図15に示す定着装置9は、定着ニップ部の上流に給紙センサー111が配置され、定着ニップ部の下流側に空気噴射部100と排紙センサー112とガイド95と遮蔽板106が配置されている。また、
図13から
図15では、空気噴射部100として、筒状部材102と、筒状部材102に形成された噴射口101を示している。
【0069】
定着装置9では、給紙センサー111からの情報を基に、用紙Pの前端部の位置情報を取得する。そして、用紙Pの前端部の位置に合わせて、筒状部材102の回転速度を調整することで、
図13に示すように、定着ニップ部から用紙Pの前端部が排出されるタイミングで、空気噴射部100の噴射口101から用紙Pの前端部に空気を噴射することが可能となる。
【0070】
このとき、定着装置9の制御部110(
図6参照)は、定着ニップ部から用紙Pの前端部が排出されるタイミングにおいて、空気噴射部100に形成された噴射口101が、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口に向けて空気を噴射できるように、空気噴射部100の筒状部材102の回転を調整する。これにより、空気噴射部100かからの空気の噴射によって、定着ローラー91から用紙Pの前端部を剥離することができる。
【0071】
次に、
図14に示すように、用紙Pの搬送速度に合わせて筒状部材102の回転速度を調整することにより、噴射口101からの空気の噴射方向を、定着ニップ部から排出された用紙Pの前端部に追従して移動させる。制御部110は、移動する用紙Pの前端部と、噴射口101からの空気の噴射方向が一致するように、用紙Pの搬送速度と空気噴射部100の筒状部材102の回転速度が合うように、回転駆動部114の駆動を制御する。
【0072】
次に、
図15に示すように、用紙Pがガイド95まで到達すると、遮蔽板106により、噴射口101から用紙Pへの空気の噴射が遮断される。一方、ガイド95に到達した用紙Pに続いて、次の用紙Pが定着ニップ部から排出されるため、次の用紙Pが定着ニップ部から排出されるタイミングと、定着ニップ部の出口に空気を噴射するタイミングとが合うように、筒状部材102の回転を調整する。
【0073】
以上のように定着装置9を動作させることにより、定着装置9において、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95まで、空気噴射部100から用紙Pの前端部に、空気を噴射し続けることができる。
【0074】
〈3.画像形成装置、及び、定着装置の第3実施形態〉
[空気噴射部の構成]
次に、画像形成装置、及び、定着装置の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態の画像形成装置、及び、定着装置は、空気噴射部の構成を除き、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成を適用することができる。このため、以下では、重複する説明を省略して空気噴射部の構成について説明する。
【0075】
空気噴射部を構成する筒状部材は、上述の
図3~5や
図12に示す円筒状に限られない。筒状部材は、軸方向に沿う一つの長孔、又は、軸方向に沿って連続する複数の孔によって1又は2以上の噴射口が形成され、一方向に回転可能であれば、どのような形状であってもよい。
【0076】
図16に、第3実施形態における円筒状の第1の筒状部材102Aと、第1の筒状部材102Aの外周側に沿って配置された多角形(四角形)状の断面を有する第2の筒状部材102C(角筒)とからなる空気噴射部を示す。
【0077】
第1の筒状部材102Aは、上述の
図4に示す構成と同様である。即ち、第1の筒状部材102Aは、定着ローラー91から用紙Pを剥離させる位置から、用紙Pの排出角度を安定させるのに必要な位置までの範囲に対応して形成された開口部105を有する。第1の筒状部材102Aの開口部105は、上述の
図2に示す、用紙Pを定着ローラー91から剥離する位置である定着ニップ部の出口から、用紙の排出角度を安定させるのに必要な位置であるガイド95までの範囲に、空気噴射部から空気を噴射し続けることができるように形成されている。
【0078】
第2の筒状部材102Cは、周方向に所定の間隔で複数形成された噴射口101A,101B,101C,101Dを有する。第2の筒状部材102Cにおいて、噴射口101A,101B,101C,101Dは、第2の筒状部材102Cの軸方向に沿う一つの長孔、又は、軸方向に沿って連続する複数の孔によって形成されている。また、噴射口101A,101B,101C,101Dは、断面における四角形の辺部分の中央に配置されている。第2の筒状部材102Cは、噴射口101A,101B,101C,101Dが配置されている四角形の辺部分の中央の内側において、第1の筒状部材102Aの外面と接する。
【0079】
空気噴射部は、第2の筒状部材102Cが回転し、噴射口101A,101B,101C,101Dの位置が、第1の筒状部材102Aの開口部105の形成位置と重なる期間のみ、噴射口101A,101B,101C,101Dから、空気が噴射される。また、第2の筒状部材102Cが回転することにより、噴射口101A,101B,101C,101Dの位置が回転方向に移動するため、噴射口101A,101B,101C,101Dから噴射される空気の方向は、第1の筒状部材102Aの開口部105の形成位置と重なる範囲内において、回転方向に移動する。
上述の第3実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。第3実施形態のように、空気噴射部に角筒を用いた構成であっても、円筒と角筒との辺の中央部が接触、又は、近接して回転することにより、噴射時の空気ロスが最小限に抑えられる。
【0080】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1C,1K,1M,1Y 感光体ドラム、2C,2K,2M,2Y 帯電部、3C,3K,3M,3Y 露光部、4C,4K,4M,4Y 現像、6 中間転写ベルト、7C,7K,7M,7Y 転写部、8A,8C,8K,8M,8Y クリーニング部、9 定着装置、10C,10K,10M,10Y 画像形成部、20給紙カセット、21 給紙部、22A 給紙ローラー、23 レジストローラ、24 排紙ローラー、25 排紙トレイ、41,91 定着ローラー、93 支持部材、94 加圧ローラー、95 ガイド、100 空気噴射部、101,101A,101B,101C 噴射口、102 筒状部材、102A 第1の筒状部材、102B,102C 第2の筒状部材、103 エアタンク、104 空気供給部、105,107 開口部、106 遮蔽板、110 制御部、111 給紙センサー、112 排紙センサー、113 タイマー、114 回転駆動部、201 自動原稿送り装置、202 原稿画像走査露光装置