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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20220921BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B60C11/12 D
B60C11/03 100A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018193640
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020059460
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】大澤 栄希
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-020714(JP,A)
【文献】特開2017-144763(JP,A)
【文献】特開2016-203663(JP,A)
【文献】特開2015-024797(JP,A)
【文献】特開平05-345505(JP,A)
【文献】特開2016-159861(JP,A)
【文献】特開2013-147121(JP,A)
【文献】特開2018-114846(JP,A)
【文献】特表2016-534931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0184755(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第04302364(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02621905(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ赤道を挟んでタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝及び第2主溝に区分された3つの陸部で構成され、
前記3つの陸部は、前記第1主溝と前記第2主溝との間の中間陸部を含み、
前記中間陸部には、前記中間陸部を完全に横切る複数の中間サイプが設けられ、
前記中間サイプは、
タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した中央部と、
前記第1主溝側で前記中央部とは逆向きに傾斜する第1外側部と、
前記第2主溝側で前記中央部とは逆向きに傾斜する第2外側部とを有し、
タイヤ周方向で隣り合う2つの前記中間サイプの1ピッチ長さは、前記中間陸部のタイヤ軸方向の幅の0.50~1.00倍である、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1外側部のタイヤ軸方向の長さ、及び、前記第2外側部のタイヤ軸方向の長さは、それぞれ、前記中央部のタイヤ軸方向の長さよりも小さい、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記中央部のタイヤ軸方向の長さは、前記中間陸部のタイヤ軸方向の幅の0.50倍以上である、請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記中央部のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、10~30°である、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向で隣り合う2つの前記中間サイプの1ピッチ長さは、前記第1主溝の溝幅よりも大きい、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記中間サイプは、滑らかな曲線状に延びている、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、詳しくは、トレッド部に主溝が設けられたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に一対のセンター主溝が設けられた空気入りタイヤが提案されている。特許文献1では、センター主溝によってウェット性能の向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-024797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤは、操縦安定性及びノイズ性能の向上について、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、操縦安定性及びノイズ性能を向上させ得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ赤道を挟んでタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝及び第2主溝に区分された3つの陸部で構成され、前記3つの陸部は、前記第1主溝と前記第2主溝との間の中間陸部を含み、前記中間陸部には、前記中間陸部を完全に横切る複数の中間サイプが設けられ、前記中間サイプは、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した中央部と、前記第1主溝側で前記中央部とは逆向きに傾斜する第1外側部と、前記第2主溝側で前記中央部とは逆向きに傾斜する第2外側部とを有する。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第1外側部のタイヤ軸方向の長さ、及び、前記第2外側部のタイヤ軸方向の長さは、それぞれ、前記中央部のタイヤ軸方向の長さよりも小さいのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記中央部のタイヤ軸方向の長さは、前記中間陸部のタイヤ軸方向の幅の0.50倍以上であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記中央部のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、10~30°であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、タイヤ周方向で隣り合う2つの前記中間サイプの1ピッチ長さは、前記中間陸部のタイヤ軸方向の幅の0.50~1.00倍であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、タイヤ周方向で隣り合う2つの前記中間サイプの1ピッチ長さは、前記第1主溝の溝幅よりも大きいのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記中間サイプは、滑らかな曲線状に延びているのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤ赤道を挟んでタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝及び第2主溝に区分された3つの陸部で構成されている。前記3つの陸部は、第1主溝と第2主溝との間の中間陸部を含んでいる。中間陸部には、中間陸部を完全に横切る複数の中間サイプが設けられている。中間サイプは、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した中央部と、第1主溝側で中央部とは逆向きに傾斜する第1外側部と、第2主溝側で中央部とは逆向きに傾斜する第2外側部とを有する。
【0014】
このような中間サイプは、そのエッジの全体が同時に接地するのを防ぐことができ、ひいてはエッジが接地するときの打音を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明の中間サイプは、中間陸部に接地圧が作用して中間サイプが閉じたとき、接触したサイプ壁同士が噛み合い、中間サイプを境界とした中間陸部のせん断変形を抑制する。したがって、優れた操縦安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の中間陸部の拡大図である。
図3図2のC-C線断面図である。
図4図1の内側陸部の拡大図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6図1の外側陸部の拡大図である。
図7図6のB-B線断面図である。
図8図6のD-D線断面図である。
図9】本発明の他の実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図10】比較例のタイヤの中間陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして構成される。本実施形態のタイヤ1は、とりわけ、軽自動車用のタイヤとして用いられるのが望ましい。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両への装着の向きが指定されている。車両への装着の向きは、例えば、タイヤ1のサイドウォール部(図示省略)に文字や図形などで表示される。タイヤ1が車両に装着された場合、図1の右側が車両内側に対応し、図1の左側が車両外側に対応している。
【0019】
車両への装着の向きが指定されることにより、トレッド部2には、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiと、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toとが定められている。
【0020】
内側トレッド端Ti及び外側トレッド端Toは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY" である。
【0024】
トレッド部2は、タイヤ赤道Cを挟んでタイヤ周方向に連続して延びる第1主溝3及び第2主溝4を有している。
【0025】
第1主溝3及び第2主溝4は、路面上の水をタイヤ後方に排出するために、比較的大きな幅と深さでタイヤ周方向に連続して延びている。好ましい態様では、各主溝は、5mm以上、より好ましくは6mm以上の溝幅及び深さを有する。また、各主溝の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの8.0%~13.0%であり、望ましくは9.0%~11.0%である。トレッド幅TWは、前記正規状態における内側トレッド端Tiから外側トレッド端Toまでのタイヤ軸方向の距離である。各主溝は、例えば、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに延びている。他の態様では、各主溝は、ジグザグや波状等の非直線状であっても良い。
【0026】
第1主溝3は、例えば、タイヤ赤道Cと外側トレッド端Toとの間に配されている。第2主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cと内側トレッド端Tiとの間に配されている。タイヤ赤道Cから第1主溝3又は第2主溝4の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの0.10~0.20倍であるのが望ましい。望ましい態様では、タイヤ赤道Cから第1主溝3の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離と、タイヤ赤道Cから第2主溝4の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離との差が、トレッド幅TWの3%未満である。
【0027】
トレッド部2は、第1主溝3及び第2主溝4に区分された3つの陸部で構成されている。具体的には、トレッド部2は、外側陸部6と、中間陸部7と、内側陸部8とで構成されている。外側陸部6は、外側トレッド端Toと第1主溝3との間に区分されている。中間陸部7は、第1主溝3と第2主溝4との間に区分されている。内側陸部8は、内側トレッド端Tiと第2主溝4との間に区分されている。本実施形態のトレッド部2は、タイヤ赤道Cについて非対称のパターンを有している。
【0028】
図2には、中間陸部7の拡大図が示されている。図2に示されるように、中間陸部7のタイヤ軸方向の幅W2は、例えば、トレッド幅TW(図1に示され、以下、同様である。)の0.15~0.25倍であるのが望ましい。
【0029】
中間陸部7は、タイヤ赤道C上に位置している。本実施形態では、本実施形態では、中間陸部7のタイヤ軸方向の中心位置が、タイヤ赤道C付近に配されている。より具体的には、タイヤ赤道Cと中間陸部7のタイヤ軸方向の中心位置とのタイヤ軸方向の距離が、中間陸部7のタイヤ軸方向の幅W2の10%未満である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0030】
中間陸部7には、中間陸部7を完全に横切る中間サイプ10が設けられている。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm未満の切れ込みを意味する。望ましい態様では、サイプの幅は、1.0mm以下である。
【0031】
中間サイプ10は、中央部12、第1外側部13及び第2外側部14とを有している。中央部12は、タイヤ軸方向に対して第1方向(本実施形態では、右下がり)に傾斜している。第1外側部13は、第1主溝3側で中央部12とは逆向きに傾斜している。第2外側部14は、第2主溝4側で中央部12とは逆向きに傾斜している。
【0032】
このような中間サイプ10は、そのエッジの全体が同時に接地するのを防ぐことができ、ひいてはエッジが接地するときの打音を小さくすることができる。
【0033】
また、本発明の中間サイプ10は、中間陸部7に接地圧が作用して中間サイプ10が閉じたとき、接触したサイプ壁同士が噛み合い、中間サイプ10を境界とした中間陸部7のせん断変形を抑制する。したがって、優れた操縦安定性が得られる。
【0034】
中間サイプ10は、例えば、滑らかな曲線状に延び、波の1サイクルを形成している。但し、このような態様に限定されるものではなく、中間サイプ10は、例えば、一部が直線状に延びるものでも良い。
【0035】
本実施形態の中央部12は、タイヤ赤道Cを横切っている。また、中央部12は、中間陸部7のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。中央部12は、例えば、直線状に延びる部分12aを含み、この直線状の部分12aがタイヤ赤道Cを横切っている。中央部12は、第1外側部13又は第2外側部14側に向かってタイヤ軸方向に対する角度が漸減する部分を含む。
【0036】
中央部12のタイヤ軸方向の長さL2は、例えば、中間陸部7のタイヤ軸方向の幅W2の0.50倍以上であるのが望ましい。具体的には、中央部12の前記長さL2は、例えば、中間陸部7の前記幅W2の0.50~0.70倍である。このような中央部12は、中間陸部7の偏摩耗を抑制しつつ、上述の効果を発揮することができる。
【0037】
中央部12のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ1は、例えば、45°未満であるのが望ましい。具体的には、中央部12の前記角度θ1は、10~30°であるのが望ましい。このような中央部12は、ノイズ性能と操縦安定性とをバランス良く高めることができる。
【0038】
本実施形態の第1外側部13は、中央部12から第1主溝3まで延びている。同様に、第2外側部14は、中央部12から第2主溝4まで延びている。
【0039】
第1外側部13のタイヤ軸方向の長さL3、及び、第2外側部14のタイヤ軸方向の長さL4は、それぞれ、中央部12のタイヤ軸方向の長さL2よりも小さいのが望ましい。本実施形態では、第1外側部13の前記長さL3及び第2外側部14の前記長さL4は、中間陸部7のタイヤ軸方向の幅W2の0.10~0.30倍である。このような第1外側部13及び第2外側部14は、中間サイプ10の両端付近の偏摩耗を抑制することができる。
【0040】
第1外側部13及び第2外側部14のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ2は、例えば、45°未満であるのが望ましい。具体的には、第1外側部13及び第2外側部14の前記角度θ2は、例えば、10~30°である。望ましい態様では、第1外側部13及び第2外側部14の前記角度θ2は、中央部12のタイヤ軸方向に対する角度θ1と同一、又は、これよりも小さい。これにより、中間サイプ10の両端付近の偏摩耗がさらに抑制される。
【0041】
本実施形態では、第1外側部13及び第2外側部14は、それぞれ、中央部12からタイヤ軸方向外側に向かってタイヤ軸方向に対する角度が漸増しているのが望ましい。これにより、中間サイプ10の端部が接地するときの打音がさらに小さくなり、ノイズ性能がさらに向上する。
【0042】
タイヤ周方向で隣り合う2つの中間サイプ10のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1は、例えば、中間陸部7のタイヤ軸方向の幅W2と同一、又は、前記幅W2よりも小さい。具体的には、中間サイプ10の1ピッチ長さP1は、中間陸部7の前記幅W2の0.50~1.00倍である。また、中間サイプ10の1ピッチ長さP1は、例えば、第1主溝3の溝幅よりも大きいのが望ましい。このような中間サイプ10の配置は、中間陸部7の過度な剛性低下を抑制するのに役立つ。
【0043】
図3には、図2の中間サイプ10のC-C線断面図が示されている。図3に示されるように、中間サイプ10は、例えば、本体部10aと、本体部10aよりも小さい深さの浅底部10bとを含んでいる。本実施形態の浅底部10bは、例えば、中間サイプ10の第1外側部13及び第2外側部14(図2に示す)のそれぞれに形成されている。
【0044】
ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるために、中間サイプ10の浅底部10bの深さd6は、例えば、中間サイプ10の本体部10aの深さd5の0.30~0.60倍であるのが望ましい。
【0045】
図2に示されるように、本実施形態の中間陸部7には、上述の中間サイプ10のみが配され、これ以外の溝やサイプが配されていない。このような中間陸部7は、高い剛性を有し、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
【0046】
図4には、内側陸部8の拡大図が示されている。図4に示されるように、内側陸部8のタイヤ軸方向の幅W3は、例えば、トレッド幅TWの0.25~0.35倍であるのが望ましい。
【0047】
本実施形態の内側陸部8には、例えば、複数の内側横溝20及び複数の内側サイプ21が設けられている。
【0048】
内側横溝20は、例えば、内側トレッド端Tiから延びかつ内側陸部8内で途切れている。内側陸部8には、直進時に高い接地圧が作用する傾向があるため、内側横溝20は、直進時に高い排水性を発揮できる。また、内側横溝20は、内側陸部8の内側トレッド端Ti付近の剛性を適度に緩和するため、内側トレッド端Tiが接地するときの打音を小さくすることができる。しかも、内側横溝20は、内側陸部8内で途切れているため、内側陸部8の第2主溝4側の剛性を高く維持する。これにより、旋回時、タイヤの接地面の中心が外側陸部6側に移動するときにおいて、内側陸部8の急激な変形が抑制される。したがって、旋回時の操舵の手応えがリニアになり、優れた操縦安定性が得られる。
【0049】
内側横溝20の溝幅W4は、例えば、主溝の溝幅W1(図1に示す)の0.25~0.35倍であるのが望ましい。
【0050】
内側横溝20のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、内側陸部8のタイヤ軸方向の幅W3の0.30~0.70倍であり、より望ましくは0.60~0.70倍である。内側横溝20は、例えば、内側陸部8のタイヤ軸方向の中心位置を横切っているのがより望ましい。
【0051】
内側横溝20は、例えば、タイヤ軸方向に対して0~10°の角度θ3で配されている。望ましい態様では、内側横溝20は、タイヤ軸方向に対する角度がタイヤ軸方向内側に向かって漸増している。
【0052】
タイヤ周方向で隣り合う2つの内側横溝20のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、例えば、例えば、内側陸部8のタイヤ軸方向の幅W3よりも大きいのが望ましい。具体的には、内側横溝20の前記1ピッチ長さP2は、内側陸部8の前記幅W3の1.05~1.15倍であるのが望ましい。より望ましい態様では、内側横溝20のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、中間サイプ10の1ピッチ長さP1(図2に示され、以下、同様である。)よりも大きい。このような内側横溝20の配置は、操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めることができる。
【0053】
内側サイプ21は、例えば、内側トレッド端Tiから第2主溝4まで延びている。本実施形態では、例えば、内側サイプ21と内側横溝20がタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0054】
内側サイプ21は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側横溝20と同じ向きに傾斜している。内側サイプ21は、例えば、中間サイプ10の中央部とは逆向きに傾斜しているのがより望ましい。内側サイプ21のタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、5~15°である。本実施形態の内側サイプ21は、タイヤ軸方向に対する角度がタイヤ軸方向内側に向かって漸増している。また、内側サイプ21のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、内側横溝20のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい。このような内側サイプ21は、ウェット走行時、タイヤ軸方向の摩擦力を提供することができる。
【0055】
タイヤ周方向で隣り合う2つの内側サイプ21のタイヤ周方向の1ピッチ長さP3は、例えば、内側陸部8のタイヤ軸方向の幅W3よりも大きいのが望ましい。具体的には、内側サイプ21の前記1ピッチ長さP3は、内側陸部8の前記幅W3の1.05~1.15倍であるのが望ましい。さらに望ましい態様では、内側サイプ21の前記1ピッチ長さP3は、中間サイプ10の1ピッチ長さP1よりも大きいのが望ましい。また、本実施形態では、内側横溝20と内側サイプ21とが同じ1ピッチ長さで配されている。
【0056】
図5には、図4の内側サイプ21のA-A線断面図が示されている。図5に示されるように、内側サイプ21は、例えば、本体部21aと、本体部21aよりも小さい深さの浅底部21bとを含んでいる。このような内側サイプ21は、内側陸部8の剛性を維持し、操縦安定性をさらに高めることができる。
【0057】
浅底部21bは、例えば、内側横溝20(図4に示す)の途切れ端よりもタイヤ赤道C側に設けられているのが望ましい。また、浅底部21bは、内側横溝20をタイヤ周方向に平行に仮想延長した領域と重複しないのが望ましい。本実施形態の浅底部21bは、例えば、内側サイプ21のタイヤ赤道C側の端部に設けられている。
【0058】
内側サイプ21の浅底部21bのタイヤ軸方向の長さL9は、例えば、中間サイプ10の浅底部10bのタイヤ軸方向の長さL11よりも大きいのが望ましい。具体的には、内側サイプ21の浅底部21bの前記長さL9は、中間サイプ10の浅底部10bの前記長さL11の1.50~2.50倍である。このような浅底部21bは、内側陸部8の第2主溝4側の剛性を高く維持し、操縦安定性をさらに高めることができる。なお、各浅底部の長さは、例えば、本体部側の深さが変化する部分を除いた領域で測定される。
【0059】
ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるために、浅底部21bの深さd2は、例えば、本体部21aの深さd1の0.30~0.60倍であるのが望ましい。
【0060】
図4に示されるように、内側陸部8には、内側トレッド端Tiから第2主溝4まで延びる横溝が設けられていないのが望ましい。このような内側陸部8は、高い剛性を有し、優れた操縦安定性を発揮し得る。
【0061】
図6には、外側陸部6の拡大図が示されている。図6に示されるように、外側陸部6のタイヤ軸方向の幅W5は、例えば、トレッド幅TWの0.25~0.35倍であるのが望ましい。
【0062】
本実施形態の外側陸部6には、例えば、複数の縦細溝24、第1外側サイプ26及び第2外側サイプ27が設けられている。
【0063】
縦細溝24は、例えば、タイヤ周方向に連続して延びている。縦細溝24は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状に延びている。但し、このような態様に限定されるものではなく、縦細溝24は、ジグザグ状に延びるものでも良い。
【0064】
縦細溝24は、例えば、第1主溝3及び第2主溝4のそれぞれよりも小さい溝幅及び深さを有している。本実施形態の縦細溝17は、好ましくは6mm未満、より好ましくは5mm未満の溝幅及び深さを有する。このような縦細溝24は、ウェット性能を高めるとともに、外側陸部6が接地するときの打撃音を小さくすることができる。
【0065】
さらに望ましい態様では、縦細溝24の溝幅W6は、1.5~2.5mmである。同様に、縦細溝24の深さも、1.5~2.5mmであるのが望ましい。
【0066】
縦細溝24は、例えば、外側陸部6のタイヤ軸方向の中心位置よりも外側トレッド端To側に配されているのが望ましい。外側陸部6のタイヤ赤道C側の端縁から縦細溝24の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L6は、例えば、外側陸部6のタイヤ軸方向の幅W5の0.55~0.70倍であるのが望ましい。このような縦細溝24は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0067】
第1外側サイプ26は、例えば、第1主溝3から外側トレッド端Toまで延びている。このため、第1外側サイプ26は、縦細溝24を横切っている。
【0068】
第1外側サイプ26は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態の第1外側サイプ26は、例えば、内側サイプ21と同じ向きに傾斜している。本実施形態の第1外側サイプ26は、例えば、タイヤ軸方向に対する角度が外側トレッド端Toからタイヤ軸方向内側に向かって漸増している。このような第1外側サイプ26は、エッジが接地するときの打音を小さくし、ノイズ性能を高めることができる。
【0069】
第1外側サイプ26のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、例えば、内側サイプ21のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きいのが望ましい。第1外側サイプ26のタイヤ軸方向に対する角度θ5は、例えば、15~25°である。これにより、第1外側サイプ26のエッジが接地するときの打音と、内側サイプ21のエッジが接地するときの打音とがホワイトノイズ化し易くなり、ひいてはノイズ性能が高められる。
【0070】
タイヤ周方向で隣り合う2つの第1外側サイプ26のタイヤ周方向の1ピッチ長さP4は、例えば、外側陸部6のタイヤ軸方向の幅W5よりも大きいのが望ましい。具体的には、第1外側サイプ26の前記1ピッチ長さP4は、外側陸部6の前記幅W5の1.05~1.15倍であるのが望ましい。より望ましい態様では、第1外側サイプ26の前記1ピッチ長さP4は、中間サイプ10の1ピッチ長さP1よりも大きい。
【0071】
図7には、図6の第1外側サイプ26のB-B線断面図が示されている。図7に示されるように、第1外側サイプ26は、例えば、本体部26aと、本体部26aよりも小さい深さの浅底部26bとを含んでいる。このような第1外側サイプ26は、外側陸部6の剛性を維持し、操縦安定性をさらに高めることができる。
【0072】
第1外側サイプ26の浅底部26bは、例えば、外側陸部6のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ赤道C側に設けられている。本実施形態の浅底部26bは、例えば、第1外側サイプ26のタイヤ赤道C側の端部に設けられている。
【0073】
第1外側サイプ26の浅底部26bのタイヤ軸方向の長さL10は、例えば、内側サイプ21の浅底部21bのタイヤ軸方向の長さL9(図5に示す)よりも大きいのが望ましい。具体的には、第1外側サイプ26の浅底部26bの前記長さL10は、内側サイプ21の浅底部21bの前記長さL9の1.30~2.00倍である。このような第1外側サイプ26は、外側陸部6と内側陸部8に適度な剛性差を生じさせる。これにより、旋回時、タイヤの接地面の中心が外側陸部側に移動するときにおいて、操舵の手応えがリニアになり、優れた操縦安定性が得られる。
【0074】
ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるために、外側サイプ25の浅底部25bの深さd4は、例えば、外側サイプ25の本体部25aの深さd3の0.30~0.60倍であるのが望ましい。
【0075】
図6に示されるように、第2外側サイプ27は、例えば、第1主溝3から延び、外側陸部6内で途切れている。第2外側サイプ27は、縦細溝24に達することなく途切れているのが望ましい。本実施形態の第2外側サイプ27は、外側陸部6のタイヤ軸方向の中心位置のタイヤ軸方向内側で途切れている。
【0076】
第2外側サイプ27のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、外側陸部6のタイヤ軸方向の幅W5の0.25~0.40倍である。このような第2外側サイプ27は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0077】
第2外側サイプ27は、例えば、第1外側サイプ26と同じ向きに傾斜して直線状に延びている。第2外側サイプ27のタイヤ軸方向に対する角度θ6は、例えば、15~25°である。
【0078】
タイヤ周方向で隣り合う2つの第2外側サイプ27のタイヤ周方向の1ピッチ長さP5は、例えば、外側陸部6のタイヤ軸方向の幅W5よりも大きいのが望ましい。具体的には、第2外側サイプ27の前記1ピッチ長さP5は、外側陸部6の前記幅W5の1.05~1.15倍であるのが望ましい。より望ましい態様では、第2外側サイプ27の前記1ピッチ長さP4は、中間サイプ10の1ピッチ長さP1よりも大きい。
【0079】
図8には、図6の第2外側サイプ27のD-D線断面図が示されている。図8に示されるように、第2外側サイプ27は、例えば、本体部27aと、本体部27aよりも小さい深さの浅底部27bとを含んでいる。本実施形態の浅底部27bは、第2外側サイプ27のタイヤ赤道C側の端部に設けられている。このような第2外側サイプ27は、外側陸部6の剛性を維持し、操縦安定性をさらに高めることができる。
【0080】
第2外側サイプ27の浅底部27bのタイヤ軸方向の長さL12は、例えば、第1外側サイプ26の浅底部26bのタイヤ軸方向の長さL10(図7に示す)よりも小さいのが望ましい。また、第2外側サイプ27の浅底部27bの前記長さL12は、内側サイプ21の浅底部21bのタイヤ軸方向の前記長さL9(図5に示す)よりも小さいのが望ましい。具体的には、第2外側サイプ27の浅底部27bの前記長さL12は、内側サイプ21の浅底部21bの長さL9の0.40~0.60倍である。これにより、操縦安定性とノイズ性能とがバランス良く高められる。
【0081】
ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるために、第2外側サイプ27の浅底部27bの深さd8は、例えば、第2外側サイプ27の本体部27aの深さd7の0.30~0.60倍であるのが望ましい。
【0082】
図6に示されるように、外側陸部6には、外側トレッド端Toから第1主溝3まで延びる横溝が設けられていないのが望ましい。このような外側陸部6は、優れた操縦安定性を発揮することができる。
【0083】
外側陸部6のランド比は、内側陸部8のランド比よりも大きいのが望ましい。このような外側陸部6は、操縦安定性をさらに高めることができる。なお、本明細書において、「ランド比」とは、各溝及びサイプを全て埋めた仮想接地面の全面積Saに対する、実際の合計接地面積Sbの比Sb/Saである。
【0084】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、軽自動車等の小排気量の乗用車用として好適に使用される。このため、トレッド幅TWは、例えば、90~120mmであるのが望ましい。
【0085】
図9には、本発明の他の実施形態のトレッド部2の展開図が示されている。図9において、上述した実施形態と共通する構成には、同一の符号が付されている。図9に示される実施形態の中間陸部7及び内側陸部8は、図1に示される実施形態と実質的に同一の構成を具えており、上述した構成を適用することができる。
【0086】
図9に示される実施形態において、外側陸部6には、複数の外側横溝23及び外側サイプ25が設けられている。
【0087】
外側横溝23は、例えば、第1主溝3から延び外側陸部6内で途切れている。外側横溝23は、第1主溝3とともに優れた排水性を発揮する。また、外側横溝23は、外側陸部6の第1主溝3付近の剛性を適度に緩和するため、外側陸部6の第1主溝3側の端縁が接地するときの打音を小さくするのに役立つ。しかも、外側横溝23は、外側陸部6内で途切れることにより、外側陸部6の外側トレッド端To付近の剛性を維持できる。このため、旋回時の外側陸部6の過度な変形が抑制され、ひいては操縦安定性が維持される。
【0088】
外側サイプ25は、例えば、第1主溝3から外側トレッド端Toまで延びている。外側サイプ25は、例えば、中間サイプ10の中央部12とは逆向きに傾斜しているのが望ましい。
【0089】
以上、本発明の実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0090】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ155/65R14の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図10に示されるように、中間陸部aに、タイヤ軸方向に沿って直線状に延びる中間サイプbが設けられたタイヤが試作された。比較例のトレッドパターンは、上記の点を除き、図1のものと実質的に同じである。各テストタイヤの操縦安定性及びノイズ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
リム:14×4.5J
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:排気量660cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0091】
<操縦安定性>
上記テスト車両で周回路を走行したときのレーンチェンジ及び旋回時の操縦安定性が、運転者の官能により評価された。なお、この評価は、テスト車両を40~80km/hの低・中速域、及び、100~120km/hの高速域を含む速度域で走行させて実施された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
【0092】
<ノイズ性能>
上記テスト車両で凹凸を含むドライ路面を40~100km/hで走行し、このときの車内のノイズ(100~160Hz)の最大の音圧が測定された。結果は、比較例の前記音圧を100とする指数であり、数値が小さい程、車内騒音が小さく、ノイズ性能に優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0093】
【表1】
【0094】
テストの結果、実施例のタイヤは、操縦安定性及びノイズ性能が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0095】
2 トレッド部
3 第1主溝
4 第2主溝
7 中間陸部
10 中間サイプ
12 中央部
13 第1外側部
14 第2外側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10