(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】情報処理装置、データ移行システム、データ移行方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20220921BHJP
H04N 1/32 20060101ALI20220921BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20220921BHJP
G06F 12/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H04N1/00 838
H04N1/32 037
B41J29/38 501
G06F12/00 570A
G06F12/00 550A
(21)【出願番号】P 2019030443
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】谷 和也
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-004339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/32
B41J 29/38
G06F 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の情報処理装置が保持するデータをインポートする情報処理装置であって、
ユーザに関する情報が登録されるユーザ登録項目に識別情報が付された第1のデータ、又は、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限が設定された第2のデータをすでに記憶している場合は初期化する初期化手段と、
前記第1のデータを取得し、前記第1のデータよりも後に、前記第2のデータを外部の記憶装置から取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記第1のデータを記憶する第1データ記憶手段と、
前記取得手段が取得した前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報に前記第2のデータのアクセス権限が設定されている場合、前記第1データ記憶手段に記憶した前記第1のデータを用いて前記第2のデータにアクセス権限を設定し、第2データ記憶手段に蓄積させるデータ蓄積手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記データ蓄積手段は、前記取得手段が取得した前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報が、
前記第1データ記憶手段に記憶されている前記第1のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報に存在する場合、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限が設定された前記第2のデータを前記第2データ記憶手段に蓄積させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目に対し所定のアクセス権限が省略されており、
前記データ蓄積手段は、前記ユーザ登録項目にアクセス権限が対応付けられていない場合、前記所定のアクセス権限を復元してから、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限が設定された前記第2のデータを前記第2データ記憶手段に蓄積させることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記所定のアクセス権限は、予め定められたデフォルトのアクセス権限であり、
前記第2のデータを閲覧可能、編集不可、及び削除不可、というアクセス権限であることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記取得手段が取得した前記第1のデータは、前記第2のデータが前記第2データ記憶手段に記憶されるよりも先に前記第1データ記憶手段に記憶されており、
前記データ蓄積手段は、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限を一時的に記憶するバッファを用意し、
前記第1のデータのリストを前記第1データ記憶手段から取得し、
前記取得手段が取得した前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報を1つずつ取得し、前記ユーザ登録項目の識別情報が前記第1のデータの前記ユーザ登録項目の識別情報として存在する場合は、前記バッファに前記ユーザ登録項目の識別情報とアクセス権限を書き込み、
存在しない場合は、前記バッファに前記ユーザ登録項目の識別情報とアクセス権限を書き込まず、
前記第2のデータが有する全ての前記ユーザ登録項目の識別情報について終了した場合、前記バッファに書き込まれた1つ以上の前記ユーザ登録項目の識別情報とアクセス権限を前記第2データ記憶手段に蓄積することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1のデータは一人のユーザを1つの前記ユーザ登録項目として、前記情報処理装置を使用する各ユーザに関する情報を有するデータであり、
前記第2のデータは印刷の対象となるデータであり、前記情報処理装置を使用する各ユーザの前記第2のデータに対するアクセス権限が設定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
保持するデータをエクスポートする第2の情報処理装置と、前記第2の情報処理装置が保持するデータをインポートする第1の情報処理装置とを有するデータ移行システムであって、
前記第2の情報処理装置は、
ユーザに関する情報が登録されるユーザ登録項目に識別情報が付された第1のデータ、及び、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限が設定された第2のデータを外部の記憶装置に出力する出力手段、を有し、
前記第1の情報処理装置は、
前記第1のデータ、又は、前記第2のデータをすでに記憶している場合は初期化する初期化手段と、
前記第1のデータを取得し、前記第1のデータよりも後に、前記第2のデータを前記外部の記憶装置から取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記第1のデータを記憶する第1データ記憶手段と、
前記取得手段が取得した前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報に前記第2のデータのアクセス権限が設定されている場合、前記第1データ記憶手段に記憶した前記第1のデータを用いて前記第2のデータにアクセス権限を設定し、第2データ記憶手段に蓄積させるデータ蓄積手段と、
を有することを特徴とするデータ移行システム。
【請求項8】
第2の情報処理装置が保持するデータをインポートする情報処理装置が行うデータ移行方法であって、
初期化手段が、ユーザに関する情報が登録されるユーザ登録項目に識別情報が付された第1のデータ、又は、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限が設定された第2のデータをすでに記憶している場合は初期化するステップと、
取得手段が、前記第1のデータを取得し、前記第1のデータよりも後に、前記第2のデータを外部の記憶装置から取得するステップと、
前記取得手段が取得した前記第1のデータを第1データ記憶手段に記憶させるステップと、
データ蓄積手段が、前記取得手段が取得した前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報に前記第2のデータのアクセス権限が設定されている場合、前記第1データ記憶手段に記憶した前記第1のデータを用いて前記第2のデータにアクセス権限を設定し、前記第2のデータを第2データ記憶手段に蓄積させるステップと、
を有することを特徴とするデータ移行方法。
【請求項9】
第2の情報処理装置が保持するデータをインポートする情報処理装置を、
ユーザに関する情報が登録されるユーザ登録項目に識別情報が付された第1のデータ、又は、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限が設定された第2のデータをすでに記憶している場合は初期化する初期化手段と、
前記第1のデータを取得し、前記第1のデータよりも後に、前記第2のデータを外部の記憶装置から取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記第1のデータを記憶する第1データ記憶手段と、
前記取得手段が取得した前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報に前記第2のデータのアクセス権限が設定されている場合、前記第1データ記憶手段に記憶した前記第1のデータを用いて前記第2のデータにアクセス権限を設定し、第2データ記憶手段に蓄積させるデータ蓄積手段、として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、データ移行システム、データ移行方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置などの情報処理装置を使用する権限があるかどうかを認証するために画像処理装置の使用時にユーザの認証が行われる場合がある。また、画像処理装置が原稿をスキャンして得た画像データを任意の宛先に対して電子メール等で送信する機能が利用される場合がある。これらの場合、ユーザの認証パスワードや配信先アドレスなどの宛先データは画像処理装置(又はネットワーク上)のアドレス帳にアドレス帳データとして記憶されている。
【0003】
例えば古くなった画像処理装置が新しい画像処理装置に更新される場合があるが、アドレス帳データを古い(移行元の)画像処理装置から新しい(移行先の)画像処理装置に移行する機能を双方の画像処理装置が有している。これにより、新しい画像処理装置でアドレス帳データの各ユーザを再度、CE(カスタマーエンジニア)等が登録するなどの煩わしい作業が不要になる。
【0004】
しかし、移行元の画像処理装置と移行先の画像処理装置とで機能が異なるなどの理由でアドレス帳の移行に管理者の作業が必要になる場合があり、従来からアドレス帳の移行に伴う作業負担を低減する技術が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、インポート用宛先データから取得した宛先表IDと一致するグループ宛先表IDを検索し、当該グループ宛先表IDに紐付いているグループ宛先表をインポート先のグループ宛先表として特定する画像処理装置について開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、アクセス権情報が付加されたデータの移行が困難であるという問題がある。
【0006】
文書データが移行される場合を例にして補足する。上記のように、画像処理装置が更新される場合、画像処理装置に蓄積されている文書データも移行したいという要請がある。例えば、ユーザが画像処理装置に文書データを蓄積しておき、画像処理装置を操作して文書データを印刷する印刷形態(プルプリント印刷などという)がある。この文書データを外部の記憶装置(PC(Personal Computer)又はクラウド等)を介して別の画像処理装置に移行すれば文書データの再利用が可能となる。
【0007】
一方、蓄積されている文書データの印刷、編集又は削除等は、これらの権限を有するユーザにのみ許可されるべきであるため、従来から文書データに対するアクセス制御が行われている。例えば、文書データの蓄積時に文書データごとにアクセス権情報が付加される。アクセス権情報にはアドレス帳データの各ユーザごとに印刷、編集又は削除等の可否(アクセス権限)が設定されている。文書データへのアクセス時には画像処理装置にログインしたユーザのアクセス権限に基づいてアクセス制御が行われる。
【0008】
しかしながら、アドレス帳データと文書データを別々に移行すると、アドレス帳データと文書データの関連が失われ、移行元の画像処理装置におけるアクセス制御を移行先の画像処理装置で再現できない場合があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、アクセス権情報が付加されたデータの移行が可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は 第2の情報処理装置が保持するデータをインポートする情報処理装置であって、ユーザに関する情報が登録されるユーザ登録項目に識別情報が付された第1のデータ、又は、前記ユーザ登録項目ごとにアクセス権限が設定された第2のデータをすでに記憶している場合は初期化する初期化手段と、前記第1のデータを取得し、前記第1のデータよりも後に、前記第2のデータを外部の記憶装置から取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記第1のデータを記憶する第1データ記憶手段と、前記取得手段が取得した前記第2のデータが有する前記ユーザ登録項目の識別情報に前記第2のデータのアクセス権限が設定されている場合、前記第1データ記憶手段に記憶した前記第1のデータを用いて前記第2のデータにアクセス権限を設定し、第2データ記憶手段に蓄積させるデータ蓄積手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
アクセス権情報が付加されたデータの移行が可能な情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】文書の蓄積時に設定されるアクセス権情報について説明する図である。
【
図2A】アドレス帳データとアクセス権情報を有する文書データの移行時に生じる不都合を説明する図である(その1)。
【
図2B】アドレス帳データとアクセス権情報を有する文書データの移行時に生じる不都合を説明する図である(その2)。
【
図3】データ移行システムの概略構成図の一例である。
【
図4】画像処理装置のハードウェア構成図の一例である。
【
図5】PC又はクラウドのハードウェア構成図の一例である。
【
図6】移行元の画像処理装置と移行先の画像処理装置が有する機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
【
図7】アドレス帳データが有する情報を模式的に示す図の一例である。
【
図8】文書データが有する情報、及び、アクセス権情報を模式的に示す図の一例である。
【
図9】文書データが蓄積される処理と文書データの利用時の処理について説明するフローチャート図の一例である。
【
図10】アクセス権情報のエントリーIDとアドレス帳データのエントリーIDの対応の一例を示す図である。
【
図11】移行データ選択画面、及び、機能選択画面の一例を示す図である。
【
図12】エクスポート実行中画面、及び、エクスポート完了画面の一例を示す図である。
【
図13】移行元の画像処理装置がPCにアドレス帳データをエクスポートし、移行先の画像処理装置がPCからアドレス帳データをインポートする手順を示すシーケンス図の一例である。
【
図14】移行元の画像処理装置がPCに文書データをエクスポートし、移行先の画像処理装置がPCから文書データをインポートする手順を示すシーケンス図の一例である。
【
図15】移行元の画像処理装置が文書データをエクスポートする手順を示すフローチャート図の一例である。
【
図17】移行先の画像処理装置が文書データをインポートする手順を示すフローチャート図の一例である。
【
図18】アクセス権情報の蓄積処理の詳細を説明するフローチャート図の一例である。
【
図19】移行元の画像処理装置と移行先の画像処理装置が有する機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【
図20】移行用アクセス権情報の生成について説明する図の一例である。
【
図21】移行元の画像処理装置が文書データをエクスポートする手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
【
図22】移行先の画像処理装置が文書データをインポートする手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
【
図23】移行元の画像処理装置から移行先の画像処理装置への直接の移行を模式的に示す図の一例である。
【
図24】PCが移行元の画像処理装置にアドレス帳データのエクスポートを要求し、PCが移行先の画像処理装置にアドレス帳データのインポートを要求する手順を示すシーケンス図の一例である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、データ移行システムとデータ移行システムによるデータ移行方法について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
<本実施例が解決する背景>
まず、
図1を用いてアドレス帳データの移行に関する背景について補足する。
図1は、文書の蓄積時に設定されるアクセス権情報11cについて説明する図である。まず、画像処理装置10は予めアドレス帳データ12を保持している。アドレス帳データ12には、ユーザを識別するエントリーIDに対応付けて、各ユーザの認証パスワード、文書の配信先アドレスなどが保存されている。
【0015】
文書データ11は画像データ11aと書誌情報11bを有している。ユーザが文書データ11を蓄積する際、更に、この文書データ11にアクセス権情報11c(ACL:Access Control List)が付加される。
【0016】
アクセス権情報11cは文書データ11ごとに生成されるので、文書データ11に各ユーザがどのようなアクセス権(閲覧、編集、削除等)を有するかが設定される。例えば、文書データを画像処理装置10に登録したユーザ(このようなユーザをオーナーという)は閲覧、編集、削除の権限が認められ、その他のユーザには閲覧のみが認められるなどの規則で設定される。そして、アクセス権情報11cには、ユーザごとにアドレス帳データ12のエントリーIDが設定される。
【0017】
このように、文書データ11が蓄積されるタイミングでアクセス権情報11cとアドレス帳データ12が関連付けられ、ユーザによる文書データ11へのアクセス制御はアクセス権情報11cに基づいて行われる。
【0018】
図2A,
図2Bは、アドレス帳データ12とアクセス権情報11cを有する文書データ11の移行時に生じる不都合を説明する図である。以下では、移行元の画像処理装置の符号を10Aとし、移行先の画像処理装置10の符号を10Bとし、任意の画像処理装置の符号を10とする。
【0019】
図2Aに示すように、移行元の画像処理装置10Aから移行先の画像処理装置10Bにアドレス帳データ12が移行されても、エントリーIDは同じままエントリーIDに対応付けられたユーザの認証パスワード及び文書の配信先アドレスなどが移行される。
【0020】
したがって、従来、文書データ11の移行ではアクセス権情報11cは移行されていなかった。これは、文書データ11の移行では新たな文書データ11の蓄積処理が行われ、エントリーIDも新たに設定されるためである。このため、従来はCEが、移行元の文書データ11のアクセス権情報11cを、文書ごとに移行先の画像処理装置10Bの文書データ11に手動で付加する作業を行っていた。
【0021】
そこで、仮に、文書データ11の移行時にアクセス権情報11cも移行した場合を考える。まず、文書データ11の移行時には、文書データ11が移行先の画像処理装置10Bに改めて蓄積される処理が発生するので、画像処理装置10が有するアドレス帳データ12のエントリーIDがアクセス権情報11cのエントリーIDとして設定される。
【0022】
アドレス帳データ12のエントリーIDは登録順に付与される連番であり、また、削除により欠番を有する可能性があるなど、変更されるおそれがある。つまり、2つの画像処理装置10があるとして、同じユーザに同じエントリーIDが付与されるとは限らない。ただし、アドレス帳データ12の移行によりエントリーIDは変わらない(変わらないように移行する)。
【0023】
例えば、移行先の画像処理装置10Bに移行元のアドレス帳データ12が移行されていない場合にはそもそもアドレス帳データ12がない場合があり、文書データ11にエントリーIDを設定できない。また、移行先の画像処理装置10Bに何か別のアドレス帳データ12が残っている場合(例えばテスト的に登録されたアドレス帳データ12)、このアドレス帳データ12のエントリーIDが文書データ11に設定されるが、このエントリーIDと同じエントリーIDが移行元のアドレス帳データ12に存在しても同じでも同じユーザを示すとは限らない。
【0024】
図2Bに示すように、移行先の画像処理装置10Bに何か別のアドレス帳データ12が残っており、このアドレス帳データ12によればユーザAのエントリーIDが011、ユーザBのエントリーIDが012であるとする。このアドレス帳データ12に基づいてアクセス権情報11cのエントリーIDが設定されると、
ユーザAのエントリーIDが001から011、
ユーザBのエントリーIDが002から012
に変更されてしまう。
【0025】
このように、アドレス帳データと文書データの関連が失われ、移行元の画像処理装置10Aにおけるアクセス制御を移行先の画像処理装置10Bで再現できない場合があった。
【0026】
仮にこの後、移行元の画像処理装置10Aからアドレス帳データ12が移行されるとすると、アドレス帳データ12のユーザAのエントリーIDが001、ユーザBのエントリーIDが002になる。このため、例えば、ログインしたユーザのエントリーIDが001である場合に、アクセス権情報11cのエントリーIDが001のアクセス権(閲覧、編集、削除等)は、ログインしたユーザのアクセス権を表していない状況が生じうる。したがって、この場合もアドレス帳データと文書データの関連が失われ、移行元の画像処理装置におけるアクセス制御を移行先の画像処理装置で再現できない場合があった。
【0027】
<本実施形態のアドレス帳データと文書データの移行の概略>
そこで、本実施形態では、以下のようにしてアドレス帳データ12と文書データ11を移行する。
A.CEがアドレス帳データ12と文書データ11を移行する場合(より正確にはインポートする場合)、アドレス帳データ12を先に移行し、その次に文書データ11を移行する。その際、データ移行先のアドレス帳データや文書データが存在する場合、移行先の画像処理装置10Bは、データ移行先のアドレス帳データ記憶部や文書データ記憶部に蓄積されているデータの削除又はフォーマット(初期化する)を行う。
B.移行先の画像処理装置10Bは文書データ11のインポート時に、アクセス権情報11cのエントリーIDがアドレス帳データ12のエントリーIDに存在するか否かを判断し、存在する場合、アクセス権情報11cにおいてエントリーIDに対応付けられているアクセス権限をインポートする。すなわち、文書データ11にアクセス権情報11cが設定されている場合は、既に移行したアドレス帳データ12を使ってアクセス権情報11cを設定する。
【0028】
このように、アドレス帳データ12を先に移行することで、移行元のアドレス帳データ12のエントリーIDを文書データ11に設定できる。また、アクセス権情報11cのエントリーIDがアドレス帳データ12に存在するかどうかを判断することで、移行元の画像処理装置10Aにおけるアドレス帳と文書データ11の関連を保ったまま、移行先の画像処理装置10Bに移行できる。したがって、アドレス帳データ12と文書データ11のアクセス権を移行して移行元の画像処理装置10Aにおけるアクセス制御を移行先の画像処理装置10Bで再現できる。
【0029】
<用語について>
ユーザ登録項目はユーザに関する情報が登録される項目をいう。ユーザに関する情報は例えばアクセス権情報やアドレス帳データなどである。本実施形態ではエントリーという用語で説明される。エントリーとは登録されていること、登録された項目などをいう。エントリーIDはユーザ登録項目の識別情報(エントリーの識別情報)である。
【0030】
外部の記憶装置は、情報処理装置からみて内部でない記憶装置をいう。記憶する機能を有していればよく、名称は問わない。本実施形態ではPC(Personal Computer)又はクラウドを例として説明する。記憶装置をストレージという場合がある。
【0031】
エントリーの識別情報の関連を保ったままとは、移行元の画像処理装置10Aにおける一方のエントリーと他方のエントリーが示すユーザを、移行先の画像処理装置10Bにおける一方のエントリーから辿って同じユーザを特定できることをいう。移行前と移行後でエントリーIDが一致しなくてもよい。
【0032】
特許請求の範囲の情報処理装置は、アクセス権付きデータを扱う装置であればよい。本実施形態では画像処理装置10という用語で説明される。
【0033】
<システム構成例>
続いて、
図3を用いてシステム構成例について説明する。
図3は、データ移行システム100の概略構成図の一例である。図示するデータ移行システム100は、移行元の画像処理装置10A、移行先の画像処理装置10B、PC40、及び、クラウド50を有する。ただし、
図3は、移行の流れを説明するために模式的に構成されており、移行元の画像処理装置10Aと移行先の画像処理装置10BがPC40やクラウド50を介して接続されていると限らない。画像処理装置10の一般的な更新の作業では、CEが顧客に赴き、移行元の画像処理装置10Aを操作してアドレス帳データ12と文書データ11をPC40又はクラウド50にエクスポートしておき、次いで、移行元の画像処理装置10Aを搬出すると共に、移行先の画像処理装置10Bを搬入する。そして、移行先の画像処理装置10Bを操作してPC40又はクラウド50からアドレス帳データ12と文書データ11をインポートする。したがって、移行元の画像処理装置10Aと移行先の画像処理装置10Bが同時に存在しない場合がある。
【0034】
なお、エクスポートとは外部にデータを出力することをいい、インポートとはデータを取り込むことをいう。移行はこのエクスポートとインポートの2つのフェーズを含む。エクスポートとインポートにデータの入出力以外の作業が含まれてもよい。すなわち、エクスポート及びインポートは単なるデータ通信を意味するではなく、移行元の画像処理装置10Aと同様に扱えるように移行先の画像処理装置10Bへ適した形に変換する処理も含まれている。
【0035】
図3に示すように、画像処理装置10が更新されるためアドレス帳データ12が移行される場合には設定値13も移行される。設定値13とは画像処理装置10に関する種々の設定項目の値である。例えば、省エネ設定(自動でスリープするまでの時間など)、ユーザ認証をする/しない、機能(インストールされたアプリで実現される)が無い場合にこの機能に関するボタンを表示するか否か、印刷・スキャン・コピーなどの設定における初期値、監視用のサーバなどのIPアドレス、など多種多様な設定値13がある。設定値13に関してはアドレス帳データ12や文書データ11と関連付く必要がない。本実施形態ではアドレス帳データ12と共に移行されるものとして説明されるが、独立に移行されてよい。
【0036】
本実施形態では少なくとも移行元の画像処理装置10AはPC40又はクラウド50とネットワークを介して通信可能であり、移行先の画像処理装置10BはPC40又はクラウド50とネットワークを介して通信可能である。
【0037】
ネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)又はインターネットなど、一般的なネットワークであればよい。PC40との通信時はLANでよく、クラウド50との通信時はインターネットが含まれる場合が多いと考えられる。アドレス帳データ12のセキュリティ上、クラウド50を使用する場合、例えば、広域イーサネット(登録商標)、VPN(Virtual Private Network)などの専用線を含んでもよい。なお、ネットワークの一部又は全部がWi-Fi(Wireless Fidelity)、3G、4G、LTE(Long Term Evolution)、5G、及び、Bluetooth(登録商標)などの無線により通信してもよい。
【0038】
画像処理装置10は、アクセス権情報11cを有するデータとアドレス帳データ12を扱う装置であればよい。画像処理装置は、画像を用紙などのシート材に印刷する装置である。画像処理装置は画像形成装置、プリンタ又は印刷装置と呼ばれる場合がある。また、画像処理装置は複合機でもよい。複合機とはスキャナ機能、プリント機能、コピー機能、及び、FAX送受信機能など複数の機能を有する装置をいう。MFP(Multi-Function Printer/Product/Peripheral)、SPC(Scan Print Copy)、又は、AIO(All In One)と呼ばれる場合がある。
【0039】
PC40はいわゆる情報処理装置であり、汎用的なOS(Operating System)上で各種のアプリケーションが動作する。PC40はオンプレミスの記憶装置(ストレージ)の代表に過ぎず、オンプレミスのその他の記憶装置で代用できる。例えば社内ネットワーク上のNAS(Network Attached Storage)、大容量のHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)を備えた画像処理装置(移行と関係のない画像処理装置)、又は、その他の装置でもよい。
【0040】
クラウド50とは、特定ハードウェア資源とは意識されないネットワーク上のリソースをいう。実際はインターネットを介して接続されているデータセンタの情報処理装置、又はNASなどである。また、インターネット上の情報処理装置をサーバという場合がある。
【0041】
PC40やクラウド50の他、記憶装置としてはUSBメモリ、SDメモリーカード(登録商標)、CD・DVD・Blu-Rayなどの光記憶媒体、又は、着脱式のHDD若しくはSDDでもよい。すなわち、移行元の画像処理装置10Aが記憶する文書データ11やアドレス帳データ12を記憶できる容量を備えた記憶装置であればよい。
【0042】
図3の例では、以下の経路I又は経路IIでアドレス帳データ12と文書データ11が移行される。
経路I … 移行元の画像処理装置10A→(エクスポート)→PC40→(インポート)→移行先の画像処理装置10B
経路II … 移行元の画像処理装置10A→(エクスポート)→クラウド50→(インポート)→移行先の画像処理装置10B
経路Iは経路IIよりもデータの移行時間が短いというメリットがある。画像処理装置10とクラウド50との通信では画像処理装置10からクラウド50に至までのルータの数が多くなること及び通信が混雑している部分があること等の理由により再送制御などが生じやすいためである。
【0043】
一方、経路Iを使用する場合、CEはPC40のIPアドレスとフォルダパスを把握して移行元の画像処理装置10Aに設定する必要がある。また、PC40のHDD等に十分な空き容量が必要になる。これに対し、経路IIではCEがクラウド50にログインできればよく、PC40の準備が不用であるため、比較的手軽に採用できる。ただし、アドレス帳データ12と文書データ11のサイズが大きいと移行に時間がかかる。
【0044】
<ハードウェア構成例>
<<画像処理装置のハードウェア構成例>>
続いて、
図4を用いて画像処理装置10のハードウェア構成例を説明する。
図4は画像処理装置10のハードウェア構成図の一例である。
【0045】
画像処理装置10は、CPU101、RAM102、HDD103、プロッタI/F104、プロッタ105、スキャナI/F106、スキャナ107、操作部I/F108、操作部109、ネットワークI/F110、及び、バス112を有している。
図4に示すように画像処理装置10は情報処理装置の機能を有している。
【0046】
CPU101は、HDD103(又はNVRAMやROM)からRAM102に展開されたプログラム103pを実行して、画像処理装置10全体の動作を制御する。RAM102にはHDD103のプログラム103pが展開されCPU101が命令を読み取ったりデータを書き込んだりする作業領域となる。
【0047】
HDD103はプログラム103pの他、アドレス帳データ12、文書データ11、及び、設定値13を記憶している。プロッタI/F104はプロッタ105とのインタフェースでありCPU101からプロッタ105の制御を請け負ったりデータ変換したりする。プロッタ105は、電子写真方式やインクジェット方式で用紙に画像を形成する画像形成部である。
【0048】
スキャナI/F106はスキャナ107とのインタフェースでありCPU101からスキャナ107の制御を請け負ったりデータ変換したりする。スキャナ107は、コンタクトガラス上の原稿をCCD(Charge Coupled Devices)又はCIS(相補性金属酸化膜半導体)などの撮像素子で読み取って画像データ11aを生成する。
【0049】
操作部I/F108は操作部109とのインタフェースであり、CPU101から指示に応じて操作部を制御し、操作部109が受け付けた操作内容をCPU101に通知する。操作部109はハードキーを有し、ユーザからの各種の操作を受け付ける。液晶ディスプレイを有する場合が多く、この場合は設定画面が表示される。また、液晶ディスプレイがタッチパネルを有する場合は、ソフトキーを表示してユーザの押下を受け付ける。
【0050】
ネットワークI/F110はLAN111などのネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)などである。
【0051】
<<PC又はクラウドのハードウェア構成例>>
図5はPC40又はクラウド50のハードウェア構成図の一例である。PC40又はクラウド50は、CPU301、ROM302、RAM303及び補助記憶装置304を備える。更に、PC40又はクラウド50は、入力部305、ディスプレイI/F306、ネットワークI/F307及び外部機器I/F308を備える。なお、PC40又はクラウド50の各部は、バスBを介して相互に接続されている。図示するようにPC40又はクラウド50は情報処理装置としての機能を有する。
【0052】
CPU301は、補助記憶装置304に格納された各種のプログラム304p、OS(Operating System)等を実行する。ROM302は不揮発性メモリである。ROM302は、システムローダーやデータ等を格納する。
【0053】
RAM303は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の主記憶装置である。CPU301によって実行される際に補助記憶装置304に格納されたプログラム304pがRAM303に展開され、RAM303はCPU301の作業領域となる。
【0054】
補助記憶装置304は、CPU301により実行されるプログラム304p及びプログラム304pがCPU301により実行される際に利用される各種データベースを記憶する。補助記憶装置304は例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリである。
【0055】
入力部305は、操作者が各種指示を入力するためのインタフェースである。例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力装置などである。
【0056】
ディスプレイI/F306は、CPU301からの要求により、PC40又はクラウド50が有する各種情報をカーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの形態でディスプレイ310に表示する。ディスプレイI/F306は、例えばグラフィックチップやディスプレイI/Fである。
【0057】
ネットワークI/F307は、ネットワークに接続して画像処理装置10と通信を行う通信装置である。ネットワークI/F307は例えばイーサネット(登録商標)カードであるがこれに限られない。
【0058】
外部機器I/F308は、USBケーブル、又は、USBメモリ等の各種の記憶媒体320などを接続するためのインタフェースである。
【0059】
<機能について>
続いて、
図6を用いて、画像処理装置10が有する機能について説明する。
図6は、移行元の画像処理装置10Aと移行先の画像処理装置10Bが有する機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
【0060】
画像処理装置10は、認証部15、スキャン部16、印刷部17、文書データ蓄積部18、文書データ管理部19、アドレス帳データ管理部20、制御部21、表示制御部22、操作受付部23、インポート部24、エクスポート部25、通信部26、及び、初期化部28を有している。画像処理装置10が有するこれら各機能部は、
図4に示された各構成要素のいずれかが、HDD103からRAM102に展開されたプログラム103pに従ったCPU101からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。
【0061】
なお、移行元の画像処理装置10Aと移行先の画像処理装置10Bには同じプログラム103pがインストールされており、アドレス帳データ12、文書データ11又は設定値13の移行に関しては同じ機能を有している。このため、
図6では、1つの画像処理装置10がインポート部24とエクスポート部25を有しているが、エクスポート部25は移行元の画像処理装置10Aで使用され、インポート部24は移行先の画像処理装置10Bで使用される。
【0062】
認証部15は認証情報記憶部31を参照してユーザを認証する。認証情報記憶部31にはユーザ名と認証パスワードが記憶されており、認証部15はユーザが入力したユーザ名と認証パスワードが認証情報記憶部31に記憶されている場合に認証成功、記憶されていない場合に認証失敗と判断する。認証成功した場合にはユーザのログインが認められ、このユーザのエントリーIDが特定される。
【0063】
なお、認証にはICカードや生体情報が使用されてもよい。認証情報記憶部31の一部の情報はアドレス帳データ記憶部33によっても保持されている。あるいは、アドレス帳データ記憶部33が認証情報記憶部31を兼用してもよい。
【0064】
スキャン部16はユーザが設定した読み取り設定に基づいてスキャナ107を制御して原稿をスキャンし(読み取って)、画像データ11aを生成する。印刷部17はプロッタ105を制御して画像データ11aを用紙に印刷する。
【0065】
文書データ蓄積部18は、スキャン部16が生成した画像データ11aを文書データ記憶部32に蓄積する。すなわち、アドレス帳データ管理部20からエントリーIDを取得して、画像データ11aに書誌情報11bとアクセス権情報11cを付加して文書データ記憶部32に蓄積させる。また、文書データ蓄積部18は文書データの移行時にも文書データを蓄積させる。
【0066】
文書データ管理部19は文書データ記憶部32の文書データ11を管理しており、文書データ記憶部32に蓄積されている文書データ11に対しアクセス権情報11cに応じたアクセス制御を行う。
【0067】
アドレス帳データ管理部20はアドレス帳データ記憶部33のアドレス帳データ12を管理しており、各ユーザにエントリーIDを付与して認証パスワードなどをアドレス帳データの一部として保存したり、アドレス帳データ記憶部33に蓄積されているアドレス帳データ12を読み取ったりする。
【0068】
表示制御部22は操作部109にスキャンの設定画面、印刷設定画面、FAX送信画面等を表示する。また、エクスポートやインポートの設定を受け付ける画面(
図11,
図12参照)を操作部109に表示する。操作受付部23は表示制御部22が表示した各種の画面に対するユーザの操作(タッチパネルに表示されたソフトキーの押下)又はハードキーの押下を受け付ける。
【0069】
エクスポート部25はアドレス帳データ12、文書データ11、又は、設定値13のエクスポートに関する処理を行う。例えば、文書データ管理部19から文書データ11を取得して、又は、アドレス帳データ管理部20からがアドレス帳データ12を取得して、通信部26を介してPC40又はクラウド50に送信する。
【0070】
インポート部24はアドレス帳データ12、文書データ11、又は、設定値13のインポートに関する処理を行う。例えば、PC40又はクラウド50からアドレス帳データ12、文書データ11、又は、設定値13を取得して、文書データ蓄積部18に文書データ11を蓄積させたり、アドレス帳データ管理部20にアドレス帳データ12を記憶させたりする。
【0071】
通信部26は、ネットワークに接続してPC40又はクラウド50と各種の通信を行う。すなわち、アドレス帳データ12、文書データ11、又は、設定値13の送受信を行う。例えば、PC40に送信する際にはSMB(Server Message Block)などの通信プロトコルにより共有フォルダをPC40と共有してPC40と通信できる。クラウド50と通信する場合には例えばHTTP、HTTPs、FTP等の通信プロトコルを使用してPC40又はクラウド50と通信する。なお、通信プロトコルは一例に過ぎない。
【0072】
通信部26は取得部26aと出力部26bを有する。取得部26aはインポート時にアドレス帳データ12、文書データ11、又は、設定値13を取得し、出力部26bはエクスポート時にアドレス帳データ12、文書データ11、又は、設定値13を出力する。なお、取得には受信や読み込みが含まれ、出力には送信や書き込みが含まれる。
【0073】
制御部21は、画像処理装置10の全体的な動作を制御する。例えば、エクスポート時にはエクスポート部25を呼び出してエクスポートに関する処理を行わせ、インポート時にはインポート部24を呼び出してインポートに関する処理を行わせる。
【0074】
初期化部28は、移行先の画像処理装置10Bにアドレス帳データ又は文書データが登録されていたら初期化する。すなわち、移行先の画像処理装置10Bのアドレス帳データや文書データを削除又はフォーマットする。
【0075】
また、PC40は共有フォルダ41を有する。共有フォルダ41は複数のユーザが外部からアクセスできるフォルダであり、共有フォルダ41により複数のユーザがファイルを共有できることから共有フォルダ41と呼ばれる。また、クラウド50はサーバフォルダ51を有しており、サーバフォルダ51はクラウド上の記憶域である。共有フォルダ41又はサーバフォルダ51にはエクスポート開始からインポート完了までの間、アドレス帳データ12、文書データ11、又は、設定値13が記憶される。
【0076】
<アドレス帳データについて>
続いて、
図7を用いてアドレス帳データ12について説明する。
図7は、アドレス帳データ12が有する情報を模式的に示す。アドレス帳データ12は画像処理装置10を使用する各ユーザに関する情報が登録されている。
【0077】
まず、アドレス帳データ12は、一人のユーザを1エントリーとして、各ユーザの認証パスワード、及び、文書データ11の配信先アドレスなどが保存されている。認証パスワードは認証情報記憶部31が有するものと同じものであり、アクセス性などの観点を考慮して認証情報記憶部31から転記されている。したがって、アドレス帳データ12の情報が認証に使用されてもよい。
【0078】
なお、認証パスワードはユーザの認証に使用される秘匿性のある情報であり、文書データ11の配信先アドレスはスキャンにより生成された画像データ11aをスキャンしたユーザ又は選択されたユーザに送信するためのIPアドレスやメールアドレスである。
【0079】
アドレス帳データ12の各ユーザには重複しないエントリーIDが設定されている。エントリーIDは画像処理装置10内でユーザを一意に識別する内部的な識別情報である。例えば、画像処理装置10のアドレス帳データ管理部20がユーザの登録順に付す連番である。アドレス帳データ12に新しくユーザが登録されるたびに新しいエントリーIDが採番されて保存される。アドレス帳データ12からユーザが削除された場合、削除されたユーザのエントリーIDは欠番となる。内部的な識別情報であるため、画像処理装置10が変われば同じユーザでもエントリーIDは変わりうる。ただし、アドレス帳データの移行によってエントリーIDは変わらない。
【0080】
なお、アドレス帳データ12は
図7に示す以外にも各種の情報を有していてよい。例えば、ユーザ名、ユーザの部署、ユーザタイプ、性別、年齢などである。ユーザ名は一意性があるユーザの識別情報である。ユーザの部署はユーザが所属するグループ、チーム又は場所である。ユーザタイプとはシステム管理者、一般ユーザ、文書管理者、設定管理者など、社内におけるユーザの役割を表す属性である。システム管理者とはデータ移行システムの管理者をいい、文書管理者は文書データ11に関する全ての権限を有する管理者をいい、設定管理者は設定値に関する全ての権限を有する管理者をいう。これら管理者は実際には同じ人が兼用しても構わない。
【0081】
<アクセス権情報について>
続いて、
図8を用いて文書データ11とアクセス権情報11cについて説明する。
図8(a)は文書データ11が有する情報を示す図の一例であり、
図8(b)はアクセス権情報11cを模式的に示す。
【0082】
図8(a)に示すように、文書データ11は画像データ11a、書誌情報11b、及びアクセス権情報11cを有している。後述するようにゲストユーザが登録した文書データ11ではアクセス権情報11cが付加されないので、アクセス権情報11cを有さない文書データもある。画像データ11aはJPEGなどの所定のフォーマットの画像データである。書誌情報11bは、ユーザが設定した読み取り設定、画像サイズ、色数、及び、ユーザ名などである。
【0083】
また、1つの文書データ11には画像処理装置10内で重複しない文書IDが付与される。文書IDは移行によって変わりうる。なお、IDはIdentificationの略であり識別子や識別情報という意味である。IDは複数の対象から、ある特定の対象を一意的に区別するために用いられる名称、符号、文字列、数値又はこれらのうち1つ以上の組み合わせをいう。エントリーIDについても同様である。
【0084】
図8(b)に示すようにアクセス権情報11cは、各ユーザごとにエントリーID及びアクセス権限を有している。アクセス権情報11cにおけるエントリー数(ユーザの数)はアドレス帳データ12のエントリー数以下である。アクセス権情報11cにおけるエントリー数には上限を設けることができるが、基本的にアドレス帳データ12のエントリー数と同じである。したがって、アドレス帳データ12に100人のユーザが登録されていれば1つの文書データ11のアクセス権情報11cには、100人のユーザのアクセス権限が登録されている。アクセス権情報11cのエントリーIDはアドレス帳データ12からコピー(複写)されるだけなので、アクセス権情報11cにはアドレス帳データ12と同じエントリーIDが設定される。
【0085】
アクセス権限は例えば、閲覧、編集及び削除である。
閲覧:文書データ11のリストを閲覧する権限(内容は閲覧できない)
編集:文書データ11のファイル名などを編集する権限
削除:文書データ11のファイルを削除する権限
各アクセス権限には「可能」又は「不可」が設定される。この他、印刷する権限、送信する権限などが登録されてよい。
【0086】
文書データ11の登録時にどのようにアクセス権情報11cが決定されるかについて説明する。アクセス権限は主にユーザタイプによって決定される。考慮されるユーザタイプは以下のとおりである。
(i) 文書データ11のオーナーであるユーザ
(ii) 特定のタイプのユーザ
(iii) それ以外のユーザ
(i) 画像処理装置10にログインしている、つまりスキャンであれば原稿を読み取って文書データ11を生成したユーザは文書データ11のオーナーである。同様に、アプリケーションソフトが生成したファイルを印刷するユーザもオーナーである。このようにユーザが文書データ11の オーナーの場合、このユーザのエントリーIDのアクセス権限は例えば、「閲覧可能」「編集可能」「削除可能」と設定される。オーナーにはこれらのアクセス権が認められるべきだからである。
【0087】
(ii) 特定のタイプのユーザの場合、ユーザのタイプに応じたアクセス権限が設定される。例えば、文書管理者であれば編集したり削除したりするアクセス権限が必要な場合があり得る。このため、アドレス帳データ12に特定のユーザタイプで登録されているユーザに関してはこのユーザタイプに応じて予め決まっているアクセス権限が設定される。
【0088】
(iii) それ以外のユーザにはデフォルトのアクセス権限が設定される。例えば「閲覧可能」「編集不可」「削除不可」と設定される。すなわち、ファイル名を閲覧できるが、文書データ11のファイル名を編集したり、削除したりすることはできない。
【0089】
<文書データの蓄積と利用時の処理>
続いて、
図9を用いて画像処理装置10に文書データ11が蓄積される処理と文書データ11の利用時の処理について説明する。
図9(a)はスキャナにより生成された画像データ11aを含む文書データ11の蓄積時の処理を説明するフローチャート図の一例である。
【0090】
S1A:ユーザが原稿をスキャンする際、画像処理装置10の認証部15は、ログインしたユーザを認証パスワードとユーザ名で認証する。認証が成功することでアドレス帳データ12のエントリーIDが特定される。
【0091】
S2A:操作受付部23が原稿の読み取り開始を受け付けると、操作受付部23が受け付けた読み取り設定で、スキャン部16がスキャナI/F106に原稿読み取りの指示を送信する。スキャナ107で読み取って生成された画像データ11aはスキャナI/F106を通じてRAM102に保存される。そして必要に応じて蓄積するためのデータ形式への変換が施され、文書データ記憶部32に蓄積される。
【0092】
S3A:文書データ蓄積部18はユーザがゲストユーザか否かを判断する。ゲストユーザとは認証なしに画像処理装置10を使用するユーザである。例えば別の支社から出張したユーザや来客したユーザ等の使用を可能にすることができる。ゲストであることを特定した場合は、ゲスト用の権限が設定されるので、アクセス権情報11cも設定されない。この場合、ゲストユーザが使用できる文書となる。
【0093】
S4A:ゲストユーザでない場合、文書データ蓄積部18はアドレス帳データ12との関連を表すアクセス権情報11cを画像データ11aに付加する。
図8で説明したように、アドレス帳データの各ユーザのエントリーIDに対応付けて(エントリーIDをコピーして)ユーザごとにユーザタイプに応じたアクセス権限を設定する。また、ユーザが設定した読み取り設定、画像サイズ、色数、及び、ユーザ名などの書誌情報11bも画像データ11aに付与する。画像データ11a、書誌情報11b、及びアクセス権情報11cが1つの文書データ11である。
【0094】
なお、
図9(a)ではスキャナによる文書データ11の蓄積について説明したが、ワープロソフトウェアのようなアプリケーションソフトが生成したファイルを印刷する場合についても同様である。
【0095】
図9(b)は蓄積されている文書データ11の利用時の処理を説明するフローチャート図の一例である。
【0096】
S1B:蓄積された文書データ11の印刷時、まず、ログインしたユーザの認証が成立することでアドレス帳データ12におけるエントリーIDが特定される。
【0097】
S2B:文書データ管理部19は文書データ記憶部32から文書データ11をRAMにまとめて読み出しておき、RAM上の文書データ11に対しアクセス権情報11cを確認する。
【0098】
S3B:文書データ管理部19はログインしたユーザのエントリーIDで文書データ11を閲覧する権限があるかどうかを文書データ11ごとに判断する。
【0099】
S4B:閲覧する権限がある場合、文書データ管理部19は文書データ11のファイル名などを表示制御部22に送出し、表示制御部22が操作部109に表示する。
【0100】
S5B:次の文書データ11がある場合、処理はステップS2Bに戻り、ない場合は
図9(b)の処理を終了する。
【0101】
ユーザは表示された文書データ11のリストの中から印刷したい文書を選択し、印刷を実行する。文書データ管理部19は同様にユーザのエントリーIDで選択された文書データ11を印刷する権限があるかどうかアクセス権情報11cを参照して判断する。ある場合には、文書データ管理部19は印刷部17に文書データ11を送出する。印刷部17は文書データ11の画像データ11aをプロッタ105に印刷させる。
【0102】
このように、アドレス帳データ12のエントリーIDとアクセス権情報11cの対応が正しく保存されていない限り、各ユーザは文書データ11を操作部109に表示できたとしても、印刷することはできない。
【0103】
<アクセス権情報とアドレス帳データのエントリーIDの対応について>
続いて、
図10を用いてアクセス権情報11cのエントリーIDとアドレス帳データ12のエントリーIDの対応について説明する。
図10は、アクセス権情報11cのエントリーIDとアドレス帳データ12のエントリーIDとの対応の一例を示す。
【0104】
図8、
図9で説明したように、アドレス帳データ12とアクセス権情報11cはそれぞれエントリーIDを有している。文書データ11が蓄積される際に、アドレス帳データ12の各ユーザのエントリーIDがアクセス権情報11cにコピーされるので、文書が蓄積されるタイミングでアクセス権情報11cとアドレス帳データ12の関連が構築される。文書データ11の蓄積後は、画像処理装置10はアクセス権情報11cに基づいてユーザが文書データ11にアクセスできるかどうかを制御する。
【0105】
このため上記のように、文書データ11の移行において、文書データ11単体でのみ移行したのでは、移行先の画像処理装置10Bでアクセス制御を再現できない状況が生じうる。
【0106】
<画像処理装置が表示する画面について>
続いて、
図11を用いて画像処理装置10が操作部109に表示する画面例を説明する。
図11(a)は移行データ選択画面401の一例であり、
図11(b)は機能選択画面411の一例である。移行データ選択画面401は、移行するデータの選択を受け付ける画面である。移行データ選択画面401は、「機器設定/アドレス帳」というボタン名に対応付けられたラジオボタン402と、「文書データ」というボタン名に対応付けられたラジオボタン403を有している。「機器設定/アドレス帳」に対応付けられたラジオボタン402は設定値13とアドレス帳データ12を移行することを受け付ける。「文書データ」に対応付けられたラジオボタン403は文書データ11を移行することを受け付ける。
【0107】
ユーザが「次へ」ボタン404を押下すると表示制御部22は
図11(b)の機能選択画面411を操作部109に表示する。機能選択画面411はエクスポート又はインポートを受け付ける画面である。機能選択画面411は「エクスポート」というボタン名に対応付けられたラジオボタン412と、「インポート」というボタン名に対応付けられたラジオボタン413を有している。「エクスポート」に対応付けられたラジオボタン412はエクスポートすることを受け付ける。「インポート」に対応付けられたラジオボタン413はインポートすることを受け付ける。
【0108】
図11(a)では設定値13とアドレス帳データ12、及び、文書データ11が別々にエクスポート又はインポートされるユーザインタフェースとなっているが、設定値13とアドレス帳データ12が別々にエクスポート又はインポートされるユーザインタフェースとなっていてもよい。また、アドレス帳データ12と文書データ11を一度に受け付けるユーザインタフェースとなっていてもよい。
【0109】
図12(a)はエクスポート実行中画面421の一例を示し、
図12(b)はエクスポート完了画面431の一例を示す。エクスポート実行中画面421はエクスポート中に表示される画面であり、進捗バー422、及び、残り時間423が表示される。エクスポート完了画面431では「エクスポートが完了しました」というメッセージ432が表示されている。インポート画面についてもエクスポート画面とほぼ同様である。
【0110】
<アドレス帳データのエクスポートとインポート>
まず、
図13を用いてアドレス帳データ12のエクスポートとインポートの手順を説明する。
図13は、移行元の画像処理装置10AがPC40にアドレス帳データ12をエクスポートし、移行先の画像処理装置10BがPC40からアドレス帳データ12をインポートする手順を示すシーケンス図の一例である。
【0111】
なお、本発明の実施形態の前提として、移行先の画像処理装置10Bにはアドレス帳データ12も文書データも登録されていない新品の装置を用意するものとする(万が一、登録されていたら、移行先の画像処理装置10Bは初期化、すなわち、移行先の画像処理装置10Bのアドレス帳データや文書データを削除又はフォーマットする)。この削除又はフォーマットはステップS10の後に実行されてもよい。
【0112】
S10:CE9は移行元の画像処理装置10Aにログインする。
【0113】
S11:CE9は移行データ選択画面401でアドレス帳データ12を選択する。移行元の画像処理装置10Aの操作受付部23はアドレス帳データ12の選択を受け付ける。
【0114】
S12:CE9は機能選択画面411でエクスポートを選択する。移行元の画像処理装置10Aの操作受付部23はエクスポートを受け付ける。なお、CE9はPC40の共有フォルダ41のIPアドレスとフォルダパスを設定する。共有フォルダ41の一覧から所望の共有フォルダ41を選択してもよい。
【0115】
クラウド50の場合、サーバフォルダ51はクラウド50が管理しているのでクラウド50により認証を受けるためのユーザ名とパスワードをCE9が設定する。クラウド50のURLは移行元の画像処理装置10A(より正確にはプログラム103p)が予め記憶している。
【0116】
S13:移行元の画像処理装置10Aの制御部21はエクスポート部25にエクスポートを開始させるので、エクスポート部25はアドレス帳データ管理部20にアドレス帳データ12を要求する。アドレス帳データ管理部20はアドレス帳データ記憶部33からアドレス帳データ12を読み出す。例えば、エントリーIDの順に1ユーザを1フォルダに格納する。全てのユーザを1ファイルに圧縮してもよい。アドレス帳データであることが分かるように、フォルダ内のファイル名の拡張子は予め決まっていることが好適である。また、移行元の画像処理装置10Aの機種名やエクスポート日時がファイル名に含まれていてもよい。
【0117】
S14:エクスポート部25は、IPアドレスとフォルダパスを指定して出力部26bに対し、アドレス帳データ12をPC40の共有フォルダ41に送信させる。送信時には1ユーザごとにアドレス帳データを送信するのでステップS13とS14は繰り返し実行される。
【0118】
以上で、PC40の共有フォルダ41にアドレス帳データ12が送信される。設定値についてもエクスポートされる。この後、CEは移行先の画像処理装置10Bからアドレス帳データ12をインポートできるが、画像処理装置10の更新時には同時に2つの画像処理装置10を設置することが困難な場合が多いので、通常は続いて文書データ11のエクスポートが実行される。ただし、
図13に示すようにエクスポートに引き続き、インポートが行われてもよい。
【0119】
S14-2:CE9は移行先の画像処理装置10Bにログインする。
【0120】
S15:移行先の画像処理装置10Bが設置されたとして説明する。CE9は移行データ選択画面401でアドレス帳データ12を選択する。移行元の画像処理装置10Aの操作受付部23はアドレス帳データ12の選択を受け付ける。
【0121】
S16:CE9は機能選択画面411でインポートを選択する。移行元の画像処理装置10Aの操作受付部23はインポートを受け付ける。共有フォルダ41の指定方法はエクスポート時と同様でよく、エクスポート時と同じフォルダを指定する。
【0122】
S16-2:アドレス帳データ12又は文書データが登録されている場合、初期化部28はこれらを削除又はフォーマットする。
【0123】
S17:移行先の画像処理装置10Bの制御部21はインポート部24にインポートを開始させるので、インポート部24はIPアドレスとフォルダパスを指定して取得部26aに対し、アドレス帳データ12をPC40に要求させる。
【0124】
S18:これにより、移行先の画像処理装置10Bの取得部26aはIPアドレスとフォルダパスで指定したフォルダから、予め決まっている拡張子のアドレス帳データ12を取得する。受信時も1ユーザごとに受信するのでステップS17とS18は繰り返し実行される。同じ拡張子のファイルが複数ある場合、CE9はファイル名に含まれる機種名やエクスポート日時を参照してインポートするアドレス帳データを判断してもよい。
【0125】
S19:インポート部24は取得部26aを介して取得したアドレス帳データ12をアドレス帳データ管理部20に送出し、アドレス帳データ12を記憶させる。アドレス帳データ管理部20はアドレス帳データ記憶部33にアドレス帳データ12を記憶させる。なお、必要に応じて、データ形式の相違などを修正してもよい。
【0126】
<文書データのエクスポートとインポート>
続いて、
図14~
図18を用いて文書データ11のエクスポートとインポートについて説明する。
【0127】
<<エクスポート>>
図14は、移行元の画像処理装置10AがPC40に文書データ11をエクスポートし、移行先の画像処理装置10BがPC40から文書データ11をインポートする手順を示すシーケンス図の一例である。文書データ11のエクスポートとインポートの全体的な手順は
図13に示したアドレス帳データ12の手順と同様になる。すなわち、アドレス帳データ12の代わりに文書データ11がエクスポートとインポートの対象となる。
【0128】
文書データにすでにアクセス権情報が設定されている場合、すでに移行してあるアドレス帳データを使ってアクセス権情報を設定する処理が追加される(S29)。
【0129】
図15は、移行元の画像処理装置10Aが文書データ11をエクスポートする手順を示すフローチャート図の一例である。
図15の処理は、
図14の処理のステップS20、S23、S24に相当する処理を詳細に説明するものである。
【0130】
まず、CEは文書管理者権限による認証を受けることで移行元の画像処理装置10Aにログインする(S101)。文書管理者は文書に関する全ての権限(印刷を除く)を有する管理者である。文書データ11にはアクセス権情報11cが付加された状態で文書データ記憶部32に蓄積されているので、これらの文書データ11を抽出するためには全ての文書に対してアクセス可能な権限を使用する必要がある。文書管理者のアクセス権限では、文書データ11の印刷が認められていないが、文書データ11のエクスポートをする場合に限り、文書データ11の取得が可能である。認証部15はCEが入力した認証情報と認証情報記憶部31に記憶されている認証情報を比較して、文書管理者としてCEのログインを認める。
【0131】
CEが文書管理者としてログインすると、制御部21はエクスポート部25に文書管理者の権限でインポートを実行させる。エクスポート部25は文書データ管理部19に文書データ11の一覧を取得させる(S102)。文書管理者なので全ての文書データの閲覧が可能である。
【0132】
文書データ11の一覧を取得したら、エクスポート部25は蓄積されている文書データ11ごとに文書データ11のエクスポートを開始する。まず、最後の文書データ11か否かを判断する(S103)。ステップS103の判断がYesの場合、
図15の処理は終了する。
【0133】
ステップS103の判断がNoの場合、エクスポート部25は文書データ管理部19に文書データ11を取得させる。文書データ管理部19は文書データ記憶部32から画像データ11aと書誌情報11bを取得する(S104)。
【0134】
次に、文書データ管理部19はアクセス権情報11cが文書データ11に付加されているか否か(アクセス権が設定されているか)を判断する(S105)。ゲストユーザが蓄積した文書データ11にはゲスト用の権限が設定され、アクセス権情報11cが設定されていない。
【0135】
次に、アクセス権が設定されている場合、インポート部24はアクセス権情報11cを取得し(S106)、画像データ11a、書誌情報11b及びアクセス権情報11cを1フォルダに格納して転送データを作成する(S107)。
【0136】
図16は転送データの一例を示す。例えば、
図16に示すように、1フォルダ内に画像データ11a、書誌情報11b及びアクセス権情報11cのフォルダを更に作成し、フォルダ内に、画像データ11a、書誌情報11b及びアクセス権情報11cをそれぞれ格納する。画像データ11aが複数のページを有する場合は、ページ順を維持してフォルダに格納する。例えばページごとかつページ順にフォルダを作成することができる。なお、
図16のような転送データの形式は一例であり、画像データ11a、書誌情報11b及びアクセス権情報11cをまとめて1フォルダに格納したり、1ファイルに圧縮したりしてもよい。
【0137】
図15に戻り、インポート部24は転送データをPC40の共有フォルダ41に送信する(S108)。インポート部24は全ての文書データ11についてステップS103~S108の処理を繰り返す。
【0138】
<<インポート>>
図17は、移行先の画像処理装置10Bが文書データ11をインポートする手順を示すフローチャート図の一例である。
図17の処理は、
図14の処理のステップS24-2、S27~S29に相当する処理を詳細に説明するものである。
【0139】
ステップS201の文書管理者による認証については
図15のステップS101と同様でよい。これにより、CEは全ての文書データ11を移行できる。
【0140】
次に、移行先の画像処理装置10Bの制御部21はインポート部24に文書管理者の権限でインポートを開始させる。インポート部24は、CEが設定したIPアドレスとフォルダパスの共有フォルダ41に取得部26aを接続させる(S202)。
【0141】
取得部26aは、共有フォルダ41から文書データ11の一覧を取得する(S203)。文書データ11の一覧を取得したら、インポート部24は蓄積されている文書データ11ごとに文書データ11のインポートを開始する。まず、最後の文書データ11か否かを判断する(S204)。ステップS204の判断がYesの場合、
図17の処理は終了する。
【0142】
ステップS204の判断がNoの場合、インポート部24は取得部26aを介して転送データを1つずつ取得する(S205)。
【0143】
インポート部24は転送データから画像データ11a、書誌情報11b、及びアクセス権情報11cを取り出す(S206)。
【0144】
まず、インポート部24は画像データ11aの蓄積を文書データ蓄積部18に要求する(S207)。また、インポート部24は書誌情報11bの蓄積を文書データ蓄積部18に要求する(S208)。
【0145】
そして、アクセス権情報11cがある場合は(S209のYes)、インポート部24はアクセス権情報11cの蓄積を文書データ蓄積部18に要求する(S210)。アクセス権情報11cがある場合とは、文書データにすでにアクセス権情報が設定されている場合である。ステップS210の処理の詳細を、
図18を参照して説明する。
【0146】
図18は、アクセス権情報11cの蓄積処理の詳細を説明するフローチャート図の一例である。
【0147】
まず、文書データ蓄積部18は、登録用バッファを用意する(S2101)。これは、1文書データ11のアクセス権限をまとめて文書データ記憶部32に登録するため、一時的にアクセス権情報を記憶する所定以上のメモリを用意する処理である。
【0148】
次に、文書データ蓄積部18はアドレス帳データ管理部20からアドレス帳データ12のリストを取得する(S2102)。アドレス帳データ12のエントリーIDを使用するためである。
【0149】
次に、文書データ蓄積部18は共有フォルダ41から取得したアクセス権情報11cに含まれているエントリーIDごとにアクセス権限を登録していく。このため、まず、文書データ蓄積部18は共有フォルダ41から取得したアクセス権情報11cに含まれているエントリーIDを1つ取り出す(S2103)。エントリーIDの昇順に取り出せばよいが、降順でも無作為でもよい。
【0150】
そして、ステップS2103で取得した、共有フォルダ41から取得したアクセス権情報11cに含まれているエントリーIDが、ステップS2102で取得したアドレス帳データ12のリストに存在するかどうかを照合して判断する(S2104)。
【0151】
ステップS2104の判断がYesの場合、文書データ蓄積部18はアクセス権限を設定する(S2105)。すなわち、共有フォルダ41から取得したアクセス権情報11cに含まれているエントリーIDに対応付けてアクセス権限を登録用バッファに書き込む。したがって、アドレス帳データ12と文書データ11の関連を保ったまま移行できる。
【0152】
ステップS2104の判断がNoの場合、文書データ蓄積部18はアクセス権限を設定しない。したがって、アドレス帳データ12のリストに存在しないエントリーIDのユーザは文書データ11にアクセスできなくなる。これにより、移行により文書データ11のセキュリティが低下することを抑制できる。
【0153】
文書データ蓄積部18は最後のエントリーIDか否かを判断する(S2106)。ステップS2106の判断がNoの場合、処理はステップS2103に進む。
【0154】
ステップS2106の判断がYesの場合、1つの文書データ11のアクセス権情報11cが完成したので、文書データ蓄積部18は登録用バッファに記憶したアクセス権情報11cを画像データ11aと書誌情報11bに対応付けて文書データ記憶部32に蓄積する(S2107)。
【0155】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態のデータ移行システム100は、
(i) 移行先のアドレス帳データや文書データを削除又はフォーマットする。
(ii) アドレス帳データを先に移行し、その次に文書データを移行する。
(iii) 文書データにアクセス権情報が設定されている場合は、既に移行したアドレス帳データを使ってアクセス権情報を設定する。
という処理によりアドレス帳データ12と文書データ11の関連を保ったまま移行できるという効果が得られる
本実施形態のデータ移行システム100において、移行先の画像処理装置10Bは文書データ11の移行時に、アクセス権情報11cのエントリーIDがアドレス帳データ12のエントリーIDに存在するか否かを判断し、存在する場合にアクセス権情報11cにアクセス権限を設定する。エントリーIDが存在するかどうかを判断してから文書データ11を移行するので、移行先の画像処理装置10Bでアドレス帳データ12と文書データ11の関連を保ったまま移行でき、移行先の画像処理装置10Bでアクセス制御を再現できる。アドレス帳データ12を先に移行することで、移行元のアドレス帳データ12が移行先に存在する状態で文書データ11を移行できる。
【0156】
なお、アドレス帳と文書データ11の関連を保ったまま移行するという意味では、アクセス権情報11cのエントリーIDを変更しない(移行元の画像処理装置10Aのアドレス帳データ12のエントリーIDのまま移行する)という方法の他、移行先の画像処理装置10Bが変換テーブルを作成してもよい。この変換テーブルは、移行したアドレス帳データ12のエントリーIDを、アクセス権情報11cのエントリーIDに変換するテーブルである。変換テーブルを作成すれば、移行先の画像処理装置10Bにおけるアクセス権情報11cのエントリーIDを任意に変更できる。
【実施例2】
【0157】
本実施例では、アクセス権情報11cのデータサイズを削減できるデータ移行システム100について説明する。実施例1ではアクセス権情報11cを移行したが、アクセス権情報11cの大部分ではデフォルトのアクセス権限(オーナーでも特定のユーザタイプでもないユーザのアクセス権限)が設定されている。デフォルトのアクセス権限は決まっているので、移行先の画像処理装置10Bで再現できる。例えば、エクスポート時にデフォルト以外のアクセス権限を有するエントリーIDとアクセス権限(以下、移行用アクセス権情報という)を移行元の画像処理装置10Aが作成し、これをアクセス権情報11cの代わりに共有フォルダ41等に送信する。
【0158】
<機能について>
図19は、移行元の画像処理装置10Aと移行先の画像処理装置10Bが有する機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。なお、
図19の説明では主に
図6との相違を説明する。
図19の画像処理装置10はアクセス権情報編集部27を有している。アクセス権情報編集部27はアクセス権情報11cを編集して、デフォルト以外のアクセス権限を有するエントリーIDとアクセス権限を登録した移行用アクセス権情報を生成する。
【0159】
図20は、移行用アクセス権情報11dの生成について説明する図である。
図20のアクセス権情報11cではユーザBのアクセス権限が
「閲覧可能、編集不可、削除不可」
となっておりデフォルトのアクセス権限であることが分かる。
【0160】
アクセス権情報編集部27はユーザBのエントリーIDを残してアクセス権限を削除することで、移行用アクセス権情報11dを生成する。したがって、アクセス権情報11cのデータサイズを削減できる。移行用アクセス権情報11dにはエントリーIDは残っているので、移行先の画像処理装置10BはこのエントリーID(ユーザB)に対応付けてデフォルトのアクセス権情報11cを復元できる。
【0161】
<文書データのエクスポートとインポート>
図21、
図22を用いて文書データ11のエクスポートとインポートについて説明する。
【0162】
<<エクスポート>>
図21は、移行元の画像処理装置10Aが文書データ11をエクスポートする手順を示すフローチャート図の一例である。
図21の説明では、主に
図15との相違を説明する。ステップS101~S106の処理は
図15と同様でよい。
【0163】
ステップS106-2では、アクセス権情報編集部27はユーザBのエントリーIDを残してアクセス権限を省略(削除)することで、移行用アクセス権情報11dを生成する(S106-2)。
【0164】
ステップS107、S108の処理は
図15と同様でよい。
【0165】
<<インポート>>
図22は、移行先の画像処理装置10Bが文書データ11をインポートする手順を示すフローチャート図の一例である。なお、
図22の説明では主に
図18との相違を説明する。ステップS2101~S2104の処理は
図18と同様でよい。
【0166】
ステップS2104-2では、文書データ蓄積部18は移行用アクセス権情報11dにアクセス権限が設定されているか否かを判断する(S2104-2)。
【0167】
アクセス権限が設定されていない場合(S2104-2のNo)、文書データ蓄積部18は、デフォルトのアクセス権限を復元する(S2104-3)。すなわち、「閲覧可能、編集不可、削除不可」というアクセス権限を復元する。
【0168】
ステップS2104-3に続いて、又は、アクセス権限が設定されている場合(S2104-2のYes)、実施例1と同様に、文書データ蓄積部18は、登録用バッファにおいて、エントリーIDに対応付けてアクセス権限を書き込む(S2105)。
【0169】
ステップS2106、S2107の処理は
図18と同様でよい。
【0170】
<まとめ>
したがって、本実施形態のデータ移行システム100によれば、実施例1の効果に加え、アクセス権情報11cのデータサイズを削減でき、エクスポート及びインポート時におけるPC40又はクラウド50との通信時間を削減できる。
【0171】
<その他の好適例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0172】
例えば、
図23に示すように、移行元の画像処理装置10Aと移行先の画像処理装置10Bを同時に起動できる場合、移行元の画像処理装置10Aと移行先の画像処理装置10Bに直接、アドレス帳データ12、書誌情報11b、及び、文書データ11を送信してもよい。
図23は移行元の画像処理装置10Aから移行先の画像処理装置10Bへの直接の移行を模式的に示す。
【0173】
この場合、移行元の画像処理装置10Aがサーバとなり、移行先の画像処理装置10Bがサーバからアドレス帳データ12、書誌情報11b、及び、文書データ11を受信し、実施例1又は2と同様にエクスポート及びインポートする形態が考えられる。
【0174】
あるいは、単に、移行先の画像処理装置10Bを外部の記憶装置として利用してもよい。
【0175】
また、
図24に示すように、CEは画像処理装置10を操作するのでなく、PC40を操作してもよい。
図24は、PC40が移行元の画像処理装置10Aにアドレス帳データのエクスポートを要求し、PC40が移行先の画像処理装置10Bにアドレス帳データのインポートを要求する手順を示すシーケンス図の一例である。
【0176】
この場合、移行元の画像処理装置10AはWebサーバとしてHTML等で記述された画面情報をPC40に提供する。PC40でブラウザソフトが動作しており、画面情報を取得してディスプレイ310に表示する。画面については
図11に示した移行データ選択画面401、機能選択画面411と同様でよい。
図13、
図14との相違を説明すると、ステップS12-2において、CEがPC40を操作してアドレス帳データを要求する。また、ステップS17が不要になり、ステップS18でCEが選択したアドレス帳データを移行先の画像処理装置10Bに送信する(アップロードする)。
【0177】
したがって、CEは画像処理装置10に赴かなくてもアドレス帳データ12、書誌情報11b、及び、文書データ11のエクスポートとインポートが可能になる。
【0178】
また、本実施形態では、画像処理装置10を例にしたが、電子黒板、デジタルサイネージ、テレビ会議端末などにも適用できる。また、移行元と移行先が別々の種類の装置でもよい。
【0179】
また、画像処理装置10が有する認証情報記憶部31、文書データ記憶部32、アドレス帳データ記憶部33の1つ以上は画像処理装置10が有する他、画像処理装置10がアクセス可能なネットワーク上にあればよい。
【0180】
また、以上の実施例で示した
図6などの構成例は、画像処理装置10の処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。しかし、各処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。画像処理装置10は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0181】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0182】
なお、
移行元の画像処理装置10Aは第2の情報処理装置の一例であり、
移行先の画像処理装置10Bは第1の情報処理装置の一例であり、
アドレス帳データは第1のデータの一例であり、
文書データは第2のデータの一例であり、
移行先の画像処理装置10Bの取得部26aは取得手段の一例であり、
初期化部28は初期化手段の一例であり、
アドレス帳データ記憶部33は第1データ記憶手段の一例であり、
文書データ記憶部32は第2データ記憶手段の一例であり、
文書データ蓄積部18はデータ蓄積手段の一例であり、
移行元の画像処理装置10Aの出力部26bは出力手段の一例である。
【符号の説明】
【0183】
10 画像処理装置
41 共有フォルダ
50 クラウド
100 データ移行システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0184】