(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】導電部材用粘着シート、導電部材積層体及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220921BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220921BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220921BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/06
H01B5/14 A
(21)【出願番号】P 2021079030
(22)【出願日】2021-05-07
(62)【分割の表示】P 2016248291の分割
【原出願日】2016-12-21
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2015253214
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015253220
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】新美 かほる
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀次郎
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴久
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-164262(JP,A)
【文献】特開2012-229410(JP,A)
【文献】国際公開第2012/173247(WO,A1)
【文献】特開2012-046681(JP,A)
【文献】特開2015-004048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体及び1,2,3-トリアゾールを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する導電部材用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物が亜リン酸エステル化合物を含有する請求項1に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項3】
前記亜リン酸エステル化合物は、脂肪族亜リン酸エステル、芳香族亜リン酸エステル並びに脂肪族エステル基及び芳香族エステル基を有する亜リン酸エステルから選択される何れか一種以上からなるものである請求項
2に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含むものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシル基含有モノマーを1.2~15質量%含有するものである請求項4に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤組成物は架橋剤を含むものである請求項1~5のいずれか一項に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項7】
前記導電部材が透明導電層を有するものである請求項1~6のいずれか一項に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項8】
前記透明導電層が絶縁保護膜を有するものである請求項7に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項9】
前記導電部材が、錫ドープ酸化インジウムを含む透明導電層及び/又は銅を含む金属材料で形成された導体パターンを有するものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の導電部材用粘着シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の導電部材用粘着シートを導電部材と貼り合わせた構成を有する導電部材積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の導電部材積層体、画像表示パネル及び表面保護パネルを構成部材として有する画像表示装置。
【請求項12】
(メタ)アクリル系共重合体及び1,2,3-トリアゾールを含有する導電部材用粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部材用粘着シート及び当該粘着シートを用いた導電部材積層体等に関する。特に、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、無機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)等の画像表示パネルを用いた画像表示装置において、透明導電層等の導電部材を貼り合わせるのに好適な導電部材用粘着シート等に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレット等の画像表示装置、例えば、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、無機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)等の平面型又は曲面を有する画像表示パネルを用いた画像表示装置においては、視認性確保や破損防止等のため、各構成部材間に空隙を設けず、各構成物材間を粘着シートや液状粘着剤で貼り合わせて一体化することが行われている。
【0003】
例えば、液晶モジュールの視認側と表面保護パネルとの間にタッチパネルが介挿されてなる構成を備えた画像表示装置では、表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に粘着シートや液状粘着剤を配置し、タッチパネルと他の構成部材、例えば、タッチパネルと液晶モジュール、タッチパネルと表面保護パネルとを貼り合わせて一体化することが行われている。
【0004】
タッチパネルは通常、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、インジウム・ガリウム・亜鉛複合酸化物(IGZO)、Gaドープ酸化亜鉛(GZO)等の金属酸化物や、銀、銅、モリブデン等の金属材料で形成された微細配線や、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等から形成された透明導電層を有する上部電極板及び下部電極板を備えている。また、透明導電層により検知した指やタッチペンなどの位置情報を集約して通信するために、金属材料で形成された導体パターン(配線パターン)が透明導電層とIC等の制御手段との間に形成される。これらの各種材料から形成された透明導電層や導体パターンは、通常、表面が粘着剤と接するように固定される。この透明導電層や導体パターンは、腐食に対して脆弱であり、高温や湿熱環境下において粘着材のアウトガスや溶出成分由来の酸成分などにより腐食し、場合によっては断線するなどのおそれがある。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、金属腐食防止剤としてベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体を含有する金属貼付用粘着シートが開示されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、アルコキシアルキルアクリレート及び架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーを必須成分として構成されるアクリル系ポリマー及び架橋剤を含む粘着剤組成物であって、アクリル系ポリマー中にカルボキシル基含有モノマーを実質的に含まない粘着剤組成物が開示されている。かかる粘着剤組成物によれば、特定量の脂肪族系イソシアネート架橋剤及び複数のヒドロキシル基を含有するアミン系化合物を使用することによって黄変を抑制し、また、アクリル系ポリマーが架橋構造をとることによって、カルボキシル基含有モノマー成分を含まなくても、高温下の耐発泡・剥がれ性を満足することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-45315号公報
【文献】特開2009-079203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
画像表示装置に用いられる構成部材には、高温や高湿環境下において経時的にガス(「アウトガス」とも称する。)を発生する部材が含まれているため、これら画像表示装置の構成部材を粘着シートで貼り合せる場合には、該粘着シートは、アウトガスのガス圧に対して十分に対抗できる耐発泡信頼性を有する必要もある。
【0009】
上記特許文献1の金属腐食防止剤を含有する両面粘着シートでは、金属腐食防止剤が紫外線を照射する耐久性試験で発泡し、光学特性を低下させるなどの問題点があった。
【0010】
上記特許文献2の粘着剤組成物によれば、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを含まないアクリル系ポリマーであっても、高温下の耐発泡・剥がれ性を満足することができるとされているが、腐食の要因である水分の粘着剤中への浸入は防ぐことができないため、金属腐食防止性の観点から必ずしも満足できるものではなかった。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、導電部材を腐食させることなく、また、耐発泡信頼性及び良好な硬化特性を有する導電部材用粘着シートを提供することにある。より具体的には、透明導電層の導電層面や金属材料で形成された導体パターン(配線パターン)と直接貼り合わせても、これらを腐食させることがなく、また、透明導電層の導電層面と絶縁保護膜(パシベーション膜)を介して貼り合わせても透明導電層を腐食させることのない導電部材用粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(メタ)アクリル系共重合体及び1,2,3-トリアゾールを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電部材用粘着シートは、導電部材に対する耐腐食信頼性を有すると共に粘着シートとしての耐発泡信頼性及び良好な硬化特性をも有することができる。そのため、本発明の導電部材用粘着シートは、透明導電層及び/又は銅若しくは銀を含む金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材等の各種導電部材を貼り合わせるのに好適な粘着シートとして用いることができる。とりわけ、タッチパネルを有する画像表示装置用の粘着シートとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】後述する実施例において、耐腐食信頼性の評価試験方法を説明するための図であり、(A)は酸化劣化防止性評価用ITOガラス基板のITOパターンの上面図又は耐腐食信頼性評価用銅ガラス基板の銅パターンの上面図、(B)は酸化劣化防止性評価用ITOガラス基板上に粘着シートを被覆した状態を示した上面図又は耐腐食信頼性評価用銅ガラス基板上に粘着シートを被覆した状態を示した上面図、(C)は酸化劣化防止性評価用サンプルの断面図、(D)は耐腐食信頼性評価用サンプルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。但し、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<導電部材用粘着シート>
本発明の実施形態の一例に係る導電部材用粘着シート(以下、省略して「本粘着シート」とも称する。)は、(メタ)アクリル系(共)重合体及び1,2,3-トリアゾールを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する。
【0017】
かかる粘着剤層は、単層であっても多層であってもよく、また、多層の場合には、いわゆる基材層のような他の層が介在してもよい。粘着剤層が他の層を有する多層構成である場合は、本粘着シートの表面層が前記粘着剤組成物からなる粘着剤層であることが好ましい。
本粘着シートが多層である場合、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層の厚さは限定されないが、本粘着シート全体の厚みに対し10%以上であるのが好ましく、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上である。前記粘着剤組成物からなる粘着剤層の厚さが上記範囲であれば、導電部材に対する耐腐食信頼性、耐発泡信頼性、硬化特性が良好となるため好ましい。
なお、本発明において、「(共)重合体」とは単独重合体及び共重合体を包括する意味であり、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートを包括する意味である。
【0018】
[粘着剤組成物]
本粘着シートに用いる粘着剤組成物(以下、省略して「本組成物」という。)は、(メタ)アクリル系(共)重合体及び1,2,3-トリアゾールを含有する。
本組成物は、さらに亜リン酸エステル化合物、架橋剤、光重合開始剤、酸化防止剤、その他の成分を含有してもよい。
本組成物は光硬化性の組成物であることが好ましい。
【0019】
((メタ)アクリル系(共)重合体)
(メタ)アクリル系(共)重合体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体の他、これと共重合性を有するモノマー成分とを重合することにより得られる共重合体を挙げることができ、より好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートと、これと共重合可能なカルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー及びその他ビニルモノマーの中から選択されるいずれか一つ以上のモノマーとを構成単位として含む共重合体を挙げることができる。
(メタ)アクリル系(共)重合体は、以下に例示したモノマー等を、必要により重合開始剤を用いて常法により製造することができる。
【0020】
(メタ)アクリル系(共)重合体がカルボキシル基含有モノマーを構成単位として含む共重合体である場合、(メタ)アクリル系(共)重合体は、優れた粘着物性を得る観点からカルボキシル基含有モノマーを1.2~15質量%含有するのが好ましく、中でも1.5質量%以上或いは10質量%以下、その中でも2.0質量%以上或いは8質量%以下含有するのがさらに好ましい。
【0021】
より具体的な(メタ)アクリル系(共)重合体の一例として、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート(以下「共重合性モノマーA」とも称する。)と、これと共重合可能な以下の群から選択されるいずれか一つ以上のモノマー成分から構成される共重合体を挙げることができる。
【0022】
・カルボキシル基含有モノマー(以下「共重合性モノマーB」とも称する。)
・マクロモノマー(以下「共重合性モノマーC」とも称する。)
・側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレート(以下「共重合性モノマーD」とも称する。)
・水酸基含有モノマー(以下「共重合性モノマーE」とも称する。)
・その他のビニルモノマー(以下「共重合性モノマーF」とも称する。)
【0023】
また、(メタ)アクリル系(共)重合体の一例として、(a)共重合性モノマーAと、共重合性モノマーB及び/又は共重合性モノマーCとを含むモノマー成分から構成される共重合体や、(b)共重合性モノマーAと、共重合性モノマーB及び/又は共重合性モノマーCと、共重合性モノマーD及び/又は共重合性モノマーEとを含むモノマー成分から構成される共重合体も特に好適な例示として挙げることができる。
【0024】
上記側鎖の炭素数4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート(共重合性モノマーA)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
上記共重合性モノマーAは、共重合体の全モノマー成分中に、30質量%以上90質量%以下含有されることが好ましく、中でも35質量%以上或いは88質量%以下、その中でも特に40質量%以上或いは85質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0026】
上記カルボキシル基含有モノマー(共重合性モノマーB)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。なお、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルを包括する意味である。同様に「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルを包括する意味である。
【0027】
上記共重合性モノマーBは、共重合体の全モノマー成分中に1.2質量%以上15質量%以下、中でも優れた粘着物性を得る観点から1.5質量%以上或いは10質量%以下、その中でも特に2質量%以上或いは8質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0028】
上記マクロモノマー(共重合性モノマーC)は、重合により(メタ)アクリル系(共)重合体となった際に側鎖の炭素数が20以上となるモノマーである。共重合性モノマーCを用いることにより、(メタ)アクリル系(共)重合体をグラフト共重合体とすることができる。従って、共重合性モノマーCと、それ以外のモノマーの選択や配合比率によって、グラフト共重合体の主鎖と側鎖の特性を変化させることが出来る。
【0029】
上記マクロモノマー(共重合性モノマーC)としては、骨格成分がアクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。マクロモノマーの骨格成分としては、例えば、上記共重合性モノマーA、上記共重合性モノマーB、後述の共重合性モノマーD、後述の共重合性モノマーE等に例示されるものが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
マクロモノマーは、ラジカル重合性基、またはヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の官能基を有するものである。マクロモノマーとしては、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。ラジカル重合性基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。マクロモノマーが官能基を有する場合も官能基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。また、ラジカル重合性基と官能基はどちらか一方でも、両方含有していてもよい。
【0031】
共重合性モノマーCの数平均分子量は、500~2万であるのが好ましく、中でも800以上或いは8000以下、その中でも1000以上或いは7000以下であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
上記共重合性モノマーCは、共重合体の全モノマー成分中に5質量%以上30質量%以下、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に8質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0032】
上記側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレート(共重合性モノマーD)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
上記共重合性モノマーDは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上70質量%以下含有されることが好ましく、中でも3質量%以上或いは65質量%以下、その中でも特に5質量%以上或いは60質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0034】
上記水酸基含有モノマー(共重合性モノマーE)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
上記共重合性モノマーEは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0036】
上記その他のビニルモノマー(共重合性モノマーF)としては、共重合性モノマーA~Eを除く、ビニル基を分子内に有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、分子内にアミド基やアルコキシルアルキル基等の官能基を有する官能性モノマー類並びにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類並びに酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びラウリン酸ビニル等のビニルエステルモノマー並びにスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン及びその他の置換スチレン等の芳香族ビニルモノマーを例示することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
上記共重合性モノマーFは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0038】
上記に掲げるものの他、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基又はイミド基を含有するモノマー;ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等も必要に応じて適宜用いることができる。
【0039】
(メタ)アクリル系(共)重合体の最も典型的な例としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリート、デシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート等のモノマー成分(a)と、カルボキシル基をもつ(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等のモノマー成分(b)と、有機官能基等をもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、フッ素化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のモノマー成分(c)と、を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0040】
(メタ)アクリル系(共)重合体の質量平均分子量は、10万以上150万以下、中でも15万以上或いは130万以下、その中でも特に20万以上或いは120万以下であることが好ましい。
【0041】
凝集力の高い粘着組成物を得たい場合は、分子量が大きい程分子鎖の絡み合いにより凝集力が得られる観点から、(メタ)アクリル系(共)重合体の質量平均分子量は70万以上150万以下、特に80万以上或いは130万以下であることが好ましい。一方、流動性や応力緩和性の高い粘着組成物を得たい場合は、質量平均分子量は10万以上70万以下、特に15万以上或いは60万以下であることが好ましい。
他方、粘着シート等を成形する際に溶剤を使用しない場合には、分子量が大きなポリマーを使用することが難しいため、(メタ)アクリル系(共)重合体の質量平均分子量は10万以上70万以下、特に15万以上或いは60万以下、中でも特に20万以上或いは50万以下であることが好ましい。
【0042】
(金属腐食防止剤)
本組成物は1,2,3-トリアゾールを含有する。
1,2,3-トリアゾールは、導電部材の導電層に対する金属腐食防止剤としての機能を有する。1,2,3-トリアゾールは、銅に対する耐銅腐食信頼性及び粘着シートとしての耐発泡信頼性に優れることから、1,2,3-トリアゾールを含有する本組成物は、透明導電層及び銅を含む金属材料で形成された導体パターン(配線パターン)を有する導電部材として好適に使用することができる。その理由は、銅を含む金属材料で形成された導体パターン表面に、銅原子と1,2,3-トリアゾールの分子が化学的に結合した保護皮膜が形成されることで、腐食を防止するものと推察されるからである。また、銀を含む金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材においても、1,2,3-トリアゾールによる保護皮膜の効果は同様に奏することができる。
【0043】
なお、1,2,3-トリアゾールの異性体として1,2,4-トリアゾールが存在する。この1,2,4-トリアゾールは融点が約120℃の固体である一方、1,2,3-トリアゾールは融点が約20℃と室温でほぼ液体状態である。よって、1,2,3-トリアゾールは、粘着剤組成物中に混合する際の分散性に優れ、均一に混合することができ、また、マスターバッチ化しやすい等の優れた利点がある。
【0044】
本組成物において、金属腐食防止剤のブリードアウトや金属腐食防止効果などの観点から、1,2,3-トリアゾールは、(メタ)アクリル系(共)重合体100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下の割合で含有されることが好ましく、中でも0.1質量部以上或いは1質量部以下、その中でも0.2質量部以上或いは0.5質量部以下の割合で含有されることがより一層好ましい。
【0045】
なお、本組成物には、1,2,3-トリアゾールとともに1,2,4-トリアゾールを併用してもよい。
【0046】
(亜リン酸エステル化合物)
本組成物は、さらに亜リン酸エステル化合物を含有することができる。
亜リン酸エステル化合物はそれ自体が腐食性を有さないばかりか、カルボキシル基などの酸成分を安定化させることができる。そのため、所定の(メタ)アクリル系(共)重合体を含む本組成物に亜リン酸エステル化合物を配合することにより、本組成物が酸成分を含んでいても、被着体である導電部材の酸化劣化を防止することができるし、本組成物が酸成分を含んでいない場合は勿論、被着体である導電部材の酸化劣化を防止することができる。
よって、亜リン酸エステル化合物を含有する本組成物から粘着シートを形成すれば、導電部材(典型的にはITOを含む透明導電層及び/又は銅や銀を含む金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材)に対する耐腐食信頼性を有すると共に、導電部材の酸化劣化を防止することができる。よって、例えばタッチパネルを有する画像表示装置用の粘着シートとして好適に用いることができる。
【0047】
本組成物に含有することが可能な亜リン酸エステル化合物は限定されない。中でも、下記式(1)で示される亜リン酸エステル化合物であるのが好ましい。
【0048】
式(1)・・P[-OR]3
(式中のRは炭化水素であり、具体的には、置換又は非置換芳香族、脂肪環及びアルキル基などが挙げることができる。複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣接した複数のRは、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよい。)
また、上記式(1)で表される構造単位を2個以上含む化合物であってもよい。
【0049】
所定の(メタ)アクリル系(共)重合体及び1,2,3-トリアゾールを含む本組成物に、上記式(1)で示される様々な亜リン酸エステル化合物を配合した結果、いずれの亜リン酸エステル化合物も酸化劣化防止効果を示すことが確認され、特にITOを含む透明導電層に対する酸化劣化防止効果に優れていることが確認された。
【0050】
本組成物が含有する亜リン酸エステル化合物としては、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリスノニルフェニル、亜リン酸トリクレジル、亜リン酸トリステアリル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリス(2-エチルヘキシル)、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリス(トリデシル)、亜リン酸トリオレイル、亜リン酸ジフェニル(2-エチルヘキシル)、亜リン酸ジフェニルモノデシル、亜リン酸ジフェニルモノ(トリデシル)、テトラフェニルジプロピレンジプロピレングリコールジフォスファイト、テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、テトラ(C12~C15アルキル)-4,4-イソプロピリデンジフェニルジフォスファイト、亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(4-ノニルフェニル)、3,9-ビス(ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(4-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(デシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(トリデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(ステアリルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノキシ}-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)フォスファイト、4,4’-イソプロピリデンジフェノールC12-15アルコールホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-{(2-エチルヘキシル)オキシ}-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサフォスフォシン、2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-(トリデシルオキシ)-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサフォスフォシン、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイルビス[亜リン酸ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)]、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマー、水添ビスフェノールAフォスファイトポリマー、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、亜リン酸ジラウリル、亜リン酸ジオレイル、亜リン酸ジフェニル等を挙げることができる。
【0051】
中でも、本組成物が含有する亜リン酸エステル化合物としては、例えば本組成物との相溶性を考慮すると、脂肪族亜リン酸エステル(例えば、実施例2-2の亜リン酸エステル化合物として亜リン酸トリデシルや実施例2-3の3,9-ビス(デシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンなど)が好ましい。また、耐加水分解性を考慮すると、芳香族亜リン酸エステル(例えば、実施例2-1の亜リン酸エステル化合物としての亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)など)が好ましい。また、溶解性と耐加水分解性とのバランスを考慮すれば、亜リン酸ジフェニルモノ(トリデシル)等の脂肪族エステル基と芳香族エステル基とを併せ持つ亜リン酸エステルが好ましい。
【0052】
本組成物において、亜リン酸エステル化合物の含有割合は、粘着性能を損なわず、ITOなどの導電部材の酸化劣化をより効果的に抑制することができる観点から、(メタ)アクリル系(共)重合体100質量部に対し、亜リン酸エステル化合物が0.0001(1×10-4)質量部以上2.0質量部以下の割合で含有されることが好ましく、中でも0.0005質量部以上或いは0.8質量部以下、その中でも0.001質量部以上或いは0.7質量部以下、特には0.01質量部以上或いは0.6質量部以下の割合で含有されることがより一層好ましい。
【0053】
(その他の金属腐食防止剤)
本組成物には、1,2,3-トリアゾール及び亜リン酸エステル化合物以外に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体等、その他の金属腐食防止剤を併用してもよい。
【0054】
(架橋剤)
本組成物は必要に応じて架橋剤を含んでもよい。
例えば、上記した(メタ)アクリル系(共)重合体を架橋する方法としては、(メタ)アクリル系(共)重合体中に導入した水酸基やカルボキシル基等の反応性基と化学結合しうる架橋剤を添加し、加熱や養生により反応させる方法や、架橋剤としての(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート及び光重合開始剤等の反応開始剤を添加し、紫外線照射等によって架橋する方法を挙げることができる。中でも、本組成物中のカルボキシル基等の極性官能基を反応によって消費せず、極性成分由来の高い凝集力や粘着物性を維持できる観点から、紫外線等の光照射による架橋方法が好ましい。
【0055】
上記架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、N-置換(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0056】
中でも、架橋反応の制御のし易さの観点からは、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類や、多官能アクリルアミド等を挙げることができる。
【0057】
また、2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1'-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基またはブロックイソシアネート基を含有するモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の各種シランカップリング剤を挙げることができる。
【0058】
2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤は、一方の官能基を(メタ)アクリル系(共)重合体と反応させ、(メタ)アクリル系(共)重合体に結合された構造をとってもよい。このような構造をとることにより、(メタ)アクリル系(共)重合体に、例えば(メタ)アクリロイル基やビニル基等の二重結合性の架橋性官能基を化学結合させることができる。また、架橋剤が(メタ)アクリル系(共)重合体に結合されることで、架橋剤のブリードアウトや、本粘着シートの予期せぬ可塑化を抑制することができる傾向にある。また、架橋剤が(メタ)アクリル系(共)重合体に結合されることで、光架橋反応の反応効率が促進されることから、より凝集力の高い硬化物を得ることができる傾向にある。
【0059】
本組成物は、架橋剤の架橋性官能基と反応する単官能モノマーをさらに含有してもよい。このような単官能モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等を挙げることができる。
中でも被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0060】
架橋剤の含有量は、本組成物の柔軟性と凝集力をバランスさせる観点から、前記(メタ)アクリル系(共)重合体100質量部に対して、0.01以上10質量部以下の割合で配合するのが好ましく、中でも0.05質量部以上或いは8質量部以下、その中でも0.1質量部以上或いは5質量部以下であることが特に好ましい。
なお、本粘着シートが多層である場合は、粘着シートを構成する層のうち、中間層や基材となる層については、架橋剤の含有量が上記範囲を超えていてもよい。中間層や基材となる層における架橋剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系(共)重合体100質量部に対して、0.01以上40質量部以下の割合で配合するのが好ましく、中でも1質量部以上或いは30質量部以下、その中でも2質量部以上或いは25質量部以下であることが特に好ましい。
【0061】
(光重合開始剤)
光照射による架橋を行う場合は光重合開始剤を含有するのが好ましい。
光重合開始剤によるラジカル発生機構は大きく2つに分類され、自身の単結合を開裂し分解してラジカルを発生させるα開裂型と、系中の化合物から水素を励起させラジカルを発生させる水素引抜型とがある。これらの中でも水素引抜型光架橋開始剤を用いることが好ましい。
【0062】
中でも、架橋剤として(メタ)アクリロイル基を有する有機系架橋剤を用いる場合は、特に光重合開始剤をさらに添加するのが好ましい。光照射によりラジカルを発生させて系中の重合反応の起点となるためである。
【0063】
光重合開始剤は、現在公知のものを適宜使用することができる。中でも、波長380nm以下の紫外線に感応する光重合開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
一方、波長380nmより長波長の光に感応する光重合開始剤は、高い光反応性を得られる点及び、感応する光が、本粘着シートの深部まで到達しやすい点で好ましい。
【0064】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0065】
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると架橋開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着材中に活性種として残存することがなく、粘着材に予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
他方、水素引抜型光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0066】
前記開裂型光重合開始剤としては、光に対する感応性が高く、かつ反応後に分解物となり消色する点で、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。
【0067】
前記水素引抜型光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、カンファーキノンやその誘導体などを挙げることができる。
これらの中でも、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチルが好ましい。
【0068】
なお、上記に挙げた光重合開始剤は、いずれか1種またはその誘導体を使用してもよいし、それらを2種以上を組み合わせて使用してもよい。
さらに、光重合開始剤に加えて増感剤を使用することも可能である。増感剤としては、特に限定はなく、光重合開始剤に用いられる増感剤であれば問題なく使用できる。例えば芳香族アミンやアントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、クマリン誘導体、チオキサントン誘導体、フタロシアニン誘導体等や、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ミヒラーケトン、9,10-フェナントラキノンなどの芳香族ケトン及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
なお、光重合開始剤や増感剤は、(メタ)アクリル系(共)重合体に結合された状態で含まれていてもよい。光重合開始剤や増感剤を(メタ)アクリル系(共)重合体に結合させる方法としては、前記架橋剤を(メタ)アクリル系(共)重合体に結合させる場合と同様の方法を採用することができる。
【0069】
光重合開始剤の含有量は、特に制限されるものではなく、典型的には、(メタ)アクリル系(共)重合体100質量部に対して0.1以上10質量部以下、中でも0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で調整することが特に好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0070】
(酸化防止剤)
上記以外にも、本組成物は必要に応じて酸化防止剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコール-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、テトラキス〔メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)〕メタン、トリエチレングリコール-ビス-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル)ベンゼン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェノール)プロピオネート、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(6-t-ブチル-3-メチル-フェノール)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤や、硫黄系、アミン系等の各種酸化防止剤が挙げられる。
【0071】
(その他の成分)
さらに、本組成物は、通常の粘着剤組成物に配合される公知の成分を適宜含有してもよい。例えば、光安定化剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、防錆剤(前記した金属腐食防止剤を除く)、老化防止剤、帯電防止剤、吸湿剤、発泡剤、消泡剤、無機粒子、粘度調整剤、粘着付与樹脂、光増感剤、蛍光剤などの各種の添加剤や、反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有させることが可能である。
【0072】
(粘着剤組成物の調整)
本粘着シートに用いる粘着剤組成物(本組成物)は、(メタ)アクリル系(共)重合体、1,2,3-トリアゾール及び必要に応じてその他の成分、例えば亜リン酸エステル化合物、架橋剤などをそれぞれ所定量混合することにより得られる。
これらの混合方法としては、特に制限されず、各成分の混合順序も特に限定されない。また、本組成物製造時に熱処理工程を入れてもよく、この場合は、予め、本組成物の各成分を混合してから熱処理を行うことが望ましい。各種の混合成分を濃縮してマスターバッチ化したものを使用してもよい。
【0073】
また、混合する際の装置も特に制限されず、例えば、万能混練機、プラネタリミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ゲートミキサー、加圧ニーダー、三本ロール、二本ロールを用いることができる。必要に応じて溶剤を用いて混合してもよい。また、本組成物は、溶剤を含まない無溶剤系として使用することできる。無溶剤系として使用することで溶剤が残存せず、耐熱性及び耐光性が高まるという利点を備えることができる。
【0074】
さらに、本組成物は、(メタ)アクリル系(共)重合体を構成するモノマー成分、1,2,3-トリアゾール、光重合開始剤及びその他の任意成分を含む組成物としておき、これを導電部材用粘着シートとして使用する際に、光照射し重合反応を進行させて(メタ)アクリル系(共)重合体が生成されるようにして使用することもできる。
【0075】
<導電部材用粘着シートの形態>
本粘着シートは、被着体に本組成物を直接塗布し、シート状に形成して使用する以外にも、離型フィルム上に単層又は多層のシート状に成型した離型フィルム付き粘着シートとすることもできる。
かかる離型フィルムの材質としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの中でも、ポリエステルフィルム及びポリオレフィンフィルムが特に好ましい。
【0076】
離型フィルムの厚みは特に制限されない。中でも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、25μm~500μmであるのが好ましく、その中でも38μm以上或いは250μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0077】
なお、本粘着シートは、上記の様に被着体や離型フィルムを使用せずに、本組成物を直接に押出成形する方法や、型に注入することによって成形する方法を採用することも出来る。更には、導電部材等の部材間に本組成物を直接充填することによって、粘着シートの態様とすることも出来る。
【0078】
<導電部材用粘着シートの物性>
(導電部材の導電層に対する腐食防止効果)
本粘着シートは、導電部材、とりわけ透明導電層や銅を含む金属材料で形成された導体パターンに対する腐食防止性を有している。そのため、以下の(1)~(2)の方法で測定したITO抵抗値の変化率[((Ω/Ω0)-1)×100]を5%未満、中でも3%未満とすることができる。また、以下の(3)~(4)の方法で測定した銅抵抗値の変化率[((Ω/Ω0)-1)×100]を20%未満、中でも10%未満、更には5%未満、特には3%未満とすることができる。
【0079】
(1)導電部材用粘着剤組成物(本組成物)を厚さ150μmのシート状に製膜して粘着シートとし、酸化インジウム(ITO)からなるITO配線がガラス基板上に形成されてなる評価用ITOガラス基板に、前記粘着シートを貼合させて粘着シート付ITO配線を作製する。
【0080】
(2)前記粘着シート付ITO配線におけるITO配線の室温での抵抗値(Ω0)を予め測定しておき、65℃・90%RH環境下で500時間、前記粘着シート付ITO配線を保管し、前記粘着シート付ITO配線におけるITO配線の前記保管後の抵抗値(Ω)を測定する。
【0081】
(3)導電部材用粘着剤組成物(本組成物)を厚さ150μmのシート状に製膜して粘着シートとし、銅配線がガラス基板上に形成されてなる評価用銅ガラス基板に、前記粘着シートを貼合させて粘着シート付銅配線を作製する。
【0082】
(4)前記粘着シート付銅配線における銅配線の室温での抵抗値(Ω0)を予め測定しておき、65℃・90%RH環境下で500時間、前記粘着シート付銅配線を保管し、前記粘着シート付銅配線における銅配線の前記保管後の抵抗値(Ω)を測定する。
【0083】
(透明性)
本粘着シートは、光学的に透明であることが好ましい。つまり、透明粘着シートであることが好ましい。ここで、「光学的に透明」とは、全光線透過率は80%以上であることを意図し、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0084】
(厚さ)
本粘着シートの厚さは、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、中でも15μm以上或いは400μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に20μm以上或いは350μm以下であるのことがさらに好ましい。
【0085】
<導電部材用粘着シートの用途>
本粘着シートは、例えば、パーソナルコンピューター、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレットなどの画像表示装置、例えばプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、無機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)などの画像表示パネルを用いた画像表示装置において、各構成部材、中でも導電部材、その中でも透明導電層及び/又は銅を含む金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材を貼り合わせるのに好適である。また、ITO若しくはIGZOを含む透明導電層及び/又は銅や銀を含む金属材料で形成された導体パターンを有する透明導電層を含む導電部材を貼り合わせるのにも好適である。
【0086】
<導電部材積層体>
本発明の導電部材積層体(以下、省略して「本積層体」とも称する。)は、本粘着シートと、導電部材、例えば、透明導電層の導電層面とを貼り合わせることにより得ることができる。
本積層体は、少なくとも本粘着シートの何れか一方の粘着剤層面と透明導電層の導電層面とが貼り合わせた構成を有するものであればよい。
本粘着シートが両面粘着シートの場合には、本積層体は本粘着シートの両方の粘着剤層面と透明導電層の導電層面とが貼り合わされた構成を有するものであってもよい。
【0087】
上記透明導電層は、その導電膜の導電層面を覆うようにオレフィン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、あるいは無機ガラス等による絶縁保護膜(パシベーション膜)が形成されていてもよい。
この場合、本粘着シートは、透明導電層面と直接貼り合わされない(透明導電層面と直接接していない)。本粘着シートは、本組成物に由来する成分(特に酸成分)が浸透して該絶縁膜から透明導電層に到達したとしても、1,2,3-トリアゾールの作用により透明導電層が腐食することを防止することができる。特に1,2,3-トリアゾールは水溶性が高く、湿熱環境下において本粘着シートが吸湿した際に透明導電層に移動しやすいため、優れた金属腐食防止効果を奏することができる。
このように、本粘着シートによると、絶縁保護膜の有無に関わらず、被着体の金属イオンによる粘着剤層の変色や変質のみならず、被着体に対する優れた金属腐食防止効果も奏することができる。
【0088】
導電層面と貼り合わせて得られる本積層体は、タッチパネルに好適に用いることができる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式等の方式のものが挙げられるが、静電容量方式であることが好ましい。
【0089】
上記透明導電層としては、少なくとも片面の表層に導電層を有するものであればよく、透明基材の表層に導電物質が蒸着やスパッタ、コーティング等により設けられた透明導電層を挙げられる。
透明導電層の導電層に用いられる導電物質は特に限定されず、具体的には、酸化インジウム、インジウム・ガリウム・亜鉛複合酸化物、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化チタン等の金属酸化物の他、銀、銅、モリブデン、アルミニウム等の金属材料が挙げられる。中でも、透明性に優れる、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びインジウム・ガリウム・亜鉛複合酸化物(IGZO)が好適に用いられる。また、導電性に優れる観点から、銅や銀も好適に用いることができる。透明導電層において、導電物質がパターン形成される基材としては、特に限定されるものではないが、ガラス、樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0090】
透明導電層は、典型的には、少なくとも片面の表層に導電層を有する。また、典型的には、透明導電層には周辺部を引き回すように銅や銀を主成分とする導体パターン(配線パターン)が形成される。1,2,3-トリアゾールは、中でも銅に対する耐腐食信頼性が高いことから、これを含む本粘着シートは、特に、銅を含む金属材料で形成された導体パターンを備えた導電部材に対して好適に使用することができる。
【0091】
その他の本積層体の具体例としては、例えば離型フィルム/本粘着シート/タッチパネル、離型フィルム/本粘着シート/保護パネル、離型フィルム/本粘着シート/画像表示パネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/保護パネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成を挙げることができる。また、上記の構成において、本粘着シートと、これと隣接するタッチパネル、保護パネル、画像表示パネル、偏光フィルム等の部材との間に前記の導電層を介入する全ての構成を挙げることができる。但し、これらの積層例に限定されるものではない。
なお、上記タッチパネルには、保護パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体や、画像表示パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体も含む。
【0092】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置(以下、省略して「本装置」とも称する。)は、少なくとも本積層体、画像表示パネル及び表面保護パネルを構成部材として有するものである。
【0093】
より具体的には、本粘着シートを透明導電層の導電層面と貼り合わせて得られる本積層体が、画像表示パネルと表面保護パネルとの間に介挿された構成の画像表示装置を挙げることができる。この際、画像表示パネル側にも本粘着シートを用いることができる。
【0094】
表面保護パネルの材質としては、ガラスの他、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィンポリマー等の脂環式ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等のプラスチックであってもよい。
【0095】
画像表示パネルは、偏光フィルムその他位相差フィルム等の他の光学フィルム、液晶材料及びバックライトシステムから構成される(通常、本組成物又は粘着物品の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる。)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。
【0096】
本画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイなどの画像表示装置を構成することができる。
【0097】
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0098】
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0100】
<(メタ)アクリル系(共)重合体>
(メタ)アクリル系(共)重合体は、以下のものを用いた。
・A-1: 2-エチルヘキシルアクリレート76質量部、酢酸ビニル20質量部及びアクリル酸4質量部からなる共重合体(質量平均分子量40万)
・A-2: ブチルアクリレート81質量部、メチルメタクリレート15質量部及びアクリル酸4質量部からなる共重合体(質量平均分子量20万)
【0101】
<実施例1>
[実施例1-1]
(メタ)アクリル系(共)重合体(A-1)1kgに対して、金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾール(大塚化学社製)3g、光重合開始剤として4-メチルベンゾフェノンと2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの混合物(Lamberti社製、商品名「エザキュアTZT」)15gを添加して均一混合し、粘着剤層用樹脂組成物を得た。
【0102】
粘着剤層用樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRV」、厚さ100μm及び、三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)で挟み、粘着シートの厚さが150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0103】
[実施例1-2]
(メタ)アクリル系(共)重合体(A-2)1kgに対し、金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾール3g、架橋剤として紫外線硬化樹脂プロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村工業株式会社、商品名「ATM-4PL」)20g、光重合開始剤として4-メチルベンゾフェノンと2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの混合物(Lamberti社製、商品名「エザキュアTZT」)15gを添加し、均一混合して、粘着剤層用樹脂組成物を得た。
【0104】
次に、前記粘着剤層用樹脂組成物を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRV」、厚さ100μm)上に厚さ150μmとなるようシート状に成形した後、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)を被覆して、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0105】
[実施例1-3]
金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾール5gを用いる以外は、実施例1-2と同様にして粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0106】
[比較例1-1]
金属腐食防止剤としての1,2,3-トリアゾールを加えない以外は、実施例1-1と同様にして、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0107】
[比較例1-2]
金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾールの代わりにベンゾトリアゾール(城北化学社製、商品名「BT120」)5gを用いる以外は実施例1-1と同様にして、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0108】
[比較例1-3]
金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾールの代わりにトリルトリアゾール(4-メチルベンゾトリアゾールと5-メチルベンゾトリアゾールの混合物)(シプロ化成社製、商品名「SEETEC TT-R」)5gを用いる以外は、実施例1-1と同様にして、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0109】
[比較例1-4]
金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾールの代わりに2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(東洋紡社製、商品名「MTD」)5gを用いる以外は、実施例1-1と同様にして、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0110】
<各種評価>
(1)耐腐食信頼性
ガラス基板(60mm×45mm)上に、線巾70μm、線長さ46mm、線間隔30μmで、10.5往復するように、厚さ1300ÅのITO、厚さ3000Åの銅膜をこの順に積層してなる金属膜の往復線を形成すると共に、該往復線の両末端に2mm角の正方形を形成して銅パターン(長さ約97cm)を形成し、耐腐食信頼性評価用銅ガラス基板を作製した(
図1(A)を参照)。
【0111】
上記実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体(粘着シート厚さ150μm)の片面の剥離フィルムを剥がし、その露出面にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製、商品名「コスモシャインA4100」、125μm)をハンドローラーにて貼着した。次に、前記PETフィルム付き粘着シートを52mm×45mmに切り出した後、残る剥離フィルムを剥がして、
図1(B)に示すように、金属膜の往復線上を被覆するように、耐腐食信頼性評価用銅ガラス基板に該粘着シートをハンドローラーにて貼着し、さらに、PETフィルムを介して、波長365nmの積算光量が実施例1-1及び比較例1-1~1-4は3000mJ/cm
2、実施例1-2及び1-3は2000mJ/cm
2となるよう高圧水銀ランプにて紫外線を照射し、紫外線架橋させて、耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)を作製した(
図1(D)参照)。
【0112】
この耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)における銅配線の室温での抵抗値(Ω0)を予め測定した。
【0113】
他方、当該耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)を、65℃・90%RH環境下で500時間保管し、保管後、耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)における銅配線の抵抗値(Ω)を測定した。
【0114】
そして、銅抵抗値すなわち線末端間抵抗値の変化率(%)[((Ω/Ω0)-1)×100]を算出し、表1には「抵抗値変化」として示した。
【0115】
耐腐食信頼性について、抵抗値の変化率が20%以上のものを「×(poor)」、20%未満を「○(good)」と判定した。結果は表1に示す。
【0116】
(2)耐発泡信頼性
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体(厚さ150μm)の片面の剥離フィルムを剥がしソーダライムガラス板(150×200mm、厚さ0.55mm)にハンドロールにて貼合した。さらに、残った剥離フィルムを剥がし、化学強化ガラス板(180×220mm、厚さ0.6mm)をそらせながらハンドロールで貼合した。
【0117】
次に、貼合品を60℃、0.2MPa環境下に20分間おいてオートクレーブ処理した。このサンプルを、メタルハライドランプ照射装置(ウシオ電機社製、形式UVC-0516S1、ランプUVL-8001M3-N)を用いて、照射1回につき波長365nmにおける照射量が3000mJ/cm2になるようにベルトコンベア速度・放射照度を調整し、15回照射を行った後、外観の変化を観察した。
【0118】
耐発泡信頼性について、外観を観察したときに、紫外線照射前と変化がないものを「○(good)」、気泡が発生しているものを「×(poor)」として判定した。結果は表1に示す。
【0119】
(3)紫外線硬化特性
(紫外線硬化前貯蔵弾性率G’)
紫外線硬化前の貯蔵弾性率は、実施例及び比較例で作製した粘着シートを1~2mm厚みになるよう積層したものを直径20mmの円状に打ち抜いたものを測定試料とし、レオメータ(英弘精機株式会社製「MARS」)を用いて、粘着治具:Φ25mmパラレルプレート、歪み:0.5%、周波数:1Hz、温度:-50~200℃、昇温速度:3℃/minで、-50℃~200℃までの動的貯蔵弾性率G’を測定し、125℃における貯蔵弾性率値を読み取ることで求めた。結果は表1に示す。
【0120】
(紫外線硬化後貯蔵弾性率G’)
紫外線硬化後の貯蔵弾性率は次のように測定した。
実施例及び比較例で作製した粘着シートを、PETフィルムを介して、高圧水銀ランプにて紫外線を照射して紫外線架橋させた。この際、実施例1-1及び比較例1-1~1-4については、波長365nmの積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、実施例1-2及び1-3は当該積層光量が2000mJ/cm2となるように照射した。このように紫外線架橋させた粘着シートを1~2mm厚みになるよう積層し、直径20mmの円状に打ち抜いたものを測定試料とした。
レオメータ(英弘精機株式会社製、商品名「MARS」)を用いて、粘着治具:Φ25mmパラレルプレート、歪み:0.5%、周波数:1Hz、温度:-50~200℃、昇温速度:3℃/minで、-50℃~200℃までの当該測定試料の動的貯蔵弾性率G’を測定し、125℃における貯蔵弾性率値を読み取ることで、紫外線硬化後の貯蔵弾性率を求めた。結果は表1に示す。
【0121】
紫外線硬化特性について、紫外線硬化前貯蔵弾性率G’と紫外線硬化後貯蔵弾性率G’を比較し、硬化後の値が有意に上昇しているものを「○(good)」、値にほとんど変化がないものを「×(poor)」として判定した。結果は表1に示す。
【0122】
【0123】
(評価結果)
実施例1-1~1-3の粘着シートは、金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾールを含有することで、銅配線の抵抗値の変化が少なく、耐腐食信頼性に優れるものであった。また、耐発泡信頼性、紫外線硬化特性も良好であった。
【0124】
一方、比較例1-1は、金属腐食防止剤を含まず、耐腐食信頼性に劣るものであった。
比較例1-2は、金属腐食防止剤としてベンゾトリアゾールを含むが、ベンゾトリアゾールの特性により耐発泡信頼性に劣るものであった。
比較例1-3は、金属腐食防止剤としてトリルトリアゾールを含むが、トリルトリアゾールの特性により耐発泡信頼性に劣るものであった。
比較例1-4は、金属腐食防止剤としてジメルカプトチアジアゾールを含むが、ジメルカプトチアジアゾールは紫外線を吸収するため、粘着シートは紫外線硬化特性に劣るものであった。
【0125】
以上の結果より、1,2,3-トリアゾールは融点が約20℃であり、常温ではほぼ液体であるため、粘着シートの実製造工程において、粘着主剤への添加が容易であり、また、粘着主剤への分散性にも優れることが分かった。
また、1,2,3-トリアゾールは、水溶性が高く、湿熱環境下において粘着シートが吸湿した際に、金属層(銅配線)の表面に移動しやすいため、優れた金属腐食防止効果を発揮することができることも明らかとなった。
また、1,2,3-トリアゾールは、波長300~400nmの分光光度で吸収がないため、UV硬化特性を阻害しないことも明らかとした。
このように、1,2,3-トリアゾールは、従来の金属腐食防止剤と比べて優れた特性を持ち、特に導電部材用の粘着シートに用いると効果的であることを見出した。
【0126】
<実施例2>
[実施例2-1]
(メタ)アクリル系(共)重合体(A-1)1kgに対して、架橋剤としてプロポキシ化ペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「ATM-4PL」)200g、光重合開始剤として4-メチルベンゾフェノンと2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの混合物(Lamberti社製、商品名「エザキュアTZT」)10gを添加して均一混合し、中間層用樹脂組成物を得た。
【0127】
中間層用樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm及び、三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、粘着シートの厚さが80μmとなるようシート状に賦形し、中間層用樹脂シート(α)を作製した。
【0128】
(メタ)アクリル系(共)重合体(A-1)1kgに対して、金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾール1.5g、亜リン酸エステル化合物として亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)(BASF社製、商品名「イルガフォス168」)5g及び光重合開始剤として4-メチルベンゾフェノンと2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの混合物(Lamberti社製、商品名「エザキュアTZT」)15gを添加して均一混合し、粘着剤層用樹脂組成物を得た。
【0129】
前記粘着剤層用脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRV」、厚さ100μm及び、三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、粘着シートの厚さが35μmとなるようシート状に賦形し、粘着剤層用樹脂シート(β)を作製した。
【0130】
さらに、前記粘着剤層用脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm及び、三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、粘着シートの厚さが35μmとなるようシート状に賦形し、粘着剤層用樹脂シート(β’)を作製した。
【0131】
前記中間層用シート(α)の両側のPETフィルムを順次剥離除去すると共に、粘着剤層用樹脂シート(β)及び(β’)の一側のPETフィルムを剥がして、露出した粘着面を中間層用シート(β)の両表面に順次貼合し、(β)/(α)/(β’)からなる積層体を作製した。
【0132】
前記(β)及び(β’)の表面に残るPETフィルムを介して、波長365nmの積算光量が2000mJ/cm2となるよう高圧水銀ランプにて紫外線を照射し、(α)、(β)及び(β’)を紫外線架橋させて、粘着シート積層体(厚さ150μm)を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表2に示す。
【0133】
[実施例2-2]
(メタ)アクリル系(共)重合体(A-2)1kgに対し、金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾール3g、亜リン酸エステル化合物として亜リン酸トリデシル(アデカ社製、商品名「アデカスタブ3010」)3g、架橋剤としてペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(東亜合成社製、「アロニックスM-306」)20g、並びに光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、イルガキュア184)10gを添加し、均一混合して、粘着剤層用樹脂組成物を得た。
【0134】
次に、前記粘着剤層用樹脂組成物を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV、厚さ100μm)上に厚さ150μmとなるようシート状に成形した後、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)を被覆した。剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを介して、波長365nmの積算光量が1000mJ/cm2となるよう高圧水銀ランプにて紫外線を照射して粘着剤層用樹脂組成物を紫外線架橋させて、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表2に示す。
【0135】
[実施例2-3]
亜リン酸エステル化合物として3,9-ビス(デシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(城北化学社製、商品名「JPE-10」)3gを用いる以外は、実施例2-2と同様にして粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表2に示す。
【0136】
[比較例2-1]
金属腐食防止剤としての1,2,3-トリアゾール及び亜リン酸エステル化合物としての亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)(BASF社製、商品名「イルガフォス168」)を加えない以外は、実施例2-1と同様にして、粘着シート積層体を作製したかかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表2に示す。
【0137】
[比較例2-2]
金属腐食防止剤としての1,2,3-トリアゾールを加えない以外は実施例2-1と同様にして、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表2に示す。
【0138】
[比較例2-3]
金属腐食防止剤として、1,2,3-トリアゾールの代わりにベンゾトリアゾール(城北化学社製、商品名「BT120」)1.5gを添加し、亜リン酸エステル化合物を加えない以外は、以外は実施例2-1と同様にして、粘着シート積層体を作製した。かかる粘着シート積層体について、下述する各種評価を行った。結果は表2に示す。
【0139】
<各種評価>
(1)酸化劣化防止性
ガラス基板(60mm×45mm)上に、厚さ150~200Å、線巾70μm、線長さ46mm、線間隔30μmで10.5往復するように酸化インジウム(ITO)の往復線を形成すると共に、該往復線の両末端にITOからなる2mm角の正方形を形成してITOパターン(長さ約97cm)を形成し、酸化劣化防止性評価用ITOガラス基板を作製した(
図1(A)を参照)。
【0140】
上記実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体(厚さ150μm)の片面の剥離フィルムを剥がし、その露出面にPETフィルム(東洋紡績社製、商品名「コスモシャインA4100」、125μm)をハンドローラーにて貼着した。次に、前記PETフィルム付き粘着シートを52mm×45mmに切り出した後、残る剥離フィルムを剥がして、
図1(B)に示すように、ITOの往復線上を被覆するように、酸化劣化防止性評価用ITOガラス基板に該粘着シートをハンドローラーにて貼着し、酸化劣化防止性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)を作製した(
図1(C)参照)。
【0141】
この酸化劣化防止性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)におけるITO配線の室温での抵抗値(Ω0)を予め測定した。
【0142】
他方、当該酸化劣化防止性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)を、65℃・90%RH環境下で500時間保管し、保管後、耐酸化劣化防止性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)におけるITO配線の抵抗値(Ω)を測定した。
【0143】
そして、ITO抵抗値すなわち線末端間抵抗値の変化率(%)[((Ω/Ω0)-1)×100]を算出し、表2には「抵抗値変化」として示した。
【0144】
酸化劣化防止性について、抵抗値の変化率が5%以上のものを「×(poor)」、5%未満を「○(good)」と判定した。結果は表2に示す。
【0145】
(2)耐腐食信頼性
ガラス基板(60mm×45mm)上に、線巾70μm、線長さ46mm、線間隔30μmで、10.5往復するように、厚さ1300ÅのITO、厚さ3000Åの銅膜をこの順に積層してなる金属膜の往復線を形成すると共に、該往復線の両末端に2mm角の正方形を形成して銅パターン(長さ約97cm)を形成し、耐腐食信頼性評価用銅ガラス基板を作製した(
図1(A)を参照)。
【0146】
上記実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体(厚さ150μm)の片面の剥離フィルムを剥がし、その露出面にPETフィルム(東洋紡績社製、商品名「コスモシャインA4100」、125μm)をハンドローラーにて貼着した。次に、前記PETフィルム付き粘着シートを52mm×45mmに切り出した後、残る剥離フィルムを剥がして、
図1(B)に示すように、金属膜の往復線上を被覆するように、耐腐食信頼性評価用銅ガラス基板に粘着シートをハンドローラーにて貼着し、耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)を作製した(
図1(D)参照)。
【0147】
この耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)における銅配線の室温での抵抗値(Ω0)を予め測定した。
【0148】
他方、当該耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)を、65℃・90%RH環境下で500時間保管し、保管後、耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付銅配線)における銅配線の抵抗値(Ω)を測定した。
【0149】
そして、銅抵抗値すなわち線末端間抵抗値の変化率(%)[((Ω/Ω0)-1)×100]を算出し、表2には「抵抗値変化」として示した。
【0150】
耐腐食信頼性について、抵抗値の変化率が20%以上のものを「×(poor)」、20%未満を「○(good)」と判定した。結果は表2に示す。
【0151】
【0152】
(評価結果)
実施例2-1~2-3の粘着シートは、金属腐食防止剤として1,2,3-トリアゾールを含有し、更に亜リン酸エステルを含むことで、ITO配線、銅配線ともに抵抗値の変化が少なく、耐腐食信頼性及び酸化劣化防止性に優れるものであった。
【0153】
一方、比較例2-1は、亜リン酸エステル化合物及び金属腐食防止剤をともに含まず、耐腐食信頼性及び酸化劣化防止性に劣るものであった。
比較例2-2は、金属腐食防止剤を含まないため、特に銅配線の腐食が顕著であった。
比較例2-3は、亜リン酸エステル化合物を含まず、ITO配線への酸化劣化防止性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の導電部材用粘着シートは、導電部材(典型的には透明導電層及び/又は銅若しくは銀を含む金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材)に対する耐腐食信頼性を有すると共に耐発泡信頼性を有することができるので、各種導電部材を貼り合わせるのに好適な粘着シートとして用いることができる。とりわけ、タッチパネルを有する画像表示装置用の粘着シートとして好適に用いることができる。