(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】複数チャネル・セレクター・バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 11/074 20060101AFI20220921BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20220921BHJP
G01N 30/44 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
G01N30/26 M
G01N30/44
(21)【出願番号】P 2021523350
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 US2019059394
(87)【国際公開番号】W WO2020092902
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513237308
【氏名又は名称】アイデックス ヘルス アンド サイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シュロック、オードリー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、マーク
(72)【発明者】
【氏名】サンデュ 、アスナ
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-031370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0090345(US,A1)
【文献】国際公開第2009/078450(WO,A1)
【文献】米国特許第06012488(US,A)
【文献】特表2015-517093(JP,A)
【文献】特開2012-159460(JP,A)
【文献】国際公開第2018/107022(WO,A1)
【文献】特開2016-173249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/074
G01N 30/26
G01N 30/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャネル・セレクター・バルブであって、前記複数チャネル・セレクター・バルブは、
ステーターであって、前記ステーターは、フロント・フェイス、ダイナミック・フェイス、および複数の通路を有しており、前記複数の通路は、前記ステーターを通って延在し、前記フロント・フェイスおよび前記ダイナミック・フェイスを流体的に接続しており、前記複数の通路は、前記ダイナミック・フェイスの中のそれぞれの第1の開口部と前記フロント・フェイスの中の第1のポートとの間に延在する第1の通路、前記ダイナミック・フェイスの中のそれぞれの第2の開口部と前記フロント・フェイスの中の第2のポートとの間に延在する第2の通路、前記ダイナミック・フェイスの中の吸入開口部と前記フロント・フェイスの中の吸入ポートとの間に延在する吸入通路、および、前記ダイナミック・フェイスの中の出口開口部と前記フロント・フェイスの中の出口ポートとの間に延在する出口通路を含む、ステーターと;
ローターであって、前記ローターは、回転軸線の周りに前記ステーターに対して回転可能であり、前記ステーターの前記ダイナミック・フェイスと密封して係合するように構成されているローター・フェイスを有しており、前記ローター・フェイスは、前記吸入開口部を前記第1の開口部のうちの選択された1つに流体的に連結するための第1の流体流路、および、前記出口開口部を前記第2の開口部のうちの選択された1つに流体的に連結するための第2の流体流路を含み、前記第2の流体流路は、移送部分およびリリーフ部分を有しており、前記移送部分は、前記リリーフ部分に移行する近位端部、および、遠位端部を有しており、前記移送部分は、約10~75°の間の値だけ前記遠位端部から前記近位端部へフレア状になっており、前記リリーフ部分は、少なくとも30°だけ前記回転軸線の周りに環状に配置されている、ローターと
を含む、複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項2】
前記第1および第2の流体流路は、前記ローター・フェイスの中の溝部を含む、請求項1に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項3】
前記第1の開口部は、内側開口部に沿って円周軸線方向に配置されており、前記第2の開口部は、外側リングの周りに円周軸線方向に配置されている、請求項1に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項4】
前記複数チャネル・セレクター・バルブは、前記ステーターの前記ダイナミック・フェイスの中に環状の収集溝部を含み、前記環状の収集溝部は、前記出口開口部と交差している、請求項1に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項5】
前記環状の収集溝部が、半径方向に内側リングと外側リングとの間にある、請求項4に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項6】
前記第2の流体流路の前記リリーフ部分は、前記環状の収集溝部と操作可能なアライメント状態になっている、請求項5に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項7】
前記リリーフ部分は、前記収集溝部と環状にミラー対称になっている、請求項6に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項8】
前記第2の流体流路は、前記環状の収集溝部を前記第2の開口部のうちの選択された1つに流体的に接続している、請求項4に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項9】
前記吸入開口部は、前記回転軸線に沿っている、請求項1に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項10】
複数チャネル・セレクター・バルブであって、前記複数チャネル・セレクター・バルブは、
ステーターであって、前記ステーターは、フロント・フェイス、中心軸線、および、全体的に対向したダイナミック・フェイスを有しており、前記ダイナミック・フェイスは、前記中心軸線の周りに第1の円周軸線方向のパターンで配置されている複数の第1の開口部、および、前記中心軸線の周りに第2の円周軸線方向のパターンで配置されている複数の第2の開口部を含む、ステーターと;
ローターであって、前記ローターは、前記中心軸線と一致する回転軸線の周りに前記ステーターに対して回転可能であり、前記ステーターの前記ダイナミック・フェイスと密封して係合するように構成されているローター・フェイスを有しており、前記ローター・フェイスは、第1の流体流路および第2の流体流路を含み、前記第1の流体流路は、前記ローター・フェイスの回転中心から第1の端部へ延在し、前記第1の開口部のうちの任意の1つに選択的に流体的に接続し、前記第2の流体流路は、移送部分およびリリーフ部分を有しており、前記移送部分は、約10~75°の間の値だけ、前記第2の開口部のうちの任意の1つに流体連通している遠位端部から近位端部へフレア状になっており、前記リリーフ部分は、少なくとも30°だけ前記回転軸線の周りに環状に配置されている、ローターと
を含む、複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項11】
前記リリーフ部分は、少なくとも約270°だけ前記回転軸線の周りに環状に配置されている、請求項10に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項12】
前記第2の流体流路は、前記第2の開口部のうちの任意の1つを前記ステーターの前記ダイナミック・フェイスの中の出口開口部に流体的に接続する、請求項10に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項13】
前記複数チャネル・セレクター・バルブは、半径方向に前記第1の円周軸線方向のパターンと前記第2の円周軸線方向のパターンとの間に、前記ステーターの前記ダイナミック・フェイスの中に環状の収集溝部を含む、請求項10に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項14】
前記環状の収集溝部は、前記ステーターの前記ダイナミック・フェイスの出口開口部と交差している、請求項13に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項15】
前記第2の流体流路は、前記第2の開口部のうちの任意の1つを前記環状の収集溝部に流体的に連結している、請求項14に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項16】
前記第2の流体流路の前記リリーフ部分は、前記環状の収集溝部と操作可能なアライメント状態になっている、請求項15に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【請求項17】
前記複数チャネル・セレクター・バルブは、前記ローター・フェイスの前記回転中心と操作可能なアライメント状態になっている、前記ステーターの前記ダイナミック・フェイスの中の入口開口部を含む、請求項10に記載の複数チャネル・セレクター・バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、流体バルブに関し、より具体的には、液体クロマトグラフィーを含む、流体工学および分析において使用される複数チャネル・バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
セレクター・バルブは、複数の流路の間で流体を選択的に方向付けるために、さまざまな流体工学用途に関して幅広く実装されている。例示的な用途は、複数カラムの液体クロマトグラフィーであり、そこでは、流体フローは、複数の分離カラムにおよび複数の分離カラムの間で選択的に方向付けられ、所望の全体的なクロマトグラフィー分離を実現することが可能である。
【0003】
クロマトグラフィー用途で使用され得る例示的なセレクター・バルブは、米国特許第9,739,383号に説明されており、それは、本譲受人に譲渡されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。米国特許第9,739,383号に説明されているバルブは、効果的であることが証明されているが、バルブを利用する特定の高い流量の用途(たとえば、200ml/min)は、背圧を発生させ、背圧は、システムの中の他のどこかの器具および継手に問題を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、ターゲット閾値の下方に背圧値を維持しながら、高い流体流量レジーム(たとえば、分取スケールの液体クロマトグラフィーなど)に対処することができる複数チャネル・セレクター・バルブを提供することである。いくつかの実施形態では、ターゲット背圧閾値は、200ml/minの流体流量において、5bar(72.5psi)である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって、流体フロー背圧値は、複数チャネル・セレクター・バルブを通る比較的に高い流体流量レジームにおいてさえも管理され得る。フロー制限を低減させる複数チャネル・セレクター・バルブを通る独自の流路に関して調節が行われる。
【0006】
ある実施形態では、複数チャネル・セレクター・バルブは、ステーターを含み、ステーターは、フロント・フェイス、ダイナミック・フェイス、および複数の通路を有しており、複数の通路は、ステーターを通って延在し、フロント・フェイスおよびダイナミック・フェイスを流体的に接続している。複数の通路は、ダイナミック・フェイスの中のそれぞれの開口部とフロント・フェイスの中の第1のポートとの間に延在する第1の通路、ダイナミック・フェイスの中のそれぞれの第2の開口部とフロント・フェイスの中の第2のポートとの間に延在する第2の通路、ダイナミック・フェイスの中の吸入開口部とフロント・フェイスの中の吸入ポートとの間に延在する吸入通路、および、ダイナミック・フェイスの中の出口開口部とフロント・フェイスの中の出口ポートとの間に延在する出口通路を含む。セレクター・バルブは、ローターをさらに含み、ローターは、回転軸線の周りにステーターに対して回転可能であり、ステーターのダイナミック・フェイスと密封して係合するように構成されているローター・フェイスを有している。ローター・フェイスは、吸入開口部を第1の開口部のうちの選択された1つに流体的に連結するための第1の流体流路、および、出口開口部を第2の開口部のうちの選択された1つに流体的に連結するための第2の流体流路を含む。第2の流体流路は、移送部分およびリリーフ部分を有しており、移送部分は、リリーフ部分に移行する近位端部、および、遠位端部を有している。移送部分は、約10~75°の間の値だけ遠位端部から近位端部へフレア状になっている。リリーフ部分は、少なくとも30°だけ回転軸線の周りに環状に配置されている。
【0007】
別の実施形態では、本発明の複数チャネル・セレクター・バルブは、ステーターを含み、ステーターは、フロント・フェイス、中心軸線、および、全体的に対向したダイナミック・フェイスを有しており、ダイナミック・フェイスは、中心軸線の周りに第1の円周軸線方向(circumaxial)のパターンで配置されている複数の第1の開口部、および、中心軸線の周りに第2の円周軸線方向のパターンで配置されている複数の第2の開口部を含む。セレクター・バルブは、ローターをさらに含み、ローターは、中心軸線と一致する回転軸線の周りにステーターに対して回転可能であり、ステーターのダイナミック・フェイスと密封して係合するように構成されているローター・フェイスを有している。ローター・フェイスは、第1の流体流路および第2の流体流路を含む。第1の流体流路は、ローター・フェイスの回転中心から第1の端部へ延在し、第1の開口部のうちの任意の1つに選択的に流体的に接続している。第2の流体流路は、移送部分およびリリーフ部分を有しており、移送部分は、約10~75°の間の値だけ、第2の開口部のうちの任意の1つに流体連通している遠位端部から近位端部へフレア状になっている。第2の流体流路のリリーフ部分は、少なくとも30°だけ回転軸線の周りに環状に配置されている。
【0008】
本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのさらなる実施形態は、ステーターを含み、ステーターは、フロント・フェイス、ダイナミック・フェイス、および複数の通路を有しており、複数の通路は、ステーターを通って延在し、フロント・フェイスおよびダイナミック・フェイスを流体的に接続している。複数の通路は、ダイナミック・フェイスの中のそれぞれの第1の開口部とフロント・フェイスの中の第1のポートとの間に延在する第1の通路、ダイナミック・フェイスの中のそれぞれの第2の開口部とフロント・フェイスの中の第2のポートとの間に延在する第2の通路、ダイナミック・フェイスの中の吸入開口部とフロント・フェイスの中の吸入ポートとの間に延在する吸入通路、および、ダイナミック・フェイスの中の出口開口部とフロント・フェイスの中の出口ポートとの間に延在する出口通路を含む。通路のうちの少なくともいくつかは、第1の軸線および第1の直径を有する第1の部分、ならびに、第1の軸線に対して角度を付けられた第2の軸線および第1の直径とは異なる第2の直径を有する第2の部分を含む。セレクター・バルブは、ローターをさらに含み、ローターは、回転軸線の周りにステーターに対して回転可能であり、ステーターのダイナミック・フェイスと密封して係合するように構成されているローター・フェイスを有している。ローター・フェイスは、吸入開口部を第1の開口部のうちの選択された1つに流体的に連結するための第1の流体流路、および、出口開口部を第2の開口部のうちの選択された1つに流体的に連結するための第2の流体流路を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブの斜視図である。
【
図2A】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブの分解正面斜視図である。
【
図2B】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブの分解背面斜視図である。
【
図3】ローター部分がその上に透明に重ね合わされた状態のステーター部分の説明図である。
【
図4】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのステーター部分の断面図である。
【
図5】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのステーター部分の正面図である。
【
図6】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのローター部分の立面図である。
【
図7A】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのローター部分の説明図である。
【
図7B】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのローター部分の斜視図である。
【
図8A】先行技術の複数チャネル・セレクター・バルブのローター-ステーター・インターフェースの断面図である。
【
図8B】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのローター-ステーター・インターフェースの断面図である。
【
図9】本発明の複数チャネル・セレクター・バルブのステーター部分の拡大断面図である。
【
図10A】入口ポートにおいて200ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【
図10B】出口ポートにおいて200ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【
図10C】入口ポートにおいて150ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【
図10D】出口ポートにおいて150ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【
図10E】入口ポートにおいて100ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【
図10F】出口ポートにおいて100ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【
図10G】入口ポートにおいて50ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【
図10H】出口ポートにおいて50ml/minにおける背圧降下をプロットしたチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の複数チャネル・セレクター・バルブ10の実施形態が、
図1に図示されている。例示的な用途では、流体ストリームは、バルブ10を通して1つまたは複数の選択された出力チャネルへ(たとえば、1つまたは複数のクロマトグラフィック・カラムなどへ)方向付けられ、次いで、たとえば、検出器による下流の分析へルーティングするためにバルブ10に戻され得る。
【0011】
セレクター・バルブ10は、ステーター20を含み、ステーター20は、締結具14によってバルブ本体部16にしっかりと固定されている。
図2の分解斜視図において、ローター30は、バルブ本体部16を通過してモーター・アッセンブリに接続するバルブ・シャフトによってステーター20に対して回転するように、バルブ10の中に配置されているということが見られる。セレクター・バルブ10のコンポーネント・パーツの関係および一般的な機能性は、米国特許第9,739,383号に説明されているようなものである。本発明のセレクター・バルブ10と米国特許第9,739,383号に説明されているバルブとの重要な違いは、ローター30のダイナミック・フェイス32の構造、および、ステーター・ダイナミック・フェイス22とのその関係である。
【0012】
図3は、ローター30がその上に透明に重ね合わされた状態のステーター・ダイナミック・フェイス22の説明図である。破線は、そうでなければ
図3に図示されないローター30の特徴を図示している。ステーター・ダイナミック・フェイス22は、第1の通路26a(
図4に図示されている)への第1の開口部24aと、第2の通路26b(
図4に図示されている)への第2の開口部24bとを含む。第1の開口部24aは、ローター30がバルブ10の中のステーター20と係合されているときに、ローター・ダイナミック・フェイス32の中の第1の溝部34aによって、中央開口部25に流体的に接続され得る。この実施形態では、ローター30は、長手方向軸線の周りに回転し、対応するポートを通る6つの経路の中から流路の選択を提供するように配置されている。ステーター・ダイナミック・フェイス22およびローター・ダイナミック・フェイス32は、ステーター-ローター・インターフェースにおけるステーター20およびローター30のそれぞれの表面である。
【0013】
ステーター・ダイナミック・フェイス22における第1の開口部24aおよび第2の開口部24bは、図示されている実施形態にあるように、同心円状のリングで配置され得る。しかし、第1および第2の開口部24a、24bに関する他の配置も、本発明のセレクター・バルブ10の中へ組み込まれ得るということが企図される。
【0014】
図示されている実施形態は、第1および第2の開口部24a、24bの6つそれぞれを示しており、したがって、それは、最大で6つの個別のクロマトグラフィック・カラムまたは他の処理装置にサービスを提供することが可能である。
【0015】
図4および
図5に図示されているように、ステーター20は、ステーター・フロント・フェイス21における第1および第2のポート28a、28bを含む。第1のポート28aは、それぞれの第1の通路26aに開口しており、第1のポート28aが、それぞれの第1の通路26aを通して、それぞれの第1の開口部24aと流体的に接続されているようになっている。同様に、フロント・フェイス21における第2の開口部28bは、第2の通路26bに開口しており、第2のポート28bおよびそれぞれの開口部24bが、それぞれの第2の通路26bによって流体的に接続されているようになっている。図示されている実施形態では、吸入ポート28cは、吸入通路26cに開口しており、吸入ポート28cを中央開口部25に流体的に接続している。出口ポート28dは、出口通路26dに開口しており、出口ポート28dをステーター・ダイナミック・フェイス22における出口開口部29に流体的に接続している。好適な実施形態において、出口開口部29は、ステーター・ダイナミック・フェイス22の中の収集溝部40の中に少なくとも部分的に含有され得る。
【0016】
ローター30の操作可能な回転が、ステーター・ダイナミック・フェイス22のおける中央開口部25および第1の開口部24aのうちのそれぞれの1つの両方の上に重ね合わされるように、第1の溝部34aを位置決めするときには、ローター・ダイナミック・フェイス32の中の第1の溝部34aを介して、ステーター20の中央開口部25とそのようなそれぞれの第1の開口部24aとの間で、流体フローが許容される。第1の溝部34aが第1の開口部24aのいずれにも重ね合わされない位置にローター30が回転させられているときには、中央開口部25は、第1の開口部24aのいずれからも流体的に解除されており、流体フローが停止されるようになっている。
【0017】
同様に、ローター30の第2の溝部34bは、ステーター20の収集溝部40および第2の開口部24bを流体的に連結するために使用され得る。いくつかの実施形態では、収集溝部40は、環状の溝部であることが可能であり、環状の溝部は、第1の開口部24aと第2の開口部24bとの間で円周軸線方向に、ステーター・ダイナミック・フェイス22の中へ形成されている。第2の溝部34bが第2の開口部24bのうちの少なくとも1つの上に重ね合わされるように、ローター30が操作可能に回転させられるときには、流体的接続が、そのような第2の開口部24b、収集溝部40、および、収集溝部40の中の出口開口部29の間で確立される。第2の溝部34bが第2の開口部24bのいずれにも重ね合わされないように、ステーター20に対してローター30を回転することは、第2の開口部24bから収集溝部40を流体的に解除し、流体フローが停止される。
【0018】
セレクター・バルブ10を通る例示的な流体流路は、サンプル・インジェクターからステーター・フロント・フェイス21の中の吸入ポート28cを通る流体を含む。次いで、流体は、ステーター20の中の吸入通路26cを通って中央開口部25へ流れ、そして、ローター30の第1の溝部34aの中へ流れる。ローター30が、
図3に図示されているものなどのように、第1の開口部24aの上に重ね合わされるように回転させられるときには、流体は、次いで、第1の溝部34aを通って、ステーター20の中のそのように流体的に連結されている第1の開口部24aの中へ流れる。そのような第1の開口部24aから、流体は、それぞれの第1の通路26aおよび第1のポート28aを通って、選択された処理装置50(たとえば、クロマトグラフィック・カラムなど)の中へ流れる。流体フロー方向は、
図3の中の矢印によって示されているが、流体フロー方向は、本明細書で説明されているものとは逆にされ得るということが企図される。図示されているケースでは、流体は、次いで、処理装置50からステーター・フロント・フェイス21における第2のポート28bの中へ、そして、それぞれの第2の通路26bの中へ流れる。流体フローは、そのような第2の通路26bのそれぞれの第2の開口部24bを通って、ローター30の第2の溝部34bの中へ続く。流体フローは、第2の溝部34bの少なくとも一部分を通過し、いくつかの実施形態では、収集溝部40の中を通る。流体フローは、ステーター/ローター・インターフェースから、ステーター20の出口開口部29、出口通路26d、および出口ポート28dを通って、例示的な流体フロー方向に排出される。
【0019】
閾値(たとえば、5bar(72.5psi)など)を超える背圧を誘発することなく、比較的に高いフロー・レジーム(たとえば、200ml/minまたはそれ以上など)に対処するために、出願人は、第2の溝部34bに関する配置を発見した。
図6~
図7Bに図示されているように、第2の溝部34bは、ローター・ダイナミック・フェイス32の中に形成された移送部分36およびリリーフ部分38を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、移送部分36およびリリーフ部分38は、ローター・ダイナミック・フェイス32の中に連続的な溝部/陥凹部を形成しており、移送部分36およびリリーフ部分38が常に流体的に接続されているようになっている。他の実施形態では、移送部分36は、ローター・ダイナミック・フェイス32の中のリリーフ部分38から流体的に切り離され得り、移送部分36とリリーフ部分38との間の流体的接続が、ステーター・ダイナミック・フェイス22の中のチャネル、溝部、または他のフォーメーションの協働を通してのみ達成されるようになっている。例示的なそのようなフォーメーションは、収集溝部40であることが可能である。
【0020】
図示されている実施形態では、第2の溝部34bの移送部分36は、狭くなった遠位端部37aから広がった近位端部37bへ延在している。いくつかの実施形態では、近位端部37bは、連続的な第2の溝部34bを形成するために移送部分36がリリーフ部分38と融合するポイントである。いくつかの実施形態では、移送部分36は、約10~75°の間の、より好ましくは、約15~50°の間の、さらにより好ましくは、約20~40°の間の、狭くなった部分37aから広がった部分37bへのフレア角度αを有することが可能である。いくつかの実施形態では、移送部分36は、約0.005~0.05in(0.13~1.3mm)の間の、より好ましくは、約0.01~0.03in(0.25~0.75mm)の間の、ローター・ダイナミック・フェイス32の中へ深さを有することが可能である。
図3に図示されているように、第2の溝部34bの移送部分36は、ローター・ダイナミック・フェイス32に配置され得り、ステーター・ダイナミック・フェイス22の中の第2の開口部24bのうちの少なくとも1つの上に選択的に重ね合わせることができるようになっている。第2の溝部34bの移送部分36は、好ましくは、ステーター・ダイナミック・フェイス22の中の第2の開口部24bのうちの選択された1つと収集溝部40との間で、流体フローを搬送するように構成されている。しかし、収集溝部40を備えないセレクター・バルブ10の実施形態では、移送部分36は、リリーフ部分38のみによって流体的に連通し、ステーター・ダイナミック・フェイス22の中の出口開口部29と第2の開口部24bのうちの1つまたは複数の選択された1つとの間での流体フローを許容するように構成され得る。移送部分36の図示されている配置(広がった近位端部37bを備える)は、移送部分36とリリーフ部分38および収集溝部40のうちの1つまたは複数との間での滑らかな流体移送を可能にし、また、選択された開口部24bとリリーフ部分38および収集溝部40のうちの1つまたは複数との間の流体フローに対する摩擦抵抗を低減させる。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2の溝部34bのリリーフ部分38は、収集溝部40の少なくとも一部分の上に操作可能に重ね合わされるように構成および配置され得る。そのような重ね合わせは、出口開口部29と第2の開口部24bのうちの選択された1つまたは複数との間の流体通路の有効体積を増加させる。増加した流体通路体積は、それに対応して、流体背圧を減少させ、それは、とりわけ、比較的に高い流体流量レジームにおいて顕著である。本発明において具現化されている流体流路修正を図示する比較概略図が、
図8Aおよび
図8Bに記載されている。
図8Aに図示されている米国特許第9,739,383号の設計は、ローター120と向かい合う関係で、ステーター110の中に収集リング118を含む。対照的に、本発明のセレクター・バルブ10のいくつかの実施形態は、ローター30の中に第2の溝部34bのリリーフ部分38を含み、それは、ステーター20の中の収集溝部40の上に操作可能に重ね合わされる。収集溝部40およびリリーフ部分38の組み合わせによって画定されるチャネルの中の流体フローのために利用可能な合計の体積は、先行技術設計において提供されるものよりも実質的に大きくなっている。そのような実質的に増加した体積は、セレクター・バルブ10を通る流体フロー背圧の低減に寄与する。
【0022】
図示されている実施形態では、第2の溝部34bのリリーフ部分38は、少なくとも部分的にローター30の回転軸線31の周りに、ローター・フェイス32の中に環状の経路を形成している。リリーフ部分38は、閉じた端部39a、39bを含み、回転軸線31の周りに少なくとも30°、好ましくは、回転軸線31の周りに少なくとも60°、より好ましくは、回転軸線31の周りに少なくとも180°または270°、環状に延在することが可能である。しかし、第2の溝部34bのリリーフ部分38は、収集溝部40の少なくとも一部分の上に操作可能に重ね合わせることができるエンドレス経路を形成することが可能であるということが企図される。また、第2の溝部34b(説明されている移送部分36およびリリーフ部分38を含む)は、セレクター・バルブ10において用いられ得り、ここで、ステーター・ダイナミック・フェイス22は、収集溝部40を含まないということが企図される。そのような実施形態では、出口開口部29と第2の通路26bのうちの選択された1つまたは複数との間の流体的接続が、第2の溝部34bだけを通して確立され得る。
【0023】
本発明の別の態様は、
図4に図示されているような、および、
図9に概略的に表されているような、複合通路26a~26dの提供である。概略的な通路26は、第1の直径「x」を有する第1の部分26xを含み、第1の直径「x」は、通路26の第2の部分26yの第2の直径「y」よりも大きくなっている。そのうえ、通路26の第2の部分26yは、好ましくは、ステーター・ダイナミック・フェイス22に実質的に対して垂直な中心軸線27によって配向され得る。ステーター・ダイナミック・フェイス22に対するそのような配向(少なくとも通路26の第2の部分26yに関する)が、流体フロー抵抗を低減させ、ステーター20のそれぞれの開口部24における全体的な流体フロー・ダイナミクスを改善するということを出願人は究明した。いくつかの実施形態では、第2の直径「y」は、第1の直径「x」の約20%~90%の間にあることが可能であり、より好ましくは、第1の直径「x」の約30%~70%の間にあることが可能である。特定の例示的な実施形態において、第1の直径「x」は、約0.037in(0.94mm)であり、第2の直径「y」は、約0.020in(0.51mm)である。
【0024】
実験
米国特許第9,739,383号に説明されているバルブの実施形態と本発明の複数チャネル・セレクター・バルブとを比較する、流体フロー背圧に関する比較検討が実施された。以下の表は、本検討においてテストされたそれぞれのバルブの流体チャネル寸法を記載している。
【表1】
【0025】
バルブは、異なる流量(50ml/min、100ml/min、150ml/min、200ml/min)において背圧に関してテストされた。
図10A~
図10Hに図示されているチャートは、本発明のセレクター・バルブ10を通る流体フロー背圧のかなりの低減を示している。ターゲット閾値よりも下方に(たとえば、5bar(72.5psi)よりも下方など)背圧を維持することによって、ユーザーは、分析システムの中のコンポーネントに対する損傷を心配することなく、より高い流量でシステムを動作させることが可能である。
【0026】
特許法を遵守するために、ならびに、新規な原理を適用するために、および、必要に応じて本発明の実施形態を構築および使用するために必要とされる情報を当業者に提供するために、本発明は、かなり詳細に本明細書で説明されてきた。しかし、さまざまな修正例が、本発明自身の範囲を逸脱することなく達成され得るということが理解されるべきである。