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特許7144625球状化黒鉛、被覆球状化黒鉛、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウム二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】球状化黒鉛、被覆球状化黒鉛、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/21 20170101AFI20220921BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220921BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220921BHJP
【FI】
C01B32/21
H01M4/36 C
H01M4/587
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021552677
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005348
(87)【国際公開番号】W WO2021166812
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2020027822
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591067794
【氏名又は名称】JFEケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】山地 遼太
(72)【発明者】
【氏名】間所 靖
(72)【発明者】
【氏名】小比賀 基治
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃
(72)【発明者】
【氏名】増岡 弘之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 幹人
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-105396(JP,A)
【文献】特開2018-133340(JP,A)
【文献】特開2019-46925(JP,A)
【文献】特開2013-209256(JP,A)
【文献】特開平9-259867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
H01M 4/00-4/62
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CTを用いて得られる一次粒子の粒度分布において、球相当直径が0.8μm以下である一次粒子の体積比率が5.0%以上40.0%以下であり、かつ、球相当直径が1.5μm以上3.0μm以下である一次粒子の体積比率が13.0%以上60.0%以下である、球状化黒鉛と、前記球状化黒鉛を被覆する炭素質と、を含有する被覆球状化黒鉛であって、
細孔径が7.8nm以上36.0nm以下の細孔に対応する細孔容積が、0.015cm /g以上0.028cm /g以下である、被覆球状化黒鉛
【請求項2】
前記球状化黒鉛は、X線CTを用いて得られる二次粒子の粒子形状分布において、球状である二次粒子の体積比率が14.0%以上50.0%以下であり、かつ、棒状である二次粒子の体積比率が5.0%以上36.4%以下である、請求項1に記載の被覆球状化黒鉛。
【請求項3】
平均二次粒子径が5.0μm以上50.0μm以下であり、比表面積が0.5m/g以上10.0m/g以下である、請求項1または2に記載の被覆球状化黒鉛。
【請求項4】
X線CTを用いて得られる一次粒子の粒度分布において、球相当直径が0.8μm以下である一次粒子の体積比率が5.0%以上40.0%以下であり、かつ、球相当直径が1.5μm以上3.0μm以下である一次粒子の体積比率が13.0%以上60.0%以下であり、
X線CTを用いて得られる二次粒子の粒子形状分布において、球状である二次粒子の体積比率が14.0%以上50.0%以下であり、かつ、棒状である二次粒子の体積比率が5.0%以上36.4%以下である、球状化黒鉛と、前記球状化黒鉛を被覆する炭素質と、を含有する被覆球状化黒鉛であって、
平均二次粒子径が5.0μm以上50.0μm以下であり、比表面積が4.0m /g以上10.0m /g以下である、被覆球状化黒鉛
【請求項5】
細孔径が7.8nm以上36.0nm以下の細孔に対応する細孔容積が、0.015cm/g以上0.028cm/g以下である、請求項に記載の被覆球状化黒鉛。
【請求項6】
請求項のいずれか1項に記載の被覆球状化黒鉛を含有する、リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項7】
請求項に記載の負極を有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状化黒鉛、被覆球状化黒鉛、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、主な構成要素として、負極、正極および非水電解質を有する。リチウムイオンが、放電過程および充電過程で負極と正極との間を移動することにより、二次電池として作用する。
従来、リチウムイオン二次電池の負極材料として、球状化した黒鉛(球状化黒鉛)が使用される場合がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-146607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池の負極材料には、出力特性に優れる(出力抵抗が小さい)ことが要求される場合がある。
とりわけ、リチウムイオン二次電池は、今後、自動車(ハイブリッド自動車、電気自動車など)に多く搭載されることが予想される。例えば自動車が急発進するときには、より優れた出力特性が要求される。
【0005】
そこで、本発明は、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いた場合に出力特性に優れる球状化黒鉛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]X線CTを用いて得られる一次粒子の粒度分布において、球相当直径が0.8μm以下である一次粒子の体積比率が40.0%以下であり、かつ、球相当直径が1.5μm以上3.0μm以下である一次粒子の体積比率が13.0%以上である、球状化黒鉛。
[2]X線CTを用いて得られる二次粒子の粒子形状分布において、球状である二次粒子の体積比率が14.0%以上であり、かつ、棒状である二次粒子の体積比率が34.0%以下である、上記[1]に記載の球状化黒鉛。
[3]平均二次粒子径が5.0μm以上15.0μm以下であり、比表面積が5.0m/g以上15.0m/g以下である、上記[1]または[2]に記載の球状化黒鉛。
[4]天然黒鉛を球状化してなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の球状化黒鉛。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の球状化黒鉛と、上記球状化黒鉛を被覆する炭素質と、を含有する被覆球状化黒鉛。
[6]平均二次粒子径が5.0μm以上50.0μm以下であり、比表面積が0.5m/g以上10.0m/g以下である、上記[5]に記載の被覆球状化黒鉛。
[7]細孔径が7.8nm以上36.0nm以下の細孔に対応する細孔容積が、0.015cm/g以上0.028cm/g以下である、上記[5]または[6]に記載の被覆球状化黒鉛。
[8]上記[5]~[7]のいずれかに記載の被覆球状化黒鉛を含有する、リチウムイオン二次電池用負極。
[9]上記[8]に記載の負極を有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いた場合に出力特性に優れる球状化黒鉛を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】球状粒子の3次元画像である。
図1B図1Aとは異なる角度から観察された球状粒子の3次元画像である。
図1C図1A~Bとは異なる角度から観察された球状粒子の3次元画像である。
図1D図1A~Cとは異なる角度から観察された球状粒子の3次元画像である。
図2A】棒状粒子の3次元画像である。
図2B図2Aとは異なる角度から観察された棒状粒子の3次元画像である。
図2C図2A~Bとは異なる角度から観察された棒状粒子の3次元画像である。
図2D図2A~Cとは異なる角度から観察された棒状粒子の3次元画像である。
図3A】その他の二次粒子の3次元画像である。
図3B図3Aとは異なる角度から観察されたその他の二次粒子の3次元画像である。
図3C図3A~Bとは異なる角度から観察されたその他の二次粒子の3次元画像である。
図3D図3A~Cとは異なる角度から観察されたその他の二次粒子の3次元画像である。
図4】実施例および比較例において電池特性を評価するために作製した評価電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[球状化黒鉛]
本発明の球状化黒鉛は、X線CTを用いて得られる一次粒子の粒度分布において、球相当直径が0.8μm以下である一次粒子(以下、「微粒」ともいう)の体積比率が40.0%以下であり、かつ、球相当直径が1.5μm以上3.0μm以下である一次粒子(以下、「粗粒」ともいう)の体積比率が13.0%以上である。
本発明の球状化黒鉛を、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いることにより、出力特性に優れる。これは、微粒および粗粒が上記割合となることで、リチウムイオンが出入りしやすくなるためと推測される。
【0011】
〈微粒および粗粒〉
上述したように、本発明の球状化黒鉛は、微粒の体積比率が40.0%以下であり、かつ、粗粒の体積比率が13.0%以上である。
出力特性がより優れるという理由から、微粒の体積比率は、39.0%以下が好ましく、34.0%以下がより好ましく、28.0%以下が更に好ましく、23.0%以下が特に好ましい。
一方、微粒の体積比率は、下限は特に限定されず、例えば、5.0%以上であり、10.0%以上が好ましく、13.0%以上がより好ましく、15.0%以上が更に好ましい。
【0012】
出力特性がより優れるという理由から、粗粒の体積比率は、14.0%以上が好ましく、18.0%以上がより好ましく、21.0%以上が更に好ましく、25.0%以上が特に好ましい。
一方、粗粒の体積比率は、上限は特に限定されず、例えば、60.0%以下であり、50.0%以下が好ましく、40.0%以下がより好ましく、35.0%以下が更に好ましく、32.0%以下が特に好ましい。
【0013】
《一次粒子の粒度分布》
球状化黒鉛を構成する一次粒子の粒度分布を求める方法を説明する。
一次粒子の大きさを把握するには、球状化黒鉛を非破壊および高分解能で可視化することを要する。そこで、放射光源を利用したX線CT(コンピュータ断層撮影)により、球状化黒鉛を観察する。より詳細には、SPring-8のビームライン(BL24XU)にて、結像型X線CTを、以下の条件で実施する。
・X線エネルギー:8keV
・画像解像度:1248(H)×2048(W)ピクセル
・実行画素サイズ:68nm/ピクセル
・露光時間:0.5秒
・投影像の撮影枚数:1200枚
・Deforcus:0.3mm
試料である球状化黒鉛は、石英ガラスキャピラリ(内径:約0.1mm)に充填し、X線CTに供する。
球状化黒鉛の投影像を撮影した後、断面スライス像に再構成する。次いで、市販の画像解析ソフトであるExFact VR(日本ビジュアルサイエンス社製)のWatershed Analysis機能を用いて、隣接する一次粒子どうしを分割して個別に認識し、各一次粒子の体積を算出する。更に、各一次粒子について、得られた体積から、球相当直径を求める。各一次粒子のデータをグラフ(横軸:球相当直径、縦軸:各一次粒子の総体積に対する体積比率)にプロットすることにより、一次粒子の粒度分布を求める。
【0014】
〈球状および棒状〉
本発明の球状化黒鉛は、出力特性がより優れるという理由から、X線CTを用いて得られる二次粒子の粒子形状分布において、球状である二次粒子(以下、「球状粒子」ともいう)の体積比率が14.0%以上であり、かつ、棒状である二次粒子(以下、「棒状粒子」ともいう)の体積比率が34.0%以下であることが好ましい。
【0015】
出力特性が更に優れるという理由から、球状粒子の体積比率は、16.0%以上が好ましく、18.0%以上がより好ましく、20.0%以上が更に好ましい。
一方、球状粒子の体積比率は、上限は特に限定されず、例えば、50.0%以下であり、40.0%以下が好ましく、30.0%以下がより好ましく、25.0%以下が更に好ましく、23.0%以下が特に好ましい。
【0016】
出力特性が更に優れるという理由から、棒状粒子の体積比率は、30.0%以下が好ましく、28.0%以下がより好ましく、25.0%以下が更に好ましい。
一方、棒状粒子の体積比率は、下限は特に限定されず、例えば、5.0%以上であり、10.0%以上が好ましく、15.0%以上がより好ましく、20.0%以上が更に好ましい。
【0017】
《二次粒子の粒子形状分布》
球状化黒鉛を構成する二次粒子の粒子形状分布を求める方法を説明する。
二次粒子の形状を把握するには、球状化黒鉛を非破壊および高分解能で可視化することを要する。そこで、放射光源を利用したX線CTにより、球状化黒鉛を観察する。より詳細には、SPring-8のビームライン(BL24XU)にて、投影型X線CTを、以下の条件で実施する。
・X線エネルギー:20keV
・画像解像度:2048(H)×2048(W)ピクセル
・実行画素サイズ:325nm/ピクセル
・露光時間:0.1秒
・投影像の撮影枚数:1800枚
・試料と検出器との間の距離:10mm
試料である球状化黒鉛は、ボロシリケートガラスキャピラリ(内径:約0.6mm)に充填し、X線CTに供する。
球状化黒鉛の投影像を撮影した後、断面スライス像に再構成する。次いで、市販の画像解析ソフトであるExFact VR(日本ビジュアルサイエンス社製)のWatershed Analysis機能を用いて、隣接する二次粒子どうしを分割して個別に認識し、各二次粒子の体積を算出する。
次に、各二次粒子について、互いに直交する慣性主軸を3軸設定し、それぞれの重心モーメントを求める。3つの重心モーメントのうち、最大のものをL、最小のものをS、中間のものをMとする。以下の定義に従い、各二次粒子の粒子形状を、球状、棒状およびその他に分類する。
球状:S/L≧0.5、かつ、M/L≧0.5
棒状:S/L<0.5、かつ、M/L<0.5
各二次粒子の総体積に対する、球状に分類された二次粒子(球状粒子)の体積比率、および、棒状に分類された二次粒子(棒状粒子)の体積比率を求める。こうして、二次粒子の形状分布を求める。
【0018】
ここで、二次粒子のX線CTデータを画像解析して得られる3次元画像の例を示す。
図1A~Dは、球状粒子(S/L=0.79、M/L=0.91)の3次元画像である。
図2A~Dは、棒状粒子(S/L=0.11、M/L=0.19)の3次元画像である。
図3A~Dは、その他の二次粒子(楕円体状の粒子)(S/L=0.22、M/L=0.88)の3次元画像である。
図1A~Dにおいては、同じ1つの二次粒子を観察しており、観察角度が、それぞれに異なる。これは、図2A~Dおよび図3A~Dにおいても同様である。
【0019】
〈平均二次粒子径〉
本発明の球状化黒鉛の平均二次粒子径(単に「平均粒子径」ともいう)は、5.0μm以上が好ましく、6.5μm以上がより好ましく、7.0μm以上が更に好ましい。
一方、本発明の球状化黒鉛の平均粒子径は、15.0μm以下が好ましく、14.0μm以下がより好ましく、12.0μm以下が更に好ましく、10.0μm以下が特に好ましく、9.8μm以下が最も好ましい。
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(セイシン企業社製、LMS2000e)を用いて求める粒度分布の累積度数が、体積百分率で50%となる粒子径である。
【0020】
〈比表面積〉
本発明の球状化黒鉛の比表面積は、5.0m/g以上が好ましく、7.0m/g以上がより好ましく、9.5m/g以上が更に好ましい。
一方、本発明の球状化黒鉛の比表面積は、15.0m/g以下が好ましく、13.0m/g以下がより好ましく、11.0m/g以下が更に好ましく、10.0m/g以下が特に好ましい。
比表面積は、JIS Z 8830:2013「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準拠して測定するBET比表面積である。具体的には、試料を50℃で予備乾燥し、次いで、30分間窒素ガスを流した後、MONOSORB(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)を用いて、窒素ガス吸着によるBET1点法により求める。
【0021】
[球状化黒鉛の製造方法]
本発明の球状化黒鉛を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、原料を球状に加工する方法が挙げられる。
ここで、原料は、球状(楕円体状を含む)以外の形状を有する黒鉛、例えば、鱗片状の黒鉛である。黒鉛は、天然黒鉛および人造黒鉛のどちらでもよいが、結晶性が高い等の理由から、天然黒鉛が好ましい。
より具体的には、例えば、接着剤や樹脂などの造粒助剤の共存下で原料を混合する方法;造粒助剤を用いずに原料に機械的外力を加える方法;両者を併用する方法;等が挙げられる。
これらのうち、造粒助剤を用いずに原料に機械的外力を加える方法が好ましい。以下、この方法を、より詳細に説明する。
【0022】
より詳細には、原料(例えば、鱗片状の黒鉛)を、粉砕装置を用いて機械的外力を加えることにより、粉砕および造粒する。こうして、原料を球状化して、球状化黒鉛を得る。
粉砕装置としては、例えば、回転ボールミル、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング社製)、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)等が挙げられ、なかでも、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)が好ましい。
【0023】
本発明においては、複数台の粉砕装置を直列に配置したうえで、これら複数台の粉砕装置を、原料が連続的に通過することが好ましい。すなわち、原料が1台の粉砕装置を通過した後、直ちに、次の粉砕装置で粉砕および造粒が行なわれるように、複数台の粉砕装置を直列に配置することが好ましい。
【0024】
このとき、粉砕装置の台数は、例えば2台以上であり、3台以上が好ましく、4台以上がより好ましく、5台以上が更に好ましく、6台以上が特に好ましい。
一方、粉砕装置の台数は、10台以下が好ましく、8台以下がより好ましく、7台以下が更に好ましい。
【0025】
1台の粉砕装置において、原料を粉砕および造粒する時間(以下、「粉砕時間」ともいう)は、8分以上が好ましく、13分以上がより好ましく、18分以上が更に好ましい。
一方、1台の粉砕装置における粉砕時間は、60分以下が好ましく、50分以下がより好ましく、40分以下が更に好ましい。
【0026】
粉砕装置の台数と、1台の粉砕装置における粉砕時間との積(以下、「合計粉砕時間」ともいう)は、30分以上が好ましく、50分以上がより好ましく、90分以上が更に好ましい。
一方、合計粉砕時間は、180分以下が好ましく、160分以下がより好ましい。
【0027】
粉砕装置は、通常、ローターを内蔵する。
各粉砕装置におけるローターの周速度は、30m/秒以上が好ましく、40m/秒以上がより好ましく、60m/秒以上が更に好ましい。
一方、各粉砕装置におけるローターの周速度は、100m/秒以下が好ましく、80m/秒以下がより好ましい。
【0028】
せん断力および圧縮力を原料に付与しやすくするために、各粉砕装置に充填する原料の量は、少ない方が好ましい。
【0029】
[被覆球状化黒鉛]
本発明の被覆球状化黒鉛は、球状化黒鉛と、この球状化黒鉛を被覆する炭素質と、を含有する。そして、球状化黒鉛が、上述した本発明の球状化黒鉛である。
【0030】
〈炭素質の含有量〉
本発明の被覆球状化黒鉛における炭素質の含有量は、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、8.0質量%以上が更に好ましく、10.0質量%以上が特に好ましい。
炭素質の含有量がこの範囲であれば、球状化黒鉛の活性なエッヂ面が被覆されやすくなり、初期充放電効率が優れる。
【0031】
一方、本発明の被覆球状化黒鉛における炭素質の含有量は、30.0質量%以下が好ましく、25.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下が更に好ましく、15.0質量%以下が特に好ましい。
炭素質の含有量がこの範囲であれば、相対的に放電容量の低い炭素質が少なくなり、放電容量が優れる。
また、炭素質の含有量がこの範囲である場合、後述する炭素質前駆体の使用量が少なくなるため、後述する混合および焼成の際に、融着が生じにくくなり、最終的に得られる炭素質の割れや剥離が抑制され、初期充放電効率が優れる。
【0032】
炭素質の含有量は、被覆球状化黒鉛の全体の平均値が上記範囲内であればよい。個々の被覆球状化黒鉛の全てが上記範囲内にある必要はなく、上記範囲以外の被覆球状化黒鉛を一部に含んでいてもよい。
【0033】
炭素質の含有量は、球状化黒鉛と炭素質前駆体との混合物を焼成する際の条件と同じ条件で、炭素質前駆体のみを焼成し、その残炭量から求める。
【0034】
〈平均二次粒子径〉
本発明の被覆球状化黒鉛の平均二次粒子径(平均粒子径)は、5.0μm以上が好ましく、7.0μm以上がより好ましい。
一方、本発明の被覆球状化黒鉛の平均粒子径は、50.0μm以下が好ましく、30.0μm以下がより好ましく、20.0μm以下が更に好ましい。
【0035】
〈比表面積〉
本発明の被覆球状化黒鉛の比表面積は、0.5m/g以上が好ましく、1.5m/g以上がより好ましく、3.0m/g以上が更に好ましく、4.0m/g以上が特に好ましい。
一方、本発明の被覆球状化黒鉛の比表面積は、10.0m/g以下が好ましく、8.0m/g以下がより好ましく、7.0m/g以下が更に好ましく、5.5m/g以下が特に好ましい。
【0036】
〈細孔容積〉
本発明者らは、被覆球状化黒鉛における、リチウムの吸蔵および放出に伴う抵抗と相関する指標として、窒素吸着等温線からDFT(Density Functional Theory)法により算出される細孔容積に注目した。
そのうえで、本発明者らは、細孔径が7.8nm未満の細孔に対応する細孔容積は非晶質炭素に由来し、リチウムの吸蔵および放出に伴う抵抗には寄与しにくいことを見出した。更に、本発明者らは、細孔径が7.8nm以上36.0nm以下の細孔に対応する細孔容積が抵抗と相関する良い指標であることを明らかにした。
【0037】
具体的には、出力特性がより優れるという理由から、本発明の被覆球状化黒鉛において、細孔径が7.8nm以上36.0nm以下の細孔に対応する細孔容積(以下、便宜的に「細孔容積V」ともいう)は、0.015cm/g以上が好ましく、0.016cm/g以上がより好ましい。
同様の理由から、本発明の被覆球状化黒鉛の細孔容積Vは、0.028cm/g以下が好ましく、0.026cm/g以下がより好ましく、0.023cm/g以下が更に好ましい。
【0038】
DFT法による細孔容積の測定は、JIS Z 8831-2(ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法)およびJIS Z 8831-3(ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法)に基づいて求める。このとき、相対圧5×10-2Paから、細孔容積の測定を開始する。
【0039】
[被覆球状化黒鉛の製造方法]
本発明の被覆球状化黒鉛を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、芯材である本発明の球状化黒鉛に、炭素質前駆体を加えて混合し、その後、焼成する方法が好適に挙げられる。この方法によれば、炭素質前駆体が、混合および焼成を経て、芯材(球状化黒鉛)を被覆する炭素質となる。すなわち、被覆球状化黒鉛が得られる。
以下、この方法を詳細に説明する。
【0040】
〈炭素質前駆体〉
炭素質前駆体としては、黒鉛に比べて結晶性が低く、黒鉛化するために必要とされる高温処理をしても黒鉛結晶とはなりえない炭素材であるタールピッチ類および/または樹脂類が例示される。
タールピッチ類としては、例えば、コールタール、タール軽油、タール中油、タール重油、ナフタリン油、アントラセン油、コールタールピッチ、ピッチ油、メソフェーズピッチ、酸素架橋石油ピッチ、ヘビーオイルなどが挙げられる。
樹脂類としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂;等が挙げられる。
コスト面の観点からは、炭素質前駆体は、樹脂類を含まず、タールピッチ類のみからなることが好ましい。このような炭素質前駆体として、例えば、コールタールピッチが80質量%以上である炭素質前駆体が好適に挙げられる。
【0041】
〈混合〉
芯材(球状化黒鉛)と炭素質前駆体とを混合する。混合比率は、最終的に得られる被覆球状化黒鉛において、炭素質が上述した含有量となる混合比率が好ましい。
混合の方法は、均質に混合できれば特に限定されず、公知の混合方法が用いられる。例えば、ヒーターや熱媒などの加熱機構を有する二軸式のニーダーなどを用いて加熱混合する方法が挙げられる。
混合する際の雰囲気は、特に限定されず、例えば、空気雰囲気である。
混合する際の温度(混合温度)は、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、25℃以上が更に好ましい。一方、混合温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましい。
【0042】
〈焼成〉
上述した混合により得られる混合物を、焼成する。
焼成の方法は、特に限定されないが、焼成時の酸化を防ぐために不活性雰囲気下で焼成するのが好ましい。このとき、管状炉を使用することが好ましい。
焼成する際の雰囲気は、非酸化雰囲気として、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気、窒素雰囲気などが例示できる。
焼成する際の温度(焼成温度)は、700℃以上が好ましく、900℃以上がより好ましい。一方、焼成温度は、2000℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましく、1200℃以下が更に好ましい。
具体的には、例えば、窒素気流中、700℃以上2000℃以下で焼成することが好ましい。
焼成時間は、5分以上が好ましい。一方、焼成時間は、30時間以下が好ましい。
焼成温度まで昇温させる形態として、直線的な昇温、一定間隔で温度をホールドする段階的な昇温などの様々な形態を採ることができる。
【0043】
本発明においては、焼成の後には、粉砕を行なわないことが好ましい。
また、焼成の前に、異種の黒鉛材料を、芯材(球状化黒鉛)に付着、埋設または複合させてもよい。異種の黒鉛材料としては、例えば、炭素質または黒鉛質の繊維;非晶質ハードカーボンなどの炭素質前駆体材料;有機材料;無機材料;等が挙げられる。
【0044】
上述した「本発明の球状化黒鉛」および「本発明の被覆球状化黒鉛」を、以下、まとめて、「本発明の負極材料」と称する場合がある。
【0045】
[リチウムイオン二次電池用負極(負極)]
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、本発明の負極材料を含有するリチウムイオン二次電池用負極である。リチウムイオン二次電池用負極を単に「負極」ともいう。
【0046】
本発明の負極は、通常の負極に準じて作製される。
負極の作製時には、本発明の負極材料に結合剤を加えて予め調製した負極合剤を用いることが好ましい。負極合剤には、本発明の負極材料以外の活物質や導電材が含まれていてもよい。
結合剤としては、電解質に対して、化学的および電気化学的に安定性を示すものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリエチレン、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴムなどの樹脂;カルボキシメチルセルロース;等が用いられ、これらを2種以上併用することもできる。
結合剤は、通常、負極合剤の全量中の1~20質量%程度の割合で用いられる。
【0047】
より具体的には、まず、任意で、本発明の負極材料を分級などにより所望の粒度に調整する。その後、本発明の負極材料を結合剤と混合し、得られた混合物を溶剤に分散させて、ペースト状の負極合剤を調製する。溶剤としては、水、イソピロピルアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。混合や分散には、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどが用いられる。
【0048】
調製したペーストを、集電体の片面または両面に塗布し、乾燥する。こうして、集電体に均一かつ強固に密着した負極合剤層(負極)が得られる。負極合剤層の厚さは、10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
負極合剤層を形成した後、プレス加圧などの圧着を行なうことにより、負極合剤層(負極)と集電体との密着強度をより高めることができる。
集電体の形状は、特に限定されないが、例えば、箔状、メッシュ、エキスパンドメタルなどの網状などである。集電体の材質としては、銅、ステンレス、ニッケルなどが好ましい。集電体の厚さは、箔状の場合で5~20μm程度が好ましい。
【0049】
〈配向度〉
本発明の負極は、高密度であっても、黒鉛の配向が抑えられていることが好ましい。負極の配向度は、X線回折によって定量的に評価できる。以下にその方法を説明する。
まず、2cmの円盤状に打ち抜いた負極(密度:1.20g/cm)を、ガラス板の上に、負極が上向きとなるように貼り付ける。このようにして作成した試料に、X線を照射し、回折させると、黒鉛の結晶面に対応する複数の回折ピークが現れる。複数の回折ピークのうち、(004)面に由来する2θ=54.6°付近のピーク強度I004と、(110)面に由来する2θ=77.4°付近のピーク強度I110との比(I004/I110)を、負極の配向度とする。
負極の配向度が低いほど、充電時の負極の膨張率が小さく、非水電解質液の浸透性や流動性にも優れる。その結果、リチウムイオン二次電池の急速充電性、急速放電性、サイクル特性などの電池特性が良好となる。
具体的には、本発明の負極は、密度が1.20g/cmである場合、配向度(I004/I110)が5.0以下であることが好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下が更に好ましい。
【0050】
[リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の負極を有するリチウムイオン二次電池である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の負極のほかに、更に、正極および非水電解質などを有する。本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、負極、非水電解質、正極の順で積層し、電池の外装材内に収容することにより構成される。
本発明のリチウムイオン二次電池は、用途、搭載機器、要求される充放電容量などに応じて、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの中から任意に選択できる。
【0051】
〈正極〉
正極の材料(正極活物質)は、充分量のリチウムを吸蔵/離脱し得るものを選択するのが好ましい。正極活物質としては、リチウムのほか、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム化合物などのリチウム含有化合物;一般式MMo8-Y(式中Mは少なくとも一種の遷移金属元素であり、Xは0≦X≦4、Yは0≦Y≦1の範囲の数値である)で表されるシェブレル相化合物;活性炭;活性炭素繊維;等が挙げられる。バナジウム酸化物は、V、V13、V、Vで示される。
【0052】
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属との複合酸化物であり、リチウムと2種類以上の遷移金属とを固溶したものであってもよい。複合酸化物は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
リチウム含有遷移金属酸化物は、具体的には、LiM 1-X (式中M、Mは少なくとも一種の遷移金属元素であり、Xは0≦X≦1の範囲の数値である)、または、LiM 1-Y (式中M、Mは少なくとも一種の遷移金属元素であり、Yは0≦Y≦1の範囲の数値である)で示される。
、Mで示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどであり、好ましいのはCo、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Alなどである。好ましい具体例は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiNi0.9Co0.1、LiNi0.5Co0.5などである。
リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を所望の金属酸化物の組成に応じて混合し、酸素雰囲気下600~1000℃の温度で焼成することにより得ることができる。
【0053】
正極活物質は、上述した化合物を単独で使用しても2種類以上併用してもよい。例えば、正極中に炭酸リチウム等の炭素塩を添加できる。正極を形成するに際しては、従来公知の導電剤や結着剤などの各種添加剤を適宜に使用できる。
【0054】
正極は、例えば、正極活物質と、結合剤と、正極に導電性を付与するための導電剤とからなる正極合剤を、集電体の両面に塗布して正極合剤層を形成して作製される。
結合剤としては、負極の作製に使用される結合剤を使用できる。
導電剤としては、黒鉛化物、カーボンブラックなどの公知の導電剤が使用される。
集電体の形状は特に限定されないが、箔状または網状等が挙げられる。集電体の材質は、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等である。集電体の厚さは、10~40μmが好ましい。
正極も、負極と同様に、ペースト状の正極合剤を、集電体に塗布、乾燥し、その後、プレス加圧等の圧着を行なってもよい。
【0055】
〈非水電解質〉
非水電解質は液状の非水電解質(非水電解質液)としてもよく、固体電解質またはゲル電解質などの高分子電解質としてもよい。
前者の場合、非水電解質電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池として構成される。後者の場合、非水電解質電池は、高分子固体電解質、高分子ゲル電解質電池などの高分子電解質電池として構成される。
【0056】
非水電解質としては、通常の非水電解質液に使用される電解質塩である、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C)、LiCl、LiBr、LiCFSO、LiCHSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiN(CFCHOSO、LiN(CFCFOSO、LiN(HCFCFCHOSO、LiN((CFCHOSO、LiB[{C(CF}]、LiAlCl、LiSiFなどのリチウム塩が用いられる。酸化安定性の点からは、LiPF、LiBFが好ましい。
非水電解質液中の電解質塩の濃度は、0.1~5.0mol/Lが好ましく、0.5~3.0mol/Lがより好ましい。
【0057】
非水電解質液を調製するための溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート;1、1-または1、2-ジメトキシエタン、1、2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、1、3-ジオキソラン、4-メチル-1、3-ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテルなどのエーテル;スルホラン、メチルスルホランなどのチオエーテル;アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル;ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3-メチル-2-オキサゾリドン、エチレングリコール、ジメチルサルファイトなどの非プロトン性有機溶媒;等が挙げられる。
【0058】
非水電解質を、固体電解質またはゲル電解質などの高分子電解質とする場合、マトリクスとして可塑剤(非水電解質液)でゲル化された高分子を用いることが好ましい。
マトリクスを構成する高分子としては、ポリエチレンオキサイド、その架橋体などのエーテル系高分子化合物;ポリ(メタ)アクリレート系高分子化合物;ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物;等が好適に用いられる。
可塑剤である非水電解質液中の電解質塩の濃度は、0.1~5.0mol/Lが好ましく、0.5~2.0mol/Lがより好ましい。
高分子電解質において、可塑剤の割合は、10~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましい。
【0059】
〈セパレータ〉
本発明のリチウムイオン二次電池においては、セパレータも使用できる。
セパレータは、その材質は特に限定されないが、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが用いられる。これらのうち、合成樹脂製微多孔膜が好ましく、なかでも、ポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面でより好ましい。ポリオレフィン系微多孔膜としては、ポリエチレン製微多孔膜、ポリプロピレン製微多孔膜、これらを複合した微多孔膜などが好適に挙げられる。
【実施例
【0060】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0061】
〈実施例1〉
《球状化黒鉛の調製》
原料である鱗片状の天然黒鉛(平均粒子径:8μm)を、直列に配置された5台の粉砕装置(奈良機械製作所社製、ハイブリダイゼーションシステム)に連続的に通過させた。各粉砕装置において、粉砕時間は30分、ローターの周速度は50m/秒とした。こうして、原料を、粉砕および造粒することにより、球状化黒鉛を得た。
得られた球状化黒鉛の各物性(微粒および粗粒の体積比率など)を、上述した方法により求めた。結果を下記表1に示す。
【0062】
《被覆球状化黒鉛の調製》
得られた球状化黒鉛に、炭素質前駆体であるコールタールピッチを加え、二軸ニーダーを用いて50℃に加熱して30分間混合した。炭素質前駆体は、最終的に得られる炭素質が下記表1に示す含有量となる量で加えた。その後、管状炉を用いて、窒素5L/min流通下(非酸化性雰囲中)、1100℃で10時間焼成した。こうして、球状化黒鉛が炭素質で被覆された被覆球状化黒鉛を得た。
得られた被覆球状化黒鉛の各物性(平均二次粒子径など)を、上述した方法により求めた。結果を下記表1に示す。
【0063】
《負極の作製》
被覆球状化黒鉛(負極材料)98質量部、カルボキシメチルセルロース(結合剤)1質量部およびスチレンブタジエンゴム(結合剤)1質量部を、水に入れ、攪拌することにより、負極合剤ペーストを調製した。
調製した負極合剤ペーストを、銅箔(厚さ:16μm)の上に均一な厚さで塗布し、更に、真空中90℃で乾燥し、負極合剤層を形成した。次に、この負極合剤層を、ハンドプレスによって120MPaの圧力で加圧した。その後、銅箔および負極合剤層を、直径15.5mmの円形状に打ち抜いた。こうして、銅箔からなる集電体に密着した負極(厚さ:60μm、密度:1.20g/cm)を作製した。
なお、負極の作製と並行して、上述した方法に従い、負極の配向度を求めた。結果を下記表1に示す。
【0064】
《正極の作製》
リチウム金属箔をニッケルネットに押し付け、直径15.5mmの円形状に打ち抜いた。これにより、ニッケルネットからなる集電体に密着したリチウム金属箔(厚さ:0.5mm)からなる正極を作製した。
【0065】
《評価電池の作製》
評価電池として、図4に示すボタン型二次電池を作製した。
図4は、ボタン型二次電池を示す断面図である。図4に示すボタン型二次電池は、外装カップ1と外装缶3との周縁部が絶縁ガスケット6を介してかしめられ、密閉構造が形成されている。密閉構造の内部には、外装缶3の内面から外装カップ1の内面に向けて順に、集電体7a、正極4、セパレータ5、負極2、および、集電体7bが積層されている。
【0066】
図4に示すボタン型二次電池を、次のように作製した。
まず、エチレンカーボネート(33体積%)とメチルエチルカーボネート(67体積%)との混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなる濃度で溶解させることにより、非水電解質液を調製した。得られた非水電解質液を、ポリプロピレン多孔質体(厚さ:20μm)に含浸させることにより、非水電解質液が含浸したセパレータ5を作製した。
次に、作製したセパレータ5を、銅箔からなる集電体7bに密着した負極2と、ニッケルネットからなる集電体7aに密着した正極4との間に挟んで積層した。その後、集電体7bおよび負極2を外装カップ1の内部に収容し、集電体7aおよび正極4を外装缶3の内部に収容し、外装カップ1と外装缶3とを合わせた。更に、外装カップ1と外装缶3との周縁部を、絶縁ガスケット6を介在させて、かしめて密閉した。このようにして、ボタン型二次電池を作製した。
【0067】
作製したボタン型二次電池(評価電池)を用いて、以下に説明する充放電試験により、電池特性を評価した。結果を下記表1に示す。
以下の充放電試験においては、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電とし、負極材料からリチウムイオンが脱離する過程を放電とした。
【0068】
《充放電試験:放電容量および初期充放電効率》
まず、0.9mAの電流値で、回路電圧が0mVに達するまで定電流充電を行なった。回路電圧が0mVに達した時点で定電圧充電に切り替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた。この間の通電量から、充電容量(単位:mAh)を求めた。その後、120分間休止した。次に、0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行なった。この間の通電量から、放電容量(単位:mAh)を求めた。これを第1サイクルとした。
第1サイクルにおける充電容量と放電容量とから、次式に基づいて、初期充放電効率(単位:%)を求めた。結果を下記表1に示す。
初期充放電効率[%]=(放電容量/充電容量)×100
【0069】
《充放電試験:25℃出力抵抗率》
25℃の温度雰囲気下で、回路電圧が3.82Vに達するまで1.0Cの定電流充電を行なった。その後、0℃の温度雰囲気に調整し、3時間休止した。
次に、0.5Cで10秒間放電後、10分間休止し、0.5Cで10秒間充電後、10分間休止した。
次に、1.0Cで10秒間放電後、10分間休止し、0.5Cで、20秒でSOC(State of Charge:充電率)50%に充電を行ない、10分間休止した。
次に、1.5Cで10秒間放電後、10分間休止し、0.5Cで、30秒でSOC50%に充電を行ない、10分間休止した。
次に、2.0Cで10秒間放電後、10分間休止し、0.5Cで、40秒でSOC50%に充電を行ない、10分間休止した。
試験後、上記で求めた放電容量(単位:mAh)と、各Cレート(0.5C、1.0C、1.5C、2.0C)とを掛けて、電流値を算出した。また、そのCレートで放電を行なった際の電圧(10秒値)をそれぞれ求めた。
各Cレートでの結果を、電流値をx座標、電圧をy座標としてプロットし、それらの線形近似直線の傾きを最小二乗法から算出した。この傾きを出力抵抗(単位:Ω)とした。この値が小さいほど、出力特性に優れると評価できる。
更に、下記式から、各例(実施例および比較例)の25℃出力抵抗率(単位:%)を求めた。結果を下記表1に示す。
25℃出力抵抗率[%]=(各例の出力抵抗/実施例1の出力抵抗)×100
【0070】
〈実施例2〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を7台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を15分、ローターの周速度を80m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0071】
〈実施例3〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を4台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を10分、ローターの周速度を60m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0072】
〈実施例4〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を4台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を20分、ローターの周速度を60m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0073】
〈実施例5〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を4台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を25分、ローターの周速度を60m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0074】
〈実施例6〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を6台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を20分、ローターの周速度を60m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0075】
〈比較例1〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を4台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を5分、ローターの周速度を30m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0076】
〈比較例2〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を1台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を10分、ローターの周速度を30m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0077】
〈比較例3〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を4台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を5分、ローターの周速度を50m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0078】
〈比較例4〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を9台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を10分、ローターの周速度を90m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0079】
〈比較例5〉
原料を通過させる粉砕装置の台数を10台とし、かつ、各粉砕装置において、粉砕時間を20分、ローターの周速度を40m/秒とした。それ以外は、実施例1と同様にした。結果を下記表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
〈評価結果まとめ〉
上記表1に示すように、微粒の体積比率が40%以下であり、かつ、粗粒の体積比率が13%以上である実施例1~6は、これらの少なくともいずれかを満たさない比較例1~5よりも、出力特性が良好であった。
【符号の説明】
【0082】
1:外装カップ
2:負極
3:外装缶
4:正極
5:セパレータ
6:絶縁ガスケット
7a:集電体
7b:集電体
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4