(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】不織布、該不織布の積層不織布、及びこれらを表皮材として用いた複合吸音材
(51)【国際特許分類】
D04H 3/14 20120101AFI20220922BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220922BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220922BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20220922BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
D04H3/14
D04H3/16
B32B5/26
G10K11/16 120
G10K11/168
(21)【出願番号】P 2020559328
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048802
(87)【国際公開番号】W WO2020122205
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2018233671
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山室 信也
(72)【発明者】
【氏名】岡村 知恵
(72)【発明者】
【氏名】小尾 留美名
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一史
(72)【発明者】
【氏名】中西 康夫
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-142911(JP,A)
【文献】特開2012-045509(JP,A)
【文献】特開2013-163869(JP,A)
【文献】特開2014-037647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-3/16
B32B 5/26
G10K 11/16-11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径0.3μm以上7μm以下の1層の極細繊維層(M)と、平均繊維径10μm以上30μm以下の2層の連続長繊維層(S)とが部分熱圧着により一体化されたSMS型の積層構造を有する不織布であって、該極細繊維層(M)はメルトブロー法で形成された不織布層であり、かつ、
該連続長繊維層(S)はスパンボンド法で形成された不織布層であり、かつ、該極細繊維層(M)と該連続長繊維層(S)
とが実質的に接着している面積率が
38%以上
61%以下であることを特徴とする、吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項2】
前記部分熱圧着における圧着面積率が6%以上35%以下であり、該部分熱圧着部間の距離が、不織布のMD方向(機械方向)と該MD方向と直角のCD方向(巾方向)のいずれにおいても、0.6mm以上3.5mm以下である、請求項1に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項3】
前記極細繊維層(M)の目付が1g/m
2以上40g/m
2以下である、請求項1又は2に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項4】
前記連続長繊維層(S)が、ポリエステル(A成分)97.0重量%以上99.9重量%以下と、ガラス転移点温度114℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂(B成分)0.1重量%以上3.0重量%以下とを含有する長繊維で構成され、かつ、前記極細繊維層(M)の嵩密度が0.35g/cm
3以上0.70g/cm
3以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項5】
前記A成分がポリエチレンテレフタレートであり、かつ、前記B成分がポリアクリレート系樹脂である、請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
前記連続長繊維層(S)が、複屈折率0.04以上0.07以下の長繊維で構成され、かつ、前記極細繊維層(M)の嵩密度が0.35g/cm
3以上0.70g/cm
3以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項7】
前記不織布は、他層の融点より30℃以上低い融点を有する繊維を含む連続長繊維層をその表面に有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項8】
前記不織布の目付が20g/m
2以上150g/m
2以下であり、かつ、厚みが2mm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項9】
前記極細繊維層(M)と前記連続長繊維層(S)が共にポリエステル系繊維から構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の不織布を2枚以上積層した吸音材の表皮材として用いるための積層不織布。
【請求項11】
前記極細繊維層(M)各々の間の距離が、30μm以上200μm以下である、請求項10に記載の吸音材の表皮材として用いるための積層不織布。
【請求項12】
前記連続長繊維層(S)同士の間の繊維同士の接着が、点接着である、請求項10又は11に記載の吸音材の表皮材として用いるための積層不織布。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の吸音材の表皮材として用いるための不織布又は請求項10~12のいずれか1項に記載の吸音材の表皮材として用いるための積層不織布と、吸音材である連続気泡樹脂発泡体又は繊維多孔質材とが積層されている複合吸音材。
【請求項14】
JIS A 1405に準拠する垂直入射の測定法において表皮材側から入射する音の周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzにおける平均吸音率A(%)が、該吸音基材単体のものよりも、45%以上高い、請求項13に記載の複合吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布に関する。詳しくは、本発明は、複合吸音材の表皮材として用いる場合に、基材の吸音性を効率よく高めると共に、成型性がよく、薄く、軽量で、形態安定性に優れ、基材との接合性にも優れた不織布、該不織布の積層不織布、及びこれらを及びこれを表皮材として用いた複合吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等が走行する際には、車両に搭載されるエンジン及び駆動系からの騒音や走行中のロードノイズ、風切り音などの、種々の騒音が発生する。このような騒音が搭乗員に不快感を与えないように、エンジンフード、ダッシュパネル、天井材、ドアトリム、キャブフロア等の壁面には、騒音対策として吸音材が適用される。例えば、特許文献1には、吸音材としては、不織布、樹脂発泡体などの多孔質材からなる吸音材や、それらの吸音基材に通気性を一定の範囲に制御した不織布、樹脂膜などの表皮層を積層一体化した積層構造体が提案されている。しかしながら、表皮層は、自動車部材毎の複雑な形状とするため、成型性が必要であり、通気の制御と成型性を両立することが求められる。
【0003】
以下の特許文献2には、メルトブロー極細繊維層と合繊長繊維層との熱圧着により一体化した積層不織布からなる不織布表面材と、嵩密度が0.005~0.15g/cm3と粗な構造をもつ合繊繊維不織布裏面材とからなる吸音材が提案されているが、不織布表面材の成型性についてなんら記載がない。さらに、表面剤の合成繊維不織布の影響が大きく、広い周波数の音を吸収するものは実現できていない。
【0004】
以下の特許文献3には、メルトブロー極細繊維層とスパンボンド不織布の基布入り短繊維不織布とが機械交絡法によって積層一体化した成型性に優れた不織布が提案されているが、機械交絡法で積層一体化しているため、自動車部材としての省スペース化の観点では、不織布の厚みが厚いという欠点がある。また、機械交絡法によって生じた孔に音が直進して侵入する箇所となるため吸音性が悪いという欠点、繊維が切断され不織布強力や剛直性が低下する上にダストの原因を生じるという欠点がある。
【0005】
以下の特許文献4には、熱圧着型長繊維不織布の構成繊維をポリエステルに非相溶なポリマーを配合し分子配向を低下させ、成型性を向上させた不織布が提案されていが、比較的繊維径の大きいスパンボンド不織布のみでは、通気性が高すぎて、基材の吸音性を高める効果が不十分である。
【0006】
さらに以下の特許文献5には、配向結晶を抑制した熱可塑性長繊維層を上下層とし、平均繊維径が2μm~10μmであるメルトブロー法で作製した熱可塑性微細繊維層を中間層とし、各層がフェルトカレンダーにより熱接着で一体化された不織布であって、該熱接着が、該熱可塑性長繊維層の繊維表面同士での、及び該熱可塑性長繊維層の繊維表面と前記熱可塑性微細繊維層の繊維表面での点接着である不織布が提案されている。しかしながら、かかる積層不織布は、熱成型性に優れるも、自動車部材の成型のように高温下での成型では熱収縮量が大きいため、皺が発生しやすいという欠点がある。また、中間層の熱可塑性微細繊維の繊維径が大きいため、緻密性が乏しく、自動車用複合吸音材の表皮材としては、吸音性が悪いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-121631号公報
【文献】特許第4574262号公報
【文献】特許第3705419号公報
【文献】特願2009-145425号公報
【文献】特許第5603575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、成型性がよく、形態安定性に優れながらも、薄い低目付領域でも十分な吸音付与効果が発揮できる複合吸音材の表皮材として好適な不織布及び積層不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、極細繊維層(M)に連続長繊維層(S)が熱圧着により一体化し、特定の極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率とすることで、これまで吸音性付与に寄与し難いと考えられていた連続長繊維層(S)まで、吸音性付与効果を発現しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
【0010】
[1]平均繊維径0.3μm以上7μm以下の少なくとも1層の極細繊維層(M)と、平均繊維径10μm以上30μm以下の少なくとも1層の連続長繊維層(S)とが一体化された積層構造を有する不織布であって、該極細繊維層(M)と該連続長繊維層(S)の接着面積率が45%以上80%以下であることを特徴とする不織布。
[2]熱圧着により一体化されている、前記[1]に記載の不織布。
[3]前記熱圧着が、部分熱圧着である、前記[2]に記載の不織布。
[4]前記部分熱圧着における圧着面積率が6%以上35%以下であり、該部分熱圧着部間の距離が、不織布のMD方向(機械方向)と該MD方向と直角のCD方向(巾方向)のいずれにおいても、0.6mm以上3.5mm以下である、前記[3]に記載の不織布。
[5]前記極細繊維層(M)の目付が1g/m2以上40g/m2以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の不織布。
[6]前記連続長繊維層(S)が、ポリエステル(A成分)97.0重量%以上99.9重量%以下と、ガラス転移点温度114℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂(B成分)0.1重量%以上3.0重量%以下とを含有する長繊維で構成され、かつ、前記極細繊維層(M)の嵩密度が0.35g/cm3以上0.70g/cm3以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の不織布。
[7]前記A成分がポリエチレンテレフタレートであり、かつ、前記B成分がポリアクリレート系樹脂である、前記[6]に記載の不織布。
[8]前記連続長繊維層(S)が、複屈折率0.04以上0.07以下の長繊維で構成され、かつ、前記極細繊維層(M)の嵩密度が0.35g/cm3以上0.70g/cm3以下である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の不織布。
[9]前記不織布は、他層の融点より30℃以上低い融点を有する繊維を含む連続長繊維層をその表面に有する、前記[1]~[8]のいずれかに記載の不織布。
[10]前記不織布の目付が20g/m2以上150g/m2以下であり、かつ、厚みが2mm以下である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の不織布。
[11]前記極細繊維層(M)と前記連続長繊維層(S)が共にポリエステル系繊維から構成される、前記[1]~[10]のいずれかに記載の不織布。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の不織布を2枚以上積層した積層不織布。
[13]前記極細繊維層(M)を2層以上含み、該極細繊維層(M)各々の間に前記連続長繊維層(S)が、1層以上配置されており、かつ、該極細繊維層(M)各々の間の距離が、30μm以上200μm以下である、前記[12]に記載の積層不織布。
[14]熱圧着により一体化されたSM型又はSMS型の不織布が2枚以上積層一体化されたものである、前記[12]又は[13]に記載の積層不織布。
[15]前記極細繊維層(M)と前記連続長繊維層(S)の間又は前記連続長繊維層(S)同士の間の繊維同士の接着が、点接着である、前記[12]~[14]のいずれかに記載の積層不織布。
[16]吸音材の表皮材として用いるための、前記[1]~[15]のいずれかに記載の不織布又は積層不織布。
[17]前記[16]に記載の不織布又は積層不織布と、吸音材である連続気泡樹脂発泡体又は繊維多孔質材とが積層されている複合吸音材。
[18]JIS A 1405に準拠する垂直入射の測定法において表皮材側から入射する音の周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzにおける平均吸音率A(%)が、該吸音基材単体のものよりも、45%以上高い、前記[17]に記載の複合吸音材。
[19]以下の工程:
(1)平均繊維径10μm以上30μm以下の連続長繊維ウェブをネット上に形成する工程;
(2)前記連続長繊維ウェブの上に、平均繊維径0.3μm以上7μm以下、目付1g/m2以上40g/m2以下の極細繊維ウェブを形成する工程;
(3)前記連続長繊維ウェブと前記極細繊維ウェブとを含む積層ウェブを、平滑なロールとネットの間でニップする工程;
(4)前記積層ウェブをエンボスロールと平滑ロールの間で加熱圧着する工程;
をこの順で含む、不織布の製造方法。
[20]前記工程(2)と工程(3)の間に、さらに以下の工程:
(5)前記極細繊維ウェブの上に、平均繊維径10μm以上30μm以下の連続長繊維ウェブを形成する工程;
を含む、前記[19]に記載の製造方法。
[21]前記工程(3)において、平滑なロールの表面温度が、ロールと接触する繊維の融点より60℃以上120℃以下低い温度である、前記[19]又は[20]に記載の製造方法。
[22]前記工程(3)において、ニップの線圧が1N/mm以上10N/mm以下である、前記[19]~[21]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る不織布は、成型性がよく、薄く、軽量で、形態安定性に優れながらも成型後も一定の通気範囲に制御することができ、複合吸音材の表皮材として好適な不織布であるため、特に自動車用、住宅、家電製品、建設機械等の成型性複合吸音材の表皮材として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率(%)の測定方法の説明図である。
【
図2】極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の非(部分)熱圧着部の極細繊維層(M)のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の不織布は、平均繊維径0.3μm以上7μm以下の少なくとも1層の極細繊維層(M)と、平均繊維径10μm以上30μm以下の少なくとも1層の連続長繊維層(S)とが一体化された積層構造を有する不織布であって、該極細繊維層(M)と該連続長繊維層(S)の接着面積率が45%以上80%以下であることを特徴とする。
【0014】
本願実施形態の不織布又は積層不織布は、吸音表皮材として使用でき、基材と組み合わせることができる。本明細書中、「不織布」とは、未結合状態の単層又は複層の繊維シート(ウェブ)を、製造時に紡糸から一連で、又は、紡糸とは別工程で一体化したものをいう。本実施形態の不織布は、複層の繊維シートが積層一体化した不織布であり、例として、SM、SMS、SMM、SMMS、SMSMS、SMSSMS等が挙げられる。また、「積層不織布」とは、上記「不織布」を更に重ね合わせて一体化された不織布を言い、例えば、SMMS、SMSM、SMSMS、SMSSMS、SMMSMS等が挙げられる。
また、本明細書中、上記「不織布」又は「積層不織布」を総称して、「表皮材」「表面材」「面材」ともいう。
【0015】
本実施形態の不織布では、極少量の通気性を有し、繊維構造的には小さな繊維空隙を有する緻密な構造が存在し、音が繊維空隙に進入する際、音の振動エネルギーを極細繊維との摩擦により熱エネルギーに変換すると共に、音の振動エネルギーを受け繊維自体も振動する事でさらに熱エネルギーに変換することができる。これを吸音材(基材)と組み合わせた場合、吸音材の吸音性が飛躍的に向上する。本実施形態の不織布は、平均繊維径0.3μm以上7μm以下、好ましくは目付1g/m2以上40g/m2以下、嵩密度0.35g/cm3以上0.70g/cm3以下の極細繊維層(M)を少なくとも1層含むため、音の振動エネルギーを極細繊維との摩擦により熱エネルギーに変換し、これを吸音材と組み合わせた場合、吸音材の吸音性が向上する効果を奏することができる。
【0016】
本実施形態の不織布は、積層一体化により生ずる、極細繊維層(M)上に連続長繊維層(S)が接着された構造を有することで、音の振動エネルギーで、極細繊維層(M)が振動された際に、振動エネルギーが極細繊維層(M)連続長繊維層(S)間の接着された部位を伝達することで振動しにくい繊維径の太い連続長繊維層(S)まで振動させる効果を持つ。これにより、連続長繊維層(S)が強度保持に加えて吸音性向上に寄与しやすくすることで、吸音性を保持したまま不織布の低目付化が図れる。尚、「連続長繊維」とは、JIS L 0222に定義される「連続長繊維不織布又は連続繊維不織布」を構成する繊維と同義であり、スパンボンド法によって製造される繊維は連続長繊維となる。
【0017】
極細繊維層(M)上に連続長繊維層(S)が接着(一体化)された構造とする方法としては、下記の方法を用いることができる。接着樹脂の塗布による一体化や、熱圧着により一体化されることが可能である。熱圧着による一体化としては、例えば、公知のエンボスロールと平滑ロール(以下、フラットロールともいう)間での加熱圧着による接合、平滑ロールと平滑ロール間での加熱圧着による接合、熱平板間での加熱圧着による接合が可能である。最も好ましくは、公知のエンボスロールと平滑ロール間で加熱圧着して接合する手法であり、
図1に示すように、非(部分)熱圧着部(この方法においては、非エンボス部と同視される)において、極細繊維層(M)の緻密化が抑制できることで音の侵入を阻害しにくくなると共に、非(部分)熱圧着部においても音の振動エネルギーが極細繊維層(M)連続長繊維層(S)間の接着された部位を伝達することで、振動しにくい繊維径の太い連続長繊維層(S)まで振動させる効果が十分に発揮できる。さらには、(部分)熱圧着部(この方法においては、エンボス部と同視される)での強固な一体化が行われるため、十分な強度を持ち取り扱い性が良く、十分な成型性が得られる。
平滑ロールと平滑ロール間で加熱圧着して接合する場合や、熱平板間加熱圧着して接合する場合は、不織布の全面に圧力がかかる為、極細繊維層(M)が過剰に緻密となり音の侵入を阻害しない様に、また、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)間での層間剥離を引き起こさない程度に、低圧低温での加熱圧着とすることが好ましい。
接着樹脂の塗布による一体化の場合では、極細繊維層(M)が目詰まりを起こさず、音の侵入を阻害しにくい程度の樹脂量とすることが好ましい。
【0018】
あるいは、極細繊維層(M)上に連続長繊維層(S)が接着された構造とする方法として、ニードルパンチ、水流交絡等の機械交絡によって一体化する方法や、超音波での部分熱溶着により一体化する方法が挙げられる。但し、ニードルパンチ、水流交絡等の機械交絡による一体化では、厚みを薄くすることが困難であると共に、極細繊維層(M)に孔が開き、音が直接進入しやすくなる箇所が発生するため、所望の吸音向上効果が得られにくい。また、ニードルパンチ、水流交絡等の機械交絡による一体化では、針又は水が当たった部分しか極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着が起こらないため、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の部分接着はほとんど起こらない。
超音波での部分溶着による一体化する方法を用いることもでき、この方法によれば、超音波ホーン等の振動部と接触した部分に生じる(部分)熱圧着部(この方法においては、溶着部と同視される)では極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の溶着が十分に行われるが、超音波ホーン等の振動部と接触しない非(部分)熱圧着部(この方法においては、非溶着部と同視される)では極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の部分接着はほとんど行われない。
【0019】
本実施形態の不織布の製造方法としては、各層を一連の紡糸工程で作製し、ウェブの搬送時には、平滑なロール(プレコンパクションロール)とコンベアネット(単にネットともいう)間で低圧ニップを行い、その後エンボスロールと平滑ロール間で加熱圧着して接合する手法が好ましい。例えば、SMS構造の不織布を製造する場合では、連続長繊維層(S1)をコンベア上に吹き付け、その後極細繊維層(M)を連続長繊維層(S1)上に吹き付け、最後に、連続長繊維層(S2)を極細繊維層(M)上に吹き付ける。このように積層されたウェブの搬送時には、連続長繊維層(S1、2)のメクレ欠点発生防止、及び、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1、2)の部分接着を適度に促進するために、連続長繊維層(S1、2)吹き付け後に、平滑なプレコンパクションロールを用い、プレコンパクションロールとコンベアネット間で低圧ニップを行うとよい。プレコンパクションロールとコンベアネット間の低圧ニップで軽度に一体化したウェブをエンボスロールと平滑ロール間で加熱圧着を行う。このように連続長繊維層(S)への極細繊維層(M)の吹き付け工程、プレコンパクションロールとコンベアネット間の低圧ニップでの一体化工程を経ることで、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積を熱圧着工程以外でも促進することができる。
【0020】
プレコンパクションロールの加熱温度としては、例えば、ロール接触面に存在する繊維の融点より60℃以上120℃以下低い温度が好ましく、60℃以上100℃以下低い温度がより好ましく、圧力は1N/mm以上10N/mm以下が好ましく、より好ましくは3N/mm以上7N/mm以下である。プレコンパクションロールの加熱温度としては、例えば、融点260℃のポリエチレンテレフタレートであれば、140℃以上200℃以下が好ましい。プレコンパクションロールの加熱温度が前記範囲内であると、ガラス転移温度を超えるため樹脂の分子構造が動きやすくなり、かつ、融点よりも十分低い温度で加熱されるため、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の部分接着を適度に促進しやすい。プレコンパクションロールの加熱温度が高すぎない場合、繊維が溶融しにくく、加工時プレコンパクションロールへ繊維が付着しにくくなり、不織布の搬送がしやすい。
【0021】
この他に、予めエンボスロールと平滑ロール間で加熱圧着された連続長繊維層(S)と各極細繊維層(M)を作製した後、各層を単純に積層し種々の熱圧着法で一体化する方法も可能であるが、強度の劣る極細繊維層(M)の取り扱いに留意する必要がある。
【0022】
本実施形態の不織布の極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率は45~80%であり、好ましくは50~75%、より好ましくは55~75%である。極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率が、45%以上であると、極細繊維層(M)の振動エネルギーが連続長繊維層(S)に伝達しやすく、連続長繊維層(S)を十分に振動させることができ、吸音基材への高い吸音付与効果は高くなる。また、この接着面積率が80%以下であると極細繊維層(M)の過剰な緻密化を抑制することができ、音の進入が容易になりやすく吸音基材への高い吸音付与効果は高くなる。つまり極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率が上記範囲内であれば、音の侵入を阻害せず、連続長繊維層(S)を十分に振動させることができ、吸音基材へ吸音付与効果が高くなる。
極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率は、紡糸時の作製工程、プレコンパクションロールの温度、プレコンパクションロールとコンベアネット間のニップ圧力及び温度、連続長繊維層(S)の繊維量、繊維径、熱圧着時の温度、エンボス形状によって所望の範囲に調整することができる。
【0023】
極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率Aは、以下の方法によって求めることができる。尚、以下説明において、連続長繊維層が1層の場合は該連続長繊維層を(S1)、連続長繊維層が2層の場合は該連続長繊維層を(S1)及び(S2)とも表記する。
部分熱圧着型不織布の場合、部分熱圧着面積率Aaに、非(部分)熱圧着部において極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)とが実質的に接着している面積率Abを加算することで、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率Aを算出できる。ここで、
図1に示すように、非(部分)熱圧着部において極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)とが実質的に接着している面積率Abは、部分熱圧着部からハサミ、カッターナイフ等で非(部分)熱圧着部を切り離し、極細繊維層(M)とは接着しておらず浮いている連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)内の繊維を粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ CT405AP-15)を用いて取り除いた後、走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率200倍で、M層の表面写真(
図2参照)より、連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)の繊維の間から観察できる極細繊維層(M)の、S層の繊維によって区切られた区画毎の面積値をもとにその合計面積を算出し、その合計面積Saを、観察視野の全面積Stで除した物を、1から差し引くことにより計算できる。すなわち、「極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率A(%)」は、以下の式:
A=Aa+Ab
Ab=100×(1-(Sa/St))
部分熱圧着がない場合、前記した方法で連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)内の繊維を粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ CT405AP-15)を用いて取り除こうとしたときに繊維が取り除かれない場合、又は物理的接着がない場合のように、不織布の層間剥離がなければ、全面接合型不織布と判断し、その場合、実質的に極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)が接着している面積を、接着面積率とする。ここで、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)とが実質的に接着している面積とは、走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率200倍の不織布表面の写真より、連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)の繊維の間から観察できる極細繊維層(M)の、S層の繊維によって区切られた区画毎の面積値をもとにその合計面積Saを算出し、観察視野の全面積Snで除した物を、1から差し引くことにより計算できる。すなわち、「極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率A」は、以下の式:
A=100×(1-Sa/Sn)
不織布表面の写真において、極細繊維層Mが観察できなかった場合には、接着面積率は100%とする。
【0024】
本実施形態の不織布では、単体では取り扱い性が悪く、成型時に破れが生じるような成型性が乏しい極細繊維層(M)を繊維の分子配向を低下させた連続繊維層(S)と積層し熱圧着により一体化することにより、極細繊維層の成型性が向上している。連続長繊維層が柱の役割を果たし、延伸の際、極細繊維層に極端な応力がかかることないため、極細繊維層を均一に延伸することができる。
【0025】
本実施形態の不織布は、極細繊維層の作製工程で、特定条件の加熱空気で捕集面に吹き付けることにより、極細繊維層の自己接着性を抑制し、これにより延伸の際、極細繊維間でほぐれやすくなることで、極細繊維層の成型性がさらに向上することである。
【0026】
本実施形態の不織布の連続長繊維層(S)は、構成する繊維の配向結晶性が低く、延伸性、熱延伸性が高いことが好ましい。連続長繊維の低配向、低結晶は、紡糸速度を低くすること、ポリマーブレンド等によって達成できる。連続長繊維の配向結晶性は、複屈折率で測定することができ、低複屈折率であると、延伸性、熱延伸性を得やすい。
【0027】
連続長繊維層(S)の複屈折率Δnは、好ましくは0.04以上0.07以下であり、より好ましくは0.04以上0.07以下、さらに好ましくは0.04以上0.06以下、最も好ましくは0.04以上0.05以下である。複屈折率Δnが前記範囲内であると、繊維の配向が適度で、高伸度の繊維が得られ適度な熱量でカレンダ加工が実施でき、部分熱圧着時に十分な熱量を付与でき、熱収縮しにくく、耐熱性に優れた、連続長繊維層が得られる。さらに、複屈折率Δnが前記範囲内であると、繊維の伸度が十分となり、十分な成型性が得られる。
【0028】
連続長繊維層(S)の紡糸方法は、既知のスパンボンド法を適用することが好ましい。摩擦帯電やコロナ帯電などにより糸条を均一に分散させる条件下で作製することが好ましい。このような条件を用いれば、未結合状態のウェブを生成しやすく、かつ、経済性に優れる。また、連続長繊維層のウェブは単層でも複数を重ねた層でもよい。
【0029】
連続長繊維層(S)を構成する素材としては溶融紡糸法で繊維化できる熱可塑性合成樹脂が用いられる。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなど)、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリD-乳酸、ポリL-乳酸、D-乳酸とL-乳酸との共重合体、D-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D-乳酸とL-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、これらのブレンド体など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、共重合ポリアミドなど)、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。熱可塑性合成樹脂としては、特に、耐熱性、耐水性などに優れる芳香族ポリエステル系樹脂が好ましく用いられる。芳香族ポリエステル系樹脂としては、熱可塑性ポリエステルであって、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが代表例として挙げられる。また、芳香族ポリエステル系樹脂は、エステルを形成する酸成分としてイソフタル酸やフタル酸等が重合又は共重合されたポリエステルであってもよい。
【0030】
複合吸音材の基材と接する不織布の連続長繊維層は、他層の繊維の融点より30℃以上低い融点を有する繊維を含んでもよい。すなわち、不織布面材と基材の接着性を良好に保つために、基材と接触する層を低融点の繊維構成にすることもできる。低融点の繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維などが挙げられる。これらの繊維は、単独でもよく、2種以上複合混繊してもよく、また、低融点繊維と高融点繊維とを複合混繊してもよい。更に、低融点成分を鞘部に有する、鞘芯構造の複合繊維を用いてもよい。鞘芯構造の複合繊維としては、例えば、芯が高融点成分であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、鞘が低融点成分である共重合ポリエステル、脂肪族エステルなどが挙げられる。
【0031】
複屈折率Δnを、0.04以上0.07以下の範囲にするためには、ポリマーブレンドを用いることができる。例えば、連続長繊維層は、ポリエステル(A成分)97.0重量%以上99.9重量%以下と、ガラス転移点温度114℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂(B成分)0.1重量%以上3.0重量%以下を含有する長繊維で構成されるものであることができる。
【0032】
ポリエステル(A成分)としては、熱可塑性ポリエステルであって、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが代表例として挙げられる。また、熱可塑性ポリエステルは、エステルを形成する酸成分としてイソフタル酸やフタル酸等が重合又は共重合されたポリエステルであってもよい。
【0033】
ガラス転移点温度が114℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂(B成分)は、好ましくは、ポリアクリレート系樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
ポリアクリレート系樹脂であれば、極少量の添加量によって配向結晶化抑制効果が期待できるため、紡糸時の発煙による延伸装置の汚染を防ぐことができる。ポリエステル(A成分)に対する添加量が極少量であれば、溶融混錬時に糸中のポリアクリレート系樹脂の分散が均一となり、不織布を延伸した際に、延伸斑を抑制できる効果が得られ、成型後のコア材の局部的な露出を抑えることができる。
ポリアクリレート系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル2元共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル・シクロヘキシルマレイミド共重合体等が挙げられる。より少量の添加量で配向結晶化抑制効果を奏するため、メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル2元共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル・シクロヘキシルマレイミド共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体が好ましい。
【0034】
ポリエステル系長繊維の主要成分であるポリエステル(A成分)に対するガラス転移点温度114℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂(B成分)の添加量は、紡糸性や得られる不織布の破断伸度の面から0.1重量%以上3.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.25%以上2.5重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上2.0重量%以下である。ポリアクリレート系樹脂の添加量が上記範囲内であると、高伸度化された繊維が得られやすく、紡糸中に糸切れが多発しにくく、安定して連続した繊維が得られ生産性が向上すると共に、紡糸時の発煙による延伸装置の汚染や、糸のポリアクレート系樹脂の分散が助長されにくく、延伸斑による成型後のコア材の局部的な露出が発生しにくい。
【0035】
ポリエステル(A成分)とガラス転移点温度114℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂(B成分)とは、A成分が海部を形成し、B成分が島部を形成する海島構造を形成することが好ましい。特定の理論に束縛されることを欲しないが、これは、A成分よりも先にB成分が溶融状態からガラス状態へと転移して延伸が終了することで、海部を形成するA成分の延伸及び配向結晶化が阻害されることによるものと推定される。それゆえ、海部の配向結晶化は抑制され、低結晶性のまま延伸が終了し、高伸度の繊維が得られる。そのため、B成分のガラス転移点温度は、A成分のガラス転移点温度より高いことが必要である。また、B成分のガラス転移点温度が160℃以下の場合、糸切れが多発しにくく好ましい。PETのガラス転移点温度70℃以上80℃に鑑みると、B成分のガラス転移温度は、114℃以上160℃以下であり、好ましくは120℃以上130℃以下であることができる。
【0036】
B成分を添加する場合、連続長繊維層(S)を得るに際して紡糸速度は、3000m/min以上8000m/min以下が好ましく、より好ましくは4000m/min以上6000m/min以下である。高紡糸速度の方がB成分の添加による高伸度化効果が大きくなる傾向にある。3000m/min以上であると、配向結晶化を抑制することができ、十分な不織布の破断伸度上昇効果が得られ、また、十分な機械的物性を得ることができる。他方、8000m/min以下であると、高伸度の繊維が得られ、紡糸中の糸切れを抑止でき、不織布の生産性を向上させることができる。
【0037】
複屈折率Δnを、0.04以上0.07以下の範囲内にする方法として、紡糸速度をコントロールする方法がある。B成分を添加しない場合、連続長繊維層(S)を得るに際して紡糸速度は、3000m/min以上4000m/min以下が好ましく、より好ましくは3200m/min以上3700m/min以下である。紡糸速度が上記範囲内であると、配向結晶化抑制効果が得られ、不織布の破断伸度上昇効果が大きく、高伸度の繊維が得やすく、機械的物性が十分となりやすい。
【0038】
連続長繊維層(S)を構成する長繊維の平均繊維径は10.0μm以上30.0μm以下であり、好ましくは12.0μm以上30.0μm以下、より好ましくは12.0μm以上20.0μm以下、さらに好ましくは13.0μm以上20.0μm以下、最も好ましくは13.0μm以上18.0μm以下である。紡糸安定性の観点から10.0μm以上であり、他方、強力や耐熱性の観点から30μm以下である。長繊維の平均繊維径が上記範囲内であれば、繊維の結晶性が高すぎず、結晶部分が少なくなり繊維の伸度が向上し、成型性が良くなりやすく、部分熱圧着時に熱収縮が生じにくく、繊維が熱圧着ロールの熱により融解してロールに取られにくいため、不織布の生産性も良好となり、さらに、カバーリング性も向上し、不織布強度も向上し、紡糸安定性も良好となる。
【0039】
本実施形態の不織布は、極細繊維層(M)を少なくとも一層含むことが必要である。なぜなら、極細繊維層がなければ、小さな繊維空隙を有する緻密な構造とできず、進入する音の波長が細孔中の摩擦抵抗で小さくなることでの吸音特性のコントロールができなくなるからである。
【0040】
極細繊維層(M)は、比較的生産コストの低い、メルトブロー法によって作製することが好ましい。極細繊維層(M)の平均繊維径は0.3μm以上7μm以下、好ましくは0.4μm以上5μm以下、より好ましくは0.6μm以上2μm以下である。メルトブロー法で0.3μm未満の繊維径に紡糸するには過酷な条件が必要となり、安定した繊維が得られない。他方、繊維径が7μmを超えると連続長繊維の繊維径に近くなり、連続長繊維層(S)の隙間に微細繊維として入り込んで該隙間を埋める作用が得られず、緻密な構造が得られない。
【0041】
吸音材として用いられる、比較的密度が小さく、空隙の多い多孔質材との複合においては、音源側に配置される不織布表皮材はより緻密であることが求められるが、過剰な全面接合等で密度を上げることで緻密にするような手法では、熱融着により繊維の表面積が低下し、音と繊維の摩擦による熱エネルギー変換が低下する。それゆえ、過剰な全面接合等で密度を上げるよりも、より細繊維とすることにより緻密化を行うことが好ましい。
極細繊維層(M)の目付は、低目付で十分な吸音性を得る点から、1g/m2以上40g/m2、好ましくは2g/m2以上25g/m2以下、より好ましくは3g/m2以上20g/m2以下である。
【0042】
極細繊維層(M)の素材としては、前記した連続長繊維層(S)に使用可能な熱可塑性合成樹脂を同様に用いることができる。
【0043】
極細繊維層(M)の素材がPET又はその共重合体の場合には、極細繊維の溶液粘度(ηsp/c)は0.2以上0.8以下が好ましく、より好ましくは0.2以上0.6以下である。また、PETのメルトブロー極細繊維では、他の合繊に比較して結晶化が遅く、低結晶の流動性のある状態で連続長繊維層の隙間に侵入できるため連続長繊維層の繊維間隙を埋めて緻密な構造を得ることができる。
【0044】
不織布の連続長繊維層(S)及び極細繊維層(M)の繊維断面の形状は、特に制限されないが、強度の観点からは、丸断面が好ましく、繊維の表面積の増加、微細空隙の形成の観点からは、偏平糸などの異型断面糸が好ましい。本実施形態の不織布は、極細繊維層(M)を少なくとも一層含み、連続長繊維層(S)を少なくとも一層を含み、これにより、構成する繊維、各層が延伸性を持つことができる。極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)とのSM型又はSMS型等の積層構造が好ましい。均一性の観点からは、SMM層又はSMMS層のように極細繊維層が複数層積層されていてもよい。一般に、細い繊維は剛性がなく、延伸しても切れやすく、極細繊維層を作製する際、糸の吹き飛び防止等の紡糸性、強度や取り扱い性を良くする為、自己接着性を高めることが行われ、繊維間の拘束が強くなり自由度が低く、伸びにくい。本願実施形態では、連続長繊維層が柱の役割を果たし、延伸の際、極細繊維層に極端な応力がかかりにくく、極細繊維層を均一に延伸することができ、不織布全体として延伸性を発現できる。
【0045】
本実施形態の不織布の極細繊維層をメルトブロー法で形成する場合は、メルトブロー法で加熱空気の吹き飛ばしにより細繊化し、裏側から吸引しているコンベアネット上、又は連続長繊維層上の補集面に、高温で吹き付け繊維間の融着による自己接着を利用してシート化される。そのため、一般的にメルトブロー法で細繊化を行うと、繊維間の融着による自己接着が強くなることで、フィルムライクとなり成型時に延伸される際、極細繊維層がほぐれずひび割れてしまう現象を引き起こしてしまう。しかしながら、本発明者らは、検討の結果、詳細は後述するが、メルトブローノズルと捕集面との距離を所定の距離とすることで、細繊維化しても融着による自己接着の度合を制御することができることを見出した。
【0046】
自己融着性の指標として、熱圧着によって一体化した積層不織布中の極細繊維層の嵩密度を用いることができる。非圧着部について走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真から画像解析により直接的に極細繊維層の厚みを測定し、極細繊維層の平均目付と極細繊維層の厚みから、嵩密度を算出することができる。極細繊維層単体で目付が計算できない場合は、不織布のX線CT画像を撮り、X線CT画像より、観察範囲の面積、極細繊維層が占める体積と樹脂密度、厚みから、嵩密度を計算することができる。不織布のX線CT画像は、高分解能3DX線顕微鏡 nano3DX(リガグ製)で撮影することができる。極細繊維層(M)の嵩密度は、0.35g/cm3以上0.70g/cm3以下であり、好ましくは0.40g/m3以上0.65g/cm3以下、より好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。0.7g/cm3以下であると、フィルムライクとなりにくく、成型時に延伸される際、極細繊維層がほぐれずひび割れてしまう現象を引き起こしにくい。他方、0.35g/cm3以上であると、融着による自己接着が弱すぎず積層工程等での取り扱いが困難となりにくい。
【0047】
ここで、極細繊維層(M)の嵩密度は、一般に不織布全体の目付、糸量等から予想される嵩密度とは異なる。極細繊維層(M)は、繊維間の自己接着の度合いを制御したものであり、単に、不織布構成、素材から計算するのではなく、実際に、直接的に極細繊維層の厚みを測定し、得られるものである。そのため、極細繊維層(M)の嵩密度は、単に、例えば、SMS不織布の全体目付、厚み、嵩密度等から予想されるものではない。
【0048】
極細繊維層(M)の嵩密度を0.35g/cm3以上0.70g/cm3以下とするために、メルトブローノズルと捕集面との距離を調節することができる。メルトブローノズルと捕集面との距離は、加熱空気の温度、流量等の条件や、極細繊維層の目付、搬送速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められないが、100mm以上200mm以下の距離が好ましく、より好ましくは110mm以上180mm以下、さらに好ましくは120mm以上150mm以下である。メルトブローノズルと捕集面との距離が100mm以上であると、加熱空気の温度、流量を高くしても極細繊維のフィルム化が発生しにくく、成型時に延伸される際、極細繊維層がほぐれずひび割れが発生しにくい。200mm以下であると、空気中での繊維間の絡み合いが発生しにくく、斑が発生しにくくなると共に、融着による自己接着が弱すぎず積層工程等での取り扱いが良好となる。
【0049】
本実施形態の不織布を構成する不織布各層は、熱圧着で一体化される。例えば、公知のエンボスロールと平滑ロール間、又は平滑ロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合することが可能であり、特にエンボスロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合することが好ましい。不織布全面積に対して6%以上30%以下の範囲の圧着面積率で部分熱圧着が行われることが好ましく、より好ましくは7%以上25%以下である。熱圧着面積率が6%以上であると、毛羽立ちが少なく、30%以下であると不織布がペーパーライクになりにくく、破断伸度、引裂強力等の機械的物性が低下しにくい。圧着面積率がこの範囲内であれば、良好な繊維相互間の熱圧着処理を実施することができ、得られる不織布を、適度な機械的強度、剛性、寸法安定性を有するものとすることができる。
熱圧着部の形状については、特には限定されないが、好ましくは織目柄、アイエル柄(長方形柄)、ピンポイント柄、ダイヤ柄、四角柄、亀甲柄、楕円柄、格子柄、水玉柄、丸柄などが例示できる。
【0050】
熱圧着によって不織布に転写される(部分)熱圧着部間の距離は、不織布のMD方向(機械方向)と該MD方向と直角のCD方向(巾方向)のいずれにおいても、0.6mm以上3.5mm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.8mm以上3.4mm以下、さらに好ましくは1mm以上3mm以下である。熱圧着部間の距離が範囲内であれば、不織布の過度な剛性向上を抑制できると共に、圧着されていない自由度の高い糸が圧着部から外れて毛羽立つ現象を十分に抑制することができる。さらには非圧着部においても極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着が十分に行われ吸音性能に優れる点が期待できる。熱圧着部間の距離が狭すぎなければ、毛羽立ちを防ぎつつ、剛性が高くなりすぎず、加熱プレスによる成形加工時にズレなどが大きくなりにくく、成形加工性が良く、非圧着部において極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着が過度に行われることが抑制され、音の進入が阻害されにくい。熱圧着部間距離が広すぎなければ、不織布の剛性が低くなりすぎず、成型加工性が良く、毛羽立ちにくく、非圧着部において極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着が十分に行われ、連続長繊維層(S)の振動による吸音性能向上が高まる。
【0051】
熱圧着の温度は、供給されるウェブの目付、速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められないが、長繊維を構成する樹脂の融点よりも30℃以上90℃以下低い温度であることが好ましく、より好ましくは40℃以上70℃以下低い温度である。また、エンボスロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合する場合であって、エンボスロール面に接する樹脂種とフラットロール面に接する樹脂種が同じ場合、エンボスロールとフラットロールの温度差は、10℃未満であることが好ましく、より好ましくは5℃未満、さらに好ましくは3℃未満である。但し、エンボスロール面に接する樹脂種とフラットロール面に接する樹脂種の融点が異なる場合、紡糸速度、糸の配向結晶性が異なる場合は、この限りではない。エンボスロールとフラットロールの温度差が上記範囲内であれば、ロール温度が低い側の毛羽も立ちにくくなり、成型により毛羽立ちも抑制でき、成型時の延伸の際、毛羽立ちによって熱圧着部から糸が外れにくくなり、糸が外れた部分へ応力集中しにくくなり延伸斑を抑制でき、吸音基材の露出を抑えることができ、さらには、非圧着部において極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着が十分に行われ、連続長繊維層(S)の振動による吸音性能向上が高まる。また、温度の差が過度に大きくなければ、片面側の熱量不足による耐熱性不足となりにくい。尚、ロール温度の差をつけた場合には、延伸時の応力を下げることができ、成型性が向上する。
【0052】
熱圧着の圧力も、供給されるウェブの目付、速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められないが、10N/mm以上100N/mm以下であることが好ましく、より好ましくは30N/mm以上70N/mm以下であり、この範囲内であれば、良好な繊維相互間の熱圧着処理を行うことができ、得られる不織布を適度な機械的強度、剛性、寸法安定性を有するものとすることができる。
【0053】
本実施形態の不織布の少なくとも1面の毛羽等級は、3級以上であることが好ましく、より好ましくは3.5級以上である。毛羽等級が3級以上であれば、成型工程での取り扱いに十分に耐えうる物となり、成型後のエンボスマークの損失、毛羽立ちを抑制できる。
また、本実施形態の不織布の表裏面の毛羽等級差は0.5級未満であることが好ましく、より好ましくは0.3級未満である。毛羽等級差が0.5級未満であれば、成型時の延伸の際、毛羽等級が低い面の毛羽立ちによって熱圧着部から糸が外れている箇所で、応力集中しにくく延伸斑を誘発しにくく、吸音基材の露出を抑制しやすい。但し、延伸斑を考慮しない場合はこの限りではない。
【0054】
本実施形態の不織布の目付は20g/m2以下以上150g/m2以下が好ましく、より好ましくは25g/m2以上130g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以上100g/m2以下である。目付が20g/m2以上であると、繊維量が少なすぎず、不織布の均一性及び緻密性が向上し、適度な空隙が得られる。他方、目付が150g/m2以下であれば、適度な緻密構造が得られ、剛性が高くなりにくく、成型性が良く、取扱性が向上し、さらに低コストとなる。
【0055】
本実施形態の不織布の厚みは、2mm以下が好ましく、より好ましくは0.1mm以上2.0mm以下、さらに好ましくは0.2mm以上1.8mm以下、最も好ましくは0.2以上1.5mm以下である。不織布の厚みが上記範囲内であれば、熱圧着が十分であり、自由度の高い糸が圧着部から外れて毛羽立つ現象が発生しにくく、自動車部材としての省スペース化が図れ、加えて、剛性が適度となり、不織布積層時にシワが発生しにくく取扱い性が良く、吸音材を種々の形状に加工する際に屈曲性が十分となり加工性が向上し、さらに、不織布が潰れすぎず、連続長繊維層が持つ空気層を十分確保することができ、高い吸音性能を得やすい。
【0056】
本実施形態の不織布全体の嵩密度は、0.1g/cm3以上0.7g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.15g/cm3以上0.6g/cm3以下、さらに好ましくは0.2g/cm3以上0.55g/cm3以下である。嵩密度が0.1g/cm3以上であれば、不織布の緻密性が向上し、音の減少する効果が向上する。他方、嵩密度が0.7g/cm3以下であれば、不織布の緻密性が高過ぎず、空隙が少なくなりすぎず、音の進入が十分となり、特に中周波数4000Hz付近の吸音率が下がりにくく、加工性も向上する。
【0057】
本実施形態の不織布のJIS L 1906フラジール形法によって測定される通気度は、100mL/cm2/sec以下が好ましく、より好ましくは0.1mL/cm2/sec以上50mL/cm2/sec以下、さらに好ましくは0.5mL/cm2/sec以上30mL/cm2/secである。通気度が100mL/cm2/sec以下であれば、進入する音の波長を小さくすることができ、音エネルギーの減少効果を得やすい。
【0058】
本実施形態の不織布の同時2軸延伸前の通気度の値から同時2軸延伸機を用い150℃雰囲気下での面積展開率200%とした際の通気度の上昇率は、250%未満であり、より好ましくは225%未満であり、さらに好ましくは200%未満である。同時2軸延伸前後の通気度の上昇率が250%未満であると、極細繊維層のひび割れや、ピンホールなどの欠点が発生しにくく、部分的な破断箇所も発生しにくい。
【0059】
本実施形態の不織布の、同時2軸延伸機を用い150℃雰囲気下での面積展開率200%で延伸した時のMD方向の最大応力とCD方向の最大応力の和は、10N以上55N以下であり、より好ましくは15N以上50N以下、さらに好ましくは15N以上45N以下である。55N以下であれば、成型性が向上し、凹部での皺の発生や、成型後の吸音基材の凹凸がきれいに仕上がり、所望の構造が得られやすい。他方、10N以上であれば、エンボス部の圧着が十分であり、毛羽立ちが起こりにくい。尚、上記面積展開率200%で延伸した時のMD方向の最大応力とCD方向の最大応力の和は、同時2軸延伸機を用い、24cm×24cmを保持距離とし、150℃雰囲気下、MD方向、CD方向共に9.94cm延伸した際の最大応力を測定して求めた。
【0060】
本実施形態の不織布の180℃雰囲気下、10分間における乾熱収縮率は、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。5%を超えない場合、成形加工時、収縮によりシワが顕著に発生しにくい。
【0061】
本実施形態の積層不織布は、極少量の通気性を有し、繊維構造的には小さな繊維空隙(細孔)を有する緻密な構造であり、音が繊維空隙(細孔)に進入するとき、進入する音の振幅が細孔中の摩擦抵抗により小さくなり、音の振動エネルギーを極細繊維との摩擦により熱エネルギーに変換し、これを表皮材として用いた場合に、吸音基材の吸音性を飛躍的に向上させる効果を奏することができる。
【0062】
積層不織布の構成としては、極細繊維層(M)を少なくとも2層以上含み、極細繊維層(M)間に連続長繊維層(S)が1層以上配置されたものであることができる。本願実施形態の積層不織布の場合、極細繊維層(M)が音の振動エネルギーを極細繊維との摩擦により熱エネルギーに変換し、吸音基材の吸音性が向上する効果を得られる。また、本実施形態の不織布の特徴である疎な連続長繊維層が持つ空気層が背後空気層のようにバネの役割となることで、極細繊維層(M)内の空気をより効率的に振動させて、極細繊維層(M)内の空気と極細繊維との摩擦により、音の振動エネルギーを熱エネルギーへ変換し、吸音基材の吸音性を向上させる効果を得られる。更には、吸音基材で吸収しきれず反射した音が、本実施形態の積層不織布を透過する際に、もう一度上記の効果により熱エネルギーへの変換を促すことができる。
【0063】
本実施形態の積層不織布は、熱圧着により一体化したSM型又はSMS型の積層構造を有する不織布を、2枚以上積層することが好ましい。これを熱圧着により一体化することで、簡便に積層構造を得ることができる。
【0064】
極細繊維層(M)間に、連続長繊維層(S)を一体化する方法としては、SM型又はSMS型の積層構造を持つ部分熱圧着された不織布を予め作製し、かかる不織布を2枚以上積層した後、例えば、平板熱プレスやホットメルト剤などの接着剤や低融点成分を含む鞘芯繊維を用いて一体化する方法、超音波溶着によって一体化する方法、ニードルパンチや水流交絡等の機械交絡によって一体化する方法等が挙げられる。
【0065】
本実施形態の積層不織布の極細繊維層(M)間の距離は、30μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは40μm以上180μm以下、さらに好ましくは50μm以上150μm以下である。極細繊維層(M)間の距離が、30μm以上であれば、連続長繊維層(S)が持つ空気層が十分になりやすく、吸音基材への高い吸音付与効果が得られやすい。他方、200μm以下であれば、各不織布層間の接着が十分となり、はがれが起きにくい。極細繊維層(M)間の距離が上記範囲内であれば、連続長繊維層(S)が持つ空気層を十分確保でき、吸音基材へ吸音付与効果が高くなる。
極細繊維層(M)間の距離は、連続長繊維層(S)の繊維量、繊維径、各不織布層の圧着度合による厚み、積層不織布を作製する際の一体化時の熱プレス等の圧力調整等によって所望の範囲を得ることができる。
【0066】
本実施形態の積層不織布における、吸音基材と接する連続長繊維層(S)、及び/又は極細繊維層(M)間に配置される連続長繊維層(S)の内の少なくとも1層は、極細繊維層(M)を構成する繊維の融点よりも30℃以上低い融点を有する繊維を含むことが好ましい。30℃以上低い融点を有する繊維を用いることで、不織布同士、積層不織布と吸音基材等の間での繊維同士の接着が容易となる。
【0067】
積層不織布を構成する低融点の繊維としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維、共重合ポリアミドなどの合成繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独でもよく、2種以上複合混繊してもよく、また、低融点と高融点繊維とを複合混繊してもよい。低融点の繊維としては、好ましくは、低融点成分を鞘部に有する、鞘芯構造の複合繊維が挙げられ、例えば、芯が高融点成分であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどであり、鞘が低融点成分である低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエステル、脂肪族エステルなどであるものである。
【0068】
積層不織布の各層間、すなわち、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の間又は連続長繊維層(S)同士の間の接着は、接着面を構成する層の繊維同士点接着であることが好ましい。点接着とは、加熱ロールによる熱接着や低融点繊維やホットメルト材等を用いての熱接着により繊維同士の表面が接着されていること、超音波溶着により、繊維を構成する樹脂が一部溶融し繊維同士が溶着していることをいう。点接着の状態は、積層不織布の断面をSEMで観察することで確認することができる。糸同士が点接着していると、接着している繊維同士の距離が不均一となり、繊維同士が振動する際、種々の振動を受けることになり、吸音効果が得やすくなる。繊維同士を絡めて積層する方法、例えば、ニードルパンチを用いた方法では、不織布の繊維同士が直接接着していないため、点接着となりにくい場合がある。
【0069】
本実施形態の表皮材は、吸音材の補強材として有効であると共に、これに、黒色などの印刷性、撥水性、難燃性などの表面機能を付与する加工を施すことができる。具体的には、染色、印刷などの着色加工、フッソ樹脂による撥水加工、フェノール系樹脂、熱硬化性アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂の付与加工、燐系などの難燃剤による難燃加工が挙げられる。
【0070】
本実施形態の表皮材を用いた複合吸音材に用いられる吸音基材の嵩密度は、0.01g/cm3以上0.3g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.02g/cm3以上0.25g/cm3以下、さらに好ましくは0.03g/cm3以上0.2g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.03g/cm3以上0.1g/cm3以下である。嵩密度が0.01g/cm3以上であれば、吸音性が低下しにくく必要以上に厚みを厚くする必要がない。他方、嵩密度が0.1g/cm3以下であれば、不織布表皮材を透過した音が吸音基材に進入しやすく、また、耐摩耗性、加工性も向上する。
【0071】
吸音基材と表皮材を組み合わせて、高い吸音性を有しながらも、薄く、軽量で、形態安定性に優れた複合吸音材とするためには、吸音基材を特定の嵩密度とすることが望ましい。吸音基材の嵩密度は、不織布及び積層不織布との組み合わせ前に公知の熱プレス機などで圧縮調整されていてもよく、自動車部材等に熱成型加工で合繊繊維不織布を積層した後、吸音基材と一体成型する際に圧縮調整されていてもよい。
【0072】
吸音基材の厚みは、5mm以上50mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以上40mm以下である。厚みが5mm以上であれば、吸音性が十分であり特に低周波数の吸音率が低下しにくい。他方、厚みが50mm以下であれば、吸音材の大きさが大きくなりすぎず、貼り合わせ加工性、取り扱い性、製品輸送性などが向上する。
【0073】
吸音基材の素材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂などがからなる連続気泡樹脂発泡体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル、芯がポリプロピレン、ポリエステルなどの組み合わせからなる芯鞘構造等の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの短繊維及び/又は長繊維を積層して公知のニードルパンチ法などで交絡して得られた吸音性合成繊維不織布、フェルトが挙げられる。さらに、無機素材として、例えば、ガラス繊維、ガラスウール等が挙げられる。成型性向上のため、これらの繊維系基材はフェノール等の熱硬化樹脂を含むこともできる。
連続気泡樹脂発泡体としては、軽量性、吸音性の観点から、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、吸音性合成繊維不織布としては、難燃性などからポリエステル系繊維からなる不織布が好ましい。
【0074】
本実施形態の表皮材を用いた複合吸音材は、前記した不織布又は積層不織布と粗な構造の吸音基材とを接合一体化して得られる。表皮材と吸音基材の接合は、例えば、熱融着繊維を接合面に介在させる方法、ホットメルト系樹脂や接着剤を塗布する方法などにより行うことができる。
【0075】
接着剤を用いた接着方法においては、カーテンスプレー方式、ドット方式、スクリーン方式などにより、不織布表皮材にホットメルト系接着剤を2g/m2以上30g/m2以下の割合で塗布し、不織布表皮材側から加熱して、塗布した接着剤を軟化、融解させて吸音基材に接着することができる。
【0076】
表皮材と吸音基材との間の接着力としては、0.1N/10mm以上が好ましく、より好ましくは0.2N/10mm以上5N/10mm以下である。接着力が0.1N/10mm以上であると、吸音材の裁断、輸送などの間に剥離するなどの問題が生じにくい。高い接着力を得るためには、不織布表皮材の接着面に低融点成分層を設けることが好ましく、更に、連続気泡樹脂発泡体、繊維多孔質材にホットメルト系の接着剤を塗布することも好ましい。
【0077】
本実施形態の積層不織布を用いた複合吸音材は、JIS-1405に準拠する垂直入射の測定法において、周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzの平均吸音率A(%)から、下記式により求める吸音寄与効果が、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上である。
【0078】
吸音寄与効果(%)は、下記式:
吸音寄与効果(%)=A-A0
{式中、Aは、複合吸音材の平均吸音率A(%)であり、そしてA0は、吸音基材単独の平均吸音率(%)である。}
により算出される。
【0079】
本実施形態の不織布は、BASF社製メラミン樹脂連続発泡体「バソテクト TG」10mm厚みに共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/m2の割合で塗布したのち、同時2軸延伸前の不織布を積層したのち加熱処理により接合した複合吸音材において、JIS-1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて表皮材面から入射するよう配置し、代表値として周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzを測定し、その平均吸音率A(%)を算出し下記式により求める吸音寄与効果が、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上である。
尚、吸音寄与効果(%)は、下記式:
吸音寄与効果(%)=A-A0
{式中、Aは、複合吸音材の平均吸音率A(%)であり、そしてA0は、吸音基材単独の平均吸音率(%)である。}
により算出される。
【0080】
尚、BASF社製メラミン樹脂連続発泡体「バソテクト TG」10mm厚みの単体での吸音性能は「1000Hz:11%、1600Hz:14%、2000Hz:18%、2500Hz:20%、3150Hz:24%、及び4000Hz:31%、平均吸音率:20%」であった。
【0081】
本実施形態の不織布は、BASF社製メラミン樹脂連続発泡体「バソテクト TG」10mm厚みに共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/m2の割合で塗布したのち、同時2軸延伸前又は後の不織布を積層した後、加熱処理により接合した複合吸音材において、JIS-1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて表皮材面から入射するよう配置し、代表値として周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzを測定し、その平均吸音率を算出し、同時2軸延伸前平均吸音率(%)、同時2軸延伸後平均吸音率(%)としたとき、延伸前同時2軸延伸前後の吸音率の差が、好ましくは15%未満、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは11%以下である。吸音率の効果を以下の基準にて評価できる。
〇:15%未満
×:15%以上。
【0082】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、不織布製造における流れ方向(機械方向)をMD方向、その方向と直角方向で巾方向をCD方向という。
以下の実施例等における各物性は、下記方法により測定して得られたものである。尚、本発明は原則的に下記方法により測定されるが、下記方法により測定できない事情がある場合は、適宜合理的な代替方法によって測定することが可能である。
【0083】
(1)熱可塑性樹脂成分のガラス転移点温度及び融点(℃)
各熱可塑性樹脂のサンプル5mgを採取し、示差走査型熱量計(TA instruments社製Q100)にて、窒素雰囲気下で20℃から10℃/分にて290℃まで昇温させたときの発熱ピーク位置の温度をガラス転移点温度、吸熱ピーク位置の温度を融点として求めた。
【0084】
(2)目付(g/m2)
不織布全体の目付はJIS L 1913に準拠して測定した。また、各層の目付は本実施例では製造条件から計算される値を各層の目付とした。尚、製造条件が不明である場合、各層目付は、層間剥離できるものは剥がして単層としてからJIS L 1913に準拠して測定することができる。また、層間剥離ができない場合は、不織布のX線CT画像を撮り、X線CT画像から、観察範囲の面積、極細繊維層が占める体積と樹脂密度、厚みから計算することができる。
【0085】
(3)平均繊維径(μm)
キーエンス社製のVHX-700Fマイクロスコープを用いて500倍の拡大写真を撮り、観察視野においてピントの合った繊維10本の平均値で求めた。
【0086】
(4)嵩密度(g/cm3)
(目付)/(厚み)から算出し、単位容積あたりの重量を求めた。
【0087】
(5)厚み(mm)
JIS L 1913 B法に準拠した。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、その平均値を求めた。但し、不織布表皮材の厚みは荷重20kPaで測定した。
【0088】
(6)複屈折率(Δn)
不織布製造工程のコンベア上から糸を採取し、OLYMPUS社製のBH2型偏光顕微鏡コンペンセーターを用いて、通常の干渉縞法によってレターデーションと繊維径より複屈折率を求めた。繊維10本の平均値で求めた。尚、不織布製造工程のコンベア上から糸を採取できない場合は、不織布中から採取した糸を用いて、前記した方法で複屈折率を測定してもよい。
【0089】
(7)極細繊維層(M)間距離(μm)
積層不織布をエポキシ樹脂包埋後、ウルトラミクロトームにて積層不織布の平面方向と垂直な断面を露出させ、キーエンス社製(VE-8800)走査型電子顕微鏡を用い、積層不織布中の断面写真を倍率500倍で撮影し、任意の点で極細繊維層(M)間の距離10点測定し、その平均値を求めた。超音波溶着の場合は、溶着部以外で測定した。
【0090】
(8)2軸延伸評価(成形性)
26cm×26cmの試験片を採取し、2軸延伸機(EX10-III)を用いて、150℃雰囲気下で、把握長24cm×24cmとし、90秒予熱した後、延伸速度1000m/minにてMD方向とCD方向共に9.94cm同時2軸延伸し(面積展開率200%=元の面積を100%とした場合、延伸後に面積が200%となる)、その際のMD方向とCD方向の最大応力を測定する(n=3の平均値)。延伸後のサンプルを目視確認し、下記の評価基準で評価した:
〇:破断箇所、延伸斑がない
△:延伸斑がある
×:破断箇所があるか又は極細繊維層に欠点がある。
【0091】
(9)通気性:JIS L 1906フラジール形法で測定した。
【0092】
(10)耐摩耗性(毛羽等級)[級]
株式会社大栄科学精器製作所製「学振型染色物摩擦堅牢度試験機」を用いて、不織布を試料とし、摩擦布は金巾3号を使用して、荷重500gfを使用、摩擦回数100往復にて摩擦させ、不織布表面の毛羽立ち、磨耗状態を以下の評価基準で目視判定した(n=5の平均値):
0級:損傷大
1級:損傷中
2級:損傷小
3級:損傷なし、毛羽発生あり小
4級:損傷なし、毛羽発生微小
5級:損傷なし、毛羽なし。
【0093】
(11)極細繊維層の嵩密度(g/cm3)
不織布を平面方向に対して垂直に切断したサンプルを用意し、キーエンス社製(VE-8800)走査型電子顕微鏡を用い、熱圧着によって一体化した不織布中の非圧着部の断面写真を倍率500倍で撮影し、任意の点で極細繊維層の厚みを10点測定し、その平均値を求める。(2)で求めた極細繊維層の平均目付を極細繊維層の厚みで除することで算出した。極細繊維層単体で目付が計算できない場合には、高分解能3DX線顕微鏡 nano3DX(リガグ製)を用いて、不織布のX線CT画像を撮り、X線CT画像から、観察範囲の面積、極細繊維層が占める体積と樹脂密度、厚みから、嵩密度、目付を計算することができる。
【0094】
(12)極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率(%)
(不織布の層間剥離がある場合(部分熱圧着型不織布の場合))
図1に示すように、非部分熱圧着部において実質的に極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)が接着している面積率Abは、部分熱圧着部からハサミ、カッターナイフ等で非部分熱圧着部を切り離し、極細繊維層(M)とは直接接着しておらず浮いた連続長繊維層(S1)又は(S2)内の繊維を粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ CT405AP-15)を用いて取り除いた後、キーエンス社製(VE-8800)走査型電子顕微鏡を用い倍率200倍の、M層の表面写真(
図2参照)より、連続長繊維層(S1)及び/又は(S2)の繊維の間から観察できる極細繊維層(M)の、S層の繊維によって区切られた区画毎の面積値を計測モードの多角形面積計測システムを用いて導き出し、その合計面積を算出し、その合計面積Saを、観察視野の全面積Stで除したものと1から差し引くことにより計算し、任意の10点を測定した平均値を求めた。「任意の10点を測定」とは、任意のサイズの不織布から無作為に10個の1cm×1cmの試験片を切り出し、それぞれ試験片において任意の1か所を測定することをいう。尚、連続長繊維層(S1、S2)が不織布の両面に存在する場合は、両面について上記測定を行い、その平均値を1点の測定値とする。また、SM構造のように一方の面にのみに連続長繊維層(S1)が存在する場合は、連続長繊維層(S1)の面から測定した結果のみを測定値とする。
すなわち、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率Aは、以下の式:
A=Aa+Ab
Ab=100×(1-(Sa/St))
より求められる。
【0095】
(不織布の層間剥離がない場合(全面接合型不織布))
不織布の層間剥離がなければ、全面接合型不織布と判断し、その場合、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1)又は(S2)とが実質的に接着している面積を、接着面積率とする。極細繊維層(M)と連続長繊維層(S1)又は(S2)とが実質的に接着している面積とは、キーエンス社製(VE-8800)走査型電子顕微鏡を用い倍率200倍の不織布表面の写真より、連続長繊維層(S1)又は(S2)の繊維の間から観察できる極細繊維層(M)の、S層の繊維によって区切られた区画毎の面積値を計測モードの多角形面積計測システムを用いて導き出し、その合計面積を算出しその合計面積Saを、観察視野の全面積Snで除したものを1から差し引くことにより計算し、任意の点10点を測定した平均値を求めた。
すなわち、極細繊維層(M)と連続長繊維層(S)の接着面積率Aは、以下の式:
A=100×(1-Sa/Sn)
不織布表面の写真から、極細繊維層Mが観察できなかった場合には、接着面積率は100%とする。
【0096】
(13)180℃乾熱収縮率(%)(形態安定性)
熱風オーブン(タバイエスペック株式会社:HIGH-TEMP OVEN PHH-300)を用い、10cm角の試料3点を、熱風空気雰囲気下で、180℃×30分で暴露させ、不織布の面積収縮率(%)を測定した。
【0097】
(14)積層不織布を用いた複合吸音材の平均吸音率A(%)
JIS A 1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて、代表値として周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzでの吸音率A(%)を測定した。基材は各実施例・比較例の記載に従って作製し使用した。
【0098】
(15)不織布の吸音付与効果(%)
BASF社製メラミン樹脂連続発泡体「バソテクト TG」10mm厚みに共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/m2の割合で塗布した後、同時2軸延伸前の不織布を積層した後、加熱処理により接合した複合吸音材において、JIS-1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて表皮材面から入射するよう配置し、代表値として周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzを測定し、その平均吸音率A(%)を算出し、下記式により求める吸音寄与効果が、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上である。
尚、吸音寄与効果(%)は、下記式:
吸音寄与効果(%)=A-A0
{式中、Aは、複合吸音材の平均吸音率A(%)であり、そしてA0は、吸音基材単独の平均吸音率(%)である。}
により算出される。
尚、BASF社製メラミン樹脂連続発泡体「バソテクト TG」10mm厚みの単体での吸音性能は「1000Hz:11%、1600Hz:14%、2000Hz:18%、2500Hz:20%、3150Hz:24%、4000Hz:31%、平均吸音率:20%」であった。
【0099】
(16)同時二軸延伸前後平均吸音率(%)
BASF社製メラミン樹脂連続発泡体「バソテクト TG」10mm厚みに共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/m2の割合で塗布したのち、同時2軸延伸前後の不織布をそれぞれ積層したのち加熱処理により接合した複合吸音材において、JIS-1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて表皮材面から入射するよう配置し、代表値として周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、4000Hz、を測定し、その平均吸音率を算出し、同時二軸延伸前平均吸音率(%)、同時二軸延伸後平均吸音率(%)とした。同時2軸延伸前後の吸音率の差を以下の評価基準で評価する:
〇:15%未満
×:15%以上。
【実施例】
【0100】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度3500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付11.6g/m2、平均繊維径15.3μm)を捕集し、ネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、毛羽を軽く止めた。得られた連続長繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を110mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウェブ(S2)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させた。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11.4%であり、MD方向の熱圧着部間距離3.0mmとCD方向の熱圧着部間距離2.8mmとなるアイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を185℃、該フラットロールの表面温度を185℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.22g/cm3の不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0101】
[実施例2]
圧着面積率14%であり、MD方向の熱圧着部間距離0.7mm、CD方向の熱圧着部間距離0.7mmとなる織り目柄エンボスロールを用いたこと以外は、実施例1と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0102】
[実施例3]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ15.4g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を9.2g/m2としたこと、熱圧着時に熱圧着部面積率8%であり、MD方向の熱圧着部間距離3.4mmとCD方向の熱圧着部間距離3.4mmとなるピン柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を190℃、該フラットロールの表面温度を190℃としたこと以外は、実施例1と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0103】
[実施例4]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ10.4g/m2としたこと、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度320℃、加熱空気360℃で1200Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付4.2g/m2、平均繊維径0.8μm)を形成し、この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を120mmとした事、エンボスロールの表面温度を165℃、該フラットロールの表面温度を165℃としたこと以外は、実施例1と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0104】
[実施例5]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ8.8g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を7.5g/m2としたこと、エンボスロールの表面温度を165℃、該フラットロールの表面温度を165℃としたこと以外は、実施例3と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
[実施例6]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ20.8g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を8.4g/m2としたこと以外は、実施例2と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表3、4に示す。
【0108】
[実施例7]
熱圧着時に圧着面積率19%であり、MD方向の熱圧着部間距離0.6mmとCD方向の熱圧着部間距離0.6mmとなる織目柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を200℃、該フラットロールの表面温度を200℃としたこと以外は、実施例6と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表3、4に示す。
【0109】
[実施例8]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度3500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付11.6g/m2、平均繊維径15.3μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、毛羽を軽く止めた。得られた連続長繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を110mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。次いで、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点208℃)であり、かつ、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)樹脂である連続長繊維ウェブ(S2)(目付11.6g/m2、平均繊維径15.3μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度120℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させた。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%であり、MD方向の熱圧着部間距離3.0mmとCD方向の熱圧着部間距離2.8mmとなるアイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、エンボスロールの表面温度を185℃、フラットロールの表面温度を120℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.22g/cm3の不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表3、4に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
[実施例9]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂(PET)樹脂98.5wt%と旭化成株式会社製のアクリレート樹脂(メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル2元共重合体、品番:80N)を1.5wt%をドライブレンドで混合し、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度4500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付11.6g/m2、平均繊維径13.6μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、毛羽を軽く止めた。得られた連続長繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を110mmとし、メルトブローノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウェブ(S2)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させた。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に熱圧着部面積率11%であり、MD方向の熱圧着部間距離が3.0mmとCD方向の熱圧着部間距離2.8mmとなるアイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を185℃、該フラットロールの表面温度を185℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.22g/cm3の不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0113】
[実施例10]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)(PET)樹脂99wt%と旭化成株式会社製のメタクリレート樹脂(スチレン・メタクリル酸メチル・シクロヘキシルマレイミド重合体、品番:PM130N)を1.0wt%をドライブレンドで混合し、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度4500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付11.6g/m2、平均繊維径13.6μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、毛羽を軽く止めた。得られた連続長繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を110mmとし、メルトブローノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウェブ(S2)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させた。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に熱圧着部面積率14%であり、MD方向の熱圧着部間距離が0.7mmとCD方向の熱圧着部間距離0.7mmとなる織目柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を185℃、該フラットロールの表面温度を185℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.27g/cm3の不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0114】
[実施例11]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ15.4g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を9.2g/m2とした事、熱圧着時に熱圧着部面積率8%であり、MD方向の熱圧着部間距離3.4mmとCD方向の熱圧着部間距離3.4mmとなるピン柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を190℃、該フラットロールの表面温度を190℃としたこと以外は、実施例10と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0115】
[実施例12]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ10.4g/m2としたこと、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度320℃、加熱空気360℃で1200Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付4.2g/m2、平均繊維径0.8μm)を形成し、この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を120mmとした事、熱圧着時に熱圧着部面積率11%であり、MD方向の熱圧着部間距離3.0mmとCD方向の熱圧着部間距離2.8mmとなるアイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、エンボスロールの表面温度を165℃、該フラットロールの表面温度を165℃としたこと以外は、実施例10と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0116】
[実施例13]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ8.8g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を7.5g/m2としたこと、エンボスロールの表面温度を165℃、該フラットロールの表面温度を165℃としたこと以外は、実施例11同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0117】
[実施例14]
連続長繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ20.8g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を8.4g/m2としたこと以外は、実施例10と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0118】
[実施例15]
熱圧着時に熱圧着部面積率19%であり、MD方向の熱圧着部間距離0.6mmとCD方向の熱圧着部間距離0.6mmとなる織目柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を200℃、該フラットロールの表面温度を200℃としたこと以外は、実施例14と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0119】
[実施例16]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂99wt%と旭化成株式会社製のメタクリレート樹脂(スチレン・メタクリル酸メチル・シクロヘキシルマレイミド重合体、品番:PM130N)を1.0wt%をドライブレンドで混合し、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度4500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付11.6g/m2、平均繊維径13.6μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、毛羽を軽く止めた。得られた連続長繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を110mmとし、メルトブローノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。次いで、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点208℃)99wt%と旭化成株式会社製のメタクリレート樹脂(スチレン・メタクリル酸メチル・シクロヘキシルマレイミド重合体、品番:PM130N)1.0wt%であり、かつ、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)樹脂99wt%と旭化成株式会社製のメタクリレート樹脂(スチレン・メタクリル酸メチル・シクロヘキシルマレイミド重合体、品番:PM130N)1.0wt%である連続長繊維ウェブ(S2)(目付11.6g/m2、平均繊維径13.6μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度120℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させた。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に熱圧着部面積率11.4%であり、MD方向の熱圧着部間距離3.0mmとCD方向の熱圧着部間距離2.8mmとなるアイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を185℃、該フラットロールの表面温度を120℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.22g/cm3の不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表5、6に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
[実施例17]
実施例8で得られた不織布を3枚積層し、150℃の熱板プレスを行い、積層不織布を得た。
吸音基材として、厚さ10mm、目付10g/m2、嵩密度0.01g/cm3のメラミン樹脂連続発泡体層(BASF社製メラミン樹脂連続発泡体、バソテクト TG)を用い、前記積層不織布と接合した。接合は、接合は、メッシュ状のコンベアベルトに挟み、温度150℃の雰囲気中で加熱、加圧の熱処理で接合して本発明の複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表7に示す。
【0123】
[実施例18]
吸音基材として、ポリエステル短繊維(繊維径25μm、繊維長51mm)70%と、共重合ポリエステル繊維(融点135℃、繊維径15μm、繊維長51mm)30%をカード法で開繊ウェブ形成し、ニードルパンチ加工で交絡し、目付200g/m2、厚み25mm、嵩密度0.08g/cm3としたものを用いたこと以外は、実施例17と同様に複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表7に示す。
なお、使用した吸音基材の単体での吸音性能は「1000Hz:9%、1600Hz:10%、2000Hz:16%、2500Hz:18%、3150Hz:19%、4000Hz:20%、平均吸音率:16%」であった。
【0124】
[実施例19]
実施例1で得られた不織布を3枚積層し、各層間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2塗布して150℃の熱板プレスを行い、積層不織布を得た。
吸音基材層として、厚さ10mm、目付10g/cm2、嵩密度0.01g/cm3のメラミン樹脂連続発泡体層(BASF社製メラミン樹脂連続発泡体、バソテクト TG)を用い、前記積層不織布と接合した。接合は、吸音基材上に各層間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2塗布しメッシュ状のコンベアベルトに挟み、温度150℃の雰囲気中で加熱、加圧の熱処理で接合して本発明の複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表7に示す。
【0125】
[実施例20]
実施例10で得られた不織布を3枚積層し、溶着面積率を5%とした超音波溶着加工を行い、積層不織布を得た事以外は、実施例19と同様に複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表7に示す。
【0126】
[実施例21]
実施例10で得られた不織布を5枚積層し、溶着面積率を5%とした超音波溶着加工を行い、積層不織布を得た事以外は、実施例19と同様に複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表7に示す。
【0127】
[実施例22]
実施例12で得られた不織布を5枚積層し、溶着面積率を5%とした超音波溶着加工を行い、積層不織布を得た事以外は、実施例19と同様に複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表7に示す。
【0128】
【0129】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に破断が生じた。布が破断しているため、延伸後の通気性、吸音性能を測定することができなかった。
【0130】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付10.0g/m2、平均繊維径1.7μm)を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に破断が生じた。布が破断しているため、延伸後の通気性、吸音性能を測定することができなかった。
【0131】
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度3500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(目付11.6g/m2、平均繊維径15.3μm)をネット上に形成した後、1対のフラットロールを用いて、上のフラットロールの表面温度を150℃、下のフラットロールの表面温度を150℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、連続長繊維ウェブ(S1、S2)を得た。
ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を得た。
予め得た連続長繊維ウェブ(S1)、(S2)の間に、(S2)極細繊維ウェブ(M)を挟む形で3枚積層したのみで一体化を実施せず不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に極細繊維層(M)に破断が生じた。布が破断しているため、延伸後の通気性、吸音性能を測定することができなかった。
【0132】
[比較例4]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度3500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(目付11.6g/m2、平均繊維径15.3μm)をネット上に形成した後、1対のフラットロールを用いて、上のフラットロールの表面温度を150℃、下のフラットロールの表面温度を150℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、連続長繊維ウェブ(S1、S2)を得た。
ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付6.8g/m2、平均繊維径1.7μm)を得た。
予め得た連続長繊維ウェブ(S1)、(S2)の間に、(S2)極細繊維ウェブ(M)を挟む形で3枚積層し溶着面積率11%となるよう、超音波溶着法にて一体化を行った。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に極細繊維層(M)に破断が生じた。布が破断しているため、延伸後の通気性、吸音性能を測定することができなかった。
【0133】
[比較例5]
連続長繊維層(S1)及び(S2)のネット上に形成した後、プレコンパクションロールとコンベアネットの間でニップを実施しなかったこと、エンボスロールの表面温度を30℃、該フラットロールの表面温度を30℃としたこと以外は、実施例1と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に、MB層の破断が生じた。布が破断しているため、延伸後の通気性、吸音性能を測定することができなかった。
【0134】
[比較例6]
エンボスロールの表面温度を90℃、該フラットロールの表面温度を90℃としたこと以外は、実施例1と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に延伸斑が生じた。
【0135】
[比較例7]
連続長繊維層(S1)及び(S2)のネット上に形成した後、プレコンパクションロールとコンベアネットの間でニップを実施しなかったこと以外は、実施例5と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
【0136】
[比較例8]
連続長繊維層(S1)及び(S2)のネット上に形成した後、平滑な表面温度60℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させたこと以外は、実施例5と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
【0137】
[比較例9]
連続長繊維層(S1)及び(S2)のネット上に形成した後、プレコンパクションロールとコンベアネットの間でニップを実施しなかったこと以外は、実施例13と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
【0138】
[比較例10]
連続長繊維層(S1)及び(S2)のネット上に形成した後、平滑な表面温度60℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させたこと以外は、実施例13と同様に不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
【0139】
[比較例11]
特開2013-163869の実施例1を参考とし、ポリエチレンテレフタレート用紡糸口金を持ち、スパンボンド法により、紡糸温度300℃でポリエチレンテレフタレート(融点263℃)からなる連続長繊維ウェブ(S1)を紡糸速度:4500m/minで捕集ネット上に形成し、引き続いて、得られた連続長繊維ウェッブ(S1、目付10g/m2、平均繊維径14μm)上に、メルトブロー法のノズルを用い、紡糸温度が300℃、加熱空気温度が320℃で1000Nm2/hr、突きつけ距離75mmの条件で、ポリエチレンテレフタレート(融点265℃)からなる糸条を噴出させ、極細繊維ウェブ(目付5g/m2、平均繊維径3μm)を形成した。さらに、極細繊維ウェブの上に、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル(融点210℃)、新成分がポリエチレンテレフタレート(融点265℃)からなる鞘芯繊維の長繊維ウェブ(S2、目付10g/m2、平均繊維径18μm)をスパンボンド法により紡糸速度:4500m/minで積層した。得られた積層ウェブを熱圧着時に熱圧着部面積率15%であり、MD方向の熱圧着部間距離3.6mmとCD方向の熱圧着部間距離3.6mmとなるピン柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を230℃、該フラットロールの表面温度を165℃とし、線圧が300N/cmの条件で部分熱圧着し、目付が25g/m2、厚みが0.17mm、部分熱圧着率が15%の不織布を得た。得られた不織布の各種物性を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に破断が生じた。布が破断しているため、延伸後の通気性、吸音性能を測定することができなかった。
【0140】
[比較例12]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度4500m/minで延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付29.0g/m2、平均繊維径13μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、毛羽を軽く止めた。得られた連続長繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付12.0g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから連続長繊維層までの距離を70mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。次いで、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点208℃)であり、かつ、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)樹脂である連続長繊維ウェブ(S2)(29.0g/m2、平均繊維径13μm)をネット上に形成した後、平滑な表面温度160℃のプレコンパクションロールとコンベアネットの間で4N/mmの低圧でニップし、各層を軽く一体化させた。次に得られた積層ウェブを、1対のフラットロールを用いて、上のフラットロールの表面温度を230℃、下のフラットロールの表面温度を230℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.60g/cm3の不織布を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表8、9に示す。
同時2延伸機150℃雰囲気下で面積展開率200%とした際に破断が生じた。布が破断しているため、延伸後の通気性、吸音性能を測定することができなかった。
【0141】
【0142】
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明に係る不織布及び積層不織布は、成型性がよく、薄く、軽量で、形態安定性に優れながらも成型後も一定の通気範囲に制御することができ、1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、4000Hzの低周波数~中周波数領域において、吸音基材に高い吸音性を付与することを可能にすることができ、特に自動車用、住宅、家電製品、建設機械等の成型性複合吸音材の表皮材として好適に利用可能である。