(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/467 20060101AFI20220927BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H01L23/46 C
H05K7/20 H
H05K7/20 B
(21)【出願番号】P 2020550928
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2018001216
(87)【国際公開番号】W WO2020070533
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江森 健太
(72)【発明者】
【氏名】新井田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】山上 滋春
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-100945(JP,A)
【文献】特開2013-077750(JP,A)
【文献】特開2014-116398(JP,A)
【文献】特開2006-302918(JP,A)
【文献】特開2016-171238(JP,A)
【文献】特開2016-076350(JP,A)
【文献】特開2018-022868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/467
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が接合されたヒ-トシンクと、
前記ヒ-トシンクを冷却する主流を
一定の方向に向けて発生させる主流発生装置と、
所定の電圧が印加される電極、及び前記電極に印加される電圧により電気的に所定の方向に流れる誘起流を発生させる誘起流発生部を有する誘起流発生装置と、を備え、
前記誘起流発生装置は、前記ヒ-トシンクに対向する支持部材に設けられ、
前記誘起流発生装置は、前記主流の流れを所望の
方向に誘導するように前記誘起流を発生させる位置に配置される、
冷却装置。
【請求項2】
発熱体が接合されたヒ-トシンクと、
前記ヒ-トシンクを冷却する主流を
一定の方向に向けて発生させる主流発生装置と、
所定の電圧が印加される電極、及び前記電極に印加される電圧により電気的に所定の方向に流れる誘起流を発生させる誘起流発生部を有し、
前記ヒ-トシンクに対向する支持部材に設けられる誘起流発生装置と、を備え、
前記誘起流発生装置は、前記電極として機能する第1電極及び第2電極と、第1電極及び第2電極の間に介在される誘電体と、を有するプラズマアクチュエ-タを含み、
さらに、
前記主流の流れ
を所望の方向に誘導するように前記プラズマアクチュエ-タに印加する交流電圧の大きさ、及び周波数を制御する制御装置を含む、
冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置は、前記主流の流れを前記ヒ-トシンクに誘導する方向に前記誘起流を発生させるように配置される、
冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置及び前記主流発生装置は、前記主流の流れ及び前記誘起流の流れ相互に略平行且つ略逆向きとなるように配置される、
冷却装置。
【請求項5】
請求項3に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置は、前記誘起流の流れが前記支持部材から前記ヒ-トシンクへ向かう方向に対して略直交するように配置される、
冷却装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置は、前記主流の流れを前記支持部材に誘導する方向に前記誘起流を発生させるように配置される、
冷却装置。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置は、前記主流の流れに対して略平行且つ略同じ向きの前記誘起流を発生させるように配置される、
冷却装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置及び前記主流発生装置は、前記主流の流れ及び前記誘起流の流れが相互に略直交し、且つ前記誘起流の流れが前記ヒ-トシンクの面と略平行となるように配置される、
冷却装置。
【請求項9】
請求項3~8の何れか1項に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置を少なくとも2つを備える、
冷却装置。
【請求項10】
請求項3~5の何れか1項に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置は、前記主流の流れ方向における前記発熱体の上流位置に配置された、
冷却装置。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の冷却装置であって、
前記誘起流発生装置は、前記主流の流れ方向における前記発熱体の下流位置に配置された、
冷却装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の冷却装置であって、
前記ヒ-トシンクは、前記発熱体の接合面の裏面に設けられた放熱フィンをさらに含む、
冷却装置。
【請求項13】
請求項12に記載の冷却装置であって、
前記放熱フィンは、櫛歯状に複数設けられた、
冷却装置。
【請求項14】
請求項13に記載の冷却装置であって、
前記放熱フィンは、突起状に形成された、
冷却装置。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の冷却装置であって、
前記支持部材は、前記ヒ-トシンクを囲う筐体の一部として構成される、
冷却装置。
【請求項16】
請求項1~15の何れか1項に記載の冷却装置であって、
前記発熱体は、電子機器内に設けられた電子部品である、
冷却装置。
【請求項17】
発熱体が接合されたヒ-トシンクと、
前記ヒ-トシンクを冷却する主流を発生させる主流発生装置と、
電気的に誘起流を発生させる誘起流発生装置と、を備え、
前記誘起流発生装置は、第1電極及び第2電極の間に誘電体を介在させてなるプラズマアクチュエ-タを含むとともに、前記ヒ-トシンクに対向する支持部材に設けられ、
前記第1電極は前記ヒ-トシンクに構成され、前記第2電極は前記支持部材に構成される、
冷却装置。
【請求項18】
請求項17に記載の冷却装置であって、
前記ヒ-トシンクが接地電位となり、且つ前記支持部材の電位が変動するように構成された、
冷却装置。
【請求項19】
請求項17に記載の冷却装置であって、
前記支持部材が接地電位となり、且つ前記ヒ-トシンクの電位が変動するように構成された、
冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバータ等の電力変換装置には半導体、コンデンサ、又はコイルなどの発熱要素となる電子部品が含まれているため、これらを冷却するヒートシンクが取り付けられる。一方、このような電力変換装置において、大電力化や小型化を実現する観点から、各回路要素及び冷却構造を高密度に構成することが要求される。
【0003】
しかしながら、高密度化により電力変換装置内の発熱密度が上昇するため、より高い冷却性能が要求されることとなる。ここで、ヒートシンクの冷却性能は、一般的にその体積(熱容量)、材料(熱伝導率)、及び形状に応じた表面積(伝熱面積)に依存する。
【0004】
したがって、冷却性能を向上させるためには、ヒートシンク自体を大型化することが要求され、電力変換装置全体の大型化に繋がることとなる。このため、ヒートシンク自体の大型化を抑えつつも、冷却性能の向上を実現する観点からヒートシンクの材料及び形状の改善が検討されている。
【0005】
JP2013-016569Aでは、このようなヒートシンクを用いた冷却装置が提案されている。この冷却装置では、冷媒の流路を構成する複数のダクトを介して、発熱体を装着したヒートシンクへ冷媒を噴射する冷却装置が提案されている。
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、上記従来の冷却装置では、ヒートシンクを冷媒の乱流により冷却すべく複数のダクトが設けられるため、冷却装置全体の構造が大型化且つ複雑化する。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明の目的は、大型化を抑制しつつ冷媒流の経路を好適に調節できる冷却装置を提供することにある。
【0008】
本発明のある態様によれば、発熱体が接合されたヒ-トシンクと、ヒ-トシンクを冷却する主流を一定の方向に向けて発生させる主流発生装置と、所定の電圧が印加される電極、及び前記電極に印加される電圧により電気的に所定の方向に流れる誘起流を発生させる誘起流発生装置と、を備える冷却装置が提供される。そして、誘起流発生装置は、ヒ-トシンクに対向する支持部材に設けられ、前記主流の流れを所望の方向に誘導するように前記誘起流を発生させる位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態による冷却装置の構成を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、変形例1-1による冷却装置の構成を説明する断面図である。
【
図5】
図5は、変形例1-2による冷却装置の構成を説明する断面図である。
【
図6】
図6は、変形例1-3による冷却装置の構成を説明する斜視図図である。
【
図7】
図7は、
図6の支持部材をZ軸正方向側から視た要部平面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態にかかるプラズマアクチュエータの構成を説明する断面図である。
【
図9】
図9は、プラズマアクチュエータが設けられた冷却装置の構成を説明する断面図である。
【
図10】
図10は、変形例2-1による冷却装置(プラズマアクチュエータがオフ状態)の構成を説明する断面図である。
【
図11】
図11は、変形例2-1による冷却装置(プラズマアクチュエータがオン状態)の構成を説明する断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態による冷却装置(プラズマアクチュエータがオフ状態)の構成を説明する断面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態による冷却装置(プラズマアクチュエータがオン状態)の構成を説明する断面図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態による冷却装置の構成を説明する断面図である。
【
図17】
図17は、変形例4-1による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図18】
図18は、変形例4-2による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図19】
図19は、変形例4-3による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図20】
図20は、変形例4-4による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図21】
図21は、変形例4-5による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図22】
図22は、変形例4-6による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図23】
図23は、変形例4-7による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図25】
図25は、第5実施形態による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図26】
図26は、変形例5-1による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図27】
図27は、変形例5-2による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【
図28】
図28は、変形例5-3による冷却装置の構成を説明する要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の各実施形態について説明する。なお、各実施形態及びその変形例の説明に用いる図面は、各実施形態の構成の要部を概略的に示すものである。
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態による冷却装置10の構成を説明する流れ方向の断面図である。また、
図2は、
図1におけるA-A’線矢視断面図である。
図3は、
図1におけるB-B’線矢視断面図である。
【0013】
図示のように、冷却装置10は、発熱体1、本実施形態のヒートシンクを構成するヒートシンク本体2、誘起流Ifを発生させる誘起流発生装置3、主流Mfを発生させる主流発生装置としてのファン4、及びヒートシンク本体2に対向して配置される支持部材9を備える。発熱体1は、モータ、エンジン、及び家電などの電子機器に含まれる種々の発熱要素である。特に、発熱体1としては、半導体、半導体のモールドパッケージ、コンデンサ、及びコイル等の電子部品が想定される。
【0014】
ヒートシンク本体2は、発熱体1が発生する熱を周囲の雰囲気中に放出する構造物である。本実施形態では、ヒートシンク本体2は、板状部材として形成されている。そして、ヒートシンク本体2の一方側(Z軸負方向側)の表面である第1表面2aに、発熱体1が接合されている。
【0015】
ヒートシンク本体2は、例えば、銅若しくはアルミニウムなどの比較的熱伝導率の高い金属製材料、又はFR4(Flame Retardant Type 4)若しくはセラミクス等の比較的熱伝導率が高い非金属製材料で構成される。
【0016】
誘起流発生装置3は、ヒートシンク本体2の第1表面2aの裏面である第2表面2bに対向する支持部材9の表面9aに設けられる。特に、誘起流発生装置3は、支持部材9の表面9aのY軸方向における伸長領域の全域に亘って延在するように設けられている。誘起流発生装置3は、X軸方向における一方側(図上ではX軸負方向)に誘起流発生部3aを有している。したがって、誘起流発生装置3は、
図2上のX軸負方向に向かって誘起流Ifを発生させることができる。
【0017】
なお、発熱体1と支持部材9の表面9aの間におけるY方向の幅の関係は、発熱体1の幅や熱量、ヒートシンク本体2へ熱が広がる面積に応じて誘起流Ifが熱伝達に効果的に幅になるよう適宜調整が可能である。
【0018】
より詳細に、誘起流発生装置3は、周囲の相(空気雰囲気、窒素雰囲気若しくはアルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気等の気相、又は水等の液相)中の分子に対して電気的に作用し、当該雰囲気における電荷分布に偏りを与えることで圧力差を与えて誘起流Ifを生じさせる装置である。なお、以下では、説明の便宜上、周囲の相が空気雰囲気(空気層7)であることを前提とする。しかしながら、以下の説明は他の気相又は液相であっても同様に適用することができる。
【0019】
また、本実施形態の誘起流発生装置3は、発熱体1に対して主流Mfの流れ方向(X軸方向)において上流に配置される。
【0020】
ファン4は、発熱体1として想定される部品又は機器の形態及び設置スペースに応じて要求される風量及び風速などの要素を考慮してDC/AC軸ファン又はブロアファンなどで適宜構成される。なお、ヒートシンク本体2に放熱フィン6が設けられる場合には、当該放熱フィン6の形態に応じたタイプのファン4を構成することが好ましい。
【0021】
また、本実施形態において、ファン4は、ヒートシンク本体2のX軸方向における一端部(
図1における左側の端部)の近傍に設けられている。
【0022】
この構成により、ファン4を駆動させることで、主流Mfがヒートシンク本体2の第2表面2bと支持部材9の表面9aの間をX軸正方向に向かって流れる。一方、上述のように、誘起流Ifは誘起流発生装置3からX軸負方向に向かって流れている。このため、本実施形態の構成によれば、主流Mfの流れ方向と誘起流Ifの流れ方向は相互に略平行且つ略逆向きとなる。
【0023】
したがって、ファン4からの主流Mfは、誘起流発生装置3からの逆向きの誘起流Ifによって阻害されることにより、ヒートシンク本体2の第2表面2bの方向(Z軸負方向)に誘導される。特に、本実施形態では、誘起流発生装置3が、発熱体1に対して主流Mfの流れ方向において上流に配置されているので、主流Mfは発熱体1の上流で当該誘起流Ifにより第2表面2bの方向に誘導されることとなる。特に、相対的に流速が高くなる主流Mfの流れの中心位置Cfが、発熱体1に近づくように誘導されることとなる。これにより、ヒートシンク本体2の第2表面2bから空気層7への熱伝達を促進することができる。
【0024】
上記構成を有する冷却装置10において、発熱体1の熱は先ずヒートシンク本体2に伝達される。そして、ヒートシンク本体2に伝達された熱は、当該ヒートシンク本体2において拡散されつつ、Z軸負方向(誘起流発生装置3の方向)に向かって伝導する。
【0025】
一方、誘起流発生装置3が発生させる誘起流Ifは、ヒートシンク本体2の第2表面2bに沿ってX軸正方向に流れ、ヒートシンク本体2の第2表面2bと空気層7との間の熱伝達を促進する。特に、発熱体1直下のヒートシンク本体2と接する空気層7の界面に誘起流Ifを流すことができるので、固体流体間に発生する断熱層のような境界層の過剰な発達を抑制することができる。その結果、比較的少ない誘起流Ifの流量で効果的に冷却を実行することが可能となる。
【0026】
以上説明した構成を有する本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0027】
本実施形態による冷却装置10では、発熱体1が接合されたヒートシンクとしてのヒートシンク本体2と、ヒートシンク本体2を冷却する主流Mfを発生させる主流発生装置としてのファン4と、電気的に誘起流Ifを発生させる誘起流発生装置3と、を備える。そして、誘起流発生装置3は、ヒートシンク本体2に対向する支持部材9に設けられる。
【0028】
これにより、発熱体1からヒートシンク本体2に伝達した熱を冷却するファン4の主流Mfの流れ方向を、誘起流発生装置3による誘起流Ifによって調節することができる。したがって、ヒートシンク本体2における発熱体1の近傍等の相対的に熱量が高くなる部分に主流Mfを誘導して当該部分の熱伝達を促進することができる上に、ヒートシンク本体2において相対的に熱量が低い部分(発熱体1から遠い部分)においては、主流Mfの流速を低下させて圧量損失を抑制することができる。結果として、発熱体1の冷却効率をより向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、誘起流発生装置3は、主流Mfの流れをヒートシンク本体2の方向(
図1のZ軸負方向)に誘導する誘起流Ifを発生させるように配置される。
【0030】
これにより、ファン4からの主流Mfの流れがヒートシンク本体2の周辺に集まるので、ヒートシンク本体2の周辺における流速を高めることができる。したがって、ヒートシンク本体2と空気層7との間の熱伝達をより促進することができ、冷却性能をさらに向上させることができる。
【0031】
特に、本実施形態では、誘起流発生装置3及びファン4は、主流Mfの流れ方向及び誘起流Ifの流れ方向が相互に略平行且つ略逆向きとなるように配置される。
【0032】
これにより、誘起流発生装置3における誘起流発生個所(誘起流発生部3a)の周辺では、主流Mfの流れを阻害することができる。したがって、主流Mfの流れを、誘起流発生装置3が設けられている支持部材9に対向するヒートシンク本体2の方向に誘導することができる。結果として、ヒートシンク本体2の周辺の冷却風の流速を向上させて、冷却性能をより向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、誘起流発生装置3は、主流Mfの流れ方向における発熱体1の上流位置(
図1におけるX軸負方向側)に配置される。
【0034】
これにより、誘起流Ifの作用によって主流Mfがヒートシンク本体2の方向に誘導されて集まった部分(流量・流速が高い部分)を、ヒートシンク本体2の周辺において発熱体1に相対的に近い部位に当てることができる。結果として、ヒートシンク本体2と空気層7との間の熱伝達をより促進して、発熱体1に対する冷却性能をさらに向上させることができる。
【0035】
なお、本実施形態の発熱体1としては、モータ、エンジン、及び家電などの電子機器内に設けられた電子部品が想定される。すなわち、半導体、コンデンサ、及びコイル等の通電により発熱する電子部品を発熱体1として、本実施形態の冷却装置10の構成を適用することができる。したがって、電子部品を冷却するための好適な構成が提供されることとなる。
【0036】
以下では、第1実施形態の各変形例1-1~1-3について説明する。
【0037】
(変形例1-1)
図4は、変形例1-1による冷却装置10の断面図である。図示のように、本変形例1-1による冷却装置10では、誘起流Ifがヒートシンク本体2に向かって流れるように、誘起流発生装置3が誘起流発生部3aをZ軸負方向に向けた状態で支持部材9に設けられている。
【0038】
この構成により、ファン4からの主流Mfの流れ方向は、誘起流Ifによってヒートシンク本体2の方向に誘導される。
【0039】
以上説明した本変形例による冷却装置10によれば、誘起流発生装置3は、主流Mfの流れをヒートシンク本体2に誘導する方向に誘起流Ifを発生させるように配置される。また、誘起流発生装置3及びファン4は、主流Mfの流れ方向及び誘起流Ifの流れ方向が相互に略平行且つ略逆向きとなるように配置される。さらに、誘起流Ifの流れが支持部材9からヒートシンク本体2へ向かう方向に対して略直交するように配置される。
【0040】
この構成により、ファン4からの主流Mfに対して、主流Mfの流れ方向に略直交する方向から誘起流Ifをぶつけるように流すことができる。すなわち、
図1に示す主流Mfの流れ方向及び誘起流Ifの流れ方向が相互に略平行且つ略逆向きとなる構成と異なる態様で、主流Mfの流れをヒートシンク本体2に誘導する方向の誘起流Ifを発生させる構成を実現することができる。結果として、冷却装置10の様々な用途に応じて、ファン4等の設置位置などが異なるなどのレイアウトの違いがある場合であっても、当該レイアウトの違いに応じて主流Mfをヒートシンク本体2に誘導するように誘起流Ifを発生させる構成をより汎用的に実現することができる。
【0041】
なお、支持部材9に設けられた誘起流発生装置3による誘起流Ifの流れ方向を、ヒートシンク本体2へ向かう方向にとする具体的な構成は、本変形例で説明した構成に限られない。例えば、主流Mfに対して略平行に誘起流Ifを発生させる2つの誘起流発生装置3を、支持部材9の表面9a上においてそれぞれの誘起流発生部3aが相互に対向するように配置して、それぞれの誘起流発生部3aから発生する誘起流If同士を衝突させることで、垂直方向(ヒートシンク本体2の方向)に向かう合成された誘起流Ifを生じさせても良い。すなわち、複数の誘起流発生装置3による誘起流Ifを合成させて、ヒートシンク本体2の方向へ向かう流れを生じさせるようにしても良い。
【0042】
(変形例1-2)
図5は、変形例1-2による冷却装置10の断面図である。図示のように、本変形例1-2による冷却装置10では、誘起流発生装置3が発熱体1に対して主流Mfの流れ方向における下流(
図5上においてX軸正方向側)に設けられている。
【0043】
特に、
図5に示す冷却装置10は、
図1~
図4等で説明した他の冷却装置10に対して、主流Mfの流れ方向における下流側にさらに配置することが想定される。すなわち、本変形例における主流Mfは、上流側に設けられる他の冷却装置10において冷却に用いられており、ファン4から発生した直後の主流Mfに比べて高い熱量を保有している。
【0044】
そして、誘起流発生装置3は、誘起流発生部3aをX軸正方向に向けた状態で支持部材9の表面9aに設けられている。したがって、誘起流発生装置3が発生させる誘起流Ifの流れは、ファン4からの主流Mfに対して略平行となっている。
【0045】
本変形例の構成によれば、ファン4からの主流Mfは、誘起流発生部3aからの誘起流Ifによって支持部材9の表面9aの方向に誘導される。したがって、主流Mfの流れの中心位置Cfを、支持部材9の方に寄せることができる。
【0046】
以上説明した本変形例による冷却装置10によれば、誘起流発生装置3は、主流Mfの流れを支持部材9に誘導する方向に誘起流Ifを発生させるように配置される。
【0047】
これにより、主流Mfの流れを支持部材9側に寄せて、冷却対象である発熱体1が設けられたヒートシンク本体2から遠ざけることができる。したがって、例えば、主流Mfが既に上流側における冷却に用いられたことによって熱を保有し、冷却の観点から当該主流Mfをヒートシンク本体2に当てることが好ましくない場合には、その流れをヒートシンク本体2から離すことができる。
【0048】
また、主流Mfの流れを支持部材9側に寄せることで、ヒートシンク本体2と支持部材9の間の空気層7における圧力分布を適宜変更することができる。
【0049】
さらに、本変形例の冷却装置10によれば、誘起流発生装置3は、主流Mfの流れに対して略平行且つ略同じ向きとなるように配置される。
【0050】
これにより、誘起流Ifの作用によって、主流Mfの流れが当該誘起流Ifの流れ方向に沿うように誘導されることとなる。したがって、主流Mfの流れを支持部材9側に寄せるための具体的態様を、誘起流発生装置3の配置の調整という簡素な構成により実現することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、誘起流発生装置3は、主流Mfの流れ方向における発熱体1の下流位置(
図5におけるX軸正方向側)に配置される。
【0052】
これにより、既に冷却に用いられて熱を保有する主流Mfを支持部材9の方向に誘導する誘起流Ifの作用を、発熱体1の上流で発揮することができる。そして、このように発熱体1の上流の位置で主流Mfが支持部材9に寄せられることで、当該支持部材9の周辺における熱伝達が積極的に行われていない流体と混ざる。その結果、主流Mfの温度を下げることができる。
【0053】
(変形例1-3)
図6は、変形例1-3による冷却装置10の斜視図である。また、
図7は、
図6における支持部材9をZ軸正方向側から視た要部平面図である。図示のように、本変形例1-3による冷却装置10では、誘起流発生装置3が、誘起流発生部3aをY軸負方向に向けた状態で支持部材9の表面9aに設けられている。
【0054】
また、ファン4は、上記
図1の冷却装置10と同様に主流Mfの流れがX軸正方向に沿うように配置されている。さらに、発熱体1は、ヒートシンク本体2の第1表面2aにおけるX軸正方向且つY軸負方向寄りの位置(
図6において左且つ紙面奥側の位置)に配置されている。
【0055】
本変形例の冷却装置10の構成によれば、主流Mfの流れ及び誘起流Ifの流れが相互に略直交し、誘起流Ifの流れがヒートシンク本体2の第2表面2bと略平行となる。
【0056】
以上説明した本変形例による冷却装置10によれば、誘起流発生装置3及びファン4は、主流Mfの流れ及び誘起流Ifの流れが相互に略直交し、且つ誘起流Ifの流れがヒートシンク本体2の面である第2表面2bと略平行となるように配置される。
【0057】
これにより、誘起流Ifを主流Mfに衝突させて当該主流Mfの流れの方向を変えることができる。したがって、主流Mfの流れを、相対的に高い熱量を有する冷却の要求が高い部分に集めることができ、より効率的な冷却に資することができる。
【0058】
特に、本変形例では、発熱体1が第1表面2aにおけるX軸正方向且つY軸負方向寄りの位置に設けられている。これにより、発熱体1が設置された第1表面2aに対向する第2表面2bの周辺位置(以下、「発熱体対向位置P1」とも称する)に主流Mfの流れを集めることができ、より冷却効率を向上させることができる。
【0059】
以上、説明した第1実施形態、及び各変形例1-1~1-3の冷却装置10の構成によれば、それぞれの誘起流発生装置3又はファン4の配置態様に応じて、誘起流Ifの作用で主流Mfの流れを所望の方向に調節することができる。したがって、導体、半導体のモールドパッケージ、コンデンサ、及びコイル等の熱を発する電子部品が含まれる電子機器などにおいて、主流Mfの経路を調節する隔壁などを設けなくとも、当該主流Mfの流れを制御することができる。
【0060】
なお、第1実施形態及び各変形例1-1~1-3でそれぞれ説明した誘起流発生装置3の内の少なくとも2つを備える冷却装置10を構成しても良い。すなわち、
図1~
図3で説明した誘起流発生装置3、
図4で説明した誘起流発生装置3、及び
図6~
図7で説明した誘起流発生装置3の内の少なくとも2つを任意に備えた冷却装置10を構成しても良い。これにより、用途に応じた好適な冷却装置10を実現することができる。
【0061】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
図8は、第2実施形態にかかるプラズマアクチュエータ17の構成を説明する断面図である。
【0063】
図示のように、プラズマアクチュエータ17は、第1電極12と、接地された第2電極13との間に誘電体14が挟持されて構成される。そして、プラズマアクチュエータ17は、電源装置15に接続されている。なお、プラズマアクチュエータ17の上部及び下部には所定の絶縁層が施される。
【0064】
第1電極12及び第2電極13は、Z軸方向において相互に位置ずれした位置に設けられている。また、第1電極12及び第2電極13は、銅、アルミニウム、又は鉄などの金属材料で構成される。第1電極12及び第2電極13は、例えば、数百umオーダーの厚さの銅テープにより構成される。
【0065】
誘電体14は、所定の絶縁材料で構成される。特に、当該絶縁材料としては、高電圧に対する耐性及び高絶縁性の観点からポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、又はナイロンを採用することが好ましい。これらの絶縁材料であれば、数百umオーダーの厚さであっても数kV程度の高電圧に対しても耐性を保つことができる。
【0066】
また、第2電極13及び誘電体14は、Y軸方向(
図23の紙面直交方向)において位置ずれして設けられている。すなわち、第2電極13及び誘電体14は、Z軸方向において相互に重ならないように設けられている。
【0067】
そして、本実施形態のプラズマアクチュエータ17は、Z軸方向における全体の厚さが例えば1mm以下程度となるように構成される。
【0068】
電源装置15は交流電源により構成され、プラズマアクチュエータ17の第1電極12及び第2電極13にそれぞれ接続される。すなわち、電源装置15がプラズマアクチュエータ17に交流電圧を印加することで、第1電極12からX軸正方向側にプラズマ雰囲気16を発生させる。このプラズマ雰囲気16中のイオンが空気分子に電気的に作用することで移動させ、X軸正方向に沿って流れる誘起流Ifを発生させることができる。すなわち、第1電極12が誘起流発生部3aとして機能する。
【0069】
ここで、プラズマアクチュエータ17により生成される誘起流Ifは、第1電極12からX軸正方向に発生するものの、特に、プラズマ雰囲気16からX軸正方向に所定距離離れた位置P2において流速が最大となる。これは、プラズマ雰囲気16中の荷電粒子にクーロン力による体積力が生じて加速が始まり、上記所定距離離れた位置で一定の速度に達するためである。
【0070】
なお、上述の誘起流Ifが発生するプラズマ雰囲気16からの所定距離は、電源装置15の印可交流電圧の周波数、電極材料、及び誘電体14の材料によって異なるが、たとえば数mm~数cmとなる。
【0071】
例えば、電源装置15の印可電圧(印可交流電圧の実効値)が数kV程度で且つ交流周波数が20kHz以下程度の場合には、位置P2はプラズマ雰囲気16から2cm程度離れた位部分となる。
【0072】
このため、プラズマアクチュエータ17の設置位置は、誘起流Ifの流速が最大となる位置P2を考慮して適宜調節することが好ましい。
【0073】
図9は、プラズマアクチュエータ17を備えた冷却装置10の構成を説明する断面図である。
【0074】
図示のように、本実施形態の冷却装置10は、本実施形態の冷却装置10は、
図1で説明した冷却装置10の誘起流発生装置3としてプラズマアクチュエータ17を採用した構成をとる。より詳細には、第2電極13及び誘電体14が支持部材9の表面9aに接続されている。なお、プラズマアクチュエータ17と支持部材9の表面9aの間に適宜絶縁材を設けてもよい。
【0075】
このように、冷却装置10の誘起流発生装置3にプラズマアクチュエータ17を採用することによって、誘起流発生装置3を比較的薄く形成することができる。これにより、プラズマアクチュエータ17自身が、ヒートシンク本体2の第2表面2bに沿う流体の流れを阻害するという事態をより好適に抑制することができる。
【0076】
また、プラズマアクチュエータ17であれば、誘起流Ifを電気的に制御できる。より詳細には、電源装置15による電源供給のオン/オフを切り替えることで誘起流Ifを発生させる状態と発生させない状態の切り替えることができる。この電源供給のオン/オフの切り替えにより、主流Mfの流れを乱して乱流を促進して熱伝達を向上させることができる。さらに、誘起流Ifを発生させる必要が無い状況では、電源供給をオフ状態としておくことで、誘起流Ifの作用に起因する圧力損失の発生を抑制することができる。さらに、電源装置15による印加電圧の大きさを適宜調節することで、誘起流Ifの流速・流量を調節することができる。
【0077】
なお、本実施形態の冷却装置10においては、プラズマアクチュエータ17が、発熱体1が接合されるヒートシンク本体2とは別体の支持部材9に設けられている。このため、プラズマアクチュエータ17の作動による電力損出に起因する熱が発熱体1の近くに伝達されることが抑制される。
【0078】
以上説明した構成を有する本実施形態の冷却装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
【0079】
本実施形態の冷却装置10では、誘起流発生装置3は、第1電極12及び第2電極13の間に誘電体14を介在させてなるプラズマアクチュエータ17を備える。
【0080】
これにより、冷却装置10の全体のサイズ及び体積の大幅な増加を伴うことなく、発熱体1の冷却を促進する誘起流Ifを発生させる構成を実現することができる。特に、プラズマアクチュエータ17は比較的小型に形成することができるので、誘起流発生装置3自身が、ヒートシンク本体2の第2表面2bに沿う流体の流れを阻害するという事態をより好適に抑制することができる。
【0081】
特に、プラズマアクチュエータ17の作動に伴い熱を発生する。これに対して、本実施形態の冷却装置10では、発熱体1が接合されるヒートシンク本体2とは別体のヒートシンク本体2とは別体の支持部材9にプラズマアクチュエータ17が設けられる構成であるため、プラズマアクチュエータ17と発熱体1との間の熱干渉を抑制することができる。
【0082】
また、プラズマアクチュエータ17に対する電気的制御又は構成材料の選択によって、誘起流Ifを発生させる領域を比較的小さくすることができる。したがって、冷却装置10の全体の圧力損失への影響を少なくしつつも、冷却のための流れを生成する構成が実現される。
【0083】
さらに、本実施形態の冷却装置10は、プラズマアクチュエータ17に印加する交流電圧の大きさ、及び周波数を制御する制御装置としての電源装置15をさらに含む。
【0084】
これにより、電源装置15によって誘起流Ifの流速及び流量を電気的に制御することが可能となる。したがって、電源装置15による誘起流Ifの流速及び流量を調節することによって、主流Mfの流れ(流れの中心位置Cf)も適宜調節することができる。したがって、隔壁などによる既存の受動部品(流路の構造等)に比べて当該主流Mfの流れを高い応答性をもって制御することができるとともに、発熱体1や冷却装置10の状態に応じたリアルタイムな制御が可能となる。
【0085】
さらに、本実施形態では、プラズマアクチュエータ17は、ヒートシンク本体2の第1表面2aに接合された発熱体1に対向する第2表面2bの位置(発熱体対向位置P1)において、発熱体1との間で所定距離離れた位置に配置される。
【0086】
これにより、熱量が相対的にヒートシンク本体2の部分に、流速が高くなった状態の誘起流Ifを与えることができるので、冷却をより効率的に行うことができる。特に、本実施形態では、プラズマアクチュエータ17が生成する誘起流Ifの流速が最大となる位置P2に発熱体1の中心位置Cfが配置されるため、冷却の効率がより一層高くなる。また、プラズマアクチュエータ17と発熱体1が離れて配置されることによって、プラズマアクチュエータ17の発熱による発熱体1への熱干渉も抑制することができる。
【0087】
以下では、第2実施形態の変形例2-1について説明する。なお、変形例2-1を説明するための
図10及び
図11においては、図面の簡略化のため、上述した第1電極12、第2電極13、及び誘電体14等のプラズマアクチュエータ17の具体的構成は図示しない。
【0088】
(変形例2-1)
図10及び
図11は、変形例2-1による冷却装置10の構成を説明する断面図である。特に、
図10には、ファン4が主流Mfを発生させているものの、プラズマアクチュエータ17をオフ状態(交流電圧を印加していない状態)とした場合の冷却装置10を示す。また、
図10には、ファン4が主流Mfを発生させつつ、プラズマアクチュエータ17がオン状態(交流電圧を印加している状態)とした場合の冷却装置10を示す。
【0089】
図示のように、本変形例による冷却装置10は、ヒートシンク本体2、プラズマアクチュエータ17、ファン4、及び支持部材9が筐体5に収容された形態をとる。また、図示しないが、電源装置15は例えば筐体5の外部に配置され、筐体5の配線孔を介してプラズマアクチュエータ17と配線接続される。
【0090】
筐体5は、金属材料又は樹脂材料により構成される。特に、発熱体1が電子部品であってアルミニウム等の金属材料で筐体5を構成する場合には、当該筐体5の表面にアルマイト処理等の絶縁処理を施すことが好ましい。そして、本実施形態の支持部材9は、
図10及び
図11上における筐体5の下部(Z軸正方向側の端)に設けられる。より詳細には、支持部材9は、筐体5の一壁面として構成される。
【0091】
本変形例の冷却装置10では、ファン4の作動により図中左側を筐体5の入口5aから主流Mfが取り込まれる。そして、取り込まれた主流Mfは、筐体5内においてヒートシンク本体2の冷却に用いられて、筐体5の出口5bから排出される。
【0092】
したがって、本変形例の構成であれば、ファン4からの主流Mf及び誘起流Ifを筐体5内に維持して拡散させること無く、ヒートシンク本体2の第2表面2bと支持部材9の表面9aの間の空気層7に流すことができる。このため、ヒートシンク本体2と空気層7との間の熱伝達をより効率的に実行することができ、冷却性能がより向上する。また、筐体5により外部からの暴露や感電等をより確実に防止することができる。
【0093】
また、本変形例では、ヒートシンク本体2及び支持部材9にそれぞれ発熱体1及びプラズマアクチュエータ17が複数(
図10及び
図11では2つずつ)設けられている。特に、各プラズマアクチュエータ17は、主流Mfの流れ方向において各発熱体1よりも上流位置(X軸負方向寄り位置)に設けられる。また、各プラズマアクチュエータ17は、主流Mfの流れと略逆向き(X軸負方向)に誘起流Ifを流すように配置されている。
【0094】
本変形例によれば、冷却対象である発熱体1が複数設けられている場合であっても、それらに応じてそれぞれプラズマアクチュエータ17を設けることで、主流Mfの流れを各発熱体1におけるそれぞれの発熱体対向位置P1に誘導するように誘起流Ifを発生させることができる。これにより、より効率的な冷却が実現される。
【0095】
また、プラズマアクチュエータ17のオフ状態(
図10参照)では、主流Mfの流れの中心位置Cfがヒートシンク本体2と支持部材9の間のZ軸方向における略中央に維持される。すなわち、主流Mfの流れが誘起流Ifの影響を受けておらず、乱流の発生が抑えられ圧損が抑制される状態である。
【0096】
一方、プラズマアクチュエータ17がオン状態(
図11参照)の場合には、上述した主流Mfの流れを各発熱体1におけるそれぞれの発熱体対向位置P1に誘導する作用を得ることができる。
【0097】
したがって、必要に応じてプラズマアクチュエータ17のオン状態とオフ状態を切り替えることでリアルタイムに主流Mfの流れを制御することができる。
【0098】
さらに、本変形例の冷却装置10では、支持部材9は、ヒートシンク本体2を囲う筐体5の一部として構成される。
【0099】
このように、ヒートシンク本体2を筐体5内に収容することで、主流Mf及び誘起流Ifの拡散を抑制して冷却を効率的に実行することができる。また、支持部材9に設けられるプラズマアクチュエータ17又はヒートシンク本体2に接合された電子部品等の発熱体1などの比較的高い電圧を有する部品を、外部から遮断することができ、暴露や感電等をより確実に防止することができる。
【0100】
さらに、筐体5の一部が支持部材9として構成されることで、筐体5内部に別途支持部材9を構成する場合に比べ、スペースを削減することができる。結果として、冷却装置10全体の小型化にも資することとなる。
【0101】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
図12及び
図13は、第3実施形態による冷却装置10の構成を説明する断面図である。特に、
図12には、ファン4が主流Mfを発生させているものの、プラズマアクチュエータ17をオフ状態(交流電圧を印加していない状態)とした場合の冷却装置10を示す。また、
図13には、ファン4が主流Mfを発生させつつ、プラズマアクチュエータ17がオン状態(交流電圧を印加している状態)とした場合の冷却装置10を示す。なお、
図12及び
図13においては、図面の簡略化のため、上述した第1電極12、第2電極13、及び誘電体14等のプラズマアクチュエータ17の具体的構成は図示しない。
【0103】
本実施形態による冷却装置10では、ヒートシンク本体2の第2表面2bに放熱フィン6が設けられている。
【0104】
放熱フィン6は、発熱体1からヒートシンク本体2を介して伝達された熱を、その表面6aから空気層7へ放出する部材である。すなわち、放熱フィン6は、ヒートシンクと空気層7との間の伝熱領域(表面積)をより大きくすることを目的として構成される構造である。
【0105】
放熱フィン6は、ヒートシンク本体2の第2表面2bから
図12及び
図13上で下方、すなわち支持部材9に向かって伸長する断面視略矩形状に形成される。そして、本実施形態の放熱フィン6は、Y軸方向に沿って略一定のピッチで複数(
図12及び
図13では4つ)設けられており、全体として櫛歯形状に構成される。
【0106】
また、放熱フィン6は、ヒートシンク本体2と同一材料又は異なる材料により構成される。すなわち、放熱フィン6は、例えば、銅若しくはアルミニウムなどの比較的熱伝導率の高い金属製材料又はFR4若しくはセラミクス等の比較的熱伝導率が高い非金属製材料で構成される。
【0107】
なお、ヒートシンク本体2が金属等の導電性材料で形成されている場合には、放熱フィン6を熱伝導率が比較的高い非導電性材料で形成することで、ヒートシンク本体2と放熱フィン6の間の熱伝導性能を確保しつつ、絶縁機能を与えることができる。一方、ヒートシンク本体2が絶縁材料で構成されるなどの発熱体1との間の絶縁機能が確保されている場合には、放熱フィン6をアルミニウムなどの比較的熱伝導率が高く且つ低コストの材料で形成することが好ましい。
【0108】
また、
図12及び
図13においては図示していないが、本実施形態の冷却装置10も、
図1で説明した冷却装置10と同様に、ファン4がヒートシンク本体2のX軸方向における一端部の近傍に設けられている。したがって、ファン4からの主流Mfは、隣接する放熱フィン6で仕切られる空間の一部を流路して、
図12及び
図13における紙面手間側から奥側に向かって流れる。
【0109】
ここで、本実施形態による冷却装置10において、
図12に示すプラズマアクチュエータ17のオフ状態では、隣接する放熱フィン6の間に形成する主流Mfの流れの中心位置Cfがヒートシンク本体2と支持部材9の間のZ軸方向における略中央となる。すなわち、主流Mfの流れが誘起流Ifの影響を受けておらず、乱流の発生が抑えられ圧損が抑制される状態である。
【0110】
一方、
図13に示すプラズマアクチュエータ17のオン状態では、誘起流Ifの作用により、隣接する放熱フィン6の間の主流Mfの流れがヒートシンク本体2の方向に誘導される。これにより、主流Mfの流れの中心位置Cfをヒートシンク本体2に寄せることができる(
図13の点線矢印参照)。
【0111】
以上説明した構成を有する本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0112】
本実施形態による冷却装置10におけるヒートシンク本体2は、発熱体1の接合面である第1表面2aの裏面としての第2表面2bに設けられた放熱フィン6をさらに含む。
【0113】
これにより、簡易な構成でヒートシンクと空気層7との間の伝熱面積を増加させて、冷却性能をより向上させることができる。
【0114】
また、本実施形態の冷却装置10は、プラズマアクチュエータ17が支持部材9の表面9aに設けられ、放熱フィン6がヒートシンク本体2の支持部材9に向かって伸長するので、支持部材9に設けられたプラズマアクチュエータ17は、ヒートシンク本体2よりも放熱フィン6が近い配置となる。このため、隣接する放熱フィン6の間に形成される主流Mfの流路は、誘起流Ifの発生源であるプラズマアクチュエータ17に比較的近くなる。したがって、誘起流Ifによる主流Mfの制御をより好適に実行することができ、冷却性能をさらに向上させることができる。
【0115】
また、本実施形態の冷却装置10では、放熱フィン6は、櫛歯状に複数設けられる。
【0116】
これにより、誘起流Ifの流路を櫛歯状に並ぶ放熱フィン6の間に画定することができるので、各放熱フィン6の配置間隔及びサイズ(Y軸方向の幅及びX軸方向の長さ等)を適宜調節することで、ヒートシンク本体2の第2表面2b上に所望の経路の誘起流Ifの流路を構成することができる。
【0117】
なお、本変形例による櫛歯状に複数設けられた放熱フィン6に代えて、略四角柱形状、略円柱形状、又は他の任意の形状(多角柱形状、円錐形状、又は多角錐形状など)に形成する突起状の放熱フィン6をヒートシンク本体2に一つ又は複数設けても良い。すなわち、放熱フィン6が突起状に形成されても良い。
【0118】
これにより、誘起流Ifの方向が、突起状の放熱フィン6に衝突して変更される。
【0119】
したがって、放熱フィン6をヒートシンク本体2の第2表面2b上の適切な位置に配置することで、主流Mf及び誘起流Ifの流れ方向を適宜変更することができる。結果として、ヒートシンク本体2又は放熱フィン6と空気層7の間の熱伝達をより促進することができる。
【0120】
特に、突起状の放熱フィン6であれば、主流Mf及び誘起流Ifを乱して乱流(3次元的な流れ)を発生させて、ヒートシンク本体2の第2表面2b又は放熱フィン6の表面6aの周辺における流速の低下に起因する境界層(断熱層)の発達を抑制することができる。
【0121】
なお、上記第2実施形態及び第3実施形態では、主流Mfの流れをヒートシンク本体2の方向に誘導するようにプラズマアクチュエータ17を配置する例について説明した。しかしながら、主流Mfの流れを支持部材9の方向に誘導するようにプラズマアクチュエータ17を配置しても良い。より詳細には、
図5で説明した冷却装置10の誘起流発生装置3としてプラズマアクチュエータ17を採用しても良い。
【0122】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態~第3実施形態の何れかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、誘起流発生装置3として
図8で説明したプラズマアクチュエータ17を採用する冷却装置10の他の例について説明する。特に、本実施形態では、プラズマアクチュエータ17の第2電極13がヒートシンク(ヒートシンク本体2及び放熱フィン6)に構成され、第1電極12が支持部材9に構成される冷却装置10の態様について説明する。
【0123】
図14は、本実施形態による冷却装置10の構成を説明する断面図である。
図15は、
図14におけるA-A’線矢視断面図である。さらに、
図16は、
図14の点線Bで囲まれる領域の斜視図である。
【0124】
図示のように、本実施形態による冷却装置10は、
図12又は
図13で説明した構成をベースとして、支持部材9の表面9aに各放熱フィン6にそれぞれ対向して突起9bが形成されている。また、各放熱フィン6と突起9bとの間に誘電体14が設けられている。
【0125】
本実施形態のヒートシンク本体2及び各放熱フィン6は金属材料で形成されており、接地電位に接続され、第2電極13として機能する。一方、支持部材9は電源装置15に電気的に接続され、第1電極12として機能する。これにより、電源装置15が支持部材9とヒートシンク本体2及び放熱フィン6との間に交流電圧を印加することで、これらがプラズマアクチュエータ17として動作する。
【0126】
したがって、支持部材9とヒートシンク本体2及び各放熱フィン6との間に発生する電圧差によって誘電体14から空気層7中に、ヒートシンク本体2の方向に向かう誘起流Ifが発生する。結果として、本実施形態の冷却装置10の構成により、主流Mfの流れの制御する誘起流If、特に主流Mfの流れをヒートシンク本体2の方へ誘導する誘起流Ifを発生させることができる。
【0127】
以上説明した構成を有する本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0128】
本実施形態では、誘起流発生装置3として
図8で説明したプラズマアクチュエータ17を採用した冷却装置10が提供される。そして、第1電極12がヒートシンク(ヒートシンク本体2及び放熱フィン6)に構成され、第2電極13が支持部材9に構成される。
【0129】
これにより、プラズマアクチュエータ17の第1電極12及び第2電極13を、それぞれ支持部材9及びヒートシンクと一体として構成するので、追加の電極を設けることなく、簡素な且つ低コストに誘起流Ifを発生させるための構成を実現することができる。
【0130】
特に、本実施形態の冷却装置10は、ヒートシンク(ヒートシンク本体2及び放熱フィン6)が接地電位となり、且つ支持部材9の電位が変動するように構成される。
【0131】
これにより、発熱体1が電子部品である場合において、ヒートシンク側が接地電位とされることで、プラズマアクチュエータ17の動作による電圧変動の影響を抑制することができる。また、ヒートシンクと発熱体1との絶縁設計が容易になる。
【0132】
以下では、第4実施形態の各変形例4-1~4-7について説明する。なお、以下の各変形例4-1~4-7は、要求される主流Mf及び誘起流Ifの流れ方向、冷却性能、絶縁性能、ファン4の出力性能、及び圧力損失を考慮して適宜選択され得る具体的構成を例示したものである。
【0133】
(変形例4-1)
図17は、変形例4-1による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図16で説明した冷却装置10の構成に対して、支持部材9は、その表面9aを構成する面部のX軸方向における伸長領域が、突起9bのX軸方向における伸長領域よりも短く形成される。具体的に、
図17に示す例では、支持部材9の面部のX軸方向における伸長領域が、突起9bのX軸方向における伸長領域の1/5~1/6程度に形成される。この構成により、支持部材9の突起9bから図上の下方(Z軸正方向)に流れる誘起流Ifを生成することができる。
【0134】
(変形例4-2)
図18は、変形例4-2による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図17で説明した冷却装置10の構成に対して、支持部材9における図上の左側から1番目と3番目の突起9bの部分のみを、第2電極13として構成する。この構成により、誘起流Ifは、隣接する放熱フィン6の間で渦を描くように流すことができる。
【0135】
(変形例4-3)
図19は、変形例4-3による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、本変形例による冷却装置10は、
図16で説明した冷却装置10の構成に加えて、さらに、隣接する放熱フィン6の間の空間において、X軸正方向に流れる主流Mfを発生するファン4が設けられている。この構成により、誘起流Ifの作用で主流Mfをヒートシンク本体2に寄せることができる。なお、放熱フィン6は突起状に形成しても良い。
【0136】
(変形例4-4)
図20は、変形例4-4による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図16で説明した冷却装置10の放熱フィン6の形態に代えて、略円柱形状の突起状の放熱フィン6が構成されている。また、支持部材9の突起9b及び誘電体14の形状も略円柱形状に形成される。なお、これら各部材にかかる略円柱形状の径は、放熱フィン6、誘電体14、及び突起9bの順に大きくなるように構成されている。この構成により、支持部材9の突起9bの周領域に沿ってから図上の下方(Z軸正方向)に流れる誘起流Ifを生成することができる。
【0137】
(変形例4-5)
図21は、変形例4-5による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図16で説明した冷却装置10の構成に対して、支持部材9に複数(
図21では3つ)のスリット部9cが形成されている。
【0138】
スリット部9cは、支持部材9における隣接する放熱フィン6の間の空間に対向する位置にそれぞれもうけられ、当該支持部材9の面上においてX軸方向に沿って伸長する。また、ファン4が、スリット部9cに対してZ軸負方向側に対向して配置されている。この構成により、ファン4からの主流Mfは、スリット部9cを通過して隣接する放熱フィン6の間の空間をヒートシンク本体2に向かって流れる。さらに、突起9bからZ軸正方向に誘起流Ifが流れるため、当該誘起流Ifにより主流Mfを加速してその流速を増大させることができる。
【0139】
(変形例4-6)
図22は、変形例4-6による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図16で説明した冷却装置10の構成をベースとして、支持部材9の各突起9bの間に誘電体14が挟持される構成をとる。この構成により、冷却装置10の構造をより安定させることができる。
【0140】
(変形例4-7)
図23は、変形例4-7による冷却装置10の要部斜視図である。また、
図24は、
図23を矢印ARの方向に沿って視た構成を示す図である。図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図22で説明した冷却装置10の構成をベースとして、各突起9bの先端が先細りのテーパ状に形成される。この構成により、突起9bから発生する誘起流Ifの方向を拡散させることができ、各放熱フィン6の間の空間における流れを乱流にすることができる。
【0141】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態~第4実施形態の何れかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、誘起流発生装置3として
図8で説明したプラズマアクチュエータ17を採用する冷却装置10の他の例について説明する。特に、本実施形態では、プラズマアクチュエータ17の第1電極12がヒートシンク(ヒートシンク本体2及び放熱フィン6)に構成され、第2電極13が支持部材9に構成される冷却装置10の態様について説明する。
【0142】
図25は、本実施形態による冷却装置10の構成を説明する要部斜視図である。図示のように、本実施形態による冷却装置10では、ヒートシンク本体2及び各放熱フィン6は電源装置15に電気的に接続され、第1電極12として機能する。一方、支持部材9は接地電位に接続され、第2電極13として機能する。これにより、電源装置15がヒートシンク本体2及び放熱フィン6と支持部材9との間に交流電圧を印加することで、これらがプラズマアクチュエータ17として動作する。
【0143】
したがって、ヒートシンク本体2及び放熱フィン6と支持部材9との間に発生する電圧差によって誘電体14から空気層7中に、支持部材9の表面9aの方向に向かう誘起流Ifが発生する。結果として、本実施形態の冷却装置10の構成により、主流Mfの流れの制御する誘起流If、特に主流Mfの流れを支持部材9の表面9aへ寄せる誘起流Ifを発生させることができる。
【0144】
以上説明した構成を有する本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0145】
本実施形態では、支持部材9が接地電位となり、且つヒートシンク(ヒートシンク本体2及び放熱フィン6)の電位が変動するように構成される。
【0146】
これにより、ヒートシンクと接する支持部材9の面(突起9bの側面)の全面を誘電体14で覆う構成とすることができる。このため、ヒートシンク本体2及び放熱フィン6と支持部材9との間の絶縁性を好適に確保することができる。また、本実施形態の構成であれば、支持部材9の表面9aの方向に向かう誘起流Ifを発生させることができるので、プラズマアクチュエータ17の発熱の影響が無視できない場合に主流Mfをヒートシンク本体2から逸らし、発熱体1との熱干渉を抑制することができる。
【0147】
以下では、第5実施形態の各変形例5-1~5-3について説明する。なお、以下の各変形例5-1~5-3は、要求される主流Mf及び誘起流Ifの流れ方向、冷却性能、絶縁性能、ファン4の出力性能、及び圧力損失を考慮して適宜選択され得る具体的構成を例示したものである。
【0148】
(変形例5-1)
図26は、変形例5-1による冷却装置10の要部斜視図である。本変形例による冷却装置10では、
図25で説明した冷却装置10の構成をベースとするが誘電体14の構成が異なる。具体的に、誘電体14は、支持部材9の表面9aの全面を覆う板状の基部14aと、支持部材9の突起9bの両側面を覆う突出部14bと、を有している。この構成によっても、主流Mfの流れを支持部材9の表面9aへ寄せる誘起流Ifを発生させることができる。
【0149】
(変形例5-2)
図27は、変形例5-2による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図25で説明した冷却装置10の放熱フィン6の形態に代えて、略円柱形状の突起状の放熱フィン6が構成されている。
【0150】
また、支持部材9の突起9b及び誘電体14の形状も略円柱形状に形成される。なお、これら各部材にかかる略円柱形状の径は、放熱フィン6、誘電体14、及び突起9bの順に大きくなるように構成されている。この構成により、支持部材9の突起9bの周領域に沿ってから図上の情報(Z軸負方向)に流れる誘起流Ifを生成することができる。
【0151】
(変形例5-3)
図28は、変形例5-3による冷却装置10の要部斜視図である。図示のように、本変形例による冷却装置10では、
図25で説明した冷却装置10の構成に対して、支持部材9に複数(
図28では3つ)のスリット部9cが形成されている。
【0152】
スリット部9cは、支持部材9における隣接する放熱フィン6の間の空間に対向する位置にそれぞれもうけられ、当該支持部材9の面上においてX軸方向に沿って伸長する。また、本変形例では、吸引式のファン4´が、スリット部9cに対してZ軸負方向側に対向して配置されている。この構成により、ファン4´の作動に伴い、隣接する放熱フィン6の間の空間においてヒートシンク本体2からスリット部9cを通過する方向(Z軸負方向)に流れる主流Mfが発生する。さらに、突起9bからZ軸負方向に誘起流Ifが流れるため、当該誘起流Ifにより主流Mfを加速してその流速を増大させることができる。
【0153】
なお、本実施例で説明した吸引式のファン4´の配置に代えて、誘起流Ifに対して直交するようにファン4´を配置し、主流Mfの方向を調節するようにしても良い。
【0154】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態及び各変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0155】
例えば上記
図16及び
図17で説明した冷却装置10(変形例3-1及び変形例3-2の冷却装置10)では、ファン4を筐体5の入口5aに配置する例を説明した。しかしながら、この構成に代えて、ファン4を筐体5の出口5bに配置してファン4の作動により出口5bから空気を吸い込む構成としても良い。
【0156】
また、上記各実施形態を説明する図面において発熱体1は略四角形状で示している。しかしながら、発熱体1として想定されるコイル及びコンデンサ等の電子部品、又は冷却が要求される他の装置などの形状に応じた形状の発熱体1についても、上記各実施形態に適用することができる。
【0157】
さらに、上記各実施形態では、一つの発熱体1に対して一つの誘起流発生装置3を設ける例について説明した。しかしながら、これに限らず、一つの発熱体1に対して複数の誘起流発生装置3を設けても良いし、複数の発熱体1に対して一つの誘起流発生装置3を設ける構成としても良い。
【0158】
また、誘起流発生装置3としては、上記第4実施形態で説明したプラズマアクチュエータ17以外の装置を用いることもできる。例えば、誘起流発生装置3を圧電素子等の電気的作用により気流を生じさせる他の装置により構成しても良い。
【0159】
さらに、上記各実施形態では、主流Mfに対して略直交する方向又は略平行する方向に誘起流Ifを発生させる態様を説明した。しかしながら、発生させる誘起流Ifの方向は当該態様に限られず、主流Mfに対して所定の角度をなすように誘起流Ifを発生させても良い。特に、主流Mfの流れ方向の調節又は主流Mfの流量・流速を補助する作用を得る観点から、誘起流Ifを発生させる方向及び誘起流Ifの流量又は流速を適宜、調節することが可能である。
【0160】
また、上記各実施形態では、主流発生装置として、送風式のファン4又は吸い込み式のファン4´を用いる例を説明した。しかしながら、主流発生装置は、ヒートシンクから空気層7への放熱を助長する機能を果たすものであれば、他のタイプの装置を採用しても良い。例えば、ファン4又はファン4´に代えて、自然滞留によりヒートシンクの周辺に気流の流れを生じさせる装置を採用しても良い。
【0161】
なお、上記各実施形態では、ヒートシンク本体2の第1表面2aに直接、発熱体1を接合する態様を説明した。しかしながら、この構成に代えて、発熱体1からの熱をヒートシンク本体2においてより好適に拡散させる観点から、発熱体1とヒートシンク本体2の間に当該熱の拡散を促進する部材であるヒートスプレッダを介在させても良い。
【0162】
このようなヒートスプレッダは、ヒートシンク本体2又は放熱フィン6と同一の材料又は異なる材料で形成することができる。特に、ヒートスプレッダは、銅、アルミニウム、及び炭素構造体(カーボンブラック又はダイヤモンド等)の熱伝導率が比較的高い材料で形成されることが好ましい。より好ましくは、ヒートスプレッダは銅などの比較的低コストの材料で構成される。
【0163】
このように、ヒートスプレッダを発熱体1とヒートシンク本体2の間に介在させることで、ヒートシンク本体2又は放熱フィン6の特定の部位に偏らせることなく、より均等に伝達させることができる。結果として、ヒートシンク本体2又は放熱フィン6と、主流Mf及び誘起流Ifとの間の実質的な伝熱領域を増大させて、熱伝達性能をより向上させることができる。