(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】分光器および分析装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/06 20060101AFI20220928BHJP
G01J 3/18 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01J3/06
G01J3/18
(21)【出願番号】P 2017178919
(22)【出願日】2017-09-19
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2017008806
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】野口 英剛
(72)【発明者】
【氏名】安住 純一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英記
(72)【発明者】
【氏名】末松 政士
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修一
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-132847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0262346(US,A1)
【文献】特開2015-148485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0236382(US,A1)
【文献】特開2005-121463(JP,A)
【文献】特開2011-247655(JP,A)
【文献】特開2000-111405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
G01N 21/00-21/958
G01N 23/00-23/2276
G01T 1/00-7/12
G21K 1/00-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの光を入射させる光入射手段と、
前記光入射手段によって入射された前記光を波長分散させる凹面回折格子と、
前記凹面回折格子によって波長分散された
異なる波長の前記光を反射する反射面を有し、当該反射面の傾きが可変自在である反射手段と、
前記反射手段
の前記反射面の傾きを変化させることによって反射された前記
波長が異なり焦点距離が異なる光を外部に出射する
単一の光出射手段と
を備え、
前記光入射手段によって入射された前記光は、前記光出射手段によって出射される前に2回だけ反射することを特徴とする分光器。
【請求項2】
前記反射手段を駆動することによって前記反射面の傾きを制御する駆動手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
前記光出射手段の光通過部は、前記光の入射側よりも出射側の方が広いことを特徴とする請求項1または2に記載の分光器。
【請求項4】
前記光入射手段と前記光出射手段は、前記入射手段から前記凹面回折格子に向かう前記光の光路と、前記凹面格子から前記光出射手段に向かう前記光の光路と、が交差するよう位置することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項5】
前記光出射手段と、前記凹面回折格子とが、同一の基板に形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項6】
前記光入射手段と、前記反射手段とが、同一の基板に形成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項7】
前記光出射手段と、前記光入射手段とが、同一の基板に形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項8】
第1の基板および第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された介在部材とをさらに備え、
前記光入射手段と前記反射手段とが、前記第1の基板に形成されており、
前記光出射手段と前記凹面回折格子とが、前記第2の基板に形成されており、
前記第1の基板および前記第2の基板の各々が、前記介在部材に接合されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項9】
第1の基板および第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間において、前記第1の基板および前記第2の基板に対して非平行に配置された第3の基板と
をさらに備え、
前記反射手段が、前記第1の基板に形成されており、
前記凹面回折格子が、前記第2の基板に形成されており、
前記光入射手段と前記光出射手段とが、前記第3の基板に形成されており、
前記第1の基板および前記第2の基板の各々が、前記第3の基板に接合されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項10】
前記凹面回折格子の中心部の垂線と、前記凹面回折格子が形成されている基板面とが直交しないように、前記凹面回折格子が形成されている
ことを特徴とする請求項1から6,8,9のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項11】
光出射手段から出射された前記光を検出する光検出手段を
さらに備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項12】
光出射手段に代えて、前記反射手段によって反射された前記光を検出する光検出手段を備え、前記光検出手段は単一の光センサであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項13】
前記反射手段によって反射された光の特定の波長の光を検出する特定波長検出手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項14】
前記特定波長検出手段と、前記凹面回折格子とが、同一の基板に形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の分光器。
【請求項15】
前記反射手段によって反射された光を、外部に設けられた前記特定波長検出手段に向けて出射する第2の光出射手段
をさらに備えることを特徴とする請求項13に記載の分光器。
【請求項16】
前記第2の光出射手段と、前記凹面回折格子とが、同一の基板に形成されている
ことを特徴とする請求項15に記載の分光器。
【請求項17】
前記特定波長検出手段によって検出された、前記特定の波長の光の検出信号の時間間隔を一定に制御することで、前記反射手段の傾き範囲を一定に制御する
ことを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項18】
光検出手段によって検出される前記光の次数と、前記特定波長検出手段によって検出される前記特定の波長の光の次数とが異なる
ことを特徴とする請求項13から17のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項19】
光源と、
請求項1から18のいずれか一項に記載の分光器と
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項20】
光源と、
請求項1から17のいずれか一項に記載の分光器と
を備えることを特徴とする波長可変光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光器および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定光を波長毎に分光することにより、波長毎の分光スペクトルが得られるようにしたいわゆる分光器が知られている。
【0003】
ここで、一般的な分光器は、入射された測定光を複数の波長の光に分光する凹面回折格子と、複数の波長の光をそれぞれ検出することが可能なアレイセンサとを備えて構成されている(例えば、下記特許文献1参照)。例えば、アレイセンサには、Siフォトダイオードや、InGaAsフォトダイオード等が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分光器に用いられるアレイセンサは大型且つ高価であるため、従来、小型且つ低価格な分光器を提供することができないという課題が生じていた。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するため、小型且つ低価格な分光器を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の分光器は、外部からの光を入射させる光入射手段と、前記光入射手段によって入射された前記光を波長分散させる凹面回折格子と、前記凹面回折格子によって波長分散された異なる波長の前記光を反射する反射面を有し、当該反射面の傾きが可変自在である反射手段と、前記反射手段の前記反射面の傾きを変化させることによって反射された前記波長が異なり焦点距離が異なる光を外部に出射する単一の光出射手段とを備え、前記光入射手段によって入射された前記光は、前記光出射手段によって出射される前に2回反射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型且つ低価格な分光器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成を示す概念図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る光反射ユニットの構成の概略図である。
【
図3】
図2に示す光反射ユニットのA-A'断面図である。
【
図4】
図2に示す光反射ユニットのB-B'断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る凹面回折格子の第1構成例を示す概略図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る凹面回折格子の第2構成例を示す概略図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る凹面回折格子の第3構成例を示す概略図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第1変形例を示す概念図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第2変形例を示す概念図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第3変形例を示す概念図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第4変形例を示す概念図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第5変形例を示す概念図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第6変形例を示す概念図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第7変形例を示す概念図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第8変形例を示す概念図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る分光器の構成を示す概念図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器の構成(第1例)の概略図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器の構成(第2例)の概略図である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器の出力信号の一例を示す図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器の出力信号の一例を示す図である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器の出力信号の一例を示す図である。
【
図22】本発明の第2実施形態に係る可動光反射部の振れ角の時間波形の一例を示す図である。
【
図23】本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第1変形例を示す概念図である。
【
図24】本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第2変形例を示す概念図である。
【
図25】本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第3変形例を示す概念図である。
【
図26】本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第4変形例を示す概念図である。
【
図27】本発明の第2実施形態に係る分光器の他の構成を示す概念図である。
【
図28】本発明の第1実施形態に係る分光器を用いた分光測定装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0010】
(分光器10Aの構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る分光器10Aの構成を示す概念図である。
図1に示す分光器10Aは、本発明の「分光器」の一例である。この分光器10Aは、光入射部1、凹面回折格子2、可動光反射部3、光出射部4、基板5、および基板6を備えて構成されている。
【0011】
光入射部1は、本発明の「光入射手段」の一例である。光入射部1は、光通過部1aが形成されている。光入射部1は、外部から照射された光を、光通過部1a内を通過させることによって、分光器10A内に入射させる。光通過部1aは、例えば、ピンホール形状、スリット形状等を有している。光入射部1は、例えば、光の入射位置を決定したり、波長分解能を向上させたりする目的で設置されている。
【0012】
凹面回折格子2は、本発明の「回折格子」の一例である。凹面回折格子2は、基板5上に形成されている。凹面回折格子2は、光入射部1から分光器10A内に入射した光を、波長分散する。凹面回折格子2によって波長分散された光(回折光)は、可動光反射部3に向けて反射される。基板5の材料としては、例えば、半導体、ガラス、金属、樹脂等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。なお、凹面回折格子2は、基板5上に直接形成されてもよく、基板5上に形成された薄膜層(例えば、樹脂層等)上に形成されてもよい。
【0013】
可動光反射部3は、本発明の「反射手段」の一例である。可動光反射部3は、基板6の開口部6a内において、基板6と同一平面上に配置されている。可動光反射部3は、基板6とともに、光反射ユニット11を構成する。可動光反射部3は、凹面回折格子2によって分光された回折光を、光出射部4に向けて反射する。可動光反射部3は、回転軸3aを有している。可動光反射部3は、回転軸3aを中心に回転することにより、回折光を反射する反射面の傾きを変化させることができるように構成されている。基板6の材料としては、例えば、半導体、ガラス、金属、樹脂等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。但し、基板6の材料として半導体を用いることにより、半導体プロセス、MEMSプロセス等を用いて、非常に薄型且つ小型の可動光反射部3を形成することが可能である。また、基板6の材料として半導体を用いることにより、圧電駆動、静電駆動、電磁駆動などの駆動素子部を、基板6上にモノリシックに形成することができる。これにより、モーター等の外部駆動装置を用いなくても、可動光反射部3を駆動することができるため、分光器10Aのさらなる小型化が可能となる。
【0014】
光出射部4は、本発明の「光出射手段」の一例である。光出射部4は、光通過部4aが形成されている。光出射部4は、可動光反射部3によって反射された回折光を、その焦点位置で光通過部4a内を通過させることによって、外部に出射させる。光通過部4aは、例えば、ピンホール形状、スリット形状等を有している。光出射部4は、例えば、回折光の出射位置を決定したり、波長分解能を向上させたりする目的で設置されている。
【0015】
なお、光入射部1および光出射部4についても、基板上に形成されたものであってもよい。この場合、基板の材料としては、例えば、半導体、ガラス、金属、樹脂等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。但し、基板の材料として半導体を用いることにより、半導体プロセス、MEMSプロセス等を用いて、高精度且つ低価格に光入射部1および光出射部4を形成することが可能である。
【0016】
また、分光器10Aにおいて、上記各構成部は、
図1に示すように所定の位置に配置され、さらに、所定の姿勢を維持できるように、筐体や治具等に対して固定されている。
【0017】
(光反射ユニット11の構成)
ここで、
図2~
図4を参照して、光反射ユニット11の具体的な構成について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る光反射ユニット11の構成の概略図である。
図2に示すように、光反射ユニット11は、可動光反射部3、基板6、駆動回路7(本発明の「駆動手段」の一例)、および梁部8を有して構成されている。可動光反射部3は、基板6の開口部6a内において、基板6と同一平面上に配置されている。開口部6aは、例えば、異方性深掘りエッチング等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスを用いて形成されたものである。可動光反射部3は、回転軸3aの一端となる部分と、回転軸3aの他端となる部分との双方が、梁部8によって支持されている。
【0018】
また、
図2の例では、可動光反射部3は、薄膜部3bと、薄膜部3bの反射面側に重畳された反射部材3cとを有して構成されている。反射部材3cは、可動光反射部3の反射率を向上させるために設けられている。薄膜部9には、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板の薄膜Si層等を用いることができる。また、反射部材10には、例えば、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いることができる。
【0019】
図3は、
図2に示す光反射ユニット11のA-A'断面図である。
図3の例では、梁部8は、図中上方(Z軸正方向)から順に、薄膜部8aと、電極8bと、圧電膜8dと、電極8cとが重畳されて構成されている。このように構成された梁部8は、駆動回路7(
図2参照)から、電極8b,8cを介して圧電膜8dに電圧が印加されることにより、アクチュエータとして機能し、可動光反射部3を回転駆動させることが可能である。例えば、所望の波長の回折光が外部へ出射されるようにするためには、可動光反射部3を、その波長に応じた所定の角度に傾ける必要がある。例えば、駆動回路7は、圧電膜8dに所定の電圧を印加することにより、または、可動光反射部3が備える傾きセンサによって検出された角度を圧電膜8dへの印加電圧にフィードバックすることにより、可動光反射部3を所定の角度に傾けることができる。なお、可動光反射部3の駆動方式は、圧電駆動に限らず、その他の駆動方式(例えば、静電駆動、電磁駆動等)を用いてもよい。
【0020】
図4は、
図2に示す光反射ユニット11のB-B'断面図である。
図4に示すように、可動光反射部3は、
図3で説明したように梁部8によって駆動されることによって、回転軸3aを中心に、時計回りおよび反時計回りに回転することで、回折光を反射する反射面の傾きを変化させることができるように構成されている。
【0021】
(凹面回折格子2の構成例)
次に、
図5~
図7を参照して、凹面回折格子2の具体的な構成について説明する。
【0022】
図5は、本発明の第1実施形態に係る凹面回折格子2の第1構成例を示す概略図である。
図5に示す例では、凹面回折格子2は、樹脂層14および反射部材15を有して構成されている。具体的には、基板5の上面に凹曲面が形成されており、その凹曲面に対して薄膜状の樹脂層14が形成されている。そして、樹脂層14に対して、回折格子が形成されている。さらに、回折格子の表面に、反射率を向上させるための、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いた反射部材15が形成されている。
【0023】
例えば、基板5にSi基板を用いた場合、グレースケールマスク、ナノインプリント技術等を用いて、基板5上に塗布されたレジストに凹曲面形成用のパターンを形成し、ドライエッチング等を行うことにより、基板5に凹曲面を形成する事ができる。また、基板5の凹曲面に樹脂層14を形成し、別途作製した凹面回折格子の型を樹脂層14へ転写し硬化させることにより、樹脂層14に回折格子を形成することができる。
【0024】
図6は、本発明の第1実施形態に係る凹面回折格子2の第2構成例を示す概略図である。
図6に示す例では、凹面回折格子2は、反射部材15を有して構成されている。具体的には、基板5の上面に凹曲面が形成されており、その凹曲面に対して、回折格子が形成されている。さらに、回折格子の表面に、反射率を向上させるための、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いた反射部材15が形成されている。例えば、基板5の凹曲面に対してレジストを塗布し、干渉露光法等を用いて、レジストに格子パターンを形成し、ドライエッチング等を行うことにより、基板5の凹曲面に回折格子を形成することができる。
【0025】
図7は、本発明の第1実施形態に係る凹面回折格子2の第3構成例を示す概略図である。
図7に示す例では、凹面回折格子2は、樹脂層14および反射部材15を有して構成されている。具体的には、基板5の上面(平坦面)に、樹脂層14が形成されている。樹脂層14の上面には、凹曲面が形成されており、その凹曲面に対して、回折格子が形成されている。さらに、回折格子の表面に、反射率を向上させるための、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いた反射部材15が形成されている。例えば、基板5の上面(平坦面)に樹脂層14を形成し、別途作製した凹面回折格子の型を樹脂層14へ転写し硬化させることにより、樹脂層14に回折格子を形成することができる。
図7の構成は、基板5に凹曲面を形成する工程を省くことができるため、プロセスの簡略化が可能である。
【0026】
なお、
図5~
図7の凹面回折格子2としては、例えば、回折格子の溝部の断面形状として、矩形形状、正弦波形状、ノコギリ波形状等を有しているものを用いることが可能である。
【0027】
また、
図5~
図7の凹面回折格子2において、反射部材15を設けない構成としてもよい。また、凹面回折格子2の構成は、
図5~
図7に例示したものに限らない。すなわち、凹面回折格子2は、同様の波長分散機能を有するものであれば、
図5~
図7以外の構成であってもよい。また、光入射部1から平行光が入射する場合には、凹面回折格子2の代わりに平面回折格子を用いることによっても、同様の波長分散機能を実現することが可能である。この場合、平面回折格子の傾きを変える構成を採用した場合に必要となる複雑な装置構成(例えば、平面回折格子の前後で光を平行光にするためのコリメート光学系)は不要である。
【0028】
(分光器10Aによる作用および効果)
以上のように構成された本実施形態の分光器10Aは、可動光反射部3を駆動して、可動光反射部3の反射面の傾きを変化させることにより、光出射部4から外部へと出射される回折光の波長を変化させることが可能となっている。具体的には、凹面回折格子2によって波長分散された回折光の焦点距離は、波長によって異なる。そこで、分光器10Aは、光出射部4の光通過部4aの位置が、所望する波長の回折光の焦点距離に応じた位置となるように、可動光反射部3の反射面の傾きを変化させる。これにより、
図1に示すように、光出射部4の光通過部4aから、所望する波長の回折光が出射されることとなる。なお、
図1における破線は、ある特定の波長の光の光路を、概略的に示すものである。すなわち、
図1では、ある特定の波長の回折光が出射されるように、可動光反射部3の反射面の傾きが設定されている様子が示されている。
【0029】
このように、本実施形態の分光器10Aによれば、可動光反射部3の反射面の傾き調整により、光出射部4の光通過部4aから、所望する波長の回折光を出射させることができる。このため、本実施形態の分光器10Aによれば、外部に設けられた単一の光センサにより、所望する波長の回折光の分光スペクトルを得ることができる。すなわち、本実施形態の分光器10Aによれば、大型且つ高価なアレイセンサを用いることなく、様々な波長の回折光の分光スペクトルを得ることができる。したがって、本実施形態の分光器10Aによれば、小型且つ低価格な分光器を提供することができる。
【0030】
また、本実施形態の分光器10Aによれば、凹面回折格子2の傾きを変えることなく、可動光反射部3の反射面の傾きを変えることにより、光出射部4の光通過部4aから、所望する波長の回折光を出射させるようにしている。このため、本実施形態の分光器10Aによれば、凹面回折格子2の傾きを変える構成を採用した場合に必要となる複雑な装置構成(例えば、凹面回折格子2への光の入射角の変化に対応するための構成)が不要である。したがって、本実施形態の分光器10Aによれば、比較的簡単な構成で、光出射部4の光通過部4aから、所望する波長の回折光を出射させることができる。
【0031】
また、本実施形態の分光器10Aによれば、入射された光の反射の回数は、凹面回折格子2による反射と、凹面回折格子2による反射との2回である。このため、本実施形態の分光器10Aによれば、光を3回以上反射させる構成(例えば、特許文献1の構成)と比較して、構成を簡略化することができるうえに、反射ロスによる光量の低下を抑制することができる。
【0032】
なお、本実施形態の分光器10Aは、少なくとも、光出射部4の光通過部4aから出射された回折光を検出する光検出器と組み合わされることにより、分光装置を構成することができる。この場合、光検出器には、単一の光センサを有する光検出器を用いることができる。また、本実施形態の分光器10Aは、少なくとも、光出射部4の光通過部4aから出射された回折光を導く光ファイバと組み合わされることにより、モノクロメータを構成することができる。
【0033】
(分光器の構成の変形例)
分光器の構成の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例においては、それ以前に説明した分光器からの変更点について説明する。また、各変形例において、それ以前に説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素については、それ以前に説明した構成要素と同一の符号を付すことにより説明を省略する。また、各変形例において、分光器の動作原理等は、それ以前に説明したものと同様であるため、説明を省略する。
【0034】
(第1変形例)
図8は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第1変形例を示す概念図である。
図8に示す分光器10Bでは、光入射部1と可動光反射部3とが、同一の基板6上に形成されている。また、分光器10Bでは、光出射部4と凹面回折格子2とが、同一の基板5上に形成されている。例えば、基板5,6にSi基板を用いた場合、光入射部1および光出射部4は、半導体プロセス、MEMSプロセス等を用いて、それぞれ基板5,6上に一体的に形成することが可能である。
【0035】
この分光器10Bによれば、半導体プロセスを用いて、基板5,6に対し、高い位置精度で光入射部1,光出射部4を形成することができる。すなわち、この分光器10Bによれば、光入射部1と可動光反射部3との間のアライメント調整、および、光出射部4と凹面回折格子2との間のアライメント調整が不要になるため、全体のアライメント調整が容易になる。また、この分光器10Bによれば、光入射部1と可動光反射部3との間、および、光出射部4と凹面回折格子2との間に、筐体の一部や治具等が介在しない構成とすることができる。このため、分光器10Bによれば、光入射部1と可動光反射部3との距離、および、光出射部4と凹面回折格子2との距離を短くでき、よって、より小型な分光器を実現することが可能となる。
【0036】
(第2変形例)
図9は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第2変形例を示す概念図である。
図9に示す分光器10Cでは、光入射部1と光出射部4とが、同一の基板16上に形成されている。
【0037】
この分光器10Cによれば、半導体プロセスを用いて、基板16に対し、高い位置精度で光入射部1および光出射部4を形成することができる。すなわち、この分光器10Cによれば、光入射部1と光出射部4との間のアライメント調整が不要になるため、全体のアライメント調整が容易になる。
【0038】
(第3変形例)
図10は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第3変形例を示す概念図である。
図10に示す分光器10Dは、
図8に示す分光器10Bに対して、基板5と基板6との間に左右一対のスペーサ17がさらに配置された構成を有している。基板5は、本発明の「第2の基板」の一例である。基板6は、本発明の「第1の基板」の一例である。スペーサ17は、本発明の「介在部材」の一例である。基板5,6の各々は、スペーサ17に接合されている。スペーサ17には、例えば、柱状または板状のものを用いることができる。基板5と基板6との間隔は、スペーサ17の厚みにより、所望の分光特性が得ることができるようにするための適切な間隔に調整されている。
【0039】
この分光器10Dによれば、基板5と基板6との間隔は、スペーサ17の厚みにより、所望の分光特性が得ることができるようにするための適切な間隔に調整される。このため、分光器10Dによれば、基板5と基板6との間のアライメント調整が不要になる。なお、分光器10Dにおいて、スペーサ17に基板を用いることも可能である。この場合、半導体プロセスを用いることにより、より高精度なスペーサ17を形成することができる。また、ウエハに対して、複数のスペーサ17を高精度で一括して形成することができる。このため、ばらつきが少なく、かつ、より低価格な分光器を実現する事ができる。
【0040】
(第4変形例)
図11は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第4変形例を示す概念図である。
図11に示す分光器10Eは、基板5において、光出射部4が凹面回折格子2よりも右側(図中Y軸正側)に形成されている点で、
図10に示す分光器10Dと異なる。分光器10Eでは、凹面回折格子2における格子ピッチが、
図10に示す分光器10Dよりも広められている。これにより、凹面回折格子2による回折角が変化したため、分光器10Eでは、光出射部4の位置が変更されている。この分光器10Eによれば、分光器10Dと比較して、凹面回折格子2の格子ピッチが大きいため、凹面回折格子2を容易に製造することができる。このため、分光器10Eによれば、分光器10Dと比較して、製造ばらつきを小さくすることができ、かつ、分光器の低価格化を実現することができる。
【0041】
(第5変形例)
図12は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第5変形例を示す概念図である。
図12に示す分光器10Fは、基板5において、凹面回折格子2の中心部の垂線と基板5の基板面とが直交しないように、凹面回折格子2が基板5に対して光入射部1側(図中Y軸負側)に傾けられた状態で配置されている点で、
図10に示す分光器10Dと異なる。
【0042】
このように構成された分光器10Fによれば、凹面回折格子2の傾きを変化させることによって、可動光反射部3への回折光の入射角を調整して、可動光反射部3の正負方向の必要な振れ角が等しくなるように制御することが可能である。このため、分光器10Fによれば、同じ波長範囲を測定可能としつつ、可動光反射部3の振れ角を小さくすることが可能となる。これにより、分光器10Fによれば、より小さい駆動力で、可動光反射部3を駆動することができる。したがって、分光器10Fによれば、可動光反射部3の駆動に必要な構成要素(例えば、駆動素子、駆動回路、電源等)を小型化することができ、分光器のさらなる小型化および低価格化を実現することができる。さらに、分光器10Fによれば、可動光反射部3を支持する梁部8のねじれ量を低減できるため、梁部8に生じる応力を低減できる。このため、分光器10Fによれば、可動光反射部3の回転角度の安定性や信頼性等を向上させることが可能である。
【0043】
(第6変形例)
図13は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第6変形例を示す概念図である。
図13に示す分光器10Gは、左側(図中Y軸負側)のスペーサ17が基板19に変更されている点、および、光入射部1と光出射部4とが、基板19に形成されている点で、
図10に示す分光器10Dと異なる。
【0044】
基板19は、本発明の「第3の基板」の一例である。基板19は、基板5と基板6との間において、基板5および基板6に対して非平行且つ垂直に配置されている。そして、基板5および基板6の各々は、基板19に対して接合されている。基板19の材料としては、例えば、半導体、ガラス、金属、樹脂等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。但し、基板19の材料として半導体を用いることにより、半導体プロセス、MEMSプロセス等を用いて、非常に薄型且つ小型の光入射部1および光出射部4を形成することが可能である。
【0045】
この分光器10Gによれば、半導体プロセスを用いて、基板19に対し、高い位置精度で光入射部1および光出射部4を形成することができる。すなわち、この分光器10Gによれば、光入射部1と光出射部4との間のアライメント調整が不要になるため、全体のアライメント調整が容易になる。なお、分光器10Gにおいて、光入射部1を基板6に形成し、光出射部4を基板19に形成するようにしてもよい。または、分光器10Gにおいて、光入射部1を基板19に形成し、光出射部4を基板5に形成するようにしてもよい。
【0046】
(第7,8変形例)
図14は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第7変形例を示す概念図である。
図15は、本発明の第1実施形態に係る分光器の構成の第8変形例を示す概念図である。
図14に示す分光器10Hは、光出射部4の代わりに、光出射部4の位置に光検出部18が設けられている点で、
図1に示す分光器10Aと異なる。
図15に示す分光器10Iは、光出射部4の代わりに、光出射部4の位置に光検出部18が設けられている点で、
図8に示す分光器10Bと異なる。分光器10H,Iの光検出部18は、本発明の「光検出手段」の一例である。
【0047】
この分光器10H,Iによれば、光検出部18を外部に設ける必要がないため、より小型の分光器を実現することができる。なお、光検出部18は、受光面の形状が、光出射部4に形成されている光通過部4aと同様の形状(例えば、ピンホール形状、スリット形状等)に形成されていてもよい。または、光検出部18は、受光面の上部に、光出射部4と同様の形状を有する遮光部材を有していてもよい。これらの受光面および遮光部材等は、半導体プロセスを用いて、半導体基板上にモノリシックに形成することができる。このため、光検出部18は、薄型且つ小型に製造することが可能である。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、
図16~
図26を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、分光器に対し、特定波長検出器をさらに備える例を説明する。
【0049】
(分光器50Aの構成)
図16は、本発明の第2実施形態に係る分光器50Aの構成を示す概念図である。
図16に示す分光器50Aは、特定波長検出器20をさらに備える点で、第1実施形態(
図1)の分光器10Aと異なる。
【0050】
特定波長検出器20は、本発明の「特定波長検出手段」の一例である。特定波長検出器20は、出射光の焦点位置(すなわち、光出射部4の位置)の近傍に設けられている。特定波長検出器20は、特定の波長λsの光を検出することが可能であり、光出射部4の近傍に設置されている。分光器50Aは、特定波長検出器20によって特定の波長λsの光を検出することにより、可動光反射部3の振れ角が、所望の測定波長範囲(λm~λx)に対して十分であるか否か、あるいは振れ角が一定であるか否かを検出することが可能である。
【0051】
例えば、光検出器としてInGaAsフォトダイオードを用いた場合、分光器50Aの測定波長範囲は、900~1700nmまたは900nm~2500nmに設定され得る。この場合、特定の波長λsは、測定波長範囲の最小波長900nmよりも短波長側であってもよく、測定波長範囲の最大波長1700nmまたは2500nmよりも長波長側であってもよい。特に、波長1000nm程度以下に特定の波長λsを設定することにより、Siフォトダイオードが使用できるため、より低コストに本構成を実現することが可能である。
【0052】
なお、
図16における破線は、測定波長範囲の最小波長λmの光の光路を、概略的に示すものである。一方、
図16における一点鎖線は、特定の波長λsの光の光路を、概略的に示すものである。
【0053】
(特定波長検出器20の構成)
ここで、
図17および
図18を参照して、特定波長検出器20の具体的な構成について説明する。
図17は、本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器20の構成(第1例)の概略図である。例えば、
図17に示すように、特定波長検出器20は、光検出器21とバンドパスフィルタ22とを備えて構成される。光検出器21は、本発明の「光検出部」の一例である。光検出器21は、特定の波長λsの光を検出する。光検出器21としては、例えば、Siフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード等が用いられる。バンドパスフィルタ22は、特定の波長範囲(特定の波長λsを範囲内に含む)の光を透過させる。バンドパスフィルタ22には、通過帯域の狭いフィルタ(例えば、ファブリペローフィルタ等)を使用することが好ましい。
【0054】
図18は、本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器20の構成(第2例)の概略図である。
図18に示すように、特定波長検出器20は、遮光部材23をさらに備えて構成されてもよい。遮光部材23における光通過部の形状およびサイズは、必要に応じて適切なものを用いればよい。なお、特定波長検出器20は、バンドパスフィルタ22、遮光部材23、および光検出器21を用いる代わりに、バンドパスフィルタおよび遮光部材としての機能を有する光検出器を用いるようにしてもよい。また、
図27は、本発明の第2実施形態に係る分光器50Aの他の構成を示す概念図である。
図27に示す構成のように、特定波長検出器20を、光出射部4に一体的に形成しても良い。例えば、光出射部4がSi基板で形成され、特定波長検出器20がSiフォトダイオードである場合には、両者をモノリシックに形成することが可能である。また、バンドパスフィルタ22は、例えばファブリペローフィルタ等を半導体プロセスを使用して形成でき、遮光部材23も金属薄膜等を半導体プロセスを使用して形成できるため、光出射部4上に、
図18に示す特定波長検出器20の構成を一体的に形成することが可能である。また、Siフォトダイオードの形状によっては、遮光部材23を形成せずとも同様の機能を得ることが可能である。
【0055】
図19~21は、本発明の第2実施形態に係る特定波長検出器20の出力信号の一例を示す図である。
図19~21では、特定波長検出器20で特定の波長λsの光を検出した場合の出力信号の一例を示している。可動光反射部3の共振周波数をfとすると、駆動周期Tは1/fである。
【0056】
図19は、測定波長範囲(λm~λx)に対して、可動光反射部3の角度振幅が一致している状態を表している。この場合、例えば、λs=λmとすれば、可動光反射部3の振れ角の最大位置で、特定の波長λsの光が検出されるため、特定の波長λsの検出信号が、周期Tで1回ずつ出力されることとなる。
【0057】
図20は、測定波長範囲(λm~λx)に対して、可動光反射部3の角度振幅に余裕がある状態を表している。この場合、特定の波長λsの検出信号が、周期Tで信号が2回ずつ出力されることとなる。
【0058】
図21は、測定波長範囲(λm~λx)に対して可動光反射部3の角度振幅に余裕がない状態を表している。この場合、特定の波長λsの検出信号の振幅が低下することとなる。さらに、可動光反射部3の角度振幅が低下すると、特定の波長λsの検出信号が出力されなくなる。
【0059】
分光器の場合、測定波長範囲(λm~λx)を常に維持する必要があるため、
図19の状態、または、可動光反射部3の角度振幅に余裕がある
図20の状態である必要がある。特に、
図20の場合は、特定の波長λsの検出信号の振幅に依存することなく、二つのピーク間の時間TdあるいはTsを検出することで、可動光反射部3の角度振幅に余裕があることを検出することができる。また、TdあるいはTsを一定にするように可動光反射部3の駆動を制御することで、測定波長範囲(λm~λx)を一定にすることができ、Tsの範囲において、光出射部4から出射される光を検出すれば、所望の分光スペクトルを得ることが可能である。また、可動光反射部3の共振周波数fが変動する可能性がある場合は、fの値によってTdが変化するため、周期T(=1/f)を測定することによって、共振周波数fに応じてTdを一定に制御することができ、所望のスペクトルを得ることが可能である。
【0060】
なお、Tの範囲は可動光反射部3の一往復分の駆動範囲であるため、実際には2回分のスペクトルが得られる。これらの半分のデータをスペクトルデータとして使用しても良いし、平均した値を使用してもよい。
【0061】
図22は、本発明の第2実施形態に係る可動光反射部3の振れ角の時間波形の一例を示す図である。
図22中の実線は、振れ角が測定波長範囲と一致している状態(
図19の状態)を表しており、振れ角の最大値において、最小波長λmの光が光出射部4から出射されている状態(
図19の状態)を表している。
図22中の破線は、振れ角が測定波長範囲以上となっている状態(
図20の状態)を表している。この例では、振れ角が正の最大値付近で、最小波長λm相当の振れ角を超えているため、最小波長λm相当の振れ角となるタイミングで特定の波長λsが検出される。このため、
図20に示したように、一周期ごとに二つの検出信号が連続して検出されることとなる。
図22中の一点鎖線は、振れ角が不十分な状態(
図21の状態、または、特定の波長λsの出力が0の状態)を表している。
【0062】
なお、特定波長検出器20の検出結果は、例えば、駆動回路7に出力され、可動光反射部3の回転角度のフィードバック制御に用いられる。この場合、例えば、駆動回路7は、特定の波長λsの検出信号の時間間隔TdあるいはTsを一定に制御することで、可動光反射部3の回転角度を一定に制御するようにしてもよい。
【0063】
(分光器の構成の変形例)
分光器の構成の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例においては、それ以前に説明した分光器からの変更点について説明する。また、各変形例において、それ以前に説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素については、それ以前に説明した構成要素と同一の符号を付すことにより説明を省略する。また、各変形例において、分光器の動作原理等は、それ以前に説明したものと同様であるため、説明を省略する。
【0064】
(第1変形例)
図23は、本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第1変形例を示す概念図である。
図23に示す分光器50Bでは、光入射部1と可動光反射部3とが、同一の基板6上に形成されている。また、分光器50Bでは、光出射部4と、凹面回折格子2と、特定波長検出器20とが、同一の基板5上に形成されている。例えば、基板5,6にSi基板を用いた場合、光入射部1および光出射部4は、半導体プロセス、MEMSプロセス等を用いて、それぞれ基板5,6上に一体的に形成することが可能である。
【0065】
分光器50Bにおいて、特定波長検出器20は、光検出器21とバンドパスフィルタ22(
図17参照)とを備えたものであってもよく、さらに遮光部材23(
図18参照)を備えたものであってもよい。前者の場合、光検出器21およびバンドパスフィルタ22は、例えばファブリペローフィルタ等を半導体プロセスを使用して形成できるため、基板5上にモノリシックに形成することが可能である。後者の場合、遮光部材23も金属薄膜等を半導体プロセスを使用して形成できるため、光検出器21およびバンドパスフィルタ22と一体的に形成することが可能である。
【0066】
このように構成された分光器50Bによれば、特定波長検出器20を基板5上に一体的に形成することができるため、さらなる小型化が可能である。また、分光器50Bによれば、半導体プロセスを用いて光出射部4および特定波長検出器20を形成することにより、光出射部4と特定波長検出器20との間の高精度の位置関係を実現することができる。このため、分光器50Bによれば、可動光反射部3の振れ角を正確に検出し、測定波長範囲を安定させることが可能である。
【0067】
(第2変形例)
図24は、本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第2変形例を示す概念図である。
図24に示す分光器50Cは、基板5において、特定の波長λsの光の集光位置に光出射部24が形成されており、特定波長検出器20が外部に配置されている点で、
図23に示す分光器50Bと異なる。光出射部24は、本発明の「第2の光出射手段」の一例である。このように構成された分光器50Cによれば、特定波長検出器20を基板5に形成しないため、基板5のプロセスを簡略化することができる。一方、光出射部4および光出射部24については、基板5上に同一のプロセスで同時に形成できるため、それぞれの位置関係を精密に制御することが可能である。このため、分光器50Cによれば、可動光反射部3の振れ角を正確に検出し、測定波長範囲を安定させることが可能である。
【0068】
(第3変形例)
図25は、本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第3変形例を示す概念図である。
図25に示す分光器50Dは、特定波長検出器20の構成要素である検出器21とバンドパスフィルタ22とが互いに分離されて配置されている点で、
図24に示す分光器50Cと異なる。具体的には、バンドパスフィルタ22は、基板5上において、光出射部24を覆うように配置されている。一方、検出器21は、外部に配置されている。このように構成された分光器50Cによれば、外部には検出器21のみが配置されるため、外部にさらにバンドパスフィルタ22を配置する構成と比較して、小型化が可能である。
【0069】
(第4変形例)
図26は、本発明の第2実施形態に係る分光器の構成の第4変形例を示す概念図である。
図26に示す分光器50Eは、基板5において、特定波長検出器20が光出射部4よりも左側(図中Y軸負側)に配置されている点で、
図23に示す分光器50Bと異なる。この配置変更は、特定の波長λsが、測定波長範囲の最大波長λxよりも長波長側に設定されたことに応じてなされたものである。すなわち、特定波長検出器20は、最大波長λxの光が光出射部4を通過するときに特定の波長λsの光が集光する位置に配置されている。
【0070】
特に、測定波長範囲の最大波長λxが2000nm以下である場合、特定の波長λsの集光位置での高次回折光の特定の波長λs'を検出する構成としてもよい。これまでに説明したλm、λx、λsは、1次回折光であるが、回折の原理より、1次回折光の位置には波長が1/2となる2次回折光が重畳して回折される。例えば、特定の波長λsを1次回折光の2000nmとした場合、1次回折光の集光位置と同じ位置にλs'=λs/2となる波長1000nmの2次回折光が集光する。よって、波長λs'である2次回折光を検出することにより、より安価なSiフォトダイオードを使用できるので、より低コスト化が可能となる。
【0071】
なお、第2実施形態で説明した特定波長検出器20は、第1実施形態で説明した全ての分光器10A~10Iに適用可能である。
【0072】
また、各実施形態で説明したいずれかの分光器を、光源とともに用いて、分析装置を構成するようにしてもよい。この分析装置では、例えば、光源により、被測定物に対して測定光を照射する。そして、分光器により、被測定物において拡散反射された測定光を波長毎に分光し、これによって得られた波長毎の測定光を検出する。これにより、分析装置は、被測定物の分子構造に特徴的な、波長毎の分光スペクトルを得ることができる。また、各実施形態で説明したいずれかの分光器を、光源とともに用いて、波長可変光源を構成するようにしてもよい。このように、各実施形態のいずれかの分光器を用いた分析装置および波長可変光源は、分光器が小型且つ低価格であるため、分析装置および波長可変光源自体についても、小型化且つ低価格化を実現することができる。
【0073】
図28は、本発明の第1実施形態に係る分光器10Aを用いた分光測定装置70の構成を示す概念図である。
図28に示す分光測定装置70は、
図1に示す分光器10Aに対し、光出射部4の外側に光検出器30を設置し、さらに、光源31を設けた構成である。分光測定装置70においては、光源31から照射された光が、被測定物90に照射され、被測定物90で反射された光が、光入射部1から分光器10A内に入射する。凹面回折格子2によって回折された光は、可動光反射部3によって反射され、可動光反射部3の角度に応じて光出射部4から出射された後に、検出器30によって検出される。これにより、分光測定装置70は、被測定物90の吸収分光スペクトルを得ることが可能である。なお、分光測定装置70における詳細な動作原理については、前述と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 光入射部(光入射手段)
2 凹面回折格子(回折格子)
3 可動光反射部(反射手段)
4 光出射部(光出射手段)
5 基板(第2の基板)
6 基板(第1の基板)
7 駆動回路(駆動手段)
8 梁部
10A~10I 分光器
11 光反射ユニット
14 樹脂層
15 反射部材
17 スペーサ(介在部材)
18 光検出部(光検出手段)
19 基板(第3の基板)
20 特定波長検出器(特定波長検出手段)
21 光検出器(光検出部)
22 バンドパスフィルタ
23 遮光部材
24 光出射部(第2の光出射手段)
50A~50E 分光器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】