(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】シート処理装置、画像形成システム、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20220928BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220928BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B65H37/04 D
G03G15/00 432
B41J29/00 H
(21)【出願番号】P 2018132948
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】山下 昌秀
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-246870(JP,A)
【文献】特開2005-104684(JP,A)
【文献】特開2007-320049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/00 - 37/06
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに対して処理をおこなうシート処理装置であって、
画像形成装置から排出されて当該シート処理装置の内部に送入されたシートに対して自動で処理をおこなう後処理機構と、
当該シート処理装置の外部から手動でセットされたシートに対して綴じ処理をおこなう手動ステープラと、
を備え、
前記後処理機構は、前記画像形成装置に設置された第1給電部からの給電により稼働するように構成され、
前記手動ステープラは、前記第1給電部とは異なり前記画像形成装置に設置された第2給電部からの給電により稼働するように構成され、
前記後処理機構は、前記画像形成装置において電力消費量を制限する省電力モードが実行されたときに、前記第1給電部から電力消費量を制限した給電がおこなわれることにより稼働ができず、
前記手動ステープラは、前記画像形成装置の主電源がオンされているときには、前記省電力モードの実行の有無に関わらず、前記第2給電部から電力消費量が制限されずに給電がおこなわれることにより常に稼働可能に構成されたことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記手動ステープラにシートがセットされた状態を検知する検知手段を備え、
前記手動ステープラは、前記画像形成装置の主電源がオンされているときであって、前記検知手段によってシートのセットが検知されたときに、前記省電力モードの実行の有無に関わらず、前記第2給電部からの給電により当該シートに対して綴じ処理をおこなうことを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記手動ステープラにシートがセットされた状態を機械的に検知するスイッチ機構であることを特徴とする請求項2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記後処理機構は、少なくとも、当該シート処理装置の内部に送入されたシートに対して綴じ処理をおこなう装置内ステープラを含むことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のシート処理装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載のシート処理装置と、前記画像形成装置と、を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【請求項6】
画像形成装置本体の外部から手動でセットされたシートに対して綴じ処理をおこなう手動ステープラと、
前記手動ステープラを除く前記画像形成装置本体の被給電体に給電する本体給電部と、
を備え、
前記手動ステープラは、
前記本体給電部とは異なり前記画像形成装置本体に設置された手動ステープラ給電部からの給電により稼働するように構成されて、
前記画像形成装置本体の主電源がオンされているときには、
前記画像形成装置本体において電力消費量を制限する省電力モードの実行の有無に関わらず、前記手動ステープラ給電部から電力消費量が制限されずに給電がおこなわれることにより常に稼働可能に構成されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記手動ステープラにシートがセットされた状態を検知する検知手段を備え、
前記手動ステープラは、前記画像形成装置本体の主電源がオンされているときであって、前記検知手段によってシートのセットが検知されたときに、前記省電力モードの実行の有無に関わらず、前記手動ステープラ給電部からの給電により当該シートに対して綴じ処理をおこなうことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記検知手段は、前記手動ステープラにシートがセットされた状態を機械的に検知するスイッチ機構であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートに対して綴じ処理などの処理をおこなうシート処理装置と、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、画像形成装置とシート処理装置とが設置された画像形成システムと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置に接続されたシート処理装置において、画像形成装置から給電されて稼働されるように構成されたものが広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1におけるシート処理装置は、画像形成装置から排出されてシート処理装置の内部に送入された画像形成後のシートに対して綴じ処理などの処理をおこなう。また、シート処理装置には、画像形成装置による画像形成動作をともなわず、直接的にセットされたシートに対しても綴じ処理をおこなえるように構成されたステープラが設置されている。
そして、シート処理装置は、接続された画像形成装置から給電されて、稼働される。
【0004】
また、特許文献1には、画像形成装置とともにシート処理装置が省電力モードに入った状態で、ステープラのシート挿入口に処理対象のシートが挿入された状態が検知されると、シート処理装置のみを省電力モードから復帰させて、ユーザーの実行指示(又は、時間経過)により綴じ処理をおこなう技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の技術は、画像形成装置とともにシート処理装置が省電力モードに入った状態であるときに、画像形成装置による画像形成動作をともなわずにステープラ(手動ステープラ)を用いて綴じ処理をおこなおうとすると、シート処理装置を省電力モードから復帰させる必要があるため、綴じ処理をおこなうまでに時間がかかってしまっていた。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、画像形成装置において省電力モードが実行されている状態であっても、手動ステープラを用いて短時間に綴じ処理をおこなうことができる、シート処理装置、画像形成システム、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明におけるシート処理装置は、シートに対して処理をおこなうシート処理装置であって、画像形成装置から排出されて当該シート処理装置の内部に送入されたシートに対して自動で処理をおこなう後処理機構と、当該シート処理装置の外部から手動でセットされたシートに対して綴じ処理をおこなう手動ステープラと、を備え、前記後処理機構は、前記画像形成装置に設置された第1給電部からの給電により稼働するように構成され、前記手動ステープラは、前記第1給電部とは異なり前記画像形成装置に設置された第2給電部からの給電により稼働するように構成され、前記後処理機構は、前記画像形成装置において電力消費量を制限する省電力モードが実行されたときに、前記第1給電部から電力消費量を制限した給電がおこなわれることにより稼働ができず、前記手動ステープラは、前記画像形成装置の主電源がオンされているときには、前記省電力モードの実行の有無に関わらず、前記第2給電部から電力消費量が制限されずに給電がおこなわれることにより常に稼働可能に構成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像形成装置において省電力モードが実行されている状態であっても、手動ステープラを用いて短時間に綴じ処理をおこなうことができる、シート処理装置、画像形成システム、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成システムを示す全体構成図である。
【
図4】画像形成システムの給電経路を示すブロック図である。
【
図5】画像形成システムでおこなわれる制御を示すフローチャートである。
【
図6】変形例としての、画像形成装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成システム100における全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態において、シート処理装置50は、画像形成装置1に対して着脱可能に設置されていて、画像形成装置1とともに1つの画像形成システム100を構成している。
【0012】
図1において、1は画像形成装置としての複写機、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する書込み部(露光部)、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像をシートPに転写する転写部(画像形成部)、を示す。
また、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部、12は用紙等のシートPが収納された給送部、17は転写部7に向けてシートPを搬送するレジストローラ対(タイミングローラ)、20はシートP上の未定着画像を定着する定着部、21は定着部20に設置された定着ローラ、22は定着部20に設置された加圧ローラ、を示す。
また、シートP(複数のシートPからなるシート束PTも含む。)に処理を施すシート処理装置、58はソート処理部としても機能する排出ローラ対、59はシートP又はシート束PTが排出されて積載される排出部(スタッカー部)、60は複数枚のシートP(シート束PT)に揃え処理を施すシート揃え部、を示す。
また、70はシートにパンチ処理(穿孔処理)を施すパンチ処理部、80は複数枚のシートP(シート束PT)に綴じ処理を施す装置内ステープラ(第1綴じ装置)、90はシート処理装置50の外部に設置された手動ステープラ(第2綴じ装置)、を示す。
【0013】
図1を参照して、画像形成システム100(画像形成装置1及びシート処理装置50)における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラ対によって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、書込み部3に送信される。そして、書込み部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0014】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は
図1の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5の表面に形成された画像は、画像形成部としての転写部7で、レジストローラ対17により搬送されたシートP上に転写される。
【0015】
一方、転写部7(画像形成部)に搬送されるシートPは、次のように動作する。
まず、画像形成装置1における複数の給送部12のうち、1つの給送部が自動又は手動で選択される(例えば、最上段の給送部12が選択されたものとする。)。
そして、給送部12に収納されたシートPの最上方の1枚が、搬送経路Kに向けて搬送される。
【0016】
その後、シートPは、複数の搬送ローラ対が配設された搬送経路Kを通過して、レジストローラ対17の位置に達する。そして、レジストローラ対17の位置に達したシートPは、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7(画像形成部)に向けて搬送される。
【0017】
そして、転写工程後のシートPは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着部20に達する。定着部20に達したシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方の部材21、22から受ける圧力とによって画像が定着される。画像が定着されたシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(ニップ部である。)から送出された後に、画像形成装置1から排出される。
【0018】
さらに、画像形成装置1から排出されたシートPは、入口ローラ対51によってシート処理装置50の内部に送入(搬送)される。
そして、画像形成装置1の外装部に設置された操作部30(
図2参照)にユーザーによって予め「通常処理モード」が入力されている場合には、切替爪57による搬送経路の切り替えによって、シートPは直線搬送経路55を経由して排出ローラ対58によって排出部59にそのまま排紙される。
その際、ユーザーによって操作部30に予め「パンチ処理」が付加的に入力されている場合には、シートPがパンチ処理部70を通過するときに、パンチ処理部70によってシートPにパンチ処理が施される。
また、ユーザーによって操作部30に予め「ソート処理」が付加的に入力されている場合には、シートPが排出ローラ対58によって排出部59に排出されるときに、ソート処理部として機能する排出ローラ対58が、シートPを仕分けるタイミングに合わせて幅方向に移動して、排出部59に排出されるシートPにソート処理が施される。
【0019】
これに対して、画像形成装置1の操作部30にユーザーによって予め「綴じ処理モード」が入力されている場合には、切替爪57による搬送経路の切り替えによって、シートPは綴じ処理用搬送経路53を経由して積載部61に向けて搬送される。そして、シート揃え部60によって、積載部61に積載されたシートP(シート束PT)に対して、搬送方向と幅方向との揃え処理が施される。
【0020】
詳しくは、積載部61の載置面上にシートP(シート束PT)が載置されると、そのたびに、その上方に配置された叩きローラ56が回転軸を中心にして退避位置から最上方のシートPに当接する位置に回動して、叩きローラ56が
図1の反時計方向に回転駆動されることで、そのシートPがエンドフェンス62に向けて搬送(移動)される。これにより、複数枚のシートP(シート束PT)の後端がエンドフェンス62に突き当たって、複数枚のシートP(シート束PT)の搬送方向の位置が揃えられることになる。
また、本実施の形態では、積載部61の載置面上にシートP(シート束PT)が載置されると、そのたびに、搬送ベルト65のベルト面に保持されたストッパ部64が、搬送ベルト65の
図1の時計方向の走行によって、シートPの先端を押動するように移動して、そのシートPがエンドフェンス62に向けて搬送(移動)される。これにより、複数枚のシートP(シート束PT)の後端がエンドフェンス62に突き当たって、複数枚のシートP(シート束PT)の搬送方向の位置が揃えられることになる。
また、このようにシート束PTに対して搬送方向の揃え処理がおこなわれるとき、積載部61の幅方向両端部に設置されたサイドフェンス(ジョガーフェンス)が、積載部61上にシートPが載置されるたびに(又は、所望の枚数のシートPが積載された後に)、シートP(シート束PT)を挟み込むように幅方向(搬送方向に直交する方向であって、
図1の紙面垂直方向である。)に移動して、シートP(シート束PT)の幅方向の位置が揃えられることになる。
【0021】
そして、シート揃え装置60によって搬送方向と幅方向とがそれぞれ揃えられたシートP(シート束PT)の後端に対して、装置内ステープラ80によって綴じ処理が施されることになる。
なお、装置内ステープラ80としては、金属針を用いたステープラを用いることもできるし、金属針を用いないステープラを用いることもできる。装置内ステープラ80は、移動機構によって退避位置から幅方向に移動可能に構成されていて、エンドフェンス62の突当面に突き当たった状態のシート束PTに対して、幅方向の任意の位置に綴じ処理をおこなうことができる。
【0022】
その後、綴じ処理が施されたシートP(シート束PT)は、放出爪としても機能するストッパ部64の排紙方向の移動によって載置面の傾斜に沿って斜め上方に移動して、排出搬送経路54を通過した後に、排出ローラ対58による搬送によって排出部59に排紙される。
なお、綴じ処理モード時においても、ユーザーによって操作部30に予め「パンチ処理」が付加的に入力されている場合には、シートPがパンチ処理部70を通過するときに、パンチ処理部70によってシートPにパンチ処理が施される。
【0023】
以下、本実施の形態におけるシート処理装置50の、特徴的な構成・動作について詳述する。
先に
図1を用いて説明したように、本実施の形態におけるシート処理装置50には、画像形成装置1から排出されてシート処理装置50の内部に送入されたシートP(シート束PTを含む。)に対して自動で処理をおこなう後処理機構としての、装置内ステープラ80、パンチ処理部70、シート揃え部60、ソート処理部(排出ローラ対58)、が設けられている。
後処理機構としての装置内ステープラ80は、シート処理装置50の内部に送入されたシートP(シート束PT)に対して綴じ処理をおこなうものである。
後処理機構としてのパンチ処理部70は、シート処理装置50の内部に送入されたシートPに対してパンチ処理をおこなうものである。
後処理機構としてのシート揃え部60は、シート処理装置50の内部に送入されたシートP(シート束PT)に対して揃え処理をおこなうものである。
後処理機構としてのソート処理部(排出ローラ対58)は、シート処理装置50の内部に送入されたシートPに対してソート処理をおこなうものである。
【0024】
そして、
図1、
図2等に示すように、本実施の形態におけるシート処理装置50には、後処理機構として機能する、装置内ステープラ80、パンチ処理部70、シート揃え部60、ソート処理部(排出ローラ対58)の他に、手動ステープラ90が設けられている。
手動ステープラ90は、シート処理装置50の外部から手動でセットされたシートP(主にシート束PTである。)に対して綴じ処理をおこなうためのものである。本実施の形態において、手動ステープラ90は、排出部59に近い位置であって、装置の正面側(ユーザーが画像形成システム100を操作する側である。)に、シート処理装置50の外部に突出するように設けられている。
そして、ユーザーは、排出部59に積載されたシート束PTや、画像形成装置1による画像形成動作にまったく関係することなく別に用意されたシート束PT、などを把持して手動ステープラ90の位置に運ぶ。そして、把持したシート束PTが手動ステープラ90の挿入口90aから奥側に向けて挿入されると、そのシート束PTに対して手動ステープラ90による綴じ処理が施されることになる。このように手動ステープラ90を設けることで、ユーザーにとって綴じ処理のバリエーションが広がるとともに、利便性も向上することになる。
【0025】
詳しくは、
図3を参照して、手動ステープラ90は、ステープラ本体91、検知手段としてのスイッチ機構92、シート押え機構97、ストッパ99、などで構成されている。
ステープラ本体91は、挿入口90aに挿入されたシート束PTの端部に綴じ処理をおこなう本体部分である。ステープラ本体91としては、金属針を用いたものであっても、金属針を用いないものであっても良い。本実施の形態において、ステープラ本体91は、手動ステープラ90において固定した位置に設置されていて、ユーザーが挿入口90aに挿入するシート束PTの姿勢を調整することで、シート束PTの所望の位置に綴じ処理をおこなうことができる。
【0026】
スイッチ機構92は、手動ステープラ90にシートP(シート束PT)がセットされた状態を検知する検知手段として機能するものである。スイッチ機構92は、レバー93、可撓性導電体94、剛性導電体95、電流検知部96、などで構成されていて、手動ステープラ90にシートP(シート束PT)がセットされた状態を機械的に検知するものである。レバー93は、支軸93aを中心に回転可能に保持されていて、その一端側がシートPがセットされる経路に突出可能な位置に配置され、その他端側には錘93bが設置されている。可撓性導電体94は、可撓性材料からなる導電体であって、その一端側が保持部に保持されている。剛性導電体95は、剛性材料からなる導電体であって、その一端側に位置する保持部に回転可能に保持されている。可撓性導電体94の保持部と、剛性導電体95の保持部と、は電源や電流検知部96を介して電気的に接続されている。
シート押え機構97は、上下方向に移動可能に構成された可動コロ98と、可動コロ98を下方に付勢するスプリング、などで構成されている。可動コロ98は、回転軸98aを中心に回転可能に保持されている。
ストッパ99は、ゲル材料やクッション材料など衝撃吸収材料で形成されていて、レバー93の一端側に当接可能な位置に設置されている。
【0027】
そして、このように構成された手動ステープラ90において、
図3(A)に示すように、シート束PT(シートP)が挿入経路に挿入されていない場合には、レバー93は、錘93bの重力によって、略垂直に起立するように保持された状態になる。このとき、レバー93の一端側が挿入経路に突出した状態になる。また、可撓性導電体94は、倒れることなく略垂直に起立するように保持部に保持された状態になる。また、剛性導電体95は、保持部に巻回されたコイルスプリングの付勢によって、倒れることなく略垂直に起立するように保持部に保持された状態になる。
このような状態のとき、可撓性導電体94と剛性導電体95とが接触していないため、回路が開状態で電流が流れない状態が電流検知部96で検知されて、手動ステープラ90にシートPがセットされていない状態が検知されることになる。
また、このとき、シート押え機構97の可動コロ98は、挿入経路の底面に当接した状態になっている。
【0028】
そして、
図3(B)に示すように、シート束PT(シートP)が挿入経路に挿入されると、レバー93は、錘93bの重力に抗するように、シート束PTに押動されて、支軸93aを中心に時計方向に回転する。そして、レバー93の他端側に押動された可撓性導電体94が、保持部に保持された状態で左方に撓むことになる。さらに、剛性導電体95は、可撓性導電体94を介してレバー93に押動されて、コイルスプリングの付勢力に抗するように、保持部を中心に反時計方向に回転することになる。
このような状態のとき、可撓性導電体94と剛性導電体95とが接触しているため、回路が閉状態で電流が流れる状態が電流検知部96で検知されて、手動ステープラ90にシートPがセットされている状態が検知されることになる。
また、このようにシート束PTが挿入経路に挿入されるとき、シート押え機構97の可動コロ98は、シート束PTの上面に当接してシート束PTを下方に押し付けながら、その挿入方向に沿うように回転することになる。これにより、シート束PTが挿入経路にスムーズに挿入されて、その終端位置(ステープラ本体91が位置する突当部である。)まで案内されることになる。
そして、このような検知手段としてのスイッチ機構92(電流検知部96)によるシート束PTの検知をトリガーにして、セットされたシート束PTに対するステープラ本体91による綴じ処理がおこなわれることになる。
【0029】
その後、ステープラ本体91による綴じ処理が終了したシート束PTが、左方に引き抜かれて
図3(A)の状態に戻されると、その状態がスイッチ機構92(電流検知部96)によって検知されることになる。
このとき、レバー93は、支軸93aを中心に反時計方向に回転することになるが、緩衝材として機能するストッパ99によって、その回転が制限されるとともに、その衝撃が吸収されることになる。
【0030】
このように、本実施の形態では、手動ステープラ90にシートPがセットされた状態を検知する検知手段として、セット状態を機械的に検知するスイッチ機構92を用いているため、シートPがセットされた状態を光学的に検知する光学センサや、シートPがセットされた状態を空間誘電率の変化から検知する誘電センサを、検知手段として用いる場合に比べて、検知手段の電力消費がほとんど生じなくなる。
【0031】
ここで、
図4を参照して、本実施の形態におけるシート処理装置50は、後処理機構58、60、70、80と手動ステープラ90とが、いずれも、画像形成装置1からの給電により稼働するように構成されている。すなわち、シート処理装置50には電源が設けられておらず、シート処理装置50は、画像形成装置1に設けられた電源から電力が供給されて稼働することになる。このように構成することで、シート処理装置50を低コスト化、小型化することができるとともに、シート処理装置50における電源制御が簡易化して、さらに電源コンセントが不要になる。
【0032】
詳しくは、
図4に示すように、画像形成装置1には、装置内給電部45、装置外第1給電部46、装置外第2給電部47などからなる電源ユニット(電源)が設けられている。
そして、主電源スイッチ35がオンされた状態(主電源がオンされた状態である。)で、電源ユニットの装置内給電部45から、画像形成装置1の制御部40や、画像形成装置1の装置内ユニット(原稿搬送部10、書込み部3、作像部4、給送部12、シート搬送部、定着部20などである。)などに電力が供給されることになる。
また、主電源スイッチ35がオンされた状態で、電源ユニットの装置外第1給電部46から、シート処理装置50の制御部85や、シート処理装置50の後処理機構(装置内ステープラ80、パンチ処理部70、ソート処理部58、シート揃え部60である。)に電力が供給されることになる。
さらに、主電源スイッチ35がオンされた状態で、電源ユニットの装置外第2給電部47から、シート処理装置50の手動ステープラ90に電力が供給されることになる。
【0033】
なお、画像形成装置1に設けられた制御部40は、CPU、I/Oインターフェイス等を有するマイクロコンピュータを搭載した制御回路を備えている。制御部40のCPUには、操作部30や、シート処理装置50の制御部85のCPUや、種々のセンサからの信号が通信インターフェイスを介して入力されて、入力された信号に基づいて所定の制御を実行する。さらに、CPUは、ドライバ、モータドライバを介して種々のソレノイドやモータを駆動制御して、インターフェイスから画像形成装置1内のセンサ情報を取得する。また、制御対象やセンサに応じてI/0インターフェイスを介してモータドライバによってモータの駆動制御をおこない、センサからセンサ情報を取得する。なお、このようにしておこなわれる制御は、ROMに格納されたプログラムコードをCPUが読み込んでRAMに展開して、RAMをワークエリアやデータバッファとして使用しながらプログラムコードで定義されたプログラムに基づいて実行される。
【0034】
また、シート処理装置50に設けられた制御部85も、CPU、I/Oインターフェイス等を有するマイクロコンピュータを搭載した制御回路を備えている。制御部85のCPUには、画像形成装置1の制御部40のCPUや、種々のセンサからの信号が通信インターフェイスを介して入力されて、入力された信号に基づいて所定の制御を実行する。さらに、CPUは、ドライバ、モータドライバを介して種々のソレノイドやモータを駆動制御して、インターフェイスからシート処理装置50内のセンサ情報を取得する。また、制御対象やセンサに応じてI/0インターフェイスを介してモータドライバによってモータの駆動制御をおこない、センサからセンサ情報を取得する。なお、このようにしておこなわれる制御は、ROMに格納されたプログラムコードをCPUが読み込んでRAMに展開して、RAMをワークエリアやデータバッファとして使用しながらプログラムコードで定義されたプログラムに基づいて実行される。
【0035】
ここで、画像形成装置1の制御部40のCPUには、「省電力モード」を実行するか否かを判断するための省電力モード実行部が設けられている。「省電力モード」は、ROMに格納されたプログラムコードを省電力モード実行部で読み込んでRAMに展開して、プログラムコードで定義されたプログラムに基づいて実行される。
ここで、「省電力モード」とは、主電源スイッチ35がオンされた状態(主電源がオンされた状態である。)で、画像形成システム100が使用(稼働)されていない時間が所定時間を超えたときに、電源の電力消費量が使用時に比べて大幅に低減されるように制限するものであって、「省エネルギーモード」や「スリープモード」とも呼ぶ。「省電力モード」は、ユーザーによって操作部30が操作されるなどすると解除される。そして、省電力モードが解除されると、復帰時間はかかるものの、装置を最初から立ち上げる場合に比べて短い時間で、通常の給電をおこなう「通常電力モード」に移行(復帰)することになる。
【0036】
そして、本実施の形態におけるシート処理装置50において、後処理機構58、60、70、80は、画像形成装置1において電力消費量を制限する「省電力モード」が実行されたときに、その電力消費量が制限されることになる。すなわち、画像形成装置1が省電力モードに入ると、画像形成装置1とともに、後処理機構(装置内ステープラ80、パンチ処理部70、ソート処理部58、シート揃え部60である。)も省電力モードに入ることになる。
このように、画像形成装置1とともに後処理機構58、60、70、80で、必要に応じて省電力モードを実行することで、画像形成システム100において無駄な電力消費を抑えることができる。
【0037】
これに対して、手動ステープラ90は、「省電力モード」が実行されたときであっても、その電力消費量が制限されずに画像形成装置1(装置外第2給電部47)からの給電により稼働可能に構成されている。すなわち、画像形成装置1が省電力モードにはいると、後処理機構58、60、70、80は省電力モードに入るものの、手動ステープラ90は、省電力モードに入らず通常電力モードが維持されることになる。
具体的に、手動ステープラ90は、画像形成装置1の主電源(主電源スイッチ35)がオンされているときであって、スイッチ機構92(検知手段)によって手動ステープラ90へのシートP(シート束PT)のセットが検知されたときに、省電力モードの実行の有無に関わらず、画像形成装置1からの給電により、セットされたシートP(シート束PT)に対して綴じ処理をおこなうことになる。
【0038】
さらに詳しくは、
図4に示すように、画像形成装置1の電源ユニットにおいて、装置内給電部45と装置外第1給電部46とは、制御部40における省電力モード実行部に接続されていて、省電力モードが実行可能に構成されている。これに対して、画像形成装置1の電源ユニットにおいて、装置外第2給電部47は、制御部40における省電力モード実行部に接続されておらず、省電力モードが実行できないように構成されている。具体的に、省電力モードの実行の有無に関わらず、手動ステープラ90におけるスイッチ機構92やステープラ駆動機構(綴じ処理をおこなうためステープラ本体91を駆動する機構である。)には、それぞれ装置外第2給電部47から充分な電力が供給されることになる。
【0039】
このように構成することで、画像形成装置1において省電力モードが実行されている状態であっても、手動ステープラ90を用いて短時間に綴じ処理をおこなうことができる。すなわち、画像形成装置1とともに、手動ステープラ90を含むシート処理装置50の全体が省電力モードに入ってしまう場合には、手動ステープラ90を用いて綴じ処理をおこなおうとすると、画像形成装置1とともにシート処理装置50を省電力モードから復帰させる必要があり、手動ステープラ90による綴じ処理を開始するまでに時間がかかってしまうことになる。
これに対して、本実施の形態では、手動ステープラ90自体は省電力モードに入らないため、画像形成装置1において省電力モードが実行されているときであっても、省電力モードからの復帰を待つことなく(省電力モードを続けたまま)、手動ステープラ90を用いて即座に綴じ処理をおこなうことができる。そのため、ユーザーにとって、手動ステープラ90を使用するときの待ち時間がほとんど生じず、ストレスのない作業が可能になる。
【0040】
また、本実施の形態におけるシート処理装置50は、後処理機構として、少なくとも装置内ステープラ80が含まれている。
そのため、省電力モードが実行されていない通常電力モード時には、装置内ステープラ80による綴じ処理と、手動ステープラ90による綴じ処理と、を同時におこなうことも可能になる。
【0041】
以下、
図5のフローチャートを用いて、本実施の形態における画像形成システム100における給電制御について、まとめとして説明する。
図5に示すように、まず、省電力モードが実行されているかが判別される(ステップS1)。その結果、省電力モードが実行されておらず、通常電力モードが実行されているものと判別された場合には、装置内給電部45、装置外第1給電部46、装置外第2給電部47のぞれぞれからの通常電力による給電をおこなう(ステップS2)。これに対して、ステップS1で、省電力モードが実行されているものと判別された場合には、装置内給電部45と装置外第1給電部46とから電力消費量を制限した給電をおこない(ステップS3)、装置外第2給電部47からは通常電力による給電をおこなう(ステップS4)。
そして、手動ステープラ90のスイッチ機構92によるシートPの検知があった場合には、手動ステープラ90が稼働されてシートPに綴じ処理が施される(ステップS5、S6)。このとき、綴じ処理が終了したことを、音や光などで報知することが好ましい。
その後、スイッチ機構92によってシートPの引き抜きが完了したことが検知されたかが判別されて(ステップS7)、シートPの引き抜きが検知されるまでステープラ本体91が駆動しないように制御する。これにより、同じシートPに重ねて綴じ処理がされてしまう不具合が防止される。
ステップS7でシートPの引き抜きが検知された後は、その後の手動ステープラ90による綴じ処理に備えて、ステップS5以降のフローが繰り返される。
【0042】
<変形例>
図6は、変形例としての画像形成装置1を示す概略斜視図である。
図6に示すように、変形例における画像形成装置1は、本実施の形態のものとは異なり、シート処理装置50が接続されておらず、画像形成装置本体1の外部に突出するように手動ステープラ90が設置されている。
手動ステープラ90は、画像形成装置本体1の外部から手動でセットされたシートP(シート束PT)に対して綴じ処理をおこなうためのものである。そして、手動ステープラ90は、画像形成装置本体1からの給電により稼働するように構成されていて、画像形成装置本体1において「省電力モード」が実行されたときであっても、その電力消費量が制限されずに画像形成装置本体1からの給電により稼働可能に構成されている。
詳しくは、手動ステープラ90は、画像形成装置本体1の主電源スイッチ35がオンされているときであって、スイッチ機構92(検知手段)によって手動ステープラ90へのシートPのセットが検知されたときに、省電力モードの実行の有無に関わらず、画像形成装置本体1からの給電により、セットされたシートPに対して綴じ処理をおこなうことになる。その他、手動ステープラ90の構成・動作は、本実施の形態のものとほぼ同様である。
このように構成された画像形成装置1は、省電力モードが実行されている状態であっても、手動ステープラ90を用いて短時間に綴じ処理をおこなうことができることになる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態におけるシート処理装置50は、画像形成装置1から排出されてシート処理装置50の内部に送入されたシートPに対して自動で処理をおこなう後処理機構58、60、70、80と、シート処理装置50の外部から手動でセットされたシートPに対して綴じ処理をおこなう手動ステープラ90と、が設けられている。そして、後処理機構58、60、70、80と手動ステープラ90とは、いずれも、画像形成装置1からの給電により稼働するように構成されている。後処理機構58、60、70、80は、画像形成装置1において電力消費量を制限する省電力モードが実行されたときに、その電力消費量が制限される。手動ステープラ90は、省電力モードが実行されたときであっても、その電力消費量が制限されずに画像形成装置1からの給電により稼働可能に構成されている。
これにより、画像形成装置1において省電力モードが実行されている状態であっても、手動ステープラ90を用いて短時間に綴じ処理をおこなうことができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置されるシート処理装置50に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置されるシート処理装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置されるシート処理装置50に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、孔版印刷装置などである。)に設置されるシート処理装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、シート処理装置50における後処理機構として、装置内ステープラ80、パンチ処理部70、ソート処理部58、シート揃え部60を設けたが、後処理機構はこれらのものに限定されることなく、折り処理や中折り処理など別の処理をもおこなうように後処理機構を構成することもできるし、上述した複数の処理部のうち別の組み合わせからなるように後処理機構を構成することもできる。
そして、そのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0046】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0047】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、通常の用紙に限定されることなく、綴じ処理の対象となるシート状のもののすべて、例えば、コート紙、ラベル紙、OHPシート、金属シート、フィルム、プリプレグ、布、等も含むものと定義する。
【符号の説明】
【0048】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
50 シート処理装置、
70 パンチ処理部(後処理機構)、
80 装置内ステープラ(後処理機構)、
90 手動ステープラ、
90a 挿入口、
91 ステープラ本体、
92 スイッチ機構(検知手段)、
100 画像形成システム、
P シート、 PT シート束(複数枚のシート)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】