(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2018136500
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(72)【発明者】
【氏名】池淵 豊
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 皓一
(72)【発明者】
【氏名】本多 春之
(72)【発明者】
【氏名】民部 隆一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一哉
(72)【発明者】
【氏名】下川 俊彦
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107991848(CN,A)
【文献】特開2016-110020(JP,A)
【文献】特開2018-031992(JP,A)
【文献】特開2017-125961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧部材と、該加圧部材に対向して設けられる無端筒状の定着部材と、該定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材を挟んで前記加圧部材の反対側に配置されることによりニップ部を形成するニップ形成手段と、
を備えた定着装置であって、
前記ニップ形成手段は、
前記定着部材のうち前記ニップ形成手段側の内面に接触する
とともに前記内面に潤滑剤を供給する織物部材と、前記織物部材を保持する保持手段と、を有し、
前記保持手段は、前記織物部材における少なくとも幅方向両側の経糸が、前記定着部材の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって前記幅方向の端部から中央部に向かって傾斜するように、当該織物部材を保持
し、
前記保持手段は、前記幅方向における収縮を規制するように前記織物部材を保持するとともに、前記上流側における規制力の方が前記下流側における規制力よりも強い
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
加圧部材と、該加圧部材に対向して設けられる無端筒状の定着部材と、該定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材を挟んで前記加圧部材の反対側に配置されることによりニップ部を形成するニップ形成手段と、
を備えた定着装置であって、
前記ニップ形成手段は、
前記定着部材のうち前記ニップ形成手段側の内面に接触する
とともに前記内面に潤滑剤を供給する織物部材と、前記織物部材を保持する保持手段と、を有し、
前記保持手段は、前記織物部材における少なくとも幅方向両側の経糸が、前記定着部材の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって前記幅方向の端部から中央部に向かって傾斜するように、当該織物部材を保持
し、
前記織物部材は、前記幅方向に沿って所定の第1形状に配列された複数の被保持部を有し、
前記保持手段は、前記幅方向に沿って所定の第2形状に配列された複数の保持部を有し、
前記第1形状と前記第2形状とが異なることで、前記織物部材の緯糸が前記上流側に凸に湾曲し、前記経糸が傾斜する
ことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記保持手段によって保持された前記織物部材において、前記経糸は、前記定着部材が回転する際に、前記潤滑剤が前記幅方向の端部から中央部に向かうように案内することを特徴とする請求項1
又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記保持手段によって保持された前記織物部材において、前記経糸は、前記幅方向の端部側に位置するものほど、前記回転方向に対する傾斜角度が大きいことを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記保持手段によって保持された前記織物部材において、当該織物部材の緯糸は、前記回転方向の上流側に向かって凸に湾曲しており、前記幅方向の端部側ほど曲率が大きいことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記織物部材は、連続した一つのシート状部材であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置に用いられる定着装置として、無端筒状の定着部材(定着ベルト)と、加圧部材と、を備えたものが知られている。このような定着装置では、定着部材と加圧部材とによってニップ部が形成され、ニップ部においてトナーを加圧及び加熱することにより、記録紙に定着させるようになっている。
【0003】
このような定着装置として、定着ベルトの内面に潤滑剤を塗布することにより、定着ベルトを、その内側に配置される部材に対して摺動させやすくしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された定着装置では、定着ベルトの内側に配置された吸収部材支持部材の外周面に溝を形成するとともに、この溝に潤滑剤吸収部材を配置することにより、潤滑剤が定着ベルトの端部から漏れることを抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された定着装置では、潤滑剤が定着ベルトの幅方向端部に向かって流れた際、漏れを抑制することができたとしても、潤滑剤が潤滑剤吸収部材に吸収されるため、定着ベルトに付着した潤滑剤の総量が低下してしまうことがあった。このとき、特に定着ベルトの幅方向中央部において潤滑剤が不足しやすい。潤滑剤が不足すると、定着ベルトと内側の部材との摺動抵抗が高くなり、定着ベルトがスムーズに回転しにくくなってしまう。
【0005】
本発明は、定着部材が回転する際の摺動抵抗を低く保つことができる定着装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、加圧部材と、該加圧部材に対向して設けられる無端筒状の定着部材と、該定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材を挟んで前記加圧部材の反対側に配置されることによりニップ部を形成するニップ形成手段と、を備えた定着装置であって、前記ニップ形成手段は、前記定着部材のうち前記ニップ形成手段側の内面に接触するとともに前記内面に潤滑剤を供給する織物部材と、前記織物部材を保持する保持手段と、を有し、前記保持手段は、前記織物部材における少なくとも幅方向両側の経糸が、前記定着部材の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって前記幅方向の端部から中央部に向かって傾斜するように、当該織物部材を保持し、前記保持手段は、前記幅方向における収縮を規制するように前記織物部材を保持するとともに、前記上流側における規制力の方が前記下流側における規制力よりも強いことを特徴とする定着装置である。
請求項2に係る発明は、加圧部材と、該加圧部材に対向して設けられる無端筒状の定着部材と、該定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材を挟んで前記加圧部材の反対側に配置されることによりニップ部を形成するニップ形成手段と、を備えた定着装置であって、前記ニップ形成手段は、前記定着部材のうち前記ニップ形成手段側の内面に接触するとともに前記内面に潤滑剤を供給する織物部材と、前記織物部材を保持する保持手段と、を有し、前記保持手段は、前記織物部材における少なくとも幅方向両側の経糸が、前記定着部材の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって前記幅方向の端部から中央部に向かって傾斜するように、当該織物部材を保持し、前記織物部材は、前記幅方向に沿って所定の第1形状に配列された複数の被保持部を有し、前記保持手段は、前記幅方向に沿って所定の第2形状に配列された複数の保持部を有し、前記第1形状と前記第2形状とが異なることで、前記織物部材の緯糸が前記上流側に凸に湾曲し、前記経糸が傾斜することを特徴とする定着装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の定着装置によれば、織物部材は、保持手段によって保持されることにより、経糸が、定着部材の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって幅方向の端部から中央部に向かうように傾斜する。織物部材は、定着部材の内面に接触することから、この内面に付着した潤滑剤は、経糸に沿って移動する。従って、定着部材の内面に付着した潤滑剤は、定着部材が回転した際に幅方向中央部に向かうように案内される。これにより、潤滑剤が定着部材の幅方向端部に向かって流れることが抑制され、潤滑剤の漏れが抑制される。このとき、潤滑剤の漏れ抑制のために吸収する必要がないことから、定着部材の内面における潤滑剤の総量が低下しにくい。従って、定着部材の内面において潤滑剤の不足が生じにくく、定着部材が回転する際の摺動抵抗を低く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
【
図2】前記定着装置が設けられる画像形成装置の概略を示す断面図である。
【
図3】前記定着装置のニップ形成手段の要部を示す平面図である。
【
図4】前記定着装置の定着部材における潤滑剤の流れを模式的に示す平面図である。
【
図5】前記定着装置の動作を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る定着装置における織物部材を示す平面図である。
【
図7】前記定着装置における保持手段を示す斜視図である。
【
図9】前記定着装置の定着部材における潤滑剤の流れを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。尚、第2実施形態においては、第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材及び同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態と同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
本実施形態の定着装置1は、画像形成装置(
図2参照)100に設けられるものであって、
図1に示すように、定着部材2と、加熱源3と、加圧部材4と、ニップ形成手段5と、を備える。
【0011】
[定着装置]
定着部材2は、例えばニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料によって、無端筒状に形成されたベルトであり、フィルムであってもよい。ベルトの表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を有している。ベルトの基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層が設けられていてもよい。シリコーンゴム層がない場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上する一方、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残りやすくなる。これを改善するために、シリコーンゴム層を100μm以上設けることが好ましい。シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0012】
定着部材2の内部にはニップ形成手段5を支持するための支持部材(ステー)6が設けられ、加圧部材4により圧力を受けるニップ形成手段5の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようになっている。
【0013】
また、定着装置1は、加熱源3と支持部材6との間に反射部材7を備え、加熱源3からの輻射熱などにより支持部材6が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費が抑制されている。ここで、反射部材7を設ける代わりに支持部材6表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることが可能となる。
【0014】
加熱源3は、図示したハロゲンヒータでも良いが、IHであっても良いし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であっても良い。加熱源3により、定着部材2が内周側から直接加熱される。加熱源3がハロゲンヒータである場合、定着装置1は遮光板を有していてもよい。遮光板は、記録紙サイズに応じた範囲で定着部材2が加熱されるように、ハロゲンヒータが照射した光を遮るものである。遮光板は、各種の記録紙サイズに応じた光通過部を有し、例えば回動することにより、適宜な光通過部が加熱源3と定着部材2との間に位置付けられるようになっている。
【0015】
加圧部材4は、芯金4Aの外側に弾性ゴム層4Bが設けられており、離型性を得るために弾性ゴム層4Bの表面に図示しない離型層(PFAまたはPTFE層)が設けられている。加圧部材4は、
図2に示す画像形成装置100に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧部材4は、スプリングなどにより定着部材2側に押し付けられており、弾性ゴム層4Bが押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。
【0016】
加圧ローラは、中空のローラであっても良く、ハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。弾性ゴム層は、ソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ内部にヒータが無い場合には、スポンジゴムが用いられていても良い。スポンジゴムを用いた方が、断熱性が高まり定着スリーブの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0017】
ニップ形成手段5は、定着部材2の内側に配置されており、即ち、定着部材2を挟んで加圧部材4の反対側に配置されている。これにより、対向配置された定着部材2と加圧部材4とによってニップ部Nが形成される。トナー像が転写された記録紙がこのニップ部Nを通過し、加熱及び加圧されることにより、トナー像が記録紙に定着するようになっている。
【0018】
図1ではニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であっても良い。(ニップ部の形状は凹形状の方が、記録紙先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。)
【0019】
ニップ形成手段5は、定着部材2の内面(ニップ形成手段5側の面)21に接触する位置に、低摩擦部材8を有する。低摩擦部材8は、潤滑剤が含浸された織物部材81を有しており、定着部材2の内面21に潤滑剤を供給し、供給手段として機能する。尚、潤滑剤としては、シリコーンオイルやグリスが例示される。低摩擦部材8の詳細については後述する。
【0020】
定着部材2は、加圧部材4が回転することにより、連れ回り回転する。
図1に示す形態では、加圧部材4が駆動源により回転し、ニップ部Nでベルトに駆動力が伝達されることにより定着部材2が回転する。定着部材2は、ニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部N以外では両端部に保持部材が挿入されてガイドされ、走行する。
【0021】
上記のような構成により安価で、ウォームアップが速い定着装置を実現することが可能となる。
【0022】
[画像形成装置]
次に、上述した構成を用いる画像形成装置100の構成を
図2により説明すると次の通りである。
【0023】
図2に示した画像形成装置100は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタある。本発明はこの方式に限ることはなく、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
【0024】
図2において画像形成装置100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
【0025】
図2に示す構成の画像形成装置100では、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、転写ベルトという)11に対して1次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写される。その後、記録シートなどが用いられる記録紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
【0026】
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの周囲には、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの回転に従い画像形成処理するための画像形成手段が配置されている。ここで、ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを対象として説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bkと、現像装置40Bkと、1次転写ローラ12Bkと、クリーニング装置50Bkと、が配置されている。帯電後に行われる書き込みは、光書込装置60が用いられる。
【0027】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写される。即ち、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0028】
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0029】
画像形成装置100は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする転写部材としての転写ローラである2次転写ローラ14と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルト用のクリーニング装置13と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光書込装置60と、を有している。
【0030】
光書込装置60は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏向手段としての回転多面鏡などを装備している。光書込装置60は、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lb(
図2では、便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも略同様である)を出射して感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに静電潜像を形成する構成とされている。
【0031】
画像形成装置100には、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間に向けて搬送される記録紙Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置70と、シート給送装置70から搬送されてきた記録紙Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対810と、記録紙Sの先端がレジストローラ対810に到達したことを検知する図示しないセンサと、が設けられている。
【0032】
画像形成装置100には、トナー像が転写された記録紙Sにトナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着手段としての定着装置1と、定着済みの記録紙Sを画像形成装置100の本体外部に排出する排紙ローラ820と、画像形成装置100の本体上部に配設されて排紙ローラ820により画像形成装置100の本体外部に排出された記録紙Sを積載する排紙トレイ83と、排紙トレイ83の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkと、が設けられている。
【0033】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkの他に、転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ15及び従動ローラ16を有している。
【0034】
従動ローラ16は、転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ16には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkと、2次転写ローラ14と、クリーニング装置13と、で転写装置10Aが構成されている。
【0035】
シート給送装置70は、画像形成装置100の本体下部に配設されており、最上位の記録紙Sの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ84を有している。給送ローラ84が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の記録紙Sをレジストローラ対810に向けて給送するようになっている。
【0036】
転写装置10Aに装備されているクリーニング装置13は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
【0037】
クリーニング装置13は、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための図示しない排出手段を有している。
【0038】
画像形成装置100は、装置全体を操作するための図示しない操作パネルと、装置全体を制御する図示しない制御手段と、をさらに備える。
【0039】
制御手段は、通紙枚数や運転時間、定着部材2の回転数等が所定の値以上となると、定着部材2のメンテナンスが必要であること(メンテナンス表示)を操作パネルに表示させ、操作パネルが表示手段として機能する。即ち、制御手段は、所定の運転間隔で操作パネルにメンテナンスの要否を表示させる。メンテナンスが行われると、制御手段は、メンテナンス表示を停止させ、通紙枚数や運転時間、定着部材2の回転数等のカウントを再開する。
【0040】
[低摩擦部材]
次に、定着装置1における低摩擦部材8の詳細について、
図3~5に基づいて説明する。低摩擦部材8は、連続した一つのシート状部材である織物部材81と、織物部材81が巻き付けられる保持手段82と、を有する。
【0041】
織物部材81は、定着部材2の回転方向を短辺方向とし、幅方向を長辺方向とする長方形状(帯状)に形成されている。織物部材81のうち回転方向の中央部が、定着部材2の内面21と接触する接触領域81Aとなり、回転方向の両端部が、保持手段82によって保持される被保持領域81B、81Cとなる。
【0042】
回転方向上流側の被保持領域81Bには、幅方向に並んだ4つの被保持部811~814が形成されている。被保持部811~814は、長方形状に形成された貫通孔である。回転方向下流側の被保持領域81Cには、1つの被保持部815が形成されている。被保持部815は、幅方向に沿って延在する長方形状の貫通孔である。
【0043】
保持手段82は、ニップ形成手段5の本体部と別体に構成されるとともに本体部に固定されるものであって、幅方向を長辺方向とする長方形板状に形成されている。保持手段82は、織物部材81のうち内面21に対する接触面との反対側の面(非接触面)に対し、接触領域81Aにおいて重ねられる。尚、ニップ形成手段5の本体部に織物部材81を直接巻き付け、本体部を保持手段として機能させてもよい。また、保持手段82は、樹脂や金属等、織物部材81よりも熱収縮しにくい部材によって構成されている。
【0044】
保持手段82のうち織物部材81に重ねられる面とは反対側の面には、8つの保持部821~828が形成されている。保持部821~828は、四角柱状に形成された突起である。保持部821~828の幅方向寸法は、被保持部811~814の幅方向寸法と略等しいか又は若干小さい。保持部821~828の回転方向寸法は、被保持部811~815の回転方向寸法と略等しいか又は若干小さい。
【0045】
幅方向一方側(
図3における左側)の保持部821、825の一方側端縁と、幅方向他方側(
図3における右側)の保持部824、828の他方側端縁と、の距離L1は、被保持部815の幅方向寸法L2よりも小さい。距離L1と寸法L2との差の半分をΔLとする。
【0046】
上記のように保持手段82が織物部材81の非接触面に重ねられた状態において、織物部材81の被保持領域81B、81Cを保持手段82側(
図3における手前側)に折り返すことにより、被保持部811~814のそれぞれに保持部821~824のそれぞれが挿通され、被保持部815に保持部825~828が挿通される。これにより、織物部材81が保持手段82に保持される。
【0047】
幅方向両端の保持部825、828と被保持部815の内縁との間には、幅方向の片側において寸法ΔLだけの隙間が形成される。従って、織物部材81は、下流側の被保持領域81Cにおいて、幅方向片側で寸法ΔLだけ収縮可能となる。換言すれば、織物部材81は、被保持領域81Cにおいて幅方向片側で寸法ΔLよりも大きい収縮が規制される。尚、保持部825と被保持部815の内縁との隙間と、保持部828と被保持部815の内縁との隙間と、は多少異なっていてもよい。
【0048】
一方、保持部821~828の幅方向寸法が、被保持部811~814の幅方向寸法と略等しいか又は若干小さいことから、織物部材81は、上流側の被保持領域81Bにおいて、ほとんど収縮することができず収縮が規制される。このように、保持手段82は、幅方向における収縮を規制するように織物部材81を保持するとともに、上流側における規制力の方が下流側における規制力よりも強い。
【0049】
定着装置1が動作すると、加熱源3による発熱や、各部において発生する摩擦熱等によって定着部材2の温度が上昇し、これに接触する織物部材81も加熱され、熱収縮しようとする。このとき、上記のように織物部材81は、保持手段82によって幅方向の収縮が規制され、上流側における規制力の方が下流側における規制力よりも強いことから、織物部材81を構成する複数の経糸816及び複数の緯糸817は、
図4に示すような形状となる。尚、
図4は定着部材2の内面21を示しており実際には織物部材81は見えないが、説明の都合上、内面21に織物部材81を重ねて図示している。
【0050】
複数の経糸816は、幅方向中央部に配置されたものを除き、定着部材2の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって幅方向の端部から中央部に向かうように傾斜して延在する。定着部材2の内面21に付着した潤滑剤は、経糸816によって案内され、定着部材2が回転してニップ部Nを通過する際、経糸816の延在方向に沿って移動する。一方、複数の緯糸817は、回転方向の上流側に向かって凸に湾曲しており、凸形状の頂点は幅方向の中央部に位置している。緯糸817の曲率は、幅方向の端部側程大きくなっている。
【0051】
複数の経糸816は、幅方向に沿って並んでおり、幅方向端部側に位置するものほど、回転方向に対する傾斜角度θが大きくなっている。接触領域81Aの回転方向寸法をSとすると、経糸816によって案内される潤滑剤は、Stanθだけ幅方向中央部に向かって移動する。尚、ニップ部N以外で定着部材2が織物部材81に接触しない場合や、接触しても押圧力が小さい場合には、ニップ幅(回転方向におけるニップ部Nの寸法)をLNとし、経糸816によって案内される潤滑剤が、LNtanθだけ幅方向中央部に向かって移動してもよい。
【0052】
織物部材81は、互いに色の異なる複数の緯糸817を有している。図示の例では、5本の緯糸817のうち実線で示した4本が黒色であり、破線で示した1本が赤色となっている。尚、複数の緯糸817は、3色以上で構成されていてもよい。
【0053】
緯糸817の回転方向寸法(幅方向中央部から端部にかけての湾曲量)をL0とすると、緯糸817の回転方向寸法L0は接触領域81Aの回転方向寸法Sの8~40%であることが好ましい。また、接触領域81Aの幅をWとすると、緯糸817の回転方向寸法L0は幅Wの0.4~2%であることが好ましい。
【0054】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、定着部材2の内面21に接触する織物部材81が保持手段82によって保持されることにより、経糸816が、定着部材2の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって幅方向の端部から中央部に向かうように傾斜する。従って、定着部材2の内面21に付着した潤滑剤は、定着部材2が回転した際に幅方向中央部に向かうように案内される。
【0055】
これにより、潤滑剤が定着部材2の幅方向端部に向かって流れることが抑制され、潤滑剤の漏れが抑制される。このとき、潤滑剤の漏れ抑制のために吸収する必要がないことから、定着部材2の内面21における潤滑剤の総量が低下しにくい。従って、定着部材2の内面21において潤滑剤の不足が生じにくく、定着部材2が回転する際の摺動抵抗を低く保つことができる。
【0056】
また、織物部材81は、製造誤差等によって、本来の位置に対して多少の傾斜を有して取り付けられることがある。例えば、幅方向中央部に配置された経糸816が、回転方向に対して傾斜することがある。このような場合、潤滑剤が集まる位置が幅方向中央部から多少ずれるものの、定着部材2端部から潤滑剤が漏れることは抑制され、潤滑剤の不足が生じにくい。
【0057】
さらに、複数の経糸816が、幅方向の端部側に位置するものほど傾斜角度θが大きいことで、特に幅方向の端部において潤滑剤を中央部に向かいやすくし、定着部材2端部からの潤滑剤の漏れをさらに抑制することができる。
【0058】
また、織物部材81の緯糸817が、回転方向の上流側に向かって凸に湾曲していることで、この湾曲の程度を測定し、経糸817の傾斜角度θを管理することができる。また、緯糸817の曲率が、幅方向の端部側ほど大きいことで、複数の経糸816を、幅方向の端部側に位置するものほど傾斜角度θを大きくしやすい。
【0059】
さらに、織物部材81が互いに色の異なる複数の緯糸817を有していることで、緯糸817の形状を認識しやすく、緯糸817の湾曲量を測定しやすい。
【0060】
また、織物部材81が連続した一つのシート状部材であることで、シート同士の隙間から潤滑剤が漏れてしまうことを抑制することができる。
【0061】
[第2実施形態]
本実施形態の定着装置は、前記第1実施形態と同様に、定着部材2と、加熱源3と、加圧部材4と、ニップ形成手段と、を備える。本実施形態においては、ニップ形成手段が前記第1実施形態とは相違している。
【0062】
即ち、本実施形態において、ニップ形成手段の低摩擦部材は、
図6に示すような織物部材91と、
図7、8に示すような保持手段92と、を有する。
【0063】
織物部材91は、定着部材2の回転方向を短辺方向とし、幅方向を長辺方向とする長方形状(帯状)に形成されている。織物部材91のうち回転方向の中央部が、定着部材2の内面21と接触する接触領域91Aとなり、回転方向の両端部が、保持手段92によって保持される被保持領域91B、91Cとなる。
【0064】
被保持領域91B、91Cには、それぞれ、幅方向に沿って配列された複数(図示の例では上下10個ずつ)の被保持部911が形成されている。被保持部911は長方形状に形成された貫通孔である。複数の被保持部911は、直線状の配列形状(第1形状)を有している。
【0065】
保持手段92は、ニップ形成手段5の本体部と別体に構成されるとともに本体部に固定されるものであって、幅方向を長辺方向とする長方形板状に形成されている。保持手段92は、織物部材91のうち内面21に対する接触面とは反対側の面(非接触面)に対し、接触領域91Aにおいて重ねられる。尚、ニップ形成手段5の本体部に織物部材91を直接巻き付け、本体部を保持手段として機能させてもよい。
【0066】
保持手段92のうち織物部材91に重ねられる面とは反対側の面には、複数(図示の例では合計20個)の保持部921が形成されている。保持部921は、楕円柱状に形成された突起である。複数の保持部921は、2列に並べられ、各列は、幅方向に沿うとともに回転方向の上流側に凸に湾曲した配列形状(第2形状)を有している。
【0067】
上記のように保持手段92が織物部材91の非接触面に重ねられた状態において、織物部材91の被保持領域91B、91Cを保持手段92側に折り返すことにより、被保持部911のそれぞれに保持部921のそれぞれが挿通される。
【0068】
このとき、被保持部911の第1配列形状と、保持部921の第2配列形状と、が互いに異なっていることで、織物部材91は、保持の前後で変形する。織物部材91を構成する複数の経糸916及び複数の緯糸917は、
図9に示すような形状となる。尚、
図9は定着部材2の内面21を示しており実際には織物部材91は見えないが、説明の都合上、内面21に織物部材91を重ねて図示している。
【0069】
本実施形態の複数の経糸916及び複数の緯糸917は、前記第1実施形態の複数の経糸816及び複数の緯糸817と同様の形状となっている。
【0070】
尚、本実施形態では、被保持部911の第1配列形状が直線状であり、保持部921の第2配列形状が曲線状であるものとしたが、少なくとも一方の配列形状が曲線状であればよい。例えば、被保持部の第1配列形状が下流側に凸に湾曲した形状であり、且つ、保持部の第2配列形状が直線状であってもよい。また、被保持部の第1配列形状が下流側に凸に湾曲した形状であり、且つ、保持部の第2配列形状が上流側に凸に湾曲した形状であってもよい。
【0071】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、定着部材2の内面21に接触する織物部材91が保持手段92によって保持されることにより、経糸916が、定着部材2の回転方向における上流側から下流側に向かうにしたがって幅方向の端部から中央部に向かうように傾斜する。従って、定着部材2の内面21に付着した潤滑剤は、定着部材2が回転した際に幅方向中央部に向かうように案内される。
【0072】
これにより、潤滑剤が定着部材2の幅方向端部に向かって流れることが抑制され、潤滑剤の漏れが抑制される。このとき、潤滑剤の漏れ抑制のために吸収する必要がないことから、定着部材2の内面21における潤滑剤の総量が低下しにくい。従って、定着部材2の内面21において潤滑剤の不足が生じにくく、定着部材2が回転する際の摺動抵抗を低く保つことができる。
【0073】
また、織物部材91は、製造誤差等によって、本来の位置に対して多少の傾斜を有して取り付けられることがある。例えば、幅方向中央部に配置された経糸916が、回転方向に対して傾斜することがある。このような場合、潤滑剤が集まる位置が幅方向中央部から多少ずれるものの、定着部材2端部から潤滑剤が漏れることは抑制され、潤滑剤の不足が生じにくい。
【0074】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0075】
例えば、前記第1実施形態では、複数の経糸816が、幅方向の端部側に位置するものほど傾斜角度θが大きいものとしたが、このような構成に限定されない。複数の経糸816は、中央部のものを除いて同程度の傾斜角度θを有していてもよいし、端部側の経糸816ほど傾斜角度θが小さくてもよい。傾斜角度θの大きさは、製造時に生じ得る織物部材81の傾斜等に応じた大きさであればよく、適宜に設定されればよい。
【0076】
また、前記第1実施形態では、織物部材81が互いに色の異なる複数の緯糸817を有しているものとしたが、経糸の湾曲量の測定が容易である場合には、複数の緯糸は互いに同じ色であってもよい。例えば、糸の太さや艶、織りの粗さ等によっては、複数の緯糸が互いに同じ色であっても形状を目視しやすく、湾曲量の測定が容易となる場合がある。また、織物の製造上、湾曲量の管理が容易である場合や、湾曲量の誤差が小さい場合においても、複数の緯糸を互いに同じ色としてもよい。
【0077】
また、前記第1実施形態では、緯糸817の曲率が、幅方向の端部側ほど大きいものとしたが、緯糸の曲率は、経糸が適宜な傾斜角度を有するように設定されていればよく、例えば、幅方向の中央部から端部にかけて略一定であってもよい。
【0078】
また、前記第1実施形態では、織物部材81が定着部材2の内面21に潤滑剤を供給する供給手段として機能するものとしたが、供給手段は、接触部を構成する部材とは別体に設けられていてもよい。
【0079】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0080】
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではない。それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 定着装置
2 定着部材
21 内面
3 加熱源
4 加圧部材
5 ニップ形成手段
5A、5B 接触部
8 低摩擦部材(供給手段)
81、91 織物部材
82、92 保持手段
816、916 経糸
817、917 緯糸
911 被保持部
921 保持部
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】