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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20220928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220928BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 403
B41J2/14 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018182693
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020049845
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】寒川 哲幹
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-141824(JP,A)
【文献】特開2006-247945(JP,A)
【文献】特開2017-019157(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0296771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/015
B41J 2/01
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル孔と、
前記ノズル孔と連通する液室と、
前記ノズル孔から液体を吐出するために、前記液室内の液体の圧力を変化させる圧電素子と、
前記圧電素子に駆動波形電圧を印加するため所定の周期を有する吐出制御期間に駆動波形信号を生成する駆動波形生成回路と、
前記駆動波形信号に含まれる複数の波形の少なくともいずれかを選択的に前記圧電素子に供給するスイッチと、
前記吐出制御期間後の液体を吐出しない所定の周期を有する非吐出制御期間が前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与える場合に、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記圧電素子に所定電圧を印加する複数の選択パターンを生成し、
前記選択パターンの少なくとも1つにおける前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、他の前記選択パターンにおける前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングと異なることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記駆動波形生成回路は、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する期間内において、前記ノズル孔から液体を吐出せずに前記液室内の圧力を変化させる微駆動波形信号を少なくとも1回生成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与えるタイミングよりも第1の時間以上前に設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
液体を吐出するノズル孔と、
前記ノズル孔と連通する液室と、
前記ノズル孔から液体を吐出するために、前記液室内の液体の圧力を変化させる圧電素子と、
前記圧電素子に駆動波形電圧を印加するため所定の周期を有する吐出制御期間に駆動波形信号を生成する駆動波形生成回路と、
前記駆動波形信号に含まれる複数の波形の少なくともいずれかを選択的に前記圧電素子に供給するスイッチと、
前記吐出制御期間後の液体を吐出しない所定の周期を有する非吐出制御期間が前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与える場合に、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する制御部と、
を備え
前記駆動波形生成回路は、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する期間内において、前記ノズル孔から液体を吐出せずに前記液室内の圧力を変化させる微駆動波形信号を少なくとも1回生成することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与えるタイミングよりも第1の時間以上前に設定されることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
複数の前記ノズル孔と、
複数の前記ノズル孔に対応する複数の前記圧電素子と、を備え、
前記圧電素子の少なくとも1つにおける前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、他の前記圧電素子における前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングと異なることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記複数の選択パターンの各々は、略同一のパターン長を有し、
複数の前記圧電素子へ印加する前記所定電圧の印加タイミングは、それぞれ所定の時間タイミングをずらして実施されることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
複数の前記圧電素子を備え、
前記複数の選択パターンの各々は、略同一のパターン長を有し、
複数の前記圧電素子へ印加する前記所定電圧の印加タイミングは、それぞれ所定の時間タイミングをずらして実施されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
駆動波形電圧が圧電素子に印加されることにより、液体を吐出する吐出ブロックと、
所定の周期を有する吐出制御期間に駆動波形信号を生成し、前記吐出制御期間終了後の所定の周期を有する非吐出制御期間においては吐出ブロックから液体が吐出されない信号を生成する駆動波形生成回路と、
前記駆動波形信号に含まれる複数の波形の少なくともいずれかを選択的に前記圧電素子に供給する選択手段と、
前記吐出制御期間と前記非吐出制御期間を合計した駆動周期内において、前記非吐出制御期間が前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与える場合に、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記圧電素子に所定電圧を印加する複数の選択パターンを生成し、前記選択パターンの少なくとも1つにおける前記電圧設定制御実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、他の前記選択パターンにおける前記電圧設定制御実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングと異なることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
前記駆動波形生成回路は、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する期間内において、前記吐出ブロックから液体を吐出させない微駆動波形信号を少なくとも1回、前記圧電素子に印加することを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与えるタイミングよりも第1の時間以上前に設定されることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
駆動波形電圧が圧電素子に印加されることにより、液体を吐出する吐出ブロックと、
所定の周期を有する吐出制御期間に駆動波形信号を生成し、前記吐出制御期間終了後の所定の周期を有する非吐出制御期間においては吐出ブロックから液体が吐出されない信号を生成する駆動波形生成回路と、
前記駆動波形信号に含まれる複数の波形の少なくともいずれかを選択的に前記圧電素子に供給する選択手段と、
前記吐出制御期間と前記非吐出制御期間を合計した駆動周期内において、前記非吐出制御期間が前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与える場合に、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する制御部と、
を備え
前記駆動波形生成回路は、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する期間内において、前記吐出ブロックから液体を吐出させない微駆動波形信号を少なくとも1回、前記圧電素子に印加することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与えるタイミングよりも第1の時間以上前に設定されることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
複数の前記吐出ブロックを備え、
前記吐出ブロックの少なくとも1つにおける前記電圧設定制御実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、他の前記吐出ブロックにおける前記電圧設定制御実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングと異なることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
複数の前記吐出ブロックを備え、
前記吐出ブロックの少なくとも1つにおける前記電圧設定制御実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、他の前記吐出ブロックにおける前記電圧設定制御実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングと異なることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
複数の前記圧電素子を備え、
前記複数の選択パターンの各々は、略同一のパターン長を有し、
複数の前記圧電素子へ印加する前記所定電圧の印加タイミングは、それぞれ所定の時間タイミングをずらして実施されることを特徴とする請求項9ないし請求項11、請求項15のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像形成装置として使用するインクジェット記録装置における記録ヘッドは、インクを吐出するために、ノズルと、このノズルが連通する圧力発生室(加圧液室)と、圧電素子等の圧力発生素子とを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、記録ヘッドの走査後に、圧電素子に印加する基準電圧のスルーダウンタイミングを、記録ヘッドの吐出回数に応じて変化させることで、ピエゾ素子等の圧電素子の分極のばらつきを抑え、吐出性能のばらつきを抑えることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、インクを吐出するために圧電素子に印加する吐出パルスの波形の一部を利用して、インクを吐出しない非吐出パルスを生成することで、複数の圧電素子に共通に生成される駆動波形の波形長を短縮し、印刷の効率を上げることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、インクの吐出を継続することで発生するプリントヘッドの発熱を抑制するために、ノズルから液滴を吐出するためにパルスを生成する液滴吐出期間よりも長い液滴不吐出期間を駆動周期内に設けることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
駆動周期内において液体を吐出しない非吐出制御期間に圧電素子の電極への電圧の印加を停止する場合、圧電素子の電極の電圧は、リーク電流により、駆動パルスの開始電圧である基準電圧に対して徐々に下がっていく。圧電素子の電極の電圧と基準電圧との差が所定値以上になると、次の駆動周期での駆動パルスの生成時に、圧電素子の電極の電圧が基準電圧まで急峻に立ち上がり、ノズルから液体が誤って吐出されるおそれがある。また、急峻な電圧の変化を伴う駆動は、記録ヘッドを制御する制御回路等に過剰な電流が流れる原因になり、制御回路が故障するおそれがある。
【0007】
誤吐出や故障を防止するために、圧電素子に印加する電圧を制御するゲート回路を非吐出制御期間に駆動し、圧電素子の電極を非吐出制御期間に基準電圧に維持することが考えられる。しかしながら、ゲート回路の駆動により発生した熱が記録ヘッドに伝わり、記録ヘッドの温度が上昇すると、液体の温度が上昇し、液体の粘度が下がるため、液体の吐出の制御が難しくなる。特に、駆動周期が短いほど、単位時間当たりのゲート回路の駆動回数が増加するため、記録ヘッドの温度は上昇し易い。
【0008】
本発明は、非吐出制御期間における圧電素子の電極の電圧の低下を抑止しつつ、記録ヘッドの発熱を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の液体吐出装置は、液体を吐出するノズル孔と、前記ノズル孔と連通する液室と、前記ノズル孔から液体を吐出するために、前記液室内の液体の圧力を変化させる圧電素子と、前記圧電素子に駆動波形電圧を印加するため所定の周期を有する吐出制御期間に駆動波形信号を生成する駆動波形生成回路と、前記駆動波形信号に含まれる複数の波形の少なくともいずれかを選択的に前記圧電素子に供給するスイッチと、前記吐出制御期間後の液体を吐出しない所定の周期を有する非吐出制御期間が前記圧電素子に許容電圧以上の変化を与える場合に、前記圧電素子に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する制御部と、を備え、前記制御部は、前記圧電素子に所定電圧を印加する複数の選択パターンを生成し、前記選択パターンの少なくとも1つにおける前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングは、他の前記選択パターンにおける前記電圧設定制御の実施時の前記圧電素子への前記所定電圧の印加タイミングと異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
非吐出制御期間における圧電素子の電極の電圧の低下の抑止と、記録ヘッドの発熱の防止とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る画像形成システムの例を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3図3は、画像処理部の構成例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、記録ヘッド制御部、駆動波形生成回路、記録ヘッドドライバの構成例を示すブロック図である。
図5図5は、記録ヘッドの構成例を示す概要図である。
図6図6は、マスク制御信号の種類と個別電極に印加される電圧波形の例を示す図である。
図7図7は、一実施形態に係る液体吐出装置の動作の例を示す波形図である。
図8図8は、一実施形態に係る液体吐出装置の動作の別の例を示す波形図である。
図9図9は、電圧設定制御の有無を切り替える例を示す説明図である。
図10図10は、他の液体吐出装置の動作の例を示す波形図(比較例)である。
図11図11は、他の液体吐出装置の動作の別の例を示す波形図(比較例)である。
図12図12は、液体吐出装置を有する画像形成装置の印刷時間と記録ヘッドの温度との関係を示す説明図である。
図13図13は、別の実施形態に係る液体吐出装置の動作の例を示す波形図である。
図14図14は、別の実施形態に係る液体吐出装置の動作の例を示す波形図である。
図15図15は、別の実施形態に係る液体吐出装置の動作の例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る画像形成システムの例を示す図である。図1に示す画像形成システム1は、ロール紙Mdを搬入する搬入手段10と、搬入されたロール紙Mdを前処理する前処理手段20と、前処理されたロール紙Mdを乾燥させる乾燥手段30とを有する。
【0014】
また、画像形成システム1は、ロール紙Mdの表面に画像を形成するための液体吐出装置を含む画像形成装置40と、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する後処理手段50と、後処理されたロール紙Mdを搬出する搬出手段60とを有する。更に、画像形成システム1は、画像形成システム1の動作を制御する制御手段(図示せず)を有する。
【0015】
画像形成システム1は、搬入手段10によってロール紙Mdを搬入し、前処理手段20、及び乾燥手段30によってロール紙Mdの表面を前処理、及び乾燥する。また、画像形成システム1は、画像形成装置40によって、前処理及び乾燥した後のロール紙Mdの表面に画像を形成する。さらに、画像形成システム1は、後処理手段50によって、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する。その後、画像形成システム1は、搬出手段60によって、ロール紙Mdを巻き取り、排出または搬出する。
【0016】
なお、画像形成システム1は、画像が形成される媒体の種類に応じて、画像形成装置40を除いて、前処理手段20などのいずれか一つ、または複数を含まない構成としても良い。
【0017】
なお、ロール紙Mdは、ロール紙に限定されない。例えば、ロール紙Mdは、カット紙でも良い。さらに、ロール紙Mdは、記録が可能な媒体であれば良い。例えば、ロール紙Mdは、普通紙、上質紙、薄紙、厚紙、記録紙、OHP(Overhead Projector)シート、合成樹脂フィルム、及び金属薄膜などでも良い。
【0018】
例えば、画像形成システム1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色の吐出器を含む液体吐出装置を有する。しかし、画像形成システム1は、例えば、グリーン(G)、レッド(R)、ライトシアン(LC)などその他の色に対応する吐出器を含む液体吐出装置を有しても良く、ブラック(K)のみに対応する吐出器を含む液体吐出装置を有しても良い。
【0019】
なお、液体吐出装置を含む画像形成装置40は、図1に示す画像形成システム1に搭載される形態に限定されない。例えば、画像形成装置40は、プリンタ、スキャナ、被写機、プロッタ、及びファクシミリなどにおいて、吐出ヘッド、インクヘッド、記録ヘッド、及びインクジェットなどの吐出器を含む液体吐出装置からインクなどの液体の液滴を吐出する装置でも良い。
【0020】
また、本発明に係る実施形態は、ロール紙Mdの表面に画像を形成、印刷、印写、印字、または記録などをする装置に適用されても良い。
【0021】
搬入手段10は、ロール紙Mdを前処理手段20などに搬送する手段である。搬入手段10は、本実施形態では、給紙部11と、複数の搬送ローラ12とを有する。搬入手段10は、搬送ローラ12などを用いて、給紙部11の給紙ロールに巻き付けて保持されたロール紙Mdを搬入、及び移動し、前処理手段20(プラテン)などに搬送する。
【0022】
前処理手段20は、画像が形成される前のロール紙Mdを処理する手段である。前処理手段20は、本実施形態では、搬入手段10によって搬入されたロール紙Mdの表面を、前処理液で前処理する。前処理は、ロール紙Md表面に、インクを凝集させる機能を有する前処理液を均一に塗布する処理である。前処理液は、例えば水溶性脂肪族系有機酸を含有した処理液などである。
【0023】
乾燥手段30は、ロール紙Mdを加熱などにより乾燥する手段である。乾燥手段30は、前処理手段20によって前処理されたロール紙Mdを乾燥させる前処理用乾燥部31と、後処理手段50によって後処理されたロール紙Mdを乾燥させる後処理用乾燥部32とを有する。
【0024】
前処理用乾燥部31は、例えばヒートローラ31hを有する。前処理用乾燥部31は、ヒートローラ31hを例えば50~100℃に加熱し、前処理液を塗布されたロール紙Mdの表面をヒートローラ31hに接触させる。前処理用乾燥部31は、前処理液を塗布されたロール紙Mdの表面をヒートローラ31hにより加熱し、前処理液の水分を蒸発させ、ロール紙Mdを乾燥させることができる。後処理用乾燥部32は、前処理用乾燥部31と同様の構成である。
【0025】
画像形成装置40は、液体吐出装置を含み、ロール紙Mdに画像を形成する手段である。画像形成装置40は、液体吐出装置を制御して、乾燥手段30によって乾燥されたロール紙Md上に液滴(以下、インクという。)を吐出することによって、ロール紙Mdの表面に画像を形成する。液体吐出装置の詳細は後述する。
【0026】
後処理手段50は、画像が形成された後のロール紙Mdを処理する手段である。後処理手段50は、画像形成装置40によって画像を形成されたロール紙Mdの表面を、後処理液で後処理する。後処理は、ロール紙Md上に斑点形状に後処理液を吐出する処理である。
【0027】
図2は、一実施形態に係る画像形成装置40のハードウェア構成例を示すブロック図である。画像形成装置40は、メイン制御基板100と、ヘッド中継基板200と、画像処理基板300とを備える。
【0028】
メイン制御基板100には、CPU(Central Processing Unit)101、FPGA(Field-Programmable Gate Array)102、RAM(Random Access Memory)103、ROM(Read Only Memory)104、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)105、モータドライバ106、駆動波形生成回路107などが実装されている。
【0029】
CPU101は、画像形成装置40の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM104に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置40における各種動作を制御するための制御指令を出力する。この際CPU101は、FPGA102と通信しながら、FPGA102と協働して画像形成装置40における各種の動作制御を行う。
【0030】
FPGA102には、CPU制御部111、メモリ制御部112、I2C制御部113、センサ処理部114、モータ制御部115、および記録ヘッド制御部116が設けられている。
【0031】
CPU制御部111は、CPU101と通信を行う機能を持つ。メモリ制御部112は、RAM103やROM104にアクセスする機能を持つ。I2C制御部113は、NVRAM105と通信を行う機能を持つ。
【0032】
センサ処理部114は、各種センサ130のセンサ信号の処理を行う。各種センサ130は、画像形成装置40における各種の状態を検知するセンサの総称である。各種センサ130には、エンコーダセンサのほか、記録紙Pの通過を検知する用紙センサ、カバー部材2aの開放を検知するカバーセンサ、環境温度や湿度を検知する温湿度センサ、記録紙Pを固定するレバーの動作状態を検知する用紙固定レバー用センサ、カートリッジ7のインク残量を検知する残量検知センサなどが含まれる。なお、温湿度センサなどから出力されるアナログのセンサ信号は、例えばメイン制御基板100などに実装されるADコンバータによりデジタル信号に変換されてFPGA102に入力される。
【0033】
モータ制御部115は、各種モータ140の制御を行う。各種モータ140は、画像形成装置40が備えるモータの総称である。各種モータ140には、キャリッジを動作させるための主走査モータ、記録紙Pを副走査方向に搬送するための副走査モータ、記録紙Pを給紙するための給紙モータ、維持機構を動作させるための維持モータなどが含まれる。
【0034】
ここで、主走査モータの動作制御を例に挙げて、CPU101とFPGA102のモータ制御部115との連携による制御の具体例を説明する。まず、CPU101がモータ制御部115に対して、主走査モータの動作開始指示とともに、キャリッジの移動速度および移動距離を通知する。この指示を受けたモータ制御部115は、CPU101から通知された移動速度および移動指示の情報をもとに駆動プロファイルを生成し、センサ処理部114から供給されるエンコーダ値(エンコーダセンサのセンサ信号を処理して得られた値)との比較を行いながら、PWM指令値を算出してモータドライバ106に出力する。モータ制御部115は、所定の動作を終了するとCPU101に対して動作終了を通知する。なお、ここではモータ制御部115が駆動プロファイルを生成する例を説明したが、CPU101が駆動プロファイルを生成してモータ制御部115に指示する構成であってもよい。CPU101は、印字枚数のカウントや主走査モータのスキャン数のカウントなども行っている。
【0035】
記録ヘッド制御部116は、ROM104に格納されたヘッド駆動データ、吐出同期信号LINE、吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107に渡して、駆動波形生成回路107に共通駆動波形信号Vcomを生成させる。駆動波形生成回路107が生成した共通駆動波形信号Vcomは、ヘッド中継基板200に実装された後述の記録ヘッドドライバ210に入力される。
【0036】
図3は画像処理部310の構成例を示す機能ブロック図である。
【0037】
画像処理部310は、受付けた画像データについて、階調処理、画像変換処理などを行い、記録ヘッド制御部116で処理可能な形式の画像データに変換する。そして、画像処理部310は、変換後の画像データを、記録ヘッド制御部116へ出力する。
【0038】
詳細には、画像処理部310は、インターフェイス41と、階調処理部42と、画像変換部43と、画像処理部RAM44と、を有する。
【0039】
インターフェイス41は、画像データの入力部であり、CPU101、およびFPGA102との通信インターフェイスである。階調処理部42は、受付けた多値の画像データに階調処理を行い、小値の画像データへ変換する。小値の画像データは、図2に示した記録ヘッド6が吐出する液滴の種類(大滴、中滴、小滴)に等しい階調数の画像データである。そして、階調処理部42は、変換した画像データを、画像処理部RAM44上に1バンド分以上保持する。1バンド分の画像データとは、記録ヘッド6が1度の主走査方向Xの走査で記録可能な最大の副走査方向の幅に相当する画像データを指す。
【0040】
画像変換部43は、画像処理部RAM44上の1バンド分の画像データについて、主走査方向Xへの1度の走査(1スキャン)で出力する画像単位で、画像データを変換する。この変換は、インターフェイス41を介してCPU101から受付けた、印字順序、および印字幅(=1スキャンあたりの画像記録の副走査幅)の情報に従い、記録ヘッド6の構成に合わせて変換する。
【0041】
印字順序、印字幅は記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する1パス印字でも良く、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査で画像を形成するマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向にヘッドを並べて、同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
印字幅とは、記録ヘッド6図2および図5参照)の1度の主走査方向Xへの走査(1スキャン)で記録する画像の、副走査方向Yの幅を示す。本実施の形態では、印字幅は、CPU101が設定する。
【0043】
画像変換部43は、変換した画像データSD'を、インターフェイス41を介してFPGA102へ出力する。
【0044】
画像処理部310の機能は、FPGAやASIC等のハードウェア機能として実行されても良いし、画像処理部310内部の記憶装置に記憶された画像処理プログラムによって実施されるものであっても良い。
【0045】
また、画像処理部310の機能は画像形成装置40の内部ではなく、コンピュータにインストールされたソフトウェアで行っても良い。
【0046】
図4は、記録ヘッド制御部116、駆動波形生成回路107、記録ヘッドドライバ210の構成例を示すブロック図である。例えば、図4は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置400の一例を示している。
【0047】
記録ヘッド制御部116は、吐出のタイミングのトリガーとなるトリガー信号Trigを受信すると、駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成回路107へ出力する。さらに、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107へ出力する。(図4参照)。駆動波形生成回路107は、ROM104にアドレスを出力してアクセスし、ROM104内に割り当てられた波形データ格納部に格納された波形データを読み出す。駆動波形生成回路107は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで、波形データ格納部から読み出した波形データに対応する共通駆動波形信号Vcomを生成する。
【0048】
さらに、記録ヘッド制御部116は、画像処理基板300に設けられた前述の画像処理部310から画像処理後の画像データSD'を受け取り、この画像データSD'をもとに、記録ヘッド6の各ノズル孔62(図5)から吐出させるインク滴の大きさに応じて共通駆動波形信号Vcomの所定波形を選択するためのマスク制御信号MNを生成する。マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。そして、記録ヘッド制御部116は、画像データSD'と、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNとを、記録ヘッドドライバ210に転送する。
【0049】
記録ヘッドドライバ210は、図4に示すように、シフトレジスタ211、ラッチ回路212、階調デコーダ213、レベルシフタ214、およびアナログスイッチ215を備える。
【0050】
シフトレジスタ211は、記録ヘッド制御部116から転送される画像データSD'および同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路212は、シフトレジスタ211の各レジスト値を、記録ヘッド制御部116から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
【0051】
階調デコーダ213は、ラッチ回路212でラッチした値(画像データSD')とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ214は、階調デコーダ213のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ215が動作可能なレベルへとレベル変換する。
【0052】
アナログスイッチ215は、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力でオン/オフするスイッチである。このアナログスイッチ215は、記録ヘッド6が備えるノズル孔62ごとに設けられ、各ノズル孔62に対応する圧電素子70の個別電極83に接続されている。また、アナログスイッチ215には、駆動波形生成回路107からの共通駆動波形信号Vcomが入力されている。また、上述したようにマスク制御信号MNのタイミングが共通駆動波形信号Vcomのタイミングと同期している。したがって、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチ215のオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形信号Vcomを構成する駆動波形の中から各ノズル孔62に対応する圧電素子70に印加される波形が選択される。その結果、ノズル孔62から吐出されるインク滴の大きさが制御される。
【0053】
なお、図4に示す吐出タイミング信号CHANGEは、吐出同期信号LINEに同期して生成される共通駆動波形信号Vcomの位相を調整するために使用される。例えば、吐出タイミング信号CHANGEは、1から13までのデジタル値のいずれかを示し、デジタル値の値が小さいほど共通駆動波形信号Vcomの位相は早くなる。吐出タイミング信号CHANGEの値が7の場合、共通駆動波形信号Vcomの位相は基準の位相になる。
【0054】
図5は、記録ヘッド6の構成例を示す概要図である。記録ヘッド6は、加圧液室61、圧電素子70およびノズル孔62を有する複数の吐出ブロック90を有する。
【0055】
例えば、各圧電素子70は、加圧液室61に隣接する壁面であって、ノズル孔62が設けられる壁面と対向する壁面に接触しており、図4のアナログスイッチ215からの駆動波形電圧を個別電極(入力端子)83で受けたことにより変形する。圧電素子70の変形によりノズル孔62と連通する加圧液室61が変形し、加圧液室61内のインクの圧力が変化する。そして、加圧液室61内のインクが加圧された場合、加圧されたインクは、ノズル孔62から液滴として吐出される。
【0056】
図6は、マスク制御信号MNの種類と個別電極83に印加される電圧波形との例を示す図である。図4の駆動波形生成回路107は、吐出同期信号LINEに同期して、吐出タイミング信号CHANGEに応じた位相の共通駆動波形信号Vcomを出力する。特に限定されないが、共通駆動波形信号Vcomは、4つの波形W1、W2、W3、W4を含む(図6(a))。
【0057】
まず、マスク制御信号MNが図4のアナログスイッチ215に出力されるまでの動作を説明する。図4の記録ヘッド制御部116は、吐出同期信号LINEに同期して、4つのマスク制御信号MN(MN0、MN1、MN2、MN3)を並列に出力する。マスク制御信号MN0は、共通駆動波形信号Vcomの波形W3の生成期間を含む矩形パルスを有する。マスク制御信号MN1は、共通駆動波形信号Vcomの波形W2の生成期間を含む矩形パルスを有する。マスク制御信号MN2は、共通駆動波形信号Vcomの波形W2、W4の生成期間をそれぞれ含む2つの矩形パルスを有する。マスク制御信号MN3は、共通駆動波形信号Vcomの波形W1、W2の生成期間と波形W4の生成期間とをそれぞれ含む2つの矩形パルスを有する。
【0058】
また、例えば、記録ヘッド制御部116は、記録ヘッド6のノズル孔62の数に対応する画素数の画像データSD'を受信し、受信した画像データSD'を直列データとして同期クロック信号SCKに同期してシフトレジスタ211に出力する。シフトレジスタ211は、直列の画像データSD'を同期クロック信号SCKに同期して順次受信し、シフトレジスタ211内にシフトする。そして、シフトレジスタ211は、保持した画像データSD'を並列データとしてラッチ回路212に出力する。
【0059】
ラッチ回路212は、ノズル孔62の数に対応する画素数の画像データSD'ごとに記録ヘッド制御部116から出力されるラッチ信号LTに同期して並列の画像データSD'をラッチし、ラッチした画像データSD'を階調デコーダ213に出力する。
【0060】
階調デコーダ213は、画像データSD'に含まれる、記録ヘッド6のノズル孔62毎に対応する画素データの階調をそれぞれデコードする。そして、階調デコーダ213は、デコードした階調に対応するマスク制御信号MN(MN0-MN3のいずれか)を、画素データ毎にレベルシフタ214に出力する。すなわち、レベルシフタ214に出力されるマスク制御信号MNの数は、ノズル孔62の数に等しい。そして、レベルシフタ214は、受信したマスク制御信号MNの電圧レベルを変換し、アナログスイッチ215に出力する。
【0061】
アナログスイッチ215は、記録ヘッド6の複数のノズル孔62に対応する圧電素子70毎にゲート回路を有する。各ゲート回路は、対応するマスク制御信号MNに応じて共通駆動波形信号Vcomの波形を圧電素子70の個別電極83に印加する。例えば、各ゲート回路は、ゲート入力端子VINで受けるマスク制御信号MNの矩形パルスに同期してオンし、共通駆動波形信号Vcomの波形の一部を選択的に駆動波形電圧として個別電極83に出力する。このように、マスク制御信号MN0-MN3は、共通駆動波形信号Vcomに含まれる複数の波形W1、W2、W3、W4の少なくともいずれかを選択する複数の選択パターンである。
【0062】
これにより、画素毎の画像データSD'の階調に応じて、4種類の電圧波形のいずれかが個別電極83に印加される。アナログスイッチ215の各ゲート回路は、共通駆動波形信号Vcomに含まれる複数の波形の少なくともいずれかを選択的に圧電素子70の個別電極83に供給するスイッチとして機能する。
【0063】
マスク制御信号MN0に基づいて個別電極83に印加される波形W3は、ノズル孔62からインクを吐出せずにノズル孔62のメニスカス面を振動させて乾燥を防ぐために使用される(図6(b))。マスク制御信号MN1に基づいて個別電極83に印加される波形W2は、ノズル孔62から第1の量(小滴)のインクを吐出するために使用される(図6(c))。
【0064】
マスク制御信号MN2に基づいて個別電極83に印加される波形W2、W4は、ノズル孔62から第2の量(中滴)のインクを吐出するために使用される(図6(d))。マスク制御信号MN3に基づいて個別電極83に印加される波形W1、W2、W4は、ノズル孔62から第3の量(大滴)のインクを吐出するために使用される(図6(e))。
【0065】
なお、個別電極83の波形に示す破線は、ゲート回路が個別電極83に波形を印加していない期間を示し、個別電極83は、破線で示す期間、フローティング状態の基準電圧に設定される。なお、フローティング状態の間、個別電極83の電圧は、リークパスを介して流れるリーク電流により、徐々に低下していく。リーク電流による個別電極83の電圧の低下は、図11で説明する。
【0066】
図7および図8は、一実施形態に係る液体吐出装置400の動作の例を示す波形図である。図7は、駆動周期が予め設定された第1の周期より短い場合の波形を示し、図8は、駆動周期が第1の周期より長い場合の波形を示す。第1の周期については、図9で説明する。例えば、駆動周期は、画像を印刷する用紙の送り速度が速い動作モード時に短くなり、画像を印刷する用紙の送り速度が遅い動作モード時に長くなる。あるいは、駆動周期は、印刷の解像度が低い動作モード時に短くなり、印刷の解像度が高い動作モード時に長くなる。
【0067】
図7および図8において、1つの駆動周期は、インクを吐出する制御を実行する吐出制御期間と、インクを吐出する制御を実行しない非吐出制御期間とを含む。例えば、吐出制御期間は、駆動周期に依存せず一定であり、共通駆動波形信号Vcomの波形は、各吐出制御期間で共通である。非吐出制御期間は、駆動周期が長いほど長くなり、共通駆動波形信号Vcomは、基準電圧(中間電圧)に維持される。
【0068】
図7および図8は、2つのノズル孔62-1、62-2からインクを吐出するための動作波形を示しているが、記録ヘッド6に含まれる全てのノズル孔62に対応して、図7または図8に示す動作が実行される。吐出制御期間では、図6で説明したように、ゲート回路のゲート入力端子VINで受けるマスク制御信号MNに応じた波形が、個別電極83に印加される。
【0069】
図7に示すように、駆動周期が第1の周期より短い場合、ゲート入力端子VINに与えられる各マスク制御信号MNは、非吐出制御期間にロウレベルに設定される。ゲート回路は、ロウレベルの電圧を受けた場合、オフし、共通駆動波形信号Vcomを個別電極83に印加しない。すなわち、記録ヘッド制御部116および記録ヘッドドライバ210は、非吐出制御期間に圧電素子70の個別電極83に基準電圧を印加する電圧設定制御を実施しない。このため、個別電極83の電圧波形に破線で示すように、個別電極83はフローティング状態に設定される。
【0070】
マスク制御信号MNを非吐出制御期間にロウレベルに設定することで、単位時間当たりのゲート回路の駆動回数が増加することを防止でき、ゲート回路の温度が過剰に上昇することを防止できる。これにより、記録ヘッド6の温度の上昇を防止でき、加圧液室61内のインクの温度が上限温度を超えることを防止でき、インクの吐出制御を正常に行うことができる。
【0071】
一方、図8に示すように、駆動周期が第1の周期より長い場合、ゲート入力端子VINに与えられる各マスク制御信号MNは、非吐出制御期間にロウレベルからハイレベルに変化する。ゲート回路は、ハイレベルのマスク制御信号MNを受けた場合にオンし、共通駆動波形信号Vcom(基準電圧)を圧電素子70の個別電極83に印加する。このため、個別電極83の電圧波形に実線で示すように、個別電極83は所定の一定電圧である基準電圧に設定される。すなわち、ゲート回路を駆動動作させるため、記録ヘッド制御部116および記録ヘッドドライバ210は、非吐出制御期間に圧電素子70の個別電極83に基準電圧を印加する電圧設定制御を実施する。
【0072】
例えば、各マスク制御信号MNは、非吐出制御期間の開始(すなわち、吐出制御期間の終了)から所定時間後にハイレベルに変化する。非吐出制御期間におけるゲート回路のオンタイミングは、駆動周期に依存せず、マスク制御信号MNの波形を生成するための波形データにより決まる。例えば、図7の非吐出制御期間は、図8の非吐出制御期間の開始からオンタイミングまでの時間より短いため、マスク制御信号MNは、非吐出制御期間にハイレベルに変化せず、電圧設定制御は実施されない。電圧設定制御の有無については、図9で説明する。
【0073】
図7および図8に示す動作は、図4に示した記録ヘッド制御部116、シフトレジスタ211、ラッチ回路212、階調デコーダ213およびレベルシフタ214により実現される。すなわち、記録ヘッド制御部116、シフトレジスタ211、ラッチ回路212、階調デコーダ213およびレベルシフタ214は、非吐出制御期間に、圧電素子70に所定電圧を印加する電圧設定制御を実施する制御部として機能する。
【0074】
非吐出制御期間に個別電極83に基準電圧を印加することで、個別電極83の電圧がリーク電流により低下することを防止できる。したがって、例えば、n+1回目(nは1以上の整数)の駆動周期の吐出制御期間において、マスク制御信号MNの矩形パルスがゲート回路に印加された場合にも、個別電極83の電圧が基準電圧まで急峻に立ち上がることを防止できる。この結果、個別電極83に異常な電圧(異常パルス)が印加されることを防止でき、異常パルスにより、ノズル孔62からインクが誤って吐出されることを防止できる。すなわち、液体吐出装置400の誤動作を防止でき、画像形成装置40による用紙等への印刷品質の低下を防止できる。
【0075】
なお、例えば、図4に示した記録ヘッド制御部116は、マスク制御信号MN毎に、最も長い駆動周期に合わせた長さの波形を生成するための波形データを保持している。そして、図8に示す非吐出制御期間での各マスク制御信号MNのオンタイミングONは、例えば、第1の周期の終了(すなわち、次の吐出制御期間の開始)に対して第1の時間以上前に設定される。これにより、マスク制御信号MN毎に1つの波形を用意するだけで、駆動周期に応じて、図7および図8に示した電圧設定制御の有無の切り替えを自動的に実施することができる。
【0076】
図9は、電圧設定制御の有無を切り替える例を示す図である。図9では、例えば、6種類の駆動周期が予め設定される。駆動周期に示す"8"から"23"までの3つおきの数字は、単位時間を示しており、特に限定されないが、1単位時間は、数マイクロ秒である。例えば、吐出制御期間は7単位時間である。電圧設定制御は、駆動周期が17単位時間、20単位時間および23単位時間のときに行われ、駆動周期が8単位時間、11単位時間および14単位時間のときには行われない。すなわち、図9に示す例では、電圧設定制御をするかしないかを判断する第1の周期は、15単位時間である。
【0077】
なお、説明を分かりやすくするために、アナログスイッチ215のゲート回路のオフが継続した場合に個別電極83の電圧が許容限界電圧を下回るタイミングは、一例として吐出制御期間の最初から18単位時間後にしている。しかし、個別電極83の電圧が許容限界電圧を下回るタイミングは、18単位時間後に限らない。ここで、許容限界電圧は、その後の吐出制御期間の開始時に、個別電極83の電圧が基準電圧まで急峻に立ち上がることで、異常パルスが発生し、ノズル孔62からインクが誤って吐出される可能性がある電圧である。
【0078】
図9に示す例では、例えば、非吐出制御期間にゲート回路をオンさせるタイミングONは、吐出制御期間の最初から15単位時間後に設定される。換言すれば、記録ヘッド制御部116は、全てのマスク制御信号MNにおいて、吐出制御期間の最初から15単位時間後にマスク制御信号MNがハイレベルに変化するような波形データを保持している。
【0079】
マスク制御信号MNを生成するための波形データは、全ての駆動周期に共通であり、全ての駆動周期で使用される。すなわち、マスク制御信号MN0-MN3(選択パターン)の各々は、最も長い駆動周期に対応するパターン長を有し、非吐出制御期間に対応するパターン中にタイミングONを含む。
【0080】
これにより、駆動周期が20単位時間または23単位時間に設定される場合、許容限界電圧に到達する前に個別電極83の電圧を基準電圧に戻すことができ、異常パルスによるノズル孔62からインクの誤吐出を防止することができる。
【0081】
なお、タイミングONは、設定可能な全ての駆動周期において、吐出制御期間の開始より第1の時間以上前になるように設定される。すなわち、記録ヘッド制御部116は、電圧設定制御の実施時の圧電素子70の個別電極83に基準電圧を印加する印加タイミングを、複数の駆動周期のいずれかの吐出制御期間の開始タイミングよりも第1の時間以上前に設定する。換言すれば、第1の周期の終了タイミングは、個別電極83の電圧が許容限界電圧を下回るタイミングよりも前、かつ、第1の周期より大きい駆動周期の吐出制御期間の開始より第1の時間以上前になるように設定される。
【0082】
例えば、第1の時間は、吐出制御期間に生成される連続する2つパルス波形において互いに隣接する遷移エッジの最小時間間隔に設定される。すなわち、第1の時間は、吐出制御期間に生成される連続する2つパルス波形の最小時間間隔である。図9に示す例では、タイミングONは、駆動周期が17単位時間の場合に、吐出制御期間の開始より1マイクロ秒以上になるように設定される。
【0083】
吐出制御期間に生成される連続する2つパルス波形の時間間隔は、ノズル孔62からインクを安定して吐出させるための余裕時間である。このため、タイミングONから吐出制御期間までの時間間隔を第1の時間以上空けることで、吐出制御期間の最初のパルスによるインクの吐出が不安定になることを防止でき、画像形成装置40による用紙等への印刷品質の低下を防止できる。なお、最初のパルスによるインクの吐出が不安定になった場合、吐出の不安定は、その後のパルスによるインクの吐出に連鎖する場合があり、最初のパルスによるインクの吐出を安定させることは重要である。
【0084】
図9に示したタイミングONでは、駆動周期が17単位時間より長い20単位時間または23単位時間に設定された場合、タイミングONは、吐出制御期間の開始より常に1マイクロ秒以上になる。また、駆動周期が17単位時間より短い14単位時間、11単位時間または8単位時間に設定された場合、タイミングONが発生する前に次の吐出制御期間が現れるため、非吐出制御期間にゲート回路はオンしない。このため、駆動周期が17単位時間より短い場合、タイミングONから吐出制御期間までの時間間隔は考慮しなくて良い。
【0085】
図10および図11は、他の液体吐出装置の動作の例を示す波形図(比較例)である。図10は、駆動周期が第1の周期より短い場合の波形を示し、図11は、駆動周期が第1の周期より長い場合の波形を示す。
【0086】
図10では、全てのマスク制御信号MN(MN0-MN3)は、非吐出制御期間に、アナログスイッチ215のゲート回路をオンさせるパルスを含んでいる。すなわち、記録ヘッド制御部116は、非吐出制御期間に、ゲート回路をオンさせるパルスを含むマスク制御信号MN0-MN3を生成する波形データを保持している。
【0087】
駆動周期が第1の周期より長い場合の動作波形は、図8と同様である。すなわち、駆動周期が第1の周期より長い場合、非吐出制御期間に、ゲート回路をオンさせるパルスを含むマスク制御信号MN0-MN3が生成される。ゲート回路を非吐出制御期間毎にオンさせることで、非吐出制御期間に、個別電極83の電圧がリーク電流により低下することを防止でき、吐出制御期間の開始時に個別電極83に異常な電圧(異常パルス)が印加されることを防止できる。
【0088】
一方、ゲート回路を非吐出制御期間毎にオンさせることで、単位時間当たりのゲート回路の駆動回数が増加する。ゲート回路の駆動回数が増加により、記録ヘッドの温度が上昇すると、インクの粘度が低くなり、インクの吐出制御を正常に行うことが困難になるおそれがある。
【0089】
図11では、全てのマスク制御信号MN(MN0-MN3)は、非吐出制御期間に、アナログスイッチ215のゲート回路のオフ状態を維持するために基準電圧に維持される。すなわち、記録ヘッド制御部116は、非吐出制御期間に、ゲート回路をオンさせるパルスを含まないマスク制御信号MN0-MN3を生成する波形データを保持している。
【0090】
駆動周期が第1の周期より短い場合の動作波形は、図7と同様である。すなわち、駆動周期が第1の周期より短い場合、非吐出制御期間に、ゲート回路をオンさせるパルスを含まないマスク制御信号MN0-MN3が生成される。
【0091】
非吐出制御期間にゲート回路をオンさせない場合、圧電素子70の個別電極83はフローティング状態の基準電圧に設定されるため、個別電極83の電圧は、リーク電流により徐々に低下する。この場合、次の吐出制御期間においてマスク制御信号MNの矩形パルスがゲート回路に印加されたときに、個別電極83の電圧が基準電圧まで急峻に立ち上がり、異常パルスが発生するおそれがある。そして、異常パルスが発生した場合、ノズル孔62からインクが誤って吐出されるおそれがある。
【0092】
図12は、液体吐出装置を有する画像形成装置の印刷時間と記録ヘッドの温度との関係を示す説明図である。本実施形態の温度変化は実線で示し、比較例の温度変化は破線で示す。
【0093】
図7で説明したように、本実施形態では、駆動周期が第1の周期より短い場合、アナログスイッチ215のゲート回路は非吐出制御期間にオンしないため、1駆動周期におけるゲート回路のオン回数は、例えば4回になる(図12(a))。一方、図10で説明したように、駆動周期が第1の周期より短い場合の非吐出制御期間に、アナログスイッチ215のゲート回路をオンする場合、1駆動周期におけるゲート回路のオン回数は、例えば5回になる(図12(b))。
【0094】
単位時間当たりのゲート回路のオン回数が所定回数を超える印刷動作が長時間続いた場合、記録ヘッド制御部116の温度が上限温度を超えるおそれがある。これに対して、本実施形態では、図10に比べて、単位時間当たりのゲート回路のオン回数を減らすことができるため、記録ヘッド制御部116の温度が上限温度を超えることを防止できる。
【0095】
また、本実施形態では、駆動周期が第1の周期より長い場合、アナログスイッチ215のゲート回路は非吐出制御期間にオンするため、1駆動周期におけるゲート回路のオン回数は、例えば5回になる(図12(c))。しかし、駆動周期が長い場合、単位時間当たりのゲート回路のオン回数は、駆動周期が短い場合に比べて少ないため、記録ヘッド制御部116の温度が上限温度を超えることはない。
【0096】
一方、駆動周期が第1の周期より長い場合であって、アナログスイッチ215のゲート回路を非吐出制御期間にオンさせない場合、1駆動周期におけるゲート回路のオン回数は、例えば4回になる(図12(d))。駆動周期が長く、1駆動周期におけるゲート回路のオン回数が少ない場合、記録ヘッド制御部116の温度は上昇しにくい。しかし、非吐出制御期間に、圧電素子70の個別電極83の電圧がリーク電流により低下するため、図11で説明した不具合が発生するおそれがある。
【0097】
以上、これまでに説明した実施形態では、駆動周期が第1の周期より短い場合、非吐出制御期間に、アナログスイッチ215のゲート回路をオンさせないことで、単位時間当たりのゲート回路のオン回数が増加することを防止できる。これにより、ゲート回路の温度が過剰に上昇することを防止でき、記録ヘッド6の温度が上昇することを防止できる。したがって、加圧液室61内のインクの温度が許容温度を超え、粘度が既定値より低くなることを防止でき、インクの吐出制御を正常に行うことができる。
【0098】
また、駆動周期が第1の周期より長い場合、非吐出制御期間に、アナログスイッチ215のゲート回路をオンさせることで、圧電素子70の個別電極83の電圧がリーク電流により低下することを防止できる。これにより、非吐出制御期間後の吐出制御期間において、マスク制御信号MNの矩形パルスがゲート回路に印加された場合にも、個別電極83の電圧が基準電圧まで急峻に立ち上がることを防止できる。したがって、個別電極83に異常な電圧が印加されることを防止でき、異常な電圧により、ノズル孔62からインクが誤って吐出されることを防止できる。
【0099】
この結果、非吐出制御期間における圧電素子70の個別電極83の電圧の低下の抑止と、記録ヘッド6の発熱の防止とを両立することができる。また、液体吐出装置400の誤動作を防止でき、画像形成装置40による用紙等への印刷品質の低下を防止できる。
【0100】
図13は、別の実施形態に係る液体吐出装置の動作の例を示す波形図である。図8と同じ動作については、詳細な説明は省略する。図13に示す動作を行う液体吐出装置は、駆動波形生成回路107が出力する共通駆動波形信号Vcomの波形が異なることを除き、図4に示す液体吐出装置400と同様である。すなわち、図13に示す動作を行う液体吐出装置は、図2に示した画像形成装置40および図1に示した画像形成システム1に搭載される。
【0101】
図13は、駆動周期が第1の周期より長い場合の動作波形を示している。駆動波形生成回路107は、マスク制御信号MN0により選択される波形W3と同じ波形(微駆動波形信号)を、非吐出制御期間に生成する。すなわち、記録ヘッド制御部116は、非吐出制御期間に、圧電素子70の個別電極83に基準電圧を印加する電圧設定制御中に、個別電極83に微駆動波形信号を印加する。なお、非吐出制御期間に生成される波形W3の数は1つに限定されず、複数でも良い。
【0102】
記録ヘッド制御部116が出力するマスク制御信号MN(MN0-MN3)の波形は、図1から図12で説明した実施形態と同じである。これにより、非吐出制御期間に、ノズル孔62からインクを吐出せずに加圧液室61内の圧力を変化させる波形(微駆動)が圧電素子70の個別電極83に印加される。微駆動波形信号により、ノズル孔62のメニスカス面が振動し、インクが乾燥してインクの粘度が上昇することが防止される。
【0103】
なお、駆動周期が第1の周期より短い場合、非吐出制御期間の波形W3が現れる前に次の吐出制御期間になるため、動作波形は、図7と同じになる。
【0104】
以上、図13に示す実施形態においても、これまでに説明した実施形態と同様に、非吐出制御期間における圧電素子70の個別電極83の電圧の低下の抑止と、記録ヘッド6の発熱の防止とを両立することができる。さらに、図13に示す実施形態では、駆動周期が第1の周期より長い場合、非吐出制御期間に圧電素子70の個別電極83に微駆動の波形W3を印加することで、ノズル孔62のメニスカス面が振動させ、インクが乾燥してインクの粘度が上昇することを防止できる。この結果、画像形成装置40による用紙等への印刷品質の低下を防止できる。
【0105】
図14は、別の実施形態に係る液体吐出装置の動作の例を示す波形図である。図8と同じ動作については、詳細な説明は省略する。図14に示す動作を行う液体吐出装置は、記録ヘッド制御部116が出力するマスク制御信号MN(MN0-MN3)の波形が異なることを除き、図4に示す液体吐出装置400と同様である。すなわち、図14に示す動作を行う液体吐出装置は、図2に示した画像形成装置40および図1に示した画像形成システム1に搭載される。
【0106】
図14は、駆動周期が第1の周期より長い場合の動作波形を示している。記録ヘッド制御部116は、非吐出制御期間でのハイレベル期間が互いにずれたマスク制御信号MN0-MN3(選択パターン)を生成する。すなわち、電圧設定制御の実施タイミングは、マスク制御信号MN0-MN3毎に異なる。記録ヘッド制御部116は、非吐出制御期間でのハイレベル期間が互いにずれたマスク制御信号MN0-MN3の波形を生成するための波形データを保持している。以下では、マスク制御信号MNのハイレベル期間は、オン期間とも称する。
【0107】
非吐出制御期間でのマスク制御信号MN0-MN3のオン期間を互いにずらすことで、アナログスイッチ215の多数のゲート回路が同時にオンされることを防止でき、ゲート回路のオンにより発生するスイッチングノイズ(電源ノイズ等)を低減できる。この結果、液体吐出装置400の誤動作を防止でき、画像形成装置40および画像形成システム1の信頼性の低下を防止できる。マスク制御信号MN0-MN3単位でオン期間をずらすことで、記録ヘッド制御部116が保持する波形データの数を増やすことなく、スイッチングノイズを低減できる。
【0108】
なお、非吐出制御期間のオン期間は、少なくとも1つのマスク信号MNが、他のマスク信号MNに対してずれていれば良い。例えば、2つのマスク制御信号MN毎に非吐出制御期間のオン期間をずらしても良い。また、非吐出制御期間において、マスク制御信号MNをオフするタイミングはずらさなくても良い。
【0109】
以上、図14に示す実施形態においても、これまでに説明した実施形態と同様に、非吐出制御期間における圧電素子70の個別電極83の電圧の低下の抑止と、記録ヘッド6の発熱の防止とを両立することができる。さらに、図14に示す実施形態では、非吐出制御期間でのマスク制御信号MN0-MN3のオン期間を互いにずらすことで、アナログスイッチ215のスイッチングノイズを低減でき、液体吐出装置400の誤動作を防止できる。また、マスク制御信号MN0-MN3単位でオン期間をずらすことで、記録ヘッド制御部116が保持する波形データの数を増やすことなく、スイッチングノイズを低減できる。
【0110】
図15は、別の実施形態に係る液体吐出装置の動作の例を示す波形図である。図8と同じ動作については、詳細な説明は省略する。図15に示す動作を行う液体吐出装置は、記録ヘッド制御部116が出力するマスク制御信号MN(MN0-MN3)の波形が異なることを除き、図4に示す液体吐出装置400と同様である。すなわち、図15に示す動作を行う液体吐出装置は、図2に示した画像形成装置40および図1に示した画像形成システム1に搭載される。
【0111】
図15は、駆動周期が第1の周期より長い場合の動作波形を示している。記録ヘッド制御部116は、例えば、マスク制御信号MN0-MN3毎に、非吐出制御期間でのオン期間が互いにずれた複数の波形を生成する。すなわち、すなわち、電圧設定制御の実施タイミングは、マスク制御信号MN0-MN3毎に複数種類がある。記録ヘッド制御部116は、非吐出制御期間でのオン期間が互いにずれた波形を生成するための複数の波形データを、マスク制御信号MN0-MN3毎に保持している。
【0112】
例えば、記録ヘッド制御部116は、マスク制御信号MN0-MN3毎に、非吐出制御期間でのオン期間が互いにずれた4つの波形データを含む4つの波形データグループを保持している。例えば、4つの波形データグループは、アナログスイッチ215において4つにグループ分けされた所定数のゲート回路群のそれぞれに対応する。そして、記録ヘッド制御部116は、ゲート回路群に対応する波形データグループをマスク制御信号MNとして出力する。
【0113】
図15では、圧電素子70の代わりに圧電素子70と同じ吐出ブロック90に属するノズル孔62の番号で、マスク信号MN1の波形を区別している。例えば、ノズル孔62に対応する圧電素子70は、ノズル孔62の枝番(-1、-2等)で示す順に記録ヘッド6内に並んでいる。そして、図15の例では、隣接する圧電素子70(ノズル孔62)に対応するマスク制御信号MN1のオン期間が順次ずらされている。
【0114】
換言すれば、アナログスイッチ215において隣接して配置されるゲート回路に印加されるマスク制御信号MN1のオン期間が順次ずらされている。これにより、オンタイミングが同じマスク制御信号MNが、隣接するゲート回路に供給される可能性を下げることができ、ゲート回路のスイッチングノイズの低減に寄与することができる。
【0115】
例えば、他のマスク制御信号MN0、MN2、MN3のオン期間は、マスク信号MN1のオン期間と同じでも良く、全てのマスク信号MN0-MN3でオン期間を少しずつずらしても良い。すなわち、非吐出制御期間のオン期間は、少なくとも1つの圧電素子70に対応するマスク信号MNが、他のマスク信号MNに対してずれていれば良い。
【0116】
以上、図15に示す実施形態においても、図1から図12に示した実施形態と同様に、非吐出制御期間における圧電素子70の個別電極83の電圧の低下の抑止と、記録ヘッド6の発熱の防止とを両立することができる。また、図14に示した実施形態と同様に、非吐出制御期間でのマスク制御信号MN0-MN3のオン期間を互いにずらすことで、アナログスイッチ215のスイッチングノイズを低減できる。
【0117】
さらに、図15に示す実施形態では、オン期間をずらす波形(タイミング)の数を、マスク制御信号MN0-MN3の数より多くすることで、図14に示した実施形態に対して、さらにスイッチングノイズを低減できる。
【0118】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0119】
1 画像形成システム
6 記録ヘッド
40 画像形成装置
61 加圧液室
62 ノズル孔
70 圧電素子
83 個別電極
90 吐出ブロック
107 駆動波形生成回路
116 記録ヘッド制御部
210 記録ヘッドドライバ
211 シフトレジスタ
212 ラッチ回路
213 階調デコーダ
214 レベルシフタ
215 アナログスイッチ
MN(MN0-MN3) マスク制御信号
Vcom 共通駆動波形信号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【文献】特開2013-014121号公報
【文献】特開2015-174401号公報
【文献】特開2014-028450号公報
図1
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