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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220928BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220928BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20220928BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20220928BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20220928BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/09 Q
G08G1/09 R
B60W40/04
B60W40/06
B60W30/09
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020504458
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 IB2018000325
(87)【国際公開番号】W WO2019171097
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】方 芳
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143137(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055823(WO,A1)
【文献】特開2010-281746(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 1/16
B60W 30/00 ~ 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と、他車両とのすれ違いが困難な道路区間において、
前記他車両の停車を検出し、
前記自車両と前記他車両との前記道路区間を通過する優先度を判断し、前記自車両の優先度が低い場合は、前記自車両の優先度が高い場合に比べて、前記他車両が停車してから前記自車両が前記他車両を回避する動作を開始するまでの時間を短くすることを特徴とするコンピュータにより実行される車両挙動予測方法。
【請求項2】
前記他車両の属性に基づいて、前記優先度を判断することを特徴とする請求項1に記載の車両挙動予測方法。
【請求項3】
前記他車両または前記自車両の周辺の情報に基づいて、前記優先度を判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両挙動予測方法。
【請求項4】
前記他車両の属性と、前記他車両または前記自車両の周辺の情報とに重みを付けることによって、前記優先度を判断することを特徴とする請求項3に記載の車両挙動予測方法。
【請求項5】
前記他車両の周辺の情報は、前記他車両の周囲の道路構造であることを特徴とする請求項3または4に記載の車両挙動予測方法。
【請求項6】
前記他車両の後方の前記道路構造が勾配路である場合は、前記他車両の優先度が前記自車両の優先度より高いと判断することを特徴とする請求項5に記載の車両挙動予測方法。
【請求項7】
前記他車両の後方の前記道路構造が踏切である場合は、前記他車両の優先度が前記自車両の優先度より高いと判断することを特徴とする請求項5または6に記載の車両挙動予測方法。
【請求項8】
前記他車両の後方の前記道路構造がスクールゾーンである場合は、前記他車両の優先度が前記自車両の優先度より高いと判断することを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の車両挙動予測方法。
【請求項9】
前記道路構造として、前記他車両の位置する道路幅が前記自車両の位置する道路幅より狭い場合は、前記他車両の優先度が前記自車両の優先度より高いと判断することを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の車両挙動予測方法。
【請求項10】
前記道路構造は待避場所であり、前記他車両の周囲の待避場所における交通量が所定量以上である場合、もしくは、前記自車両の周囲の待避場所における交通量が所定量以下である場合は、前記他車両の優先度が前記自車両の優先度より高いと判断することを特徴とする請求項5~9のいずれか1項に記載の車両挙動予測方法。
【請求項11】
前記他車両の属性は、前記他車両の車種であることを特徴とする請求項2~10のいずれか1項に記載の車両挙動予測方法。
【請求項12】
前記他車両の属性は、前記他車両に掲示された標識であることを特徴とする請求項2~11のいずれか1項に記載の車両挙動予測方法。
【請求項13】
前記他車両が前記自車両より先に前記道路区間に進入した場合は、前記他車両の優先度が前記自車両の優先度より高いと判断することを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の車両挙動予測方法。
【請求項14】
前記自車両の後方に交差路が存在し、かつ、前記他車両のターンシグナルが点灯している場合は、前記他車両の優先度が前記自車両の優先度より高いと判断することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の車両挙動予測方法。
【請求項15】
自車両と、他車両とのすれ違いが困難な道路区間において、
前記他車両の停車を検出する検出統合回路と、
前記自車両と前記他車両との前記道路区間を通過する優先度を判断する優先度判断回路と、
前記自車両の優先度が低い場合は、前記自車両の優先度が高い場合に比べて、前記他車両が停車してから前記自車両が前記他車両を回避する動作を開始するまでの時間を短くする車両制御回路と、を備えることを特徴とする車両挙動予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、すれ違いが困難な狭路を通過する優先順位を交通状況に応じて決定する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された発明は、自車両と他車両との間で、退避ポイントへの到達時間及び後続車両の車両数に係る情報を交換し、交換した情報に基づいて優先順位を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-143137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、自車両と他車両とが情報を交換する機能を有することを前提としている。したがって、自車両と他車両とが情報を交換できない場合は、優先順位を決定することは難しく、狭路における速やかな回避動作を行うことができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、自車両と他車両とが情報を交換できない場合でも、速やかな回避動作を行いうる車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両挙動予測方法は、他車両の停車を検出し、自車両と他車両との道路区間を通過する優先度を判断し、自車両の優先度が低い場合は、自車両の優先度が高い場合に比べて、他車両が停車してから自車両が他車両を回避する動作を開始するまでの時間を短くする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両と他車両とが情報を交換できない場合でも、速やかな回避動作を行いうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両挙動予測装置の概略構成図である。
図2図2は、狭路を対面で走行する自車両と他車両を説明する図である。
図3図3は、他車両の停車時間と閾値との関係を示すグラフである。
図4図4は、狭路を対面で走行する自車両と他車両を説明する図である。
図5A図5Aは、車種と加算点との関係を示す表である。
図5B図5Bは、道路構造と加算点との関係を示す表である。
図5C図5Cは、標識と加算点との関係を示す表である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る車両挙動予測装置の一動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(車両挙動予測装置の構成)
図1を参照して、本実施形態に係る車両挙動予測装置の構成を説明する。車両挙動予測装置は、物体検出装置1と、自車位置推定装置2と、地図取得装置3と、コントローラ100とを備える。車両挙動予測装置は、主に自動運転機能を備える自動運転車両に用いられる装置であるが、これに限定されない。車両挙動予測装置は、自動運転機能を備えていない車両に用いられてもよい。
【0011】
物体検出装置1は、自車両に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラなど、自車両の周辺の物体を検出する、複数の異なる種類の物体検出センサを備える。物体検出装置1は、複数の物体検出センサを用いて、自車両の周辺における物体を検出する。物体検出装置1は、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び駐車車両を含む静止物体を検出する。例えば、物体検出装置1は、移動物体及び静止物体の自車両に対する位置、姿勢(ヨー角)、大きさ、速度、加速度、ジャーク、減速度、ヨーレートを検出する。
【0012】
自車位置推定装置2は、自車両に搭載された、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やオドメトリなど自車両の絶対位置を計測する位置検出センサを備える。自車位置推定装置2は、位置検出センサを用いて、自車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両の位置、姿勢及び速度を計測する。
【0013】
地図取得装置3は、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図取得装置3が取得する地図情報には、車線の絶対位置や車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれる。地図取得装置3は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得してもよい。また、地図取得装置3は、車車間通信、路車間通信を用いて地図情報を取得してもよい。
【0014】
コントローラ100は、物体検出装置1及び自車位置推定装置2による検出結果及び地図取得装置3による取得情報に基づいて、自車両の動作を制御する。コントローラ100は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、周辺状況予測装置として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、車両挙動予測装置が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって車両挙動予測装置が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0015】
コントローラ100は、複数の情報処理回路として、検出統合部4と、物体追跡部5と、地図内位置演算部6と、挙動予測部10と、経路生成部20と、車両制御部21と、を備える。更に、挙動予測部10は、狭路情報取得部11と、停車時間計測部12と、待避場所取得部13と、他車両情報取得部14と、道路構造取得部15と、優先度判断部16と、閾値変更部17と、を備える。
【0016】
検出統合部4は、物体検出装置1が備える複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
【0017】
物体追跡部5は、検出統合部4によって検出された物体を追跡する。具体的に、物体追跡部5は、異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体を追跡する。なお、異なる時刻に出力された物体の挙動は、コントローラ100内のメモリに記憶される。
【0018】
地図内位置演算部6は、自車位置推定装置2により得られた自車両の絶対位置、及び地図取得装置3により取得された地図データから、地図上における自車両の位置及び姿勢を推定する。
【0019】
狭路情報取得部11は、地図取得装置3から狭路の情報を取得する。狭路とは、対面通行でのすれ違いが困難な道路区間をいう。なお、対面通行でのすれ違いが可能な道路区間であっても、条件によっては狭路となりうる。例えば、対面通行する車両が、両方とも車幅の狭い軽自動車である場合、すれ違いが可能な道路区間があるとする。この道路区間において、対面通行する車両のうち、一方が車幅の広いトラックである場合には、他方が車幅の狭い軽自動車であった場合でも、すれ違いが困難になりうる。したがって、このような道路区間は、狭路になりうる。また、対面通行する車両が、互いに道路の端に寄せた場合、すれ違いが可能な道路区間があるとする。この道路区間において、対面通行する車両のうち、一方あるいは両方の運転者が初心者の場合、車両を道路端に寄せる、という運転が困難な場合があり、すれ違いが困難になりうる。したがって、このような道路区間は、狭路になりうる。
【0020】
停車時間計測部12は、物体追跡部5から取得した情報に基づいて、他車両が停車してからの時間を計測する。
【0021】
待避場所取得部13は、地図取得装置3から待避場所に関する情報を取得する。待避場所とは、狭路に設けられるスペースであり、主に対面通行において進路を譲るために設けられる。また、待避場所取得部13は、待避場所の交通量を取得してもよい。また、待避場所取得部13は、自車両または他車両の現在位置から待避場所までの距離を取得してもよい。
【0022】
他車両情報取得部14は、物体検出装置1から他車両の情報(属性)を取得する。他車両の属性とは、例えば、他車両の車種や、他車両に掲示された標識である。
【0023】
道路構造取得部15は、地図取得装置3から自車両及び他車両の周囲の道路構造を取得する。道路構造には、勾配路、踏切、スクールゾーン、道路幅、交差路などが含まれる。
【0024】
優先度判断部16(優先度判断回路)は、狭路情報取得部11、停車時間計測部12、待避場所取得部13、他車両情報取得部14、及び道路構造取得部15から取得した情報に基づいて、すれ違いが困難な道路区間を通過する優先度を判断する。本実施形態において、優先度とは客観的な指標であり、必ずしも、優先度が低いから先に回避動作を行う、ということを意味しない。また、必ずしも、優先度が高いから回避動作を行わない、ということを意味しない。優先度が高くても先に回避動作を行うことはありうる。なお、回避動作とは、相手に進路を譲るための運転動作であり、例えば、狭路では、後退動作や道路端への幅寄せである。また、優先度は、後述する閾値の変更に用いられる指標でもある。
【0025】
閾値変更部17は、優先度判断部16から取得した優先度に基づいて、閾値を変更する。本実施形態において、閾値は、回避動作を開始する際に用いられる指標であり、詳細は後述する。
【0026】
経路生成部20は、回避動作を行うための経路を生成する。車両制御部21(車両制御回路)は、経路生成部20によって生成された経路に進むため、各種センサの情報を使用しながら自車両の各種アクチュエータ(ステアリングアクチュエータ、アクセルペダルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータなど)を制御して回避動作を行う。また、車両制御部21は、後述するように、自車両の優先度が低い場合は、自車両の優先度が高い場合に比べて、他車両が停車してから自車両が他車両を回避する動作を開始するまでの時間を短くする。
【0027】
次に、図2図5を参照して、車両挙動予測装置の一動作例を説明する。
【0028】
図2に示す例では、自車両30と他車両40が、狭路を対面で走行している。この場合、自車両30または他車両40が、相手に進路を譲る必要がある。ここで、他車両40が停車したとする。自車両30と他車両40とが情報を交換できない場合、他車両40の停車が、進路を譲る意図を示すのか、あるいは、進路を譲らない意図を示すのか、判断することは難しい。一方、他車両40が停車した後、他車両40の明確な動作がなく意図が判断できない状態が続くと、自車両30は進めないため、何らかの動作が必要となる。自車両30が取り得る動作の一例として、他車両40の停車してからの時間である停車時間が所定時間以上となった場合に、自車両30が他車両40を回避する動作を開始することが考えられる。具体的には、図3に示すように、他車両40の停車時間が時間T2以上となった場合に、自車両30が回避動作を行うことが考えられる。例えば、自車両30が後退するなどして他車両40とすれ違うことができれば、その後、自車両30は進むことができる。
【0029】
なお、上述の所定時間は、予め設定された閾値に応じて決まる時間であり、図3に示すように、時間T2は、第1閾値に応じて決まる時間である。このような閾値は、回避動作を開始するための指標であり、実験やシミュレーションにより求めることができる。なお、時間T2は、特に限定されないが、例えば5秒である。
【0030】
ところで、他車両40の停車時間が時間T2以上となった場合に、自車両30が回避動作を行うと説明したが、より短い停車時間で自車両30が回避動作を行うことができれば、自車両30は速やかな回避動作を行いうる。具体的には、他車両40の停車時間が時間T2より短い時間、例えば、図3に示す時間T1以上となった場合に、自車両30が回避動作を行うことができれば、自車両30は速やかな回避動作を行いうる。すなわち、本実施形態に係る車両挙動予測装置は、他車両40が停車してから、自車両30が他車両40を回避する動作を開始するまでの時間を短くすることにより、自車両30は速やかな回避動作を行いうる。
【0031】
そこで、本実施形態において、閾値変更部17は、自車両30の優先度が、他車両40の優先度より低い場合、第1閾値を第2閾値に変更する。第2閾値は、第1閾値より小さいため、より短い停車時間で自車両30は回避動作を行いうる。
【0032】
ここで、優先度の詳細について説明する。優先度判断部16は、他車両情報取得部14や道路構造取得部15などから取得した情報に基づいて、優先度を判断する。例えば、優先度判断部16は、他車両40の属性として、他車両40の車種に基づいて、優先度を判断してもよい。例えば、優先度判断部16は、他車両40が大型自動車、バス、トラックなどである場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。これは、道幅に対して他車両が大きければ大きいほど、後退などの回避動作を行うには時間を要してしまうからである。また、優先度判断部16は、他車両40が緊急車両である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。また、優先度判断部16は、自車両30及び他車両40の車幅の差や比を用いて優先度を判断してもよい。自車両30が普通乗用車であり、他車両40が大型自動車、バス、トラックなどである場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。
【0033】
また、優先度判断部16は、他車両40の属性として、他車両40に掲示された標識に基づいて、優先度を判断してもよい。車両に掲示された標識は、例えば、初心運転者標識、高齢運転者標識である。なお、車両に掲示された標識は、身体障害者標識や聴覚障害者標識を含んでもよい。優先度判断部16は、他車両40に初心運転者標識あるいは高齢運転者標識が掲示されている場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。初心運転者標識、高齢運転者標識などの標識が車両に掲示されている場合、この車両のドライバが後退などの回避動作を行うには時間を要する傾向にあるからである。
【0034】
また、優先度判断部16は、自車両30または他車両40の周辺の情報に基づいて、優先度を判断してもよい。自車両30及び他車両40の周辺の情報とは、例えば、自車両30または他車両40の周囲の道路構造である。例えば、他車両40の周囲の道路構造として、他車両40の後方の道路構造が勾配路である場合、優先度判断部16は、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40の後方の道路構造が勾配路である場合、他車両40は、後方を確認しにくいからである。また、自車両30及び他車両40の両方が、勾配路にいる場合であって、自車両30が勾配の高い側の下り坂に位置して、他車両40が勾配の低い側の上り坂に位置するときには、優先度判断部16は、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40は、上り坂で発進する必要があり、前進しにくいからである。
【0035】
また、優先度判断部16は、他車両40の後方の道路構造が踏切である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。後方の道路構造が踏切である場合、他車両40は、後退しにくいからである。また、優先度判断部16は、他車両40の後方で工事が行われている場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。また、優先度判断部16は、他車両40の後方の道路構造がスクールゾーンである場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。後方の道路構造がスクールゾーンである場合、他車両40は、後退しにくいからである。スクールゾーンとは、登下校時、車両の乗り入れが禁止となる幼稚園・小学校の通学路指定区域のことである。また、優先度判断部16は、他車両40の後方の道路幅が自車両30の後方の道路幅より狭い場合は、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40の後方の道路幅が自車両30の後方の道路幅より狭い場合は、他車両40は後退しにくいからである。
【0036】
また、優先度判断部16は、図4に示すように、他車両40の後方の道路構造が待避場所である場合、この待避場所の交通量に基づいて優先度を判断してもよい。例えば、優先度判断部16は、他車両40の後方の待避場所における交通量が所定量以上である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。また、優先度判断部16は、自車両30の後方の道路構造が待避場所である場合、この待避場所の交通量に基づいて優先度を判断してもよい。例えば、優先度判断部16は、自車両30の後方の待避場所における交通量が所定量以下である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。
【0037】
また、優先度判断部16は、他車両情報取得部14や道路構造取得部15などから取得した情報に点数を付けて、点数が高いほうを優先度が高いと判断してもよい。例えば、自車両30が普通自動車であり、他車両40が大型自動車である場合、図5Aに示すように、自車両30には2点が加算され、他車両40には3点が加算される。また、自車両30の後方の道路構造が勾配路であり、他車両40の後方の道路構造が踏切である場合、図5Bに示すように、自車両30には1点が加算され、他車両40には3点が加算される。また、他車両40に初心運転者標識が掲示されている場合、図5Cに示すように、他車両40には1点が加算される。自車両30に加算された点数の合計は、3点であり、他車両40に加算された点数の合計は、7点である。よって、優先度判断部16は、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断する。このように、優先度判断部16は、他車両40及び自車両30の属性と、他車両40及び自車両30の周辺の情報とに重み付けすることによって、優先度を判断しうる。また、優先度判断部16は、他車両40の属性と、他車両40または自車両30の周辺の情報とに重みを付けることによって、優先度を判断してもよい。
【0038】
以上説明したように、優先度判断部16は、他車両情報取得部14や道路構造取得部15などから取得した情報を、単独で、あるいは組合わせて優先度を判断しうる。
【0039】
優先度判断部16が判断した優先度に基づいて、閾値変更部17は、閾値を変更する。閾値変更部17は、自車両30の優先度が、他車両40の優先度より低い場合、図3に示す第1閾値を第2閾値に変更する。なお、第2閾値は、例えば、他車両情報取得部14や道路構造取得部15などから取得した情報に重みを付け、重み付けされた情報をそれぞれ加算することにより求めることができる。第2閾値は、式1で表される。
【0040】
【数1】
ここで、a1~a7は係数である。b1は、他車両40の後方の交通量である。b2は、自車両30の後方の交通量である。b3は、他車両40の後方の道路構造である。b4は、自車両30の後方の道路構造である。b5は、自車両30の車種である。b6は、他車両40の車種である。b7は、他車両40に掲示されている標識である。b3~b7は、図5A~5Cに基づいて算出される。
【0041】
(車両挙動予測装置の一動作例)
次に、図6のフローチャートを参照して、車両挙動予測装置の一動作例を説明する。このフローチャートは、例えばイグニッションスイッチがオンされたときに開始する。
【0042】
ステップS101において、物体検出装置1は、複数の物体検出センサを用いて、自車両の周囲における物体(例えば、他車両)を検出する。ステップS103に処理が進み、検出統合部4は、複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各他車両に対して一つの検出結果を出力する。そして、物体追跡部5が、検出及び統合された各他車両を追跡する。
【0043】
ステップS105に処理が進み、自車位置推定装置2は、位置検出センサを用いて、自車両の絶対位置を計測する。ステップS107に処理が進み、地図取得装置3は、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。ステップS109に処理が進み、地図内位置演算部6は、ステップS105で計測された自車両の絶対位置、及びステップS107で取得された地図データから、地図上における自車両の位置及び姿勢を推定する。
【0044】
ステップS111に処理が進み、他車両が停車している場合(ステップS111でYes)、処理は、ステップS112に進む。一方、他車両が停車していない場合(ステップS111でNo)、処理は、ステップS101に戻る。
【0045】
ステップS112において、コントローラ100は、自車両が走行している道路が、他車両とすれ違うことが困難な狭路か否かを判断する。図2に示すように、自車両30が走行している道路が、停車している他車両40とすれ違うことが困難な狭路である場合(ステップS112でYes)、処理はステップS113に進む。一方、自車両30が走行している道路が、停車している他車両40とすれ違うことが困難な狭路でない場合(ステップS112でNo)、処理はステップS101に戻る。
【0046】
ステップS113において、停車時間計測部12は、他車両40が停車している時間を計測する。処理はステップS115に進み、道路構造取得部15は、自車両30及び他車両40の周囲の道路構造を取得する。処理はステップS117に進み、他車両情報取得部14は、他車両40の情報を取得する。処理はステップS119に進み、優先度判断部16は、他車両情報取得部14や道路構造取得部15などから取得した情報に基づいて、優先度を判断する。
【0047】
処理はステップS121に進み、閾値変更部17は、図3に示すように、自車両30の優先度が、他車両40の優先度より低い場合、第1閾値を第2閾値に変更する。処理は、ステップS123に進み、他車両40の停車時間が第1閾値より小さい場合(ステップS123でNo)、処理は待機する。一方、他車両40の停車時間が第1閾値以上となった場合(ステップS123でYes)、処理はステップS125に進み、車両制御部21は、回避動作を行う。
【0048】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る車両挙動予測装置によれば、以下の作用効果が得られる。
【0049】
車両挙動予測装置は、自車両30の優先度が、他車両40の優先度より低い場合、第1閾値を第2閾値に変更する(図3参照)。すなわち、車両挙動予測装置は、自車両30の優先度が低い場合は、自車両30の優先度が高い場合に比べて、他車両40が停車してから自車両30が他車両40を回避する動作を開始するまでの時間を短くする。すれ違いが困難な道路区間において、自車両30と他車両40とが情報を交換できない状況では、他車両40の停車に基づいて、他車両40の意図を把握することは難しい。そこで、車両挙動予測装置は、自車両30の優先度が低い場合は、自車両30の優先度が高い場合に比べて、他車両40が停車してから自車両30が他車両40を回避する動作を開始するまでの時間を短くする。これにより、車両挙動予測装置は、速やかな回避動作を行いうる。
【0050】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の属性に基づいて、優先度を判断してもよい。他車両40の属性によっては、他車両40が回避動作を行うことが難しい場合がある。車両挙動予測装置は、他車両40の属性に基づいて優先度を判断することにより、速やかな回避動作を行いうる。
【0051】
また、車両挙動予測装置は、他車両40または自車両30の周辺の情報に基づいて、優先度を判断してもよい。他車両40または自車両30の周辺の情報によっては、他車両40が回避動作を行うことが難しい場合がある。車両挙動予測装置は、他車両40または自車両30の周辺の情報に基づいて優先度を判断することにより、速やかな回避動作を行いうる。
【0052】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の属性と、他車両40または自車両30の周辺の情報とに重み付けすることによって、優先度を判断してもよい。図5A図5Cに示すように、それぞれの情報に重みを付けることにより、車両挙動予測装置は、様々な状況を考慮して優先度を判断しうる。なお、車両挙動予測装置は、他車両40及び自車両30の属性と、他車両40及び自車両30の周辺の情報とに重み付けすることによって、優先度を判断してもよい。
【0053】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の周囲の道路構造に基づいて、優先度を判断してもよい。他車両40の周囲の道路構造によっては、他車両40が回避動作を行うことが難しい場合がある。そこで、車両挙動予測装置は、他車両40の周囲の道路構造に基づいて優先度を判断する。そして、車両挙動予測装置は、自車両30の優先度が低い場合は、自車両30の優先度が高い場合に比べて、他車両40が停車してから自車両30が他車両40を回避する動作を開始するまでの時間を短くする。これにより、車両挙動予測装置は、速やかな回避動作を行いうる。
【0054】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の後方が勾配路である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40の後方が勾配路である場合、他車両40は、後方を確認しにくいため、他車両40が回避動作を行うことが難しい場合がある。他車両40の後方が勾配路である場合、車両挙動予測装置は、他車両40の優先度が高いと判断することにより、速やかな回避動作を行いうる。
【0055】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の後方が踏切である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40の後方が踏切である場合、他車両40は、回避動作を行うことが難しい場合がある。他車両40の後方が踏切である場合、車両挙動予測装置は、他車両40の優先度が高いと判断することにより、速やかな回避動作を行いうる。
【0056】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の後方がスクールゾーンである場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40の後方がスクールゾーンである場合、他車両40は、回避動作を行うことが難しい場合がある。他車両40の後方がスクールゾーンである場合、車両挙動予測装置は、他車両40の優先度が高いと判断することにより、速やかな回避動作を行いうる。
【0057】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の位置する道路幅が自車両30の位置する道路幅より狭い場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40の位置する道路幅が自車両30の位置する道路幅より狭い場合、他車両40は、回避動作を行うことが難しい場合がある。他車両40の位置する道路幅が自車両30の位置する道路幅より狭い場合、車両挙動予測装置は、他車両40の優先度が高いと判断することにより、速やかな回避動作を行いうる。
【0058】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の周囲の待避場所における交通量が所定量以上である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。これにより、車両挙動予測装置は、速やかな回避動作を行いうる。また、車両挙動予測装置は、自車両30の周囲の待避場所における交通量が所定量以下である場合、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。これにより、車両挙動予測装置は、速やかな回避動作を行いうる。
【0059】
また、車両挙動予測装置は、他車両40の車種に基づいて、優先度を判断してもよい。他車両40の車種によっては、他車両40が回避動作を行うことが難しい場合がある。そこで、車両挙動予測装置は、他車両40の車種に基づいて優先度を判断する。そして、車両挙動予測装置は、自車両30の優先度が低い場合は、自車両30の優先度が高い場合に比べて、他車両40が停車してから自車両30が他車両40を回避する動作を開始するまでの時間を短くする。これにより、車両挙動予測装置は、速やかな回避動作を行いうる。
【0060】
また、車両挙動予測装置は、他車両40に掲示された標識に基づいて、優先度を判断してもよい。他車両40に掲示された標識によっては、他車両40が回避動作を行うことが難しい場合がある。そこで、車両挙動予測装置は、他車両40に掲示された標識に基づいて優先度を判断する。そして、車両挙動予測装置は、自車両30の優先度が低い場合は、自車両30の優先度が高い場合に比べて、他車両40が停車してから自車両30が他車両40を回避する動作を開始するまでの時間を短くする。これにより、車両挙動予測装置は、速やかな回避動作を行いうる。
【0061】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。また、車両挙動予測装置は、コンピュータの機能を改善しうる。
【0062】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0063】
例えば、車両挙動予測装置は、他車両40の停車位置に基づいて優先度を判断してもよい。他車両40が道路幅の中央に停車している場合、進路を譲らない意図が推定される。一方、他車両40が道路幅の端に停車している場合、進路を譲る意図が推定される。そこで、車両挙動予測装置は、道路幅の中央の位置から、他車両40の車幅方向における中央の位置まで距離を取得する。そして、車両挙動予測装置は、この距離が所定値以下の場合に、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。
【0064】
また、他車両40が停車しているシーンにおいて、車両挙動予測装置は、自車両30を前進させ、この前進に対する他車両40の反応に基づいて、優先度を判断してもよい。自車両30の前進に対し、他車両40が停車を続ける場合、車両挙動予測装置は、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。
【0065】
なお、図3では、他車両40の停車時間と閾値の関係を線形(直線)として説明したが、線形に限定されない。他車両40の停車時間と閾値の関係は、非線形でもよい。
【0066】
また、車両挙動予測装置は、停車している他車両40が進む経路を予測し、予測した経路を回避する動作をしてもよい。
【0067】
また、車両挙動予測装置は、他車両40が自車両30より先に狭路に進入した場合は、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。他車両40が自車両30より先に狭路に進入した場合、他車両40の方が自車両30より狭路における進行距離が長い可能性がある。このような場合、自車両30が早期に回避する方が交通流へ与える影響は最小になりうる。
【0068】
また、車両挙動予測装置は、自車両30の後方に交差路が存在し、かつ、他車両40のターンシグナルが点灯している場合は、他車両40の優先度が自車両30の優先度より高いと判断してもよい。自車両30が早期に回避することにより、他車両40はすぐに曲がることができ、その後に自車両30もスムーズに前進しうる。
【符号の説明】
【0069】
1 物体検出装置
2 自車位置推定装置
3 地図取得装置
4 検出統合部
5 物体追跡部
6 地図内位置演算部
10 挙動予測部
11 狭路情報取得部
12 停車時間計測部
13 待避場所取得部
14 他車両情報取得部
15 道路構造取得部
16 優先度判断部
17 閾値変更部
20 経路生成部
21 車両制御部
100 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6