(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両の走行制御方法及び走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/10 20120101AFI20220928BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20220928BHJP
G08G 1/16 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W60/00
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020547774
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2018036143
(87)【国際公開番号】W WO2020065892
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰久
(72)【発明者】
【氏名】沖 孝彦
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200812(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136456(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/078713(WO,A1)
【文献】特開2016-071513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
車両の走行方向を自動的に変更す
る自動走行制御を実行する前に、前記自動走行制御によって変更する走行方向を示す第1走行制御変更情報をドライバーに提示し、
前記第1走行制御変更情報の提示に応じて行われた前記ドライバーによるジェスチャーを検出し、
予め登録されているジェスチャーを参照し、前記検出されたジェスチャーが、走行方向の指示を含む承諾ジェスチャーか否かを判定し、
前記ジェスチャーが前記承諾ジェスチャーと判定された場合、前記承諾ジェスチャーで示された走行方向と、前記自動走行制御によって変更する走行方向とが一致するか否かを判定し、
前記承諾ジェスチャーで示された走行方向と、前記自動走行制御によって変更する走行方向とが一致すると前記自動走行制御を実行する車両の走行制御方法
において、
前記第1走行制御変更情報の提示を終了したのち、
前記第1走行制御変更情報を提示してから所定時間、前記ジェスチャーが検出されなかった場合、前記第1走行制御変更情報を再提示する車両の走行制御方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記第1走行制御変更情報を再提示し
たのち、
前記再提示が所定回数行われたか否かを判定し、
前記再提示が所定回数行われても、ドライバーからの応答がない場合には、前記自動走行制御の実行を中止する請求項1に記載の車両の走行制御方法。
【請求項3】
前記承諾ジェスチャーとして、複数種類のジェスチャーが
前記コンピュータに登録されており、
前記コンピュータは、
前記ドライバーによるジェスチャーを検出した場合に、登録されている前記複数種類のジェスチャーを参照し、前記検出されたジェスチャーが走行方向の指示を含むいずれかの承諾ジェスチャーであるか否かの判定を行う請求項1
又は2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記検出されたジェスチャーが前記承諾ジェスチャーであるか否かが判定できない場合に、前記ドライバーに前記承諾ジェスチャーの種類を指定し、かつ、指定した前記承諾ジェスチャーの実行を促す第2走行制御変更情報を提示する請求項1~
3のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、
前記ドライバーによるジェスチャーを検出した場合に、予め登録されているジェスチャーを参照し、前記検出されたジェスチャーが、走行方向の指示を含む承諾ジェスチャーと、前記自動走行制御を承諾しないことを示すキャンセルジェスチャーのいずれであるかを判定し、
前記検出されたジェスチャーの判定結果と、前記判定結果を変更するか否かを示す第3走行制御変更情報を提示し、
前記第3走行制御変更情報の提示に応じて前記ドライバーがジェスチャーを行わなかった場合には、前記判定結果を正規の判定結果として特定し、
前記第3走行制御変更情報の提示に応じて前記ドライバーがジェスチャーを行った場合には、前記判定結果とは逆の判定結果を正規の判定結果として特定する請求項1~
4のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項6】
前記コンピュータに
登録されている前記ジェスチャーは、追加又は変更が可能である請求項1~
5のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項7】
前記コンピュータは、
前記走行方向の変更の逼迫度が、予め設定された閾値以上か否かを判定し、
前記逼迫度が前記閾値以上である場合には、前記承諾ジェスチャーの判定レベルを、前記逼迫度が前記閾値未満の場合の判定レベルよりも下げる請求項1~
6のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項8】
前記コンピュータは、
前記承諾ジェスチャーとして、前記ドライバーの頭部の動きを検出し、
前記頭部の動きによって示された走行方向と、前記自動走行制御によって変更する走行方向とが一致するか否かを判定する請求項1~
7のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項9】
前記コンピュータは、
前記承諾ジェスチャーとして、前記ドライバーの視線の方向を検出し、
前記視線の方向によって示された走行方向と、前記自動走行制御によって変更する走行方向とが一致するか否かを判定する請求項1~
7のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項10】
前記コンピュータは、
前記承諾ジェスチャーとして、前記ドライバーの手又は腕の少なくとも一方の動きを検出し、
前記手又は腕の少なくとも一方の動きによって示された走行方向と、前記自動走行制御によって変更する走行方向とが一致するか否かを判定する請求項1~
7のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項11】
車両の走行方向を自動的に変更する自動走行制御を実行する車両の走行制御装置において、
前記走行制御装置は、
前記自動走行制御を実行する前に、前記自動走行制御によって変更する走行方向を示す第1走行制御変更情報をドライバーに提示し、
前記第1走行制御変更情報の提示に応じて行われた前記ドライバーによるジェスチャーを検出し、
予め登録されているジェスチャーを参照し、前記検出されたジェスチャーが、走行方向の指示を含む承諾ジェスチャーか否かを判定し、
前記ジェスチャーが前記承諾ジェスチャーと判定された場合、前記承諾ジェスチャーで示された走行方向と、前記自動走行制御によって変更する走行方向とが一致するか否かを判定し、
前記承諾ジェスチャーで示された走行方向と、前記自動走行制御によって変更する走行方向とが一致すると前記自動走行制御を実行
し、
前記第1走行制御変更情報の提示を終了したのち、前記第1走行制御変更情報を提示してから所定時間、前記ジェスチャーが検出されなかった場合、前記第1走行制御変更情報を再提示する車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車線の変更制御、右折走行制御若しくは左折走行制御、本線道路からの離脱走行制御若しくは本線道路への進入走行制御などを含む車両の走行制御方法及び走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動で車線変更する場合、ドライバー自身に安全確認を促すことを目的として、ドライバーがウィンカーレバーを操作して車線変更の意思を示し、車線変更が可能であると判断されたときに、ドライバーの頭部の撮像画像をもとに顔向き又は視線方向のいずれかにより、ドライバーが車線変更の安全確認動作を実施したか否かを判定し、これを条件に自動で車線変更を行う走行支援装置が知られている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、走行支援装置により車線変更の安全確認ができ、自動で車線変更を行なっても問題がない場合でも、ドライバーは車線変更を承諾する意思表示と、安全確認動作とを行なわなくてはならないので、煩わしいという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ドライバーが煩わしさを感じずに車線変更を含む走行方向の変更の承諾を行うことができる走行制御方法及び走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の走行方向を自動的に変更する自動走行制御を実行する前に、第1走行制御変更情報をドライバーに提示し、ドライバーによるジェスチャーが走行方向の指示を含む承諾ジェスチャーか否かを判定し、承諾ジェスチャーであった場合に、第1走行制御変更情報で示された自動走行制御によって変更する走行方向と、承諾ジェスチャーで示された走行方向とが一致するか否かを判定し、一致すると自動走行制御を実行することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライバーは、承諾ジェスチャーにより走行方向を示すだけで自動走行制御を実行することができるので、煩わしさを感じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る車両の走行制御装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】走行シーンの判定に用いられるテーブルの一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車線変更のシーンを示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車内カメラの設置状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るジェスチャーテーブルの一例を示す図である。
【
図6A】本発明の実施形態に係る走行制御の変更前に提示される第1車線制御変更情報を示す図である。
【
図6B】本発明の実施形態に係る承諾ジェスチャーの一例を示す図である。
【
図6C】本発明の実施形態に係るジェスチャーの検出・判定誤に提示される第3走行制御変更情報を示す図である。
【
図6D】本発明の実施形態に係るジェスチャーが検出できない場合に提示される第2走行制御変更情報を示す図である。
【
図7A】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更制御処理を示すフローチャート(その1)である。
【
図7B】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更制御処理を示すフローチャート(その2)である。
【
図7C】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更制御処理を示すフローチャート(その3)である。
【
図7D】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更制御処理を示すフローチャート(その4)である。
【
図7E】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更制御処理を示すフローチャート(その5)である。
【
図8A】本発明に係る車両の走行制御装置の対象範囲の検出方法を説明するための平面図(その1)である。
【
図8B】本発明に係る車両の走行制御装置の対象範囲の検出方法を説明するための平面図(その2)である。
【
図8C】本発明に係る車両の走行制御装置の対象範囲の検出方法を説明するための平面図(その3)である。
【
図8D】本発明に係る車両の走行制御装置の対象範囲の検出方法を説明するための平面図(その4)である。
【
図8E】本発明に係る車両の走行制御装置の対象範囲の検出方法を説明するための平面図(その5)である。
【
図8F】本発明に係る車両の走行制御装置の対象範囲の検出方法を説明するための平面図(その6)である。
【
図9】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更の目標位置の設定方法を説明するための平面図である。
【
図10A】本発明に係る車両の走行制御装置の所要時間後の他車両の位置を予測する方法を説明するための平面図(その1)である。
【
図10B】本発明に係る車両の走行制御装置の所要時間後の他車両の位置を予測する方法を説明するための平面図(その2)である。
【
図11A】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更の可否を判断する方法を説明するための平面図(その1)である。
【
図11B】本発明に係る車両の走行制御装置の車線変更の可否を判断する方法を説明するための平面図(その2)である。
【
図12】対象レーンマークと自車両との幅員方向における位置関係を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る車両の走行制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の車両の走行制御装置1は、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一実施の形態でもある。
図1に示すように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1は、センサ11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、車載機器14と、提示装置15と、入力装置16と、通信装置17と、駆動制御装置18と、制御装置19とを備える。これらの装置は、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0010】
センサ11は、自車両の走行状態を検出する。たとえば、センサ11として、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の左右の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー、自車両の車速を検出する車速センサ、およびドライバーを撮像する車内カメラなどが挙げられる。なお、センサ11として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ11の検出結果は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
【0011】
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成され、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12により検出された対象車両の位置情報は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
【0012】
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む地図情報を記憶している。具体的には、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報が、地図情報とともに記憶されている。地図データベースに格納された地図情報は、制御装置19により参照可能となっている。
【0013】
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーにより操作されることで動作する。このような車載機器としては、ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、オーディオ装置、エアーコンディショナー、ハンズフリースイッチ、パワーウィンドウ、ワイパー、ライト、方向指示器、クラクション、特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14がドライバーにより操作された場合に、その情報が制御装置19に出力される。
【0014】
提示装置15は、たとえば、ナビゲーション装置が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、オーディオ装置が備えるスピーカー、および振動体が埋設された座席シート装置などの装置である。提示装置15は、制御装置19の制御に従って、後述する提示情報および走行制御変更情報をドライバーに報知する。なお、走行制御変更情報には、車両の車線変更制御に関する情報、車両の右折走行制御若しくは左折走行制御に関する情報、又は、車両の本線道路からの離脱走行制御若しくは本線道路への進入走行制御に関する情報などが含まれる。
【0015】
入力装置16は、たとえば、ドライバーの手動操作による入力が可能なダイヤルスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置16を操作することで、提示装置15により提示された提示情報に対する応答情報を入力することができる。たとえば、本実施形態では、方向指示器やその他の車載機器14のスイッチを入力装置16として用いることもでき、制御装置19が自動で走行制御変更を行うか否かの問い合わせに対して、ドライバーが方向指示器のスイッチをオンにすることで、走行制御変更の承諾乃至許可を入力する構成とすることもできる。なお、入力装置16により入力された応答情報は、制御装置19に出力される。
【0016】
通信装置17は、自車両の外部の通信機器と通信を行う。たとえば、通信装置17は、他車両との間で車々間通信を行ったり、路肩に設置された機器との間で路車間通信を行ったり、又は車両の外部に設置された情報サーバとの間で無線通信を行ったりすることで、各種の情報を外部機器から取得することができる。なお、通信装置17により取得された情報は、制御装置19に出力される。
【0017】
駆動制御装置18は、自車両の走行を制御する。たとえば、駆動制御装置18は、自車両が先行車両に追従走行制御する場合には、自車両と先行車両との車間距離が一定距離となるように、加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作を制御する。また、自車両が走行する車線(以下、自車線ともいう。)のレーンマークを検出し、自車両が自車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御を行う場合、自車両が先行車両の追い越しや走行方向の変更などの車線変更制御を行う場合、交差点などにおいて右折又は左折する走行制御を行う場合には、加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作並びにブレーキ動作に加えて、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。なお、駆動制御装置18は、後述する制御装置19の指示により自車両の走行を制御する。また、駆動制御装置18による走行制御方法として、その他の周知の方法を用いることもできる。
【0018】
制御装置19は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0019】
制御装置19は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行状態に関する情報を取得する走行情報取得機能と、自車両の走行シーンを判定する走行シーン判定機能と、自車両の走行を制御する走行制御機能と、車線変更の可否を判断し、車線変更を制御する車線変更制御機能と、車線変更制御による自車両の走行動作に関する車線変更情報をドライバーに提示する走行制御変更情報提示機能と、提示された車線変更情報に対してドライバーが当該車線変更を承諾したか否かを確認する承諾確認機能と、走行方向の変更に対する逼迫度を判定する逼迫度判定機能と、を実現する。以下、制御装置19が備える各機能について説明する。
【0020】
制御装置19の走行情報取得機能は、自車両の走行状態に関する走行情報を取得する機能である。たとえば、制御装置19は、走行情報取得機能により、センサ11に含まれる前方カメラおよび後方カメラにより撮像された車両外部の画像情報や、前方レーダー、後方レーダー、および側方レーダーによる検出結果を、走行情報として取得する。また、制御装置19は、走行情報取得機能により、センサ11に含まれる車速センサにより検出された自車両の車速情報や、車内カメラにより撮像されたドライバーの顔の画像情報も走行情報として取得する。
【0021】
さらに、制御装置19は、走行情報取得機能により、自車両の現在位置の情報を走行情報として自車位置検出装置12から取得する。また、制御装置19は、走行情報取得機能により、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報を走行情報として地図データベース13から取得する。加えて、制御装置19は、走行情報取得機能により、ドライバーによる車載機器14の操作情報を、走行情報として車載機器14から取得する。
【0022】
制御装置19の走行シーン判定機能は、制御装置19のROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両が走行している走行シーンを判定する機能である。
図2は、走行シーンの判定に用いられるテーブルの一例を示す図である。
図2に示すように、テーブルには、車線変更に適した走行シーンとその判定条件が、走行シーンごとに記憶されている。制御装置19は、走行シーン判定機能により、
図2に示すテーブルを参照して、自車両の走行シーンが、車線変更に適した走行シーンであるか否かを判定する。
【0023】
たとえば、
図2に示す例では、「先行車両への追いつきシーン」の判定条件として、「前方に先行車両が存在」、「先行車両の車速<自車両の設定車速」、「先行車両への到達が所定時間以内」、および「車線変更の方向が車線変更禁止条件になっていない」の4つの条件が設定されている。制御装置19は、走行シーン判定機能により、たとえば、センサ11に含まれる前方カメラや前方レーダーによる検出結果、車速センサにより検出された自車両の車速、および自車位置検出装置12による自車両の位置情報などに基づいて、自車両が上記条件を満たすか否かを判断し、上記条件を満たす場合に、自車両が「先行車両への追いつきシーン」であると判定する。同様に、制御装置19は、走行シーン判定機能により、
図2に示すシーン判定テーブルに登録された全ての走行シーンについて判定条件を満たすか否かを判定する。
【0024】
なお、車線変更禁止条件としては、たとえば、「車線変更禁止区域を走行している」、「車線変更方向に障害物が存在する」、「センターライン(道路中央線)を跨ぐごととなる」、および「路肩に入る、または、道路端を跨ぐこととなる」などを挙げることができる。また、「緊急退避シーン」において路肩などでの緊急停車を認めている道路では、「緊急退避シーン」においては、「路肩に入る、または、道路端を跨ぐこととなる」との条件を許容することもできる。なお、
図2に示すテーブルのうち、車線変更の必要度、制限時間、および車線変更の方向については後述する。
【0025】
また、制御装置19は、走行シーン判定機能により、自車両の走行シーンが複数の走行シーンに該当する場合には、車線変更の必要度が高い方の走行シーンを、自車両の走行シーンとして判定する。たとえば、
図2に示すテーブルにおいて、自車両の走行シーンが、「先行車両の追いつきシーン」および「目的地への車線乗換シーン」に該当し、「先行車両の追いつきシーン」における車線変更の必要度X1が、「目的地への車線乗換シーン」における車線変更の必要度X8よりも低いものとする(X1<X8)。この場合には、制御装置19は、走行シーン判定機能により、車線変更の必要度がより高い「目的地への車線乗換シーン」を、自車両の走行シーンとして判定する。なお、「目的地への車線乗換シーン」とは、複数車線を有する道路の分岐地点や出口の手前などで、現在自車両が走行している車線から、目的とする分岐方向又は出口方向の車線へ乗り換えるために車線変更するシーンをいう。
【0026】
制御装置19の走行制御機能は、自車両の走行を制御する機能である。たとえば、制御装置19は、走行制御機能により、センサ11の検出結果に基づいて、自車両が走行する自車線のレーンマークを検出し、自車両が自車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御を行う。この場合、制御装置19は、走行制御機能により、自車両が適切な走行位置を走行するように、駆動制御装置18にステアリングアクチュエータなどの動作を制御させる。また、制御装置19は、走行制御機能により、先行車両と一定の車間距離を空けて、先行車両に自動で追従する追従走行制御を行うこともできる。この追従走行制御を行う場合、制御装置19は、走行制御機能により、自車両と先行車両とが一定の車間距離で走行するように、駆動制御装置18に制御信号を出力し、エンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御させる。なお、以下においては、レーンキープ制御、追従走行制御、右左折走行制御、車線変更制御を含めて、自動走行制御として説明する。
【0027】
制御装置19の車線変更制御機能は、自車両の走行シーンや、自車両の周辺に存在する障害物の情報に基づいて、車線変更を行うか否かを判断する機能である。また、車線変更制御機能は、車線変更を行うと判断した場合には、駆動制御装置18に、エンジンやブレーキなどの駆動機構の動作及びステアリングアクチュエータの動作を制御させる機能でもある。さらに、車線変更制御機能は、自車両の走行状態やドライバーの状態に基づいて、車線変更制御を開始する開始タイミングを設定し、設定した開始タイミングに従って車線変更制御を実行する機能でもある。なお、車線変更制御機能による車線変更制御の詳細については後述する。
【0028】
制御装置19の走行制御変更情報提示機能は、レーンキープ制御、追従走行制御、右左折走行制御、車線変更制御などを含む自動走行制御による自車両の走行動作に関する変更情報を、提示装置15を介してドライバーに提示する機能である。たとえば、レーンキープ制御を実行中に、前方に道路の分岐地点が存在したり、自動車専用道路の出口又はサービスエリアが存在したりすると、自車両の走行方向を変更して車線変更が必要になることがある。また、先行車両の追従走行制御を実行中に、先行車両が車線変更をするとこれにしたがって自車両も車線変更することがある。また、目的地への経路の途中に交差点などで右折又は左折する走行方向の変更が必要になることがある。こうした走行方向の変更を自動走行制御にて実行する場合には、走行方向の変更が可能か否かを判断するとともに、走行方向の変更が可能な場合にはドライバー自身による安全確認を促すために、制御装置19は、走行制御変更情報提示機能により走行制御の走行方向の変更情報をドライバーに提示する。走行制御変更情報の提示タイミングは、ドライバー自身による安全確認を目的とするので、少なくとも走行制御の走行方向の変更の開始前であればよい。
【0029】
ここで、走行制御の走行方向の変更の開始前にドライバーに提示される走行制御変更情報の一例を説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る車線変更のシーンを示す平面図であって、左側通行の片側3車線L1,L2,L3の道路において、自車両V
0が前方を走行中の他車両V
1を追い越すシーンである。
図3の左図は、現在自車両V
0が走行中の車線L2から隣接車線L3に車線変更を実行する車線変更制御の例を示す平面図であり、
図3の右図は、他車両V
1を追い越してから再び車線L2に戻るための車線変更制御の例を示す平面図である。
【0030】
本実施形態では、複数回の車線変更を行う場合において、1回目の車線変更制御を行う前に、車線変更を行う旨の第1走行制御変更情報Td1(
図6A参照)を提示装置15に提示する。また、この提示に対してドライバーが承諾する旨の意思を示した場合には、1回目の車線変更を実行したのち、2回目の車線変更制御を行う前に、2回目の車線変更を行う旨の第1走行制御変更情報Td1を提示装置15に提示する。
図3に示す例では2回の車線変更であるが、3回以上の車線変更を行う場合には、同様にして、次の車線変更を行う前に、その車線変更を行う旨の第1走行制御変更情報Td1を提示装置15に提示して、ドライバーの承諾を確認する。このように、本実施形態の制御装置19は、走行制御変更情報提示機能により、1回の車線変更を行う度にドライバー自身による安全確認を促す。
【0031】
なお、走行制御変更情報提示機能による提示装置15への提示形態は、提示装置15がディスプレイを備える場合には、画像や言語などを含む視覚パターンの表示のほか、提示装置15がスピーカーを備える場合には、車線変更制御により自車両が移動する幅員方向の向きを含む走行制御変更情報(たとえば左方向または右方向の車線に車線変更する旨のガイダンス情報)を、聴覚情報(音声や音)としてドライバーに提示してもよい。また、提示装置15がインストルメントパネルなどに設置された1または複数の警告ランプを備える場合には、特定の警告ランプを特定の提示態様で点灯させることで、車線変更制御により自車両が移動する幅員方向の向きを含む走行制御変更情報を、ドライバーに提示してもよい。さらに、提示装置15が複数の振動体を埋設した座席シート装置を備える場合には、特定の振動体を特定の提示態様で振動させることで、車線変更制御により自車両が移動する幅員方向の向きを含む走行制御変更情報を、ドライバーに提示してもよい。
【0032】
このように、走行制御変更情報を、視覚情報としてディスプレイに表示することに代えて、又は視覚情報としてディスプレイに表示することに加え、音声や音などの聴覚情報、警告ランプの表示による視覚情報、若しくは振動による触覚情報として、ドライバーに提示することにより、走行制御変更情報をより直感的にドライバーに把握させることができる。なお、本実施形態の車両の走行制御装置1では、提示装置15に提示される走行制御変更情報に対し、ドライバーが承諾するための動作について煩わしさを感じさせないようにするために、1回の走行制御の走行方向の変更を実行する毎のドライバーの承諾動作を、走行制御変更情報の提示との関係において、次のように設定している。
【0033】
制御装置19の承諾確認機能は、走行制御変更情報提示機能により提示された第1走行制御変更情報Td1に対し、ドライバーが当該走行制御の変更を承諾したか否かを確認する機能である。ドライバーによる走行制御の走行方向の変更の承諾は、ドライバーによる方向性を伴うジェスチャー、すなわち、車線変更で移動する幅員方向の向きや右左折方向など、変更される走行方向の指示を含む承諾ジェスチャーによって示される。なお、第1走行制御変更情報Td1に対して行われる承諾ジェスチャーは、本発明の第1ジェスチャーに相当する。
【0034】
図4示すように、例えば、車両V
0のダッシュボードV
0aの上には、運転席V
0bに着座したドライバーDの上半身、頭部及び顔を撮影し、撮影した画像を制御装置19に入力する車内カメラ111が設置されている。ドライバーDは、提示装置15により提示された第1走行制御変更情報Td1に対し、これに承諾する場合には、変更される走行方向の指示を含む承諾ジェスチャーを行う。
【0035】
制御装置19の承諾確認機能は、車内カメラ111から入力された画像を画像認識処理などにより解析し、ドライバーDにより行われた承諾ジェスチャーを検出する。そして、検出された承諾ジェスチャーにより示された走行方向と、第1走行制御変更情報Td1で提示された変更先の走行方向とが一致するか否か判定する。制御装置19の承諾確認機能は、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向と、承諾ジェスチャーで示された走行方向とが一致する場合には、走行制御の走行方向の変更が承諾されたものと判定する。
【0036】
制御装置19は、承諾確認機能により、
図5に示すジェスチャーテーブルを参照して、ドライバーDの承諾ジェスチャーを検出・判定する。ジェスチャーテーブルは、制御装置19のROMに記憶されている。ジェスチャーテーブルには、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向の変更に対して承諾を示すための承諾ジェスチャーと、承諾しない場合あるいは取り消す場合のキャンセルジェスチャーとが登録されている。承諾ジェスチャーには、例えば、「走行方向へ首を振る」、「走行方向へ顔を向ける」、「走行方向へ視線を移動する」、「走行方向を指差す」、「走行方向の手又は腕を挙げる」及び「走行方向の手又は腕を振る」など、複数種類のジェスチャーが登録されている。なお、首を振る動作には、首を回す動作や、首を傾ける動作などを含めてもよい。
【0037】
また、ジェスチャーテーブルのキャンセルジェスチャーには、「首を左右に振る」、「両手又は両腕を挙げる」、「手を左右に振る」及び「両手又は両腕でXを表す」など、複数種類のジェスチャーが登録されている。なお、承諾、非承諾などを表すジェスチャーは、国や地域によって異なるため、車両V0が走行する国または地域に応じて、ジェスチャーテーブルに登録されているジェスチャーの内容を適宜追加、変更できるようにすることが好ましい。
【0038】
このように、ジェスチャーテーブルに複数種類の承諾ジェスチャーを登録しておき、ドライバーDは、ジェスチャーテーブルに登録されている複数種類の承諾ジェスチャーから任意の承諾ジェスチャーのいずれか一つを示せば、そのジェスチャーを検出して、承諾したか否か判断するようにしているので、ドライバーDは、最も行いやすい承諾ジェスチャーを示すだけでよく、承諾動作に伴う煩わしさを解消することができる。
【0039】
図6A~
図6Dは、走行制御変更情報提示機能により提示される走行制御変更情報と、走行制御変更情報に対するドライバーDの承諾ジェスチャーの一例とを示す図である。なお、上述したとおり、本実施形態の第1走行制御変更情報には、車線変更情報のほかにも、右左折走行制御に関する変更情報や、本線道路からの離脱走行制御若しくは本線道路への進入走行制御に関する変更情報が含まれるが、
図6A~
図6Dにおいては、
図3に示す2回の車線変更制御のうち、1回目の車線変更を実行した例を示すものとする。
【0040】
図6Aは、
図3に示すように中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に提示装置15に提示される第1走行制御変更情報Td1を示す。本例では、中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に、
図6Aに示すように、提示装置15のディスプレイに自車両V
0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データが表示され、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V
0の車線変更先と、OKマーク及びCancelマークと、が表示される。OKマーク及びCancelマークは、ドライバーDに第1走行制御変更情報Td1に対する選択肢を示すものであり、
図6Aでは、どちらも非選択状態であることを表すように薄い濃度で表示されている。また、
図6Aでは、この表示と共に、「右方向への車線変更を承諾しますか? ジェスチャーで指示してください」といったメッセージが、音声データによりスピーカーから出力される。なお、このメッセージは、ディスプレイに文字データとして表示してもよい。
【0041】
ドライバーは、
図6Aに示す第1走行制御変更情報Td1に対して、周囲の状況などを自分で目視確認し、車線変更してもよいと判断した場合には、
図5のジェスチャーテーブルに登録されている複数の承諾ジェスチャーのうちから選択した任意のジェスチャーを実行する。
図6Bは、右方向への車線変更時にドライバーDによって行われる、変更される走行方向の指示を含む承諾ジェスチャーの一例を示す。同図(A)は、「走行方向へ首を振る」あるいは「走行方向へ顔を向ける」、承諾ジェスチャーを示している。同図(B)は、「走行方向へ視線を移動する」、承諾ジェスチャーを示している。同図(C)は、左手で「走行方向を指差す」承諾ジェスチャーを示している。同図(D)は、右手で「走行方向の手又は腕を挙げる」、あるいは「走行方向の手又は腕を振る」、承諾ジェスチャーを示している。このように、ドライバーDは、変更される走行方向の指示を含む承諾ジェスチャー方向性を伴うジェスチャーを行うことにより、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向の変更に承諾することが可能である。
【0042】
制御装置19は、承諾確認機能により、ドライバーDの承諾ジェスチャーを検出し、検出された承諾ジェスチャーで示される走行方向と、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向とが一致した場合には、
図6Cの左図に示すように、ジェスチャーの判定結果を示す第3走行制御変更情報Td3が、提示装置15に提示される。第3走行制御変更情報Td3では、ドライバーDにより車線変更が承諾されたことを示すために、OKマークの濃度が濃く表示される。また、
図6Cの左図では、この表示と共に、「右方向への車線変更が承諾されました 変更する場合にはキャンセルジェスチャーを行ってください」といったメッセージが、音声データによりスピーカーから出力される。なお、このメッセージは、ディスプレイに文字データとして表示してもよい。
【0043】
上記とは逆に、ドライバーDにより、第1走行制御変更情報に対してキャンセルジェスチャーが行われた場合には、
図6Cの右図に示すように、第3走行制御変更情報Td3には、Cancelマークの濃度が濃く表示される。また、
図6Cの右図では、この表示と共に、「右方向への車線変更がキャンセルされました 変更する場合にはキャンセルジェスチャーを手行ってください」といったメッセージが、音声データによりスピーカーから出力される。なお、このメッセージは、ディスプレイに文字データとして表示してもよい。
【0044】
第3走行制御変更情報Td3で提示された判定結果を変更する場合、ドライバーDは、
図5のジェスチャーテーブルに登録されている複数種類のキャンセルジェスチャーから選択した任意のキャンセルジェスチャーを行う。このキャンセルジェスチャーは、車内カメラ111により撮影され、制御装置19の承諾確認機能により解析されて、検出・判定される。
【0045】
ドライバーDが、第3走行制御変更情報Td3に対してキャンセルジェスチャーを行わない場合には、制御装置19の承諾確認機能は、第3走行制御変更情報Td3で提示した判定結果を、正規の判定結果として特定する。すなわち、第3走行制御変更情報Td3に、ドライバーDが車線変更に承諾する旨の判定結果が提示されている場合には、その判定結果が正規の判定結果となる。また、第3走行制御変更情報Td3に、車線変更を中止する旨の判定結果が提示されている場合には、その判定結果が正規の判定結果となる。
【0046】
これに対し、ドライバーDが、第3走行制御変更情報Td3に対してキャンセルジェスチャーを行った場合には、制御装置19の承諾確認機能は、第3走行制御変更情報Td3で提示した判定結果とは逆の判定結果を正規の判定結果として特定する。すなわち、第3走行制御変更情報Td3に、ドライバーDが車線変更に承諾する旨の判定結果が提示されている場合には、車線変更を中止する旨の判定結果が正規の判定結果となる。また、第3走行制御変更情報Td3に、車線変更を中止する旨の判定結果が提示されている場合には、車線変更を承諾する旨の判定結果が正規の判定結果となる。
【0047】
このように、第1走行制御変更情報Td1に対するドライバーDのジェスチャーの検出・判定後に、判定結果を示す第3走行制御変更情報Td3を提示し、ドライバーDに再確認を促すのは、同じジェスチャーを行った場合でも、ドライバーDのジェスチャーに対する理解や認識、体格や性別などによって動作が異なる可能性があり、そのような場合に、制御装置19の承諾確認機能によって、ジェスチャーを誤検出する可能性があるからである。そのため、第1走行制御変更情報Td1に対するドライバーDのジェスチャーの検出・判定後に、第3走行制御変更情報Td3を提示し、キャンセルジェスチャーを再受付して判定結果を変更できるようにしている。なお、第3走行制御変更情報Td3に対して行われるキャンセルジェスチャーは、本発明の第2ジェスチャーに相当する。
【0048】
上述したように、ドライバーDのジェスチャーに対する理解や認識によっては、ドライバーDが同じジェスチャーを何度行っても誤検出する可能性がある。そのため、ドライバーDがジェスチャーを行っていることが検出できている場合でも、そのジェスチャーの内容や、走行方向の指示などが識別できない場合には、ドライバーDにジェスチャーの種類を指定して、ジェスチャーの再実行を促すことが好ましい。本実施形態では、ドライバーDのジェスチャーから承諾又は非承諾が識別できない場合には、
図6Dに示すように、ジェスチャーの種類を指定して再実行を促すために、第2走行制御変更情報Td2を提示装置15に提示し、「ジェスチャーが検出できませんでした 右方向への車線変更を承諾する場合には右手を挙げて下さい」といったメッセージを音声データによりスピーカーから出力する。また、ジェスチャーの再実行を促すための第2走行制御変更情報Td2であることを明確にするために、提示装置15のディスプレイに文字データとしても同メッセージを表示してもよい。
【0049】
このように、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向と、検出された承諾ジェスチャーで示された走行方向とが一致する場合に、走行制御の変更がドライバーDによって承諾されたものと判定することにより、ドライバーDが走行方向の変更の承諾するための動作に対して煩わしく感じるのを抑制することができる。すなわち、従来技術では、自動で車線変更を行なっても問題がない場合でも、ドライバーDは、ウィンカーレバーの操作によって車線変更の意思を表示し、その後に顔の向きや視線の向きを予め決められた通りに動かして安全確認をしなければならないため、承諾するための動作は非常に煩わしいものであった。これに対し、本実施形態では、走行方向を示す承諾ジェスチャーのみで承諾を行うことができるので、ドライバーの煩わしさを解消することができる。また、単なるジェスチャーではなく、走行方向を示すジェスチャーを用いることで、ドライバーDに対し、走行方向の変更に対して一定以上の意識乃至注意力を維持させることができる。
【0050】
なお、本実施形態の車両の走行制御装置1においては、原則として、ドライバーDのジェスチャーの検出・判定に、所定の判定閾値を用いるが、走行方向の変更に対する逼迫度度が、予め設定された閾値以上である場合には、ジェスチャーの判定閾値を低くして、例えば、継続時間が短いジェスチャーや、動作が小さいジェスチャーなど、多少不明確なジェスチャーであっても検出・判定できるようにしている。
図1に示す制御装置19の逼迫度判定機能は、走行方向の変更に対する逼迫度が、予め設定された閾値以上か否かを判定し、逼迫度がその閾値以上である場合には、ジェスチャーの判定閾値を通常レベルより低くなるように設定し、多少不明確なジェスチャーであっても検出・判定できるようにする機能である。なお、ジェスチャーの判定閾値とは、例えば、右手を挙げる承諾ジェスチャーに用いられる通常レベルの判定閾値において、右手が胸よりも高い位置まで挙げられたときに、ドライバーDが承諾していると判定するように設定されているとする。本実施形態では、この判定閾値を通常レベルよりも下げることにより、右手が胸よりも低い位置までしか挙がっていない場合でもドライバーDが承諾していると判定する。
【0051】
なお、走行方向の変更に対する逼迫度が高い場合とは、たとえばインターチェンジの分岐地点、サービスエリアへの進入地点、自動車専用道路の出口地点までの距離が短くて車両の走行制御の移行まで充分な時間がない場合のほか、悪天候のようにセンサ11による自車両の周囲の検出精度が低くなることが少なくない環境であって、車両の走行制御装置1による自動走行制御の信頼性が一定の閾値以下に低下するといった場合も含まれる。そのため、本実施形態の車両の走行制御装置1においては、原則として、ドライバーDの年齢、体格、性別などに関わらず、通常時には共通のジェスチャーの判定閾値を適用するが、走行方向の変更に対する逼迫度が、上述したような状況下で所定の閾値以上である場合は、ドライバーDによる速やかな指示を優先させるために、ジェスチャーの判定閾値を通常よりも低く設定する。これにより、ドライバーDは、ジェスチャーを正確に行うことに対して余計な注意力を割かずに、車両の監視に注力することができる。
【0052】
次に、
図7A~
図7Eを参照して、本実施形態に係る車線変更制御処理について説明する。
図7A~
図7Eは、本実施形態に係る車線変更制御処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する車線変更制御処理は、制御装置19により所定時間間隔で実行される。また、以下においては、制御装置19の走行制御機能により、
図3に示す車線変更制御のシーンについて、自車両V
0が自車線L2内を走行するように、自車両V
0の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御が行われている間に、先行する他車両V
1を車線L3から追い越したのち、再び元の車線L2に戻るものとして説明する。
【0053】
まず、
図7AのステップS1では、制御装置19は、走行情報取得機能により、自車両の走行状態に関する走行情報を取得する。続くステップS2では、制御装置19は、走行シーン判定機能により、ステップS1で取得された走行情報に基づいて、自車両の走行シーンを判定する。
【0054】
ステップS3では、制御装置19は、走行シーン判定機能により、ステップS2で判定された自車両の走行シーンが、車線変更に適した走行シーンであるか否かを判断する。具体的には、走行シーン判定機能は、自車両の走行シーンが、
図2に示すいずれかの走行シーンである場合に、自車両の走行シーンが、車線変更に適した走行シーンであると判定する。自車両の走行シーンが車線変更に適した走行シーンではない場合には、ステップS1に戻り、走行シーンの判定を繰り返す。一方、自車両の走行シーンが車線変更に適した走行シーンである場合には、ステップS4に進む。
【0055】
ステップS4では、制御装置19は、車線変更制御機能により、対象範囲の検出が行われる。具体的には、制御装置19は、車線変更制御機能により、センサ11に含まれる前方カメラおよび後方カメラにより撮像された車両外部の画像情報や、前方レーダー、後方レーダー、および側方レーダーによる検出結果を含む走行情報に基づいて、自車両の周辺に存在する障害物を検出する。そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両の側方に位置し、かつ、障害物が存在しない範囲を、対象範囲として検出する。
【0056】
なお、本実施形態の「対象範囲」とは、自車両が現在の速度で走行した場合の走行位置を基準とする相対的な範囲であり、自車両の周囲に存在する他車両が自車両と同じ速度で直進する場合には、対象範囲は変化しないこととなる。また、「自車両の側方」とは、自車両が車線変更する場合に、車線変更の目標位置(なお、この目標位置も自車両が現在の速度で走行した場合の走行位置を基準した相対位置となる。)として取り得る範囲であり、その範囲(方向、広さ、角度など)は適宜設定することができる。以下に、
図8A~
図8Fを参照して、対象範囲OSの検出方法について説明する。なお、
図8A~
図8Fは、対象範囲OSを説明するための平面図である。
【0057】
図8Aに示す例は、自車両V
0が走行する車線L2に隣接する左右それぞれの隣接車線L1,L3に障害物である他車両V
1が存在していないシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、この隣接車線L1,L3を対象範囲OSとして検出する。なお、路肩RSは、原則として車線変更を行うことができない範囲であるため、対象範囲OSからは除かれる。ただし、自車両V
0の走行シーンが「緊急退避シーン」であり、緊急時に路肩RSへの停車などが許容されている道路においては、路肩RSを対象範囲OSに含めることができる(以下、同様。)。
【0058】
図8Bに示す例は、自車両V
0が走行する車線L2に隣接する左側の隣接車線L1には他車両V
1が存在しないが、右側の隣接車線L3には、障害物となる他車両V
1,V
1が存在しているシーンである。ただし、隣接車線L3の、自車両V
0が走行する車線L2に隣接するよりも前方の他車両V
1と後方の他車両V
1との間に、他車両V
1,V
1が存在しない範囲があるシーンである。制御装置19は、車線変更制御機能により、左側の隣接車線L1と、右側の隣接車線L3の他車両が存在しない範囲とを対象範囲OSとして検出する。
【0059】
図8Cに示す例は、
図8Bに示す例と同様に右側の隣接車線L3に他車両V
1,V
1が存在しない範囲があり、左側の隣接車線L1においても、前方および後方の他車両V
1,V
1の間に他車両が存在しない範囲があるシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、左側の隣接車線L1において他車両V
1,V
1が存在しない範囲と、右側の隣接車線L3において他車両V
1,V
1が存在しない範囲とを、対象範囲OSとして検出する。
【0060】
図8Dに示す例は、
図8Cに示す例と同様に左側の隣接車線L1に他車両V
1,V
1が存在しない範囲があり、右側の隣接車線L3には他車両は存在しないが、当該隣接車線L3に工事区間や事故車など、自車両V
0が走行できない範囲RAが存在するシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、工事区間や事故車など、自車両V
0が走行できない範囲RAを、対象範囲OSから除いて、対象範囲OSを検出する。自車両V
0が走行できない範囲RAとしては、工事区間の他に、他車両V
1が駐車または停車している範囲や、交通規制などにより車両の走行が禁止されている範囲などがある。なお、
図8Dに示すように、工事区間などにより自車両V
0が走行できない範囲RAが、たとえば隣接車線L3の半分以上(幅員方向において半分以上)である場合には、残りの半分未満の範囲を対象範囲OSから除外してもよい。
【0061】
図8Eに示す例は、左側の隣接車線L1に他車両V
1,V
1が存在しない範囲があるが、右側の隣接車線L3には他車両V
1が連続して走行しており、当該隣接車線L3に車線変更可能なスペースがないシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、右側の隣接車線L3には対象範囲OSを検出できないと判断する。
【0062】
図8Fに示す例は、隣接車線L2から隣隣接車線L3への車線変更が、車線変更禁止マークRLにより禁止されているシーンである。このような道路において、制御装置19は、車線変更制御機能により、右側の隣接車線L3には対象範囲OSを検出できないと判断する。
【0063】
なお、本実施形態の制御装置19は、車線変更制御機能により、左右方向のうち、自車両V
0の走行シーンにおいて車線変更しようとする方向について、車線変更に適した方向の対象範囲OSを検出する。本実施形態では、各走行シーンにおいて車線変更に適した方向が、
図2に示すテーブルに予め記憶されている。制御装置19は、車線変更制御機能により、
図2に示すテーブルを参照して、自車両の走行シーンにおける「車線変更の方向」の情報を取得する。たとえば、自車両の走行シーンが「先行車両への追いつきシーン」である場合、車線変更制御機能により、
図2を参照して、「車線変更の方向」として「追い越し車線側」を取得する。そして、車線変更制御機能により、取得した「車線変更の方向」において対象範囲OSを検出する。
【0064】
また、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両V0の側方において、対象範囲OSを検出する。たとえば、左側の隣接車線L1及び右側の隣接車線L3に障害物が存在しない範囲が検出される場合でも、当該範囲が自車両V0の現在位置から所定距離以上離れた、自車両の後方側または前方側に位置する場合には、このような範囲に車線変更を行うことは困難であるため、対象範囲OSとしては検出しない。
【0065】
図7Aに戻り、ステップS5では、車線変更制御機能により、車線変更の目標位置の設定が行われる。
図9は、車線変更の目標位置の設定方法を説明するための図である。たとえば、制御装置19は、車線変更制御機能により、
図9に示すように、ステップS4で検出した右側の隣接車線L3の対象範囲OS内の位置であって、自車両V
0の現在位置よりも少し後方にずれた位置を、車線変更の目標位置として設定する(たとえば、
図9に示す車両V
01の位置)。車線変更の目標位置(車両V
01の位置)は、自車両V
0が走行する位置に対する相対位置である。すなわち、自車両V
0が現在の速度のまま走行した場合の位置を基準位置とした場合に、基準位置よりも少し後側方となる位置を、車線変更の目標位置として設定する。これにより、自車両V
0を車線変更の目標位置に移動させる際に、自車両V
0を加速させることなく、自車両V
0を右側の隣接車線L3に車線変更することができる。
【0066】
なお、制御装置19は、車線変更制御機能により、右側の隣接車線L3の対象範囲OS内に自車両V0が移動可能な範囲があることや、自車両V0の周囲に対象範囲OSに進入する可能性のある他車両V1が存在しないことなど、車線変更のし易さを加味して、車線変更の目標位置を設定してもよい。たとえば、車線変更制御機能により、対象範囲OSの周囲に存在する他車両V1が対象範囲OSの方向にウィンカーを出している場合や、対象範囲OS側に寄って走行している場合には、他車両V1が対象範囲OSに進入する可能性があると判断し、他車両V1が進入する可能性がより少ない対象範囲OS内の別の位置を、目標位置として設定してもよい。また、車線変更の目標位置を隣接車線L3の対象範囲OSのうち自車両V0よりも後方の位置に設定する例を示したが、車線変更の目標位置を隣接車線L3の対象範囲OSのうち自車両V0よりも前方の位置に設定してもよい。また、ステップS5においては、車線変更の目標位置に代えて、車線変更を行うための目標経路を設定してもよい。
【0067】
図7Aに戻り、ステップS6では、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更の所要時間T1の予測を行う。たとえば、車線変更制御機能により、自車両の車速や加速度に基づいて、自車両の現在位置から車線変更の目標位置までの移動に要する時間を所要時間T1として予測する。そのため、たとえば、車線の幅員が広い場合、道路が混雑している場合、本例のように連続する車線変更を行う場合には、所要時間T1は長い時間で予測されることとなる。
【0068】
ステップS7では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS6で予測した所要時間T1後における対象範囲OSを予測する。具体的には、車線変更制御機能により、自車両V
0の周辺に存在する他車両V
1の速度および加速度に基づいて、所要時間T1後の他車両V
1の走行位置を予測する。たとえば、制御装置19は、車線変更制御機能により、他車両V
1の位置情報を繰り返し検出することで、
図10Aに示すように、他車両V
1の速度ベクトルv
0、加速度ベクトルa
0、および位置ベクトルp
0を演算する。
【0069】
ここで、
図10Aに示すように、自車両V
0の進行方向をX軸、道路の幅員方向をY軸とした場合、他車両V
1の速度ベクトルv
0は、下記式(1)で表される。
v
0=vx
0i+vy
0j ・・・(1)
なお、上記式(1)において、vx
0は他車両V
1の速度ベクトルv
0のうちX軸方向の速度成分であり、vy
0は他車両V
1の速度ベクトルv
0のうちY軸方向の速度成分である。また、iはX軸方向の単位ベクトルであり、jはY軸方向の単位ベクトルである(下記式(2),(3),(6)においても同様)。
【0070】
また、他車両V1の加速度ベクトルa0は、下記式(2)に示すように求めることができ、他車両V1の位置ベクトルp0は、下記式(3)に示すように求めることができる。
a0=ax0i+ay0j ・・・(2)
p0=px0i+py0j ・・・(3)
なお、上記式(2)において、ax0は他車両V1の加速度ベクトルa0のうちX軸方向の加速度成分であり、ay0は他車両V1の加速度ベクトルa0のうちY軸方向の加速度成分である。また、上記式(3)において、px0は他車両V1の位置ベクトルp0のうちX軸方向の位置成分であり、py0は他車両V1の位置ベクトルp0のうちY軸方向の位置成分である。
【0071】
そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、
図10Bに示すように、所要時間T1後における他車両V
1の位置ベクトルpT
1を算出する。具体的には、車線変更制御機能により、下記式(4)~(6)に基づいて、所要時間T1後における他車両V
1の位置ベクトルpT
1を算出する。
pxT
1=px
0+vx
0T1+1/2(ax
0T1)
2 ・・・(4)
pyT
1=py
0+vy
0T1+1/2(ay
0T1)
2 ・・・(5)
pT
1=pxT
1i+pyT
1j ・・・(6)
なお、上記式(4),(5)において、pxT
1は、所要時間T1後の他車両V
1の位置ベクトルpT
1のうちX軸方向の位置成分であり、pyT
1は、所要時間T1後の他車両V
1の位置ベクトルpT
1のうちY軸方向の位置成分である。また、vx
0T1は所要時間T1後における他車両V
1のX軸方向の移動速度であり、vy
0T1は所要時間T1後における他車両V
1のY軸方向の移動速度である。さらに、ax
0T1は所要時間T1後における他車両V
1のX軸方向における加速度であり、ay
0T1は所要時間T1後における他車両V
1のY軸方向における加速度である。
【0072】
次に、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両V0の周囲に存在する全ての他車両V1について、所要時間T1後における位置を予測する。そして、車線変更制御機能により、所要時間T1後の他車両V1の位置に基づいて、所要時間T1後の対象範囲OSを予測する。また、車線変更制御機能により、所要時間T1後の車線規制状況、路上障害物の存在、隣接車線L3の閉塞の有無、および工事区間など自車両が移動できない区間の存在などをさらに加味して、所要時間T1後の対象範囲OSを予測する。なお、車線変更制御機能により、ステップS4と同様に、所要時間T1後の対象範囲OSを予測することができる。
【0073】
ステップS8では、制御装置19は、車線変更制御機能により、要求範囲RRの情報の取得を行う。この要求範囲RRとは、自車両V0が車線変更を行う際に必要な大きさの範囲であり、少なくとも自車両V0が路面に占める大きさ以上の大きさを有する範囲である。本実施形態では、車線変更の目標位置に要求範囲RRを設定した場合に、隣接車線L3の対象範囲OSが要求範囲RRを含む場合に、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが存在すると判断し、隣接車線L3への車線変更が許可される。本実施形態では、制御装置19のメモリに要求範囲RRの形状、大きさを含む情報が記憶されており、車線変更制御機能により、制御装置19のメモリから要求範囲RRの情報を取得する。
【0074】
ステップS9では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS7で予測した所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、ステップS8で取得した要求範囲RRに相当するスペースがあるか否かの判断が行われる。具体的には、車線変更制御機能により、
図11Aに示すように、ステップS5で設定した車線変更の目標位置(自車両V
01の位置)に要求範囲RRを設定する。そして、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに、要求範囲RRが含まれるか否かを判断する。
【0075】
たとえば、
図11Aに示す例では、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに、要求範囲RRの後方側が含まれていないため、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースがないと判断する。一方、
図11Bに示すように、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに、要求範囲RRが含まれる場合には、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRに相当するスペースがあると判断する。所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRに相当するスペースがある場合には、
図7Bに示すステップS11に進み、スペースがない場合には、ステップS10に進む。
【0076】
なお、ステップS10では、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRが含まれず、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースが検出できないと判断されている。そのため、ステップS10では、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更の目標位置の変更が行われる。具体的には、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRを含むように、車線変更の目標位置を再設定する。たとえば、
図11Aに示すように、要求範囲RRの後方部分が所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に含まれない場合には、車線変更の目標位置を前方に変更する。これにより、
図11Bに示すように、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内の両方に要求範囲RRが含まれ、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースが検出できると判断されることとなる。なお、ステップS10の後は、ステップS6に戻り、再度、対象範囲OSの検出などが行われる。
【0077】
一方、
図7AのステップS9において、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRが含まれると判断された場合には、
図7Bに示すステップS11に進む。
図7BのステップS11では、制御装置19は、車線変更制御機能により、1回目の車線変更制御の承諾要求処理を行う。このステップS11では、制御装置19は、ステップS1~S9の処理において、車線L2から車線L3への車線変更が可能な状況であると判断し、当該車線変更を実際に実行する前に、ドライバー自身に安全確認を促すために、当該ドライバーに対して、車線変更制御の実行を承諾するか否かの回答を要求する。これが、本発明に係る第1走行制御変更情報Td1の提示に相当する。
【0078】
図7Dは、ステップS11にて実行される車線変更制御の承諾要求及び承諾確認処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
図7DのステップS111では、制御装置19は、走行制御変更情報提示機能により、ジェスチャーの判定閾値を設定する。
【0079】
ステップS111では、制御装置19は、逼迫度判定機能により、まず始めに車線変更の逼迫度を検出し、検出された逼迫度が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。上述したように、たとえばインターチェンジの分岐地点、サービスエリアへの進入地点、自動車専用道路の出口地点までの距離が短くて車両の走行制御の移行まで充分な時間がない場合、悪天候のようにセンサ11による自車両の周囲の検出精度が低くなることが少なくない環境であって、車両の走行制御装置1による自動走行制御の信頼性が一定の閾値以下に低下するといった場合には、逼迫度が高いと判定する。次いで、制御装置19は、逼迫度判定機能により、検出された逼迫度が、予め設定された閾値未満である場合には、ジェスチャーの判定レベルを通常レベルの判定閾値に設定する。また、これとは逆に、検出された逼迫度が予め設定された閾値以上である場合には、ジェスチャーの判定閾値が通常レベルよりも低くなるように、すなわち、通常レベルの判定閾値では検出されない不明確なジェスチャーであっても検出可能なように、ジェスチャーの判定閾値を設定する。
【0080】
図7DのステップS112では、
図6Aを参照して説明した第1走行制御変更情報Td1を提示装置15に提示する。すなわち、
図6Aの例では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、
図3に示すように中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に、
図6Aに示すように、提示装置15のディスプレイに自車両V
0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データを表示し、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V
0の車線変更先と、濃度が薄くされたOKマーク及びCancelマークと、を表示する。また、この表示と共に、「右方向への車線変更を承諾しますか? ジェスチャーで指示してください」といったメッセージを音声データによりスピーカーから出力する。
【0081】
図7Dに戻り、ステップS113では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、ドライバーDによって第1走行制御変更情報Td1に応じて行われたジェスチャーを検出する。具体的には、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、
図4に示す車内カメラ111により、ドライバーDの上半身、頭部及び顔の画像を撮影する。次いで、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、撮影された画像を画像認識処理などにより解析して、ドライバーDがジェスチャーを行っているか否かを検出する。ドライバーDのジェスチャーが検出された場合には、ステップS114に進む。
【0082】
ステップS114では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、検出されたジェスチャーが方向性を伴う承諾ジェスチャーであるか否かを判定する。この承諾ジェスチャーであるか否かの判定は、例えば、
図5に示すジェスチャーテーブルを参照して、車内カメラ111で撮影された画像の解析結果と比較し、解析結果が複数種類の承諾ジェスチャーに該当するか否かを判定する。検出されたジェスチャーが承諾ジェスチャーであった場合には、ステップS115に進む。
【0083】
ステップS115では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、検出された承諾ジェスチャーで示される走行方向が、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向と一致するか否かを判定する。この走行方向の判定は、例えば、車内カメラ111で撮影された画像の解析結果に基づいて、検出された承諾ジェスチャーで示される走行方向が、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向と一致するか否かを判定する。走行方向が一致した場合には、ステップS116に進む。
【0084】
ステップS116では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、
図6Cの左図に示すように、ドライバーDのジェスチャーの判定結果を示す第3走行制御変更情報Td3を提示装置15に提示する。
【0085】
次のステップS117では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、第3走行制御変更情報Td3に対し、ドライバーDがジェスチャーの検出・判定結果を変更するために行うキャンセルジェスチャーを検出する。このキャンセルジェスチャーの検出は、ステップS113と同様に、
図4に示す車内カメラ111により、ドライバーDの上半身、頭部及び顔の画像を撮影し、撮影された画像を画像認識処理などにより解析することにより行う。
【0086】
ステップS117で、第3走行制御変更情報Td3に対するドライバーDのキャンセルジェスチャーが検出されなかった場合、次のステップS118では、制御装置19は、承諾確認機能により、第3走行制御変更情報Td3で提示した判定結果を正規の判定結果として特定する。すなわち、第3走行制御変更情報Td3に、ドライバーDが車線変更に承諾する旨の判定結果が提示されている場合には、その判定結果が正規の判定結果となる。また、第3走行制御変更情報Td3に、車線変更を中止する旨の判定結果が提示されている場合には、その判定結果が正規の判定結果となる。
【0087】
また、上記とは逆に、ステップS117で、第3走行制御変更情報Td3に対するドライバーDのキャンセルジェスチャーが検出された場合、次のステップS119では、制御装置19は、承諾確認機能により、第3走行制御変更情報Td3で提示した判定結果とは逆の判定結果を正規の判定結果として特定する。すなわち、第3走行制御変更情報Tdに、ドライバーDが車線変更に承諾する旨の判定結果が提示されている場合には、車線変更を中止する旨の判定結果が正規の判定結果となる。また、第3走行制御変更情報Td3に、車線変更を中止する旨の判定結果が提示されている場合には、車線変更を承諾する旨の判定結果が正規の判定結果となる。
【0088】
次に、
図7DのステップS113に戻って説明する。ステップS113において、第1走行制御変更情報Td1に対するドライバーDのジェスチャーが検出されなかった場合には、ステップS120に進む。このステップS120では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、第1走行制御変更情報Td1の提示後に所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間の判定は、第1走行制御変更情報Td1を提示してから所定時間内にドライバーDから何ら応答がない場合に、第1走行制御変更情報Td1を再提示するために行う。この所定時間は、例えば、予め設定した時間を用いてもよいし、車線変更地点までの距離や時間に応じて設定してもよい。ステップS120で所定時間が経過していない場合には、ステップS112に戻って第1走行制御変更情報Td1を再提示する。また、ステップS120で所定時間が経過している場合には、次のステップS121に進む。
【0089】
ステップS121では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、第1走行制御変更情報Td1の再提示が所定回数行われた否かを判定する。この提示回数の判定は、第1走行制御変更情報Td1の再提示が所定回数行なわれても、ドライバーDから何ら応答がない場合に、車線変更制御自体を中止するために行う。この再提示回数は、予め設定した回数を用いてもよいし、車線変更地点までの距離や時間に応じて設定してもよい。ステップS121で、再提示回数が所定回数に達していない場合には、ステップS112に戻って第1走行制御変更情報Td1を再提示する。また、ステップS121で再提示回数が所定回数に達している場合には、ステップS122に進んで車線変更制御を中止する。
【0090】
次に、
図7DのステップS114に戻って説明する。ステップS114において、検出されたドライバーDのジェスチャーが、方向性を伴う承諾ジェスチャーでなかった場合には、ステップS123に進む。このステップS123では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、検出されたジェスチャーがキャンセルジェスチャーであるか否かを判定する。このキャンセルジェスチャーであるか否かの判定は、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、
図5に示すジェスチャーテーブルを参照して、車内カメラ111で撮影された画像の解析結果と比較し、解析結果が複数種類のキャンセルジェスチャーに該当するか否かを判定する。検出されたジェスチャーがキャンセルジェスチャーであった場合には、ステップS116に進んで、
図6Cの右図に示す第3走行制御変更情報Td3を提示装置15により提示する。また、検出されたジェスチャーがキャンセルジェスチャーでなかった場合には、次のステップS124に進む。
【0091】
ステップS124まで進んだ場合、検出されたドライバーDのジェスチャーは、承諾ジェスチャーではなく、また、キャンセルジェスチャーでもないと判定されたことになる。そのため、ステップS124では、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、承諾ジェスチャーの種類を指定して、第2走行制御変更情報Td2を提示装置15に提示することにより、ドライバーDにジェスチャーの再実行を促す。また、ステップS124では、第2走行制御変更情報Td2の提示とともに、「ジェスチャーが検出できませんでした 右方向への車線変更を承諾する場合には右手を挙げて下さい」といったメッセージを音声データによりスピーカーから出力する。ステップS124の終了後、制御装置19は、車線変更情報提示機能により、ステップS113に戻り、ドライバーDにより再実行されたジェスチャーを検出する。
【0092】
以上で説明したように、
図7Dに示すステップS11のサブルーチンで、ドライバーDが車線変更について承諾した否かが判定され、その判定終了後、
図7Bに示すステップS12に進む。
【0093】
図7Bに戻り、ステップS12では、制御装置19は、ステップS11の承諾要求に対して、ドライバーDが車線L2から車線L3への車線変更を承諾した場合には、ステップS13に進み、一方、ドライバーが車線変更を承諾しない場合には、車線変更制御を実行することなくステップS1に戻る。
【0094】
ステップS13では、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更の制限時間Zを取得する。本実施形態では、
図2に示すように、自車両が各走行シーンにおいて車線変更が困難となる地点に接近するまでの時間が、制限時間Zとしてテーブルに記憶されている。制御装置19は、車線変更制御機能により、
図2に示すテーブルを参照し、自車両の走行シーンにおける制限時間Zを取得する。たとえば、
図2に示す例のうち、「先行車両への追いつきシーン」においては、制限時間が、先行車両までの到達時間-α秒として記憶されている。この場合、制御装置19は、走行制御機能により、
図2に示すテーブルを参照して、先行車両までの到達時間を算出し、算出した先行車両までの到達時間-α秒を制限時間Zとして取得する。なお、αは所定の秒数(たとえば5秒など)であり、走行シーンごとに適宜設定することもできる。たとえば、先行車両までの到達時間が30秒であり、αが5秒である場合には、車線変更の制限時間Zは25秒となる。
【0095】
ステップS14では、車線変更制御の開始処理が行われる。この車線変更制御の開始処理において、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更制御を開始する開始タイミングLを設定する。開始タイミングLの設定方法は、特に限定されず、たとえば以下の(1)~(8)に示す方法で設定することができる。すなわち、(1)固有のタイミングを、車線変更制御の開始タイミングLとして設定する。たとえば、ドライバーが車線変更を承諾してから所定の時間後(たとえば6秒後)のタイミングを、車線変更制御の開始タイミングLとして設定する。(2)
図2に示す車線変更の必要度に基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、
図2に示すテーブルから自車両の走行シーンにおける車線変更の必要度を取得し、車線変更の必要度が所定値以上である場合には、車線変更の必要度が所定値未満である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(3)
図2に示す車線変更の制限時間Zに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、
図2に示すテーブルから自車両の走行シーンにおける車線変更の制限時間Zを取得し、車線変更の制限時間Zが所定時間Z
th未満である場合には、車線変更の制限時間Zが所定時間Z
th以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(4)車線変更の所要時間T1に基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、
図7AのステップS6で予測した車線変更の所要時間T1が所定時間T
th未満である場合には、車線変更の制限時間Zが所定時間T
th以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。
【0096】
(5)車線変更の制限時間Zおよび所要時間T1に基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、車線変更の所要時間T1と、車線変更の制限時間Zとから、余裕時間Yを求め(たとえば、制限時間Z-所要時間T1=余裕時間Y)、余裕時間Yが所定時間Yth未満である場合には、余裕時間Yが所定時間Yth以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(6)ドライバーが運転に関心を示している度合である注意度(傾倒度)Oに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。たとえば、車載マイクやハンズフリー装置などの入力装置16により、ドライバーの音声を検出することで、ドライバーが会話やハンズフリーで電話を行っているかを判断し、ドライバーが会話やハンズフリーで電話を行っている場合には、ドライバーの注意度0は閾値Oth未満と判断し、ドライバーの注意度が閾値Oth以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを遅いタイミングに設定する。
【0097】
(7)交通混雑度Kに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。たとえば、先行車両との車間距離、後方車両との車間距離、周辺車両の数、VICS(登録商標)情報に含まれる混雑度、法定速度と自車両の実際の車速との乖離度に基づいて、交通混雑度Kを判断し、先行車両との車間距離が短いほど、後方車両との車間距離が短いほど、周辺車両の数が多いほど、VICS情報に含まれる混雑度が高いほど、または、法定速度と自車両の実際の車速との乖離度が大きいほど、交通混雑度Kを高く判断し、交通混雑度Kが所定値Kth以上である場合には、交通混雑度Kが所定値Kth未満である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(8)車線変更の尤度Bに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。たとえば、目的地の設定の有無、先行車両との車間距離に基づいて、自車両が車線変更を行うと確信できる度合を尤度Bとして求めることができる。具体的には、目的地が設定されており、自車両が目的地に到達するために、車線変更を行う必要がある場合には、車線変更の尤度Bが閾値Bth以上であると判断する。また、先行車両との車間距離が所定距離未満である場合には、ドライバーが車線変更を希望すると判断し、車線変更の尤度Bを閾値Bth以上であると判断する。そして、車線変更の尤度Bが閾値Bth以上である場合には、車線変更の尤度Bが閾値Bth未満である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。以上のように、車線変更制御の開始タイミングLが設定される。なお、上述した(1)~(8)は、開始タイミングLの設定方法の一例であり、上述した構成に限定されるものではない。また、開始タイミングLを設定したら、制御装置19は、車線変更制御の開始前に、車線変更を開始する旨の車線変更情報を提示する予告提示タイミングPを設定してもよい。
【0098】
制御装置19は、設定された開始タイミングLになったら、車線変更制御機能により、車線変更制御を開始する。具体的には、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両が、
図7AのステップS5またはステップS10で設定した車線変更の目標位置まで移動するように、駆動制御装置18にステアリングアクチュエータの動作の制御を開始させる。なお、車線変更制御が開始されると、車線変更制御の実行中である旨の車線変更情報の提示を提示装置15に行ってもよい。
【0099】
図7CのステップS15~S17では、
図7AのステップS4,S6~S7と同様に、現在の対象範囲OSと自車両V
0が、1回目の車線変更(
図9の車線L2から車線L3への車線変更)に係る目標位置に移動する所要時間T2後の対象範囲OSの検出が行われる。そして、ステップS18において、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS17で予測した所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、ステップS8で取得した要求範囲RRに相当するスペースがあるか否かの判断を行う。そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、1回目の車線変更の目標位置に要求範囲RRを設定し、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSが、要求範囲RRを含む場合には、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがあると判断し、ステップS20に進む。一方、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがないと判断した場合には、ステップS19へ進む。なお、ステップS19の処理及びこれに続く処理は、
図7Eを参照して後述する。
【0100】
ステップS20では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS14で1回目の車線変更制御を開始してから、ステップS13で取得した制限時間Zを経過したか否かを判断する。1回目の車線変更制御を開始してからの経過時間S1が制限時間Zを超えた場合、すなわち、車線変更制御を開始してから制限時間Zが経過しても1回目の車線変更の目標位置に到達できないには、ステップS22に進む。このステップS22では、制御装置19は、車線変更制御機能により、1回目の車線変更制御の中止処理を行う。具体的には、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更制御を中止する旨の情報を、ドライバーに報知する。たとえば、提示装置15を介して、「タイムアウトのため車線変更を中断します」とのメッセージをドライバーに報知した後、車線変更制御を終了する。なお、車線変更制御の中止処理においては、自車両の幅員方向における走行位置を、車線変更制御の終了時の位置のままとしてもよいし、車線変更制御開始時の位置まで戻してもよい。車線変更制御開始時の位置まで戻す場合には、たとえば、「タイムアウトのため元の位置に戻ります」などのメッセージをドライバーに報知してもよい。
【0101】
一方、ステップS20において、車線変更制御を開始してからの経過時間S1が制限時間Zを超えていない場合には、ステップS21に進む。ステップS21では、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両が1回目の車線変更の目標位置に到達したか否かを判断する。自車両が1回目の車線変更の目標位置に到達した場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、車線変更制御機能による1回目の車線変更制御が完了したため、1回目の車線変更が完了した旨の車線変更情報が提示装置15に提示される。なお、ステップS21において、自車両が1回目の車線変更の目標位置に到達していないと判断された場合には、ステップS15に戻り、車線変更制御を継続する。
【0102】
さて、
図7CのステップS18において、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがないと判断された場合には、ステップS19に進む。すなわち、車線変更制御を開始するステップS9の時点においては隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースは存在したが、1回目の車線変更制御の開始後に、隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースがなくなった場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、車線変更において自車両が跨ぐレーンマーク(以下、対象レーンマークともいう。)と、自車両との幅員方向における位置関係の検出が行われる。
【0103】
たとえば、
図12は、自車両V
0が、図において矢印で示す方向に(図中、左側の車線から右側の車線へと)車線変更を行うシーンを例示する。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、
図12(A)に示すように、自車両V
0の一部も対象レーンマークCLを跨いでいない状態、
図12(B)に示すように、自車両V
0の一部が対象レーンマークCLを跨いでいるが自車両V
0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいない状態、
図12(C)に示すように、自車両V
0の全体が対象レーンマークCLを跨いでいないが自車両V
0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいる状態、
図12(D)に示すように、自車両V
0の全体が対象レーンマークCLを跨いでいる状態のいずれの状態であるかを判断する。
【0104】
図7Eに示すステップS51では、制御装置19は、車線変更制御機能により、
図7CのステップS19で判定した対象レーンマークCLと自車両V
0との幅員方向における位置関係に基づいて、車線変更を中止または継続するための制御処理を行う。具体的には、対象レーンマークCLと自車両V
0との幅員方向における位置関係に基づいて、(a)車線変更を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法、(b)車線変更を中止または継続した後の制御、(c)車線変更を中止または継続した場合の自車両V
0の走行位置を決定する。
【0105】
たとえば、(a)車線変更を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法として、(a1)時間制限なしでドライバーに車線変更の中止または継続の選択肢を選択させるための情報を提示し、ドライバーがいずれかの選択肢を選択した場合に、ドライバーが選択した選択肢の制御(車線変更の中止または継続)を実行する、(a2)時間制限つきでドライバーに車線変更の中止または継続の選択肢を選択させるための情報を提示し、制限時間内にドライバーがいずれかの選択肢を選択した場合には、ドライバーが選択した選択肢の制御(車線変更の中止または継続)を実行し、制限時間内にドライバーがいずれの選択肢も選択しない場合には、車線変更制御の中止および継続のうち予め定められた選択肢の方の制御(デフォルト制御)を実行する、(a3)自動で車線変更の中止または継続を実行し、ドライバーには自動で実行した車線変更の中止または継続をキャンセルする方法を明示する、および、(a4)自動で車線変更の中止または継続を実行し、ドライバーには自動で実行した車線変更の中止または継続をキャンセルする方法を明示しない、の4つの方法のいずれかを行う。
【0106】
また、(b)車線変更の中止または継続後の制御内容として、(b1)車線変更を中止するとともに自動走行制御も中止する、(b2)車線変更制御のみを解除し自動走行制御は継続する、(b3)隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出されるまで、車線変更制御を中断して待機状態とし、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出された場合に、車線変更制御を再開する、の3つの制御のいずれかを実行する。
【0107】
さらに、(c)車線変更制御を中止または継続した場合の自車両の走行位置として、(c1)車線変更開始前の位置まで自車両を戻す、(c2)車線変更開始前に自車両が走行していた車線のうち対象レーンマークCLの近傍の位置まで自車両を移動させる、(c3)現在位置を維持する、の3つの位置調整のいずれかを実行する。
【0108】
そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、対象レーンマークCLと自車両V0との幅員方向における位置関係に基づいて、(a)車線変更を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法、(b)車線変更の中止または継続後の制御内容、(c)車線変更を中止または継続した場合の自車両の走行位置を、適宜組み合わせて、車線変更の中止または継続のための制御処理を行う。
【0109】
たとえば、
図12(A)に示すように、自車両V
0が対象レーンマークCLを跨いでいない場合には、(a4)車線変更の中止を自動で実行し、ドライバーには車線変更の中止をキャンセルする方法を明示しない構成とすることができる。またこの場合、車線変更制御機能は、(b1)車線変更の中止とともに自動走行制御も中止し、(c1)車線変更開始前の位置まで自車両を戻す構成とすることができる。また、このような場合において、「車線変更スペースがなくなりそうなため、もとの位置に戻ります。」、「もとの位置に戻ったら自動走行制御をキャンセルします。」のように、これから行う車線変更中止の制御内容をドライバーに報知することができる。この場合、処理は
図7CのステップS23に進み、車線変更制御を終了する。
【0110】
また、
図12(B)に示すように、自車両V
0の一部は対象レーンマークCLを跨いでいるが、自車両V
0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいない場合には、(a3)車線変更の中止を自動で実行し、ドライバーには車線変更の中止をキャンセルする方法を明示する構成とすることができる。またこの場合、車線変更制御機能は、(c2)車線変更開始前に自車両が走行していた車線のうち対象レーンマークCLの近傍の位置に自車両V
0を移動させた後、(b2)車線変更制御のみを中止し、自動走行制御を継続する構成とすることができる。また、このような場合において、「車線変更スペースがなくなりそうなため、もとの車線内に戻ります。」、「もとの位置に戻ったら以前の自動走行制御を継続します。」のように、これから行う車線変更中止の制御内容をドライバーに報知することができる。また、「車線変更を継続したい場合は以下のボタンを押してください。」とのメッセージとともに、車線変更を継続するためのボタンをディスプレイに表示することもできる。ドライバーが車線変更を継続するためのボタンを押下した場合には、処理は
図7EのステップS52に進み、一方、ドライバーが車線変更を継続するためのボタンを押下しない場合には、処理は
図7CのステップS23に進む。
【0111】
さらに、
図12(C)に示すように、自車両V
0の全体は対象レーンマークCLを跨いでいないが自車両V
0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいる場合には、(a4)車線変更の継続を自動で実行し、ドライバーには車線変更の継続をキャンセルする方法を明示しない構成とすることができる。またこの場合、(c3)自車両の走行位置を現在位置のまま維持して待機し、(b3)隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースを再度検出するまで車線変更を中断し、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出された場合に、車線変更制御を再開する構成とすることができる。たとえば、この場合、「車線変更スペースがなくなりそうなため、現在の場所で待機します。」、「車線変更スペースが空きそうな場合は車線変更制御を再開します。」のように、これから行う車線変更継続の制御内容をドライバーに報知することができる。この場合、処理は
図7EのステップS52に進む。
【0112】
また、
図12(D)に示すように、自車両V
0の全体が対象レーンマークCLを跨いでいる場合には、(a4)車線変更の中止を自動で実行し、ドライバーには車線変更制御の中止をキャンセルする方法を明示しない構成とすることができる。またこの場合、(c3)自車両の走行位置を現在位置のまま維持し、(b2)車線変更制御のみを中止して、自動走行制御を継続する構成とすることができる。この場合、「車線変更スペースがなくなりそうなため、現在の場所で待機します。」、「以前の自動走行制御を継続します。」のように、これから行う車線変更中止の制御内容をドライバーに報知することができる。この場合、処理は
図7CのステップS23に進み、走行制御処理を終了する。
【0113】
なお、対象レーンマークCLと自車両V
0との幅員方向における位置関係は、
図12(A)~(D)に示す4つに限定されず、5以上としてもよいし、3以下としてもよい。また、それぞれの位置関係に対する制御の組み合わせは、上述した組み合わせに限定されず、(a)車線変更制御を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法、(b)車線変更制御の中止または継続後の制御内容、(c)車線変更を中止または継続した場合の自車両の走行位置をそれぞれ適宜組み合わせることができる。
【0114】
次に、
図7EのステップS51において、車線変更の継続が実行された場合について説明する。ステップS51において車線変更の継続が開始されると、ステップS52に進む。ステップS52では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS51で車線変更制御が待機状態となってからの経過時間S2の測定を行う。すなわち、本実施形態では、ステップS51で車線変更が継続されると、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出されるまで、車線変更は中断され、車線変更制御は待機状態となる。ステップS52では、このように車線変更制御の待機が開始されてからの経過時間S2が測定される。
【0115】
ステップS53では、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両が現在位置から車線変更の目標位置に移動するまでの所要時間T3の予測を行う。なお、所要時間T3は、
図7AのステップS6と同様の方法で予測することができる。
【0116】
ステップS54では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS52で測定された経過時間S2と、ステップS53で予測された所要時間T3との合計時間(S2+T3)が、
図7BのステップS13で取得した制限時間Zを超えるか否かの判断を行う。合計時間(S2+T3)が制限時間Zを超える場合には、ステップS55に進み、車線変更制御機能により、車線変更制御の待機状態を解除し、車線変更開始前の自車両の走行位置まで自車両を移動する。その後、
図7CのステップS23に進み、車線変更制御を終了する。一方、合計時間(S2+T3)が制限時間Zを超えない場合には、ステップS56に進む。
【0117】
ステップS56では、制御装置19は、車線変更制御の待機状態を継続し、続くステップS57~S58では、
図7AのステップS4,S7と同様に、現在の対象範囲および所要時間T3後の対象範囲を検出する。そして、ステップS59では、
図7AのステップS9と同様に、ステップS58で予測した所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRに相当するスペースがあるか否かを判断する。ステップS59において、制御装置19は、車線変更の目標位置に要求範囲RRを設定し、所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OSが要求範囲RRを含む場合に、所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースがあると判断し、ステップS60に進む。ステップS60では、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが検出されているため、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更制御の待機状態を解除し、車線変更制御を再開する。この場合の処理は、
図7CのステップS15に戻る。一方、ステップS59において、所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがないと判断された場合には、ステップS61に進み、車線変更制御の待機状態を継続してステップS52に戻る。
【0118】
次に、上述した
図3の左図に示す車線L2から車線L3への車線変更が実行されたのち、
図3の右図に示す車線L3から車線L2への車線変更制御について、
図7A~
図7Eを参照しながら説明する。
図3の左図に示す車線変更が実行されると、
図7CのステップS23の処理を実行したのち、
図7AのステップS1に戻る。そして、ステップS1~S10の各処理が、
図3の右図に示す車線変更制御について実行される。なお、これらの処理は、上述した
図3の左図に示す車線変更制御の処理と同じであるため、その説明は省略する。
【0119】
図7BのステップS11では、制御装置19は、車線変更制御機能により、今回(2回目)の車線変更制御の承諾要求及び承諾確認処理を行う。このステップS11では、制御装置19は、ステップS1~S9の処理において、車線L3から車線L2への車線変更が可能な状況であると判断し、当該車線変更を実際に実行する前に、ドライバー自身に安全確認を促すために、当該ドライバーに対して、車線変更制御の実行を承諾するか否かの回答を要求する。なお、ステップS11は、上述した
図7DのステップS111~S124の処理と同じであるため、その説明は省略する。
【0120】
図7BのステップS13から
図7CのステップS23までの処理は、上述した
図3の左図に示す車線変更制御の処理と同じであるため、その説明は省略するが、これらの処理を実行することで、
図3の右図示す車線L3から車線L2への車線変更が完了する。
【0121】
以上のように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両V0の走行方向を変更する自動走行制御を実行する前に、第1走行制御変更情報Td1をドライバーDに提示し、この第1走行制御変更情報Td1に対するドライバーDによる承諾ジェスチャーを検出し、この承諾ジェスチャーにより示される走行方向と、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向とが一致する場合に、走行方向の変更は承諾されたと判定して、走行方向の変更に係る自動走行制御を実行する。すなわち、走行方向を示す承諾ジェスチャーのみで第1走行制御変更情報Td1に対して承諾を行うことができ、従来技術のように煩雑な承諾動作を不要としているため、承諾動作に伴うドライバーDの煩わしさを解消することができる。また、単なるジェスチャーではなく、走行方向を示すジェスチャーを用いることで、ドライバーDに対し、走行方向の変更に対して一定以上の意識乃至注意力を維持させることができる。
【0122】
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、検出可能な承諾ジェスチャーとして、複数種類のジェスチャーを設定し、ドライバーDにより、複数種類のジェスチャーから任意の承諾ジェスチャーが示された場合に、走行方向の変更が承諾されたか否かの判定を行うようにしている。したがって、ドライバーDは、最も行いやすい承諾ジェスチャーを自由に選択して行うことができるので、承諾動作に伴うドライバーDの煩わしさを解消することができる。
【0123】
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、承諾ジェスチャーとして、ドライバーDの頭部の動きを検出し、この頭部の動きによって示された走行方向と、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向とが一致するか否かを判定している。したがって、ドライバーDは、ハンドルなどから手を離すことなく、頭部の簡単な動きのみで第1走行制御変更情報Td1に対する承諾を行うことができるので、承諾動作に伴うドライバーDの煩わしさを解消することができる。
【0124】
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、承諾ジェスチャーとして、ドライバーDの視線の方向を検出し、視線の方向によって示された走行方向と、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向とが一致するか否かを判定している。したがって、ドライバーDは、ハンドルなどから手を離すことなく、視線の簡単な動きのみで第1走行制御変更情報Td1に対する承諾を行うことができるので、承諾動作に伴うドライバーDの煩わしさを解消することができる。
【0125】
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、承諾ジェスチャーとして、ドライバーDの手又は腕の少なくとも一方の動きを検出し、手又は腕の少なくとも一方の動きによって示された走行方向と、第1走行制御変更情報Td1で提示された走行方向とが一致するか否かを判定している。したがって、ドライバーDは、手又は腕の簡単な動きのみで第1走行制御変更情報Td1に対する承諾を行うことができるので、承諾動作に伴うドライバーDの煩わしさを解消することができる。
【0126】
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、検出されたジェスチャーから走行方向が識別できない場合に、ドライバーDに行うべき承諾ジェスチャーの種類を示すための第2走行制御変更情報Td2を提示し、承諾ジェスチャーの再実行を促すようにしている。したがって、ドライバーDの承諾ジェスチャーが検出・判定しにくく、誤検出しやすい場合であっても、行うべき承諾ジェスチャーの種類を提示することで、高い確率でドライバーDのジェスチャーを検出・判定することができる。そのため、ドライバーDに何度もジェスチャーを再実行させる必要がないので、承諾動作に伴うドライバーDの煩わしさを解消することができる。
【0127】
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、ドライバーDにより走行方向の変更が承諾されたと判定した場合に、判定結果を示す第3走行制御変更情報Td3を提示し、第3走行制御変更情報Td3に対するドライバーによるキャンセルジェスチャーが検出された場合には、判定結果を取り消すようにしている。したがって、ドライバーDのジェスチャーが誤検出され、この誤検出に基づいて、承諾に関する誤判定がなされた場合でも、誤判定を取り消してドライバーDの真の意思を自動走行制御に反映することができる。
【0128】
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、走行方向の変更の逼迫度が、予め設定された閾値以上か否かを判定し、逼迫度が前記閾値以上である場合には、承諾ジェスチャーの走行方向の判定レベルを、逼迫度が閾値未満である場合よりも下げるようにしている。したがって、走行方向の変更の逼迫度が高い場合には、多少不明確な承諾ジェスチャーであっても判定できるように判定レベルを下げるので、ドライバーDの承諾ジェスチャーを高い確率で検出・判定することができる。また、ドライバーDは、ジェスチャーを正確に行うことに対して余計な注意力を割かずに、車両の監視に注力することができる。
【0129】
また、上記の実施形態では、制御装置19は、走行制御変更情報提示機能により、ジェスチャーが検出・判定できない場合に、実行すべきジェスチャーの種類を指定して、第3走行制御変更情報Td3で提示するようにしたが、この機能を利用して、ドライバーDの注意力を指定する方向に向けさせるようにしてもよい。例えば、他車両や歩行者などが多く、交通混雑度の高い道路において、走行制御装置1による周囲の状況の監視負荷が高く、監視の信頼度又は自信度が所定値よりも低くなった場合には、ドライバーDにより監視してもらいたい方向を走行制御変更情報により提示して、指定方向に対するドライバーDの監視レベルを高めることができる。これによれば、自動走行制御の安全性がより一層高まる。
【0130】
また、走行制御変更時のドライバーDの注意力、周囲の状況への監視力をより一層高めるために、例えば、車線変更する方向と逆の方向や上下方向など、車線変更する方向とは異なる方向に対する方向性を伴うジェスチャーや、方向性を伴わないジェスチャーなどを行うように走行制御変更情報で提示してもよい。この走行制御変更情報の提示に対し、ドライバーDが提示されたジェスチャーを行った場合に、走行制御の変更が承諾されたものと判定することにより、走行制御変更に対するドライバーDの意識乃至注意力をより一層高め、維持することが可能である。
【符号の説明】
【0131】
1…走行制御装置
11…センサ
111…車内カメラ
12…自車位置検出装置
13…地図データベース
14…車載機器
15…提示装置
16…入力装置
17…通信装置
18…駆動制御装置
19…制御装置
V0…自車両
V1…他車両
L1,L2,L3…車線
RS…路肩
OS…対象範囲
RR…要求範囲
RA…自車両が走行できない範囲
RL…車線変更禁止マーク
CL…対象レーンマーク
VC…自車両の中心線
Td1…第1走行制御変更情報
Td2…第2走行制御変更情報
Td3…第3走行制御変更情報