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特許7147980空隙構造及び一体型流体循環ダクトを有するダッシュボード本体
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  • 特許-空隙構造及び一体型流体循環ダクトを有するダッシュボード本体 図1
  • 特許-空隙構造及び一体型流体循環ダクトを有するダッシュボード本体 図2
  • 特許-空隙構造及び一体型流体循環ダクトを有するダッシュボード本体 図3
  • 特許-空隙構造及び一体型流体循環ダクトを有するダッシュボード本体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】空隙構造及び一体型流体循環ダクトを有するダッシュボード本体
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/14 20060101AFI20220928BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220928BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20220928BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B62D25/14
B60H1/00 102R
B60H1/34 651B
B60K37/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021525597
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019080732
(87)【国際公開番号】W WO2020099274
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】1860515
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ロイック ベゾー
(72)【発明者】
【氏名】ロビン ロー
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141236(JP,A)
【文献】特表2017-533319(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107832563(CN,A)
【文献】特表2018-522193(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03296138(EP,A1)
【文献】中国実用新案第207902318(CN,U)
【文献】中国実用新案第207595065(CN,U)
【文献】国際公開第2018/061906(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016613(WO,A1)
【文献】国際公開第1997/049599(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第02535764(GB,A)
【文献】欧州特許出願公開第02347920(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/115827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/14
B60H 1/00
B60H 1/34
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次元印刷により単一部品として製造され、
少なくとも一つの開口有する少なくとも一つの流体循環ダクト規定する空隙構造を有し、
前記空隙構造は、複数のメッシュセル及び複数のノードを有し、
前記空隙構造における、前記複数のメッシュセル及び複数のノードを形成するように相互に接続された部分のいくつかが、前記流体循環ダクトを構成していることを特徴とするダッシュボード本体
【請求項2】
前記空隙構造は、少なくともいくつかが流体を通過させるように相互接続された複数の流体循環ダクトを規定することを特徴とする請求項1に記載のダッシュボード本体
【請求項3】
前記ダッシュボード本体は、前記ダッシュボード本体によって規定される容積の外面に位置する少なくとも一つの開口有することを特徴とする請求項1又は2に記載のダッシュボード本体
【請求項4】
前記ダッシュボード本体は、前記ダッシュボード本体によって規定される容積の内側に位置する少なくとも一つの開口有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダッシュボード本体
【請求項5】
前記空隙構造は、一つ以上の流体循環ダクトが開口する少なくとも一つの接続ボックス規定し、
前記接続ボックスは、前記ダッシュボード本体とは別個の補助装置に接続されることを目的とした開口有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のダッシュボード本体
【請求項6】
前記ダッシュボード本体は、前記ダッシュボード本体の容積を少なくとも部分的に画定する外皮と、当該外皮と一体の、前記空隙構造からなる内部骨格を備え、
前記外皮、空隙表面、中実表面、一つ以上の空隙領域及び中実領域を示す表面から選択された外面有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のダッシュボード本体
【請求項7】
前記ダッシュボード本体は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸から選択された高分子材料からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のダッシュボード本体
【請求項8】
ダッシュボードであって、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のダッシュボード本体、前記ダッシュボード本体とは別個の少なくとも一つの補助装置を備え、前記補助装置は、その開口を介して前記ダッシュボード本体の少なくとも一つの流体循環ダクト接続される流体回路備えることを特徴とするダッシュボード。
【請求項9】
前記補助装置、換気装置、暖房装置、及び空調装置から選択され、前記流体回路、前記ダッシュボード本体の少なくとも一つの流体循環ダクト接続される空気流体回路であり、その一端は前記ダッシュボード本体の外部と流体連通していることを特徴とする請求項8に記載のダッシュボード。
【請求項10】
請求項8及び9のいずれか一項に記載のダッシュボードを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空隙構造及び一体型流体循環ダクトを有するダッシュボード本体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野において、ダッシュボードは、運転席及び助手席の前においてキャビンを横断して設置され、車両のボディシェル、一般的にはAピラーの領域に固定される。ダッシュボード本体は、ダッシュボードのフレームワークを構成し、ダッシュボードの外壁を形成するトリム又はスキンで覆われている。このダッシュボード本体は、特に、コントロールパネル、走行用計器類、空調、カーラジオ、ナビゲーションなどの各種機器、及びこれらの機器を操作するための各種手段を支持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、ダッシュボード本体は、車両の空調システムのダクトなど、多くの要素を組み合わせて構成される。これらは一般的に、ポリマーや複合材料を成形して得られた部品を、ボルトやねじ込みなどによって組み立てたものである。したがって、ダッシュボード本体の組立ては比較的複雑な作業であり、組立品は全体的に重くなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、例えば空気循環のための、流体ダクトを組み込んで単一部品として製造されるダッシュボード本体を提案することにより、これらの欠点を克服しようとするものである。
【0005】
この目的のために、本発明の一つの主題は、特に、「3D印刷」とも呼ばれる「3次元印刷」として知られた付加製造方法を使用して、単一部品として製造され、少なくとも一つの開口を有する少なくとも一つの流体循環ダクトを規定する空隙構造を有するダッシュボード本体に関する。
【0006】
「空隙構造」とは、材料の量の制限を目的とした、ポケット、開口、及び/又は空洞を含む構造を意味する。使用される材料の量は、想定される用途に応じて構造の機械的完全性を確保するために必要な最小限の量に対応してもよい。この材料の量は、例えば、構造の自重に耐えられるように、又は、分散した表面荷重に耐えられるように、或いは、車両のボディシェルに取り付けることができるように、或いは、補助的要素を組み込むことができるように(インタフェースの固定、HVAC(暖房、換気、空調)ユニットの組込み、収納空間の部品の組込みなど)、構造が耐えることができなければならない様々な荷重を計算することによって決定してもよい。
【0007】
したがって、本発明によるダッシュボード本体の空隙構造は、素材が複数のメッシュセル及びノードを形成するネットワークの形態をとる。このようなネットワークは、相互に接続された、中空導管、半中実部品(格子とも呼ばれる内部構造を有する)、又は中実部品に類似した部品から構成されてもよい。これら導管のうちの少なくともいくつかは中空で、流体の循環に使用することができる。
【0008】
そのため、一実施形態では、空隙構造は、少なくともいくつかの流体循環ダクトが流体を通過させるように相互接続されている複数の流体循環ダクトを規定してもよい。換言すれば、流体は、相互に接続されたいくつかの中空導管によって形成された経路をたどってもよい。
【0009】
一つ又は複数の開口によって、一つ又は複数の流体循環ダクトを、例えば、暖房、換気又は空調装置といったダッシュボード本体とは別個の補助装置や他の何らかの装置に接続すること、又は本体の外部の環境に接続すること、或いはその両者が可能になる。
【0010】
そのため、ダッシュボード本体は、ダッシュボード本体によって規定される容積の外面に位置する少なくとも一つの開口を有してもよい。
【0011】
例えば、このような開口は、ダッシュボード本体が車両に搭載された際に、車両キャビンの内側に位置するダッシュボード本体の面に位置してもよい。そして、循環流体はキャビン用の空気であってもよい。
【0012】
代替として、又は組み合わせにより、ダッシュボード本体は、ダッシュボード本体によって規定される容積の内側に位置する少なくとも一つの開口を有してもよい。このような開口は、ダクトを補助装置に接続するために使用してもよい。
【0013】
流体がキャビンを対象としていない場合もあり、その場合、一つ又は複数の開口は、ボード本体の容積の内部の領域に設けられ、一つ以上の補助装置のみに直接接続されるようにしてもよい。
【0014】
ダッシュボード本体の空隙構造はまた、一つ以上の流体循環ダクトが開口するとともに、ダッシュボード本体とは別個の補助装置に接続することを目的とした開口を有する、少なくとも一つの接続ボックスを規定してもよい。接続ボックスは、ダッシュボード本体によって規定される容積の外面上に開口する別の開口を有することもできる。
【0015】
ダッシュボード本体は、ダッシュボード本体の容積を少なくとも部分的に画定する外皮を有する単一部品からなる空隙構造の内部骨格を含んでもよい。外皮は、空隙表面、中実表面、一つ以上の空隙領域及び中実領域を有する表面から選択された外面を有する。特に、外皮は、本体を車両の内部に取り付けられたときにキャビン内から見える部分に相当し得る。
【0016】
本発明によるダッシュボード本体は、例えば、溶融物堆積法、溶融フィラメント製造、又は選択的レーザ焼結を用いた、3次元印刷によって得られる。この目的のためには、このような技術で印刷可能なあらゆる材料を使用することができる。
【0017】
有利には、材料は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)から選択される高分子材料であってもよい。高分子材料は、ガラス又は炭素粒子で強化してもよい。
【0018】
本発明はまた、本発明によるダッシュボード本体と、ダッシュボード本体とは別個の少なくとも一つの補助装置とを備えるダッシュボードに関し、この補助装置は、ダッシュボード本体の開口を介してダッシュボード本体の少なくとも一つの流体循環ダクトに接続された流体回路を備える。
【0019】
一実施形態では、
-補助装置は、換気装置、暖房装置、及び空調装置から選択される。
-流体回路は、本体の少なくとも一つの流体循環ダクトに接続された空気流体回路であり、その一端はダッシュボード本体の外部と流体連通しており、特にダッシュボードが車両の内部に取り付けられたときに車両のキャビンの一部に開口することを意図している。
【0020】
最後に、本発明は、本発明によるダッシュボードを備える車両に関する。
【0021】
一実施形態では、補助装置が換気装置、暖房装置、及び空調装置から選択される場合、補助装置の空気回路に接続される流体循環ダクトは、車両のキャビンの一部に開口してもよい。
【0022】
次に、本発明を、以下の非限定的な添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態によるダッシュボード本体の斜視図であり、本体を前部、下方から見た図である。
図2図2は、ダッシュボード本体の上部をキャビン側から示す部分斜視図である。
図3図3は、車両前方に面したダッシュボード本体の内部領域を示す部分斜視図である。
図4図4は、特に図1~3に示すダッシュボード本体と空調装置とを含む、本発明の一実施形態によるダッシュボード本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において、前、後、上及び下の語は、ダッシュボード本体を車両内に横断して取り付けた場合の車両の前後方向を指す。X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ車両の長手(前から後へ)軸、横軸、及び鉛直軸に対応する。
【0025】
図1は、この例では3次元印刷によって、単一の部品として製造されたダッシュボード本体10を示す。本発明によれば、ダッシュボード本体10は空隙構造を有する。
【0026】
そのため、図1に示されるように、導管12に似た相互に接続された部分のネットワークを形成することが可能である。導管12の各々の厚さ及び形状は、所望の目的のために使用可能な構造、例えば、機械的強度、剛性などの条件を満たす構造が得られるように選択することができる。同様に、導管12の相互接続領域は、様々な形状及び様々なサイズを有してもよい。最後に、導管は、中空、又は中実であってもよく、又は特定の内部構造(半中実)を含んでもよい。中空の導管は、導管の構造を強化すると同時に、導管内に流体を循環させることのできるネットワーク(セル構造)を形成する内部構造を含んでもよいことにも留意されたい。
【0027】
本発明によれば、空隙構造は、少なくとも一つの開口を有する少なくとも一つの流体循環ダクトを規定する。換言すれば、一つ又は複数のダクトが構造に組み込まれ、構造と共に単一の部品として製造される。
【0028】
図示の例では、図1の右側に二つのダクト14,16があり、図1の左側に二つのダクト18,20があり、中央にダクト22がある。
【0029】
ダクト14,18,22は、それぞれ以下を有する。
-ダッシュボード本体10によって規定される容積の外面に開口する開口14a,18a,22aと、
-ダッシュボード本体10によって規定される容積の内側に開口する別の開口14b,18b,22b。
【0030】
図示の例では、この第2開口14b,18b,22bは、空隙構造によって規定される接続ボックス24の内側に開口する。
【0031】
この接続ボックス24自体は、補助装置30、この場合は空調装置に接続するための開口26を有する。
【0032】
同様に、ダクト16,20は、それぞれ以下を有する。
-ダッシュボードによって規定される容積の外面に開口する開口16a,20aと、
-ダッシュボード本体によって規定される容積の内側に開口する別の開口16b,20b。
【0033】
この場合、この第2開口16b,20bは、空隙構造によって規定される他の接続ボックス28の内側に開口する。この第2ボックス28は、ボックス24の直下に配置され、ダッシュボード本体10によって規定される容積の外面11に開口する開口28aと、開口28aを補助装置30に接続するための開口28bとを有する。
【0034】
もちろん、本発明は、ダクトの数、その開口の数、又はそれらの形状又は配置によって限定されるものではない。特に、ダクトの形状及び配置は、これらのダクトが構造の一体部分を形成する限り、ダッシュボード本体に望まれる機械的完全性に依存し得る。
【0035】
さらに、図示されたダクトは、この例では、接続ボックスを介して相互接続されているが、ダクト同士を直接接続することも考えられる。
【0036】
したがって、3D印刷を使用してダッシュボード本体を作成することにより、非常に多くの可能性を持ったアーキテクチャが可能になることが理解される。
【0037】
図示の例では、ダッシュボード本体10は、ダッシュボード本体の容積を部分的に画定する外皮10bとともに単一の部品として製造された空隙構造の内部骨格10aを含む(図2)。
【0038】
この例では、外皮10bは、ダッシュボード本体を車両の内部に取り付けたときにキャビン内から見えるダッシュボード本体の面に実質的に相当する。
【0039】
この例では、外皮10b自体が空隙構造を有している。そのため、外皮10bは、空隙領域及び中実領域を含む外面11を有し、その結果、オープンメッシュファブリック又はネットワークに類似している。内部骨格10aは、外皮10bを構成する導管よりも全体的に厚い導管12を備えることにも留意されたい。
【0040】
このような透かし加工された外皮10bは、例えば織物又は他の何らかの表面といった、連続した(孔のない)図示しない工業的表面で覆われてもよい。オプションとして、内部骨格10aは、ボードの下部において同じ表面で覆われてもよい。
【0041】
変形例では、外皮10bは、孔のない外面を有してもよく、一つ以上の空隙領域及び中実領域を有する表面を有してもよい(不図示)。
【0042】
図4は、上述したダッシュボード本体10と、補助装置30、この例では空調装置とを含むダッシュボード40を示す。この補助装置30はダッシュボード本体とは別個のものであり、例えばネジ、ボルト、リベット等の手段(不図示)を用いてダッシュボード本体に取り付けられる。
【0043】
この補助装置30は空気流体回路32を備え、そのうちの空気取入口34が図4に示される。空気流体回路32は、接続ボックス24及び28を介してダッシュボード本体のダクト14~22に接続される。
【0044】
ダッシュボード本体のダクト14~22をこのダッシュボード本体の実際の構造に組み込むことにより、組み付ける部品点数を大幅に削減することができ、ダッシュボード本体の重量を大幅に軽くすることができる。これにより、複数の部品を組み合わせた従来のダッシュボード本体では23kg以上であったのに対し、約13kgのダッシュボード本体を製造することができる。
【0045】
さらに、個々のダクトの形状や配置が、これらの要素間の固定によって制約を受けることは、もはやない。
【0046】
また、3D印刷は、収納容器やエアバッグ用ハウジング等を形成するためのボックス36のような、他の機能をダッシュボード本体に組み込むことを可能にする。
【0047】
上記説明において、「ダッシュボード本体」という用語は、ダッシュボード主要構造を意味し、その全体形状、容積及び寸法を規定し、ダッシュボードとして使用するために必要な機械的強度及び剛性を有し、走行用計器類、各種付属品及び収納スペースを収容するものである。
図1
図2
図3
図4