(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】巻線型のコイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20220928BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220928BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20220928BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20220928BHJP
H01F 1/22 20060101ALI20220928BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20220928BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20220928BHJP
H01F 41/02 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
H01F17/04 F
B22F1/00 Y
B22F3/00 B
B22F3/02 M
H01F1/22
H01F27/24 J
H01F27/255
H01F41/02 D
(21)【出願番号】P 2018011835
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】小林 怜史
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀憲
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-200456(JP,A)
【文献】特開2017-163099(JP,A)
【文献】特開2010-192890(JP,A)
【文献】特開2006-156694(JP,A)
【文献】米国特許第08723629(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
B22F 1/00
B22F 3/00
B22F 3/02
H01F 1/22
H01F 27/24
H01F 27/255
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軟磁性金属粒子を含み、巻芯と、前記巻芯の一端に設けられた第1フランジと、前記巻芯の他端に設けられた第2フランジと、を有するコアと、
前記コアに巻回された巻線と、
前記巻線の少なくとも一部、前記第1フランジの一部のみ、及び前記第2フランジの一部のみを覆うように前記コアに設けられ、前記コアよりも小さな比透磁率を有する外装体と、
を備え、
前記コアの比透磁率は60以下であり、
前記外装体の比透磁率は
30を超える、
コイル部品。
【請求項2】
前記外装体の比透磁率は50以下である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記コアは、前記複数の軟磁性金属粒子のうち隣接するもの同士が結合した結合体を含む、請求項1
又は請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記コアは、樹脂を含み、
前記複数の軟磁性金属粒子は、前記樹脂中に含まれている、
請求項1
又は請求項2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記コアにおける前記複数の軟磁性金属粒子の含有量が50wt%~95wt%である、請求項
4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記複数の軟磁性金属粒子は、Fe粒子を含み、前記コアにおける前記Fe粒子の含有量が50wt%~95wt%である、請求項
4に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記複数の軟磁性金属粒子は、Fe粒子を含み、前記コアにおける前記Fe粒子の含有量が55wt%~85wt%である、請求項
4に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記外装体は、複数の磁性粒子を含む複合樹脂材料から形成されている、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1フランジに設けられており前記巻線と電気的に接続される第1外部電極と、
前記第2フランジに設けられており前記巻線と電気的に接続される第2外部電極と、
をさらに備える、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線型のコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には様々なコイル部品が用いられている。コイル部品の例として、信号からノイズを除去するために用いられるインダクタ、及び、トランスが挙げられる。
【0003】
コイル部品として、巻線型のコイル部品が知られている。巻線型のコイル部品は、巻芯を有するコアと、この巻芯の周囲に巻回された巻線と、この巻線の各々の端部と電気的に接続される複数の端子電極とを備える。従来のコイル部品は、まずコアを成形し、次に、成形されたコアに巻線を巻回することによって作製される。
【0004】
巻線を覆う外装体を有するコイル部品も知られている。外装体は、通常、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成り、コアのフランジ間に設けられる。透磁率向上のために、外装体には磁性材料から成る磁性粒子が混合されることがある。このような磁性粒子を含有する外装体を備えたコイル部品は、例えば、米国特許第9117580号明細書(特許文献1)に開示されている。この外装体は、コアとは別の部材として構成され、コアに巻線を巻回した後、当該コアに取り付けられる。
【0005】
従来のコイル部品として、一体成形型のコイル部品も知られている。一体成形型のコイル部品は、磁性粒子を含有する複合樹脂材料を巻線とともに加圧成形して得られる。一体成形型のコイル部品においては、一体成形された磁性体に巻線が埋め込まれている。このような一体成形型のコイル部品は、メタルコンポジット型コイル部品とも呼ばれる。従来の一体成形型コイル部品(メタルコンポジット型コイル部品)は、例えば、特開2003-068513号公報(特許文献2)に記載されている。
【0006】
特開2013-055078号公報(特許文献3)に記載されているように、一体成形型コイル部品は、パワーインダクタとして優れたインダクタ特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9117580号明細書
【文献】特開2003-068513号公報
【文献】特開2013-055078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一体成形型コイル部品の成型時には、巻線にも成形圧力が加えられるため、高い成形圧力を用いることができない。このため、一体成形型コイル部品においては、磁性粒子の充填率に制約が生じるので、インダクタンスを高くすることが難しい。また、一体成形型コイル部品においては、成型時の圧力により巻線が損傷を受けることがある。
【0009】
コアとは別体の外装体を有するコイル部品においては、一体成形型コイル部品における上記の制約がない。すなわち、コアとは別体の外装体を有するコイル部品においては、成形されたコアに対して巻線が巻回され、その後に当該巻線を覆うように外装体が取り付けられるので、コアの成形時の圧力に関して巻線に起因する制約がない。よって、コアとは別体の外装体を有するコイル部品によって、一体成形型コイル部品よりも優れたインダクタ特性を実現することが望まれる。
【0010】
本開示の目的の一つは、コアとは別体の外装体を有するコイル部品において、一体成形型コイル部品よりも優れたインダクタ特性を実現することである。本開示のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様によるコイル部品は、複数の軟磁性金属粒子を含むコアと、前記コアに巻回された巻線と、前記巻線の少なくとも一部を覆うように前記コアに設けられ、前記コアよりも小さな比透磁率を有する外装体と、を備える。一態様において、前記外装体の比透磁率は25以上である。
【0012】
本開示の一態様によるコイル部品において、前記コアの比透磁率は30以上である。
【0013】
本開示の一態様によるコイル部品において、前記コアの比透磁率は60以下である。
【0014】
本開示の一態様によるコイル部品において、前記外装体の比透磁率は50以下である。
【0015】
本開示の一態様によるコイル部品において、前記コアは、前記複数の軟磁性金属粒子のうち隣接するもの同士が結合した結合体を含む。
【0016】
本開示の一態様によるコイル部品において、前記コアは、樹脂を含み、前記複数の軟磁性金属粒子は、前記樹脂中に含まれている。
【0017】
本開示の一態様によるコイル部品において、前記コアにおける前記複数の軟磁性金属粒子の含有量が50wt%~95wt%である。
【0018】
本開示の一態様によるコイル部品は、前記複数の軟磁性金属粒子は、Fe粒子を含み、前記コアにおける前記Fe粒子の含有量が50wt%~95wt%である。
【0019】
本開示の一態様によるコイル部品は、前記複数の軟磁性金属粒子は、Fe粒子を含み、前記コアにおける前記Fe粒子の含有量が55wt%~85wt%である。
【0020】
本開示の一態様によるコイル部品は、前記外装体は、複数の磁性粒子を含む複合樹脂材料から形成されている。
【発明の効果】
【0021】
本開示のコイル部品によれば、コアとは別体の外装体を有するコイル部品によって、一体成形型コイル部品よりも優れたインダクタ特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態によるコイル部品を示す斜視図である。
【
図5】
図2に示すコイル部品をI-I線を通る面で切断した断面図である。
【
図6】
図4に示すコイル部品をII-II線を通る面で切断した断面図である。
【
図7】一実施形態によるコイル部品の製造方法を示す模式図である。
【
図8】一実施形態によるコイル部品の製造方法を示す模式図である。
【
図9】コイル部品のモデルについて、インダクタ特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図10】一実施形態によるコイル部品のエネルギー特性及び損失特性を説明するための模式的な図である。
【
図11】他の実施形態によるコイル部品を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示すコイル部品をIII-III線を通る面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照し、本明細書に開示される技術の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0024】
図1から
図6を参照して、一実施形態によるコイル部品について説明する。
図1は、一実施形態によるコイル部品1を示す斜視図、
図2はその正面図、
図3はその右側面図、
図4はその底面図、
図5はコイル部品1を
図2のI-I線を通る面で切断した断面図、
図6はコイル部品を
図4のII-II線を通る面で切断した断面図である。
【0025】
このコイル部品1は、例えば、電子回路においてノイズを除去するために用いられるインダクタである。コイル部品1は、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタであってもよいし、信号ラインにおいて用いられるインダクタであってもよい。
【0026】
図1には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向が示されている。本明細書においては、
図1に示されているX方向、Y方向、及びZ方向を基準としてコイル部品1の構成部材の向きや配置を説明することがある。具体的には、巻芯11の軸芯Aが延びる方向をY方向とし、巻芯11の軸芯Aに垂直で且つ回路基板の実装面に平行な方向をX方向とする。また、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。本明細書においては、X方向をコイル部品1の長さ方向、Y方向をコイル部品1の幅方向、Z方向をコイル部品1の高さ方向ということがある。
【0027】
一実施形態によるコイル部品1は、図示のように、直方体形状に形成される。コイル部品1は、第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c(上面1c)、第2の主面1d(底面1d)、第1の側面1e、及び第2の側面1fを有する。より具体的には、第1の端面1aは、コイル部品1のX軸マイナス方向の端面であり、第2の端面1bは、コイル部品1のX軸プラス方向の端面であり、第1の主面1cは、コイル部品1のZ軸プラス方向の端面であり、第2の主面1dは、コイル部品1のZ軸マイナス方向の端面であり、第1の側面1eは、コイル部品1のY軸プラス方向の端面であり、第2の側面1fは、コイル部品1のY軸マイナス方向の端面である。
【0028】
コイル部品1の第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c、第2の主面1d、第1の側面1e、及び第2の側面1fはいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品1の8つの角部は、丸みを有していてもよい。このように、本明細書においては、コイル部品1の第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c、第2の主面1d、第1の側面1e、及び第2の側面1fの一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部が丸みを有している場合にも、かかるコイル部品1の形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」というときには、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0029】
図示のように、コイル部品1は、ドラムコア型のコア10と、巻線20と、第1の外部電極30aと、第2の外部電極30bと、外装体40とを備えている。
【0030】
コア10は、回路基板の実装面と平行な方向に延びる巻芯11と、当該巻芯11の一方の端部に設けられた直方体形状のフランジ12aと、当該巻芯11の他方の端部に設けられた直方体形状のフランジ12bとを有する。よって、巻芯11は、フランジ12aとフランジ12bとを連結している。フランジ12aとフランジ12bとは、その内面同士が対向するように配置される。フランジ12a及びフランジ12bの内面及び外面並びに当該内面と外面とを接続する4つの面はいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、フランジ12a及びフランジ12bの8つの角部は、丸みを有していてもよい。このように、本明細書においては、フランジ12a及びフランジ12bが湾曲した面を有する場合や、その角部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。
【0031】
フランジ12aの内面と対向するように配置された外面、及び、フランジ12bの内面と対向するように配置された外面はいずれも、コイル部品1の外表面の一部を構成する。フランジ12a及びフランジ12bは、後述する外装体40でその一部又は全部が覆われていてもよい。この場合には、外装体40の外表面がコイル部品の外表面の一部を構成することになる。
【0032】
フランジ12a及びフランジ12bは、その内面及び外面が巻芯11の軸芯Aに対して垂直な方向に延伸するように構成される。本明細書において、「垂直」、「直交」、及び「平行」という用語を使用するときには、数学的に厳密な意味で使用するものではない。例えば、フランジ12aの内面が巻芯11の軸芯Aと垂直な方向に延伸するという場合、フランジ12aの外面と巻芯11の軸芯Aとが為す角度は、90°であってもよいが概ね90°であればよい。概ね90°の角度の範囲には、70°~110°、75°~105°、80°~100°、又は85°~95°の範囲内の任意の角度が含まれうる。「平行」、「直交」及びこれら以外の本明細書に含まれる数学的に厳密に解釈し得る用語についても、同様に、本発明の趣旨、文脈、及び技術常識を考慮して、数学的に厳密な意味よりも幅を持った解釈を取り得る。
【0033】
本発明に適用可能なフランジ12a及びフランジ12bの形状は直方体形状に限られず、フランジ12a及びフランジ12bは様々な形状に形成され得る。一実施形態においては、フランジ12a及びフランジ12bの一方又は両方の角又は辺に一又は複数の切り欠きを形成してもよい。この切り欠きには、後述する巻線20の端部20a,20bを熱圧着することができる。
【0034】
コア10は、第1の端面10a、第2の端面10b、第1の主面10c(上面10c)、第2の主面10d(底面10d)、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。より具体的には、第1の端面10aは、コア10のX軸マイナス方向の端面であり、第2の端面10bは、コア10のX軸プラス方向の端面であり、第1の主面10cは、コア10のZ軸プラス方向の端面であり、第2の主面10dは、コア10のZ軸マイナス方向の端面であり、第1の側面10eは、コア10のY軸プラス方向の端面であり、第2の側面10fは、コア10のY軸マイナス方向の端面である。第1の端面10a、第2の端面10b、第1の主面10c、第2の主面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fはそれぞれ、コイル部品1の第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c、第2の主面1d、第1の側面1e、及び第2の側面1fの一部をなす。
【0035】
図示の実施形態において、巻芯11は、略四角柱形状をなしている。巻芯11は、巻線20を巻回するために適した任意の形状をとることができる。例えば、巻芯11は、三角柱形状、五角柱形状、もしくは六角柱形状等の多角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、又は截頭円錐形状をとることができる。
【0036】
コア10は、複数の軟磁性金属粒子を含んでいる。一実施形態において、コア10は、圧粉コアである。コア10が圧粉コアである場合、当該コア10には、軟磁性金属粒子が互いに結合して成る結合体が含まれる。コア10が圧粉コアである場合、当該コア10は、所定の組成を有する軟磁性金属粒子を結合剤(バインダ)と混合して造粒物を形成し、この造粒物を成形金型によりプレス成形することで圧粉体を作製し、この圧粉体を燒結することにより作製される。コア10が圧粉コアの場合には、軟磁性金属粒子の表面に焼結時に酸化層が形成され、この酸化層を介して隣接する軟磁性金属粒子同士が結合する。つまり、コア10が圧粉コアである場合には、コア10は、隣接する軟磁性金属粒子が互いに結合してなる結合体を含む。
【0037】
他の実施形態において、コア10は、樹脂硬化型コアである。樹脂硬化型のコア10は、硬化された樹脂と、この樹脂中に分散した複数の軟磁性金属粒子と、を含む。樹脂硬化型のコア10は、具体的には、軟磁性金属粒子を熱硬化性樹脂と混合して混合物を形成し、この混合物を成形型内で熱硬化することによって作製される。この熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、又はこれら以外の熱硬化性樹脂が用いられ得る。樹脂硬化型のコア10を作製するために、熱硬化性樹脂に代えて、光硬化性樹脂、又は、ガラスもしくは絶縁性酸化物(例えば、Ni-Znフェライトやシリカ)を用いることもできる。
【0038】
コア10に含まれる軟磁性金属粒子は、例えば、(1)Fe、Ni等の金属粒子、(2)Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Ni合金等の結晶合金粒子、(3)Fe-Si-Cr-B-C合金、Fe-Si-B-Cr合金等の非晶質合金粒子、またはこれらの混合材料の粒子である。コア10に含まれる軟磁性金属粒子の組成は、前記のものに限られない。例えば、コア10に含まれる軟磁性金属粒子は、Co-Nb-Zr合金、Fe-Zr-Cu-B合金、Fe-Si-B合金、Fe-Co-Zr-Cu-B合金、Ni-Si-B合金、又はFe-AL-Cr合金であってもよい。
【0039】
コア10に含まれる軟磁性金属粒子は、アトマイズ法又はこれ以外の公知の方法を用いて製造することができる。コア10に含まれる軟磁性金属粒子として、市販されている軟磁性金属粒子を用いることもできる。市販の金属磁性粒子として、例えば、エプソンアトミックス(株)社製PF-20F、日本アトマイズ加工(株)社製SFR-FeSiAlがある。
【0040】
コア10に含まれる軟磁性金属粒子の平均粒径は、例えば、1μm~50μmとされる。
【0041】
一実施形態において、コア10の比透磁率は、30以上である。コア10の比透磁率が60よりも大きくなると、コア10の絶縁抵抗が急激に小さくなることが知られている。すなわち、コア10の比透磁率を大きくするためには、コア10における軟磁性金属粒子の充填率を大きくする必要があるが、コア10における軟磁性金属粒子の充填率を大きくすると、軟磁性金属粒子間に存在する絶縁抵抗層が薄くなるため、コア10の絶縁抵抗が急激に小さくなってしまうのである。よって、一実施形態において、コア10の比透磁率は、60以下とされる。コア10は、その比透磁率が30~60の範囲における任意の値を取るように構成されてもよい。
【0042】
コア10の比透磁率は、コア10に含まれる軟磁性金属粒子の組成、コア10における軟磁性金属粒子の含有比率(充填率)、及びこれら以外の要素を通じて調整され得る。例えば、鉄の含有比率が高い組成の合金又は純鉄から成る軟磁性金属粒子を用いることにより、コア10の比透磁率を上げることができる。また、コア10における軟磁性金属粒子の充填率を上げることにより、当該コア10の比透磁率を上げることができる。
【0043】
一実施形態において、コア10全体に対する軟磁性金属粒子の含有量は、50wt%~99wt%である。一実施形態において、コア10全体に対する軟磁性金属粒子の含有量は、95wt%~99wt%である。
【0044】
一実施形態において、コア10は、軟磁性金属粒子として純鉄の粒子(Fe粒子)を含み、Fe粒子の含有量が50wt%~95wt%となるように構成される。一実施形態において、コア10全体に対するFe粒子の含有量は、98wt%~99wt%である。
【0045】
巻芯11には、巻線20が巻回されている。巻線20は、導電性に優れた金属材料から成る導線の周囲を絶縁被膜で被覆することにより構成される。巻線20用の金属材料としては、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、もしくはAg(銀)のうちの1以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。
【0046】
フランジ12a及びフランジ12bの少なくとも一方において、そのX軸方向の両端部には外部電極が設けられる。外部電極は、フランジ12a及びフランジ12bの両方に設けられてもよいし、片方だけ(フランジ12aだけ、又は、フランジ12bだけ)に設けられてもよい。
図1には、フランジ12a及びフランジ12bの両方に外部電極が設けられた例が示されている。
【0047】
本発明の一実施形態において、外部電極30aは、コア10の底面10dのX軸マイナス方向端部、端面10aの所定の高さまでの領域、側面10e及び側面10fのX軸マイナス方向端部の所定の高さまでの領域を被覆するように構成される。同様に、外部電極30bは、コア10の底面10dのX軸プラス方向端部、端面10bの所定の高さまでの領域、側面10e及び側面10fのX軸プラス方向端部の所定の高さまでの領域を被覆するように構成される。
【0048】
図示した外部電極30a及び外部電極30bの形状及び配置はあくまでも例示であり、外部電極30a及び外部電極30bは様々な形状及び配置をとることができる。コイル部品1は、外部電極30a及び外部電極30bに加えて、適宜ダミー電極を備えてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、外部電極30a及び外部電極30bはそれぞれ、下地電極と、この下地電極を覆うめっき層と、を有する。この下地電極は、例えば、ディップ(浸漬)によりペースト状の導電材料(例えば、銀)をコア10の表面に塗布し、この塗布された導電材料を乾燥させることによって形成される。下地電極の上に形成されるめっき層は、例えば、ニッケルめっき層及び当該ニッケルめっき層の上に形成されるスズめっき層の2層から成る。外部電極30a及び外部電極30bは、スパッタリング法または蒸着法により形成してもよい。
【0050】
巻線20の一方の端部は、外部電極30aと電気的に接続され、巻線20の他方の端部は、外部電極30bと電気的に接続される。
【0051】
外装体40は、樹脂と、複数の磁性粒子とを含む。外装体40に含まれる樹脂は、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂であり、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂、又は巻線型のコイル部品において巻線を被覆するために用いられる前記以外の任意の公知の樹脂材料である。
【0052】
本発明の一実施形態において、外装体40は、複数の磁性粒子を含む樹脂シートを巻芯11に巻回することで形成される。外装体40は、巻線20の少なくとも一部を覆うように設けられる。一実施形態においては、外装体40は、巻線20の端部以外の全ての部分を覆うように設けられる。例えば、外装体40は、巻線20のうちフランジ12aの内面とフランジ12bの内面との間にある部分を全て覆うように設けられる。このように、外装体40は、フランジ12aとフランジ12bとの間において、巻線20の少なくとも一部を覆うように巻芯11の周囲に設けられる。
【0053】
外装体40に含有されている磁性粒子は、例えば、金属磁性粒子、及びアモルファス状の合金粒子を含む。複数の磁性粒子の一部として、前記の材料から成る粒子に加えて、SiO2やAl2O3などの無機材料粒子、又はガラス系粒子を含むこともできる。外装体40に含まれる磁性粒子は、コア10に含まれる軟磁性合金粒子と同じ組成の軟磁性合金材料から形成されてもよい。
【0054】
外装体40は、コア10と別体の部材として準備された部材(後述する樹脂シート)から形成される。外装体40は、コア10よりも小さな比透磁率を有するように構成される。一実施形態において、外装体40の比透磁率は、25以上である。一実施形態において、外装体40の比透磁率は、50以下である。外装体40は、その比透磁率が25~50の範囲における任意の値を取るように構成されてもよい。外装体40の比透磁率は、磁性粒子の材料の選択、磁性粒子の含有比率、及びこれら以外の要素を通じて調整され得る。例えば、鉄の含有比率が高い合金又は純鉄から成る磁性粒子を用いることにより、外装体40の比透磁率を上げることができる。また、外装体40における磁性粒子の充填率を上げることにより、当該外装体40の比透磁率を上げることができる。
【0055】
コイル部品1や各構成要素の寸法の例について説明する。コイル部品1は、例えば、長さ寸法(X方向の寸法)L1が1~2.6mm、幅寸法(Y方向の寸法)W1が0.5~2.1mm、高さ寸法(Z方向の寸法)H1が0.3~1.05mmとなるように形成される。
【0056】
コイル部品1は、様々な形状、寸法、及び配置とすることができる。
図11及び
図12を参照して本発明の他の実施形態によるコイル部品について説明する。
図11は、他の実施形態によるコイル部品101の斜視図であり、
図12は、コイル部品101を
図11のIII-III線を通る面で切断した断面図である。図示のように、コイル部品101は、ドラムコア型のコア110と、巻線120と、第1の外部電極130aと、第2の外部電極130bと、外装体140とを備えている。コア110は、回路基板の実装面と垂直な方向に延びる巻芯111と、当該巻芯111の一方の端部に設けられた板状のフランジ112aと、当該巻芯111の他方の端部に設けられた板状のフランジ112bとを有する。フランジ112a及びフランジ112bはいずれも、平面視において八角形に形成されている。コイル部品101は、巻芯111が回路基板の実装面に対して垂直な方向に延伸している点で、巻芯11が回路基板の実装面に対して平行な方向に延伸しているコイル部品1と異なっている。コイル部品1は、巻芯11が回路基板の実装面に対して平行な方向に延伸しているため、横置型のコイル部品と呼ばれることがある。コイル部品101は、巻芯111が回路基板の実装面に対して垂直な方向に延伸しているため、縦置型のコイル部品と呼ばれることがある。コア110、巻線120、第1の外部電極130a、第2の外部電極130b、及び外装体140はそれぞれ、コイル部品1の対応するコア10、巻線20、第1の外部電極30a、第2の外部電極30b、及び外装体40と同じ又は同様の材料から、同じ又は同様の方法により形成される。一実施形態において、コイル部品101は、長さ方向の寸法(X軸方向の寸法)L11が1.0~2.6mm、幅方向の寸法W11(Y軸方向の寸法)が1.0~2.6mm、高さ方向の寸法(Z軸方向の寸法)H11が0.5~0.8mmとなるように構成される。このような寸法とすることにより巻芯111の長さを短くすることができる。巻芯111の長さを短くすることにより、巻線120から発生する磁束が通過する磁路を短くすることができるため、小型で高インダクタンスの部品とできる。これらの寸法はあくまで例示であり、本発明を適用可能なコイル部品は、本発明の趣旨に反しない限り、任意の寸法を取ることができる。
【0057】
本発明の一実施形態において、コア10は、長さ寸法(X方向の寸法)L2が1.0~2.5mm、幅寸法(Y方向の寸法)W2が0.5~2.0mm、高さ寸法(Z方向の寸法)H2が0.3~1.0mmとなるように形成される。本発明の一実施形態において、コア10は、その高さ方向の寸法H2の長さ方向の寸法L2に対する比(H2/L2)が0.2~0.5となるように形成される。
【0058】
本発明の一実施形態において、コア10の巻芯11の軸芯Aに垂直な断面は、そのX方向の長さが1.4mmとされ、Z方向の厚さが0.4mmとされる。
【0059】
本発明の一実施形態において、コア10のフランジ12a及びフランジ12bの巻芯11の軸芯Aに平行な方向の寸法(Y方向の寸法)W4は、0.15mmとされる。
【0060】
本発明の一実施形態において、フランジ12a及びフランジ12bは、Z軸方向における厚さ(高さ)H2が巻芯11の軸芯Aに平行な方向における厚さW4よりも厚くなるように構成される。
【0061】
上述したコア10の各部の寸法はあくまで例示であり、本発明を適用可能なコイル部品に用いられるドラムコアは、本発明の趣旨に反しない限り、任意の寸法を取ることができる。
【0062】
続いて、
図7及び
図8を参照して、本発明の一実施形態に従ったコイル部品1の製造方法について説明する。
図7及び
図8は、コイル部品1の製造方法を説明する模式図である。
図7は、製造途中のコイル部品1をII-II線を通る面で切断した断面から見た図を模式的に示しており、
図8は、製造途中のコイル部品1を右側面から見た図を模式的に示している。
【0063】
まず、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、コア10を準備する。コア10は、例えば、樹脂硬化型コアである。樹脂硬化型のコア10は、上述した軟磁性金属粒子を熱硬化性樹脂と混合して混合物を形成し、この混合物を熱硬化することによって作製される。コア10は、圧粉コアでもよい。圧粉コアは、上述した軟磁性金属粒子を結合剤(バインダ)と混合して造粒物を形成し、この造粒物を成形金型によりプレス成形することで圧粉体を作製し、この圧粉体を燒結することにより作製される。焼結後又は硬化後の成型体に、必要に応じて切削加工が行われ得る。
【0064】
次に、ディップ(浸漬)により、フランジ12aの下部に銀ペーストを付着させ、この銀ペーストを乾燥させて、フランジ12aのうちコア10の側面10a側の端部に第1の下地電極(不図示)を形成し、フランジ12aのうちコア10の側面10b側の端部に第2の下地電極(不図示)を形成する。この第1の下地電極と第2の下地電極は、フランジ12aに、コイル部品1のX方向において所定間隔だけ互いから離間するように設けられる。各下地電極は、ディップ以外に、筆塗り、転写、印刷、薄膜プロセス、金属板の貼り付け、金属テープの貼り付け等の公知の様々な手法により形成され得る。
【0065】
次に、
図7(b)及び
図8(b)に示すように、巻芯11に巻線20を所定の巻数だけ巻回する。巻線20の一方の端部20aは、第1の下地電極に熱圧着され、巻線20の他方の端部20bは、第2の下地電極に熱圧着される。巻線20は、熱圧着以外にも公知の様々な手法で下地電極に固定され得る。例えば、巻線20は、金属によるロウ付け、耐熱性接着剤による接着、もしくは金属板による挟み込み、またはこれらの組み合わせにより、対応する下地電極に固定され得る。
【0066】
次に、
図7(c)及び
図8(c)に示すように、樹脂シート40a及び樹脂シート40bを準備する。樹脂シート40a及び樹脂シート40bは以下のようにして形成される。まず、熱硬化性樹脂を扁平形状に形成された磁性粒子とともに混練して混練組成物を得る。次に、当該混練組成物を基板上に塗工することで、コア10の高さの2倍又はそれ以上の厚みのシート体を得る。次に、当該シート体を、約120℃の熱を加えながら圧延する。この圧延後のシート体の厚みは、圧延前のシート体の厚みの半分程度とされる。この圧延工程により、当該シート体における磁性粒子の含有割合(樹脂に対する磁性粒子の割合)が所望の割合となるように調整できる。この圧延後のシート体を、その幅がフランジ12aとフランジ12bとの間隔にほぼ等しくなるように切断することで長尺の樹脂シート40a及び樹脂シート40bが得られる。
【0067】
次に、
図7(d)及び
図8(d)に示すように、樹脂シート40aをコア10の上面10c側からフランジ12aとフランジ12bとの間に挿入し、同様に、樹脂シート40bをコア10の下面10d側からフランジ12aとフランジ12bとの間に挿入する。
【0068】
次に、
図7(e)及び
図8(e)に示すように、フランジ12aとフランジ12bとの間に挿入された樹脂シート40a及び樹脂シート40bを、巻芯11の周りに巻線20を覆うように巻き付けて外装体40を形成する。つまり、フランジ12aとフランジ12bとの間で巻芯11の周りに巻線20を覆うように巻き付けられた樹脂シート40a及び樹脂シート40bが外装体40となる。樹脂シート40a及び樹脂シート40bは、巻線20の端部20a及び端部20bが外装体40から露出するように巻き付けられる。
【0069】
次に、
図7(f)及び
図8(f)に示すように、幅方向(X方向)における端面10a側の端部において、コア10の底面10d及び端面10aの所定の高さまでの領域に銀ペーストを塗布することにより外部電極30aが形成される。幅方向(X方向)における端面10b側の端部においても同様に、コア10の底面10d及び端面10bの所定の高さまでの領域に銀ペーストを塗布することにより外部電極30bが形成される。この外部電極30aは、巻線20の端部20aと電気的に接続されるように形成され、外部電極30bは、巻線20の端部20bと電気的に接続されるように形成される。
【0070】
必要に応じ、フランジ12a及びフランジ12b又は外装体40の一部に研磨加工が施される。以上のようにして、コイル部品1が作製される。
【0071】
以上のコイル部品1の製造工程において、樹脂シート40a及び樹脂シート40bは、適宜所望の大きさに切断される。例えば、
図7(e)及び
図8(e)に示した工程で、樹脂シート40a又は樹脂シート40bがX軸方向に余分な長さを有している場合には、そのX軸方向の端部が切り落とされる。
【0072】
続いて、一実施形態におけるコイル部品1のインダクタ特性について説明する。インダクタ特性のシミュレーションのために、5つの評価用モデル(評価用モデル#0~評価用モデル#4)を構成した。評価用モデル#0~評価用モデル#4の各々は、長さ寸法(X方向の寸法)が2.0mm、幅寸法(Y方向の寸法)が1.6mm、高さ寸法(Z方向の寸法)が1.0mmであり、設計インダクタンス値が0.5μHの横置型のコイル部品をモデル化したものである。評価用モデル#0~評価用モデル#4の各々は、コア10に相当するコアと、巻線11に相当する被覆銅線と、外装体40に相当する外装体と、第1の外部電極30a及び第2の外部電極30bに相当する一組の外部電極と、を有している。評価用モデル#1~評価用モデル#4は、一実施形態によるコイル部品1の実施例であり、評価用モデル#0は、比較例である。各モデルにおける巻線の巻回数、並びに、コア及び外装体の比透磁率は、以下の表1の通りである。
【表1】
【0073】
この各評価用モデルのインダクタ特性と比較するために、一体形成された磁性体に巻線が埋め込まれている一体形成型コイル部品の評価用モデル(一体成形型モデル#1~一体成形型モデル#4)を構成した。一体成形型モデル#1~一体成形型モデル#4の各々は、長さ寸法(X方向の寸法)が2.0mm、幅寸法(Y方向の寸法)が1.6mm、高さ寸法(Z方向の寸法)が1.0mmであり、設計インダクタンス値が0.5μHの横置型のコイル部品をモデル化したものである。各モデルにおける巻線の巻回数、及び、巻線が巻回される磁性体の比透磁率は、以下の表2の通りである。一体形成型モデルは、一体形成された磁性体に巻線が埋め込まれている一体成形型コイル部品のモデルであるから、コアに相当する部位の比透磁率と外装体に相当する部位の比透磁率とが等しい。
【表2】
【0074】
以上のように構成した評価用モデル#0~評価用モデル#4及び一体成形型モデル#1~一体成形型モデル#4のそれぞれについて、LI
2/2及びL/Rdcをシミュレーションにより算出した。各モデルについて算出されたLI
2/2及びL/Rdcを
図9に示す。本発明者らは、コイル部品のインダクタ特性のうち、LI
2/2、及び、L/Rdcで示される特性に着目した。ここで、Lはコイル部品のインダクタンス、Iは巻線に流れる電流、Rdcは巻線の直流抵抗をそれぞれ示す。LI
2/2は、コイル部品に蓄えられるエネルギーを表すため、本明細書では、LI
2/2によって表される特性をエネルギー特性と呼ぶことがある。L/Rdcは、単位周波数におけるQ値を表すため、本明細書では、L/Rdcによって表される特性を損失特性と呼ぶことがある。
【0075】
図9は、コイル部品1の複数の評価用モデルについて、インダクタ特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図9は、横軸がL/Rdcを表し、縦軸がLI
2/2とを表している。
図9において、a0~a4はそれぞれ、上述のシミュレーションによる評価用モデル#0~評価用モデル#4についての算出値をプロットしたものであり、C1はa0~a4に基づく近似曲線である。b1~b4は、上述のシミュレーションによる一体成形型モデル#1~一体成形型モデル#4についての算出値をプロットしたものであり、C2はb1~b4に基づく近似曲線である。
図9のグラフにおいては、プロット位置が横軸の正方向へ行くほどモデル化されたコイル部品の損失特性は高くなり(つまり、低損失となり)、縦軸の正方向へ行くほどモデル化されたコイル部品のエネルギー特性が高くなる。
【0076】
図示のように、近似曲線C1と近似曲線C2とは、交点X1にて交わっている。この交点X1は、近似曲線C2において、比透磁率が25となる位置又は概ね25となる位置に相当する。図中のa0~a4から、評価用モデル#0~評価用モデル#4についてのLI2/2及びL/Rdcの測定値は、そのコアの比透磁率が大きくなると、近似曲線C1に沿って右下方向へシフトすることが分かる。また、b1~b4から、一体成形型モデル#1~一体成形型モデル#4についてのLI2/2及びL/Rdcの測定値は、その磁性体の比透磁率が大きくなると、近似曲線C2に沿って右下方向にシフトすることが分かる。また、横軸方向の交点X1よりもプラス側の領域において、近似曲線C1よりも近似曲線C2の方が左方にあり、縦軸方向の交点X1よりもマイナス側の領域において、近似曲線C1よりも近似曲線C2の方が下方にあることが分かる。
【0077】
コイル部品1においては、コア10及び外装体40の比透磁率が高いほどL/Rdcの値は大きくなるため、コアの比透磁率を一定とすると、外装体の比透磁率が大きくなるほどLI2/2及びL/Rdcの測定値を示すプロット位置はグラフの右側(横軸の正方向側)にシフトする。例えば、コアの比透磁率が40で外装体の比透磁率が25であるコイル部品について、コアの比透磁率を40としたまま外装体の比透磁率を25から40まで大きくすると、LI2/2及びL/Rdcの測定値のプロット位置は、a2を基点として概ね曲線C3に沿って移動する。曲線C3は、a2とb2との間に延在する曲線である。コイル部品1においては、コア10の比透磁率が外装体40の比透磁率よりも大きいため、曲線C3は曲線C2よりも下方まで延びることはない。曲線C2と曲線C3との交点は、コアの比透磁率及び外装体の比透磁率がいずれも40の位置(つまり、b2の位置)である。曲線C3の具体的な形状は様々な要因によって変動するが、曲線C3は、このような変動要因によらず、a2から横軸の正方向に向かって曲線C2とぶつかる位置(b2の位置)まで伸びる。コアの比透磁率が40で一定の場合におけるプロット位置について説明したが、コアの比透磁率が変動しても上記の原理は同様に当てはまる。例えば、コアの比透磁率が50の場合には、測定値のプロット位置は、a3を基点として横軸の正方向に曲線C2とぶつかる位置まで延びる曲線(曲線C3に相当する曲線)上にある。
【0078】
上記のように、コイル部品1において、外装体の比透磁率は25よりも大きく、コアの比透磁率は外装体の比透磁率よりも大きいので、コイル部品1のLI
2/2及びL/Rdcの測定値は、曲線C1のうち交点X1よりも横軸方向の正の側にある位置(例えば、a2)から横軸方向の正方向に曲線C2とぶつかる位置まで延伸する曲線(曲線C3に相当する曲線)の上に位置する。よって、コイル部品1のLI
2/2及びL/Rdcの測定値が分布し得る領域は、概ね、
図10でハッチングされている領域R1の内部となる。領域R1は、曲線C2よりもグラフの右上に位置している。
【0079】
以上のように、外装体がコアよりも小さな比透磁率を有し、当該外装体の比透磁率が25以上のコイル部品は、一体形成型コイル部品と比べて、優れたエネルギー特性及び損失特性を有することが確認できた。
【0080】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0081】
例えば、コイル部品1は、4つの外部電極を有する4端子型のコイル部品とすることもできる。この4端子型のコイル部品は、巻線20に代えて、互いから電気的に絶縁された2本の巻線が巻芯11の周囲に巻回される。この2本の巻線のそれぞれの両端部が、4つの外部電極のうち適当なものに接続される。4端子のコイル部品は、コモンモードチョークコイル、トランス、又はそれ以外の高い結合係数が要求されるコイル部品として用いられ得る。
【0082】
コイル部品1が中間端子を有するトランスとして用いられる場合には、フランジ12aとフランジ12bとの間に中間フランジを設け、この中間フランジに中間端子となる外部電極を設けてもよい。
【0083】
コイル部品1が3系統の巻線を有するコモンモードチョークコイルとして用いられる場合には、フランジ12aとフランジ12bとの間に中間フランジを設け、この中間フランジに3番目の系統の巻線のための外部電極を設けることができる。例えば、MIPIアライアンスによって策定されたC-PHYでは、1レーンあたり3本の信号線を用いて信号を差動伝送することが規定されている。コイル部品1は、このC-PHYに準拠したコモンモードチョークコイルとして用いられ得る。
【0084】
コイル部品1は、そのコア10の巻芯11が回路基板の実装面に対して垂直な方向に延伸するように配置されてもよい。この場合、コイル部品1は、縦置きで回路基板に実装される。
【符号の説明】
【0085】
1 コイル部品
10 コア
20 巻線
30a,30b 外部電極
40 外装体