(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】コイル部品及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20220928BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20220928BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20220928BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/32 103
H01F17/04 A
H01F27/29 Q
H01F27/32 170
H01F27/28 147
(21)【出願番号】P 2018022275
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】松井 基樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀憲
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-322820(JP,A)
【文献】特開2016-035972(JP,A)
【文献】特開2017-069391(JP,A)
【文献】特開2002-093629(JP,A)
【文献】特開2016-031960(JP,A)
【文献】特開2017-168538(JP,A)
【文献】特開2010-205802(JP,A)
【文献】特開2015-032643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00-H01F21/12
H01F27/28
H01F27/29
H01F27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻軸と前記巻軸の軸方向の両端に設けられた第1鍔部及び第2鍔部とを含むドラムコアと、
前記巻軸に導線が
アルファ巻きで巻回された周回部と、前記導線が前記周回部から前記第1鍔部の第1側面側に引き出され、前記第1鍔部の前記第1側面に沿って前記第1鍔部側に曲げられた1対の引出部と、を含むコイルと、
前記第1鍔部の前記巻軸が設けられている内側の面とは反対側の面である外側の面に設けられ、前記1対の引出部に接続された1対の外部電極と、を備え、
前記第1鍔部の前記第1側面と前記周回部の最外周部との最短距離
は、前記第1鍔部の前記第1側面とは前記巻軸を挟んで反対側の面である第2側面と前記周回部の最外周部との最短距離よりも短
くかつ前記巻軸の軸心に垂直な方向の前記導線の厚さ以下である、コイル部品。
【請求項2】
前記第2鍔部の第3側面と前記周回部の最外周部との最短距離が、前記第2鍔部の前記第3側面とは前記巻軸を挟んで反対側の面である第4側面と前記周回部の最外周部との最短距離よりも短く、
前記第1鍔部の前記第1側面と前記第2鍔部の前記第3側面とは、前記巻軸に対して同じ側に位置する、請求項
1記載のコイル部品。
【請求項3】
前記巻軸の軸心は、前記第1鍔部の前記内側の面の中心から前記第1鍔部の前記第1側面側にずれている、請求項1
または2記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1鍔部と前記第2鍔部の少なくとも一部の間に、前記コイルを覆って設けられ、磁性粒子を含有する樹脂で形成された外装樹脂を備え、
前記外装樹脂は前記1対の引出部を覆い、前記第1鍔部の前記第1側面では前記外装樹脂は前記第1鍔部の前記第1側面よりも外側に突出している、請求項1から
3のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1鍔部の前記第1側面側において前記外装樹脂の前記引出部を覆う前記巻軸の軸心に垂直な方向の厚さの最小値は、前記第1鍔部の前記第1側面以外の側面側において前記外装樹脂の前記周回部を覆う前記巻軸の軸心に垂直な方向の厚さの最小値よりも大きい、請求項
4記載のコイル部品。
【請求項6】
前記外装樹脂は、前記第1鍔部の前記第1側面では前記第1鍔部の前記第1側面よりも外側に突出し、前記第1鍔部の前記第1側面を除く少なくとも1つの側面においては前記第1鍔部と前記第2鍔部との間に収まっている、請求項
4または
5記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1鍔部の前記第1側面側において前記外装樹脂の前記引出部を覆う前記巻軸の軸心に垂直な方向の厚さの最小値は、0.2mm以上である、請求項
4から
6のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項8】
前記周回部は、前記第1鍔部と前記第2鍔部との間に収まっている、請求項1から
7のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項9】
前記コイルは、前記導線が平角線である、請求項1から
8のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項10】
前記1対の外部電極は、前記コイル部品の表面のうちの前記第1鍔部の前記外側の面を含む表面にのみ設けられている、請求項1から
9のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された回路基板と、を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
直方体形状をした素体部の対向する端面にコイルを構成する導線の両端を引き出して外部電極に接続させ、外部電極のうちの素体部の下面以外に設けられた部分を絶縁性樹脂で被覆したコイル部品が知られている(例えば、特許文献1)。また、巻軸と巻軸の両端に設けられた1対の鍔部とを含むドラムコアと、巻軸に導線が巻回された周回部と周回部から導線が引き出された引出部とを含むコイルと、を備えるコイル部品が知られている。このようなコイル部品において、引出部が1対の鍔部のうちの一方の鍔部側に曲げられて外部電極に接続された構成が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-201466号公報
【文献】特開2014-99501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コイル部品は小さな実装スペースが求められていると同時に、大きな許容電流を流すことが求められている。特許文献1の引出部の導線が2ヶ所の別々の面に設けられた外部電極に接続される構造では、小さな実装スペースの要求を満たすことが出来ない。特許文献2の引出部の導線が1つの面に設けられた外部電極にそれぞれ接続される構造では、小さな実装スペースの要求を満たすことが出来るが、大きな許容電流を流すために線径の大きな、例えば線径0.2mm以上の大きな断面積の導線を使用した場合、外部電極に導線を接合する部分で導線の弾性力などが原因でオープンになり易い。これらを解決するために、ドラムコアの巻軸に巻回されたコイルの周回部からコイルを構成する導線からなる引出部を引き出し、この引出部をドラムコアの1対の鍔部のうちの一方の鍔部側に曲げたコイル部品において、導線を外部電極へ接合せずに、導線端にスパッタやメッキなどで外部電極を形成する構造が考案されている。しかしこの場合においては、1対の鍔部のうちの一方の鍔部側に曲げ加工を行う際に、導線の弾性が原因で、コイルの周回部の巻きが緩んだりすることがある。特に近年は、断面の大きな平角線などの導線を用いたり、アルファ巻きのようにほとんど曲げ方向の力をかけないで導線を巻回す構造を用いたりするようになってきているため、コイルの周回部の巻き終わり部分が特に緩み易くなっている。この巻緩みにより、インダクタンスの低下などが生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、コイルの周回部の巻き終わり部分の緩みを抑制し、インダクタンスの低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、巻軸と前記巻軸の軸方向の両端に設けられた第1鍔部及び第2鍔部とを含むドラムコアと、前記巻軸に導線がアルファ巻きで巻回された周回部と、前記導線が前記周回部から前記第1鍔部の第1側面側に引き出され、前記第1鍔部の前記第1側面に沿って前記第1鍔部側に曲げられた1対の引出部と、を含むコイルと、前記第1鍔部の前記巻軸が設けられている内側の面とは反対側の面である外側の面に設けられ、前記1対の引出部に接続された1対の外部電極と、を備え、前記第1鍔部の前記第1側面と前記周回部の最外周部との最短距離は、前記第1鍔部の前記第1側面とは前記巻軸を挟んで反対側の面である第2側面と前記周回部の最外周部との最短距離よりも短くかつ前記巻軸の軸心に垂直な方向の前記導線の厚さ以下である、コイル部品である。
【0008】
上記構成において、前記第2鍔部の第3側面と前記周回部の最外周部との最短距離が、前記第2鍔部の前記第3側面とは前記巻軸を挟んで反対側の面である第4側面と前記周回部の最外周部との最短距離よりも短く、前記第1鍔部の前記第1側面と前記第2鍔部の前記第3側面とは、前記巻軸に対して同じ側に位置する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記巻軸の軸心は、前記第1鍔部の前記内側の面の中心から前記第1鍔部の前記第1側面側にずれている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1鍔部と前記第2鍔部の少なくとも一部の間に、前記コイルを覆って設けられ、磁性粒子を含有する樹脂で形成された外装樹脂を備え、前記外装樹脂は前記1対の引出部を覆い、前記第1鍔部の前記第1側面では前記外装樹脂は前記第1鍔部の前記第1側面よりも外側に突出している構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1鍔部の前記第1側面側において前記外装樹脂の前記引出部を覆う前記巻軸の軸心に垂直な方向の厚さの最小値は、前記第1鍔部の前記第1側面以外の側面側において前記外装樹脂の前記周回部を覆う前記巻軸の軸心に垂直な方向の厚さの最小値よりも大きい構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記外装樹脂は、前記第1鍔部の前記第1側面では前記第1鍔部の前記第1側面よりも外側に突出し、前記第1鍔部の前記第1側面を除く少なくとも1つの側面においては前記第1鍔部と前記第2鍔部との間に収まっている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1鍔部の前記第1側面側において前記外装樹脂の前記引出部を覆う前記巻軸の軸心に垂直な方向の厚さの最小値は、0.2mm以上である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記周回部は、前記第1鍔部と前記第2鍔部との間に収まっている構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記コイルは、前記導線が平角線である構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記1対の外部電極は、前記コイル部品の表面のうちの前記第1鍔部の前記外側の面を含む表面にのみ設けられている構成とすることができる。
【0018】
本発明は、上記に記載のコイル部品と、前記コイル部品が実装された回路基板と、を備える電子機器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コイルの周回部の巻き終わり部分の緩みを抑制し、インダクタンスの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は、比較例に係るコイル部品の透視平面図、
図1(b)は、
図1(a)をA方向から見たときの透視側面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、実施例1に係るコイル部品の透視平面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2(a)をA方向から見たときの透視側面図、
図3(b)は、
図2(a)のB-B間の断面図、
図3(c)は、
図2(a)のC-C間の断面図である。
【
図4】
図4は、引出部を覆う外装樹脂の厚さとインダクタンスとの関係を評価したシミュレーション結果である。
【
図5】
図5(a)から
図5(d)は、巻軸の他の形状を示す平面図である。
【
図6】
図6は、実施例2に係るコイル部品の断面図である。
【
図7】
図7は、実施例3に係る電子機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0022】
まず、比較例のコイル部品について説明する。
図1(a)は、比較例に係るコイル部品の透視平面図、
図1(b)は、
図1(a)をA方向から見たときの透視側面図である。
図1(a)及び
図1(b)のように、比較例のコイル部品500は、ドラムコア510とコイル540を備える。ドラムコア510は、巻軸512と巻軸512の両端に設けられた鍔部514a及び514bとを含む。巻軸512の軸心は、鍔部514a及び514bの巻軸512が設けられている内側の面515a及び515bの中心と一致している。ここで言う、内側の面515a及び515bには巻軸512が設けられている部分を含む。鍔部514a及び514bの内側の面515a及び515bの中心とは、例えば鍔部514a及び514bの内側の面515a及び515bの図形的な重心である。一例を挙げれば、鍔部514a及び514bの内側の面515a及び515bが四角形の場合、図形的な重心は2つの対角線の交点である。
【0023】
コイル540は、導線が巻軸512に巻回された周回部542と周回部542から導線が引き出された引出部544a及び544bとを含む。引出部544a及び544bは、鍔部514a側に折り曲げられ、鍔部514aの内側の面515aとは反対側の面である外側の面517aに設けられた外部電極560a及び560bに接続されている。巻軸512の軸心は、鍔部514aの内側の面515aの中心と一致していることから、周回部542の最外周部と、一方向に引き出された引出部544a及び544bが折り曲げられる鍔部514aの側面との間の最短距離L2は、周回部542の最外周部と、引出部544a及び544bが引き出された方向とは逆方向の鍔部514aの側面との間の最短距離L1と、等しくなっている。コイル540は、ドラムコア510の周りに設けられた外装樹脂550によって覆われている。
【0024】
比較例のコイル部品500では、引出部544a及び544bを周回部542から鍔部514a及び514bよりも外側に引き出し、その後に、引出部544a及び544bを鍔部514a側に曲げ加工することが行われる。引出部544a及び544bを周回部542から鍔部514a及び514bよりも外側に引き出す際に、導線の弾性が原因で周回部542の巻きが緩んだりすることがある。特に近年は、平角線などの厚みの厚い導線を用いたり、アルファ巻きのようにほとんど曲げ方向の力をかけないで導線を巻回す構造を用いたりするようになってきており、周回部542の巻き具合が特に緩み易くなってきている。これにより、インダクタンスなどの電気特性が劣化することがある。
【0025】
図2(a)及び
図2(b)は、実施例1に係るコイル部品の透視平面図である。
図2(a)は、実装面とは反対側から見たときの透視平面図、
図2(b)は、実装面側から見たときの透視平面図である。
図3(a)は、
図2(a)をA方向から見たときの透視側面図、
図3(b)は、
図2(a)のB-B間の断面図、
図3(c)は、
図2(a)のC-C間の断面図である。
図2(a)及び
図2(b)並びに
図3(a)から
図3(c)のように、実施例1のコイル部品100は、ドラムコア10と、コイル40と、外装樹脂50と、1対の外部電極60a及び60bと、を備えるインダクタ素子である。
【0026】
ドラムコア10は、巻軸12と、巻軸12の軸方向の両端にそれぞれ設けられた1対の鍔部であって第1鍔部としての鍔部14a及び第2鍔部としての鍔部14bと、を含む。巻軸12は、底面の輪郭が直線と2つの円弧で形成された柱状形状をしている。第1鍔部としての鍔部14aは、第1の側面としての側面22、側面22と巻軸12を挟んで反対側の面である第2側面としての側面24、側面26、及び側面28、これら4つの側面を持つ。第2鍔部としての鍔部14bは、第3の側面としての側面32、側面32と巻軸12を挟んで反対側の面である第4側面としての側面34、側面36、及び側面38、これら4つの側面を持つ。巻軸12の底面の長手方向の長さは1.40mm程度、短手方向の長さは0.60mm程度である。巻軸12の高さは0.50mm程度である。なお、巻軸12の底面の長手方向の長さAを短手方向の長さBで割った値A/Bは、1.1以上且つ2.6以下である場合が好ましい。鍔部14a及び14bは、巻軸12の軸方向に厚みを有する角柱形状をしている。例えば、鍔部14a及び14bは、四角柱形状をしている。鍔部14a及び14bの底面の長手方向の長さは2.0mm程度、短手方向の長さは1.20mm程度である。鍔部14a及び14bの厚さは0.15mm程度である。
【0027】
鍔部14a及び14bは、巻軸12の軸方向から見た平面視において略同じ大きさの矩形形状をしていて、それぞれの矩形の中心16及び18が巻軸12の軸方向で略一致している。なお、略同じ及び略一致とは、製造誤差程度のずれを含むものである。巻軸12は、鍔部14aの巻軸12が設けられている内側の面15aの中心16から鍔部14aの短手方向にずれて鍔部14aに設けられ且つ鍔部14bの巻軸12が設けられている内側の面15bの中心18から鍔部14bの短手方向にずれて鍔部14bに設けられている。すなわち、巻軸12の軸心20は、鍔部14aの巻軸12が設けられている内側の面15aの中心16から短手方向で対向する1対の側面22及び24のうちの一方の側面22側にずれて位置し、且つ、鍔部14bの巻軸12が設けられている内側の面15bの中心18から短手方向で対向する1対の側面32及び34のうちの一方の側面32側にずれて位置している。なお、内側の面15a及び15bには巻軸12が設けられている部分を含む。鍔部14aの側面22と鍔部14bの側面32とは、巻軸12に対して同じ側に位置していて、略同一面を形成している。
【0028】
ドラムコア10は、磁性材料で形成されている。ドラムコア10は、例えばフェライト材料、磁性金属材料、又は磁性金属粒子を含有する樹脂で形成されている。例えば、ドラムコア10は、Ni-Zn系又はMn-Zn系のフェライト、Fe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、又はFe-Si-Cr-Al系などの軟磁性合金、Fe又はNiなどの磁性金属、アモルファス磁性金属、ナノ結晶磁性金属、或いは金属磁性粒子を含有する樹脂で形成されている。ドラムコア10が軟磁性合金、磁性金属、アモルファス磁性金属、又はナノ結晶磁性金属で形成される場合、これらの粒子に絶縁処理が施されていてもよい。
【0029】
コイル40は、ドラムコア10の巻軸12に導線46が巻回された周回部42と、この導線46の両端部であって周回部42から引き出された1対の引出部44a及び44bと、を含む。導線46は、例えば断面形状が矩形状の平角線であるが、円形状の丸線などのその他の場合であってもよい。導線46は、幅Wが例えば0.02mmから0.2mm程度、厚さTが例えば0.02mmから0.2mm程度である。導線46は、金属線の表面が絶縁被膜で被覆されている。金属線の材料例として銅、銀、パラジウム、又は銀パラジウム合金などが挙げられ、絶縁被膜の材料例としてポリエステルイミド又はポリアミドなどが挙げられる。コイル40は、例えばドラムコア10の巻軸12に平角線である導線46がアルファ巻きで巻回されているが、その他の巻き方で巻回されていてもよい。
【0030】
引出部44a及び44bは、鍔部14aの側面22側及び鍔部14bの側面32側に引き出されている。引出部44a及び44bが引き出された側の周回部42の最外周部と鍔部14aの側面22との距離を短い距離とするために、巻軸12の軸心20は、鍔部14aの巻軸12が設けられている内側の面15aの中心16とずれがあるように設定されている。これにより、周回部42の最外周部と一方向に引き出された引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22との間の最短距離L4と、周回部42の最外周部と引出部44a及び44bが引き出された方向とは逆方向の鍔部14aの側面24との間の最短距離L3との関係は、L3>L4となっている。つまり、周回部42の最外周部と引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22との間の最短距離L4の方が周回部42の最外周部と鍔部14aの側面22とは反対側の側面24との間の最短距離L3よりも短くなっている。
図2(b)の例では、周回部42の最外周部と、一方向に引き出された引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22とは、導線46をもう1周巻回できない距離、つまりは導線46の巻軸12の軸心20に対して垂直な方向の厚さ以下の距離で略一致している。したがって、周回部42の巻回しバラツキを考慮した最大寸法に対して、周回部42の最外周部と鍔部14aの側面22との間の距離が最小の距離で設計されていることを意味することとなり、L3>L4の関係の中で、よりL4が小さく好適な例となっている。
【0031】
引出部44a及び44bは、鍔部14aの側面22に沿って鍔部14a側に折り曲げられ、鍔部14aの巻軸12が設けられている内側の面15aとは反対側の外側の面17aに設けられた1対の外部電極60a及び60bに接続されている。これにより、コイル40は外部電極60a及び60bに電気的に接続されている。外部電極60a及び60bは、例えば下地層上に半田バリア層と半田濡れ層がこの順に設けられた積層金属膜で形成されている。下地層の材料例として銅、銀、パラジウム、又は銀パラジウム合金などが挙げられる。半田バリア層の材料例としてニッケルが挙げられる。半田濡れ層の材料例として錫、鉛、錫鉛合金、銀、銅、又は亜鉛などが挙げられる。周回部42は、鍔部14aの側面22側及び鍔部14bの側面32側では側面22及び32と略同一面になっているともに、鍔部14aの側面22以外の側面24、26、及び28側並びに鍔部14bの側面32以外の側面34、36、及び38側ではこれらの側面よりも内側に収まっている。
【0032】
鍔部14aの側面24と巻軸12との間の距離X1と鍔部14aの側面22と巻軸12との間の距離X2との差(X1-X2)は、導線46の厚さT以上(T≦(X1-X2))となっている。同様に、鍔部14bの側面34と巻軸12との間の距離X3と鍔部14bの側面32と巻軸12との間の距離X4との差(X3-X4)は、導線46の厚さT以上(T≦(X3-X4))となっている。すなわち、少なくとも導線46の厚さTと略同じ大きさだけ、巻軸12の軸心20が鍔部14aの巻軸12が設けられた内側の面15aの中心16及び鍔部14bの巻軸12が設けられた内側の面15bの中心18から鍔部14aの側面22側及び鍔部14bの側面32側にずれている。
【0033】
外装樹脂50は、鍔部14aと鍔部14bの間に、コイル40の周回部42を覆って設けられている。さらに、外装樹脂50は、鍔部14aの側面22に沿って鍔部14a側に折り曲げられている引出部44a及び44bを覆って設けられていてもよい。外装樹脂50は、例えば鍔部14aと鍔部14bの間にコイル40の周回部42の周りを完全に覆って設けられているが、鍔部14aと鍔部14bの少なくとも一部の間に設けられていればよい。好ましくは、鍔部14aの側面24、26、及び28側並びに鍔部14bの側面34、36、及び38側のいずれか1つの側面又は全ての側面においては、外装樹脂50は、鍔部14aの側面22及び鍔部14bの側面32を除く側面より外側には突出せずに内側に収まっている。鍔部14aの側面22側及び鍔部14bの側面32側においては、外装樹脂50は、鍔部14aの側面22及び鍔部14bの側面32よりも外側に突出して、引出部44a及び44bを覆っている。外装樹脂50は、例えば磁性粒子を含有する樹脂(フェライト材料、磁性金属材料、又は磁性金属粒子などを含有する例えばエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂など)で形成されている。ここで言う、鍔部の側面よりも外側に突出とは、コイル部品の巻軸の軸心から鍔部の側面に向かう方向を外側方向としたときに、鍔部の側面よりも外側方向に外装樹脂が存在する様態を表している。例えば突出した外装樹脂は鍔部の側面を覆ってコイル部品の外形の一部を構成することが出来ている。
【0034】
次に、実施例1のコイル部品100の製造方法について説明する。まず、金型を用いてドラムコア10を形成する。次いで、ドラムコア10の巻軸12に導線46を巻回すとともに導線46の両端部に曲げ加工を施して、巻軸12に巻回された周回部42と周回部42から引き出されて鍔部14a側に曲げられた引出部44a及び44bとを含むコイル40を形成する。次いで、凹部からなる複数の収納部を有するトレーを準備し、複数の収納部それぞれにコイル40が形成されたドラムコア10を配置する。この際、鍔部14aが上側となるようにドラムコア10を収納部に配置する。次いで、トレー上に樹脂を塗布してコイル40を覆う外装樹脂50を形成する。次いで、トレーの上面側及び下面側から外装樹脂50及びトレーを研磨して、ドラムコア10の鍔部14a及び14bの表面を露出させる。次いで、鍔部14aの表面に、印刷法などを用いて、コイル40の引出部44a及び44bに接続する外部電極60a及び60bを形成する。その後、複数の収納部をダイサーなどで分割して個片化することで、実施例1のコイル部品100が形成される。
【0035】
引出部44a及び44bを周回部42から引き出して鍔部14a側に折り曲げ加工する際の周回部42の巻き緩みは、引出部44a及び44bの周回部42から引き出される部分と、引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22までと、の距離を短くすることで改善できる。この距離が短いことで、折り曲げ加工を行うときの折り曲げ冶具による固定部位を周回部42に近い部位とすることが出来るため、周回部42の巻き緩みを改善し、また、折り曲げ加工の精度を向上できる。比較例では、折り曲げ冶具を鍔部514aと鍔部514bとの間の限られた空間に配置する必要があったが、実施例1では、折り曲げ冶具を鍔部14aと鍔部14bとの間に加えて、鍔部14aの側面22側にも鍔部14aと干渉させずに配置できるので折り曲げ加工の精度を容易に向上できる。比較例では、引出部544a及び544bが引き出された側の鍔部514aの側面と周回部542の最外周部との間の最短距離L2と、巻軸512の軸心を挟んで反対側の側面となる引出部544a及び544bが引き出されていない側の鍔部514aの側面と周回部542の最外周部との間の最短距離L1と、は等距離(L2=L1)であった。これに対して、実施例1によれば、
図2(b)のように、引出部44a及び44bが引き出された側の鍔部14aの側面22と周回部42の最外周部との間の最短距離L4が、鍔部14aの側面22とは巻軸12を挟んで反対側の側面24と周回部42の最外周部との間の最短距離L3よりも短く(L3>L4)なっている。このため、実施例1では、比較例に比べて、引出部44a及び44bの周回部42から引き出される部分と、引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22までと、の距離を短くすることができ、周回部42に巻き緩みが生じることを抑制できる。その結果、インダクタンスの低下を抑制することができる。
【0036】
図2(b)のように、好適には、鍔部14aの側面22と周回部42の最外周部との間の最短距離L4は、巻軸12の軸心に垂直な方向の導線46の厚さ以下である。言い換えると、鍔部14aの側面22と周回部42の最外周部との間の最短距離は、導線46をもう1周巻回すことができない距離である。つまりは、鍔部14aの側面22と周回部42の最外周部との間の最短距離L4は、導線46の巻軸12の軸心20に対して垂直な方向の厚さ以下の距離で略一致している。これにより、引出部44a及び44bの周回部42から引き出される部分と、引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22までと、の距離が短くなり、周回部42に巻き緩みが生じることを効果的に抑制できる。周回部42に巻き緩みが生じることを効果的に抑制する点から、
図2(b)のように、好適には、鍔部14aの側面22と周回部42の最外周部とは略一致して、L4≒0である。これにより、引出部44a及び44bの周回部42から引き出される部分と、引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22までと、の距離を短くすることができる。引出部44a及び44bの周回部42から引き出される部分と、引出部44a及び44bが折り曲げられる鍔部14aの側面22までと、の距離は短ければ短いほど導線46の弾性が原因で周回部42の巻きが緩むことは抑制されるため、L4=0である場合が更に好ましい。
【0037】
また、コイル40を構成する導線46に平角線などの巻軸12の軸心20に対して垂直な方向の断面の厚い導線を用いたり、アルファ巻きのようにほとんど曲げ方向の力をかけないで導線46を巻回するような構造を用いたりすることで、導線46の弾性は増加することがある。しかしながら、このような場合においても、L3>L4の関係となる構造を取ることにより、引出部44a及び44bを周回部42から引き出す際に周回部42の巻きが緩むことが抑えられ、その結果、インダクタンスの劣化を抑制することができる。
【0038】
図2(b)のように、引出部44a及び44bが引き出された側の周回部42の最外周部と鍔部14aの側面22との間の距離L4を短い距離とするために、好適には、巻軸12の軸心20は、鍔部14aの内側の面15aの中心16とずれがあるように設定される。
【0039】
図2(a)のように、好適には、引出部44a及び44bが引き出された側の鍔部14bの側面32と周回部42の最外周部との間の最短距離L6が、鍔部14bの側面32とは巻軸12を挟んで反対側の側面34と周回部42の最外周部との間の最短距離L5よりも短い。これにより、鍔部14bの側面32側の周回部42は側面32に近づくこととなり、引出部44a及び44bを鍔部14a側に曲げる冶具を鍔部14aと鍔部14bと干渉させることなく配置することができるようになり、引出部44a及び44bを鍔部14a側に曲げることが容易に精度良くできる。これは、曲げ冶具の干渉を考慮する必要がないことで、曲げ冶具に自由度を持たせることができ、曲げ加工時の戻りを加味した加工を行えるため、引出部44a及び44bを精度良く形成できるものである。巻軸12は、好適には、軸心20が鍔部14aの内側の面15aの中心16から側面22にずれ且つ鍔部14bの内側の面15bの中心18から側面32側にずれている。鍔部14aの側面22と鍔部14bの側面32とは巻軸12に対して同じ側に位置している。このような軸心20のずれがあることで、ドラムコア10は、軸心20のズレを検出することで、同一の向きに並べることが容易に出来る。この後、向きの揃ったドラムコア10にコイル40を形成することにより、鍔部14aの側面22と周回部42の最外周部との最短距離L4をより短い距離とし、鍔部14bの側面32と周回部42の最外周部との最短距離L6をより短い距離とすることが可能となる。ここでは、例えばスピンドルやフライヤーにより丸い導線を用いたり、アルファ巻きのような平角線を用いたり、従来通りの巻線方法と曲げる冶具を組み合わせて、コイル40と引出部44a及び44bを容易に作ることができる。また、この引出部44a及び44bを精度良く形成できることは、周回部42の巻き緩みの抑制にもつながる。
【0040】
図3(b)及び
図3(c)のように、好適には、磁性粒子を含有する樹脂で形成され、コイル40を覆う外装樹脂50を備える。そして、好適には、鍔部14aの側面22側において外装樹脂50は引出部44a及び44bを覆い、鍔部14aの側面22では外装樹脂50は鍔部14aの側面22よりも外側に突出している。これにより、磁束漏れを効果的に抑えることができ、電気特性の向上を図ることができる。また、外装樹脂50が引出部44a及び44bを固定し、導線を保護することができる。
【0041】
図3(b)及び
図3(c)のように、好適には、鍔部14aの側面22側において外装樹脂50の引出部44a及び44bを覆う厚さの最小値T1が、鍔部14aの側面24、26、及び28側において外装樹脂50の周回部42を覆う厚さの最小値T2、T3、及びT4よりも大きい。なお、ここで言う外装樹脂50の厚さとは、巻軸12の軸心20に対して垂直な方向の厚さを指し、最外周の導線46(引出部44a及び44bを含む)の表面から外装樹脂50の表面までの巻軸12の軸心20に対して垂直な方向の長さ寸法である。一般に鍔部の側面側における外装樹脂の厚さの最小値は、巻軸の軸心に対して垂直な方向のうち、鍔部の側面に対しても垂直に交わる方向の厚さとなる。引出部44a及び44bを覆う外装樹脂50の厚さを厚くすることで、磁束漏れを効果的に抑えることができ、電気特性の向上を図ることができる。
【0042】
図4は、引出部を覆う外装樹脂の厚さとインダクタンスとの関係を評価したシミュレーション結果である。
図4の横軸は、引出部44a及び44bを覆う外装樹脂50の厚さの最小値T1(
図3(b)参照)である。
図4の縦軸は、インダクタンスの変化率であり、外装樹脂50が設けられていないときのインダクタンスL0からの厚さtの外装樹脂50が設けられたときのインダクタンスLtの変化量ΔL(=Lt-L0)をインダクタンスLtで割った値(ΔL/Lt)である。シミュレーションでは、ドラムコア10は比透磁率が35である磁性材料で形成されているとし、外装樹脂50は比透磁率が28である樹脂および磁性材料で形成されているとした。コイル40は、銅線の表面をポリイミドで被覆した導線46により形成される構造であるとした。
【0043】
図4のように、引出部44a及び44bを覆う外装樹脂50を厚くすることで、高いインダクタンスが得られることが分かる。これは、引出部44a及び44bがコイル40の周回部42と異なる方向の磁束を発生させることから生じるコイル40全体としての磁場の乱れを、外装樹脂50の厚くなった部分が磁路となることで緩和することが可能となるためと推測される。また、外装樹脂50の厚さの最小値T1が0.2mm以上となると外装樹脂50の厚さが0mmである場合に対するインダクタンス値の変化率(増加率)が小さくなり、0.3mm以上となると更に小さくなり、0.4mm以上となるともっと小さくなることが分かる。なお、シミュレーションに用いた材料以外の材料を用いた場合でも、外装樹脂50の厚さに関して同様の結果が得られる。すなわち、シミュレーションは一例であり、ここで用いた透磁率は、前述の一般的な磁性材料及び樹脂材料を用いた場合に得られる透磁率の一例である。前述の一般的な磁性材料及び樹脂材料を用いた場合に得られる透磁率の範疇においては、外装樹脂50の厚さに関しておよそ同様の結果が得られる。例えば、シミュレーションではドラムコア10の比透磁率を35としているが、高い性能を求められるコイル部品の設計においてドラムコア10の比透磁率は35より大きくすることになるが、この場合も同様の結果が得られる。さらにシミュレーションでは外装樹脂の比透磁率を28としているが、外装樹脂50の厚さが0mmである場合は外装樹脂50の透磁率の代わりとしてこの部分の空気の透磁率がシミュレーションに用いられる。この空気の透磁率が1であるのに対して、外装樹脂50の透磁率は数倍以上あれば良く、ドラムコア10の透磁率に対する外装樹脂50の透磁率の比率が0.5より大きければ更に高い性能を得ることが可能となる。したがって、引出部44a及び44bを覆う外装樹脂50の厚さの最小値T1は、0.2mm以上の場合が好ましく、0.3mm以上の場合がより好ましく、0.4mm以上の場合が更に好ましい。一方、コイル部品100の小型化の点では、引出部44a及び44bを覆う外装樹脂50の厚さの最小値T1は、0.6mm以下の場合が好ましく、0.5mm以下の場合がより好ましく、0.4mm以下の場合が更に好ましい。
【0044】
図2(a)及び
図2(b)のように、コイル40の周回部42は、好適には、鍔部14a及び14bの間に収まっていて、鍔部14aの側面22及び鍔部14bの側面32よりも外側に突出していない。鍔部14a及び14bの透磁率は外装樹脂50の透磁率よりも高いことから、周回部42が鍔部14a及び14bの間に収まっていることで、インダクタンスなどの電気特性を向上させることができる。
【0045】
図3(b)及び
図3(c)のように、外装樹脂50は、好適には、鍔部14aの側面22側及び鍔部14bの側面32側では鍔部14aの側面22及び鍔部14bの側面32よりも外側に突出する。一方、外装樹脂50は、好適には、鍔部14aの側面22以外の側面24、26、及び28のうちの少なくとも1つの側面においては鍔部14aの側面22及び鍔部14bの側面32よりも外側に突出せず鍔部14aと14bの間に収まっている。これにより、磁束漏れを抑えてインダクタンス低下の抑制を図ることと小型化とを両立させることができる。
【0046】
図2(b)のように、鍔部14aの側面24と巻軸12との間の距離X1と鍔部14aの側面22と巻軸12との間の距離X2との差(X1-X2)は、コイル40を構成する導線46の厚さT以上であるが、好適には、コイル40を構成する導線46の厚さTと略同じとできる。同様に、
図2(a)のように、鍔部14bの側面34と巻軸12との間の距離X3と鍔部14bの側面32と巻軸12との間の距離X4との差(X3-X4)は、コイル40を構成する導線46の厚さT以上であるが、好適には、コイル40を構成する導線46の厚さTと略同じとできる。これにより、コイル部品100を小型化することができるとともに、引出部44a及び44bを鍔部14a側に曲げることが可能となる。なお、略同じとは、製造誤差程度のずれを含むものであり、例えば10%から20%程度の誤差を含むものである。
【0047】
図2(b)及び
図3(c)のように、外部電極60a及び60bは、好適には、コイル部品100の表面のうちの鍔部14aの巻軸12が設けられた内側の面15aとは反対側の面である外側の面17aを含む表面以外の表面には設けられていない。この外側の面17aは、一部分に凹凸があっても、また、角や辺にテーパ面やR面がとってあってもよい。このように、コイル部品100の表面のうちの鍔部14aの外側の面17aを含む表面のみに外部電極60a及び60bを設けることで、コイル部品100を小型化することができる。また、コイル部品100を回路基板などの実装した際に隣接する部品とショートすることが抑制されるため、高密度実装を行うことが可能となる。
【0048】
図2(a)及び
図2(b)のように、巻軸12は軸方向から見た平面視で輪郭が直線と2つの円弧で形成された形状をしている。すなわち、鍔部14a及び14bの内側の面15a及び15bに接する巻軸12の断面の輪郭が直線と2つの円弧で形成された形状をしている。しかしながらこの場合に限られる訳ではない。
図5(a)から
図5(d)は、巻軸の他の形状を示す平面図である。
図5(a)のように、巻軸12は軸方向から見た平面視で楕円形形状をしていてもよい。
図5(b)のように、巻軸12は軸方向から見た平面視で円形形状をしていてもよい。
図5(c)のように、巻軸12は軸方向から見た平面視で長方形状又は正方形状などの矩形形状をしていてもよい。
図5(d)のように、巻軸12は軸方向から見た平面視で矩形形状の対向する1組の辺側が外側に突き出た形状をしていてもよい。
【実施例2】
【0049】
図6は、実施例2に係るコイル部品の断面図である。なお、
図6は、実施例1を表した
図2(a)のB-B間の相当する箇所の断面図である。実施例1においては、鍔部14a及び14bは、巻軸12の軸方向の平面視において略同じ大きさの矩形形状をしていて、それぞれの矩形の中心16及び18が巻軸12の軸方向で略一致している。しかしながら、
図6のように、実施例2のコイル部品200では、鍔部14a及び14bは、巻軸12の軸方向の平面視において異なった大きさの矩形形状をしていて、それぞれの矩形の中心16及び18が巻軸12の軸方向で一致していない。巻軸12の軸心20は、鍔部14aの巻軸12が設けられた内側の面15aの中心16から側面22側にずれている。一方、巻軸12の軸心20は、鍔部14bの巻軸12が設けられた内側の面15bの中心18には一致している、もしくは、巻軸12の軸心20が鍔部14aの巻軸12が設けられている内側の面15aの中心16から側面22側にずれた量と異なった量でずれている。その他の構成は、実施例1のコイル部品100と同じであるため説明を省略する。
【0050】
実施例1では、巻軸12は、軸心20が鍔部14aの巻軸12が設けられた内側の面15aの中心16から側面22側にずれ且つ鍔部14bの巻軸12が設けられた内側の面15bの中心18から側面32側にずれている。しかしながら、この場合に限られず、実施例2のように、巻軸12は、軸心20が鍔部14aの巻軸12が設けられた内側の面15aの中心16から側面22側にずれていれば、鍔部14bの巻軸12が設けられた内側の面15bの中心18に位置していてもよく、軸心20が鍔部14aの巻軸12が設けられた内側の面15aの中心16から側面22側にずれた量と異なった量でずれていてもよい。
【実施例3】
【0051】
図7は、実施例3に係る電子機器の断面図である。
図7のように、実施例3の電子機器300は、回路基板80と、回路基板80に実装された実施例1のコイル部品100と、を備える。コイル部品100は、外部電極60a及び60bが半田84によって回路基板80の電極82に接合されることで、回路基板80に実装されている。
【0052】
実施例3の電子機器300によれば、実施例1のコイル部品100が回路基板80に実装されているため、引出部が1つの面に設けられた外部電極60a及び60bにそれぞれ接続される構造を取り実装スペースを小さくしながら、インダクンスの劣化が抑制されたコイル部品を備える電子機器が得られる。また、コイル部品100の引出部44a及び44bから回路基板80までの距離を短くでき、導線で生じる抵抗を低くできる。また、低インダクタンスのコイル部品の場合、特に引出部44a及び44bから回路基板80までの距離を短くでき、実装による抵抗の増加を抑制できる。なお、実施例3では、回路基板80に実施例1のコイル部品100が実装されている場合を例に示したが、実施例2のコイル部品200が実装されている場合でもよい。
【0053】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 ドラムコア
12 巻軸
14a、14b 鍔部
15a、15b 内側の面
17a 外側の面
16 中心
18 中心
20 軸心
22~28 側面
32~38 側面
40 コイル
42 周回部
44a、44b 引出部
46 導線
50 外装樹脂
60a、60b 外部電極
80 回路基板
82 電極
84 半田
100、200 コイル部品
300 電子機器