(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
H01G4/30 517
H01G4/30 201P
H01G4/30 311D
H01G4/30 311F
H01G4/30 311A
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
(21)【出願番号】P 2018180245
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018021880
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-275736(JP,A)
【文献】特開2005-216955(JP,A)
【文献】特開2000-106321(JP,A)
【文献】特開平07-201641(JP,A)
【文献】特開2003-229324(JP,A)
【文献】特開平09-270360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に相互に対向する第1主電極部及び第2主電極部と
、
前記第1方向に直交する第2方向に沿った幅寸法が最も小さくなる括れ部を含み、かつ、前記第1主電極部及び前記第2主電極部の間を接続し前記第1方向に沿って
前記第2方向における幅寸法が変化する幅狭部と
、
をそれぞれ有し、前記第1方向及び前記第2方向に沿って配列された複数の内部電極パターンを
、未焼成のセラミックシート上に形成し、
前記複数の内部電極パターンがそれぞれ形成された複数の未焼成のセラミックシートを積層することで積層シートを作製し、
前記積層シートを前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断することで、前記幅狭部が切断された引出部が露出する前記第1方向を向いた第1切断面と、前記第2方向を向いた第2切断面と、を有し、前記第1主電極部及び前記第2主電極部の一方と前記引出部とを含む内部電極が積層された未焼成のセラミック素体を作製し、
前記第1切断面の外観を検査して得られた、前記引出部の前記第2方向に沿った第1幅寸法と、前記引出部の前記第2方向端部から前記第2切断面までの前記第2方向に沿った第2幅寸法と、に基づいて、前記内部電極の設計位置からの前記第1方向及び前記第2方向における偏り量を検出し、
前記偏り量が所定の範囲内であると判定された場合に、前記未焼成のセラミック素体を焼成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記幅狭部では、前記第1主電極部
及び前記第2主電極部
各々から前記括れ部に向かって、前記第2方向に沿った幅寸法が漸減する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記括れ部は、前記第2方向に対向する第1外縁及び第2外縁が、前記第2方向に延びる設計上の切断線を横切って前記第1方向に延びるように構成され、
前記幅狭部は、さらに、
前記括れ部と前記第1主電極部との間を接続し、前記第1外縁側が前記括れ部から前記第2方向一方に膨出する第1接続部と、
前記括れ部と前記第2主電極部との間を接続し、前記第2外縁側が前記括れ部から前記第2方向他方に膨出する第2接続部と、
を含む
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から
3のうちいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記幅狭部は、前記第2方向に平行な直線に関して非線対称な形状を有する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から
4のうちいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、さらに、
前記偏り量に基づいて、
前記未焼成のセラミック素体を作製する工程における前記第1方向及び前記第2方向に沿った切断位置と、
前記積層シートを作製する工程における前記各セラミックシートの積層位置と、
の少なくともいずれか一方を調整することで、前記内部電極の前記第1方向及び前記第2方向における位置を調整する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
第1主電極部と、前記第1主電極部から第1方向を向いた第1端面まで延びる第1引出部と、を有する第1内部電極と、
第2主電極部と、前記第2主電極部から前記第1端面と前記第1方向に対向する第2端面まで延びる第2引出部と、を有し、前記第1内部電極と交互に積層された第2内部電極と、
を具備し、
前記第1引出部は、
前記第1方向に直交する第2方向に沿った幅寸法が最も小さくなる括れ部と、前記括れ部と前記第1主電極部との間を接続し、前記第2方向に沿った幅寸法が前記第1主電極部よりも小さく前記括れ部よりも大きい第1接続部と、を含み、
前記第2引出部は、
前記第2主電極部に接続され、前記第2方向に沿った幅寸法が前記第2主電極部よりも小さく前記括れ部よりも大きい第2接続部を少なくとも含む
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1
接続部は、前記第1主電極部から前記括れ部に向かって前記幅寸法が減少
し、
前記第1引出部は、さらに、前記括れ部から前記第1端面に向かって前記幅寸法が増加する部分
を有し、
前記第2
接続部は、前記第2端面に向かって前記第2方向に沿った幅寸法が減少
する
積層セラミック電子部品。
【請求項8】
請求項6に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記括れ部は、前記第2方向に対向する第1外縁及び第2外縁が、前記第1方向に延びるように構成され、
前記第1接続部では、前記第1外縁側が前記括れ部から前記第2方向一方に膨出し、
前記第2接続部では、前記第2外縁側に位置する前記第2方向における外縁が、前記括れ部の前記第2外縁よりも前記第2方向他方の外側に位置する
積層セラミック電子部品。
【請求項9】
請求項
6から
8のうちいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1方向の外形寸法が設計値で0.6mmであり、かつ、前記第2方向の外形寸法が設計値で0.3mmである
積層セラミック電子部品。
【請求項10】
請求項
6から
8のうちいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1方向の外形寸法が設計値で0.4mmであり、かつ、前記第2方向の外形寸法が設計値で0.2mmである
積層セラミック電子部品。
【請求項11】
請求項
6から
8のうちいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1方向の外形寸法が設計値で0.2mmであり、かつ、前記第2方向の外形寸法が設計値で0.1mmである
積層セラミック電子部品
【請求項12】
請求項
6から
8のうちいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の外形寸法が0.3mm未満である
積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、典型的には、以下のように製造される。まず、複数の内部電極パターンが形成された未焼成のセラミックグリーンシートを積層する。そして、セラミックグリーンシートの積層体を所定の位置で切断することで、内部電極の周囲にサイドマージン部及びエンドマージン部が形成された未焼成のセラミック素体を作製する。このセラミック素体を焼成し、セラミック素体の表面に外部電極を形成することで、積層セラミックコンデンサが製造される。
【0003】
上記製造過程において、セラミックグリーンシートを積層する際の積層ずれや、切断時の切断位置ずれが発生することがある。このようなずれが発生することにより、内部電極の位置が設計位置から偏り、内部電極の絶縁性や耐環境性を十分確保することが難しくなる。
【0004】
そこで、セラミック素体の表面に露出する内部電極の形状に基づいて、セラミックグリーンシートの積層精度や積層体における切断位置の良否判断を行う方法が知られている。
例えば、特許文献1には、部分欠損部を含む内部電極パターンが形成された積層基板を作製し、積層体の端面に内部電極の部分欠損部に相当する非露出部が存在するか否かによって、積層基板の積層位置の良否判断を行う方法が記載されている。
また、特許文献2には、内部電極とチップ側面との間のサイドマージンに、内部電極露出端面への露出状況によって積層精度が確認される積層状態確認用マーカーが形成された積層セラミックコンデンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-275736号公報
【文献】特開平5-226178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、積層セラミック電子部品の小型化の要請に伴い、内部電極の平面内における位置を高い精度で制御することが求められている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、積層基板の積層位置の良否判断を行うのみであり、内部電極の位置精度を向上させることは難しかった。また、特許文献2に記載の方法では、積層状態確認用マーカーをサイドマージンに形成するため、積層セラミック電子部品の小型化によって、当該マーカーの寸法も小さくなり、ずれ量を精度よく検出することが難しかった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、内部電極の設計位置からの偏り量を精度よく検出することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
未焼成のセラミックシート上に、第1方向に相互に対向する第1主電極部及び第2主電極部と、上記第1主電極部及び上記第2主電極部の間を接続し上記第1方向に沿って上記第1方向に直交する第2方向における幅寸法が変化する幅狭部と、をそれぞれ有し、上記第1方向と、上記第1方向に直交する第2方向と、に沿って配列された複数の内部電極パターンが形成される。
上記複数の内部電極パターンがそれぞれ形成された複数の未焼成のセラミックシートを積層することで積層シートが作製される。
上記積層シートを上記第1方向及び上記第2方向に沿って切断することで、上記テーパ部が切断された引出部が露出する上記第1方向を向いた第1切断面と、上記第2方向を向いた第2切断面と、を有し、上記第1主電極部及び上記第2主電極部の一方と上記引出部とを含む内部電極が積層された未焼成のセラミック素体が作製される。
上記第1切断面の外観を検査して得られた、上記引出部の上記第2方向に沿った第1幅寸法と、上記引出部の上記第2方向端部から上記第2切断面までの上記第2方向に沿った第2幅寸法と、に基づいて、上記内部電極の設計位置からの上記第1方向及び上記第2方向における偏り量が検出される。
上記偏り量が所定の範囲内であると判定された場合に、上記未焼成のセラミック素体が焼成される。
【0009】
この構成では、内部電極パターンが、幅寸法が変化する幅狭部を有するため、第1切断面から露出する引出部の第2方向に沿った幅寸法が切断位置によって変化する。このため、引出部の第1方向に沿った長さ方向が、当該引出部の幅寸法に応じて規定される。
つまり、第1切断面の外観を検査することで、サイドマージン部の第2方向に沿った幅寸法のみならず、エンドマージン部の第1方向に沿った長さ寸法を算出することができる。そして、算出された上記サイドマージン部の幅寸法及び上記エンドマージン部の長さ寸法に基づいて、内部電極の設計位置からの偏りを定量的に検出できる。
したがって、検出された偏り量に基づき、切断工程における切断位置や積層工程における積層位置の詳細なフィードバックが可能となり、内部電極の位置精度を高めることができる。さらに、第1切断面の外観検査のみによって内部電極の上記偏り量を精度よく検出でき、検査にかかるコスト及び時間を大幅に削減できる。
【0010】
具体的に、上記幅狭部では、上記第1主電極部から上記第2主電極部に向かって、上記第2方向に沿った幅寸法が漸減してもよい。
これにより、第1切断面から露出する引出部の幅寸法が、主電極部からの第1方向の距離と一対一に対応することとなる。つまり、内部電極の偏り量のみならず、偏りの向きも判定することができる。したがって、切断位置及び積層位置に対して、より適切なフィードバックを行うことができ、内部電極の位置精度をさらに高めることができる。
【0011】
また、上記幅狭部は、上記第1主電極部及び上記第2主電極部の間に、上記第2方向に沿った幅寸法が最も小さくなる括れ部を含んでいてもよい。
このような構成によっても、内部電極の偏りを定量的に検出することが可能となる。
【0012】
例えば、上記括れ部は、上記第2方向に相互に対向する第1外縁及び第2外縁が、上記第2方向に延びる設計上の切断線を横切って上記第1方向に延びるように構成され、
上記幅狭部は、さらに、
上記括れ部と上記第1主電極部との間を接続し、上記第1外縁側が上記括れ部から上記第2方向の一方に膨出する第1接続部と、
上記括れ部と上記第2主電極部との間を接続し、上記第2外縁側が上記括れ部から上記第2方向の他方に膨出する第2接続部と、
を含んでいてもよい。
上記構成では、括れ部はほぼ一定の幅寸法で構成され、第1接続部及び第2接続部は、いずれも括れ部よりも大きく主電極部よりも小さい幅寸法で構成される。これにより、第1切断面から露出する引出部の幅寸法に基づいて、幅狭部のどの部分で切断されたかを判定することができる。さらに、第1接続部及び第2接続部がそれぞれ異なる側に膨出していることから、端面における引出部の第2方向における位置の偏りに基づいて、第1切断面に対応する切断位置がいずれの接続部側に偏ったかを判定することができる。
つまり、上記構成では、一方の端面の外観検査から、内部電極の偏り量及びその向きを判定することが可能であるとともに、幅狭部の一部に幅寸法が一定の領域を設けることができ、幅狭部の幅寸法の狭小化を抑制することができる。これにより、積層セラミックコンデンサが小型化した場合でも、内部電極の位置の偏りを簡便かつ精度よく検出することができる。
【0013】
上記幅狭部は、上記第2方向に平行な直線に関して非線対称な形状を有していてもよい。
これにより、幅狭部が第1主電極部側と第2主電極部側とで異なる形状を有することになる。つまり、幅狭部における切断位置の偏りを検出しやすい構成とすることができ、第1切断面から露出する引出部の幅寸法に基づいて、第1方向に沿った内部電極の偏りの向きを判定しやすくすることができる。
【0014】
さらに、上記偏り量に基づいて、
上記未焼成のセラミック素体を作製する工程における上記第1方向及び上記第2方向に沿った切断位置と、
上記積層シートを作製する工程における上記各セラミックシートの積層位置と、
の少なくともいずれか一方を調整することで、上記内部電極の上記第1方向及び上記第2方向に沿った位置が調整されてもよい。
上記構成では偏り量を定量的に検出することができるため、上記切断位置及び上記積層位置のフィードバックが可能となる。これにより、内部電極の位置精度をさらに高めることができる。
【0015】
本発明の他の実施形態に係る積層セラミック電子部品は、第1内部電極と、上記第1内部電極と交互に積層された第2内部電極と、を具備する。
上記第1内部電極は、第1主電極部と、上記第1主電極部から第1方向を向いた第1端面まで延びる第1引出部と、を有する。
上記第2内部電極は、第2主電極部と、上記第2主電極部から上記第1端面と上記第1方向に対向する第2端面まで延びる第2引出部と、を有し、上記第1内部電極と交互に積層される。
上記第1引出部は、上記第1端面に向かって上記第1方向に直交する第2方向に沿った幅寸法が減少し、上記第1端面において所定の幅寸法を有するように形成される。
上記第2引出部は、上記第2端面に向かって上記第2方向に沿った幅寸法が増加し、上記第2端面において上記所定の幅寸法を有するように形成される。
【0016】
上記構成の積層セラミック電子部品では、第1端面及び第2端面の少なくとも一方の外観を検査することで、サイドマージン部の第2方向に沿った幅寸法及びエンドマージン部の第1方向に沿った長さ寸法を算出することができる。これにより、内部電極の設計位置からの偏りを定量的に検出できる。
したがって、検出された偏り量に基づき、製造過程における切断位置や積層位置の詳細なフィードバックが可能となり、内部電極の位置精度を高めることができる。さらに、一面の外観検査のみによって内部電極の上記偏り量を精度よく検出でき、検査にかかるコスト及び時間を大幅に削減できる。
【0017】
本発明の他の実施形態に係る積層セラミック電子部品は、第1内部電極と、上記第1内部電極と交互に積層された第2内部電極と、を具備する。
上記第1内部電極は、第1主電極部と、上記第1主電極部から第1方向を向いた第1端面まで延びる第1引出部と、を有する。
上記第2内部電極は、第2主電極部と、上記第2主電極部から上記第1端面と上記第1方向に対向する第2端面まで延びる第2引出部と、を有する。
上記第1引出部は、上記第2方向に沿った幅寸法が最も小さくなる括れ部を含み、かつ、上記第1主電極部から上記括れ部に向かって上記幅寸法が減少する部分と、上記括れ部から上記第1端面に向かって上記幅寸法が増加する部分と、を有する。
上記第2引出部は、上記第2端面に向かって上記第2方向に沿った幅寸法が減少し、上記第2端面において上記第1引出部の上記第1端面における幅寸法と同一の幅寸法を有するように形成される。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態に係る積層セラミック電子部品は、第1内部電極と、上記第1内部電極と交互に積層された第2内部電極と、を具備する。
上記第1内部電極は、第1主電極部と、上記第1主電極部から第1方向を向いた第1端面まで延びる第1引出部と、を有する。
上記第2内部電極は、第2主電極部と、上記第2主電極部から上記第1端面と上記第1方向に対向する第2端面まで延びる第2引出部と、を有する。
上記第1引出部は、上記第1主電極部に向かって上記第1方向に直交する第2方向に沿った幅寸法が前記第2方向の一方に増加し、上記第1端面において所定の幅寸法を有するように形成される。
上記第2引出部は、上記第2主電極部に向かって上記第2方向に沿った幅寸法が前記第2方向の他方に増加し、上記第2端面において上記所定の幅寸法を有するように形成される。
【0019】
上記構成の積層セラミック電子部品では、第1端面及び第2端面の少なくとも一方の外観を検査することで、サイドマージン部の第2方向に沿った幅寸法及びエンドマージン部の第1方向の寸法の適否または修正すべき方向を判定することができる。これにより、内部電極の設計位置からの偏りを容易に検出できる。
したがって、検出された偏り量に基づき、製造過程における切断位置や積層位置のフィードバックが容易となり、内部電極の位置精度を高めることができる。さらに、一面の外観検査のみによって内部電極の上記偏り量を精度よく検出でき、検査にかかるコスト及び時間を大幅に削減できる。
【0020】
例えば、上記積層セラミック電子部品は、上記第1方向の外形寸法が設計値で0.6mmであり、かつ、上記第2方向の外形寸法が設計値で0.3mmであってもよい。
さらに、上記積層セラミック電子部品は、上記第1方向の外形寸法が設計値で0.4mmであり、かつ、上記第2方向の外形寸法が設計値で0.2mmであってもよい。
また、上記積層セラミック電子部品は、上記第1方向の外形寸法が設計値で0.2mmであり、かつ、上記第2方向の外形寸法が設計値で0.1mmであってもよい。
また、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向の外形寸法が0.3mm未満であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、内部電極の設計位置からの偏り量を精度よく検出することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサのセラミック素体をX-Y平面に沿って切断した断面図である。
【
図5】上記積層セラミックコンデンサのセラミック素体をX-Y平面に沿って切断した断面図である。
【
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図13】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図14】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図15】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図16】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図17】上記第1実施形態の比較例に係るセラミック素体の斜視図である。
【
図18】上記第1実施形態の比較例に係る検査用セラミック素体の斜視図である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図20】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図21】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図23】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す図であり、Aは断面図、Bは側面図である。
【
図24】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す図であり、Aは断面図、Bは側面図である。
【
図25】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す図であり、Aは断面図、Bは側面図である。
【
図26】本発明の第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサ10の基本構成]
図1~3は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0025】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11の表面に外部電極14,15が形成された構成を有する。
【0026】
セラミック素体11は、X軸方向を向いた2つの端面11a,11bと、Y軸方向を向いた2つの側面11c,11dと、Z軸方向を向いた2つの主面11e,11fと、を有する。端面11a,11bには、外部電極14,15が形成される。セラミック素体11の各面を接続する稜部は、面取りされていてもよい。
【0027】
セラミック素体11は、内部に形成された第1内部電極12と第2内部電極13を有する。内部電極12,13は、セラミック層21を挟んでZ軸方向に交互に積層される。
【0028】
図4及び
図5は、セラミック素体11をX-Y平面に沿って切断した断面図であり、
図4は第1内部電極12に沿って切断した図、
図5は第2内部電極13に沿って切断した図である。
【0029】
第1内部電極12は、X軸方向及びY軸方向に延びる平面形状の第1主電極部12mと、第1主電極部12mから端面11aまで延びる第1引出部12eと、を有する。第1主電極部12mは、略長方形状に構成される。第1内部電極12の端面11b側には、後述する第2エンドマージン部19bが設けられている。これにより、第1内部電極12は、第2外部電極15からは離間し、第1外部電極14にのみ接続される。
【0030】
第1引出部12eは、テーパ状に構成され、端面11aに向かってY軸方向に沿った幅寸法が漸減する。第1引出部12eは、X軸方向に平行な直線に対して線対称な形状であり、第1引出部12eと上記直線とのなす角度θを有する台形状に構成される。第1引出部12eは、第1主電極部12mとの境界部12bにおいて、第1主電極部12mの幅寸法と同一の幅寸法W1を有し、第1引出部12eの端面11aにおいて、幅寸法W1より小さい幅寸法W2を有する。
【0031】
図5に示すように、第2内部電極13は、X軸方向及びY軸方向に延びる平面形状の第2主電極部13mと、第2主電極部13mから端面11bまで延びる第2引出部13eと、を有する。第2主電極部13mは、第1主電極部12mと同一の略長方形状に構成される。第2内部電極13の端面11a側には、後述する第1エンドマージン部19aが設けられている。これにより、第2内部電極13は、第1外部電極14からは離間し、第2外部電極15にのみ接続される。
【0032】
第2引出部13eもテーパ状に構成され、端面11bに向かってY軸方向に沿った幅寸法が漸増する。第2引出部13eも、X軸方向に平行な直線に対して線対称な形状であり、第2引出部13eと上記直線とのなす角度θを有する台形状に構成される。つまり、第2引出部13eは、第1引出部12eと相似した形状を有する。第2引出部13eは、第2主電極部13mとの境界部13bにおいて、第2主電極部13mの幅寸法よりも小さい幅寸法W3を有する。また、第2引出部13eは、第2引出部13eの端面11bにおいて、第1引出部12eの端面11aにおけるY軸方向に沿った幅寸法とおおよそ同一の幅寸法W2を有する。
【0033】
内部電極12,13は、典型的にはニッケル(Ni)を主成分として構成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。なお、内部電極12,13は、ニッケル以外に、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)の少なくとも1つを主成分としていてもよい。
【0034】
図2及び3に示すように、セラミック素体11は、第1主電極部12m及び第2主電極部13mがセラミック層21を挟んでZ軸方向に交互に積層された容量形成部16を備える。積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1主電極部12mと第2主電極部13mとの間の複数のセラミック層21に電圧が加わる。これにより、容量形成部16に電圧に応じた電荷が蓄えられる。容量形成部16は、本実施形態における機能部として構成される。
【0035】
セラミック層21では、容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスにより形成される。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0036】
なお、セラミック層21は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などで構成してもよい。
【0037】
セラミック素体11は、容量形成部16の周囲に、第1端部17aと、第2端部17bと、一対のサイドマージン部18と、をさらに備える。
【0038】
第1端部17aは、容量形成部16のX軸方向外方に設けられ、端面11aを構成する。
第1端部17aは、第1内部電極12の第1引出部12eと、第1エンドマージン部19aと、を有する。第1エンドマージン部19aは、第2主電極部13mのX軸方向外方に設けられ、第1引出部12eとZ軸方向に交互に積層される。第1エンドマージン部19aのY軸方向における幅寸法は、容量形成部16の幅寸法と略同一に構成される。
【0039】
第2端部17bは、容量形成部16のX軸方向外方に設けられ、端面11bを構成する。
第2端部17bは、第2内部電極13の第2引出部13eと、第2エンドマージン部19bと、を有する。第2エンドマージン部19bは、第1主電極部12mのX軸方向外方に設けられ、第2引出部13eとZ軸方向に交互に積層される。第2エンドマージン部19bのY軸方向における幅寸法は、容量形成部16の幅寸法と略同一に構成される。
【0040】
サイドマージン部18は、容量形成部16、第1端部17a及び第2端部17bをY軸方向から覆っており、容量形成部16のY軸方向外方の側面11c,11dを構成する。サイドマージン部18は、
図4,5に示すように、積層セラミックコンデンサ10のX軸方向全体にわたって延び、Y軸方向に略一定の幅寸法をそれぞれ有する。
【0041】
さらに、セラミック素体11は、容量形成部16、第1端部17a、第2端部17b及び一対のサイドマージン部18をZ軸方向から覆う一対のカバー部20を有する。
【0042】
第1エンドマージン部19a、第2エンドマージン部19b、サイドマージン部18及びカバー部20は、絶縁性セラミックスで形成される。さらに、これら各部がセラミック層21と同様の誘電体セラミックスで形成されることで、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0043】
上述のように、第1引出部12e及び第2引出部13eは、テーパ状に構成される。これにより、端面11a,11bから露出する引出部12e,13eの寸法及び配置に基づいて、エンドマージン部19a,19b及びサイドマージン部18の寸法を検出することが可能となる。以下、「積層セラミックコンデンサ10の製造方法」において詳細に説明する。
【0044】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図6は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図7~16は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図6に沿って、
図7~16を適宜参照しながら説明する。
【0045】
(ステップS01:内部電極パターン形成)
ステップS01では、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102に内部電極パターン110を形成する。
【0046】
図7は、セラミックシート101,102の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102が、個片化されていない大判のシートとして構成される。
図7には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の設計上の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。なお、
図7は、セラミックシート101,102の一部を示している。
【0047】
セラミックシート101,102は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101,102は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102の厚さは適宜調整可能である。
【0048】
内部電極パターン110は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0049】
内部電極パターン110は、X軸方向に絶縁帯Nyを介して配列され、Y軸方向に絶縁帯Nxを介して配列されている。切断線Lyは、Y軸方向に沿って、絶縁帯Ny及びテーパ部114を交互に通過するように延びる。切断線Lxは、X軸方向に沿って絶縁帯Nx上に延びる。
【0050】
セラミックシート101,102では、各内部電極パターン110の形状及びその配列形態が同一である。但し、セラミックシート102の内部電極パターン110は、セラミックシート101の内部電極パターン110に対して、X軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて形成されている。
【0051】
図8は、内部電極パターン110の形状を示す
図7の部分拡大図である。
内部電極パターン110は、X軸方向に相互に対向する一対の主電極部112m,113mと、テーパ形状を有し一対の主電極部112m,113m間を接続するテーパ部114と、を有する。主電極部112m,113mは、いずれも、X軸方向及びY軸方向に延びる平面形状をそれぞれ有し、略長方形状に構成される。
【0052】
テーパ部114は、X軸方向に沿ってY軸方向の幅寸法が次第に変化する構成を有する。テーパ部114では、本実施形態において、一方の主電極部112mから他方の主電極部113mに向かって、Y軸方向に沿った幅寸法が漸減する。つまり、テーパ部114は、X軸方向に平行な直線とのなす角度がθの台形状を有する。なお、テーパ部114は、本実施形態において、第1主電極部112m及び第2主電極部113mの間を接続しX軸方向に沿ってY軸方向における幅寸法が変化する幅狭部として機能する。
【0053】
テーパ部114の主電極部112mとの境界部112bは、主電極部112mの幅寸法と略同一の幅寸法WMを有する。テーパ部114の主電極部113mとの境界部113bは、幅寸法WMよりも小さい幅寸法WNを有する。
【0054】
テーパ部114には、X軸方向中央部に切断線Lyが通っている。各内部電極パターン110は、後のステップS03の切断工程において切断されることにより、2つの内部電極に分離される。すなわち、内部電極パターン110の主電極部112m及びそれに接続されたテーパ部114の断片は、積層セラミックコンデンサ10の第1内部電極12を形成する。内部電極パターン110の主電極部113m及びそれに接続されたテーパ部114の断片は、他の積層セラミックコンデンサ10の第2内部電極13を形成する。
【0055】
なお、セラミックシート101,102上の内部電極パターンのうち、全てが内部電極パターン110で構成されてもよいし、一部が内部電極パターン110で構成されてもよい。後者の場合は、例えば後述するブロックBの領域のみ内部電極パターン110が形成されており、他の領域はテーパ部を有しない矩形状の内部電極パターンが形成されていてもよい。
【0056】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、ステップS01で内部電極パターン110が形成されたセラミックシート101,102をZ軸方向に積層することで、
図9に示す積層シート104を作製する。積層シート104は、X軸方向及びY軸方向に沿った平板状に構成され、多数のチップを個片化することが可能である。
【0057】
積層シート104は、セラミックシート101,102を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0058】
図10に示すように、積層シート104では、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下には、内部電極パターン110が積層されていない第3セラミックシート103が積層される。第3セラミックシート103の積層体は、焼成後のカバー部20に対応する。なお、
図10は、
図9の積層シート104の一部を模式的に示している。
【0059】
積層シート104では、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102の内部電極パターン110同士がZ軸方向に対向するように積層される。各セラミックシート101,102の主電極部112mが、隣接するセラミックシート101,102の主電極部113mとZ軸方向に交互に積層される。主電極部112m,113mが積層された領域は、焼成後の容量形成部16に対応する。また、各セラミックシート101,102の絶縁帯Nyは、隣接するセラミックシート101,102のテーパ部114と交互に積層される。絶縁帯Ny及びテーパ部114が積層された領域は、焼成後のエンドマージン部19a,19bに対応する。また、各セラミックシート101,102の絶縁帯NxがZ軸方向に積層された領域は、焼成後のサイドマージン部18に対応する。
【0060】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104をX軸方向及びY軸方向に沿って切断することにより、未焼成のセラミック素体111を作製する。
【0061】
図11は、積層シート104が切断され、複数のセラミック素体111が作製された態様を示す図である。積層シート104を粘着性のシートP上に配置して切断することにより、複数のセラミック素体111を含むブロックB毎に取り扱うことができる。これにより、後の外観検査を、複数のセラミック素体111に対して一度に行うことができる。
【0062】
図12は、ステップS03で得られるセラミック素体111の斜視図である。
未焼成のセラミック素体111は、X軸方向を向いた2つの端面111a,111bと、Y軸方向を向いた2つの側面111c,111dと、Z軸方向を向いた2つの主面111e,111fと、を有する。端面111a,111bは、Y軸方向に沿って切断されることにより形成された第1切断面として構成される。側面111c,111dは、X軸方向に沿って切断されることにより形成された第2切断面として構成される。主面111e,111fは、第3セラミックシート103が切断されて形成された未焼成のカバー部120によって構成される。
【0063】
図13は、設計上の切断線Lx,Lyに沿って切断されたセラミック素体111をX-Y平面に沿って切断した断面図である。なお、
図13~15では、説明のため、ハッチングを省略している。
第1内部電極112は、一方の主電極部112mと、テーパ部114が切断された引出部112eと、を有する。引出部112eは、主電極部112mから端面111aまで延び、端面111aに向かってY軸方向の幅寸法が漸減する。
第2内部電極113は、他方の主電極部113mと、テーパ部114が切断された引出部113eと、を有する。引出部113eは、主電極部113mから端面111bまで延びる。
【0064】
セラミック素体111では、未焼成の第1内部電極112と未焼成の第2内部電極113とがZ軸方向に交互に積層され、主電極部112m,113mがZ軸方向に対向するように構成される。主電極部112m,113mは、X-Y平面上における位置が一致するように設計されている。
【0065】
端面111aには、引出部112eと未焼成のエンドマージン部119aとが露出しており、端面111bには、引出部113eと未焼成のエンドマージン部119bとが露出している。エンドマージン部119a,119bは、絶縁帯NyがY軸方向に沿って切断されることで形成される。引出部112eは、テーパ部114がY軸方向に沿って切断されることで形成される。
【0066】
両側面111c,111dには、サイドマージン部118が露出している。サイドマージン部118は、セラミックシート101,102の絶縁帯NxがX軸方向及びY軸方向に沿って切断されることで形成される。絶縁帯NxがX軸方向に沿って切断された切断面は、側面111c,111dから露出するサイドマージン部118の側面に対応する。
【0067】
なお、絶縁帯NxがY軸方向に沿って切断されることで、端面111a,111bのY軸方向周縁部にもサイドマージン部118が露出する。
【0068】
図13に示すように、設計上の切断線Lx,Lyに沿って切断された場合、内部電極112,113は、X軸方向及びY軸方向に偏りのない設計位置に配置される。具体的には、内部電極112,113は、内部電極112,113のY軸方向中心がセラミック素体111のY軸方向中心に一致し、かつ主電極部112m,113mのX軸方向中心がセラミック素体111のY軸方向中心に一致する位置に配置される。
【0069】
一対のサイドマージン部118は、Y軸方向に沿って同一の幅寸法を有するように設計される。サイドマージン部118の幅寸法の設計値を、幅寸法WSとする。
同様に、エンドマージン部119a,119bも、X軸方向に沿って同一の長さ寸法を有するように設計される。エンドマージン部119a,119bの長さ寸法の設計値を、長さ寸法DEとする。
【0070】
一方、ステップS03の切断工程では、各セラミックシート101,102が設計上の切断位置で切断されないことがある。これは、ステップS03の切断工程で発生し得るX軸方向及びY軸方向に沿った切断位置のずれや、ステップS02の積層工程で発生し得る各セラミックシート101,102の積層位置のずれに起因する。
【0071】
図14は、内部電極112,113が設計上の位置からX軸方向に偏った態様を示す図である。この場合、エンドマージン部119a,119bの実際の長さ寸法deは、設計値の長さ寸法DEよりもδxだけ増加又は減少した値となる。この内部電極112,113の偏り量δxが大きい場合、短い方のエンドマージン部119bの長さ寸法(DE-δx)の大きさが十分に確保できず、所望の絶縁性や耐環境性を確保することができなくなる。
【0072】
図15は、内部電極112,113が設計上の位置からY軸方向に偏った態様を示す図である。この場合、サイドマージン部118の実際の幅寸法wsは、設計値の幅寸法WSよりもδyだけ増加又は減少した値となる。内部電極112,113の偏り量δyが大きい場合、短い方のサイドマージン部118の幅寸法(WS-δy)の大きさが十分に確保できず、所望の絶縁性や耐環境性を確保することができなくなる。
【0073】
そこで、本実施形態では、ステップS04において内部電極112,113の偏り量δx,δyを検出し、ステップS05において偏り量δx,δyに基づくセラミック素体111の良否判断を行う。
【0074】
(ステップS04:内部電極の偏り量検出)
ステップS04では、端面111a,111bの少なくともいずれか一方の外観を検査することで、内部電極112,113の設計位置からの偏り量δx,δyを検出する。以下では、端面111aの外観に基づいて第1内部電極112の偏り量を検出する態様について説明するが、第2内部電極113の偏り量についても、端面111bの外観に基づいて同様に検出することができる。
【0075】
ステップS04では、
図12~15を参照し、端面111aから露出する、引出部112eのY軸方向に沿った幅寸法w1と、引出部112eのY軸方向端部112cから側面111dまでのY軸方向に沿った幅寸法w2と、を測定する。
【0076】
テーパ部114は、主電極部112mから他方の主電極部113mに向かってY軸方向に沿った幅寸法が漸減する。このため、引出部112eの幅寸法w1は、Y軸方向に沿った切断位置が主電極部113mに近付くに従って小さくなる。つまり、幅寸法w1は、内部電極112,113のX軸方向における偏り量δxと相関を有する。したがって、幅寸法w1を測定することで、内部電極112におけるX軸方向の偏り量δxを検出することができる。
【0077】
また、X軸方向に沿った切断位置が設計上の切断線Lxとずれた場合、端面111aから露出する引出部112eの配置がY軸方向に偏る。このため、引出部112eのY軸方向端部112cから側面111dまでのY軸方向に沿った幅寸法w2を測定することで、内部電極112におけるY軸方向の偏り量δyを検出することができる。
【0078】
図14を参照し、テーパ部114(引出部112e)がX軸方向に線対称な台形状である場合の、幅寸法w1を用いた偏り量δxの算出方法について説明する。
偏り量δxは、実際の引出部112e及びエンドマージン部119aの長さ寸法deと設計上の長さ寸法DEの差異として求めることができる。そこで、幅寸法w1から長さ寸法deを算出することで、偏り量δxが検出できる。
【0079】
エンドマージン部119aとテーパ部114(引出部112e)とがなす角度をθとする。エンドマージン部119aのテーパ部114(引出部112e)が積層されていない部分は、角度θを有する直角三角形Tで構成される。直角三角形Tの底辺をエンドマージン部119aの長さ寸法deとすると、直角三角形TのY軸方向における幅寸法wtは以下の式(1)で表される。
wt=tanθ・de・・・(1)
【0080】
さらに、引出部112eと主電極部112mとの境界部112bのY軸方向に沿った幅寸法WMは設計値として規定されている。引出部112eのX軸方向に関する対称性も考慮し、w1、wt及びWMは、以下の式(2)の関係を有する。
WM=w1+2wt・・・(2)
【0081】
式(2)に式(1)を代入し、整理すると、エンドマージン部119aの長さ寸法deは以下の式(3)で表すことができる。
de=(WM-w1)/2tanθ・・・(3)
これらの式より、偏り量δxは、設計上の規定値であるθ、DE,WM及び測定されたw1を用いて、以下のように表される。
δx=de-DE
δx={(WM-w1)/2tanθ}―DE・・・(4)
【0082】
本実施形態では、δxの正負によって偏りの向きも判断することができる。すなわち、δxが正の値の場合、実際の引出部112e(エンドマージン部119a)の長さ寸法DEが設計上の長さ寸法DEより大きいため、内部電極112が端面111b側に偏っていると判断できる。δxが負の値の場合、実際の引出部112e(エンドマージン部119a)の長さ寸法DEが設計上の長さ寸法DEより小さいため、内部電極112が端面111a側に偏っていると判断できる。
【0083】
続いて
図15を参照し、テーパ部114(引出部112e)がX軸方向に線対称な台形状である場合の、幅寸法w2を用いた偏り量δyの算出方法について説明する。
【0084】
偏り量δyは、実際のサイドマージン部118の幅寸法wsと設計上の幅寸法WSの差異として求めることができる。そこで、測定された幅寸法w2からサイドマージン部118の幅寸法wsを算出することで、偏り量δyを検出することができる。なお、以下では側面111d側の幅寸法w2に基づいて偏り量δyを検出する例を示すが、側面111c側でも同様に偏り量δyを検出することができる。
【0085】
図15に示す例において、実際のサイドマージン部118の幅寸法wsは、測定値である幅寸法w2と式(1)で算出されたwtを用いて、以下の式(5)で表される。
ws=w2-wt
ws=w2-(WM-w1)/2・・・(5)
【0086】
これにより、内部電極112の偏り量δyは、算出された幅寸法wsと設計上のWSとを用いて、以下の式(6)で表すことができる。
dy=ws-WS
dy=w2-(WM-w1)/2-WS・・・(6)
【0087】
偏り量δyの正負により、Y軸方向における偏りの向きも判断することができる。すなわち、dyが正の値の場合、実際のサイドマージン部118の幅寸法が設計上の長さ寸法WSより大きいため、内部電極112が側面111c側に偏っていると判断できる。δyが負の値の場合、実際のサイドマージン部118の幅寸法が設計上の長さ寸法WSより小さいため、内部電極112が側面111d側に偏っていると判断できる。
【0088】
以上のように、端面111aの外観を検査し、幅寸法w1,w2を測定することによって、第1内部電極112のX軸方向及びY軸方向における偏り量δx、δy及び偏りの向きを算出することができる。このため、ステップS04の処理を自動化することができる。
【0089】
例えば
図11に示すように、同一の積層シート104を区画したブロックであって複数のセラミック素体111を含むブロックBが移送される。
続いて、
図16に示すように、ブロックBの端面111a側を撮像装置Cによって撮像する。続いて、情報処理装置が、撮像された端面111aの画像から幅寸法w1,w2の大きさを解析し、上記式(1)~(6)に相当する計算を自動的に行う。これにより、偏り量δx、δyが自動的に検出される。
【0090】
(ステップS05:良否判定)
ステップS05は、ステップS04で検出された偏り量δx、δyが所定の範囲内であるか否か判定する。つまり、偏り量δxの値が適正と認められる範囲内であり、偏り量δyの値が適正と認められる範囲内である場合、当該セラミック素体111を良品と判定し、ステップS06に進む。
【0091】
ステップS05では、偏り量δx、δyが所定の範囲内であるか否か判定するため、幅寸法w1が第1の範囲内であり、幅寸法w2が第2の範囲であるか否か判定する。つまり、式(4)から幅寸法w1から偏り量δxを一義的に導くことができ、式(6)から幅寸法w2から偏り量δyを一義的に導くことができる。したがって、偏り量δxの適正範囲に対応する幅寸法w1の第1の範囲と、偏り量δyの適正範囲に対応する幅寸法w2の第2の範囲とを規定することができる。
【0092】
つまり、ステップS04で測定された幅寸法w1が第1の範囲内であり、幅寸法w2が第2の範囲内である場合、当該セラミック素体111を良品と判定する。一方、幅寸法w1及び幅寸法w2の少なくともいずれか一方が上記範囲外である場合、当該セラミック素体111を不良品と判定する。
【0093】
ステップS05は、ステップS04の偏り量検出工程から連続して自動化することができる。つまり、情報処理装置が、端面111aの画像を解析して各セラミック素体111の幅寸法w1,w2を測定し、幅寸法w1,w2がそれぞれ設定された第1の範囲内及び第2の範囲内であるか否か判定することで、良否判定を行うことができる。これにより、生産性を高め、検査にかかるコスト及び時間を削減することができる。
【0094】
(ステップS06:焼成)
ステップS06では、ステップS05で良品と判定された未焼成のセラミック素体111を焼結させることにより、
図1~3に示すセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS06により、容量形成部116が容量形成部16になり、エンドマージン部119a,119bがエンドマージン部19a,19bになり、サイドマージン部118がサイドマージン部18になり、カバー部120がカバー部20になる。焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0095】
(ステップS07:外部電極形成)
ステップS07では、ステップS06で得られたセラミック素体11の端面11a,11bに外部電極14,15を形成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS07では、まず端面11a,11bに未焼成の電極材料を塗布し、塗布された未焼成の電極材料を焼き付けて下地膜を形成する。そして、当該下地膜の上に中間膜及び表面膜を電解メッキなどのメッキ処理で形成し、外部電極14,15を形成する。
【0096】
(ステップS03':内部電極位置調整)
一方、ステップS05においてセラミック素体111が不良と判定された場合は、ステップS03'に進み、算出された偏り量δx、δyに基づいて、ステップS03におけるX軸方向及びY軸方向に沿った切断位置を調整する。これにより、各内部電極112,113のX-Y平面における位置を調整することができる。したがって、製品の不良率を低下させ、歩留まりを高めることができる。さらに、本実施形態では、偏り量δx、δyの正負によって偏りの向きも検出できるため、より的確に切断位置の調整を行うことができる。
【0097】
ステップS03'において切断位置を調整した後、調整された切断位置に基づき、ステップS03において新たに作製された積層シートが切断される。これにより、セラミック素体における内部電極112,113の位置精度を高めることができる。
【0098】
図17に示すように、一般的な略長方形状の内部電極212,213を有するセラミック素体211では、エンドマージン部がサイドマージン部218によって覆われている。このため、セラミック素体211における内部電極212,213の配置は、外観からでは判断することができない。
【0099】
外観から内部電極の偏りを検出することが可能な構成として、
図18に示す検査用セラミック素体311が挙げられる。検査用セラミック素体311は、一般的なセラミック素体211と同様に、端面311a,311bから内部電極312,313が露出し、かつ、側面311cから一方の内部電極313が露出している。内部電極313は、一定の長さ寸法を有する長方形状に構成される。
【0100】
検査用セラミック素体311では、側面311cに露出する第2内部電極313のX軸方向端部から端面311aまでのY軸方向に沿った長さ寸法d'が、エンドマージン部319の実際の長さ寸法に相当する。このため、測定された長さ寸法d'とエンドマージン部319の設計値の長さ寸法との差異から、X軸方向における内部電極312,313の偏り量を検出することができる。
【0101】
また、検査用セラミック素体311では、端面311aに露出する第1内部電極312のY軸方向端部から側面311cまでのY軸方向に沿った幅寸法w'が、サイドマージン部318の実際の幅寸法に相当する。このため、測定された幅寸法w'とサイドマージン部318の設計値の幅寸法との差異から、Y軸方向における内部電極312,313の偏り量を検出することができる。
【0102】
検査用セラミック素体311を用いて偏り量を検出するためには、端面311aと側面311cの少なくとも2面の外観検査を行う必要がある。このため、各面の撮像及び寸法の検出を自動化するためには、撮像装置及び検査用セラミック素体311の一方の方向を転換するか、あるいは撮像装置を2台設置する必要があり、装置構成が煩雑になる。一方、顕微鏡を用いて人が検査用セラミック素体311を観察し、各寸法を測定することもできるが、コストが高くなるとともに時間がかかり、生産性の低下につながる。
【0103】
さらに、検査用セラミック素体311は、第2内部電極313の側方にサイドマージン部318が設けられていない。このため、絶縁性及び耐環境性が確保できず、積層セラミックコンデンサとして製品化することができない。したがって、検査に用いた検査用セラミック素体311は全て廃棄されることとなり、歩留まりが低下する。
【0104】
一方、本実施形態の未焼成のセラミック素体111は、端面111aの外観検査によって、エンドマージン部119a,119bの長さ寸法de及びサイドマージン部118の幅寸法wsの双方を検出することができる。このため、内部電極112,113の偏り量の検出に係る工数が削減されるとともに、撮像装置及び情報処理装置等による自動化が容易になる。したがって、検査にかかるコストが低減されるとともに、生産性が大きく向上する。
【0105】
また、ステップS04の偏り量検出工程及びステップS05の判定工程を自動化することができるため、積層シート104内の全てのセラミック素体111について内部電極の偏り量の検査を行うことができる。これにより、確実に不良品を検出することができる。さらに、情報処理装置が、各セラミック素体111の検査結果に基づいて、積層シート104内における偏り量や不良品の分布を解析することができる。したがって、ステップS02の積層工程やステップS03の切断工程に対してより詳細なフィードバックを行うことができ、歩留まりを向上させることができる。
【0106】
これに加えて、未焼成のセラミック素体111は、サイドマージン部118及びエンドマージン部119a,119bが設けられているため、ステップS05で良品と判定された場合、焼成して製品化することができる。したがって、検査に用いたセラミック素体111を廃棄する必要がなくなり、歩留まりをさらに向上させることができる。
【0107】
<第2実施形態>
テーパ部は、一方の主電極部から他方の主電極部に向かって、Y軸方向に沿った幅方向が漸減する態様に限定されない。
例えば以下のように、テーパ部は、一対の主電極部の間に、Y軸方向に沿った幅寸法が最も小さくなる括れ部を含んでいてもよい。
なお、以下の説明では、第1実施形態と同様の構成に対して同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0108】
図19は、第2実施形態に係るセラミックシート401,402の平面図である。
図19に示すように、内部電極パターン410は、第1実施形態に係るセラミックシート101,102の内部電極パターン110と同様に、X軸方向及びY軸方向に沿って配列される。内部電極パターン410は、内部電極パターン110と同様に、一対の主電極部412m,413mと、テーパ部414と、を有する。
【0109】
テーパ部414は、一対の主電極部412m,413m間を接続するとともに、主電極部412m,413mの間にY軸方向に沿った幅寸法が最も小さくなる括れ部415を含む。つまり、テーパ部414は、主電極部412mから括れ部415に向かってY軸方向の幅寸法が漸減する部分と、括れ部415から主電極部413mに向かって軸方向の幅寸法が漸増する部分と、を有する。本実施形態においても、テーパ部414は、第1主電極部412m及び第2主電極部413mの間を接続しX軸方向に沿ってY軸方向における幅寸法が変化する幅狭部として機能する。
【0110】
括れ部415は、設計上の切断線Ly上に形成されていてもよい。これにより、テーパ部414を、括れ部415上を通るY軸方向に平行な直線に対して線対称に形成することができ、後述するようにX軸方向における内部電極412,413の偏り量δxの検出が容易になる。
【0111】
図20に示すように、設計上の切断線Lx,Lyに沿って切断された場合、内部電極パターン410が切断されて形成された内部電極412,413は、セラミック素体411の中央部である設計位置に配置される。つまり、一対のサイドマージン部418のY軸方向に沿った寸法は、設計値の幅寸法WS'となる。また、引出部412e及びエンドマージン部419aのX軸方向に沿った寸法、並びに引出部413b及びエンドマージン部419bのX軸方向に沿った寸法も、設計値の長さ寸法DE'となる。
【0112】
一方、
図21に示すように、内部電極412,413が設計位置からX軸方向にδx、Y軸方向にδy偏ってしまった場合は、第1実施形態と同様に偏り量δx,δyを検出することができる。
【0113】
すなわち、内部電極412,413の設計位置からのX軸方向に沿った偏り量δxは、端面411aから露出する引出部412eのY軸方向に沿った幅寸法w1'に基づいて検出することができる。そして、第1実施形態で説明した式(4)に基づき、エンドマージン部419aの長さ寸法de'を算出する。具体的には、エンドマージン部419aとテーパ部414(引出部412e)とがなす角度をθ'とする。δxは、角度θ'と、境界部412bの設計上の幅寸法WM'と、エンドマージン部219aの設計上の長さ寸法DE'と、さらに測定された幅寸法w1'と、に基づいて、式(4)'で表される。
δx={(WM'-w1')/2tanθ'}―DE'・・・(4)'
【0114】
また、内部電極412,413の設計位置からのY軸方向に沿った偏り量δyは、引出部412eのY軸方向端部412cから側面411dまでのY軸方向に沿った幅寸法w2'に基づいて検出することができる。すなわち、測定された幅寸法w2'からサイドマージン部418の幅寸法ws'を算出し、設計値のサイドマージン部418の幅寸法WS'と実際の幅寸法ws'との差異を求める。つまり、偏り量δyは、第1実施形態の式(6)に準じた式(6)'により表すことができる。
δy=w2'-(WM'-w1')/2-WS'・・・(6)'
【0115】
以上のように、本実施形態においても、端面411a,411bの少なくともいずれか一方を検査することで、内部電極412,413の設計位置からの偏り量を検出することができる。したがって、ステップS04の偏り量検出工程及びステップS05の判定工程を自動化できるとともに、ステップS02の積層工程やステップS03の切断工程に対してより詳細なフィードバックを行うことができる。また、良品と判断されたセラミック素体411については、ステップS05の焼成工程、ステップS06の外部電極形成工程を経て製品化することができ、歩留まりを向上させることができる。さらに積層セラミックコンデンサのサイズが小型化しても、簡便にかつ精度よく内部電極の偏りを検出することができる。例えば
図1の積層セラミックコンデンサのX軸方向、Y軸方向の外形寸法がそれぞれ設計値で0.6mm、0.3mm、またはそれぞれ0.4mm、0.2mmまたはそれぞれ0.2mm、0.1mmである小型の製品のときにより効果的に上記の効果を得ることができる。また
図1においてセラミック層21の積層方向であるZ軸方向のサイズ(外径寸法)が0.3mm未満の積層セラミックコンデンサであっても同様の効果を得ることができる。
【0116】
<第3実施形態>
第1主電極部と第2主電極部とを接続する幅狭部は、X軸方向に沿って幅寸法が次第に変化するテーパ状に限定されない。
【0117】
図22は、本実施形態に係るセラミックシート501の平面図である。なお、セラミックシート501には、上記実施形態のセラミックシート101,102,401,402と同様に、X軸方向及びY軸方向に沿って複数の内部電極パターン510が配列されているが、
図22では1つの内部電極パターン510のみ示している。
【0118】
図22に示すように、内部電極パターン510は、X軸方向に相互に対向する第1主電極部512m及び第2主電極部513mと、幅狭部514と、を有する。
【0119】
幅狭部514は、主電極部512m,513m間を接続し、主電極部512m,513mよりもY軸方向において狭い幅寸法を有するとともに、X軸方向に沿って幅寸法が変化する。ここでいう「X軸方向に沿って幅寸法が変化する」とは、少なくとも一部に幅寸法が変化する領域を有することをいうものとする。
【0120】
図22に示すように、幅狭部514は、括れ部515と、括れ部515と第1主電極部512mとの間を接続する第1接続部516と、括れ部515と第2主電極部513mとの間を接続する第2接続部517と、を含む。
【0121】
括れ部515は、幅狭部514で幅寸法が最も小さくなる部分である。本実施形態の括れ部515は、X軸方向に相互に対向する第1外縁514c及び第2外縁514dが、Y軸方向に延びる設計上の切断線Lyを横切ってX軸方向に延びるように構成される。これにより、括れ部515は、X軸方向に沿ってほぼ一定の幅寸法WN0で構成される。括れ部515は、X軸方向において、切断線Lyからの切断位置ずれが許容される範囲に形成される。
【0122】
第1接続部516は、第1外縁514c側が括れ部515からY軸方向一方に膨出した構成を有し、幅寸法WN0よりも大きく幅寸法WMよりも小さい幅寸法WN1を有する。より詳細に、第1接続部516では、第1外縁514cは、括れ部515からY軸方向一方に延びる部分と、第1主電極部512mから直線的にX軸方向に延びる部分とを有する。また、第2外縁514dは、括れ部515から直線的にX軸方向に延びる。
【0123】
第2接続部517は、第2外縁514d側が括れ部515からY軸方向他方に膨出した構成を有し、幅寸法WN0よりも大きく幅寸法WMよりも小さい幅寸法WN2を有する。より詳細に、第2接続部517では、第1外縁514cは、括れ部515から直線的にX軸方向に延びる。また、第2外縁514dは、括れ部515からY軸方向他方に延びる部分と、第2主電極部513mから直線的にX軸方向に延びる部分とを有する。
【0124】
このように、本実施形態では、幅狭部514がY軸方向に平行な直線に関して非線対称な形状を有し、第1外縁514c及び第2外縁514dが非対称なジグザグ状に形成される。このような内部電極パターン510を有するセラミックシート501は、上記ステップS01,S02と同様に、X軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて内部電極パターン510が形成された他のセラミックシート501と交互に積層される。その後、上記ステップS03と同様に、セラミックシート501の積層体が切断され、上記ステップS04と同様に、内部電極512,513の偏り量及び偏りの向きが検出される。
【0125】
図23~
図25は、内部電極パターン510を有するセラミックシート501の積層体を切断して作製されたセラミック素体511を示す図であり、各図において、AはX-Y平面に沿って切断した断面図、Bは端面511aを示す側面図である。なお、Aの断面図では、ハッチングを省略している。
【0126】
図23は、積層シートがY軸方向に沿って括れ部515内で切断された構成例を示す。なお、この場合の端面511bは、
図23Bと同様に構成されるため、説明を省略する。
図23において、幅狭部514が切断された引出部512eは、端面511aにおいて、Y軸方向における幅寸法WN0を有する。つまり、上記ステップS04で端面511aを外観検査した場合、引出部512eのY軸方向に沿った幅寸法w1が幅寸法WN0にほぼ一致していれば、設計位置からの内部電極512,513のX軸方向における偏り量が適正範囲内であり、良品と判定することができる。
【0127】
図24は、Y軸方向に沿って第1接続部516内で切断された場合を示す。なお、この場合の端面511bは、
図25Bと同様に構成されるため、説明を省略する。
この場合、上記ステップS04の外観検査において、引出部512eのY軸方向に沿った幅寸法w1が、幅寸法WN0より大きく幅寸法WMよりも小さく、例えば幅寸法WN1に一致していることが検出される。これにより、上記ステップS05の良否判定において、X軸方向における設計位置からの内部電極512,513の偏り量が適正範囲を超えており、不良と判定することができる。
【0128】
加えて、ステップS04の外観検査において、引出部512eのY軸方向端部512cから側面511dまでのY軸方向に沿った幅寸法w2に基づいて、端面511aから露出する引出部512eが側面511c側に偏っていることを検出できる。これにより、第1外縁514c側が膨出している第1接続部516内で切断されたと判定でき、第1主電極部512m側に切断位置が偏っていることを検出できる。したがって、上記ステップS03'の内部電極位置調整工程において、的確に切断位置を調整できる。
【0129】
図25は、Y軸方向に沿って第2接続部517内で切断された場合を示す。なお、この場合の端面511bは、
図24Bと同様に構成されるため、説明を省略する。
図25においても、
図24と同様に、上記ステップS04の外観検査において、引出部512eのY軸方向に沿った幅寸法w1が、幅寸法WN0よりも大きく幅寸法WMよりも小さく、例えば幅寸法WN2に一致していることが検出される。これにより、上記ステップS05の良否判定において、X軸方向における設計位置からの内部電極512,513の偏り量が適正範囲を超えており、不良と判定することができる。また、ステップS04において、端面511aから露出する引出部512eが側面511d側に偏っていることを検出でき、第2主電極部513m側に切断位置が偏っていることを検出できる。これにより、上記ステップS03'の内部電極位置調整工程において、的確に切断位置を調整できる。
【0130】
なお、内部電極512,513におけるY軸方向の偏り量については、幅寸法w1の大きさによって引出部512eにおける切断位置を考慮した上で、幅寸法w2の大きさに基づいて判定することができる。
【0131】
上記構成により、第1実施形態と同様に、一方の端面の外観検査によって、切断位置の良否判定及びその偏りの向きまで判定することができる。さらに、幅狭部514の一部が一定の幅寸法を有するため、幅狭部514における幅寸法の狭小化を抑制することができる。したがって、積層セラミックコンデンサのサイズが小型化しても、簡便にかつ精度よく内部電極の偏りを検出することができる。例えば
図1の積層セラミックコンデンサのX軸方向、Y軸方向の外形寸法がそれぞれ設計値で0.6mm、0.3mm、またはそれぞれ0.4mm、0.2mmまたはそれぞれ0.2mm、0.1mmである小型の製品のときにより効果的に上記の効果を得ることができる。また
図1においてセラミック層21の積層方向であるZ軸方向のサイズ(外径寸法)が0.3mm未満の積層セラミックコンデンサであっても同様の効果を得ることができる。
【0132】
<第4実施形態>
図26は、本発明の第4実施形態に係るセラミックシート601の平面図である。
同図に示すように、内部電極パターン610は、内部電極パターン510をベースとして角が丸く形成されていてもよい。つまり、内部電極パターン610は、内部電極パターン510と同様に、X軸方向に相互に対向する第1主電極部612m及び第2主電極部613mと、幅狭部614と、を有する。幅狭部614は、主電極部612m、613mよりもY軸方向において幅狭であって、X軸方向に沿って幅寸法がY軸方向の一方または他方に変化するとともに、第1外縁614c及び第2外縁614dの少なくとも一方が直線状の領域と定義できる。
【0133】
括れ部615は、括れ部515と同様に、Y軸方向に相互に対向する第1外縁614c及び第2外縁614dが、設計上の切断線Lyを横切ってX軸方向に延びるように構成される。括れ部615は、幅狭部614で幅寸法が最も小さくなる部分であって、X軸方向に沿って一定の幅寸法WN'0で構成される。
【0134】
第1接続部616は、第1接続部516と同様に、第1外縁614c側が括れ部615からY軸方向の一方に膨出した構成を有し、幅寸法WN0よりも大きく幅寸法WMよりも小さい幅寸法WN'1を有する。
第2接続部617は、第2接続部517と同様に、第2外縁614d側が括れ部615からY軸方向の他方に膨出した構成を有し、幅寸法WN'0よりも大きく幅寸法WMよりも小さい幅寸法WN'2を有する。
【0135】
これにより、セラミックシート601の積層体を切断してセラミック素体を作製した場合、第3実施形態と同様に、ステップS04のX軸方向端面の外観検査によって、内部電極の偏り量及び偏りの向きを検出することができる。すなわち、幅狭部514の幅寸法の狭小化を抑制しつつ、簡便にかつ精度よく内部電極の偏りを検出することができる。例えば
図1の積層セラミックコンデンサのX軸方向、Y軸方向の外形寸法がそれぞれ設計値で0.6mm、0.3mm、またはそれぞれ0.4mm、0.2mmまたはそれぞれ0.2mm、0.1mmである小型の製品のときにより効果的に上記の効果を得ることができる。また
図1においてセラミック層21の積層方向であるZ軸方向のサイズ(外径寸法)のサイズが0.3mm未満の積層セラミックコンデンサであっても同様の効果を得ることができる。
【0136】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0137】
テーパ部は、X軸方向に平行な直線に対して線対称の構成に限定されない。また、テーパ部は、曲線を有していてもよい。さらに、テーパ部が括れ部を有する場合は、Y軸方向に平行な直線に対して線対称でなくてもよく、切断線上に括れ部が形成されていなくてもよい。
【0138】
また、ステップS03'の内部電極位置調整工程では、切断位置を調整する態様に限定されず、ステップS04において検出された内部電極の偏り量に基づいて、ステップS02における各セラミックシート101,102の積層位置を調整してもよい。本発明によれば、一つの端面における幅寸法w1,w2(w1',w2')を測定し、内部電極の偏りを検出することができる。このため、Z軸方向に異なる位置の引出部についての幅寸法w1、w2を測定することで、Z軸方向に沿った内部電極の偏り量の変化についても容易に検出することができる。
つまり、ステップS03'の内部電極位置調整工程では、上記積層位置及び切断位置の少なくとも一方を調整することができる。
【0139】
例えば、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明は積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0140】
10…積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
11…セラミック素体
11a,11b…端面
12,13…内部電極
12m,13m…主電極部
12e,13e…引出部
14,15…外部電極
16…容量形成部(機能部)
17a…第1端部
17b…第2端部
18…サイドマージン部
19a,19b…エンドマージン部
101,102,401,402,501,601…セラミックシート
111,411,511…未焼成のセラミック素体
111a,111b,411a,411b,511a,511b…端面(第1切断面)
111c,111d,411c,411d,511c,511d…側面(第2切断面)
110,410,510,610…内部電極パターン
114,414…テーパ部(幅狭部)
514,614…幅狭部
112,113,412,413,512,513…未焼成の内部電極
112m,113m,412m,413m,512m,513m,612m,613m…未焼成の主電極部
112e,113e,412e,413e,512e,513e,612e,613e…未焼成の引出部
Nx,Ny…絶縁帯