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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】物体認識方法及び物体認識装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/931 20200101AFI20220929BHJP
   G01S 17/58 20060101ALI20220929BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220929BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S17/58
G01S13/931
G08G1/16 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018222162
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020085713
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 宏寿
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-033651(JP,A)
【文献】特開2006-133956(JP,A)
【文献】特開2005-138764(JP,A)
【文献】特開2005-009881(JP,A)
【文献】特開2011-196943(JP,A)
【文献】特開2009-014479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載されたセンサを用いて、前記自車両の周囲の物体の表面上にある複数の検出点を検出し、前記センサによって検出された前記複数の検出点を用いて前記物体を認識する物体認識方法であって、
前記自車両が将来進む軌道を推定し、
第1の時刻において前記センサを用いて前記複数の第1の検出点を検出し、
前記第1の時刻とは異なる第2の時刻において前記センサを用いて複数の第2の検出点を検出し、
前記複数の第1の検出点から前記軌道までの距離を用いて、前記複数の第1の検出点の中から、前記軌道までの距離が最も短い検出点である前記自車両に最も近い第1の検出点を抽出し、
前記複数の第2の検出点から前記軌道までの距離を用いて、前記複数の第2の検出点の中から、前記軌道までの距離が最も短い検出点である前記自車両に最も近い第2の検出点を抽出し、
抽出された前記自車両に最も近い前記第1の検出点及び前記自車両に最も近い前記第2の検出点の位置の時間変化から、前記自車両に最も近い検出点の速度ベクトルを算出し、
前記速度ベクトルを前記軌道の接線方向の速度成分及び法線方向の速度成分に分解し、
前記接線方向の速度成分を前記自車両に対する前記物体の相対速度として算出する
ことを特徴とする物体認識方法。
【請求項2】
前記複数の検出点から前記軌道に向かってそれぞれ垂線を引き、
前記垂線の長さが所定値以下の検出点の中から前記自車両に最も近い検出点を抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の物体認識方法。
【請求項3】
前記垂線の長さが最も短い検出点を前記自車両に最も近い検出点として抽出する
ことを特徴とする請求項2に記載の物体認識方法。
【請求項4】
前記複数の検出点から前記軌道に向かってそれぞれ垂線を引き、
前記垂線の長さが所定値以下の検出点の中から、2点間の距離が所定値以下の検出点をクラスタリングし、
クラスタリングされたクラスタに含まれる検出点の中から、前記自車両に最も近い検出点を抽出する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の物体認識方法。
【請求項5】
地図データベースと、前記自車両の位置とに基づいて、前記軌道を算出する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の物体認識方法。
【請求項6】
前記自車両に搭載されたカメラによって取得された、前記自車両の前方の道路構造に基づいて、前記軌道を算出する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の物体認識方法。
【請求項7】
自車両に搭載されたセンサを用いて、前記自車両の周囲の物体の表面上にある複数の検出点を検出し、前記センサによって検出された前記複数の検出点を用いて前記物体を認識するコントローラを備える物体認識装置であって、
前記コントローラは、
前記自車両が将来進む軌道を推定し、
第1の時刻において前記センサを用いて前記複数の第1の検出点を検出し、
前記第1の時刻とは異なる第2の時刻において前記センサを用いて複数の第2の検出点を検出し、
前記複数の第1の検出点から前記軌道までの距離を用いて、前記複数の第1の検出点の中から、前記軌道までの距離が最も短い検出点である前記自車両に最も近い第1の検出点を抽出し、
前記複数の第2の検出点から前記軌道までの距離を用いて、前記複数の第2の検出点の中から、前記軌道までの距離が最も短い検出点である前記自車両に最も近い第2の検出点を抽出し、
抽出された前記自車両に最も近い前記第1の検出点及び前記自車両に最も近い前記第2の検出点の位置の時間変化から、前記自車両に最も近い検出点の速度ベクトルを算出し、
前記速度ベクトルを前記軌道の接線方向の速度成分及び法線方向の速度成分に分解し、
前記接線方向の速度成分を前記自車両に対する前記物体の相対速度として算出する
ことを特徴とする物体認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体認識方法及び物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザレーダを用いた物体のトラッキング方法が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された発明は、レーザレーダによって検出された検出点を用いてクラスタを作成し、クラスタに含まれる検出点の移動量に基づいてクラスタの形状の一致度を算出し、算出された形状の一致度が所定閾値以上の場合にクラスタを1つの物体として特定する。これにより、特許文献1に記載された発明は、物体を特定でき、さらに物体の速度も算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-228259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自車両に大きなヨーレートが発生するシーン(急カーブ、交差点の右折(左折)など)において、自車両から見た物体の見え方が大きく変化する。例えば、急カーブの先に停止車両が居たり、交差点の右折(左折)先に駐車車両が居たりする場合、自車両から見た停止車両または駐車車両の見え方が大きく変化する。しかしながら、特許文献1に記載された発明は、自車両に大きなヨーレートが発生するシーンについて言及しておらず、このようなシーンにおいて物体の速度を精度よく算出することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、物体の速度を精度よく算出することができる物体認識方法及び物体認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る物体認識方法は、自車両が将来進む軌道を推定する。物体認識方法は、第1の時刻において複数の第1の検出点を検出し、第1の時刻とは異なる第2の時刻において複数の第2の検出点を検出する。物体認識方法は、複数の第1の検出点から軌道までの距離を用いて、複数の第1の検出点の中から、軌道までの距離が最も短い検出点である自車両に最も近い第1の検出点を抽出し、複数の第2の検出点から軌道までの距離を用いて、複数の第2の検出点の中から、軌道までの距離が最も短い検出点である自車両に最も近い第2の検出点を抽出する。物体認識方法は、抽出された第1の検出点及び第2の検出点の位置の時間変化から、自車両に最も近い検出点の速度ベクトルを算出する。物体認識方法は、速度ベクトルを軌道の接線方向の速度成分及び法線方向の速度成分に分解し、接線方向の速度成分を自車両に対する物体の相対速度として算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体の速度を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る物体認識装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る物体認識装置の一動作例を説明するフローチャートである。
図3図3は、走行シーンの一例を説明する図である。
図4図4は、検出点を分類する方法の一例を説明する図である。
図5図5は、検出点を追跡する方法の一例を説明する図である。
図6図6は、速度ベクトルの一例を説明する図である。
図7図7は、速度ベクトルの分解の一例を説明する図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る物体認識装置の概略構成図である。
図9図9は、本発明の第2実施形態に係る物体認識装置の一動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
(物体認識装置1の構成例)
図1を参照して、物体認識装置1の構成例を説明する。図1に示すように、物体認識装置1は、センサ10と、地図データベース11と、GPS受信機12と、コントローラ20と、アクチュエータ30と、スピーカ31と、ディスプレイ32と、を備える。
【0011】
物体認識装置1は、自動運転機能を有する車両に搭載されてもよく、自動運転機能を有しない車両に搭載されてもよい。また、物体認識装置1は、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に搭載されてもよい。なお、本実施形態における自動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングなどのアクチュエータの内、少なくとも何れかのアクチュエータが乗員の操作なしに制御されている状態を指す。そのため、その他のアクチュエータが乗員の操作により作動していたとしても構わない。また、自動運転とは、加減速制御、横位置制御などのいずれかの制御が実行されている状態であればよい。また、本実施形態における手動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングを乗員が操作している状態を指す。
【0012】
センサ10は、自車両に搭載され、自車両の周囲の物体を検出する装置である。センサ10は、ライダ、レーダ、ミリ波レーダ、レーザレンジファインダ、ソナーなどを含む。センサ10は、自車両の周囲の物体として、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び、障害物、落下物、駐車車両を含む静止物体を検出する。また、センサ10は、移動物体及び静止物体の自車両に対する位置、姿勢(ヨー角)、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートを検出する。また、センサ10は、車輪速センサ、操舵角センサ、及びジャイロセンサなどを含んでもよい。センサ10は、検出した情報をコントローラ20に出力する。
【0013】
本実施形態では、センサ10は、ライダまたはレーダとして説明する。ライダまたはレーダは、電波を物体に向けて走査し、その反射波を測定することにより、物体までの距離や方向を測定する。また、ライダまたはレーダは、物体のポイントクラウドを検出点として取得する。ポイントクラウドとは、コントローラ20が処理する点の集合である。通常、ポイントクラウドは、3次元座標(x、y、z)で表現される。なお、物体のポイントクラウドを取得する方法は、ライダまたはレーダに限定されない。例えば、カメラ画像からそれぞれ周囲の画素と区別可能な特徴を持つ画素をポイントクラウドとして取得する方法が挙げられる。この方法には、例えば非特許文献「Jianbo Shi and Carlo Tomasi, "Good Features to Track," 1994 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR'94), 1994, pp.593 - 600.」に記載の方法が用いられる。
【0014】
地図データベース11は、カーナビゲーション装置などに記憶されているデータベースであって、道路情報、施設情報など経路案内に必要となる各種データが記憶されている。また、地図データベース11には、道路の構造、道路の車線数、車線の位置、道路境界線、物標などの情報が記憶されている。地図データベース11は、コントローラ20の要求に応じて地図情報をコントローラ20に出力する。なお、道路情報、物標情報などの各種データは必ずしも地図データベース11から取得されるものに限定されず、センサ10により取得されてもよく、また車車間通信、路車間通信を用いて取得されてもよい。また、道路情報、物標情報などの各種データが外部に設置されたサーバに記憶されている場合、コントローラ20は、通信により随時これらのデータをサーバから取得してもよい。また、コントローラ20は、外部に設置されたサーバから定期的に最新の地図情報を入手して、保有する地図情報を更新してもよい。
【0015】
GPS受信機12は、人工衛星からの電波を受信することにより、地上における自車両の位置(以下、自己位置と称する場合がある)及び自車両の姿勢を検出する。GPS受信機12は、検出した自車両の位置情報及び姿勢情報をコントローラ20に出力する。
【0016】
コントローラ20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、物体認識装置1として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、物体認識装置1が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって物体認識装置1が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ20は、複数の情報処理回路として、軌道推定部21と、抽出部22と、追跡部23と、相対速度算出部24と、運転支援部25と、を備える。
【0017】
軌道推定部21は、自己位置及び自車両の姿勢を用いて、自車両が将来進む軌道を推定する。
【0018】
抽出部22は、センサ10によって検出された検出点の中から、自車両に最も近い検出点を抽出する。
【0019】
追跡部23は、抽出部22によって抽出された自車両に最も近い検出点を追跡する。また、追跡部23は、追跡結果に基づいて自車両に最も近い検出点の速度ベクトルを算出する。
【0020】
相対速度算出部24は、追跡部23によって算出された速度ベクトルを用いて自車両に対する物体の相対速度を算出する。
【0021】
運転支援部25は、相対速度算出部24によって算出された相対速度と、自車両に最も近い検出点までの距離Lに基づいて運転支援を行う。運転支援部25は、スピーカ31またはディスプレイ32を介して乗員に報知したり、アクチュエータ30を制御したりする。なお、アクチュエータ30には、ブレーキアクチュエータ、アクセルアクチュエータ、ステアリングアクチュエータなどが含まれる。
【0022】
次に、図2図7を参照して、物体認識装置1の一動作例を説明する。
【0023】
図2に示すステップS101において、センサ10は、自車両40の周囲の物体(図3に示す停止車両41)を検出する。図3に示す停止車両41は、自車両40の前方に位置し、停止している。センサ10は、停止車両41の表面上にある複数の検出点を検出する。なお、図3に示す例では、説明の都合上、一つの検出点60が図示されているが、実際には停止車両41の表面上において複数の検出点が検出される。複数の検出点については後述する。なお、複数の検出点は、一つの物体の表面上にある複数の検出点を意味する場合と、自車両40の周囲の様々な物体の検出点を意味する場合がある。
【0024】
処理はステップ103に進み、GPS受信機12は、自己位置及び自車両40の姿勢を検出する。
【0025】
処理はステップ105に進み、コントローラ20は、自己位置と、自車両40の姿勢と、地図データベース11とを用いて、自車両40が走行している車線を取得する。なお、以下では、自車両40が走行している車線を単に自車線という。本実施形態に係る物体認識装置1は、図3に示すカーブのように、自車両40に大きなヨーレートが発生するシーンで適用されるものとして説明する。自車両40に大きなヨーレートが発生するシーンには、カーブ、交差点の右折(左折)などが含まれる。もちろん、本実施形態に係る物体認識装置1は、自車両40に大きなヨーレートが発生するシーン以外に適用されてもよい。
【0026】
処理はステップ107に進み、軌道推定部21は、自己位置及び自車両40の姿勢を用いて、自車線上における自車両40が将来進む軌道50を推定する(図3参照)。軌道50は、一例として、図3に示すように、自車線の中心を通る。
【0027】
処理はステップS109に進み、抽出部22は、自車両40に最も近い検出点を抽出する。自車両40に最も近い検出点について図4を参照して説明する。図4に示すように、センサ10は、自車両40の周囲において複数の検出点70~73を検出する。これらの検出点には、自車両40の走行に関係する検出点と、自車両40の走行に関係しない検出点が含まれる。一例として、自車線上で検出された検出点は、自車両40の走行に関係する検出点と判断され、自車線から離れた位置で検出された検出点は、自車両40の走行に関係しない検出点と判断される。
【0028】
検出点70~73の中から、自車両40の走行に関係しない検出点は、ノイズとして除去されることが求められる。その方法の一例として、検出点から軌道50までの距離を用いる方法が考えられる。理由は、検出点から軌道50までの距離が短いほど、その検出点は自車両40の走行に関係する検出点である可能性が高いからである。換言すれば、検出点から軌道50までの距離が長いほど、その検出点は自車両40の走行に関係する検出点である可能性は低い。
【0029】
そこで、抽出部22は、図4に示すように検出点70~73から、軌道50に向かってそれぞれ垂線を引く。抽出部22は、垂線の長さ80~83と、所定値とを比較する。本実施形態において、長さ80は、所定値より長く、長さ81~83は、所定値以下である。この場合、抽出部22は、長さ81~83の中から、最も短い距離を選択する。つまり、抽出部22は、検出点71~73の中から、軌道50までの距離が最も短い検出点を抽出する。軌道50までの距離が最も短い検出点が、自車両40に最も近い検出点である。図4に示す例では、検出点71が自車両40に最も近い検出点である。なお、所定値と比較する理由は、所定値より長い場所に位置する検出点70は、自車両40の走行に関係しない検出点であり、このような検出点70を除去するためである。
【0030】
処理はステップS111に進み、追跡部23は、ステップS109で抽出された自車両40に最も近い検出点を追跡する。自車両40に最も近い検出点の追跡について図5を参照して説明する。図5に示すように、時刻tにおいて、センサ10は、停止車両41の表面上にある複数の検出点を検出する。なお、図5に示す例では、説明の都合上、一つの検出点60が図示されているが、実際には停止車両41の表面上において複数の検出点が検出される。抽出部22は、軌道50までの距離が最も短い検出点60を、自車両40に最も近い検出点として抽出する。つまり、時刻tにおいて、検出点60は自車両40に最も近い検出点である。
【0031】
時間は進み、時刻t+1において、図5に示すように、自車両40は少し進み、停止車両41は停止したままである。時刻t+1において、センサ10は、停止車両41の表面上にある複数の検出点(検出点60、61、62)を検出する。抽出部22は、検出点60、61、62の中から、軌道50までの距離が最も短い検出点62を、自車両40に最も近い検出点として抽出する。
【0032】
時刻tにおいて、自車両40に最も近い検出点は検出点60であり、時刻t+1において、自車両40に最も近い検出点は検出点62である。追跡部23は、時間が時刻tから時刻t+1に進んだ場合、検出点60、検出点62の順に追跡する。図6に示すように、追跡部23が検出点60、検出点62の順に追跡した結果、検出点60から検出点62に向かう速度ベクトル90が得られる。つまり、追跡部23は、検出点60及び検出点62の位置の時間変化(検出点60から検出点62への推移)から、自車両40に最も近い検出点の速度ベクトルを算出する。
【0033】
処理はステップS113に進み、相対速度算出部24は、図7に示すように、ステップ111で算出された速度ベクトル90を、軌道50の接線方向の速度成分Vt及び法線方向の速度成分Vnに分解する。そして、相対速度算出部24は、速度成分Vtを自車両40に対する停止車両41の相対速度として算出する。
【0034】
処理はステップS115に進み、運転支援部25は、ステップ113で算出された相対速度と、自車両40に最も近い検出点までの距離L(図4参照)に基づいて運転支援を行う。例えば、相対速度と距離Lから算出されるTTC(Time To Collision)が所定値より小さい場合、運転支援部25は、スピーカ31またはディスプレイ32を介して乗員に報知したり、アクチュエータ30を制御して減速を行ったりする。
【0035】
処理はステップS117に進み、自車両40の乗員が、イグニッションをオフした場合(ステップS117でYes)、一連の処理は終了する。ユーザが、イグニッションをオフしていない場合(ステップS117でNo)、処理はステップS101に戻る。なお、本実施形態におけるイグニッションのオフは、自車両40の停止、自車両40の電源システムの停止を含む。イグニッションのオフは、自車両40の車室内に設けられたイグニッションスイッチをオフすることによって実現されてもよく、自車両40の車室内に設けられた電源システムスイッチをオフすることによって実現されてもよい。
【0036】
(作用効果)
以上説明したように、第1実施形態に係る物体認識装置1によれば、以下の作用効果が得られる。
【0037】
物体認識装置1は、自己位置及び自車両40の姿勢を用いて、自車線上における自車両40が将来進む軌道50を推定する(図3参照)。物体認識装置1は、第1の時刻(図5に示す時刻t)において、センサ10を用いて複数の第1の検出点(図5に示す検出点60)を検出する。物体認識装置1は、第1の時刻とは異なる第2の時刻(図5に示す時刻t+1)においてセンサ10を用いて複数の第2の検出点(図5に示す検出点60~62)を検出する。物体認識装置1は、複数の第1の検出点の位置及び軌道50を用いて、複数の第1の検出点の中から、自車両40に最も近い第1の検出点(図5に示す検出点60)を抽出する。物体認識装置1は、複数の第2の検出点の位置及び軌道50を用いて、複数の第2の検出点の中から、自車両40に最も近い第2の検出点(図5に示す検出点62)を抽出する。物体認識装置1は、抽出された自車両40に最も近い第1の検出点及び自車両40に最も近い第2の検出点の位置の時間変化から、自車両40に最も近い検出点の速度ベクトル90を算出する(図6参照)。物体認識装置1は、速度ベクトル90を軌道50の接線方向の速度成分Vt及び法線方向の速度成分Vnに分解する。物体認識装置1は、接線方向の速度成分Vtを自車両40に対する停止車両41の相対速度として算出する。これにより物体認識装置1は、自車両40から見た停止車両41の見え方が大きく変化するシーン(自車両に大きなヨーレートが発生するシーン)において、停止車両41の速度を精度よく算出することができる。もちろん、物体認識装置1が検出する物体は、停止車両41に限定されない。物体認識装置1は、停止していない車両の速度も、同様の方法により精度よく算出することができる。
【0038】
また、物体認識装置1は、複数の検出点70~73から軌道50に向かってそれぞれ垂線を引き、垂線の長さ80~83が所定値以下の検出点の中から自車両40に最も近い検出点を抽出する(図4参照)。図4において、長さ81~83が、所定値以下である。物体認識装置1は、長さ81~83に対応する検出点71~73の中から自車両40に最も近い検出点を抽出する。このように軌道50から所定の範囲内の検出点のみ用いられるため、自車両40の走行に関係する物体のみ抽出される。
【0039】
また、物体認識装置1は、垂線の長さが最も短い検出点を自車両40に最も近い検出点として抽出する。図4において、垂線の長さ81が最も短い検出点71が自車両40に最も近い検出点である。これにより、物体認識装置1は、道路形状が複雑であっても、精度よく物体を追跡することができる。
【0040】
また、物体認識装置1は、地図データベース11と、自己位置とに基づいて、軌道50を算出する。これにより、物体認識装置1は、高精度な軌道50を遠方まで設定することができる。これにより、物体認識装置1は、より早期に物体を認識することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
(物体認識装置2の構成例)
次に、図8図9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0042】
図8に示すように、第2実施形態に係る物体認識装置2は、カメラ13と、クラスタ抽出部26をさらに備える。
【0043】
カメラ13は、自車両40に搭載され、自車両40の周囲を撮影する。カメラ13は、CCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)などの撮像素子を有する。カメラ13は、画像処理機能を有しており、撮像した画像(カメラ画像)から白線、道路境界線、道路端、物標(例えば縁石)などを検出する。
【0044】
クラスタ抽出部26は、複数の検出点をクラスタ(物体)として抽出する。このような方法は、クラスタリングと呼ばれる。クラスタ抽出部26は、一例として、複数の検出点の中から、2点間の距離が所定値以下の検出点をクラスタリングする。図5に示す例では、時刻t+1において、検出点60~62がクラスタリングされ、停止車両41を示すクラスタとして抽出される。
【0045】
次に、図9のフローチャートを参照して、物体認識装置2の一動作例を説明する。
【0046】
ステップS201~203、207、213~219は、図2に示すステップS101~103、107、111~117と同じため、説明を省略する。
【0047】
ステップS205において、コントローラ20は、自己位置と、カメラ画像とを用いて、自車両40が走行している車線(自車線)を取得する。第2実施形態において、コントローラ20は、地図データベース11の代わりにカメラ画像を用いて自車線を取得するため、道路構造が地図データベース11に反映されていない地域であっても、自車線を取得できる。
【0048】
ステップS209において、クラスタ抽出部26は、ステップS201で検出された複数の検出点の中から、第1実施形態と同様に軌道50までの距離が所定値以下の検出点を抽出する。このように抽出された検出点の中から、クラスタ抽出部26は、2点間の距離が所定値以下の検出点をクラスタリングする。これにより、クラスタ抽出部26は、軌道50に近接するクラスタを抽出することができる。
【0049】
ステップS211において、抽出部22は、ステップS209で抽出されたクラスタに含まれる検出点の中から、軌道50までの距離が最も短い検出点を自車両40に最も近い検出点として抽出する。
【0050】
(作用効果)
以上説明したように、第2実施形態に係る物体認識装置2によれば、以下の作用効果が得られる。
【0051】
物体認識装置2は、第1実施形態と同様に複数の検出点から軌道50に向かってそれぞれ垂線を引き、垂線の長さが所定値以下の検出点を抽出する。このように抽出された検出点の中から、物体認識装置2は、2点間の距離が所定値以下の検出点をクラスタリングする。これにより、物体認識装置2は、軌道50に近接するクラスタを抽出することができる。そして、物体認識装置2は、クラスタリングされたクラスタに含まれる検出点の中から、軌道50までの距離が最も短い検出点を自車両40に最も近い検出点として抽出する。このように、物体認識装置2は、検出点をクラスタリングした後に、自車両40に最も近い検出点を抽出するため、ノイズを除去することができ、精度よく物体を認識することができる。
【0052】
物体認識装置2は、カメラ13によって取得された自車両40の前方の道路構造に基づいて、軌道50を算出する。これにより、物体認識装置2は、道路構造が地図データベース11に反映されていない地域であっても、自車線を取得できる。
【0053】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。また、物体認識装置1及び物体認識装置2は、コンピュータの機能を改善しうる。
【0054】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0055】
1、2 物体認識装置
10 センサ
11 地図データベース
12 GPS受信機
13 カメラ
20 コントローラ
21 軌道推定部
22 抽出部
23 追跡部
24 相対速度算出部
25 運転支援部
26 クラスタ抽出部
30 アクチュエータ
31 スピーカ
32 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9