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特許7149879液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220930BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 613
B41J2/14 501
B41J2/16 511
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019045818
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020146904
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】下里 正志
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043426(JP,A)
【文献】特開2015-051570(JP,A)
【文献】特開2014-168891(JP,A)
【文献】特開2007-245631(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0047129(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電セラミクス材で構成されるとともに第1方向に並び前記第1方向と交差する第2方向の両側に開口するとともに圧力室を形成する複数の第1の溝、及び複数の第2の溝を有するアクチュエータベースと、
チタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料で構成されるとともに前記アクチュエータベースに組付けられる第1の部材と、
前記圧力室に連通するノズルを有するとともに前記アクチュエータベース及び前記第1の部材に対向配置されるノズルプレートと、
前記アクチュエータベースの前記第2方向の両端に配置され、前記第2の溝を塞ぐとともに、前記第1の溝に連通する開口を有する、カバープレートと、
を備える、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1の部材は、前記アクチュエータベースの外周に配され、前記アクチュエータベースの前記第2方向の両側に、複数の前記圧力室に連通する共通室を形成するフレームであり、
前記第1の溝は前記第2方向の両端が前記フレームの内側に開口し前記共通室に連通する、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1の部材及び前記アクチュエータベースは、前記ノズルプレートに対向配置されるとともに互いに面一となる研磨面を有する、
請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
チタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料を射出成型して第1の部材を形成することと、
圧電セラミクス材で構成されるアクチュエータベースに、第1方向に並び前記第1方向と交差する第2方向の両側に開口するとともに圧力室を形成する複数の第1の溝、及び複数の第2の溝を形成することと、
前記アクチュエータベースと前記第1の部材とを研磨し、前記第1の溝に連通するノズルを有するノズルプレートに接合される研磨面を形成することと、
前記アクチュエータベースの前記第2方向の両端に、前記第2の溝を塞ぐとともに、前記第1の溝に連通する開口を有する、カバープレートを貼付けることと、
を備える、液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、
所定の搬送路に沿って媒体を搬送する搬送装置と、
を備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドにおいて、ノズルに連通する複数の圧力室を所定の方向に複数並列して備えるシェアモードシェアードウォール方式の液体吐出ヘッドが知られている。このような液体吐出ヘッドにおいて、例えば圧電セラミックスPZTで構成された平板状のアクチュエータ基板の端部に溝を形成して圧力室を形成し、アクチュエータ基板の両側にサイドプレートを配置して共通液室となる空間を形成する。サイドプレートは加工性が圧電セラミックスPZTに近い快削性セラミックス(マセライト・フォトベールなど)で構成され、アクチュエータ基板をサイドプレートとともに研磨することで、ノズルプレートを接着する接着面を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-168094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、製造が容易な液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法、及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、圧電セラミクス材で構成されるとともに第1方向に並び前記第1方向と交差する第2方向の両側に開口するとともに圧力室を形成する複数の第1の溝、及び複数の第2の溝を有するアクチュエータベースと、チタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料で構成されるとともに前記アクチュエータベースに組付けられる第1の部材と、前記圧力室に連通するノズルを有するとともに前記アクチュエータベース及び前記第1の部材に対向配置されるノズルプレートと、前記アクチュエータベースの前記第2方向の両端に配置され、前記第2の溝を塞ぐとともに、前記第1の溝に連通する開口を有する、カバープレートと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図。
図2】同インクジェットヘッドの一部を破断して内部構造を示す斜視図。
図3】同インクジェットヘッドの動作を示す説明図。
図4】同インクジェットヘッドの動作を示す説明図。
図5】同インクジェットヘッドの製造工程を示す説明図。
図6】同インクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッド1及び液体吐出装置であるインクジェットプリンタ100について、図1乃至図6を参照して説明する。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。図中矢印X、Y,Zは、互いに直交する3方向を示している。本実施形態において、インクジェットヘッド1の第1方向がX軸に、第2方向がY軸に、第3方向がZ軸に、それぞれ沿って配置された例を示す。
【0008】
図1は、第1実施形態に係るインクジェットヘッド1の斜視図であり、図2は、インクジェットヘッド1の一部を破断して内部構造を示す斜視図である。図3及び図4はインクジェットヘッド1の動作を示す説明図であり、ケース部材40の内部の構造を示す。図5はインクジェットヘッド1の製造工程を示す説明図である。
【0009】
図1乃至図4に示すインクジェットヘッド1は、いわゆるエンドシューター型のシェアモードシェアードウォール方式のインクジェットヘッドである。
【0010】
インクジェットヘッド1は、アクチュエータベース10と、複数のノズル21を有するノズルプレート20と、カバー部材であるカバープレート30と、ケース部材40と、を備える。
【0011】
アクチュエータベース10は、基板12と、圧電部である積層圧電体13とを備える。
【0012】
基板12は、方形の板状に構成されている。基板12は、好ましくは、PZT、セラミックス、ガラス、快削性セラミックス、あるいはこれらを含む材料で、構成される。
【0013】
積層圧電体13は、基板12のノズルプレート20側の端縁に位置する。積層圧電体13は、2枚の圧電部材が積層されて構成される。圧電部材は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系圧電セラミックス材料で構成されている。この他、圧電部材として、環境に配慮してKNN(ニオブ酸ナトリウムカリウム)等の無鉛系圧電セラミックスを使用してもよい。2枚の圧電部材は分極方向が逆向きになるように分極され、接着層を介して接着されている。
【0014】
積層圧電体13の、ノズルプレート20と対向する端面には、第1方向に並ぶ複数の溝14を含む溝列14Aが形成されている。積層圧電体13のXZ面に沿う形状が櫛歯状である。隣接する溝14の間に形成された支柱状の部分が、溝14の容積を変化させる駆動部となる積層圧電素子15を構成する。換言すると、積層圧電体13は、複数の積層圧電素子15が一方向に並び、隣合う積層圧電素子15の間に溝14が形成される。
【0015】
溝列14Aは、圧力室C1を構成する複数の第1の溝14aと、空気室C2を構成する複数の第2の溝14bとが、第1方向に交互に配列されている。複数の溝14は、第1方向に複数並列して配置され、第2方向に沿って延び、互いに平行に配される。溝14a,14bはそれぞれ、アクチュエータベース10の第2方向の全長に亘って形成されている。すなわち、溝14a,14bは、ノズルプレート20側及びカバープレート30側に開口する。各溝14a,14bの内面底部及び両側面には、電極16が形成されている。
【0016】
第1の溝14aは、第2方向の両端が、第1の部材であるフレーム部40aの内側にて開口し、共通室C3に連通する。また、第1の溝14aに対向する位置にはノズル21が設けられている。すなわち、第1の溝14aは、共通室C3に連通するとともにノズル21に連通する圧力室C1を構成する。
【0017】
第2の溝14bは、第2方向の両端部がフレーム部40a内においてカバープレート30によって覆われている。第2の溝14bは閉塞され、共通室C3及び圧力室C1から隔てられた空気室C2を構成する。
【0018】
積層圧電素子15は、アクチュエータベース10の一端側において複数の溝14の間に配される。すなわち、複数の積層圧電素子15が、第1方向に並列する。各積層圧電素子15は、第1の圧電素子15aと、第1の圧電素子15aに積層される第2の圧電素子15bと、を備える。アクチュエータベース10の図1中上方である一方側の端面は、ノズルプレート20に対向配置されるノズル対向面10cを形成する。ノズル対向面10cは、XY面に沿う平坦な平面を形成する。ノズル対向面10cは後述するノズル対向面30c,40cとともに研磨され、面一の研磨面50cを構成する。
【0019】
電極16はニッケルなどの導電性材料で構成される導電膜である。電極16は、溝14a,14bの底部から基板12の上面に至って形成され、配線パターン17に接続されている。電極16は、例えば、真空蒸着法や無電解ニッケルメッキ法等の手法で形成される。例えば、無電解メッキ法であれば、微細な溝14内にも容易に金属膜を形成できる。なお、本実施形態において電極16の材料はニッケルを用いるが、これに限られるものではない。
【0020】
電極16は、例えば金や銅等で形成してもよい。あるいは電極16は2種以上の導電性の膜を積層しても良い。
【0021】
配線パターン17は、例えば電極16と同様のニッケルなどの導電性材料で形成され所定のパターン形状を有する導電膜である。配線パターン17は、アクチュエータベース10の一対の主面10a,10bに形成される。配線パターン17は、例えば真空蒸着法や無電解メッキ法等の手法で電極16を形成する際に、同時に形成される。なお、基板12のZ方向他方側の部分は枠部材の外側に露出する。このため、この部位に配される配線パターン17にFPCなどで駆動回路を接続することができる。
【0022】
ノズルプレート20は、例えば、厚さ10μm~100μmのポリイミドフィルムから方形の板状に構成される。ノズルプレート20には、厚さ方向に貫通する複数のノズル21を有するノズル列が形成されている。ノズルプレート20はアクチュエータベース10の一端側の溝列14Aの第2方向における開口を覆うように対向配置されている。ノズル21は、複数の圧力室C1に対応する位置にそれぞれ設けられている。すなわち、ノズルプレート20は、第1の溝14aで構成される圧力室C1に連通するノズル21を有するとともに、第2の溝14bの開口を塞ぐ。
【0023】
カバープレート30は例えばドライフィルムレジストで構成される。具体的にはカバープレート30は例えばエポキシ樹脂ベースの永久膜用のフォトレジスト(永久レジスト)で形成されている。カバープレート30は、例えば膜厚が40μm~50μm程度であり、アクチュエータベース10の両端面にそれぞれ設けられる。
【0024】
カバープレート30は、ノズルプレート側である一方の縁部のうち第1の溝14aに対向する部位が櫛歯状に形成された方形の板状部材である。カバープレート30の縁部には開口である複数の切欠部31が形成されている。すなわち、カバープレート30は、複数の切欠部31と、切欠部31の間に配される凸形状の複数のカバー片32とを有する。複数の切欠部31と、複数のカバー片32とは交互に並ぶ。カバー片32のノズルプレート20側の端面は、ノズル対向面30cを構成する。切欠部31は、Y軸方向であるカバープレート30の厚み方向に貫通して形成されている。切欠部31は第1の溝14aに対応する位置に配される。このため、第1の溝14aの第2方向の両端は、カバープレート30によって覆われずに、フレーム部40aの内部にて開口している。したがって、第1の溝14aで構成される圧力室C1はカバープレート30の外側に形成される共通室C3に連通し、切欠部31を通じてインク等の液体が圧力室C1に流入する。
【0025】
一方、カバー片32は、第2の溝14bに対応する位置に配される。このため、第2の溝14bの第2方向の両端の開口はカバープレート30のカバー片32によって塞がれ、インクの流入が防止される。
【0026】
すなわち、アクチュエータベース10の一端側には、共通室C3に連通する圧力室C1と、閉塞された空気室C2とが、交互に構成される。
【0027】
ケース部材40は、方形の枠状に構成されるフレーム部40aと、フレーム部40aの開口を塞ぐプレート状の蓋部40bと、を一体に備える。
【0028】
フレーム部40aはチタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料で構成される。フレーム部40aはアクチュエータベース10の外周を囲み、アクチュエータベース10の一部の領域の外周を覆う。具体的には、フレーム部40aは、アクチュエータベース10の第1方向の端面に接合されるプレート状の一対の第1フレーム片41と、アクチュエータベース10の外面である両主面10a,10bに所定距離離間して配されるプレート状の一対の第2フレーム片42と、を備える。フレーム部40aは、カバープレート30で覆われたアクチュエータベース10との間に、共通室C3を形成する。共通室C3は、フレーム部40a及び蓋部40bの内側に形成され、カバープレート30の切欠部31を通じて圧力室C1に連通する。共通室C3の第2方向の中央に第1方向に延びる積層圧電体13が配置される。フレーム部40aは、インクなどの液体を案内するガイド機能を果たす。フレーム部40aの図1中上方である一方側の開口縁の端面はノズルプレート20に対向配置されるノズル対向面40cを形成する。ノズル対向面40cは、XY面に沿う平坦な平面を形成する。ノズル対向面40cは、アクチュエータベース10のノズル対向面10cと面一であり、ノズルプレート20の外周に接合される。フレーム部40aの図1中下方である他方側(ノズルプレート20の反対側)の開口縁である端縁に蓋部40bが設けられている。
【0029】
蓋部40bはフレーム部40aと一体に構成されている。蓋部40bは、例えばフレーム部40aと同素材であるチタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料で構成される。蓋部40bは、外部から共通室C3にインクを流入させる供給口と、共通室C3から外部にインクを排出する排出口と、を有する矩形の板状部材である。供給口には供給流路133aが接続され、排出口には回収流路133bが接続される。蓋部40bは、フレーム部40aの開口の一方側を塞ぎ、共通室C3を構成する。
【0030】
ノズルプレート20とフレーム部40aと蓋部40bによって、アクチュエータベース10のノズルプレート20側の部分であるアクチュエータ部分が覆われている。また、アクチュエータベース10のうちノズルプレート20の反対側でフレーム部40a及び蓋部40bの外側に延びる部分の配線パターン17に駆動回路などの各種電子部品が実装される。
【0031】
以上のように構成されたインクジェットヘッド1のフレーム部40aの内部には、ノズル21に連通する複数の圧力室C1と、カバープレート30で塞がれた複数の空気室C2と、複数の圧力室C1に連通する共通室C3と、が形成される。インクジェットヘッド1は、内部に形成される圧力室C1及び共通室C3を通る流路においてインクを循環させる。
【0032】
以下、本実施形態に係るインクジェットヘッド1の製造方法について図5を参照して説明する。本実施形態にかかるインクジェットヘッド1の製造方法は、チタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料を射出成形してフレーム部40aを形成することと、圧電セラミクス材で構成されるとともに複数の溝を有するアクチュエータベース10とフレーム部40aとを研磨し、ノズルプレート20に接合される研磨面50cを形成することと、を備える。
【0033】
具体的には、まず、溝14を有さないアクチュエータベース10を形成する。例えば板厚方向に分極された2枚の板状の圧電部材を分極方向が互い違いになるよう積層し、その積層体を所望の幅及び長さにカットして積層圧電体13を形成する。
【0034】
さらに、積層圧電体13を構成する圧電部材とは異なる材質の板状の基板12に積層圧電体13を接着剤等で貼り付け、ダイシングソーやスライサー等を使用した機械加工を施して所定形状の外形を有するアクチュエータベース10を成形する。なお、例えば予め複数枚分の厚さのブロック状のベース部材を形成してから分割し、所定形状のアクチュエータベース10を複数枚製造してもよい。
【0035】
続いて、ACT1として、機械加工によりアクチュエータベース10の積層圧電体13に第1の溝14a及び第2の溝14bを形成する。さらに、各溝14a,14b内を含むアクチュエータベース10の外面の所定箇所に、真空蒸着法等により電極16や配線パターン17等の導電膜を形成する。
【0036】
続いて、ACT2として、アクチュエータベース10の両面に、カバープレート30となる板状のドライフィルムレジスト30Aを貼付ける。具体的には、例えば板状のドライフィルムレジスト30Aを、アクチュエータベース10の第2方向の両端面に押し当て、50℃前後の熱ローラによって熱圧着する。
【0037】
続いて、ACT3として、露光処理を行う。具体的には、まず、例えばネガ型のパターン形状を有するフォトマスクをアクチュエータベース10の端面に重ねて配置し、フォトマスクを用いて90℃前後でプリベーク処理を施すことで、ドライフィルムレジスト30Aのフォトマスクに覆われていない所定部位を仮硬化する。さらに、ドライフィルムレジスト30Aを専用の現像液に浸すことで、フォトマスクのパターン形状に対応する所定部位を溶解して切欠部31となる開口を形成する。さらに120℃前後でポストベーク処理を行うことにより、ドライフィルムレジスト30Aを本硬化させる。以上の露光及び現像により、複数の切欠部31と凸形状のカバー片32とが交互に配される所定形状にドライフィルムレジスト30Aが成形される。例えば本実施形態においては、第1の溝14aに対向する位置に切欠部31が配されるとともに、第2の溝14bがカバー片32によって覆われる。
【0038】
さらにACT4として、カバープレート30の外側にフレーム部40aを配し、共通室C3を覆うように蓋部40bを配し、これらフレーム部40a及び蓋部40bを組付けて接合固定することでケース部材40を構成する。
【0039】
次に、ACT5として、アクチュエータベース10にカバープレート30及びケース部材40が接合された状態で、アクチュエータベース10,カバープレート30及びフレーム部40aの、ノズル対向面10c,30c、40cを研磨して面一の研磨面50cを形成する。このとき、フレーム部40aは加工性において、アクチュエータベース10と近い加工特性を有しているため、同時に研磨することが可能であり、アクチュエータベース10、カバープレート30、及びフレーム部40aの、ノズル対向面10c,30c,40cを高精度に研磨できる。
【0040】
さらに、溝14a,14bを覆うようにノズルプレート20を接着して取り付ける。このとき、第1の溝14aにノズル21が対向して配されるとともに第2の溝14bが閉塞される位置にノズルプレート20を取付ける。さらに、図1に示すように基板12の主面に形成された配線パターン17に、フレキシブルケーブル51を介して駆動ICチップ52や回路基板53を接続することで、インクジェットヘッド1が完成する。
【0041】
次に、インクジェットヘッド1を有するインクジェットプリンタ100について、図6を参照して説明する。図6はインクジェットプリンタ100の構成を示す説明図である。図6に示すように、インクジェットプリンタ100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、制御部116と、を備える。
【0042】
インクジェットプリンタ100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路A1に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行う液体吐出装置である。
【0043】
媒体供給部112は複数の給紙カセット112aを備える。媒体排出部114は、排紙トレイ114aを備える。画像形成部113は、用紙を支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0044】
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
【0045】
ヘッドユニット130は、複数のインクジェットヘッド1と、各インクジェットヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数のインクタンク132と、インクジェットヘッド1とインクタンク132とを接続する接続流路133と、循環部である循環ポンプ134と、を備える。ヘッドユニット130は、液体を循環させる循環型のヘッドユニットである。
【0046】
本実施形態において、インクジェットヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド1C,1M,1Y,1Bと、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132として、インクタンク132C,132M,132Y,132Bを備える。インクタンク132は接続流路133によってインクジェットヘッド1に接続される。接続流路133は、インクジェットヘッド1の供給口に接続される供給流路133aと、インクジェットヘッド1の排出口に接続される回収流路133bと、を備える。
【0047】
また、インクタンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結されている。そして、インクジェットヘッド1とインクタンク132との水頭圧に対応して、負圧制御装置によりインクタンク132内を負圧制御することで、インクジェットヘッド1の各ノズルに供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
【0048】
循環ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。循環ポンプ134は、供給流路133aに設けられている。循環ポンプ134は、配線により制御部116の駆動回路に接続される。CPU(Central Processing Unit)116aは循環ポンプ134を制御可能に構成されている。循環ポンプ134は、インクジェットヘッド1とインクタンク132を含む循環流路で液体を循環させる。
【0049】
搬送装置115は、媒体供給部112の給紙カセット112aから画像形成部113を通って媒体排出部114の排紙トレイ114aに至る搬送路A1に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路A1に沿って配置される複数のガイドプレート対121a~121hと、複数の搬送用ローラ122a~122hと、を備えている。
【0050】
制御部116は、コントローラであるCPU116aと、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0051】
インクジェットヘッド1及びインクジェットプリンタ100において、ノズル21から液体を吐出する駆動時には、制御部116は、駆動回路により、配線パターン17を介して駆動電圧を印加する。電圧の印加により駆動する圧力室C1内の電極と、両隣の空気室C2の電極に電位差を与えると、第1の圧電素子15aと第2の圧電素子15bは互いに逆向きに変形し、両圧電素子の変形により、駆動素子が屈曲変形する。例えば、図3に示す様にまず駆動する圧力室C1を開く方向に変形させ圧力室C1内を負圧にすることで、切欠部31からインクを圧力室C1内に導く。続いて、図4に示すように圧力室C1を閉じる方向に変形させ、圧力室C1内を加圧することで、ノズル21からインク滴を吐出させる。
【0052】
本実施形態にかかるインクジェットヘッド1及びインクジェットプリンタ100によれば、チタン酸アルミを含む材料でフレーム部40a構成したことにより、アクチュエータベース10とともに研磨でき、容易かつ安価にインクジェットヘッド1を製造できる。例えば、快削性セラミックスは元々高価な材料である上に、射出成型などの型部品ができず、切削によりその形状を加工する必要があるため、非常に高価となる。一方、成形可能なアルミナなどのセラミックスは、PZTと硬度が大きく異なり、本来加工条件が大きく異なるため、フレームとして用いた場合には、ノズルプレート20と対向するノズル対向面に段差が生じ、あるいはPZTにチッピングが多く発生することから、ノズルプレート20を接着した際に空隙が形成され、インクが漏れるなどの原因となる。これに対して、本実施形態においては、アクチュエータベース10を構成する圧電セラミックスとフレーム部40aを構成するチタン酸アルミは同等の加工条件で加工可能であるため、同時研磨により面一の研磨面50cを形成でき、ノズルプレート20を接着した際に空隙が生じることを防止できる。なお、カバープレート30は非常に薄いため、接合面への影響は少ない。また、射出成形が可能な射出成形チタン酸アルミで構成としたことにより、安価に加工できる。したがって、インクジェットヘッド1によれば、成型及び同時研磨により、安価に製造可能である。また、インクジェットヘッド1によれば、ノズル対向面の加工精度を向上できることから、圧力室C1や共通室C3の密閉性を向上でき、液体の吐出性能を向上できる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0054】
上記実施形態ではいわゆるエンドシューター型のインクジェットヘッド1を例示したが、これに限られるものではない。例えばサイドシューター型のインクジェットヘッドに適用してもよい。例えば、異なる2方向に開口する溝を有する櫛歯状のアクチュエータベースの、ノズルプレートが対向する面とは異なる所定方向を第1の部材としてのプレート状部材により閉塞する構成としてもよい。この場合、プレート状部材がチタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料で成型により構成される。本実施形態においても、アクチュエータベースとプレート状部材と同時に研磨して面一の研磨面を形成し、当該研磨面にノズルプレートを接合することで、安価で容易に高精度の圧力室を形成できる。
【0055】
また、上記実施形態において、アクチュエータベース10は第2方向の両端に至る溝14a,14bを有し、両側にカバープレート30が設けられた例を示したが、これに限られるものではない。例えばアクチュエータベース10の一方側に開口する第1の溝14a及び第2の溝14bを有し、アクチュエータベース10の一方側のみにカバープレート30が配される構成としてもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果が得られる。また、フレーム部40aがアクチュエータベース10のうち溝14が形成された端部の周囲を取り囲む形状を例示したがこれに限られるものではない。
【0056】
また、カバープレート30はドライフィルムレジストで形成されるとともに露光により所定形状に成形される例を示したが、これに限られるものではない。例えばプレート状に構成されたカバープレートを用い、カバープレートの、ノズルに対向するノズル対向面をアクチュエータベース10やフレーム部40aと共に研磨することとしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、基板12に圧電部材からなる積層圧電体13を備えたアクチュエータベース10を例示したが、これに限るものではない。例えば基板12を用いずに圧電部材のみでアクチュエータベース10を形成しても良い。また、2枚の圧電部材を用いずに、1枚の圧電部材としてもよい。
【0058】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、製造が容易なインクジェットヘッド及びインクジェット装置を提供できる。
【0059】
例えば、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
【0060】
また、上記実施形態において、インクジェットヘッドは、インクジェット記録装置等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0061】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
圧電セラミクス材で構成されるとともに圧力室を形成する複数の溝を有するアクチュエータベースと、
チタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料で構成されるとともに前記アクチュエータベースに組付けられる第1の部材と、
前記圧力室に連通するノズルを有するとともに前記アクチュエータベース及び前記第1の部材に対向配置されるノズルプレートと、を備える、液体吐出ヘッド。
[2]
前記第1の部材は、前記圧力室に連通する流路を形成するフレームである、[1]に記載の液体吐出ヘッド。
[3]
前記第1の部材及び前記アクチュエータベースは、前記ノズルプレートに対向配置されるとともに互いに面一となる研磨面を有し、
前記アクチュエータベースは、第1方向に並び前記第1方向と交差する第2方向の少なくとも一方に開口するとともに圧力室を形成する複数の第1の溝、及び複数の第2の溝を有し、
前記アクチュエータベースの前記第2方向の少なくとも一方側に配置され、前記第2の溝を塞ぐとともに、前記第1の溝に連通する開口を有する、カバープレートを備える、[1]または[2]に記載の液体吐出ヘッド。
[4]
チタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料を射出成型して第1の部材を形成することと、
圧電セラミクス材で構成されるとともに複数の溝を有するアクチュエータベースと前記第1の部材とを研磨し、前記溝に連通するノズルを有するノズルプレートに接合される研磨面を形成することと、を備える、液体吐出ヘッドの製造方法。
[5]
圧電セラミクス材で構成されるとともに圧力室を形成する複数の溝を有するアクチュエータベースと、チタン酸アルミを主成分とするセラミックス材料で構成され、前記アクチュエータベースに組付けられる第1の部材と、前記圧力室に連通するノズルを有するとともに前記アクチュエータベース及び前記第1の部材に対向配置されるノズルプレートと、を備える、液体吐出ヘッドと、
所定の搬送路に沿って媒体を搬送する搬送装置と、
を備える液体吐出装置。
【符号の説明】
【0062】
1…インクジェットヘッド、10…アクチュエータベース、10c…ノズル対向面、12…基板、13…積層圧電体、14…溝、14A…溝列、14a…第1の溝、14b…第2の溝、15…積層圧電素子、15a…圧電素子、15b…圧電素子、16…電極、17…配線パターン、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…カバープレート、30c…ノズル対向面、31…切欠部、32…カバー片、40…ケース部材、40a…フレーム部(フレーム)、40b…蓋部、40c…ノズル対向面、41…フレーム片、42…フレーム片、50c…研磨面、51…フレキシブルケーブル、52…駆動ICチップ、53…回路基板、100…インクジェットプリンタ、111…筐体、112…媒体供給部、112a…給紙カセット、113…画像形成部、114…媒体排出部、114a…排紙トレイ、115…搬送装置、116…制御部、116a…CPU、133…接続流路、133a…供給流路、133b…回収流路、134…循環ポンプ、A1…搬送路、C1…圧力室、C2…空気室、C3…共通室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6