(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】トナーカバレッジの改良型のプロセス制御感知
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220930BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20220930BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20220930BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20220930BHJP
G01N 21/55 20140101ALI20220930BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/01 Z
G03G9/08 391
G01N21/47 F
G01N21/55
(21)【出願番号】P 2020539777
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 US2019012589
(87)【国際公開番号】W WO2019143493
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-11-24
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000846
【氏名又は名称】イーストマン コダック カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・エス・アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ロドニー・アール・バックス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジェラード・パトリック・マキュー
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー・エー・ピカリング
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016060(JP,A)
【文献】特開平11-065215(JP,A)
【文献】特開2005-017582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0028185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 9/08
G01N 21/47
G01N 21/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真印刷システムを使用してプロセス素子の表面上に印刷されたトナー粒子を感知するためのトナーカバレッジ感知システムであって、前記印刷されたトナー粒子が、印刷された多孔質カラートナー粒子を含み、
前記プロセス素子の前記表面上の前記印刷されたトナー粒子に対して赤外線波長帯の赤外放射を向ける赤外放射源、および
前記印刷された多孔質カラートナー粒子から散乱された赤外放射を前記プロセス素子の前記表面上で感知するための拡散放射検出器であって、感知した前記赤外放射が前記プロセス素子の前記表面からの鏡面反射を含まないように配向される拡散放射検出器
を含む光学的感知システムと、
感知した前記散乱赤外放射に応答して、前記プロセス素子の前記表面上の、前記多孔質カラートナー粒子について感知したトナーカバレッジを決定するデータ処理システムと
を備え、
前記
印刷された多孔質カラートナー粒子が前記赤外線波長帯内の放射の5%未満を吸収する、トナーカバレッジ感知システム。
【請求項2】
前記赤外線波長帯が850~1050nmの範囲のピーク波長を有する請求項1に記載のトナーカバレッジ感知システム。
【請求項3】
前記印刷された多孔質カラートナー粒子からの感知した前記散乱赤外放射が、前記印刷された多孔質カラートナー粒子と同一の顔料および樹脂と、ほぼ同等の粒子幾何形状およびトナーカバレッジとを有する、印刷された非多孔質カラートナー粒子について感知されるはずのものよりも少なくとも20%高い請求項1に記載のトナーカバレッジ感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真印刷の分野に関し、より詳細には、単位面積当たりに付着したトナー量を感知するための改良型のトナーカバレッジ感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真術は、以下で説明されるような1片もしくは1枚の紙または別の平面媒体、プラスチック、ガラス、織物、金属、他の物体などのレシーバ媒体(または「画像形成基板」)上にイメージを印刷するための有用なプロセスである。このプロセスでは、光受容器を一様に帯電させることによって光受容器上に静電潜像が形成され、次いで、光の露出を介して選択されたエリアを放電させ、所望のイメージ(すなわち、「潜像」)に対応する静電荷パターンが得られる。
【0003】
潜像が形成された後、帯電トナー粒子が光受容器の付近に持ち込まれ、潜像に引き寄せられ、潜像が可視イメージに現像される。帯電トナー粒子を用いる静電潜像の現像の多数の方法が利用可能である。ドライトナー粒子を使用して処理することができるのと同様に、懸濁帯電トナー粒子を含む絶縁キャリア液を用いる液体現像が使用され得る。一般的なドライ調色プロセスは、1成分と2成分の調色システムのどちらも含む。1成分調色システムは一般に、フォームローラ、ドクターブレード、またはその両方によってドライトナー粒子を現像ローラに付着させ、次いで現像ローラは、帯電トナーを光受容器上の静電潜像に提示する。2成分調色システムは通常、トナー粒子および逆に帯電した磁気キャリア粒子を含み、その混合物は2成分現像剤と呼ばれる。2成分現像剤は磁気ブラシ調色装置に引き寄せられ、次いで磁気ブラシ調色装置は、現像剤を静電潜像に供給する。トナー粒子の構成に応じて、可視イメージは容易には肉眼では見えないことがあることに留意されたい。本発明の実施は、ドライトナープロセスの用語で説明されるが、そのように限定されるわけではない。
【0004】
最終レシーバに付着するトナーの量の制御は、電子写真印刷デバイスの適切な性能にとって肝要である。典型的なプロセス制御システムは、付着したトナー量を感知する方法を利用し、トナー量を所望の最適レベルに保つように画像形成プロセスパラメータを制御することによってそのような測定の結果に反応する。付着したトナー量の感知を実施するのに利用可能な多くの方法があるが、本開示は、赤外線光波長において動作する光学的感知方法に関する。付着したトナー量は、とりわけ、トナーカバレッジ、単位面積当たり現像質量(developed mass per unit area)(DMA)、およびイメージ密度と呼ばれる。これらの用語は同義であると理解される。DMAは通常、ミリグラム/平方センチメートル、すなわちmg/cm2の単位で指定される。
【0005】
本明細書では、「トナー粒子」とは、所望の効果または構造(たとえば、印刷イメージ、テクスチャ、パターン、または被覆)をレシーバ上に生成するために、電子写真(EP)プリンタによってレシーバに転写される1つまたは複数の材料の粒子である。トナー粒子は、当技術分野で周知のように、より大きい固体から粉砕され、または化学的に調製され(たとえば、顔料およびラテックス樹脂粒子の分散から凝集され、またはトナー成分を含む有機相と、水相内に懸濁する溶剤とから、有機溶剤の除去によって調製され)得る。トナー粒子は、たとえば8μm未満、10~15μm程度、または最大で約30μmの範囲の直径を有し得る。直径とは、Coulter Multisizerなどのデバイスによって決定される体積重みつき中央値直径を指す。トナーはまた、当技術分野では、マーキング粒子、ドライインク、または1成分調色サブシステムのケースでは現像剤とも呼ばれる。
【0006】
トナーはトナー粒子を含み、他の粒子をも含み得る。トナー内の粒子のいずれも様々なタイプであり得、様々な特性を有し得る。そのような特性は、入射電磁放射の吸収(たとえば、染料や顔料などの着色剤を含む粒子)、水分または気体の吸収(たとえば、乾燥剤またはゲッタ)、細菌成長の抑制(たとえば、殺虫剤)、レシーバへの接着(たとえば、結合剤)、電気伝導率または低磁気抵抗(たとえば、金属粒子)、電気抵抗率、テクスチャ、光沢、残留磁気、蛍光、エッチング液に対する抵抗、および当技術分野で周知の添加剤の他の特性を含み得る。トナー粒子自体が、表面処理剤と呼ばれるより細かいトナー粒子で被覆され得る。そのような細かい粒子は、サブミクロンから数ミクロンのサイズであり得、バルクトナー粉末の自由流れ能力、トナー摩擦帯電特性、トナー転写効率などの特性を高めるために加えられる。一般的に使用される表面処理剤は、とりわけ、発熱性シリカ、コロイドシリカ、チタニア、アルミナ、微細樹脂粒子を含む。表面処理剤自体が一般に、多種多様なタイプのシランおよびシリコーンを含む化合物で被覆される。
【0007】
トナー粒子は、ほぼ球形または非球形である。トナーの形状は、電子写真プロセスでのトナーの性能に大きな影響を及ぼし得、トナー製造工程での要素が、形状を制御するために使用され得るが、意図しない形状変動性を導入し得る。たとえば、トナーの形状は、静電転写効率、トナー補充器ホッパ内の挙動に影響を及ぼすバルク粉末流動特性、および2成分現像剤のバルク粉末流動特性に影響を及ぼし得る。後者は、調色ローラに供給される現像剤の量、したがって得られるイメージDMAおよび光学濃度に影響を及ぼし得る。トナー粒子形状はまた、赤外線波長を含む光の散乱に影響を及ぼす。高度に成形されたトナーは、そうでないトナーよりも、所与のDMAにおいて多くの光を反射または散乱する。球形トナーは最小の光を散乱する。トナー粒子形状は特に、泡塗布ローラおよびドクターブレードまたは調量ブレードの動作を通じて現像ローラ上の滑らかな層を提供する1成分調光サブシステムの能力に影響を及ぼす。一般には、滑らかな形状であるほど良好に動作するが、DMAセンサの感度の低下の兼ね合いの結果を伴う。トナー粒子形状は、トナー製造工程での、自然だが望ましくない変動に従って変動し得る。したがって、トナー形状の変動に対するロバスト性の改良を実現するDMA感知システムを提供することが求められている。
【0008】
最も一般的なトナー粒子は、樹脂、着色剤、添加剤などを含むが、空気を含む気泡を含まない点で固体である。しかしながら、トナー粒子は、気泡、ベシクル、ポア、空洞、または空気の含有を含み得る多孔質であり得る。気泡は別個のものであり得、または相互接続し得る。気泡化、起泡、多孔質、発泡、および膨張という語は同義であると理解される。
【0009】
潜像が光受容器上のトナーイメージに現像された後、適切なレシーバが、トナーイメージと並置される。適切な電場が印加され、トナー粒子がレシーバ(たとえば、1片の紙)に転写され、所望の印刷イメージが形成される。画像形成プロセスは通常、再使用可能な光受容器と共に何回も反復される。光受容器は通常、ドラムまたはローラの形態であるが、ベルトの形態でもあり得る。いくつかの構成では、トナーイメージがまず中間転写部材に転写され、中間転写部材から、可視イメージがさらに最終レシーバに転写される。熱転写プロセスも同様に有用である。
【0010】
次いで、レシーバは、その光受容器または中間転写部材との動作関連付けから除去され、熱または圧力にかけられ、印刷イメージがレシーバに永続的に固定される(すなわち、定着される)。(たとえば、相異なる色の分離の)複数の印刷イメージが、定着前に1つのレシーバ上に重ね合わされ、レシーバ上に多色印刷イメージが形成される。
【0011】
上述の電子写真印刷プロセスは、最終レシーバに転写されるトナー量に影響を及ぼす複数のサブシステムによって特徴付けられ、これらのサブシステムは、時間の経過につれて、または印刷プロセスが受ける条件に応答して、その挙動を変更し得る。そのような変動する画像形成サブシステムの動作パラメータを操作して、最終レシーバに転写されるトナー量を所望のレベルに維持し得るプロセス制御サブシステムが一般に利用される。たとえば、ドライ2成分現像サブシステムでは、トナー粒子および磁気キャリア粒子(%TC)を含む現像剤混合物中のトナーの濃度が、現像されるトナー量に影響を及ぼす。通常は、%TCが高いほど、現像率の増加およびトナー自体の質量当たりの電荷の減少を含む要素のために、トナーの単位面積当たり現像質量(DMA)が高くなる。磁気トナー濃度モニタが%TCを測定するために使用され、したがって、変動するカバレッジ生成イメージのためにトナーが変動する割合で除去されるときに%TCを所望の値に保つために、現像剤への補充器トナーの追加の割合の制御を可能にする。プロセス制御サブシステムはまた、印刷すべきデジタルファイルにおいて指定されたカバレッジ量の知識を通じて、トナーの補充の割合、したがって%TCを制御し得る。他のプロセス制御方法は、調色後の光受容器上、中間転写部材上、出力イメージ自体の上などの、プロセス中のある時点でのDMAを記録するセンサからの信号に従って%TCを変動させる。たとえば、動作環境の湿度が下がり、トナーの質量当たりの電荷の増大、およびその結果としてのDMAの減少が引き起こされる場合、DMAバックアップを所望の値にするために、補充の割合を増大させ、したがって%TCを減少させることによって、DMAセンサからの信号は応答を受ける。これは、最適な出力イメージ品質および安定性を生成するためのDMA感知方法の感度およびロバスト性に依存する、単純で一般的なプロセス制御方式である。したがって、本発明によって説明される、感応性が高く、ロバストな単位面積当たり現像質量の感知が求められている。単位面積当たり現像質量(DMA)センサはまた、イメージ密度制御(IDC)センサまたはトナーカバレッジセンサとも呼ばれることがあることに留意されたい。
【0012】
光受容器は通常、時間または使用の経過につれて、光に対する安定した放電応答を維持しない。光受容器が放電され得る程度、露出コントラストに対する表面電位、および光受容器が帯電され得る効率が変更の対象となる。プロセス制御サブシステムは、DMAを所望のレベルに維持するのを助けるために、帯電電圧および露出レベルを選択することによって制御システムが応答する表面電位センサを含み得る。そのような変更は、出力印刷の所望のDMAおよびトナー背景レベルを維持するために、調色ローラバイアス電圧レベルなどの調色サブシステム内の制御パラメータに対する変化を必要とする可能性が高い。現像サブシステムの利得の変化により、望ましくない形でDMAが変化する。例にはとりわけ、%TC変動性、質量当たりのトナー電荷が変化する湿度および温度の変化、現像剤エージングプロセス、およびトナー摩擦帯電特性のロット間変動性が含まれる。これらおよび他の電子写真プロセス不安定性を克服するために、現代のプロセス制御方法は通常、DMAおよび得られるイメージ密度を所望のレベルに保つために、現像サブシステムパラメータに対する変化と共に帯電電圧および露出レベルを光受容器にフィードバックするDMA感知を利用する。したがって、トナーの単位面積当たり現像質量を測定する、非常に感応性が高く、ロバストな方法が求められている。プリンタおよび装置製造業者が今日の競争の激しいビジネスの風潮の中で成功するために、DMA感知サブシステムのコストを可能な限り低く保つことも求められている。
【0013】
カラープリンタの一般的なアーキテクチャは、並列プロセスにおいて互いに同時に動作する、シアン、マゼンタ、黄色、および黒色の原色のそれぞれについて1つの4つの画像形成モジュールを含む。各画像形成モジュールは、光受容器、帯電手段、露出手段、現像手段、洗浄手段などを含む必要なサブシステム構成要素を含む。そのような画像形成モジュールは、中間転写ベルトの周りに配置され、中間転写ベルトに、4色トナーイメージが4つの光受容器から正確に重ね合わせて順次転写される。このようにして、完全なイメージが転写ベルト上に形成され、転写ベルトから、1枚の紙などの最終レシーバに最終転写が行われる。転写ベルトは一般に静的散逸特性を有し、必要なレベルの抵抗は通常、導電性フィラーとしてカーボンブラックの使用を通じて達成される。したがって、ほとんどの中間転写ベルトは不透明であり、黒色である。したがって、単位面積当たり現像質量(DMA)センサは通常、中間転写ベルトを通じたカラープロセス制御パッチの吸収を測定する透過濃度計ではあり得ない。その代わりに、中間ウェブに転写されたシアン、マゼンタ、および黄色のプロセス制御パッチのDMAを測定するために使用される典型的なセンサは、光の赤外線波長においてそのようなパッチ内のトナーによって散乱された光量を測定する。したがって、赤外線波長において散乱光を測定するための、感応性が高く、ロバストな感知が求められている。通常は黒色着色剤としてカーボンブラックが使用され、カーボンブラックは赤外線の強力な吸収体であるので、黒色トナーは特殊ケースを呈する。そのようなプリンタでの黒色トナーDMAセンサは、ベルト上のプロセス制御パッチから吸収された赤外線光に基づく。センサの幾何形状は、光沢のある表面の中間ベルトから反射された光を検出器が収集するように配置されるようなものであり、次いで、光は黒色トナーのDMAによって変調される。
【0014】
Pacer他の米国特許第5410388号は、現像剤エージング効果による2成分現像システムのトナー濃度ドリフトを補償するためのプロセス制御方式を説明している。反射率を測定するために構成されたセンサが、ウェブベースの光受容器上の大きいプロセス制御パッチの立上りおよび立下り密度を検出するために使用され、立上りおよび立下り密度は、イメージ品質を一定に保つためにトナー濃度、現像バイアス電圧、光受容器電位などのパラメータを制御することによって応答を受ける。センサは、940nmピーク波長および60nm半値幅を有する半導体発光ダイオードに基づく。したがって、光受容器上のトナーパッチを検出する赤外線波長反射型センサの使用が示されている。Rajの米国特許第5436705号は、赤外線反射率センサを使用する光受容器上のTAC(トナーエリアカバレッジ)測定の別の例を与えている。どちらの参考文献も白黒プロセスを参照している。
【0015】
Emi他の米国特許第5991558号は、赤外線波長の光と共に動作し、単一の放射器および2つの検出器がある反射型センサの使用を説明している。一方の検出器は、放射器と同等の角度でベース媒体に配向され、それによって、媒体上にトナーがないとき、ベース媒体から鏡面反射した光が検出される。ベース媒体が典型的な黒色中間転写ベルトである場合、カーボンブラックベースの黒色トナーのパッチの存在によって、より低い信号が供給され、したがって黒色トナーのカバレッジの測定が特徴付けられる。カーボンブラックのないカラートナーでは、トナーが存在しないときよりも存在するときの方が多くなる、拡散された光のみを検出器が収集するように配向されるとき、より高い信号対雑音比が実現される。このようにして、シアン、マゼンタ、および黄色などのカラートナーのカバレッジが測定される。センサは赤外線の970nmにおいて動作する。
【0016】
米国特許第5991558号から適合された
図1は、放射器および2つの検出器の位置を示し、1つは、媒体から鏡面反射された光を収集するために放射器と同等の角度に配向され、1つは、散乱または拡散された光を収集するための角度に取り付けられる。本明細書では、散乱光および拡散光という語は互換的に使用される。トナーカバレッジセンサ31(すなわち、DMAセンサ)が、トナーイメージが感知されるように配置されるプロセス素子1(たとえば、媒体)と反対側に配置される。トナーカバレッジセンサ31は、照射角αでプロセス素子1を照射する赤外線放射器素子32(たとえば、LED)を含む。鏡面放射検出器34が、プロセス素子1から鏡面反射される光を検出するように配向される。拡散放射検出器36が、プロセス素子1の表面上のトナー粒子によって散乱される拡散光を検出するように配向される。本特許は、検出された信号を最適化するために、トナーのテストパッチのカバレッジに応じた、検出器の一方または他方の選択的使用を開示する。やはり米国特許第5991558号から適合された
図2は、拡散放射検出器36を使用する、カラートナーについてのセンサ出力46と、鏡面放射検出器34を使用する、黒色トナーについてのセンサ出力44とを示す。データ処理システム(図示せず)が、トナーカバレッジに応じてセンサ出力を特徴付けることによって決定された較正機能を使用して、センサ出力からトナーカバレッジを決定するために使用され得る。1つの放射器および2つの検出器のこの配向方式を用いる単位面積当たり現像質量センサは、電子写真プリンタ業界で一般的に使用されている。
【0017】
シアン、マゼンタ、黄色、および黒色トナーの代表的な市販のセットについての、波長の関数として光の吸収を示すグラフ50が
図3に示されている。これらのスペクトル吸収関数は、約0.4mg/cm
2のカバレッジでクリアフィルムサポート上に静電被覆され、トナーの滑らかな一様で連続的な層を残すようにローラ定着装置において定着された、Samsung Xpress C1810Wプリンタにおいて使用されるC504S、M504S、Y504S、およびK504Sカートリッジから除去されたトナーサンプルについて測定され、透過における光吸収度について、Perkin-Elmer UV-VISモデルLambda 35分光光度計上で350nmから1050nmまでの波長の関数として測定された。これらのトナーにおいて使用されるシアン、マゼンタ、および黄色着色剤について、スペクトルの赤外線領域内の850nmより上の光の吸収は本質的にないことがわかる。例示的構成では、カラートナーが吸収するのは、
図3に示される方法によって測定されるトナーカバレッジセンサ31によって感知される赤外線波長帯内の放射の5%未満であり、クリアサポート上の少なくとも20のG60光沢に定着した0.4mg/cm
2のトナー付着は、トナーカバレッジセンサ31の赤外線波長帯内の波長での透過における光吸収度について測定される。
【0018】
Samsung C1810Wプリンタは、
図1に示される幾何形状のトナーカバレッジ感知システムを使用し、滑らかな(光沢のある)黒色中間転写素子上のトナーカバレッジを感知する。トナーカバレッジセンサ31の放射器素子32からの光が、約930nmに中心があると測定された。したがって、原色のシアン、マゼンタ、および黄色のカラートナーのトナーカバレッジ(すなわち、DMA)を測定するために、プロセス制御センサは、930nmの赤外線光の反射を拡散放射検出器36で検出する。単位面積当たりのトナー量が多いほど、散乱される光量が多くなり、したがって拡散放射検出器36によって検出される信号が大きくなる。一方、黒色トナーでは、カーボンブラックが主な着色剤であり、光が850~1050nmから著しいレベルで吸収される。したがって、赤外線光は、散乱されるのではなく大部分が吸収され、鏡面放射検出器34を使用して検出が実施され、滑らかな黒色の中間転写素子上の黒色トナーの存在が、鏡面反射された光の量を低下させる。
【0019】
多くの顔料および染料が、市販のシアン、マゼンタ、および黄色トナー内の着色剤として使用されてきた。大部分は約850~1050nmの波長の光をあまり吸収せず、したがってこの範囲の赤外線波長内で動作する拡散放射検出器36を使用して適切に検出される。
【0020】
Shimada他の米国特許第5625857号は、鏡面反射された光に加えて、不規則に反射した(散乱した)光の少なくとも一部を受けるための広い受光面積を受光素子が有する付着トナー量センサを説明している。そのような複雑なセンサの使用は、シアン、マゼンタ、および黄色のトナーの感知を改良する必要を示す。赤外線光を使用する利点が列6、行41~48において説明されており、したがってそうすることはカラートナーの違いによって引き起こされる効果を低減することに留意されたい。
【0021】
Shidaの米国特許第9020380号は、鏡面反射された光と散乱光とを別々に収集するように配置された単一の放射器および2つの検出器を含む幾何形状の、950nmにおいて動作するデバイスを使用するトナーカバレッジ感知を説明している。米国特許第9020380号の
図3は、先に論じた
図1と本質的に同一の幾何形状のセンサを説明する。米国特許第9020380号の
図1は、そのようなセンサが中間転写ベルト素子に転写された未定着のトナーのパッチを測定するためにセットアップされる一実施形態を示す。「センサでテストパターンを検出するために、テストパターンは、センサによって照射される光のスポット直径よりも大きく作成されなければならない。一方、密度制御において消費される現像剤は、ユーザによる装置の部分に対して浪費された消費と見なされ、可能な限り低減されなければならない」(列1、行44から49)と述べられている。したがって、テストパッチでの最小限のトナー量がより大きい信号対雑音比をもたらし得る、改良型のプロセス制御感知が望ましい。
【0022】
Gunning他の米国特許第3879314号は、塗料に使用するために設計された多孔質ポリエステルグラニュールを作成するためのプロセスを開示している。著者は、「ベシクルがその中に蒸気封入される起泡ポリマーグラニュールが塗料組成内に取り込まれる場合、これまでに塗料内の艶消し剤として使用された増量剤顔料とは異なり、その起泡構造により、塗料の乾燥塗膜に不透明性をもたらし得る」(列1、行25から30)と述べている。粒子作成プロセスは、顔料の水分散を調製すること、この液を重合可能モノマー内に溶解された不飽和ポリエステル内の小滴として分散させること、得られる混合物を、分散成分および濃縮成分を含む水中の小滴として分散させること、その後に続く重合を含む。顔料を含む内部水相の小滴の乾燥後に、ポアまたはベシクルが得られる。これは、当技術分野では「2重エマルジョン」方法と呼ばれる。しかしながら、記載のグラニュールは現代のトナーとして使用するには大き過ぎる。
【0023】
共にGunning他による米国特許第3923704号および米国特許第4137380号は、塗料での使用のために設計された多孔質ポリエステルグラニュールを作成するための改良型のプロセスを開示している。グラニュールは、ラテックス塗料内の不透明化艶消し剤としての特定の用途のものであり、高フィルムビルドでのクラッキングという、これまで観察されていた欠陥を回避する。米国第3879314号の参考文献に勝る配合改良が説明されている。
【0024】
共にKarickhoffによる米国特許第4461849号および米国特許第4489174号は、塗料用の不透明化剤としての特別な有用性を有する起泡ビーズを製造する改良型プロセスを説明しており、改良された散乱効率と、乾燥時の収縮への抵抗を示している。説明したばかりの前の3つの参考文献の場合と同じく、水中油中水型エマルジョン、または2重エマルジョン方法が使用される。起泡ビーズは約0.1から500ミクロンの直径であり、ベシクル直径は約0.01から5.0ミクロン、好ましくは0.03から約1.0ミクロンの範囲である。
【0025】
Engelbrecht他の米国特許第7572846号は、塗料において使用するための改良型の起泡粒子を説明している。記載の粒子調製は、2重エマルジョン重合方法の変形である。架橋および適切な疎水性モノマーの使用が説明されており、それによって、架橋粒子が乾燥されたときに水の再進入および再吸着を妨げると言われる疎水性表面が粒子に残される。塗料の改良された不透明度、白色度、スクラブ抵抗、および耐水性が実現されると言われている。
【0026】
Someya他の米国特許第5409776号は、粒子の表面層を粒子の内部と結び付ける1つまたは複数の浸透性ポアを有する乾燥状態構造のマルチシェルエマルジョン粒子を開示している。粒子は、5%から80%の不飽和カルボン酸を含むモノマーの混合物を重合するエマルジョンによって調製され、粒子が形成され、次いで粒子が、第1のエマルジョン粒子との指定の割合でビニルモノマーとの第2のエマルジョン重合ステップに加えられ、その後に続いて、得られたマルチシェルエマルジョンポリマーをアルカリ材料で処理して、ポリマーを中和し、膨張させる。第3の重合ステップは、中和または膨張ステップの後に任意選択である。エマルジョン粒子は、有機顔料としての改良された隠ぺい力および光沢を提供すると言われている。
【0027】
Kamiyama他の米国特許第5608017号は、粒子内に空洞を有する重合粒子を生成するための懸濁重合方法を開示している。記載の方法は本質的に、2重エマルジョン方法であり、懸濁重合されるべきモノマーが水中に所望の小滴サイズで懸濁され、モノマー小滴自体も水などの非相溶性液体の分散した小滴を含む。重合粒子を乾燥することによって空洞が生み出される。粒子は空間保持剤、潤滑性提供剤、機能キャリア、標準化粒子、トナー、機能フィラーなどとして有用であると言われている。この参考文献は、そのような空洞保持粒子の光散乱特性を論じていない。
【0028】
Cuiの米国特許第7741378号は、球形の単分散多孔質アクリル粒子を調製するための重合方法を説明している。単分散ポリメタクリル酸メチルシード粒子が、油溶性重合開始剤、メタクリル酸メチルおよびジビニルベンゼンを含むモノマーと共に、元のシード粒子の20から80倍まで膨張し、その後に続いてモノマーが重合される。得られる多孔質単分散粒子は、様々な顔料、薬剤などを組み込み得るキャリアとして使用可能であると言われており、その間隙率のために、様々なタイプの吸着剤、カラムなどとして使用するのに適している。さらに、本発明による有色単分散粒子は単分散され、球形であると共に、多量の顔料を含む。したがって、有色単分散粒子は、電子ペーパーのディスプレイ素子、液晶ディスプレイパネル用のスペーサ、プリンタ用のトナー、化粧品などとして使用可能であると説明されている。この参考文献はそのような粒子の光散乱特性を論じていない。
【0029】
Sawai他の米国特許第4254201号は、高温で定着させることによって固定するのではなく、圧力だけで固定することのできるトナーを開示している。トナーは、感圧接着物質の個々のグラニュールの多孔質凝集体またはクラスタからなり、グラニュールは各塗膜形成材料の塗膜によってカプセル化される。トナーは、噴霧乾燥粒子を粒状化することによって調製される。間隙率はトナーが圧力固定される能力にとって重要である。この参考文献はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0030】
Mitushashiの米国特許第4379825号は、多孔質電子写真トナー、およびそのようなトナーを調製するための方法を開示している。トナーが、着色物質、結合剤、および除去化合物を含む原料を熱の下で混合および混練すること、得られる混合物を微粉化すること、および粉末を溶剤で処理することによって除去化合物を除去することによって調製される。除去化合物は、所望のポアサイズとなるように、高温混練ステップ中に融解しないように選ばれなければならない。与えられた除去化合物の例には、結合剤用の溶剤ではない有機溶剤で除去され得る色素、およびやはり結合剤用の溶剤ではない水で除去され得る塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、またはサッカロースデンプンが含まれる。トナーの利点は、低圧下で圧力固定される能力であると言われている。この参考文献はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0031】
Sugiura他の米国特許第7368212号は、指定された程度の間隙率、ポアのサイズ、およびトナー真円度を有する多孔質トナー粒子を説明している。必要な成分を含む溶剤を水中に分散させることによって粒子が調製され、プレポリマーを含むトナーが形成され、次いでプレポリマーが反応し、細長い架橋成分となり、それがガス抜きプロセスを受けて、ポアを形成させる二酸化炭素などの気体を解放する。トナーの利点は、参考文献ではトナー付着性と呼ばれる、単位面積当たり現像質量を低下させると共に、帯電可能性、転写可能性、可溶性などの必要とされる良好な特性を維持できることであると言われている。著者はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0032】
Sano他の米国特許出願公開第2013/0011782号は、ポリマー膨張粒子、ポリマー膨張粒子を調製する方法、およびそのような方法によって調製される膨張トナーを開示している。調製は、トナーを高圧ガスまたは超臨界流体で混合および含浸させること、その後に続いて圧力および温度を低減し、トナー材料を膨張させ(間隙を生成し)、次いでトナー材料を破砕し、所望のトナー粒子サイズに分類することを含む。著者はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0033】
Mang他の米国特許第9005867号は、エマルジョン凝集トナー方法の変形によって多孔質トナー粒子を調製するための方法を開示している。樹脂粒子、顔料粒子、およびワックス粒子などの他の任意選択のトナーアデンダの水性エマルジョンの制御された凝集によってエマルジョン凝集トナーが調製される。著者は、エマルジョン凝集トナー粒子のスラリーからの濾過ケークをアルコールで洗浄した結果、どのように多孔質トナー粒子となるかを示している。多孔質トナー粒子の利点は、同様の画像形成結果を実施するために必要なトナー質量が少なく、したがってページ当たりのコストが低下すること、より薄いイメージを提供して、カールおよびイメージ起伏を低減すること、定着エネルギーを節約すること、およびオフセット印刷と同様のルックアンドフィールを提供することを含むと言われている(列2、行37~53を参照)。著者はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0034】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたNair他の米国特許第4833060号は、蒸発限定合体(ELC)と呼ばれる技法によるトナーまたはポリマー粒子の調製を説明している。結合剤樹脂、着色剤、ワックス、電荷制御剤などのトナー原料が、酢酸エチルなどの水不混和溶剤中に溶解または分散され、油相が形成される。次いで、この溶液が、微粒子安定剤として界面活性促進剤ポリマーおよびコロイドシリカを含む水性混合物中に剪断され、油相小滴が形成され、そのサイズは、加えられるコロイドシリカの量によって制御される。水相のpHはバッファによって制御され得る。次いで、溶剤が蒸発されて、固体トナーまたはポリマー粒子が形成される。剪断ステップの後、コロイドシリカは、小滴上のシリカの表面濃度がほぼ単一層となるとき、油相小滴のより大きい小滴への合体を制限するように機能する。したがって、より多くのシリカを使用すると、粒子表面積が大きくなり、したがって小滴が小さくなり、溶剤除去後に得られる固体粒子が小さくなる。記載の蒸発限定合体方法は、間隙率のない固体である、粒子サイズの非常に狭い分布を有する樹脂粒子またはトナー粒子を生成する。コロイドシリカは、アルカリ水溶液中の処理によって除去され得、粒子は水相塩で洗浄され得る。必要に応じて、フローエイドなどの別の添加剤がトナーの表面に塗布され得る。そのような粒子の形状は、溶剤を除去するための蒸発ステップの後に最終固体粒子のより広い表面積が得られるように、油相小滴の表面上のコロイドシリカと結合する傾向がある形状制御剤を加えることによって変更され得る。参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたEzenyilimba他の米国特許第6207338号、Zion他の米国特許第6380297号、およびEzenyilimba他の米国特許第6482562号は、蒸発限定合体プロセスを使用してトナーを調製するために使用され得る形状制御方法の好ましい実施形態を説明している。形状は、回転楕円体から、大きく折り返された長だ円形にまで及び得る。これらの参考文献によって説明されている成形されたトナーは、間隙率のない固体である。
【0035】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたNair他の米国特許第7754409号は、ポリマーを含む有機溶液内に分散するハイドロコロイドを安定化するポアを含む第1の水相の第1のエマルジョンを提供すること、第2の水相中に第1のエマルジョンを分散させること、小滴から有機溶液を蒸発させ、制御されたサイズおよびサイズ分布の多孔質トナー粒子を形成することを含む、多孔質トナー粒子を製造する方法を説明している。コロイドシリカなどの微粒子材料が水中油型エマルジョンを安定化するために使用されるとき、これは一般に蒸発限定合体プロセスと呼ばれる。有機溶液相内に分散する、第1の水相中に含まれるハイドロコロイド安定剤の存在によってポアが生み出される。顔料、ワックス、電荷制御剤などのトナー原料は、有機溶液中に溶解または分散され得る。有機相が重合可能モノマーを含み、重合後に多孔質粒子が得られる、第2の2重エマルジョンプロセスが説明されている。この開示は、「電子写真プロセスにおいて基板に付着するトナー量を削減することが求められている。電子写真プロセスでの多孔質トナー粒子は、潜在的にイメージエリア内のトナー質量を低減し得る。簡略化して、50%間隙率を有するトナー粒子は、同一の画像形成結果を実施するために半分の質量しか必要としないはずである。したがって、上昇した間隙率を有するトナー粒子は、ページ当たりのコストを低下させ、印刷のスタック高も低減することになる。多孔質トナーの適用は、印刷当たりのコストを削減し、印刷品質を改良するための実際的な手法を提供する」と述べている(列2を参照)。著者はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0036】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたNair他の米国特許第7867679号は、前述の蒸発限定合体技法の変形によって調製される多孔質トナー粒子を説明している。2つの溶剤が油相において使用され、2番目の揮発性の低い有機溶剤は、結合剤樹脂にとって不十分な溶剤である。溶剤が蒸発されるときに生み出されるポアを安定化するために、非イオン有機ポリマー粒子が加えられる。そのような多孔質トナーの利点は、イメージエリア内のトナー質量の削減であり、それによって印刷ページ当たりのトナーコストが削減されると言われている。より薄いイメージが、イメージ品質を改良し、カールを低減し、イメージ起伏を低減し、定着エネルギーを節約し、オフセット印刷に近いルックアンドフィールを提供すると言われている。著者は、そのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0037】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたNair他の米国特許第7887984号は、前述の蒸発限定合体技法の変形によって調製される多孔質トナー粒子を説明している。好ましい実施形態は、2重エマルジョン方法を使用する。カルボキシメチルセルロース樹脂などの溶解ハイドロコロイドを有する第1の水相が、樹脂、顔料、ワックス、電荷制御剤などの溶解または分散トナー原料を含む油相中に分散する。油相溶剤は水中で不混和であり、したがって第1の水相の小滴を含む油相は、それ自体がコロイドシリカなどの微粒子安定剤を含む第2の水相内の小滴として分散し得る。溶剤および水の蒸発の後、必要なトナー原料を含む油相内の第1の水相小滴からポアが形成される。粒子は少なくとも10%の間隙率を有する。そのような多孔質トナー粒子の利点は、電子写真プロセスによって基板に付着するトナー量の削減であると言われている。間隙率は、トナースタック高を低下させ、コストを低下させ、印刷品質を改良する。著者はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0038】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたPutnam他の米国特許第8252414号は、多孔質粒子および多孔質トナーを説明しており、トナー組成のために必要な顔料やワックスなどの添加剤が、ポア(マイクロボイドとも呼ばれる)内に組み込まれ得る。粒子調製方法は、先に引用した参考文献で説明されている蒸発限定合体プロセスの変形である。多孔質トナーの利点は、イメージエリア内のトナーの質量の削減であり、ページ当たりのより低いコスト、より低いトナースタック高、および改良されたイメージ品質が得られると言われている。著者はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0039】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたNair他の米国特許第9029431号は、空洞を安定化するためにハイドロコロイドが使用される、蒸発限定合体2重エマルジョン方法の変形によって作成される多孔質粒子を説明している。そのような粒子の形状を変更する能力が、列13において論じられている。そのような多孔質粒子は、クロマトグラフ用カラム、イオン交換および吸着樹脂、薬物送達デバイス、化粧品配合、紙、および塗料のために有用であると言われている。トナーとしてそのような粒子の使用を説明している以前の特許に言及されている。しかしながら、著者はそのようなトナー粒子の光散乱特性を論じていない。
【0040】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたBoris他の米国特許第9376540号は、異なるハイドロコロイドによって安定化される、異なるポアサイズの別個のポアを有する蒸発限定合体2重エマルジョンプロセスによって調製される多孔質ポリマー粒子を説明している。著者は、「制御されたサイズの多孔質ポリマー粒子は、物理スペーサ、ガス吸収体、光学的障壁およびディフューザ、透過性障壁、電子写真トナー、潤滑剤、乾燥剤、分散性媒体などの様々な用途に有用である。制御されたサイズの別個のポアを有する多孔質ポリマー粒子は同様に、これらの用途、および粒子密度、光散乱、粒子係数、または弾性もしくは内部多孔質表面積の厳密な制御が有利である他の用途にとって技術的に重要である」と述べている。しかしながら、多孔質カラートナー粒子の散乱特性にはさらに言及されておらず、詳述されていない。
【0041】
参照により本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡されたPutnam他の米国特許出願公開第2012/0077000号は、化学的方法によって調製される、気泡のある、または多孔質のトナー粒子を説明している。改良されたイメージ定着プロセスが、指定の定着器トップコート特性と、ポアまたは気泡を有するトナーとの組合せで実現される。固体トナーと比較して、多孔質トナーは、トナーイメージの起伏を低減し、定着中のイメージの横方向拡散を低減し、定着条件を低減することが示されている。しかしながら、気泡のあるカラートナー粒子の散乱特性には言及されていない。多孔質トナー粒子はトナー定着プロセス中に固体膜に崩壊することに留意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【文献】米国特許第5410388号
【文献】米国特許第5436705号
【文献】米国特許第5991558号
【文献】米国特許第5625857号
【文献】米国特許第9020380号
【文献】米国特許第3879314号
【文献】米国特許第3923704号
【文献】米国特許第4137380号
【文献】米国特許第4461849号
【文献】米国特許第4489174号
【文献】米国特許第7572846号
【文献】米国特許第5409776号
【文献】米国特許第5608017号
【文献】米国特許第7741378号
【文献】米国特許第4254201号
【文献】米国特許第4379825号
【文献】米国特許第7368212号
【文献】米国特許出願公開第2013/0011782号
【文献】米国特許第9005867号
【文献】米国特許第4833060号
【文献】米国特許第6207338号
【文献】米国特許第6380297号
【文献】米国特許第6482562号
【文献】米国特許第7754409号
【文献】米国特許第7867679号
【文献】米国特許第7887984号
【文献】米国特許第8252414号
【文献】米国特許第9029431号
【文献】米国特許第9376540号
【文献】米国特許出願公開第2012/0077000号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
従来技術構成と比較してより高い測定感度を実現する、電子写真プリンタ用の改良型のトナーカバレッジ感知システムが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明は、電子写真印刷システムを使用してプロセス素子の表面上に印刷されたトナー粒子を感知するためのトナーカバレッジ感知システムであって、印刷されたトナー粒子が、印刷された多孔質カラートナー粒子を含み、
プロセス素子の表面上の印刷されたトナー粒子に対して赤外線波長帯の赤外放射を向ける赤外放射源、および
印刷された多孔質カラートナー粒子から散乱された赤外放射をプロセス素子の表面上で感知するための拡散放射検出器であって、感知した赤外放射がプロセス素子の表面からの鏡面反射を含まないように配向される拡散放射検出器
を含む光学的感知システムと、
感知した散乱赤外放射に応答して、プロセス素子の表面上の、多孔質カラートナー粒子について感知したトナーカバレッジを決定するデータ処理システムと
を含み、
多孔質カラートナー粒子が赤外線波長帯内の放射の5%未満を吸収するトナーカバレッジ感知システムを提示する。
【0045】
本発明は、赤外線波長において動作するセンサによって検出されない着色剤を使用するカラートナーについての改良された信号レベルを実現する。着色剤によって反射された光を検出すのではなく、センサはトナー粒子によって散乱された光を検出する。トナー粒子の外面によって散乱された光が、多孔質トナー粒子内の気泡によって散乱された光によって高められ、その結果、センサの感度が向上し、感知プロセスのロバスト性が向上するので、改良が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】鏡面反射光および拡散反射光についての別々の光電検出器を備える赤外線プロセス制御トナーカバレッジセンサの断面図である。
【
図2】カラートナーカバレッジに対する拡散光センサの応答と、黒色トナーカバレッジに対する鏡面光センサの応答とを示すグラフである。
【
図3】シアン、マゼンタ、黄色、および黒色トナーの例示的セットについての吸光スペクトルを示すグラフである。
【
図4】拡散光検出器信号を多孔質および固体カラートナーについてのトナーカバレッジの関数として示すグラフである。
【
図5】鏡面光検出器信号を多孔質および固体カラートナーについてのトナーカバレッジの関数として示すグラフである。
【
図6】多孔質および固体カラートナーについての指定のトナーカバレッジでの拡散光検出器信号をトナーアスペクト比の関数として示すグラフである。
【
図7】拡散光検出器信号を多孔質および固体黒色トナーについてのトナーカバレッジの関数として示すグラフである。
【
図8】鏡面光検出器信号を多孔質および固体黒色トナーについてのトナーカバレッジの関数として示すグラフである。
【
図9】多孔質および固体カラートナーについてのトナーカバレッジの関数として透過において測定された吸光度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
添付の図面は本発明の概念を例示するためのものであり、原寸に比例しないことがあることを理解されたい。可能な場合、各図に共通の同一の特徴を示すために同一の参照番号が使用されている。
【0048】
本発明は、本明細書で設営される実施形態の組合せを含む。「特定の実施形態」などへの参照は、本発明の少なくとも1つの実施形態に存在する特徴を指す。「一実施形態」または「特定の実施形態」などへの別々の参照は、必ずしも同一の実施形態を指すわけではない。しかしながら、そのような実施形態は、指示がない限り、または当業者にとって容易に明らかでない限り、相互排他的ではない。「方法」などを参照する際の単数または複数の使用は限定的なものではない。別段に明示されていない限り、または文脈によって必要とされない限り、「または」という語は、本開示では非排他的な意味で用いられることに留意されたい。
【0049】
図1に関連して説明したような、赤外放射を使用する従来技術のトナーカバレッジ感知システムは、赤外線波長範囲内ではあまり吸収しないカラートナーのトナーカバレッジを感知するために、トナーの光散乱特性に依拠する。従来型の固体トナーでは、そのようなトナーカバレッジ感知システムを使用する測定感度は、トナー粒子によって与えられる光散乱量によって制限される。
【0050】
電子写真印刷システムでの多孔質トナー粒子の使用が、固体トナーの散乱特性と比較したときに、空気を含む空洞の存在による光散乱(すなわち、光拡散)のレベルが向上するために、固体トナー粒子で達成可能なものよりも、トナーカバレッジ感知システムにおいて、改良された測定感度、したがってより高い信号対雑音比を生み出すことを本発明者らは発見した。好ましい構成では、多孔質トナー粒子は、少なくとも10%の間隙率を有し、間隙率は、前述の米国特許第7887984号に記載の方法によって測定される。したがって、本発明は、赤外線光を散乱し、したがってトナーカバレッジ感知プロセスの感度およびロバスト性を向上させる多孔質トナー粒子を提供することによって、シアン、マゼンタ、および黄色トナー付着の感知に対する改良を実現する。
【0051】
先に論じた従来技術の参考文献のいずれも、多孔質トナー粒子のトナーカバレッジレベルが散乱または拡散された赤外放射を収集するように配向された検出器を使用して感知されるトナーカバレッジ感知システムを説明または示唆していない。多孔質トナー粒子を使用して達成され得る散乱特性の向上が、トナーカバレッジ感知システムでの改良された感度特性を実現するために使用され得るという認識もない。
【0052】
本発明の多孔質トナー粒子は、背景技術の項において説明した多孔質粒子製造プロセスを含む、当技術分野において周知の任意の方法を使用して調製され得る。そのような多孔質粒子製造プロセスの例には、硬化機構として溶剤蒸発または重合のどちらかを用いる複数のエマルジョンを利用する方法、除去可能な成分の抽出を利用する方法、エマルジョン凝集などの凝集方法の変形、ガスを用いた発泡などの膨張方法が含まれる。
【0053】
本開示において説明する本発明の例はすべて、前述の本願の譲受人に譲渡された米国特許第7887984号および第9029431号において説明されている、間隙率を生み出すためにハイドロコロイド添加剤を用いる2重エマルジョン方法を使用して蒸発限定合体技法によって調製された多孔質トナーサンプルに基づく。ポアが平均して約0.7ミクロンのサイズ、トナー粒子自体が約6ミクロンの体積中央径で、約40%の間隙率が得られるように調製配合を調節した。比較例は、市販のカラートナー、ならびに前述の本願の譲受人に譲渡された米国特許第4833060号、6207338号、6380297号、および6482562号において説明されている蒸発限定合体方法によって、本研究室において調製された固体トナーを利用する。
【0054】
Table 1(表1)は、多孔質または固体である、蒸発限定合体プロセスによって本発明者らの研究室において調製されたトナーサンプルを記述する。使用された顔料は、短縮カラーインデックス識別によって与えられる。Table 2(表2)は、比較例のために使用される市販のトナーサンプルのセットを記述する。
【0055】
【0056】
【0057】
本発明の多孔質トナー粒子は、所望の用途に応じて球形または非球形であり得る。多孔質粒子の形状は、粒子の最も長い全長に対する、粒子の最も長い全長に対して垂直な、粒子の最大の長さ(「キャリパ直径」)の比と定義される「アスペクト比」によって特徴付けられ得る。これらの長さは、たとえば、Sysmex FPIA-3000(Malvern Instruments)などの市販の粒子形状アナライザを使用する光学的測定によって決定され得る。たとえば、本発明について「球形」と見なされる多孔質粒子は、少なくとも0.95から、最大で1.0以下のアスペクト比を有し得る。本発明の非球形多孔質粒子については、アスペクト比は少なくとも0.4から、最大で0.95以下であり得る。Table 1(表1)は、本研究室での蒸発限定合体プロセスによって調製されたトナーについてのアスペクト比測定結果を含む。
【0058】
本発明の多孔質カラートナー粒子は、染料または顔料のどちらかを含み得る。フルカラーイメージは通常、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)、および黒色(K)を含む4つのトナーで印刷される。シアントナーは、主に赤色の波長を吸収するが、赤外線波長を吸収しない着色剤を利用し、マゼンタトナーは、主に緑色の波長を吸収するが、赤外線波長を吸収しない着色剤を利用し、黄色トナーは、主に青色の波長を吸収するが、赤外線波長を吸収しない着色剤を利用し、着色剤としてカーボンブラックに基づく黒色トナーは、可視スペクトルのすべての波長を吸収し、赤外線波長も著しく吸収する。(本開示の文脈内では、「著しく吸収する」とは、先に論じたように、クリアサポート材料上の十分に定着したサンプルについて0.4mg/cm2トナーカバレッジでの透過において測定されるとき、トナーカバレッジセンサ31によって感知される赤外線波長帯の放射の少なくとも20%を吸収すると理解される。)議論のために、シアン、マゼンタ、黄色のトナーをカラートナーと呼び、黒色はカラートナーとは見なさない。カラートナーはまた、「スポット」または「アクセント」カラー再現、または色域向上のために使用されるように選ばれる着色剤を含み得る。例には、赤色、青色、緑色、オレンジ、紫色などであると見なされるトナーが含まれる。市販のトナー材料は主に、着色剤として顔料を利用するが、染料も表される。有用なシアン着色剤には、Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 16、およびPigment Blue 79のカラーインデックス名称を有するものが含まれる。有用なマゼンタ着色剤には、Pigment Red 57:1、Pigment Red 81、Pigment Red 81:1、Pigment Red 122、Pigment Red 169、およびPigment Red 185、およびPigment Violet 19のカラーインデックス名称を有するものが含まれる。有用な黄色着色剤には、Pigment Yellow 12、Pigment Yellow 13、Pigment Yellow 17、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 180、Pigment Yellow 185、Pigment Yellow 194、およびSolvent Yellow 162のカラーインデックス名称を有するものが含まれる。アクセント、スポット、および色域向上のために有用な着色剤には、Pigment Blue 61、Pigment Violet 1、Pigment Violet 3、Pigment Violet 23、Pigment Red 53:1、Pigment Red 53:3、Pigment Red 112、Pigment Red 146、Pigment Green 7、Pigment Orange 5、およびPigment Orange 34のカラーインデックス名称を有するものが含まれる。このリストは、散乱光を検出する赤外線波長において動作するトナーカバレッジセンサ(すなわち、DMAセンサ)を使用する電子写真印刷プロセスにおいて使用される多孔質トナーにおいてどの着色剤が使用するのに適しているかに関する限定と見なされるべきではない。カラートナーは着色剤の混合物を利用し得る。カーボンブラックは、カラーインデックス名称Pigment Black 7を有し、カーボンブラックに基づくトナーは、本発明による赤外線散乱を測定するのに有用な赤外線波長の光を過剰に吸収し、本発明の性質を理解するのに比較例として有益であることがわかるであろう。
【0059】
本発明の多孔質カラートナー粒子は、ドライトナーベースの電子写真印刷において有用な様々な樹脂材料に基づき得る。ポリエステル樹脂、スチレンアクリルコポリマー樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、炭化水素樹脂、生物派生樹脂、および多くの他の適切な材料が含まれる。多孔質トナー粒子は、ポリエチレンワックス、エステルワックス、パラフィンワックス、および他の適切な材料を含むワックス、電荷制御剤、接着増進添加剤、粘着防止添加剤、抗微生物添加剤、磁気添加剤、導電性添加剤などの、トナー性能の他の側面にとって有用な添加剤を含み得る。
【0060】
Samsung Xpress C1810WプリンタのIDCセンサを使用することによって、トナー付着に対するカラープリンタのイメージ密度制御(IDC)または単位面積当たり現像質量(DMA)応答を直接的に測定し得るデスクトップデバイスを製作した。
図1は、このセンサの基礎となる幾何形状を記述する。Samsung Xpress C1810W IDCセンサは、トナーパッチ光源としての赤外線LED放射器素子32と、一方のセンサ(鏡面放射検出器34)が鏡面反射された光を検出し、第2のセンサ(拡散放射検出器36)が拡散または散乱した反射光を検出するように画定された幾何形状を有する2つの光電センサとを含む。930nmが中心となるようにLED放射を測定した。電子写真プロセスでは、プロセス素子1上に転写または現像される、テストパッチとして使用するトナーイメージが、プロセス素子1によってトナーカバレッジセンサ31を越えて移送される。
【0061】
Samsung C1810WプリンタでのIDCセンサブラケットから中間転写ベルトの間隔を測定した後、IDCセンサをプリンタから取り外し、IDCセンサブラケットからトナー付着までの距離0.075インチ、および全般的なセンサからトナーパッチまでの幾何形状を再現するように取り付けた。+5.2V DCをコネクタピン#2に供給した。電源グランドをコネクタピン#3に供給した。IDCセンサ'のLED放射器の出力を制御するように、ポテンシオメータをLED放射器グランドリターン(コネクタピン#5)と直列に配線した。測定条件下のポテンシオメータの両端間の電圧降下は2.3Vであった。電源グランドに対するコネクタピン#1および#4上の電圧を測定することによって、2つの光電センサの出力信号を監視した。
【0062】
上述の装置を使用して、Samsung Xpress C1810Wプリンタから取った中間転写ベルトなどの反射性黒色基板上で調製したトナーのパッチに対するセンサ応答を調査した。転写ベルトから切断したストリップ上に未定着トナーのパッチを静電被覆し、ミリグラム/平方センチメートル(mg/cm2)の単位でトナーカバレッジ(すなわち、DMA)を測定した。静電被覆デバイスは、ストロンチウムフェライトキャリアを用いる2成分現像を利用する1cm幅の現像ゾーンを有する小さい磁気ブラシ現像剤ステーションを備えた。現像ステーションを越えて一定速度で移送される基板のストリップの直接的調色を、調色ローラに印加されるDCバイアス電圧の印加で実施した。トナーパッチの重量および面積を測定し、被覆ストリップをSamsung Xpress C1810W IDCセンサの下に配置し、散乱光光電センサと反射光光電センサの両方の出力を記録した。パッチは、どんな磁気キャリア粒子もないように見えた。
【0063】
ステーション内に装入された現像剤のバイアス電圧レベルまたはトナー濃度によってパッチのトナーカバレッジを制御した。中間転写ベルトから切断されたストリップの代わりにLeneta CompanyのOpacity Charts Form 2Aとしての反射黒色コート紙を使用でき、得られるセンサ出力とトナーカバレッジとの間の関係に変換はないことがわかった。本開示において報告されるデータのすべてをこの黒色反射紙基板上で調製した。
【0064】
Table 3(表3)は、Table 1(表1)およびTable 2(表2)に列挙される材料を用いた反射におけるトナー付着のトナーカバレッジ感知(すなわち、DMA感知)の本発明の例と比較例の両方を記述する。Table 4(表4)は、Table 1(表1)およびTable 2(表2)に列挙される材料を用いた透過におけるトナー付着のトナーカバレッジ感知の本発明の例と比較例を記述する。
【0065】
【0066】
【0067】
図4は、多孔質トナー粒子を用いる本発明の例と、固体トナー粒子を用いる比較例についての、mg/cm
2の単位のトナーカバレッジ(単位面積当たり現像質量)の関数としての拡散光センサ36(
図1)の出力のグラフ60を示す。本発明の例1、2、および3は、それぞれシアン、マゼンタ、および黄色多孔質トナーを使用した。比較例1、2、および3は、センサ自体を除去したSamsung Xpress C1810Wプリンタと共に販売される固体シアン、マゼンタ、および黄色トナーの感知を示す。すべての本発明の例および比較例についてトナーカバレッジが増大し、センサ信号が増大するが、本発明の多孔質トナー感知例について信号が約50%から60%大きいことがわかる。好ましい実施形態では、多孔質トナー粒子の多孔質の性質により、印刷された多孔質カラートナー粒子から感知される散乱赤外放射が、同一の顔料および樹脂と、ほぼ同等の粒子幾何形状およびトナーカバレッジとを有する、印刷された非多孔質カラートナー粒子について感知されるはずのものよりも少なくとも20%高くなる。本開示の文脈内では、ほぼ同等の粒子幾何形状は、10%以内の同一のサイズおよびアスペクト比分布を有するものであり、ほぼ同等のトナーカバレッジは、5%以内の同一の単位面積当たり質量を有するものである。どちらのタイプのトナーについても、シアン、マゼンタ、および黄色サンプルの間に著しい信号レベルの差はないことがわかる。
【0068】
先に論じた
図3は、比較例1、2、および3の固体トナーがセンサの930nm波長において光を吸収しないことを実証しており、これは本発明のサンプルにおいて使用される着色剤についてもそうである。比較固体トナーでのセンサ応答は、未定着トナー粒子の表面から散乱した光のためである。本発明の多孔質トナーでは、トナー粒子の内部ポアからの光の散乱によって信号が高まる。
【0069】
直径約6ミクロンのトナーを使用する現代の電子写真プリンタのモノクロームプロセスカラー最大密度エリアのトナーカバレッジに近い、0.4mg/cm
2でのセンサ応答を補完するために、
図4のデータを2次多項式でフィットした。これらの値が、本発明の例1、2、および3、ならびに比較例1、2、および3の説明と共にTable 3(表3)に列挙される。
【0070】
図5は、
図4に示されるような拡散光センサ36の応答についてテストした黒色反射紙上の同一のトナーパッチに対する鏡面反射された光を収集するように配向された鏡面光センサ34(
図1)の応答のグラフ70を示す。固体トナーと多孔質トナーの両方についての
図5のセンサ読取り値が
図4よりもずっと低いことがわかる。しかしながら、多孔質シアン、マゼンタ、および黄色トナー粒子(すなわち、本発明の例4、5、および6)での信号出力値は、固体シアン、マゼンタ、および黄色トナー粒子(すなわち、比較例、4、5、および6)よりもずっと高い。0.4mg/cm
2において評価されたこれらのデータにフィットする2次多項式の値がTable 3(表3)に含まれている。現代の6ミクロン直径トナーについての約0.25から0.45mg/cm
2のトナーカバレッジの有用な範囲にわたって信号とトナーカバレッジとの間の関係に対するかなりの傾きがあるのに対して、この範囲にわたる固体トナー粒子についての信号は本質的に平坦であり、印刷されたページ上のトナー量を制御する際に有用ではないので、カラートナー粒子での間隙率の使用により、トナーカバレッジを測定するために鏡面反射された光を収集するように配向された鏡面放射検出器34の使用が可能となることがわかる。
【0071】
図4および
図5は、多孔質トナー粒子と、特に拡散光を収集するように配向された、赤外線波長において動作するトナーカバレッジセンサとの組合せを使用する電子写真印刷システムでのトナーカバレッジの感知のずっと改良された信号レベルおよびロバスト性を示す。さらに、多孔質トナー粒子の使用は、
図5で実証されるように、放射器と同等の角度において鏡面光のみを収集する、より単純で安価なセンサを使用する可能性を提供する。
【0072】
図2では、鏡面反射された光のために選択された幾何形状を使用する黒色トナーについて、トナーのトナーカバレッジが増大するにつれて、信号が減少することが示される。黒色が赤外線光を吸収し、したがって黒色トナーのカバレッジが高いほど、光電センサによって反射および収集される光が少なくなるので、これは予想される。
図5の本発明の例4、5、および6のケースでは、高散乱多孔質トナーにより、鏡面放射検出器34内に反射される光がブロックされるが、放射器と同等の角度に配向される鏡面放射検出器への角度を含むすべての角度においても光が散乱される。後者は明らかに、トナーカバレッジの増大と共に信号の増大となる支配的な現象である。比較例4、5、および6の固体カラートナーでは、信号を低下させる反射光のブロックが、ある程度の散乱によって補償され、その結果、有用な範囲にわたってトナーカバレッジと共に本質的に平坦な信号が得られ、したがって印刷プロセス制御センサとして役に立たない。トナー間隙率により、放射器および収集器が同等の角度に配向される幾何形状についてのカラートナーの有用な感知が可能となることがわかる。
【0073】
Table 3(表3)に列挙される比較例7、8、および9は、コニカミノルタC6000プリンタのシアン、マゼンタ、および黄色固体トナーを含む固体トナー例E、F、およびGのパッチからの補間信号データを含む。これらのトナーは、Samsung Xpress C1810Wのシアン、マゼンタ、および黄色トナーと同様に、エマルジョン凝集化学プロセスによって製造されることが知られている。拡散放射検出器信号は、コニカミノルタの材料よりもSamsungの方が高いことがわかる。シアン、マゼンタ、および黄色トナーは、比較例4、5、および6において使用される固体トナー例A、B、C(すなわち、Samsungトナー)について、それぞれ1.59、1.59、1.58ボルトを与えたのに対して、比較例7、8、および9において使用される固体トナー例E、F、G(すなわち、コニカミノルタトナー)について、1.34、1.40、1.26ボルトを与えた。走査電子顕微鏡で検査したとき、コニカミノルタトナーはSamsungトナーよりも滑らかで丸みがあるように見え、Samsungは比較的、折り返され、長だ円形であるように見える。したがって、トナー粒子形状は、赤外線光の散乱度において強力な要素であることがわかり、形状は、トナー製造工程変動性に影響を受け得、したがってトナー幾何形状の範囲で効果的であるために、トナー形状変動に対してよりロバストな感知プロセスが求められている。
【0074】
図6は、Table 1(表1)において説明した蒸発限定合体プロセスによって作成された多孔質および固体トナーについてのトナーアスペクト比の関数としての0.4mg/cm
2のトナーカバレッジでの拡散放射検出器信号のグラフ80を示す。本発明の例7(多孔質ELCトナー例1~9に対応する)、および比較例10(固体ELCトナー例1~16に対応する)についての拡散放射検出器データが、Table 1(表1)に提示された順序でプロットされる。シアン、マゼンタ、および黄色を含むカラートナーが各曲線について含まれる。ここで使用されるアスペクト比は、トナー粒子の最も大きい垂直長さと最も長い長さとの比と定義されることを想起されたい。完全な球はアスペクト比1.0を有することになる。完全な球からの形状差が大きいほど(すなわち、アスペクト比が小さいほど)、センサ信号が高くなることがわかる。しかしながら、固体トナーデータ(すなわち比較例10)の傾きは、多孔質トナーサンプル(すなわち、本発明の例7)についての傾きよりもずっと大きい(約4倍)。したがって、多孔質カラートナー粒子の使用の結果、固体カラートナー粒子の使用よりも、トナー形状に対してずっとロバストなトナーカバレッジ感知が得られる。
【0075】
着色剤としてカーボン黒色を含む黒色トナーの感知挙動は、カラートナーの感知挙動とは大きく異なる。Table 3(表3)の比較例11から14は、拡散光を収集するように配向された拡散放射検出器36を使用する、多孔質黒色トナー例と固体黒色トナー例の両方の感知を記述し、Table 3(表3)の比較例15から18は、鏡面反射された光を収集するように配向された鏡面放射検出器34を使用する、多孔質黒色トナーと固体黒色トナーの両方の感知を記述する。
【0076】
図7は、比較例11から14についての、トナーカバレッジの関数としての拡散放射検出器信号のグラフ90を示す。固体黒色トナー(すなわち、比較例11および12)と多孔質黒色トナー(すなわち、比較例13および14)の両方について、本質的にトナーカバレッジの関数としての信号に対する傾きはなく、したがってこれらの感知実施形態は、プリンタでのトナーカバレッジのプロセス制御には有用ではない。したがって、カーボンブラックベースの黒色トナーは、拡散放射検出器36を使用するには赤外線放射器光を強く吸収し過ぎると結論付けられ得る。この理由で、
図2に関連して先に論じたように、プリンタにおいてそのような黒色トナーを測定するために鏡面放射検出器34が通常は使用される。
【0077】
図8は、比較例15から18についての、トナーカバレッジの関数としての鏡面放射検出器信号のグラフ100を示す。比較例11および15は、トナーカバレッジセンサ31を取り去ったSamsung Xpress C1810Wプリンタ用に販売されるSamsung K504Sトナーを使用する。
図8の比較例15から、このトナーは鏡面放射検出器34を使用して感知されるとき、電子写真プロセス制御のために使用され得る、トナーカバレッジの関数としての信号の傾きが存在することがわかる。これは明らかに、Samsung Xpress C1810Wがどのように機能するかを示している。しかしながら、
図4の固体と多孔質の両方の、カラートナーとの拡散光センサの挙動と比較したとき、カラートナーよりもずっと低い感度で黒色トナーが検出されることがわかる。
【0078】
図8では、鏡面放射検出器34で感知したとき、(比較例17および18のように)カーボンブラックを顔料として含む黒色トナーへの間隙率の追加は、トナーカバレッジに対する信号感度を低減し、
図5からわかるように、カラートナーでの本発明の例4~6についての感度の増加とは対照的である。上記の議論での蒸発限定合体プロセスによって調製された固体および多孔質トナーサンプルは、大部分の量のカーボンブラックと、少ない量のPigment Blue 15:3を着色剤として含むことに留意されたい。後者は、カーボンブラックだけを使用した結果として得られるより茶色で暖かい色相よりも青く、冷たい中性である色相を与えるために加えられる。
【0079】
カラートナーとの本発明の感知例を、黒色トナーとの比較感知例と区別するトナー特性は、カーボンブラックを着色剤として使用することによる、黒色トナーによる赤外線光の吸光度である。黒色トナーは、シアン、マゼンタ、黄色、またはシアン、オレンジ、紫の混合などの適切なカラー顔料の組合せを使用して、黒色を得るように調製され得る。本発明によって得られる知識に基づいて、そのようなトナーは、赤外放射を使用する拡散放射検出器36によって適切に感知されること、および間隙率の追加と共に改良された感度およびロバスト性を示すことが予想される。そのようなトナーは、間隙率の追加により、鏡面反射された光検出器によって有用な形で感知され得ることも予想される。
【0080】
図3では、市販のカラートナーセットのシアン、マゼンタ、および黄色着色剤は、850から1050nmの波長の範囲内の著しいレベルの放射を吸収しないことがわかる。「赤外線」光の波長範囲は一般に、700nmから1000nm以上と言われる。したがって、トナーカバレッジ感知での有用性を見出し得るその範囲の部分は、少なくとも850nmから1050nmである。この研究において使用されるトナーカバレッジセンサ31は930nmにおいて動作し、従来技術において先に議論したセンサも900nm台の中央において動作する。本開示では、最も有用なカラートナーは、著しい量の850nmより上の赤外線光を吸収しない(たとえば、5%未満)ものである。
【0081】
上述の本発明の感知例および比較感知例はすべて、感知すべきトナーイメージが不透明黒色反射中間転写素子上に配置される、Samsung電子写真プリンタの市販のトナーカバレッジセンサ31を用いた黒色反射サポート上のトナーパッチの反射感知に基づくものであった。他の構成では、トナーカバレッジが透明または半透明プロセス素子上で測定される。たとえば、Kodak NexPress SX3900では、プリンタが、光の可視波長および赤外線波長の両方に対して透明であるベルトである中間転写素子上で実施される。Kodak NexPress SX3900プリンタは、可視光感知を使用する。赤色、緑色、および青色波長放射器が中間転写ベルトの一方の側に配置され、対応する光電検出器が中間転写ベルトの反対側に配置される。したがって、このセンサは、前の例において説明したように反射光ではなく透過光を利用する。
【0082】
透過幾何形状におけるIR波長でのトナーカバレッジ感知を示すために、Perkin-Elmer UV-VISモデルLambda 35分光光度計を使用して、電子写真プリンタにフィットするように設計された透過センサの動作をシミュレートした。トナーパッチをクリアサポート上に一連のトナーカバレッジレベルにおいて静電被覆した。Table 4(表4)に記載されている固体トナーおよび多孔質トナーのパッチについて「全吸光度」を測定した。Perkin-Elmer分光光度計は、検出器の利用可能な幾何形状によって取り込まれ得る前方散乱光を収集する積分球検出器を備えた。システムは、任意選択で、測定から鏡面透過光(すなわち、「直接的に透過した光」)を含め、または除外するように構成され得る。好ましい構成では、鏡面透過光は除外される。930nmでの全吸光度が、
図9のグラフ110においてトナーカバレッジに対してプロットされる。多孔質トナーを用いる本発明の例8では、固体トナーを用いる比較例19と比較して、信号が約2.5倍高いことがわかる。したがって、透過において多孔質トナーを使用するトナーカバレッジ感知プロセスは、反射において多孔質トナーを使用するトナーカバレッジ感知プロセスと同様に利点があることがわかる。代替実施形態では、散乱放射を収集するのに積分球を使用する必要はないことに留意されたい。むしろ、特定の範囲の散乱角以内の透過散乱放射を収集するために拡散放射検出器36が配置され得る。
【0083】
記載の例では、トナーカバレッジ測定のために使用されるプロセス素子1は中間転写素子であった。他の実施形態では、プロセス素子1は、光導電素子(たとえば、光導電体ドラムまたはベルト)、または最終レシーバ媒体を含む他のタイプの媒体であり得る。
【符号の説明】
【0084】
1 プロセス素子
31 トナーカバレッジセンサ
32 放射器素子
34 鏡面放射検出器
36 拡散放射検出器
44 センサ出力
46 センサ出力
50 グラフ
60 グラフ
70 グラフ
80 グラフ
90 グラフ
100 グラフ
110 グラフ