(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング誘導放射線治療用の医療機器
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20221003BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 T
A61B5/055 390
A61B5/055 350
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017087797
(22)【出願日】2017-04-27
【審査請求日】2020-04-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 権利者の行為に起因して発明が公開、その後、権利者が特許出願をした場合である。
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】イェーキ プーサ
(72)【発明者】
【氏名】アンネマリア ハルコラ
(72)【発明者】
【氏名】テーム ニーミ
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/034364(WO,A1)
【文献】特表2004-511278(JP,A)
【文献】特開2004-344327(JP,A)
【文献】特表2017-529147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング誘導放射線治療用の医療機器であって、
イメージングゾーンから磁気共鳴データを取得する磁気共鳴イメージングシステムと、
前記イメージングゾーン内の標的ゾーンに向けられるX線又はガンマ線放射を放出する放射線源と、を有し、前記標的ゾーンに向けられる前記放射線源からの
放射線は、前記磁気共鳴イメージングシステムの放射線窓を通過し、
前記磁気共鳴イメージングシステムは、少なくとも1つの放射線透過性の電気伝送線路を有し、前記伝送線路は、電気信号を伝送するように構成され、前記放射線窓を通って延び、
前記電気伝送線路は、接地層に平行に延在する導体線路を有するマイクロストリップにより提供され、前記導体線路及び前記接地層は、誘電体基板によって互いに分離されている、医療機器。
【請求項2】
前記マイクロストリップは、前記接地層に平行に延在する複数の導体線路を有する多導体マイクロストリップであり、前記接地層は、前記誘電体基板によって前記複数の導体線路から分離された前記複数の導体線路用の共通接地層である、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記誘電体基板は少なくとも250kGyの総放射線耐性の物質からなる、請求項1又は2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記誘電体基板はポリイミドからなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記導体線路の
厚さは20μm未満である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項6】
前記導体線路の
厚さは10μm未満である、請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記誘電体基板の
厚さは110μm未満である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項8】
前記誘電体基板の
厚さは50μm未満である、請求項7に記載の医療機器。
【請求項9】
前記磁気共鳴イメージングシステムはアンテナアレイを有し、前記アンテナアレイは1又は複数の受信コイル素子を有し、前記放射線窓内の前記電気伝送線路の位置は、前記磁気共鳴イメージングシステムのアンテナアレイの1又は複数の受信コイル素子と前記電気伝送線路との最小結合の位置に位置される、請求項1に記載の医療機器。
【請求項10】
前記磁気共鳴イメージングシステムの複数の受信コイル素子は、矩形マトリックス構造を形成する複数の平行な行に配され、前記電気伝送線路は、前記矩形マトリックス構造の最も外側の列に含まれる受信コイル素子の共通の中心線に隣接して延びる、請求項9に記載の医療機器。
【請求項11】
前記最小結合の前記位置は、前記電気伝送線路と前記アンテナアレイの前記受信コイル素子との最小結合が測定される、複数の位置のうちの一つの位置として識別される、請求項9又は10に記載の医療機器。
【請求項12】
前記磁気共鳴イメージングシステムのアンテナアレイは複数の受信コイル素子を有し、前記マイクロストリップは、前記アンテナアレイの1の受信コイル素子に接続され、前記マイクロストリップは、前記放射線窓を通る前記アンテナアレイの前記受信コイル素子によって受信されたRF信号を伝送するように構成される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項13】
前記電気伝送線路及び前記アンテナアレイの少なくとも1つの前記受信コイル素子は、共通プリント回路板に実装され、前記共通プリント回路板の基板は、前記マイクロストリップの前記誘電体基板として使用される、請求項
9乃至12のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項14】
複数の前記電気伝送線路が、前記放射線窓を通って延び、前記複数の電気伝送線路は、複数のマイクロストリップによって提供される、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項15】
前記医療機器は、前記標的ゾーンに向けられる前記X線又はガンマ線放射が前記放射線窓を通過する位置が変化されるように、前記放射線窓に対して前記放射線源を移動するように構成される、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項16】
前記放射線源はX線を放出するLINACによって提供される、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項17】
前記放射線源はガンマ崩壊からガンマ線放射を放出する放射性核種を有する、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項18】
前記医療機器を制御するプロセッサと、
前記プロセッサによって実行されるマシン実行可能な命令を含むメモリと、
をさらに有し、前記マシン実行可能な命令の実行は、前記プロセッサに、
前記標的ゾーンを照射するための治療計画を受信するステップと、
前記磁気共鳴イメージングシステムを使用して前記磁気共鳴データを取得するステップと、
前記磁気共鳴データからの磁気共鳴画像を再構成するステップと、
前記磁気共鳴画像において前記標的ゾーンの位置を位置合わせするステップと、
前記標的ゾーンの前記位置及び前記治療計画により制御信号を生成するステップと、
前記制御信号を使用して前記標的ゾーンを照射するように前記放射線源を制御するステップと、を実行させる、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項19】
前記メモリは、パルスシーケンスデータ及びパラレル磁気共鳴イメージングプロトコルをさらに含み、前記パルスシーケンスデータは、前記パラレル磁気共鳴イメージングプロトコルにより前記プロセッサに前記磁気共鳴データを取得させるように構成され、
前記磁気共鳴画像は、前記パラレル磁気共鳴イメージングプロトコルにより前記
磁気共鳴データから再構成される、請求項
18に記載の医療機器。
【請求項20】
前記メモリは、前記磁気共鳴イメージングシステムのアンテナアレイの複数の受信コイル素子用に、1組のコイル感度をさらに含み、前記パラレル磁気共鳴イメージングプロトコルは、SENSEプロトコルであり、前記磁気共鳴画像は、前記一組のコイル感度を使用して前記磁気共鳴データから再構成される、請求項19に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療用の医療機器に関し、特に医療機器において使用される伝送線路に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法又は放射線治療は、癌治療の一種であり、この目的は、放射線源から電離、高エネルギー放射線法を用いて悪性細胞を死滅させることである。磁気共鳴画像法(MRI)は、人体の解剖学的構造のイメージングを可能にする医用画像技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
MRI誘導放射線治療は、放射線の治療の供給を改善するためにMRI画像を用いることを意味する。放射線源との共存のため、MRIシステムの構成要素は、電離、高エネルギー放射線の影響に耐えることができ、同時に、それぞれの放射線は可能な限り小さな減衰を生じるべきである。特に、いわゆる放射線窓、すなわち線源からの放射線が標的、すなわち悪性細胞に到達するために通過するMRIシステムの領域には、放射線の影響に耐えるとともに減衰をほとんど起こさないことが可能であるMRIシステムの構成要素が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
独立請求項の主題によって記載されているように、医療機器の様々な実施形態が提供される。
【0005】
一態様では、本発明は磁気共鳴イメージング誘導放射線治療用の医療機器に関する。医療機器は、イメージングゾーンから磁気共鳴データを取得する磁気共鳴イメージングシステムを備える。医療機器は、イメージングゾーン内の標的ゾーンに向けられたX線又はガンマ線放射を放射するための放射線源をさらに備える。標的ゾーンに向けられた放射線源からの放射線は、磁気共鳴イメージングシステムの放射線窓を通過する。
【0006】
磁気共鳴イメージングシステムは、少なくとも1つの放射線透過性の電気伝送線路を備える。電気伝送線路は、電気信号を伝送するように構成され、放射線窓を通って延びる。電気伝送線路は、接地層に平行に延在する導体線路を有するマイクロストリップにより提供される。導体線路及び接地層は、誘電体基板によって互いに分離される。
【0007】
別の態様では、マイクロストリップは多導体マイクロストリップであり、接地層に平行に延在する複数の導体線路を有する。接地層は、誘電体基板によって導体線路から分離された導体線路用の共通接地層である。
【0008】
別の態様では、放射線窓内の伝送線路の位置は、磁気共鳴イメージングシステムの1又は複数の受信コイル素子と伝送線路との結合が最小である位置に配置される。
【0009】
別の態様では、マイクロストリップは、磁気共鳴イメージングシステムの複数の受信コイル素子を有するアンテナアレイのコイル素子に接続され、マイクロストリップは、アンテナアレイの受信コイル素子によって受信されたRF信号を放射線窓を通って送信するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】磁気共鳴イメージング誘導放射線治療用の例示的な医療機器を示す概略図。
【
図2】放射線窓における第1の例示的なフェイズドアレイコイルを示す概略図。
【
図3】放射線窓における第2の例示的なフェイズドアレイコイルを示す概略図。
【
図4A】例示的なマイクロストリップを示す概略図。
【
図4B】例示的な多導体マイクロストリップを示す概略図。
【
図5】
図4Bの多導体マイクロストリップを具備する
図3のフェイズドアレイコイルの概略図。
【
図6A】第3の例示的なフェイズドアレイコイルの概略図を示す。
【
図6B】
図6Aの例示的なフェイズドアレイコイルに対するマイクロストリップの位置と結合と依存関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、図面において類似の番号の要素は、類似の要素であり、又は同等の機能を実行する。前述してきた要素は、機能が同等である場合には必ずしも後の図において説明されない。
【0012】
様々な構造、システム及びデバイスが説明のみの目的で、かつ当業者に周知の詳細とともに本発明を不明瞭にしないように、概略的に図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、開示された主題の例示的な実施例を記載し説明するために含まれる。
【0013】
放射線治療は、周囲の健康な器官への害を最小にしつつ、悪性細胞を死滅させることを目的とする。腫瘍を死滅するために必要な総線量は、通常、約20Gyから約80Gyであり、一般に複数の治療セッションに分けられる。
【0014】
放射線源を放射線治療に使用する上で考慮すべき2つの主要な欠点がある。健康組織に対する放射線の影響と、腫瘍の位置及び形状に関する不確実性である。これらの欠点は、治療の最大線量を制限する限定を設ける。
【0015】
腫瘍を取り囲む健康細胞の放射線への曝露は、ビームの形状を修正することによって及び異なる角度から腫瘍に照射することによって、制限され得る。単一のセッション中に、さらに約2Gyの線量のみが適用され得る。このようなやり方で、健康細胞は次の治療セッション前に放射線から回復する時間を有する。
【0016】
これらの技術を使用可能にするため、腫瘍の形状及び位置についての正確な情報(知識)が必要とされる。腫瘍を取り囲む健康組織と同様に、治療すべき腫瘍を含む解剖学的構造をイメージングするために、MRIが使用され得る。上述の制限の影響は、例えばMRIに基づいて画像誘導放射線治療を使用することで減少及び/又は最小化され得る。MR-RTシステムは、放射線治療のための外部の放射線源と組み合された磁気共鳴イメージングシステムを意味する。
【0017】
磁気共鳴イメージングは医用イメージング技術であり、これはまた、診断において、及び癌などの異なる疾患の治療の一部としての両方に使用され得る。疾患の治療に関しては、MRIは、治療のモニタリング及び誘導に使用され得る。MRI画像を取得するために、患者は強力な静磁場(B0)内に配置される。次に高周波(RF)パルスが患者に印加される。RFパルスにより、体は、これに応答して、RF信号、いわゆる核磁気共鳴(NMR)信号を発する。このNMR信号は、受信コイルにより受信され、取得されたMRIデータを用いて画像を再構成するプロセッサに伝送される。
【0018】
MRIシステムのイメージングゾーンにプロトンを含む被検体に静磁場を印加することにより、ラーモア周波数を有する外部磁場の周りにプロトンの歳差運動をもたらす。ラーモア周波数は、f0=(γ/2π)B0であり、γは磁気回転比であり、B0は外部磁場の強さである。水素原子核は、γ=267.522・1061/Tsである。したがって、例えばB0=1.5Tの場合は、ラーモア周波数はf0≒63.87MHzである。
【0019】
最初に、外部磁場B0の周りで歳差運動を行っているプロトンは、位相がずれており正味の成分を与えない。例えば、103ワットのオーダーの強さの場合、ラーモア周波数のRFパルスが、プロトンに印加され、プロトンは互いに位相を合わせて歳差運動をし始める。RFパルスが停止すると、プロトンは、過剰エネルギーを放出し、初期状態に戻る。放出された信号はNMR信号であり、受信コイルによって受信される。信号の大きさは、例えば10-12ワットのオーダーであり、指数関数的に減衰する。
【0020】
MRIは、コンピュータトモグラフィイメージングのような他の医用イメージング技術に比べ優れた軟組織コントラストを提供し得る。MRI誘導放射線治療は、放射線治療の供給を改善するためにMRI画像を用いることを意味する。線量送達計画において誘導としてMRI画像を使用することで治療の正確性を増す可能性があり、場合によっては治療結果を改善する。診断された癌の数は増加し続ける一方、より効率的な放射線の治療の必要性が高まっている。従来の放射線療法に比べてMRI誘導治療の増大された正確さは、より高い放射線量の使用を可能にし、これは、必要とされる治療セッションを減少させる。MRI誘導放射線治療のために、MRIシステム及び高エネルギー放射線を生成するために使用され得る線形加速器(LINAC)のような放射線源を統合した医療機器が使用される。例えば60CO放射性核種を使用する代替の放射線源が提供されることもできる。MRI誘導放射線治療のためのこのような医療機器は、癌患者に対して正確な放射線療法治療を行うために使用され得る。
【0021】
放射線源からの放射線がMRIシステムを通過する領域、特に受信コイルを通過する領域は、放射線窓又は時にグリーンゾーンと呼ばれている。
【0022】
通常、同軸ケーブルは、周囲の環境から良好に分離できるため、放射線治療用の医療機器に使用される。しかしながら、同軸ケーブルは2つの理由から不都合がある。比較的大きな直径を有するこれらのケーブルの金属量が放射線を減衰させることと、ケーブルの丸い形状によって放射線が分散することである。
【0023】
実施形態は、マイクロストリップ又は多導体マイクロストリップによって提供される伝送線路を使用して放射線窓を通って電気信号を伝送することを可能にする有益な効果を有し得る。多導体マイクロストリップは、同一の伝送線路を介して多数の電気信号を伝送することを可能にする。マイクロストリップは、放射線耐性及び放射線透過性のために放射線源と共存しうる。すなわち、マイクロストリップを通過する放射線の減衰が小さい。透過性は、放射線が物質(少なくとも一部)を通過することを可能にする物理的特性を意味する。実施形態によるとマイクロストリップ及び/又はそれらの構成要素は矩形断面を有し、放射線の分散を低減し得る。したがって、放射線窓内のマイクロストリップの形態の伝送線路は、依然として放射線源からの放射線ビームを通過させることが可能であり得る。伝送線路は、例えば63.87MHzのRF信号のようなRF信号を、受信コイルの放射線窓を通じて伝送するために使用され得る。換言すれば、マイクロストリップにより提供された伝送線路は、MRIシステムのラーモア周波数で動作し得る。放射線窓を通ってRF信号を伝送することができることによって、より大きな信号対雑音比を生じる、より小さなコイル素子を備える受信コイルを実装することが可能になる。マイクロストリップを備える物質は、MRIデータ取得に干渉しないように非磁性であるように選択され得る。
【0024】
マイクロストリップは、少なくとも1つの導体線路を含んでいてもよい。多導体マイクロストリップは、複数の導体線路を含むことができる。これは、複数の導体線路がコンパクトな配置で実装されることができるという有益な効果を有する。さらに、全ての導体線路は、例えばコイル素子のようなMRIシステムの他の構成要素との最小の結合を伴って同一の位置に配置されることができる。
【0025】
マイクロストリップは電気伝送線路の一種であり、プリント回路板(PCB)技術を使用して製造され、マイクロ波周波数の信号を伝えるために使用され得る。マイクロストリップは、導体線路とも称される1又は複数の導電性ストリップを有し、基板として知られている誘電体基板によって共通接地面から分離される。マイクロストリップは、全体的に、基板上にメタライゼーションのパターンとして構築され得る。
【0026】
信号対雑音比(SNR)は任意のMRIシステムの重要な特徴である。SNRは、信号強度を画像及びノイズレベルと比較する尺度である。信号は、NMR信号の強度に対する被撮像物体内の画素の平均輝度であり、ノイズはそれぞれの物体外部の画素の標準偏差である。
【0027】
当業者によって理解されるように、本実施形態の態様は、装置又はコンピュータプログラム製品として具体化され得る。したがって、本発明の態様は、全体的にハードウェアの実施形態、全体的にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)又は本明細書においては、通常全て、「回路」、「モジュール」又は「システム」と称される、ソフトウェアとハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態を成し得る。さらに、本発明の態様は、そのなかに組み込まれたコンピュータで実行可能なコードを有する、1又は複数のコンピュータ可読媒体に組み込まれた、コンピュータプログラム製品の形態を成し得る。
【0028】
1又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが使用され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体であり得る。本明細書で使用する「コンピュータ可読記憶媒体」は、コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行可能な命令を記憶し得る任意の有形の記憶媒体を包含する。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読非一時的記憶媒体と称され得る。コンピュータ可読記憶媒体は、有形のコンピュータ可読媒体とも称され得る。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体も、コンピューティングデバイスのプロセッサによってアクセスされ得るデータを記憶することが可能であり得る。コンピュータ可読記憶媒体の例は、フロッピーディスク、磁気ハードディスクドライブ、ソリッドステートハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク及びプロセッサのレジスタファイルを含むが、これらに限定されない。光ディスクの例としては、例えばCD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW又はDVD-Rディスクのような、コンパクトディスク(CD)及びデジタル汎用ディスク(DVD)を含む。「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、ネットワーク又は通信回線を介するコンピュータデバイスによってアクセスされることが可能な様々な種類の記録媒体も指す。例えば、データは、モデム、インターネット又はローカルエリアネットワークを介して検索され得る。コンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータで実行可能なコードは、限定されないが、ワイヤレス、有線、光ファイバケーブル、RF等又は上記の任意の好適な組み合わせを含む任意の適切な媒体を使用して伝送され得る。
【0029】
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンド又は搬送波の一部として、中にコンピュータで実行可能なコードを組み入れた伝搬データ信号を含み得る。このような伝搬信号は、限定されないが電磁気、光又はそれらの任意の好適な組み合わせを含む任意の様々な形態を取り得る。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置又はデバイスに関連して使用されるプログラムを通信、搬送又は移送可能な任意のコンピュータ可読媒体であり得る。
【0030】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータ記憶装置」又は「記憶装置」は、コンピュータ可読媒体のさらに別の例である。コンピュータ記憶装置は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。いくつかの実施形態において、コンピュータ記憶装置はまた、コンピュータメモリ又はその逆でもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合「プロセッサ」は、プログラム又は機械で実行可能な命令あるいはコンピュータで実行可能なコードを実行できる電子部品を包含する。「プロセッサ」を備えるコンピューティングデバイスへの言及は、2つ以上のプロセッサ又はプロセッシングコアを含有する可能性があると解釈されるべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサであってよい。プロセッサは、単一のコンピュータシステム内、又は多数のコンピュータシステム間に分散されるプロセッサの集合も意味し得る。「コンピューティングデバイス」という用語もまた、それぞれが単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを備えるコンピューティングデバイスの集合又はネットワークを意味し得ると解釈されるべきである。コンピュータで実行可能なコードは、同一のコンピューティングデバイス内にあるか、又は多数のコンピューティングデバイス間に等しく分散された複数のプロセッサによって実行され得る。
【0032】
コンピュータで実行可能なコードは、機械で実行可能な命令又はプロセッサに本発明の態様を実行させるプログラムを含み得る。本発明の態様のために操作を行うコンピュータで実行可能なコードは、Java、Smalltalk、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語及び「C」プログラミング言語または類似のプログラミング言語のような従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれ、機械で実行可能な命令にコンパイルされ得る。場合によっては、コンピュータで実行可能なコードは、高水準言語の形態又は事前にコンパイルされた形態であり、実行中に機械で実行可能な命令を生成するインタプリタとともに使用され得る。
【0033】
コンピュータで実行可能なコードは、完全にユーザのコンピュータ上で、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして部分的にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、及び部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータ又はサーバ上で実行し得る。後者の場合には、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを介してユーザのコンピュータに接続され、又はこの接続は、外部コンピュータに対して(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用するインターネットを介して)行われ得る。
【0034】
本発明の実施形態により、本発明の態様は、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のブロック図を参照して説明する。フローチャートの各ブロックもしくはブロックの一部、図表及び/又はブロック図は、適用可能な場合、コンピュータで実行可能なコードの形態のコンピュータプログラム命令によって実行されることができると理解されるであろう。互いに排他的でない場合、異なるフローチャート、図表及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせが組み合わせられ得るとさらに理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、機械を製造するために汎用コンピュータ、専用コンピュータ又はその他のプログラムが可能なデータ処理装置のプロセッサに提供されてよく、命令は、コンピュータのプロセッサ又はその他のプログラムが可能なデータ処理装置を介して実行され、フローチャート及び/又はブロック図又はブロックに特定された機能/行動の実行するための手段を作ることを可能にする。
【0035】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フローチャート及び/又はブロック図又はブロックに指定された機能/動作を実行する命令を含む製造物品を製造するように、コンピュータ、その他のプログラム可能なデータ処理装置又はその他のデバイスに特定の手法を機能させることが可能なコンピュータ可読媒体にも記憶され得る。
【0036】
コンピュータ又はその他のプログラム可能な装置上で実行する命令がフローチャート及び/又はブロック図もしくはブロックに指定された機能/動作を実行するためのプロセスを提供するように、コンピュータプログラム命令もまた、コンピュータ、その他のプログラム可能なデータ処理装置又はその他のデバイスに搭載され、一連の動作のステップをコンピュータ、その他のプログラム可能な装置又はその他のデバイス上で実行し、コンピュータで実行されるプロセスを生成させる。
【0037】
本明細書で使用する場合「ユーザインタフェース」は、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムと対話できるインタフェースである。「ユーザインタフェース」もまた「ヒューマンインタフェースデバイス」と称され得る。ユーザインタフェースは情報又はデータをオペレータに提供し及び/又はオペレータから情報又はデータを受信し得る。ユーザインタフェースにより、オペレータからの入力をコンピュータで受信することができ、コンピュータからユーザに出力を提供し得る。換言すれば、ユーザインタフェースによりオペレータがコンピュータを制御又は操作することができ、このインタフェースによりコンピュータはオペレータの制御又は操作の影響を示すことが可能であり得る。ディスプレイ又はグラフィカルユーザインタフェース上のデータ又は情報の表示は、オペレータへの情報を提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックスタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ギアスティック、ステアリングホイール、ペダル、ワイヤードグローブ、ダンスパッド、遠隔操作及び加速度計を介するデータの受信は、オペレータからの情報又はデータの受信を可能にするユーザインタフェースコンポーネントの全ての例である。
【0038】
本明細書で使用する場合、「ハードウェアインタフェース」は、コンピュータシステムのプロセッサが外部のコンピューティングデバイス及び/又は装置と対話及び/又は制御するのを可能にするインタフェースを包含する。ハードウェアインタフェースにより、プロセッサが制御信号又は命令を外部のコンピューティングデバイス及び/又は装置に送信することを可能にし得る。ハードウェアインタフェースにより、プロセッサがデータを外部のコンピューティングデバイス及び/又は装置と交換することも可能にし得る。ハードウェアインタフェースの例には、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS-232ポート、IEEE-488ポート、ブルートゥース接続、無線ローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット接続、制御電圧インタフェース、MIDIインタフェース、アナログ入力インタフェース及びデジタル入力インタフェースを含むがこれらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用する場合、「ディスプレイ」又は「ディスプレイデバイス」は、画像又はデータを表示するために適合された出力デバイス又はユーザインタフェースを包含する。ディスプレイは、視覚的、聴覚的及び/又は触覚的データを出力し得る。ディスプレイは、コンピュータ用モニター、テレビ画面、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、ブラウン管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパ、ベクトル表示、フラットパネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、及びヘッドマウントディスプレイを含むがこれらに限定されない。
【0040】
実施形態によれば、誘電体基板は放射線耐性物質からなる。実施形態によれば、誘電体基板は少なくとも10kGyの総放射線耐性の物質からなる。実施形態によれば、誘電体基板は少なくとも250kGyの総放射線耐性の物質からなる。実施形態によれば、誘電体基板は少なくとも1kGyの総放射線耐性の物質からなる。実施形態によれば、誘電体基板は少なくとも10kGyの総放射線耐性の物質からなる。
【0041】
長期にわたる放射線耐性が、電離放射線に耐える物質の能力を記載するために使用される。例えばLINACのような放射線治療に使用される放射線源の高エネルギー電離放射線は、MR-RTコンポーネントにおける物質の機械的特性及び電気特性の劣化を起こし得る。コンポーネントの放射線耐性が高いほど、コンポーネントの予想寿命が長くなる。汎用的なMR-LINAC受信コイルに対する10年間の総線量は、例えば240kGyであると推測され得る。
【0042】
実施形態は、システムの不具合及び安全問題につながりうる累積的な生涯線量による使用される物質の劣化が回避されることができるという有益な効果を有し得る。したがって、システムの信頼性の向上を達成することができる。さらに、それぞれの構成要素の短期間の交換インターバル又は再配置インターバルが回避され得る。最後に、追加の遮蔽は必要とされない。遮蔽は、例えばウォルフラムプレートで実装され得る。しかしながら、重金属による遮蔽は、例えば構成要素が結果として構成要素の重量の増加になるため不利であり得る。さらに、重金属は放射線の減衰を増大する。MR-RTシステムの放射線窓を通る伝送線路の場合、再配置及び遮蔽は非現実的である。しかしながら、十分な放射線耐性を有する絶縁物質を選択することによって、伝送線路は放射線の影響に耐えるように構成され得る。
【0043】
実施形態によれば、誘電体基板はポリイミドからなる。ポリイミドの使用は、高放射線耐性を提供するという有益な効果を有し得る。したがって、ポリイミドは長期間の過酷な環境に耐え得る。ポリイミドは物理的又は電気的特性の何れにおいてもわずかな変化のみで又は変化せずに10 MGyまでの高エネルギー放射線法に耐えることができる。より薄い誘電体基板は放射線の減衰をより低くさせるが、伝送線路設計においては困難が生じ得る。厚さは例えば101.6μmとなるように選択され得る。導体物質は、優れた伝導性の理由で銅が選択された。
【0044】
実施形態によれば、導体線路の厚さが最小化される。実施形態によれば、導体線路の厚さは50μm未満である。実施形態によれば、導体線路の厚さは20μm未満である。実施形態によれば、導体線路の厚さは10μm未満である。
【0045】
実施形態によれば、接地層の厚さが最小化される。実施形態によれば、誘電体基板の厚さが最小化される。実施形態によれば、誘電体基板の厚さは110μm未満である。実施形態によれば、誘電体基板の厚さは50μm未満である。
【0046】
患者に到達するために、放射線はMRI RTシステムの放射線窓を通って進まなければならない。放射線源と患者との間の放射線窓に配置された全てのシステム部品は、放射線に対して減衰を生じさせる。この減衰は、放射線窓内の構成要素の設計によって最小化されるべきである。さらに、減衰は放射線窓において可能な限り均一であるべきであり、例えば腫瘍のような治療すべき組織に放射線を一様に分布させることを確実にすべきである。
【0047】
MRIシステムは、ラーモア周波数にチューニングされる高感度のアンテナを提供する、少なくとも1つの受信コイルを備える。MRIシステムによって励起されるNMR信号の振動磁場は受信コイルに小電流を誘導する。このアナログ信号は、受信コイルの低ノイズ前置増幅器において増幅され、アナログ-デジタル変換器に送信され、アナログ-デジタル変換器は、アナログ信号をデジタル信号へと変換する。従来のMRI受信コイルは、通常、MRIシステムの担体上に横たわる患者の上部及び下部に、イメージングゾーンに可能な限り近いところに配置される。しかしながら、放射線治療において使用される受信コイルは、内部器官及び腫瘍の形状に影響を与え得るため、患者には触れてはならない。
【0048】
実施形態によれば、受信コイルは、複数のコイル素子を有するフェイズドアレイコイルによって提供される。フェイズドアレイコイルは、例えば4から32個のコイル素子を有し得る。実施形態は、以下の有益な効果を有し得る。フェイズドアレイコイルは、フェイズドアレイコイルに含まれる複数のコイル素子によって覆われる大領域から磁気共鳴データを取得する一方で、個々のコイル素子の小さなループにより高信号対雑音比を維持する。受信コイルの設計の大体の目安は、円形コイルループの最も高い可能なSNRが、円形ループの直径に等しい距離により達成されることである。
【0049】
隣接するコイル素子の結合は、ノイズを増加させる信号をコイル素子に導き得るが、隣接するコイル素子のループを幾何学的に重ね合わせることによって減少され得る。重ね合わせることによって、隣接するコイル素子は互いに減結合され得る。
【0050】
それぞれのコイル素子は、NMR信号によって誘導された電流を増幅する前置増幅器を有し得る。この増幅されたアナログ信号は、伝送線路を通ってアナログ-デジタル変換器へと伝送される。コイル素子と同様に、SNRの減少を防止するために伝送線路のコイル素子及び他の伝送線路に対する結合を最小限にすることが同様に望ましい。
【0051】
実施形態によれば、磁気共鳴イメージングシステムの複数の受信コイル素子は、矩形マトリックス構造を形成する複数の平行な行に配置される。伝送線路は、マトリックス構造の最も外側の列に含まれるコイル素子のコモン中心線に隣接して延びる。実施形態は、マトリックス構造で配列された複数の受信コイル素子が、マトリックス構造の行に沿って及び列に沿って平行なイメージングを可能にし得るという、有益な効果を有し得る。さらに、最も外側の列に含まれるコイル素子のコモン中心線に隣接して延びる伝送線路の位置は、伝送線路とマトリックス構造のコイル素子との間の結合を最小限にし得る。
【0052】
実施形態によれば、最小の結合の位置は、伝送線路とアンテナアレイのコイル素子との最小の結合が測定される複数の位置を含む組の中の1つの位置として識別される。伝送線路からの受信コイルループへの結合は、伝送線路の位置に強く依存し得る。伝送線路は、例えば放射線窓の上方に移動され、結合が、いくつかの異なる位置で測定され得る。したがって、最小の結合を呈する1又は複数の位置が識別され得る。
【0053】
実施形態によれば、伝送線路及びアンテナアレイの少なくとも1つの受信コイル素子は、共通プリント回路板に実装される。プリント回路板の基板は、マイクロストリップの誘電体基板として使用される。
【0054】
マイクロストリップラインは、プリント回路板(PCB)上に製造される。プリント回路板は、電子部品を機械的に支持するとともに、例えば非導電性基板上に積層された銅シートからエッチングされた導電トラック、パッド及びその他の特徴を使用して、電気的に接続する。キャパシタ、レジスタ又は能動デバイスのような構成要素は、例えばPCB上にはんだ付けされるか、基板に埋め込まれ得る。受信コイル素子のループもまた、プリント回路板上に製造され得る。同一のPCB上に伝送線路とループを実装することが有益であり得る。それによって、2つのPCBを互いに重ねて配置することが避けられ得る。共通PCBを1つのみ使用することによって、ループとマイクロストリップの組み合わせの厚さは、例えば2倍低減され得る。
【0055】
実施形態によれば、複数の電気伝送線路は、放射線窓を通って延び得る。複数の電気伝送線路は複数のマイクロストリップによって提供される。実施形態によれば、複数の多導体マイクロストリップが提供される。
【0056】
実施形態によれば、医療機器は、標的ゾーンに向けられるX線又はガンマ線放射が放射線窓を通過する位置が変化されるように、放射線窓に対して放射線源を移動するように構成される。実施形態は、腫瘍が複数の異なる角度から照射され得るという有益な効果を有する。放射線源の移動を制限せず、また放射線が適用される可能な角度を制限しないために、伝送線路を放射線窓内に配置することが必要であり得る。実施形態によれば、医療機器は回転軸を中心に放射線源を回転させるように構成される。実施形態によれば、医療機器は回転軸に沿って放射線源を移動させるように構成される。
【0057】
実施形態によれば、LINACのような放射線源が、MRIシステムの周りのリング上に配置される。LINACは、放射線が患者にさまざまな異なる位置から適用され得るようにリング上で回転され得る。勾配コイル及び超伝導コイルのようなMRIシステムの構成要素は、放射線源からの放射線が最小の減衰で通過する放射線窓を有し得る。
【0058】
実施形態によれば、放射線源はX線を放射するLINACによって提供される。線形粒子加速器(LINAC)は、粒子加速器の一種である。これは、線形ビームラインに沿って一連の振動電位を荷電粒子にかけることによって、荷電素粒子やイオンの運動エネルギーを増加させる。LINACは、様々な用途に使用されており、例えば、放射線治療において医療目的でX線を生成するために使用される。線形加速器は、特に癌患者に対する放射線治療において使用されている。放射線治療では、LINACによって生成された高エネルギーX線が、癌細胞を破壊するために使用される。放射線は、導波路において電子を加速させ、加速された電子を重金属の標的に衝突させることにより生成される。衝突は、制動放射過程において高エネルギー光子を生成する。これらの光子は、患者の腫瘍に向けられ、腫瘍の形状に適合するように成形される。実施形態によれば、放射線源は、ガンマ崩壊からのガンマ線放射を放出する放射性核種を有する。
【0059】
ここで、X線及びガンマ線はそれらの出所によって定義される。ガンマ線は原子核から発せられ、X線は、例えば制動放射のタイプの放射線を生成するために加速される電子によって発せられる。
【0060】
例えば、医療放射線治療用のガンマ線放射を放出する60Coが、放射線源として用いられることができる。いわゆるコバルト療法又はコバルト60療法は、癌のような状態を治療するために放射性同位体コバルト60からのガンマ線の医学的使用を意味する。放射線治療において使用されるように、コバルトユニットは、1.17MeVと1.33MeVの安定した二色性ビームを生成し、これは、1.25MeVの平均ビームエネルギを与える。コバルト60同位体は、5.3年の半減期を有し、そのためコバルト60は時々交換することが必要となり得る。
【0061】
実施形態によれば、医療機器は医療機器を制御するためのプロセッサを有する。医療機器はさらに、プロセッサによって実行するためにマシン実行可能な命令を含むメモリを有し、マシン実行可能な命令の実行は、プロセッサに、標的ゾーンを照射するために治療計画を受信するステップと、磁気共鳴イメージングシステムを使用して磁気共鳴データを取得するステップと、磁気共鳴データから磁気共鳴画像を再構成するステップと、磁気共鳴画像において標的ゾーンの位置を位置合わせするステップと、標的ゾーンの位置及び治療計画に従って制御信号を生成するステップと、制御信号を使用して標的ゾーンを照射するように放射線源を制御するステップと、を実行させる。
【0062】
実施形態によれば、メモリは、さらに、パルスシーケンスデータ及びパラレル磁気共鳴イメージングプロトコルを含む。パルスシーケンスデータは、パラレル磁気共鳴イメージングプロトコルに従ってプロセッサに磁気共鳴データを取得させるように構成される。磁気共鳴画像は、パラレル磁気共鳴イメージングプロトコルに従って磁気共鳴データから再構成される。パラレルイメージングは、SNRを増大させ、画像取得を加速させることが可能である。パラレルイメージングは、エイリアシングされた画像(SENSEタイプ再構成)又はアンダーサンプリングされたデータ(GRAPPAタイプ再構成)からアーチファクトのない画像を再構成する。臨床の場では、より高速の画像取得が、例えば呼吸停止時間を短縮するために使用され、それによって動きにより損なわれる検査又は治療が少なくなり得る。
【0063】
実施形態によれば、メモリは、アンテナアレイの複数の受信コイル素子について、さらに一組のコイル感度を含む。パラレル磁気共鳴イメージングプロトコルは、SENSEプロトコルであり、磁気共鳴画像は、一組のコイル感度を使用して磁気共鳴データから再構成される。
【0064】
実施形態は、例えば患者の頭から脚の方向において感度エンコーディング(SENSE)の使用を可能にするコイルの幾何学的形状が適用され得るという、有益な効果を有し得る。SENSEを使用することにより、イメージング時間が短縮され得る。取得時間は、1乃至データ取得に使用されるコイル素子の数の係数で低減され得る。
【0065】
減結合される独立した受信コイル素子の組が、パラレル磁気共鳴取得のために使用され、それによって単一コイルに比べて信号対雑音比(SNR)を増大させる。一般にマルチコイル構成のこれらの単一コイルは、より良い充填率を有する。すなわち、サンプルで充填されたコイル検出ボリュームの割合がより高い。しかし、これらのコイルは不均一な受信感度及び異なる空間的位置を有する。したがって、コイルによって検出可能な磁気共鳴(MR)信号は感度エンコーディングされ、通常のフーリエ信号符号化と平行して空間符号化を実行するためのMRIにおける別の手法及び代替的な手法を与える。これらのコイルの組を使用して、k空間、すなわちMRIデータ空間をアンダーサンプリングして、走査を加速し、アンダーサンプリング/展開アーチファクトのない磁気共鳴画像を再構成するための適切な画像再構成技術を適用し、個々のコイル画像を組み合わせる。複数のコイルにより生成された画像の画像合成をさらに実行するこのような画像再構成技術の一例は、感度エンコーディング又はSENSEの再構成技術である。SENSEはまた、アンダーサンプリングが実行されない場合にも適用されることができ、信号対雑音比の観点で最適な画像合成を提供することができる。
【0066】
SENSE再構成技術は、Pruessmannらのジャーナル記事"SENSE: sensitivity encoding for fast MRI," Magnetic Resonance in Medicine, 42:952-962 (1999)によって紹介された。
【0067】
SENSE再構成を説明する用語は良く知られており、多くのレビュー文献の主題となっており、磁気共鳴イメージングについての標準的な文章に登場する。例えば、Bernsteinらによる"Handbook of MRI Pulse Sequences" Elsevier Academic Press in 2004は、527~531頁にSENSE再構成技術のレビューを含む。
【0068】
図1は、医療機器100の概略断面図及び機能図を示す。医療機器100は、放射線治療システム102及び磁気共鳴イメージングシステム106を有するものとして示されている。放射線治療システム102は、リング機構108を有する。リング機構108は、放射線治療の線源110を支持する。放射線治療の線源110は例示的なものであり、例えば、LINACのX線源、X線2又は
60COガンマ線源のような放射性同位体ガンマ線源であり得る。放射線治療の線源110に隣接しているのは、放射線治療の線源110によって生成された放射線ビーム114をコリメートするマルチリーフビームコリメータ112である。リング機構108もまた、放射線治療システム102の回転点117の周りで放射線治療の線源110及びビームコリメータ112を回転させるなどの移動に適合される。回転軸116は、回転点117を通る。
【0069】
磁気共鳴イメージングシステム106は、主磁石122を有するものとして示される。リング機構108は、リング形状に形成され、主磁石122を取り囲んでいる。
図1に示されている主磁石122は、円筒タイプの超伝導磁石である。しかしながら、その他の磁石もまた本発明の実施形態に適用可能である。主磁石122は、超冷却されるクライオスタット124を有している。クライオスタット124の内部には、超伝導コイル126の集合体がある。更に補償コイル128もあり、補償コイルの電流は、超伝導コイル126の電流の方向と逆である。これは主磁石122を取り巻く又は取り囲む低磁場ゾーン130を作る。円筒タイプの超伝導磁石122は、対称軸132を有するように示されている。
【0070】
磁石のボア内には、主磁石122のイメージングゾーン138内の物体を空間符号化するために磁気共鳴データの取得に関して使用される磁場勾配コイル134がある。磁場勾配コイル134は、磁場勾配コイル電源136に接続される。磁場勾配コイル134は例示的なものを意図している。概して、磁場勾配コイルは、3つの直交空間方向における空間符号化のための3つの別々のコイルセットを含有する。イメージングゾーン138は主磁石122の中心に配置される。
【0071】
イメージングゾーン138に隣接しているのは、イメージングゾーン138内の磁気スピンの方向を操作し及びイメージングゾーン138内のスピンからの無線送信も受信する無線周波数(RF)コイル140である。無線周波数コイル140は、無線周波数トランシーバ142に接続されている。無線周波数コイル140及び無線周波数トランシーバ142は、別の伝送コイル及び受信コイル並びに別の伝送器及び受信器によって置き換えられ得る。無線周波数コイル140及び無線周波数トランシーバ142は単に例示的なものであると理解されている。
【0072】
実施形態によれば、無線周波数コイル140は、RF信号を受信するためのフェイズドアレイコイルを有し得る。放射線ビーム114は、磁気共鳴イメージングシステム106を通過する。特に放射線ビーム114は無線周波数コイル140を通過する。放射線ビーム114が通過する無線周波数コイル140の領域は、放射線窓141によって規定され得る。放射線窓141を通って磁気共鳴イメージングシステム106の少なくとも1つの伝送線路が延び、かかる伝送線路は、マイクロストリップにより提供される。実施形態によれば、伝送線路は、無線周波数コイル140又はそのコイル素子の1つによって受信されるRF信号を、放射線窓141を通って伝送する。
【0073】
主磁石122の中心内部には更に被検体144が配置される。被検体144は、標的ゾーン146を有し、患者支持体148上に置かれるものとして示されている。RFコイル140は、標的ゾーン146へRFパルスを伝送し得る。患者支持体148は機械的ポジショニングシステム150を有する。機械的ポジショニングシステム150は、主磁石122内の患者支持体148をポジショニングするために適合される。主磁石122の内部で利用可能な空間によって、機械的ポジショニングシステム150は、磁石軸132に対して垂直の方向を含む、複数の異なる方向に患者支持体148を移動し得る。主磁石122内にもっと利用可能な空間がある場合には、機械的ポジショニングシステム150はより多くの自由度を有し得る。例えば、機械的ポジショニングシステム150は、6自由度で患者支持体148を位置付けることができる。
【0074】
無線周波数トランシーバ142、磁場勾配コイル電源136、機械式アクチュエータ104及び機械的ポジショニングシステム150は、全てコンピュータシステム152のハードウェアインタフェース154に接続されているものとして示されている。コンピュータシステム152は、プロセッサ156を使用して医療機器100を制御する。
【0075】
図1に示されているコンピュータシステム152は例示的なものである。複数のプロセッサ及びコンピュータシステムが、この単一のコンピュータシステム152によって図示された機能を表すために使用され得る。コンピュータシステム152は、プロセッサ156に医療機器100の構成要素にメッセージを送信し及び構成要素からメッセージを受信することが可能なハードウェアインタフェース154を備える。プロセッサ156はまた、ディスプレイデバイス158、コンピュータ記憶装置160、及びコンピュータメモリ162に接続される。ディスプレイデバイス158は、タッチスクリーン式の感知ディスプレイデバイスを備え得る。ディスプレイデバイスは、取り外し可能なスタイラスペンを備え、ユーザがより効率的にディスプレイデバイス158を操作可能にし得る。
【0076】
放射線治療システム102は、ハードウェアインタフェース154に接続されたものとして示されていない。放射線治療システム102は、例えば、ハードウェアインタフェース154に接続され、機械的アクチュエータ104を介してコンピュータシステム152と通信し得る。
【0077】
図1に示した例では、放射線治療システムの回転軸116は、磁石軸132と同軸ではない。回転点117は、磁石軸132から中心が外れているものとして示されている。標的ゾーン146は、磁石軸132から中心が外れており、離れていることがわかる。放射線治療システム102は、放射線治療システムの回転点117が標的ゾーン146内にあるように、機械的アクチュエータ104によって移動されている。リング機構108は磁石122に対して移動されていることがわかる。
【0078】
放射線ビーム114は、回転点117を通って通過する。放射線ビーム114が放射線治療の線源110によって作られ及びリング機構108によって回転される場合、標的ゾーン146の中心に回転点117を配置することで、標的ゾーンが連続して治療されることが可能になる。
【0079】
コンピュータ記憶装置160は、コンピュータ記憶装置160に含まれるパルスシーケンスデータ168を使用して磁気共鳴イメージングシステム106によって取得された磁気共鳴データ170を含有するものとして示されている。コンピュータ記憶装置160は、磁気共鳴データ170から再構成された磁気共鳴画像172をさらに含有するものとして示されている。実施形態によれば、磁気共鳴画像172は、パラレル磁気共鳴イメージングプロトコル171に従って再構成される。パラレル磁気共鳴イメージングプロトコル171に従って磁気共鳴画像172を再構成する場合、コンピュータ記憶装置160によって含有されコイル感度の組169が使用され得る。コイル感度の組169は、無線周波数コイル140に含まれる複数の受信コイル素子のコイル感度を提供し得る。コンピュータ記憶装置160は、治療計画174をさらに含有するものとして示されている。例えば磁気共鳴画像172がパラレル磁気共鳴イメージングプロトコル171によって提供されるSENSEプロトコルにより再構成される場合、コイル感度の組169が使用される。コンピュータ記憶装置160は、放射線治療制御信号178をさらに含有するものとして示されている。
【0080】
コンピュータメモリ162は、プロセッサ156による処理のためのマシン実行可能な命令180、182、186、188及び194を含有する。コンピュータメモリ162は、医療機器制御モジュール180を含有するものとして示されている。医療機器制御モジュール180は、プロセッサ156が医療機器100の全体の機能を制御することを可能にするマシン実行可能な命令を含有する。コンピュータメモリ162は、放射線治療システム制御モジュール182をさらに含有するものとして示されている。放射線治療システム制御モジュール182は、プロセッサ156が放射線治療システム102の機能を制御することを可能にするマシン実行可能な命令を含有する。
【0081】
コンピュータメモリ162は、磁気共鳴画像制御モジュール186をさらに含有するものとして示されている。磁気共鳴画像制御モジュール186は、プロセッサ156が磁気共鳴イメージングシステム106の機能及び動作を制御することを可能にするマシン実行可能なコードを含有する。コンピュータメモリ162は、画像再構成モジュール188をさらに含有するものとして示されている。画像再構成モジュール188は、磁気共鳴データ170を画像172へと変換させるためにプロセッサ156によって使用されるマシン実行可能なコードを含有する。
【0082】
コンピュータ記憶装置162は、放射線治療制御信号生成モジュール194をさらに含有するものとして示されている。放射線治療制御信号生成モジュール194は、放射線治療制御信号178を生成するためにプロセッサ156が使用するコンピュータにより実行可能なコードを含有する。放射線治療制御信号178は、治療計画174とともに生成され得る。
【0083】
図2は、4つのコイル素子202を具備する第1の例示的なフェイズドアレイコイル200の放射線窓141の概略図を示す。フェイズドアレイコイル200は、例えば
図1の無線周波数コイル140によって構成される。放射線窓141の寸法は、例えば使用される最大矩形照射野の寸法によって決定される。左から右方向において、放射線窓141は、フェイズドアレイコイル200の全幅に及ぶ必要があり、なぜなら、放射線は、患者の横断面の全ての方向から適用され得るからである。放射線源は、例えば、頭-足方向における回転軸を中心に360°回転可能であり得る。フェイズドアレイコイル200の個々のコイル素子202によって受信されたRF信号を増幅するための前置増幅器206のような電気部品は、放射線から構成要素を保護し、放射線の減衰を避けるために、放射線窓141の外部に配置されている。
【0084】
図3は、
図2のコイル素子と比較して小さなコイル素子202を具備する第2のフェイズドアレイコイル210の例示的な幾何学的形状を示す。フェイズドアレイコイル210は、左-右方向及び頭-足方向の両方向に分散される複数のコイル素子202を有する。コイル素子202は2つの行220、230に配置される。SNRを改善するために、より小さなループを具備するより小さなコイル素子202が使用され得る。しかしながら、この種類のコイルの幾何学的形状は、コイル素子によって受信されるNMR信号が、放射線窓141を通って伝送されることを必要とする。
【0085】
放射線の減衰を最小にするために、例えばコイルのような物理的な物体である放射線窓141は、機械的に可能な限り薄く、及び/又は低密度の物質から作られるべきである。さらに、物理的な物体、特に前置増幅器202のような電子部品は、放射線窓141の外側に移動される。
【0086】
全てのコイル素子202が水平(左から右)方向にある
図2のようなコイル装置の場合、SENSEは、水平方向においてのみ使用されることができる。全てのコイル素子202が1行に配置されるこのようなコイル装置の場合、SENSEは、この行に沿って一方向においてのみ適用されることができる。例えば当該行に直交する他の方向において画像が取得される場合には、第1の行に平行なコイル素子の1又は複数の追加の行220、230が必要とされる。
図3のようなコイルの幾何学的形状の場合、SENSEが、頭-足方向において使用されることができ、これは、取得時間を最大で2倍低減する。複数の行を使用する場合、SENSEは、第1の方向に直交する第2の方向においても適用され得る。しかしながら、例えばLINACのような放射線治療とコンパチブルなMRIシステムにおいて頭-足方向にSENSEを使用するとき、両方の行220、230のコイル素子202の全てからのRF信号が医療機器のプロセッサによって評価されることが可能であるよう、増幅されたNMR信号は、放射線窓を通って伝送されねばならない。
【0087】
図4Aは、例示的なマイクロストリップ300の概略図を示す。マイクロストリップ300は、導体ストリップ302を有し、接地層304に平行に延在する。導体ストリップ302及び接地層304は、誘電体基板306によって互いに分離される。例えば、導体ストリップ302は厚さt及び幅Wを有する。例えば、誘電体基板306は厚さdを有し、例えば接地層304は厚さtを有する。実効誘電率ε
lは次のように計算し得る。
【0088】
場合によっては、W/d≧1のマイクロストリップラインのインピーダンスは、
として計算することができる。
【0089】
マイクロストリップラインのW及びdは、上記式が所望のインピーダンス、例えばZ0=50Ωを与えるように選択されるべきである。
【0090】
図4Bは、例示的な多導体マイクロストリップ310の概略図を示す。多導体マイクロストリップ310は
図4Aのマイクロストリップ300に対応するが、例えば2つの導体ストリップ302のような複数の導体ストリップ302を備え、これらの導体ストリップ302は、共通接地層304に平行に延在する。
【0091】
多導体マイクロストリップによって提供される例示的なPCB伝送線路の設計は、例えば以下の仕様で行われる:εr=3.4及び厚さd=101.6μmのポリイミドから作られる誘電体基板;銅は、例えば、導体物質として使用され、t=18μmの厚さ及びσ = 5.8・107S/mの導電率であり、1.5TのMRIシステムにおいてf0=63.87MHzのラーモア周波数、Z0=50Ω、伝送線路の長さl=35cm、最小導体幅=0.1mm、及び最小導体空間=0.1mm。
【0092】
図5は、
図4の2つの多導体マイクロストリップ300を具備する
図3の概略的なフェイズドアレイコイル210を示す。それぞれの多導体マイクロストリップ300は、2つの導体ストリップを有し、2つの伝送線路に対応する。したがって、それぞれの多導体マイクロストリップ300は、放射線窓141を通って2つのコイル素子202のRF信号を伝送する。左の多導体マイクロストリップ300は、例えば放射線窓141を通って第1及び第2のコイル素子202の増幅されたRF信号を伝送し、一方、右の多導体マイクロストリップ300は第3及び第4のコイル素子202の増幅されたRF信号を伝送する。
【0093】
放射線が患者に到達する前に、放射線はMR-RTシステムのMRIシステムを通って進まなければならない。放射線源と患者との間の放射線窓に配置されたMRIシステムの全ての構成要素は、放射線に対して減衰を引き起こす。減衰を最小にするMR-RT構成要素を使用することが有益である。さらに、減衰は放射線窓において可能な限り均一で、例えば腫瘍のような治療すべき組織に放射線を一様に分布させることを確実にすることが有益であり得る。
百分率での減衰αは、
であり、ここで、μ/ρは質量減衰係数であり、x=ρtは、物質の密度ρと厚さtの積によって与えられる質量厚である。
【0094】
物質の質量減衰係数は、放射線のエネルギーに依存する。混合物及び化合物の場合、質量減衰係数は、
により計算されることができ、ここで、w
iは、i番目の原子的構成要素の重量分率である。重量分率の正確な算定は、分子内の全てのプロトンと中性子の合計で1原子内の陽子と中性子の合計を割ることによって計算され得る。
【0095】
マイクロストリップラインは、共通接地層、誘電体基板、及び1又は複数の導体線路の3つの層から構成され得る。接地層及び伝導体は、例えば銅から製造され得る。実施形態によると、銅層の厚さ、すなわち接地層及び伝導体の厚さは、例えば18μmである。誘電体基板は、ポリイミド(PI)から製造されてよく、例えば101.6μmの厚さを有する。銅の密度は
である。2MeVでは、重量分率は、
である。18μmの厚さの場合、2MeVの銅の減衰は、
である。
【0096】
PI、すなわち(C
20H
10O
5N
2)の密度は、ρ
PI=1.42g/cm
3である。炭素の原子質量は12、水素は1、酸素は16及び窒素は14である。(C
20H
10O
5N
2)の合計原子質量は358である。したがって、炭素(w
c)、水素(W
H)、酸素(W
O)及び窒素(W
N)の個々の原子的構成要素の重量分率は、
である。
【0097】
ポリイミドの質量吸収係数は、
であり、文献から知られている2MeVにおける炭素、水素、酸素及び窒素の質量吸収係数を使用すると、
である。
【0098】
【0099】
18μmの銅及び101.6 μmのポリイミドの2層を有するマイクロストリップラインの全減衰は、
である。
【0100】
多導体マイクロストリップラインと同じPCB上にコイル素子のループを実装すること、すなわちPCBによってポリイミド層を提供することにより、追加の基板層が必要とされず、コイル素子によってもたらされる減衰に加えてマイクロストリップラインによってもたらされる減衰は、2つの銅層に起因する:
【0101】
図6Aは、信号チャネルCH1、CH2、CH3、CH4にそれぞれ割り当てられる4つのコイル素子202を有する概略的なフェイズドアレイコイル200を示す。
図6Aのフェイズドアレイコイル200は
図2のフェイズドアレイコイル200に対応する。フェイズドアレイコイル200の隣接するコイル素子202は、これらの隣接するコイル素子202間の結合を低減するために重ね合わせられる。0cmの位置は、フェイズドアレイコイル200の中心を表し、23.5cmの位置はチャネルCH1の外側を表し、23.5cmの位置はチャネルCH4の外側を表す。コイル素子202同士の結合を測定するための試験ケーブルが、頭-足方向にアラインされ得る。
【0102】
図6Bは、マイクロストリップラインの位置に依存する4つのチャネルへのマイクロストリップラインの結合を示す図である。
図6Bは、6mm幅の接地面を有するマイクロストリップラインの例示的な測定結果が示されている。伝送線路の最適位置は+18.25cm及び-18.25cmである。第1及び第2のコイル素子202からの受信信号は、第1のコイル素子202のループを通じて伝送されることが有用であり、第3及び第4のコイル素子202からの信号は、第4のコイル素子202のループを通じて伝送されることが有用である。2つの上部の伝導体を有するマイクロストリップラインを使用することは、2つの隣接するマイクロストリップラインにより、2つの信号を伝送することを単純化し得る。マイクロストリップラインは、例えば、12mmの接地面上で互いに6mm離れている2つの0.3mmの上部導体ストリップからなる。マイクロストリップラインは、
図4との関係で上記のその他のPCB伝送線路と同一の基板上に実装され、例えば35cmの長さであり得る。
【0103】
1つ以上の上記の本発明の実施形態は、組み合わされた実施形態が相互に排他的でない限り組み合わせられ得ると理解されている。
【0104】
本発明は、図面及び前述の記載において詳細に図示及び記載されているが、このような図示及び記載は例示的な又は代表的なもので、限定的ではないと考えるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。
【0105】
開示された実施形態に対するその他の変更は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、特許請求された発明を実行する上で当業者に理解、達成される。特許請求の範囲において、「comprising」という用語は、他の要素又はステップを排除せず、「a」又は「an」という不定冠詞は、複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他の単位が、請求項に記載のいくつかの機能を遂行する場合がある。特定の手法が互いに異なる従属請求項に記載されているということだけでは、これらの手法の組み合わせが有効に使用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、好適な媒体に記憶/配布され得る。光学的記憶媒体又は他のハードウェアと共に、またはその一部として供給された固体媒体のような、例えばインターネットやその他の有線又は無線通信システムを介して、その他の形式でも配布される。特許請求の範囲における如何なる参照符号も範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0106】
上述した特徴の例示的な組合せは、以下の通りである。
1.磁気共鳴イメージング誘導放射線治療用の医療機器(100)であって、
イメージングゾーン(138)から磁気共鳴データ(170)を取得するための磁気共鳴イメージングシステム(106)と、
イメージングゾーン(138)内の標的ゾーン(146)に方向付けられるX線又はガンマ線放射(114)を放出するための放射線源(110)と、を有し、標的ゾーン(146)に向けられた放射線源(110)からの放射線(114)は、磁気共鳴イメージングシステム(106)の放射線窓(141)を通過し、
磁気共鳴イメージングシステム(106)は、少なくとも1つの放射線透過性の電気伝送線路を有し、電気伝送線路は、電気信号を伝送するように構成され、放射線窓(141)を通って延び、
電気伝送線路は、接地層(304)に平行に延在する導体線路(302)を有するマイクロストリップ(300)により提供され、導体線路(302)及び接地層(304)は、誘電体基板(306)によって互いに分離される、医療機器。
【0107】
2.マイクロストリップ(300)は、接地層(304)に平行に延在する複数の導体線路(302)を有する多導体マイクロストリップであり、接地層は、誘電体基板(306)によって導体線路(302)から分離された導体線路(302)用の共通接地層である、項目1に記載の医療機器(100)。
【0108】
3.誘電体基板(306)は少なくとも250kGyの総放射線耐性の物質からなる、項目1及び2の何れかに記載の医療機器(100)。
【0109】
4.前記誘電体基板(306)はポリイミドからなる、項目1から3の何れかに記載の医療機器(100)。
【0110】
5.導体線路(302)の厚さは20μm未満である、項目1から4の何れかに記載の医療機器(100)。
【0111】
6.導体線路(302)の厚さは10μm未満である、項目5に記載の医療機器(100)。
【0112】
7.誘電体基板(306)の厚さは110μm未満である、項目1から6の何れかに記載の医療機器(100)。
【0113】
8.誘電体基板(306)の厚さは50μm未満である、項目7に記載の医療機器(100)。
【0114】
9.放射線窓(141)内の電気伝送線路の位置は、磁気共鳴イメージングシステム(106)のアンテナアレイ(200,210)の1又は複数の受信コイル素子(202)と電気伝送線路との結合が最小である位置に配置される、項目1から8の何れかに記載の医療機器(100)。
【0115】
10.磁気共鳴イメージングシステム(106)のアンテナアレイ(210)の複数の受信コイル素子(202)は、矩形マトリックス構造を形成する複数の平行な行(220、230)に配置され、電気伝送線路は、マトリックス構造の最も外側の列に含まれるコイル素子(202)の共通の中心線に隣接して延びる、項目9に記載の医療機器(100)。
【0116】
11.最小の結合の位置は、電気伝送線路とアンテナアレイ(200,210)のコイル素子(202)との最小の結合が測定される複数の位置を含む組の中の位置として識別される、項目9又は10の何れかに記載の医療機器(100)。
【0117】
12.マイクロストリップ(300)は、磁気共鳴イメージングシステム(106)の複数の受信コイル素子(202)を有するアンテナアレイ(200,210)のコイル素子(202)に接続され、マイクロストリップ(300)は、放射線窓(141)を通じてアンテナアレイ(200,210)の受信コイル素子(202)によって受信されたRF信号を伝送するように構成される、項目1から11の何れかに記載の医療機器(100)。
【0118】
13.伝送線路及びアンテナアレイ(200,210)の受信コイル素子(202)の少なくとも1つは共通プリント回路板上に実装され、プリント回路板の基板は、マイクロストリップ(300)の誘電体基板(306)として使用される、項目1から12の何れかに記載の医療機器(100)。
【0119】
14.複数の電気伝送線路は、放射線窓(141)を通って延び、複数の電気伝送線路は複数のマイクロストリップ(300)によって提供される、項目1から13の何れかに記載の医療機器(100)。
【0120】
15.医療機器(100)は、標的ゾーン(146)に向けられるX線又はガンマ線放射(114)が放射線窓(141)を通過する位置が変化されるように、放射線窓(141)に対して放射線源(110)を移動するように構成される、項目1から14の何れかに記載の医療機器(100)。
【0121】
16.放射線源(110)はX線を放射するLINACによって提供される、項目1から15の何れかに記載の医療機器(100)。
【0122】
17.放射線源(110)はガンマ崩壊からガンマ線放射(114)を放出する放射性核種を有する、項目1から15の何れかに記載の医療機器(100)。
【0123】
18.医療機器(100)を制御するプロセッサ(156)と、
【0124】
プロセッサ(156)によって実行されるマシン実行可能な命令を含むメモリ(162)と、をさらに備え、マシン実行可能な命令の実行は、プロセッサ(156)に、
標的ゾーン(146)を照射するための治療計画を受信するステップと、
磁気共鳴イメージングシステム(106)を使用して磁気共鳴データ(170)を取得するステップと、
磁気共鳴データ(170)から磁気共鳴画像(172)を再構成するステップと、
磁気共鳴画像(172)において標的ゾーン(146)の位置を位置合わせするステップと、
標的ゾーン(146)の位置及び治療計画により制御信号(178)を生成するステップと、
制御信号(178)を使用して標的ゾーン(146)を照射するように放射線源(110)を制御するステップと、を実行させる、項目1から17の何れかに記載の医療機器(100)。
【0125】
19.メモリ(162)は、パルスシーケンスデータ(168)及びパラレル磁気共鳴イメージングプロトコル(171)をさらに含み、パルスシーケンスデータ(168)は、パラレル磁気共鳴イメージングプロトコル(171)によりプロセッサ(156)に磁気共鳴データ(170)を取得させるように構成され、
磁気共鳴画像(172)は、パラレル磁気共鳴イメージングプロトコル(171)により磁気共鳴画像データ(170)から再構成される、項目1から18の何れかに記載の医療機器(100)。
【0126】
20.メモリ(162)は、アンテナアレイ(200,210)の複数の受信コイル素子(202)用に、コイル感度の組(169)をさらに含み、パラレル磁気共鳴イメージングプロトコル(171)は、SENSEプロトコルであり、磁気共鳴画像(172)は、コイル感度の組(169)を使用して磁気共鳴データ(170)から再構成される、項目19に記載の医療機器(100)。
【符号の説明】
【0127】
100 医療機器
102 放射線治療システム
104 機械式アクチュエータ
106 磁気共鳴イメージングシステム
108 リング機構
110 放射線治療線源
112 マルチリーフビームコリメータ
114 放射線ビーム
116 回転軸
117 回転ポイント
122 主磁石
124 クリオスタット
126 超電導コイル
128 補償コイル
130 低磁場領域
132 磁石軸
134 磁場勾配コイル
136 磁場勾配コイル電源
138 イメージングゾーン
140 無線周波数コイル
141 放射線窓
142 無線周波数トランシーバ
144 被検者
146 標的ゾーン
148 患者担体
150 機械的ポジショニングシステム
152 コンピュータシステム
154 ハードウェアインタフェース
156 プロセッサ
158 ユーザインタフェース
160 コンピュータ記憶装置
162 コンピュータメモリ
164 上部距離
166 底部距離
168 パルスシークエンス
169 コイル感度
170 磁気共鳴データ
171 パラレル磁気共鳴イメージングプロトコル
172 磁気共鳴画像
174 治療計画
178 放射線治療制御信号
180 医療機器制御モジュール
182 放射線治療システム制御モジュール
186 磁気共鳴画像制御モジュール
188 画像再構成モジュール
194 放射線治療制御信号生成モジュール
200 フェイズドアレイコイル
202 コイル素子
206 前置増幅器
210 フェイズドアレイコイル
220 コイル素子の行
230 コイル素子の行
300 マイクロストリップ
310 多導体マイクロストリップ
302 導体線路
304 接地層
306 誘電体基板