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特許7150932発光素子、照明装置、発光装置、表示装置及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】発光素子、照明装置、発光装置、表示装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20221003BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
H05B33/14 B
C09K11/06 690
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021072392
(22)【出願日】2021-04-22
(62)【分割の表示】P 2016099429の分割
【原出願日】2016-05-18
(65)【公開番号】P2021114624
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2015109756
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】細海 俊介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 辰義
(72)【発明者】
【氏名】石曽根 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209611(JP,A)
【文献】特開2014-192214(JP,A)
【文献】特開2014-208621(JP,A)
【文献】特開2014-044942(JP,A)
【文献】特開2013-219024(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037675(WO,A1)
【文献】特開2011-084531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0021556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 51/50 - 51/56
C09K 11/06
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極との間に設けられた発光層とを有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、を有し、
前記第2の有機化合物は、第1のカルバゾール骨格と、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素基と、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格と、を有し、
前記第1のカルバゾール骨格は前記芳香族炭化水素基と結合し、
前記芳香族炭化水素基は、前記ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格と結合し、
前記第1の有機化合物は、第2のカルバゾール骨格と、芳香族アミン骨格と、を有し、
前記第1の有機化合物と、前記第2の有機化合物とが励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体からの発光が得られる、発光素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記芳香族炭化水素基は、炭素数が6乃至60である、発光素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記芳香族炭化水素基は、ビフェニルジイル基を有する、発光素子。
【請求項4】
請求項において、
前記ビフェニルジイル基は、3,3’-ビフェニルジイル基である、発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光素子と、スイッチと、を有する照明装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光素子と、前記発光素子を制御する手段を備えた発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光素子を表示部に有し、前記発光素子を制御する手段を備えた表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光素子と、スイッチと、を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格と、カ
ルバゾール骨格と、を有する化合物に関する。また、電界を加えることにより発光が得ら
れる発光層を一対の電極間に挟んでなる発光素子、または該発光素子を有する表示装置、
電子機器、半導体装置、及び照明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様は、物、方法
、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュフ
ァクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、本発明の
一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、照明装置、それらの駆動方法、または、そ
れらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機化合物を発光物質として用いた電流励起の発光素子、いわゆる有機EL素子は、光源
や照明、ディスプレイなどの応用化が進んでいる。
【0004】
有機EL素子の励起子の生成割合は一重項励起状態1に対し、三重項励起状態3であるこ
とが知られている。そのため、一重項励起状態を発光に変換する蛍光発光の内部量子効率
の限界は25%であるが、三重項励起状態を発光に変換するりん光発光は、一重項励起状
態からの項間交差を介したエネルギー移動を考慮すると、内部量子効率100%が実現可
能である。このことから、効率良い発光を得るために、りん光発光材料を発光物質として
適用した有機EL素子(りん光発光素子ともいう)が選択されることが多い。
【0005】
しかし、三重項励起状態を効率良く発光に変換することが可能な物質は、その多くが有機
金属錯体であり、その中心金属は産出量の少ない希少金属であることが殆どである。この
ような希少金属は、高価であることはもちろんのこと、価格の変動が激しく、また、世界
情勢による供給の不安定さも付きまとう。そのため、りん光発光素子は、コストや安定供
給の面で不安がある。
【0006】
三重項励起状態を発光に変換するための他の手段として、遅延蛍光を利用する方法がある
。これは、三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差を利用したものであり、発
光は一重項励起状態から起こるためりん光ではなく、蛍光である。これは、一重項励起状
態と三重項励起状態とのエネルギー差が小さい場合に起こりやすく、実際に蛍光発光の理
論的限界を超える発光効率が得られたことも報告されている。
【0007】
また、一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差が小さい状態を、二種類の物質か
らなる励起錯体(エキサイプレックス)により得、効率の良い発光素子を実現したことも
報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】K.合志 他、「アプライド・フィジクス・レターズ(Applied Physics Letters)」,2012年, 101号,023306/1-023306/4頁.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記励起錯体を用いた発光素子の場合、用いる物質によっては効率の良い発光が
得られないことが多い。実際、有機EL素子の開発の歴史において、励起錯体は効率を落
とすものとして、その形成が起きないように設計することが通常であった。
【0010】
そこで、本発明の一態様では、発光効率の良好な発光素子を提供することを課題とする。
また、本発明の一態様では、希少金属を発光材料として使用せずに発光効率の良好な発光
素子を提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、励起錯体を利用した発光
素子において、効率の良好な発光素子を提供することを課題とする。また、本発明の一態
様では、励起錯体からの発光を発する発光素子において、効率の良好な発光素子を提供す
ることを課題とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上述の発光素子を用いることにより、発光効率の高い発光装置
、表示装置、電子機器、及び照明装置を各々提供することを課題とする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極及び第2の電極との間に設
けられた層とを有し、層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、を有し、第2の
有機化合物は、カルバゾール骨格と、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素基と、を
有し、第2の有機化合物は、さらにベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミ
ジン骨格を有し、芳香族炭化水素基は、カルバゾール骨格と結合され、芳香族炭化水素基
は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格と結合され、第1の有
機化合物と、第2の有機化合物とが励起錯体を形成することができる機能を有する発光素
子である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極及び第2の電極
との間に設けられた層とを有し、層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、を有
し、第2の有機化合物は、カルバゾール骨格と、置換または無置換の2価の芳香族炭化水
素基と、を有し、第2の有機化合物は、さらにベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格
またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格を有し、芳香族炭化水素基は、カルバ
ゾール骨格と結合され、芳香族炭化水素基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格
またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格と結合され、第1の有機化合物と、第
2の有機化合物とが励起錯体を形成することができる機能を有する発光素子である。
【0015】
なお、本発明の一態様において、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾ
チエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位が、芳香族炭化水素基に結合されている発光
素子としてもよい。また、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ
[3,2-d]ピリミジン骨格の4位が、芳香族炭化水素基に結合され、他の位置は無置
換である発光素子としてもよい。また、本発明の一態様において、カルバゾール骨格の9
位が、芳香族炭化水素基に結合されている発光素子としてもよい。また、芳香族炭化水素
基は、炭素数が6乃至60であることを特徴とする発光素子としてもよい。また、芳香族
炭化水素基は、炭素数が6乃至13であることを特徴とする発光素子としてもよい。また
、芳香族炭化水素基は、ビフェニルジイル基を有することを特徴とする発光素子としても
よい。また、ビフェニルジイル基は、3,3’-ビフェニルジイル基であることを特徴と
する発光素子としてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様において、第2の有機化合物は、構造式(100)で表される有機
化合物である発光素子としてもよい。
【0017】
【化1】
【0018】
また、本発明の一態様において、第2の有機化合物は、構造式(200)で表される有機
化合物である発光素子としてもよい。
【0019】
【化2】
【0020】
また、本発明の一態様において、第2の有機化合物は電子輸送性を有する物質であり、第
1の有機化合物は正孔輸送性を有する物質であることを特徴とする発光素子としてもよい
。また、第1の有機化合物は、芳香族アミンであることを特徴とする発光素子としてもよ
い。また、本発明の一態様において、第1の有機化合物および第2の有機化合物の三重項
励起エネルギー準位が、励起錯体の三重項励起エネルギー準位よりも高い発光素子として
もよい。また、発光素子における発光が、遅延蛍光成分を含むことを特徴とする発光素子
としてもよい。
【0021】
また、本発明の他の一態様は、本発明の一態様に係る発光素子と、スイッチと、を有する
照明装置である。また、本発明の一態様に係る発光素子と、発光素子を制御する手段を備
えた発光装置である。また、本発明の一態様に係る発光素子を表示部に有し、発光素子を
制御する手段を備えた表示装置である。また、本発明の一態様に係る発光素子と、スイッ
チと、を有する電子機器である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様では発光効率の良好な発光素子を提供することができる。また、本発明の
一態様では、希少金属を発光材料として使用せずに発光効率の良好な発光素子を提供する
ことができる。また、本発明の一態様では、励起錯体を利用した発光素子において、効率
の良好な発光素子を提供することができる。また、本発明の一態様では、励起錯体からの
発光を発する発光素子において、効率の良好な発光素子を提供することができる。
【0023】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は
、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面
、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】発光素子の概念図。
図2】アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
図3】アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
図4】アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
図5】パッシブマトリクス型発光装置の概念図。
図6】照明装置の概念図。
図7】電子機器を表す図。
図8】電子機器を表す図。
図9】照明装置を表す図。
図10】照明装置を表す図。
図11】車載表示装置及び照明装置を表す図。
図12】電子機器を表す図。
図13】発光素子1及び比較発光素子1の電流密度-輝度特性。
図14】発光素子1及び比較発光素子1の輝度-電流効率特性。
図15】発光素子1及び比較発光素子1の輝度-パワー効率特性。
図16】発光素子1及び比較発光素子1の輝度-外部量子効率特性。
図17】発光素子1及び比較発光素子1の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施
することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳
細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の
記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
なお、本明細書で説明する各図において、陽極、有機化合物を含む層、電荷発生層、陰極
などの大きさや厚さは、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって
、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさ
に限定されない。
【0027】
また、本明細書等において、第1、第2、第3などとして付される序数詞は、便宜上用い
るものであって工程の順番や上下の位置関係などを示すものではない。そのため、例えば
、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられ
る序数詞は一致しない場合がある。
【0028】
また、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部
分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また
、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さ
ない場合がある。
【0029】
また、本明細書において色とは、色相(単色光の波長に相当)、彩度(あざやかさ即ち白
みを帯びていない度合)および明度(明るさ即ち光の強弱)の三要素によって規定された
ものである。また、本明細書において色とは、上述の三要素のうちのいずれか一つの要素
のみ、または任意で選んだ2つの要素のみを示してもよい。また、本明細書において、2
つの光の色が異なるとは、上述の三要素のうちいずれか少なくとも一つが異なることをい
い、さらに、2つの光のスペクトルの形状若しくは各ピークの相対強度比の分布が異なる
ことをも含む。
【0030】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応
じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜
」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用
語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0031】
(実施の形態1)
三重項励起状態を発光に変換するためには、三重項励起状態からの直接発光であるりん光
を利用する方法と、三重項励起状態が逆項間交差を経て一重項励起状態となり、一重項励
起状態から発光する遅延蛍光を利用する方法などがある。
【0032】
りん光発光材料を用いた発光素子は、非常に高い効率で発光する構成の報告も見られ、三
重項励起状態を発光に利用することの優位性は実際に証明されている。しかし、りん光発
光材料は、中心金属がレアメタルであることが殆どであるため、量産化された際のコスト
や安定供給に不安がある。
【0033】
一方、遅延蛍光材料を用いた発光素子も、近年では一定の成果が報告されている。しかし
、比較的高い効率で遅延蛍光を発する物質は、一重項励起状態と三重項励起状態が近接す
るという、非常に稀な状態を有する物質である必要があり、そのため、特殊な分子構造を
有し、種類も限られているのが現実である。
【0034】
励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスともいう)は、2種類の分子から電荷
移動相互作用によって形成される、励起状態の錯体であり、その一重項励起状態と三重項
励起状態は近接することが報告されている。
【0035】
そのため、励起錯体は室温環境下においても遅延蛍光を発現しやすく、効率の良好な蛍光
発光素子を得られる可能性がある。さらに、励起錯体の発光は、当該錯体を形成する二つ
の物質のうち、浅い方のHOMO準位と深い方のLUMO準位との差に対応して発光波長
が変化する。このため、励起錯体を形成する物質の選択によって所望の波長の光を得るこ
とが比較的容易である。
【0036】
しかし、励起錯体からの発光を積極的に利用するための研究は未だ途上であり、どのよう
な物質を用いれば良好な発光効率が得られるといった指針は少なく、そして、何の指針も
なく素子を作製しても良好な発光はまず得られない。
【0037】
そこで、本実施の形態では、励起錯体を発光中心として用いた高効率で発光する発光素子
の構成について説明する。
【0038】
本実施の形態における発光素子は、一対の電極間に有機化合物を含む層(無機化合物を含
んでいても良い)を挟んで構成されており、当該有機化合物を含む層は、少なくとも発光
層を有する。発光層は、正孔輸送性を有する第1の有機化合物と、電子輸送性を有する第
2の有機化合物とを含む。
【0039】
第1の有機化合物と第2の有機化合物は、電流により励起されると、または、電流が流れ
ることにより、励起錯体を形成する組み合わせである。励起錯体を形成するためには、第
1の有機化合物のHOMO準位及びLUMO準位が第2の有機化合物のHOMO準位及び
LUMO準位よりも各々浅いことが好ましい。
【0040】
励起錯体の形成過程については、以下の2つの過程が考えられる。
【0041】
1つ目の形成過程は、正孔輸送性を有する第1の有機化合物と電子輸送性を有する第2の
有機化合物がそれぞれキャリアを持った状態(カチオン又はアニオン)から、励起錯体を
形成する過程である。
【0042】
2つ目の形成過程は、正孔輸送性を有する第1の有機化合物及び電子輸送性を有する第2
の有機化合物のうち、一方が一重項励起子を形成した後、基底状態の他方と相互作用して
励起錯体を形成する過程である。
【0043】
本実施の形態における励起錯体はそのどちらの過程で生成されたものであっても良い。
【0044】
ここで、電子輸送性を有する第2の有機化合物が、カルバゾール骨格と、ベンゾフロピリ
ミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格とが、置換または無置換の2価の芳香族炭
化水素基を介して結合された構造を有すると、励起錯体からの効率良い発光を得ることが
できる。特に、ベンゾフロピリミジン骨格を用いることで、発光効率のより良好な発光素
子を得ることができるため好ましい。なお、ベンゾフロピリミジン骨格は、ベンゾチエノ
ピリミジン骨格よりもわずかにLUMO準位が深くなるため、励起錯体の形成により好適
でもある。
【0045】
ベンゾフロピリミジン骨格としてはベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格が、ベンゾ
チエノピリミジン骨格としてはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格が好ましい。
ピリミジンの6位にベンゼン環が導入される骨格となり、電子輸送性が高まるためである
。また、これらの骨格は、LUMO準位がピリミジン骨格よりも深くなり、励起錯体の形
成に好適となる。
【0046】
また、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリ
ミジン骨格の4位が、芳香族炭化水素基に結合していることが好ましい。これにより、ピ
リミジンの4位および6位が置換される形となるため、電子輸送性が高くなる。また、L
UMO準位が深くなるため、励起錯体の形成により好適となる。
【0047】
さらに、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピ
リミジン骨格の4位が、芳香族炭化水素基に結合し、他の位置は無置換であることが好ま
しい。4位以外が無置換となることで、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格または
ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格が第1の有機化合物と相互作用を起こしやす
くなるため、励起錯体を形成しやすくなる。
【0048】
一方、カルバゾール骨格に関しては、カルバゾール骨格の9位が、芳香族炭化水素基に結
合していることが好ましい。これにより、電気化学的に安定な化合物を得ることができる
【0049】
ここで、上記カルバゾール骨格と、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミ
ジン骨格とが、2価の芳香族炭化水素基によって結合されていることで、第2の有機化合
物中での電荷移動励起状態よりも、第2の有機化合物と第1の有機化合物で構成される励
起錯体の形成の方が支配的になりやすい。換言すれば、第1の骨格と第2の骨格を物理的
に離すことにより、分子内でのHOMO-LUMO遷移ではなく、分子間でのHOMO-
LUMO遷移(例えば第1の有機化合物のHOMOから第2の有機化合物のLUMOへの
遷移)が支配的になりやすいとも言える。
【0050】
2価の芳香族炭化水素基は、炭素数が6乃至60であることが好ましい。また、2価の芳
香族炭化水素基は、炭素数6乃至13であると昇華性に優れるため、より好適である。2
価の芳香族炭化水素基により、カルバゾール骨格と、ベンゾフロピリミジン骨格またはベ
ンゾチエノピリミジン骨格とを離すことに加え、昇華性をも考慮すると、これら芳香族炭
化水素基としては、ビフェニルジイル基が好ましい。特に、三重項励起準位を高くする観
点から、3,3’-ビフェニルジイル基であるとより好ましい。また、2価の芳香族炭化
水素基は、カルバゾール骨格中の窒素原子に結合されていることが好ましい。なお、これ
らの基が置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1乃至6のアルキル基、及び
炭素数6乃至12のアリール基(フェニル基やビフェニルジイル基)が挙げられる。
【0051】
また、第2の有機化合物は、下記一般式(G1)を用いて表すこともできる。
【0052】
【化3】
【0053】
上記一般式(G1)において、R乃至Rは各々独立に水素、炭素数1乃至6のアルキ
ル基、置換もしくは無置換の炭素数5乃至7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換
の炭素数7乃至10の多環式飽和炭化水素、又は、置換もしくは無置換の炭素数6乃至1
3のアリール基のいずれか一を表す。また、αは置換又は無置換の芳香族炭化水素基を表
し、nは1乃至4の整数を表す。またCzはカルバゾール骨格を表す。また、Xは酸素原
子又は硫黄原子を表す。
【0054】
また、第2の有機化合物は、下記一般式(G2)を用いて表すこともできる。
【0055】
【化4】
【0056】
上記一般式(G2)において、R乃至R13は各々独立に水素、炭素数1乃至6のアル
キル基、置換もしくは無置換の炭素数5乃至7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置
換の炭素数7乃至10の多環式飽和炭化水素、又は、置換もしくは無置換の炭素数6乃至
13のアリール基のいずれか一を表す。また、αは置換又は無置換の芳香族炭化水素基を
表し、nは1乃至4の整数を表す。また、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0057】
なお、特に、下記構造式(100)で表される4-{3-[3’-(9H-カルバゾール
-9-イル)]ビフェニル-3-イル}ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4
mCzBPBfpm)を第2の有機化合物として用いた発光素子は非常に良好な発光効率
を示す。このことから、4mCzBPBfpmは励起錯体を用いた発光素子用の材料とし
て非常に有益な材料であると言うことができる。また、下記構造式(200)で表される
4-{3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニル-3-イル}ベンゾ
チエノ[3,2-d]ピリミジン(略称:4mCzBPBtpm)を第2の有機化合物と
して用いた発光素子についても同様である。
【0058】
【化5】
【0059】
【化6】
【0060】
なお、上記各置換基の説明で、置換又は無置換の、と述べた場合において、当該置換基が
置換基を有する場合、その置換基として、炭素数1乃至6のアルキル基、フェニル基及び
ビフェニル基を適用することができる。
【0061】
上述のような第2の有機化合物としては、具体的には下記構造式(100)乃至(112
)、及び、構造式(200)乃至(212)のようなものを挙げることができる。但し、
本実施の形態で用いることが可能な第2の有機化合物は以下の例示に限られない。
【0062】
【化7】
【0063】
【化8】
【0064】
【化9】
【0065】
【化10】
【0066】
なお、第1の有機化合物及び第2の有機化合物の三重項励起エネルギー(三重項励起準位
と一重項励起準位との差に当たるエネルギー)は、励起錯体の三重項励起エネルギーより
も大きいことが好ましい。第1の有機化合物と第2の有機化合物の三重項励起エネルギー
が励起錯体のそれよりも小さいと、励起錯体の三重項励起エネルギーが移動してしまい、
良好な効率の発光を得ることが困難となるからである。
【0067】
このような不都合を排除するために、第1の有機化合物及び第2の有機化合物には、ナフ
タレン骨格が含まれていないことが好ましい。
【0068】
なお、一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差が小さい励起錯体の三重項励起エ
ネルギーは、励起錯体が発する発光波長に相当するエネルギーとして見積もることができ
る。
【0069】
正孔輸送性を有する第1の有機化合物としては、例えば、ピロール環、チオフェン環、ま
たはフラン環を含む化合物、カルバゾール誘導体、あるいはインドール誘導体のようなπ
電子過剰型複素芳香族化合物や、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族アミン化合
物は励起錯体の生成効率を高くでき、好ましい。具体的には、2-[N-(9-フェニル
カルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略
称:PCASF)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルア
ミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、2,7-ビス[N-(4-ジフ
ェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略
称:DPA2SF)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N
’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N-(9,9-ジメ
チル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:
DPNF)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニ
ルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、
2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’
-ビフルオレン(略称:DPASF)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル
)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン
(略称:YGA2F)、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]
ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフ
ェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-
ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称
:DPAB)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-
N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェ
ニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル
-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAF
LP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメ
チル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル
)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、
3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェ
ニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニ
ル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3
,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェ
ニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチル
フェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4
,4’-ジアミン(略称:DNTPD)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフ
ェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzT
PN2)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニル
アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、4-フェニル-4’-
(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA
1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-
イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-
(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA
NB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール
-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、3-[N-(1-ナフチル)
-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(
略称:PCzPCN1)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-フルオレン-2-アミン(略称:PCB
AF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フ
ェニル]-スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、N-
(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フ
ェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフ
ェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェ
ニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)など
の芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略
称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6
-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)
、9-フェニル-9H-3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)カルバゾ
ール(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-
(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-
II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル
)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フ
ェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(
略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’
-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-I
I)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェ
ニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化
合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨
格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも
寄与するため好ましい。
【0070】
以上のような第1の有機化合物と第2の有機化合物が形成する励起錯体からは、非常に良
好な効率で発光を得ることができ、本実施の形態における発光素子は良好な効率で発光す
る発光素子とすることができる。取り出し効率の対策を施さない蛍光発光素子における外
部量子効率の理論的限界は、5%以上7%以下程度と一般に言われているが、それを超え
る外部量子効率を示す発光素子を提供することも本実施の形態の発光素子の構成を用いる
ことで容易に可能となる。
【0071】
また、上述のように、励起錯体の発光波長は、第1の有機化合物と第2の有機化合物のう
ち、浅い方のHOMO準位と深い方のLUMO準位との差に相当するため、適当な準位の
組み合わせを選択することによって所望の波長の発光素子を得ることも容易である。
【0072】
このように、本実施の形態の構成を用いることによって、三重項励起状態を発光に変換す
ることが可能な高効率の発光素子を、レアメタル供給に不安のある材料を用いずに簡便に
得ることが可能となる。また、このような特徴を有する発光素子を発光波長のバリエーシ
ョンに大きな制限なく提供することができる。
【0073】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態
において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定さ
れない。例えば、本発明の一態様として、カルバゾール骨格と、ベンゾフロピリジル基も
しくはベンゾチエノピリジル基とが、芳香族炭化水素基を介して結合している構造を有す
る場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、また
は、状況に応じて、本発明の一態様は、カルバゾール骨格と、ベンゾフロピリジル基もし
くはベンゾチエノピリジル基とが、芳香族炭化水素基を介して結合した構造以外の骨格を
有していてもよい。例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は
、カルバゾール骨格と、ベンゾフロピリジル基もしくはベンゾチエノピリジル基とが、芳
香族炭化水素基を介して結合している構造を有していなくてもよい。
【0074】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態では実施の形態1で説明した発光素子の詳細な構造の例について図1(A)
(B)を用いて以下に説明する。
【0076】
図1(A)において、発光素子は、第1の電極101と、第2の電極102と、第1の電
極101と第2の電極102との間に設けられた有機化合物を含む層103とから構成さ
れている。なお、本形態では第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は
陰極として機能するものとして、以下説明をする。つまり、第1の電極101の方が第2
の電極102よりも電位が高くなるように、第1の電極101と第2の電極102に電圧
を印加したときに、発光が得られる構成となっている。有機化合物を含む層103は少な
くとも発光層113を有していればよい。図1(A)に示した正孔注入層111、正孔輸
送層112、電子輸送層114及び電子注入層115は例示であり、設けても設けなくと
もよい。また、これら以外の機能を有する他の層が設けられていても良い。
【0077】
第1の電極101は陽極として機能する電極とし、仕事関数の大きい(具体的には4.0
eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成すること
が好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium
Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ
、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム
(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法に
より成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例とし
ては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1wt%以上20wt%以下
の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある
。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化
インジウムに対し酸化タングステンを0.5wt%以上5wt%以下、酸化亜鉛を0.1
wt%以上1wt%以下含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成するこ
ともできる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W
)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)
、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる
。グラフェンも用いることができる。なお、有機化合物を含む層103における第1の電
極101と接する層に、後述する複合材料を用いることで、仕事関数に関わらず、電極材
料を選択することができるようになる。
【0078】
有機化合物を含む層103の積層構造については、発光層113が実施の形態1に示した
ような構成となっていれば他は特に限定されない。図1(A)では例えば、正孔注入層、
正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層、電荷発生層等を適
宜組み合わせて構成することができる。本実施の形態では、有機化合物を含む層103は
、第1の電極101の上に順に積層した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層1
13、電子輸送層114、電子注入層115を有する構成について説明する。各層を構成
する材料について以下に具体的に示す。
【0079】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナジ
ウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることが
できる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPc)等
のフタロシアニン系の化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)
-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(
3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェ
ニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ
(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/
PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
【0080】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性を有する材料にアクセプター性物質を含有さ
せた複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性を有する材料にアクセプター性物
質を含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を
選ぶことができる。つまり、第1の電極101として仕事関数の大きい材料だけでなく、
仕事関数の小さい材料も用いることができるようになる。アクセプター性物質としては、
7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:
-TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げる
ことができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げる
ことができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、
酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いた
め好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱い
やすいため好ましい。
【0081】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する材料としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール
誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など
、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては
、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10-6cm/V
s以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正
孔輸送性を有する材料として用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0082】
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェ
ニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジ
フェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,
N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェ
ニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,
5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(
略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0083】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、PCzPCA
1、PCzPCA2、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-
3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げるこ
とができる。
【0084】
また、複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、他に、CBP、1,
3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9
-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:
CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テ
トラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0085】
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-
ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-t
ert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5
-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,
10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10
-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセ
ン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnt
h)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、
2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン
、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テ
トラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチ
ル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10
’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル
)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェ
ニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペ
リレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また
、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6
/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14以上42以下である芳香族炭化水素を用
いることがより好ましい。
【0086】
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい
。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジ
フェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジ
フェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0087】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニ
ルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルア
ミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略
称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(
フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもで
きる。
【0088】
正孔注入層を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光
素子を得ることが可能となる。
【0089】
正孔輸送層は、正孔輸送性を有する材料を含む層である。正孔輸送性を有する材料として
は、例えば、NPBやTPD、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)
トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチ
ルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、BS
PB、BPAFLPなどの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物
質は、正孔輸送性が高く、主に10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であ
る。また、上述の複合材料における正孔輸送性を有する材料として挙げた有機化合物も正
孔輸送層に用いることができる。また、PVKやPVTPA等の高分子化合物を用いるこ
ともできる。なお、正孔輸送性を有する材料を含む層は、単層のものだけでなく、上記物
質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0090】
発光層113は正孔輸送性を有する第1の有機化合物と電子輸送性を有する第2の有機化
合物とを含む層である。又は、さらに蛍光発光物質を含んでいても良い。各物質の材料、
構成などは実施の形態1に記載のとおりである。このような構成を有することで、本実施
の形態の発光素子は、レアメタルなどを用いない蛍光発光素子でありながら、非常に良好
な外部量子効率を示す。また、発光波長の調整も容易であるため、高い効率を維持しなが
ら所望の波長帯の発光を得やすいというメリットも有する。
【0091】
電子輸送層114は、電子輸送性を有する材料を含む層である。例えば、トリス(8-キ
ノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)
アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)
ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニ
ルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリ
ン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2-(2-ヒドロキシ
フェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2-(2-ヒ
ドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾ
ール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属
錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1
,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3-ビス[5-(p-tert-
ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD
-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニ
ル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BP
hen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた
物質は、電子輸送性が高く、主に10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質で
ある。なお、上述した電子輸送性を有する第2の有機化合物を電子輸送層114に用いて
も良い。
【0092】
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層
したものとしてもよい。
【0093】
また、電子輸送層114と発光層113との間に電子キャリアの移動を制御する層を設け
ても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を
少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバラン
スを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうこ
とにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0094】
また、電子輸送層114と第2の電極102との間に、第2の電極102に接して電子注
入層115を設けてもよい。電子注入層115としては、フッ化リチウム(LiF)、フ
ッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はア
ルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例えば、電子輸送性を有する
物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させた
ものを用いることができる。なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する物質か
らなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることにより、
第2の電極102からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。
【0095】
第2の電極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以
下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカ
リ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等
の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、
AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれ
らを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極102と電子輸送層との間に、
電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ
素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を第2の
電極102として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法やインク
ジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。
【0096】
また、有機化合物を含む層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の
方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート
法など用いても構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成して
も構わない。
【0097】
電極についても、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペースト
を用いて湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法を
用いて形成しても良い。
【0098】
以上のような構成を有する発光素子は、第1の電極101と第2の電極102との間に生
じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である発光層113において正
孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層113に発光領域が形成され
るような構成となっている。
【0099】
発光は、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方を通って外
部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方ま
たは両方は、透光性を有する電極で成る。第1の電極101のみが透光性を有する電極で
ある場合、発光は第1の電極101を通って取り出される。また、第2の電極102のみ
が透光性を有する電極である場合、発光は第2の電極102を通って取り出される。第1
の電極101および第2の電極102がいずれも透光性を有する電極である場合、発光は
第1の電極101および第2の電極102を通って、両方から取り出される。
【0100】
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられる層の構成は、上記のもの
には限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近接
することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極101および第2の電極1
02から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
【0101】
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における発光領
域に近い方に接するキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動を
抑制するため、そのバンドギャップが発光層に含まれる励起錯体のバンドギャップより大
きいバンドギャップを有する物質で構成することが好ましい。
【0102】
図1(B)には図1(A)と異なる構成を有する発光素子を示した。図1(B)を参照し
て、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子ともいう)の態様
を説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを
有する発光素子である。一つの発光ユニットは、図1(A)で示した有機化合物を含む層
103と同様な構成を有する。つまり、図1(A)で示した発光素子は、1つの発光ユニ
ットを有する発光素子であり、図1(B)で示した発光素子は、複数の発光ユニットを有
する発光素子ということができる。
【0103】
図1(B)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニ
ット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と
第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。第1の電極5
01と第2の電極502はそれぞれ図1(A)における第1の電極101と第2の電極1
02に相当し、図1(A)の説明で述べたものと同じものを適用することができる。また
、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構
成であってもよい。
【0104】
電荷発生層513には、有機化合物と金属酸化物の複合材料が含まれている。この有機化
合物と金属酸化物の複合材料は、図1(A)で示した正孔注入層に用いることができる複
合材料を用いることができる。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール
化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など
、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×1
-6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔
の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物と金属酸化
物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電
流駆動を実現することができる。なお、陽極側の界面が電荷発生層に接している発光ユニ
ットは、電荷発生層が正孔輸送層の役割も担うことができるため、正孔輸送層を設けなく
とも良い。
【0105】
なお、電荷発生層513は、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と他の材料によ
り構成される層を積層構造として形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複
合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合
物とを含む層とを積層して形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を
含む層と、透明導電膜とを積層して形成してもよい。
【0106】
いずれにしても、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512に挟まれる電荷
発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の
発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。
例えば、図1(B)において、第1の電極501の電位の方が第2の電極502の電位よ
りも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット51
1に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
【0107】
図1(B)では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の
発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。図1
B)で示した発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切
って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命
な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現すること
ができる。
【0108】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として
、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子に
おいて、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得る
ことで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。
【0109】
本実施の形態における発光素子は、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に作製すれ
ばよい。基板上に作製する順番としては、第1の電極101側から順に積層しても、第2
の電極102側から順に積層しても良い。発光装置は一基板上に一つの発光素子を形成し
たものでも良いが、複数の発光素子を形成しても良い。一基板上にこのような発光素子を
複数作製することで、素子分割された照明装置やパッシブマトリクス型の発光装置を作製
することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例えばトランジ
スタを形成し、トランジスタと電気的に接続された電極上に発光素子を作製してもよい。
これにより、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の
発光装置を作製できる。なお、トランジスタの構造は、トップゲートでもボトムゲートで
も良く、特に限定されない。スタガ型のトランジスタでもよいし逆スタガ型のトランジス
タでもよい。また、トランジスタに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非
晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。また、素子基板に形成され
る駆動用回路についても、N型およびP型のトランジスタからなるものでもよいし、若し
くはN型のトランジスタまたはP型のトランジスタのいずれか一方からのみなるものであ
ってもよい。
【0110】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0111】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を用いた
発光装置について説明する。
【0112】
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を用いて
作製された発光装置について図2を用いて説明する。なお、図2(A)は、発光装置を示
す上面図、図2(B)は図2(A)をA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この
発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース
線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでい
る。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側
は、空間607になっている。
【0113】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力
される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリ
ントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等
を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配
線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装
置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとす
る。
【0114】
次に、断面構造について図2(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部
及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と
、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0115】
なお、ソース線駆動回路601はnチャネル型トランジスタ623とpチャネル型トラン
ジスタ624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、TFTで
形成される種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。
また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずし
もその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0116】
また、画素部602はスイッチング用トランジスタ611と、電流制御用トランジスタ6
12とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形
成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここ
では、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0117】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有す
る曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アク
リルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm以上3μm以下)
を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型、又はポジ
型のいずれも使用することができる。
【0118】
第1の電極613上には、有機化合物を含む層616、および第2の電極617がそれぞ
れ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては
、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含
有したインジウム錫酸化物膜、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジ
ウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、
窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを
主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造と
すると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極とし
て機能させることができる。
【0119】
また、有機化合物を含む層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、ス
ピンコート法等の種々の方法によって形成される。有機化合物を含む層616は、実施の
形態1及び実施の形態2のいずれかで説明したような構成を含んでいる。また、有機化合
物を含む層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オ
リゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0120】
さらに、有機化合物を含む層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617
に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれら
の合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi等)を用いることが好ましい。なお、有
機化合物を含む層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電
極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2wt%以上20w
t%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化
亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0121】
なお、第1の電極613、有機化合物を含む層616、第2の電極617でもって、発光
素子が形成されている。当該発光素子は実施の形態1及び実施の形態2のいずれかの構成
を有する発光素子である。なお、画素部は複数の発光素子が形成されているが、本実施の
形態における発光装置では、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子
と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれていても良い。
【0122】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素
子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子
618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており
、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される
場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材625を設けると水分の影響によ
る劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0123】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また
、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、
封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber R
einforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエス
テルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0124】
以上のようにして、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を用いて
作製された発光装置を得ることができる。
【0125】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発
光素子を用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には
、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかで示した発光素子は発光効率の良好な発光素
子であり、消費電力の低減された発光装置とすることができる。また、実施の形態1及び
実施の形態2のいずれかで示した発光素子は、所望の波長帯の発光が得やすい、汎用性の
高い発光装置を提供することができる。
【0126】
図3には白色発光を呈する発光素子を形成し、着色層(カラーフィルタ)等を設けること
によってフルカラー化した発光装置の例を示す。図3(A)には基板1001、下地絶縁
膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の
層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆
動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、102
4B、隔壁1025、有機化合物を含む層1028、発光素子の第2の電極1029、封
止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0127】
また、図3(A)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色
の着色層1034B)は透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマト
リックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1
033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オー
バーコート層1036で覆われていてもよい。また、図3(A)においては、光が着色層
を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とが
あり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4
色の画素で映像を表現することができる。
【0128】
図3(B)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色
層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例
を示した。このように、着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられていて
も良い。
【0129】
また、以上に説明した発光装置では、トランジスタが形成されている基板1001側に光
を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発
光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッショ
ン型の発光装置の断面図を図4に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用
いることができる。TFTと発光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボ
トムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、電極1022を覆うよう第3
の層間絶縁膜1037を形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3
の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の公知の材料を用いて形
成することができる。
【0130】
発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽極
とするが、陰極であっても構わない。また、図4のようなトップエミッション型の発光装
置である場合、第1の電極を反射電極とすることが好ましい。有機化合物を含む層102
8の構成は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかにおいて有機化合物を含む層10
3として説明したような構成とし、且つ、白色の発光が得られるような素子構造とする。
【0131】
図4のようなトップエミッションの構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着
色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うこと
ができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層(ブラックマ
トリックス)1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層
1034G、青色の着色層1034B)や黒色層(ブラックマトリックス)1035はオ
ーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基
板を用いることとする。
【0132】
また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定され
ず、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0133】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発
光素子を用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には
、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかで示した発光素子は発光効率の良好な発光素
子であり、消費電力の低減された発光装置とすることができる。また、実施の形態1及び
実施の形態2のいずれかで示した発光素子は、所望の波長帯の発光が得やすい、汎用性の
高い発光装置を提供することができる。
【0134】
ここまでは、アクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、以下からはパッシ
ブマトリクス型の発光装置について説明する。図5には本発明を適用して作製したパッシ
ブマトリクス型の発光装置を示す。なお、図5(A)は、発光装置を示す斜視図、図5
B)は図5(A)をX-Yで切断した断面図である。図5において、基板951上には、
電極952と電極956との間には有機化合物を含む層955が設けられている。電極9
52の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が
設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方
の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向
の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層95
3と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と
接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因し
た発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置において
も、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかで示した発光効率の良好な発光素子であり
、消費電力の低減された発光装置とすることができる。また、実施の形態1及び実施の形
態2のいずれかで示した発光素子は、所望の波長帯の発光が得やすい、汎用性の高い発光
装置を提供することができる。
【0135】
以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な発光素子をそれぞれ
制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示装置として好適に利用できる発光
装置である。
【0136】
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0137】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を照明装
置として用いる例を図6を参照しながら説明する。図6(B)は照明装置の上面図、図6
(A)は図6(B)におけるe-f断面図である。
【0138】
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の
電極401が形成されている。第1の電極401は実施の形態2における第1の電極10
1に相当する。第1の電極401側から発光を取り出す場合、第1の電極401は透光性
を有する材料により形成する。
【0139】
第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
【0140】
第1の電極401上には有機化合物を含む層403が形成されている。有機化合物を含む
層403は実施の形態2における有機化合物を含む層103の構成、又は発光ユニット5
11、512及び電荷発生層513を合わせた構成などに相当する。なお、これらの構成
については当該記載を参照されたい。また、黒色層(ブラックマトリックス)402が形
成されている。
【0141】
有機化合物を含む層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は実
施の形態2における第2の電極102に相当する。発光を第1の電極401側から取り出
す場合、第2の電極404は反射率の高い材料によって形成される。第2の電極404は
パッド412と接続することによって、電圧が供給される。
【0142】
以上、第1の電極401、有機化合物を含む層403、及び第2の電極404を有する発
光素子を本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光素子は耐久性に優れ、且つ
、安価な発光素子であるため、本実施の形態における照明装置は発光効率が高い照明装置
とすることができる。
【0143】
以上の構成を有する発光素子が形成された基板400と、封止基板407をシール材40
5を用いて貼り合わせ、発光素子を封止する。空間408は減圧雰囲気であることが好ま
しい。
【0144】
また、パッド412と第1の電極401の一部をシール材405の外に伸張して設けるこ
とによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバータなどを搭載し
たICチップ420などを設けても良い。
【0145】
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記
載の発光素子を有することから、発光効率が高い照明装置とすることができる。
【0146】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子をその一
部に含む電子機器の例について説明する。実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記
載の発光素子は発光効率の良好な発光素子であるため、当該発光素子を含む本実施の形態
における電子機器は消費電力の小さい電子機器とすることができる。
【0147】
上記発光素子を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテ
レビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタル
ビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう
)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機など
が挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
【0148】
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体710
1に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体
7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可
能であり、表示部7103は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素
子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率の高い発光素子
とすることが可能である。そのため、当該発光素子で構成される表示部7103を有する
テレビジョン装置は消費電力の小さいテレビジョン装置とすることができる。
【0149】
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作
機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109
により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を
操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110
から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0150】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般
のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信
ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者
と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0151】
図7(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キ
ーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む
。なお、このコンピュータは、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかで説明したもの
と同様の発光素子をマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製され
る。図7(B1)のコンピュータは、図7(B2)のような形態であっても良い。図7
B2)のコンピュータは、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わ
りに第2の表示部7210が設けられている。第2の表示部7210はタッチパネル式と
なっており、第2の表示部7210に表示された入力用の表示を指や専用のペンで操作す
ることによって入力を行うことができる。また、第2の表示部7210は入力用表示だけ
でなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネル
であっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによって、収納や運搬をする
際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止することができる。なお、こ
のコンピュータは、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子をマトリ
クス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。そのため、当該発光素
子で構成される表示部7203を有するコンピュータは消費電力の小さいコンピュータと
することができる。
【0152】
図7(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成され
ており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には、実施の
形態1及び実施の形態2のいずれかで説明した発光素子をマトリクス状に配列して作製さ
れた表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている
。また、図7(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入
部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、
センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気
、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、
傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)
等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも
表示部7304および表示部7305の両方、または一方に実施の形態1及び実施の形態
2のいずれかに記載の発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部を用いていれ
ばよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図7(C)に示す携
帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表
示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお
図7(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有する
ことができる。上述のような表示部7304を有する携帯型遊技機は、表示部7304に
実施の形態1及び実施の形態2のいずれかで示した発光素子を用いていることから、消費
電力の小さい携帯型遊技機を提供することができる。
【0153】
図7(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機は、筐体7401に組み込ま
れた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ74
05、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機は、実施の形態1及び実施の
形態2のいずれかに記載の発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7402
を有している。そのため、消費電力の小さい携帯電話機を提供することができる。
【0154】
図7(D)に示す携帯電話機は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力す
ることができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作製
するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0155】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表
示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示
モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0156】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作製する場合は、表示部7402を文字の入力を
主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合
、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好
ましい。
【0157】
また、携帯電話機内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検
出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画
面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0158】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作
ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類に
よって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画の
データであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0159】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示
部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モード
から表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0160】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部74
02に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。ま
た、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光
源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0161】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1及び実施の形態2に示した構成を適宜組
み合わせて用いることができる。
【0162】
以上の様に実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を備えた発光装置
の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能
である。実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を用いることにより
、消費電力の小さい電子機器を得ることができる。
【0163】
図8は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子をバックライトに適
用した液晶表示装置の一例である。図8に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層9
02、バックライトユニット903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC
905と接続されている。また、バックライトユニット903には、実施の形態1及び実
施の形態2のいずれかに記載の発光素子が用いられおり、端子906により、電流が供給
されている。
【0164】
実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を液晶表示装置のバックライ
トに適用したことにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、実施の
形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を用いることで、面発光の照明装置
が作製でき、また大面積化も可能である。これにより、バックライトの大面積化が可能で
あり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、実施の形態1及び実施の形態2の
いずれかに記載の発光素子を適用した発光装置は従来と比較し厚みを小さくできるため、
表示装置の薄型化も可能となる。
【0165】
図9(A)は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を、照明装置
である電気スタンドに用いた例である。図9(A)に示す電気スタンドは、筐体2001
と、光源2002を有し、光源2002として、実施の形態4に記載の照明装置が用いら
れている。
【0166】
図10は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を、室内の照明装
置3001として用いた例である。実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発
光素子は消費電力の小さい発光装置であるため、消費電力の小さい照明装置とすることが
できる。また、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子は大面積化が
可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、実施の形態1及び
実施の形態2のいずれかに記載の発光素子は、薄型であるため、薄型化した照明装置とし
て用いることが可能となる。
【0167】
実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子は、自動車のフロントガラス
やダッシュボードにも搭載することができる。図11に実施の形態1及び実施の形態2の
いずれかに記載の発光素子を自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を
示す。表示領域5000乃至表示領域5005は実施の形態1及び実施の形態2のいずれ
かに記載の発光素子を用いて設けられた表示である。
【0168】
表示領域5000と表示領域5001は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態
1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を搭載した表示装置である。実施の形態
1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子は、第1の電極と第2の電極を透光性を
有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の
表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラス
に設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のた
めのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸
化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0169】
表示領域5002はピラー部分に設けられた実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに
記載の発光素子を搭載した表示装置である。表示領域5002には、車体に設けられた撮
像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができ
る。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示領域5003は車体によって遮
られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、
死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すこ
とによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0170】
表示領域5004や表示領域5005はナビゲーション情報、スピードメーターやタコメ
ーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供す
ることができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更す
ることができる。なお、これら情報は表示領域5000乃至表示領域5003にも設ける
ことができる。また、表示領域5000乃至表示領域5005は照明装置として用いるこ
とも可能である。
【0171】
実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子は消費電力の小さくすること
ができる。
【0172】
このため、表示領域5000乃至表示領域5005のような大きな画面を数多く設けても
、バッテリーに負荷をかけることが少なく、快適に使用することができることから実施の
形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光素子を用いた発光装置または照明装置は
、車載用の発光装置又は照明装置として好適に用いることができる。
【0173】
図12(A)及び図12(B)は2つ折り可能なタブレット型端末の一例である。図12
(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、
表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電
力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する
。なお、当該タブレット端末は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれかに記載の発光
素子を備えた発光装置を表示部9631a、表示部9631bの一方又は両方に用いるこ
とにより作製される。
【0174】
表示部9631aは、一部をタッチパネル領域9632aとすることができ、表示された
操作キー9637にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631
aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域が
タッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631
aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部963
1aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画
面として用いることができる。
【0175】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部
をタッチパネル領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表
示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表
示部9631bにキーボードボタンを表示することができる。
【0176】
また、タッチパネル領域9632aとタッチパネル領域9632bに対して同時にタッチ
入力することもできる。
【0177】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを
切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えス
イッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光
の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セン
サだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を
内蔵させてもよい。
【0178】
また、図12(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示し
ているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよい。また
、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示
パネルとしてもよい。
【0179】
図12(B)は、閉じた状態であり、本実施の形態におけるタブレット型端末では、筐体
9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDC
コンバータ9636を備える例を示す。なお、図12(B)では充放電制御回路9634
の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示
している。
【0180】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態に
することができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐
久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0181】
また、この他にも図12(A)及び図12(B)に示したタブレット型端末は、様々な情
報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻など
を表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入
力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有するこ
とができる。
【0182】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、
表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、
筐体9630の一面または二面に設けられていると効率的なバッテリー9635の充電を
行う構成とすることができるため好適である。
【0183】
また、図12(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図12(C
)にブロック図を示し説明する。図12(C)には、太陽電池9633、バッテリー96
35、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3、
表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636
、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3が、図12(B)に示す充放電制御回
路9634に対応する箇所となる。
【0184】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。
太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCD
Cコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太
陽電池9633で充電された電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバ
ータ9638で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、
表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッ
テリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0185】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、発電手段は特に限
定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手
段によってバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。無線(非接触)で電力
を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行
う構成としてもよく、発電手段を有さなくとも良い。
【0186】
また、上記表示部9631を具備していれば、図12に示した形状のタブレット型端末に
限定されない。
【0187】
図9(B)に別の照明装置の例を示す。図9(B)に示す卓上照明装置は、照明部950
1、支柱9503、支持台9505等を含む。照明部9501は、本発明の一態様の発光
素子を含む。可撓性を有する基板上に、本発明の一態様に係る発光素子を作製することで
、曲面を有する照明装置、またはフレキシブルに曲がる照明部を有する照明装置とするこ
とができる。このように、フレキシブルな発光装置を照明装置として用いることで、照明
装置のデザインの自由度が向上するのみでなく、例えば、自動車の天井、ダッシュボード
等の曲面を有する場所にも照明装置を設置することが可能となる。
【0188】
以上のように、本発明の一態様の発光素子を適用することで、照明装置は高い発光効率を
実現することができる。また、本発明の一態様を適用することで、信頼性の高い照明装置
を提供することができる。また、本発明の一態様を適用することで消費電力の低い照明装
置を作製することができる。
【0189】
上述のように、発光素子を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。発光素子の
適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0190】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができる。
【実施例1】
【0191】
≪参考例≫
本参考例では、実施の形態1で説明したベンゾフロピリミジン骨格を有する化合物である
4-{3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニル-3-イル}ベンゾ
フロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4mCzBPBfpm)(構造式(100))の
合成例を具体的に例示する。4mCzBPBfpmの構造式を以下に示す。
【0192】
【化11】
【0193】
<ステップ1;9-[3-(3-ブロモフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールの合
成>
まず、3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニルボロン酸16g(56mmol)
、3-ヨードブロモベンゼン19g(67mmol)、トリ(オルト-トリル)ホスフィ
ン0.68g(2.2mmol)、2M炭酸カリウム水溶液56mL、トルエン250m
L、エタノール30mLを1L三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混
合物に酢酸パラジウム0.13g(0.56mmol)を入れ、80℃で14時間加熱撹
拌した。得られた反応混合物の水層をトルエンで抽出し、得られた抽出溶液と有機層を合
わせて水、飽和食塩水で洗浄した。この有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、得
られた混合物を自然ろ過して、ろ液を得た。このろ液を濃縮して油状物を得た。得られた
油状物をリサイクル分取HPLC LC-SakuraNEXTにより精製した。得られ
たフラクションを濃縮し、トルエンとメタノールで洗浄して9-[3-(3-ブロモフェ
ニル)フェニル]-9H-カルバゾールを得た(白色固体13g、収率58%)。ステッ
プ1の合成スキームを下記(a-2)に示す。
【0194】
【化12】
【0195】
<ステップ2;3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニルボロン酸の
合成>
9-[3-(3-ブロモフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール13g(33mmo
l)を500mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を脱気、窒素置換した後、テトラヒド
ロフラン160mLを加え、-78℃で撹拌した。この混合溶媒に、n-ブチルリチウム
(1.65mol/Lヘキサン溶液)24mL(40mmol)を滴下し、-78℃で1
時間撹拌した。所定時間経過後、この混合溶液にホウ酸トリメチル4.7mL(43mm
ol)を加え、20℃に昇温しながら18時間撹拌した。所定時間経過後、反応溶液に1
mol/L塩酸100mLを加え、30分間室温で撹拌した。この混合物の水層を酢酸エ
チルで抽出し、得られた抽出溶液を飽和食塩水で洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウ
ムを加えて乾燥させ、得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を得た。この固
体をトルエンで洗浄して、3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニル
ボロン酸を得た(白色固体6.0g、収率51%)。ステップ2の合成スキームを下記(
b-2)に示す。
【0196】
【化13】
【0197】
<ステップ3:4-{3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニル-3
-イル}ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4mCzBPBfpm)の合成>
3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニルボロン酸3.0g(8.3
mmol)、4-クロロベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン1.7g(8.3mmol
)、2M炭酸カリウム水溶液8.3mL、トルエン40mL、エタノール4mLを200
mL三口フラスコに入れフラスコ内を窒素置換した。この混合物にビス(トリフェニルホ
スフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPhCl)68.3mg(
0.059mmol)を加え、80℃で6時間加熱撹拌した。得られた反応溶液の水層を
トルエンで抽出し、得られた抽出溶液と有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層
に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、得られた混合物を自然ろ過してろ液を得た。
このろ液を濃縮して得た固体を再度トルエンに溶解し、セライト(和光純薬工業株式会社
、カタログ番号:531-16855)、アルミナ、セライトを通してろ過した。得られ
たろ液を濃縮して得た固体を、トルエンにより再結晶して白色固体を得た(収量2.0g
、収率50%)。この白色固体2.0gを、トレインサブリメーション法により昇華精製
した。昇華精製条件は、圧力2.3Pa、アルゴンガスを流量10mL/minで流しな
がら、250℃で固体を加熱した。昇華精製後、目的物の白色固体を1.3g、回収率6
5%で得た。ステップ3の合成スキームを下記(c-2)に示す。
【0198】
【化14】
【0199】
なお、上記ステップ3で得られた白色固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分
析結果を下記に示す。測定結果から、目的物である4mCzBPBfpmが得られたこと
を確認した。
【0200】
H-NMR.δ(CDCl):7.32(m,2H),7.44(m,2H),7.
52-7.55(m,3H),7.63-7.64(m,1H),7.69-7.77(
m,4H),7.85-7.88(m,2H),7.97(t,1H),8.18(d,
2H),8.31(d,1H),8.65(m,1H),8.92(t,1H),9.2
7(s,1H).
【0201】
≪発光素子1及び比較発光素子1≫
次に、本発明の一態様の発光素子(発光素子1)及び比較発光素子(比較発光素子1)に
ついて説明する。なお、発光層113における第2の有機化合物として発光素子1は、4
mCzBPBfpm(構造式(100))を用いた。一方で、比較発光素子1においては
、4-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ベンゾフロ[
3,2-d]ピリミジン(略称:4mDBTBPBfpm-II)(構造式(v))を用
いた。
【0202】
なお、本実施例で用いた化合物の分子構造を下記構造式(i)乃至(v)、及び(100
)に示す。素子構造は図1(A)の構造である。
【0203】
【化15】
【0204】
≪発光素子1の作製≫
まず、第1の電極101として70nmの膜厚でケイ素を含むインジウム錫酸化物(IT
SO)が成膜されたガラス基板を用意した。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が
露出するよう周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上
に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼
成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10-4Pa程度まで内部が減圧
された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において170℃で30分
間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0205】
次に、第1の電極101が設けられた面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設
けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、有機化合物を含む層1
03を構成する正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114
、電子注入層115が順次形成される場合について説明する。
【0206】
真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,
5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)(構造式(i)
)と酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=2:1(質量比)となる
ように共蒸着することにより、第1の電極101上に正孔注入層111を形成した。膜厚
は60nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同
時に蒸発させる蒸着法である。
【0207】
次に、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン
(略称:BPAFLP)(構造式(ii))を20nm蒸着することにより、正孔輸送層
112を形成した。
【0208】
次に、正孔輸送層112上に発光層113を形成した。
【0209】
発光層113は、4-{3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフェニル-
3-イル}ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4mCzBPBfpm)(構造
式(100))と、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニ
ル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン
-2-アミン(略称:PCBBiF)(構造式(iii))と、を、4mCzBPBfp
m:PCBBiF=0.8:0.2(質量比)となるよう共蒸着することにより40nm
の膜厚で形成した。次に、4-{3-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)]ビフ
ェニル-3-イル}ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4mCzBPBfpm
)(構造式(100))を20nmの膜厚で形成した。
【0210】
次に、発光層113上に電子輸送層114を形成した。バソフェナントロリン(略称:B
Phen)(構造式(iv))を10nm蒸着することにより電子輸送層114を形成し
た。
【0211】
次に、電子輸送層114上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入層
115を形成した。
【0212】
最後に、電子注入層115上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、陰
極となる第2の電極102を形成し、発光素子1を得た。なお、上述した蒸着過程におい
て、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0213】
以上により発光素子1を得た。
【0214】
≪比較発光素子1の作製≫
次に比較発光素子1の作製方法について説明する。
【0215】
比較発光素子1は、発光層113以外は発光素子1と同種の材料を用いた膜であるため、
発光素子1の作製方法の記載を参照されたい。比較発光素子1の第1の電極101はIT
SOを110nmの膜厚で形成した。また、正孔注入層111は、DBT3P-II:酸
化モリブデン=2:1(質量比)となるように共蒸着して形成し、膜厚は20nmとした
。正孔輸送層112として、BPAFLPを20nmの膜厚で形成した。発光層113は
、4-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ベンゾフロ[
3,2-d]ピリミジン(略称:4mDBTBPBfpm-II)(構造式(v))と、
PCBBiFと、を、4mDBTBPBfpm-II:PCBBiF=0.8:0.2(
質量比)となるよう共蒸着することにより40nmの膜厚で形成した。次に、4mDBT
BPBfpm-IIを10nmの膜厚で形成した。次に、BPhenを15nm蒸着する
ことにより電子輸送層114を形成した。電子注入層115及び第2の電極102は、発
光素子1と同種の材料を用い同じ膜厚で形成した。
【0216】
以上により得られた発光素子1及び比較発光素子1の素子構造を表1に示す。
【0217】
【表1】
【0218】
≪発光素子1及び比較発光素子1の動作特性≫
ここで、900cd/m付近における各発光素子の発光特性を以下の表2に示す。また
、各発光素子の電流密度-輝度特性を図13に、各発光素子の輝度-電流効率特性を図1
4に、輝度-パワー効率特性を図15に、輝度-外部量子効率特性を図16に示す。また
、発光スペクトルを図17に示す。
【0219】
【表2】
【0220】
図14および図16から、発光素子1は比較発光素子1に比べ、良好な輝度-電流効率特
性および輝度-外部量子効率特性を示し、発光効率(電流効率・外部量子効率共に)が高
い発光素子であることがわかった。また、駆動電圧も低く、結果として、図15に示すよ
うに発光素子1は非常に良好なパワー効率を示した。なお、発光素子1に用いている4m
CzBPBfpmと、比較発光素子1に用いている4mDBTBPBfpm-IIとの違
いは、カルバゾール骨格を用いているか、ジベンゾチオフェン骨格を用いているかの違い
である。すなわち、単にベンゾフロピリミジン骨格を有しているだけではなく、カルバゾ
ール骨格とベンゾフロピリミジン骨格の双方を併せ持つことが高効率の達成には不可欠で
あり、一体不可分の効果と言える。
【0221】
なお、4mCzBPBfpmの三重項励起準位(T1準位)は、10Kにおけるりん光ス
ペクトルのピークから、2.68eV(462nm)と見積もられている。また、PCB
BiFのT1準位も同様の測定から、2.44eV(509nm)と見積もられており、
いずれも励起錯体の発光エネルギー(一重項励起準位;S1準位)である2.26eV(
549nm)よりも大きい。励起錯体のS1準位はT1準位とほぼ同等であるから、この
結果から、第1の有機化合物および第2の有機化合物の三重項励起エネルギー準位(T1
準位)が、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(T1準位)よりも高くなっていること
がわかる。
【0222】
以上、本実施例に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0223】
101 第1の電極
102 第2の電極
103 有機化合物を含む層
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
400 基板
401 第1の電極
402 黒色層(ブラックマトリックス)
403 有機化合物を含む層
404 第2の電極
405 シール材
407 封止基板
408 空間
412 パッド
420 ICチップ
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 駆動回路部(ソース線駆動回路)
602 画素部
603 駆動回路部(ゲート線駆動回路)
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用トランジスタ
612 電流制御用トランジスタ
613 第1の電極
614 絶縁物
616 有機化合物を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型トランジスタ
624 pチャネル型トランジスタ
625 乾燥材
901 筐体
902 液晶層
903 バックライトユニット
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 有機化合物を含む層
956 電極
1001 基板
1002 下地絶縁膜
1003 ゲート絶縁膜
1006 ゲート電極
1007 ゲート電極
1008 ゲート電極
1020 第1の層間絶縁膜
1021 第2の層間絶縁膜
1022 電極
1024W 発光素子の第1の電極
1024R 発光素子の第1の電極
1024G 発光素子の第1の電極
1024B 発光素子の第1の電極
1025 隔壁
1028 有機化合物を含む層
1029 発光素子の第2の電極
1031 封止基板
1032 シール材
1033 透明な基材
1034R 赤色の着色層
1034G 緑色の着色層
1034B 青色の着色層
1035 黒色層(ブラックマトリックス)
1036 オーバーコート層
1037 第3の層間絶縁膜
1040 画素部
1041 駆動回路部
1042 周辺部
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
5000 表示領域
5001 表示領域
5002 表示領域
5003 表示領域
5004 表示領域
5005 表示領域
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7210 第2の表示部
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
9033 留め具
9034 スイッチ
9035 電源スイッチ
9036 スイッチ
9038 操作スイッチ
9501 照明部
9503 支柱
9505 支持台
9630 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a タッチパネル領域
9632b タッチパネル領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ
9637 操作キー
9638 コンバータ
9639 ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17