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7151219組み込み機器、ウィルススキャンプログラム実行方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】組み込み機器、ウィルススキャンプログラム実行方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/56 20130101AFI20221004BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G06F21/56
H04N1/00 838
H04N1/00 350
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018128463
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2020009066
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】神保 潤哉
【審査官】岸野 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073035(JP,A)
【文献】特開2011-029848(JP,A)
【文献】特開2010-287046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0184370(US,A1)
【文献】特開2012-141839(JP,A)
【文献】特開2013-080345(JP,A)
【文献】特開2018-005270(JP,A)
【文献】池田圭一,対決 ノートンvsウイルスバスター,最新セキュリティソフトは本当に「早くて軽い」か?,日本,株式会社角川アスキー総合研究所,2008年10月25日,<https:://ascii.jp/elem/000/000/182/182867/>
【文献】林 佑樹,ネットブックでも軽快動作「マカフィーアンチウイルスプラス 2012」,年末年始は親孝行ついでにセキュリティ対策も,日本,株式会社角川アスキー総合研究所,2011年12月03日,<https://ascii.jp/elem/000/000/652/652469/>
【文献】増田 高幸,REVIEW 05 ウイルスバスター 2010,Mac Fan 第17巻 第11号 ,日本,株式会社毎日コミュニケーションズ,2009年11月01日,第17巻,p.206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/56
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータウィルスを検出するウィルススキャンプログラムが動作する組み込み機器であって、
ウィルススキャンを開始すると共に、前記ウィルススキャンの一時停止を受け付ける第1の表示部品を表示する表示制御手段と、
前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段が前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付けた場合、ウィルススキャンを中断する制御手段と、を有し
ウィルススキャンを開始する際、前記表示制御手段は、ウィルススキャンプログラムに割り当てられるリソースが抑制された状態で実行されるバックグラウンドにおけるウィルススキャンプログラムの実行を受け付ける第2の表示部品を表示し、
ウィルススキャンプログラムがバックグラウンドで実行されている場合、前記表示制御手段は、前記ウィルススキャンの中止を受け付ける第3の表示部品をシステム領域に表示することを特徴とする組み込み機器。
【請求項2】
記操作受付手段がバックグラウンドにおけるウィルススキャンプログラムの実行を受け付けた場合、前記制御手段は、ウィルススキャンプログラムに割り当てられるリソースを抑制することを特徴とする請求項1に記載の組み込み機器。
【請求項3】
前記表示制御手段は、ウィルススキャンを開始する際に、前記第1の表示部品と前記第2の表示部品のいずれかの選択をユーザに促すポップアップ画面を表示することを特徴とする請求項2に記載の組み込み機器。
【請求項4】
前記表示制御手段は、ウィルススキャンを開始する際に、前記第1の表示部品、前記第2の表示部品及び前記第3の表示部品のいずれかの選択をユーザに促すポップアップ画面を表示することを特徴とする請求項1に記載の組み込み機器。
【請求項5】
前記ウィルススキャンを開始する際、前記制御手段は、ウィルススキャンプログラムの他に実行中のアプリケーションソフトがあるか否かを判断し、
前記実行中のアプリケーションソフトがない場合は、前記第1の表示部品と前記第2の表示部品のいずれかの選択をユーザに促すポップアップ画面を表示し、
前記実行中のアプリケーションソフトがある場合、前記ポップアップ画面を表示することなく、前記表示制御手段は、前記実行中のアプリケーションソフトの画面と共に、ウィルススキャンプログラムがバックグラウンドで実行されている旨、及び、前記ウィルススキャンの中止を受け付ける前記第3の表示部品を表示することを特徴とする請求項1に記載の組み込み機器。
【請求項6】
前記ウィルススキャンを開始する際、前記制御手段は、ウィルススキャンプログラムに割り当てられるリソースを抑制して、ウィルススキャンプログラムの他に実行中のアプリケーションソフトがあるか否かを判断し、
前記実行中のアプリケーションソフトがない場合、前記表示制御手段は、アプリケーションソフトの選択を受け付けるホーム画面と共に、ウィルススキャンプログラムがバックグラウンドで実行されている旨、及び、前記ウィルススキャンの中止を受け付ける第3の表示部品又は一時停止を受け付ける第1の表示部品を表示し、
前記実行中のアプリケーションソフトがある場合、前記表示制御手段は、前記実行中のアプリケーションソフトの画面と共に、ウィルススキャンプログラムがバックグラウンドで実行されている旨、及び、前記ウィルススキャンの中止を受け付ける第3の表示部品又は一時停止を受け付ける第1の表示部品を表示することを特徴とする請求項1に記載の組み込み機器。
【請求項7】
前記ウィルススキャンを開始する際、前記制御手段は、ウィルススキャンプログラムに割り当てられるリソースを抑制し、
ウィルススキャンプログラムの他に実行中のアプリケーションソフトがあるか否かを判断し、
前記実行中のアプリケーションソフトがない場合、前記実行中のアプリケーションソフトがある場合に行われたウィルススキャンに割り当てられるリソースの抑制を解除することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の組み込み機器。
【請求項8】
組み込み機器が行うコンピュータウィルスを検出するウィルススキャンプログラム実行方法であって、
表示制御手段が、ウィルススキャンを開始すると共に、前記ウィルススキャンの一時停止を受け付ける第1の表示部品を表示するステップと、
操作受付手段が、前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付けるステップと、
制御手段が、前記操作受付手段が前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付けた場合、ウィルススキャンを中断するステップと、
ウィルススキャンを開始する際、前記表示制御手段は、ウィルススキャンプログラムに割り当てられるリソースが抑制された状態で実行されるバックグラウンドにおけるウィルススキャンプログラムの実行を受け付ける第2の表示部品を表示するステップと、
ウィルススキャンプログラムがバックグラウンドで実行されている場合、前記表示制御手段は、前記ウィルススキャンの中止を受け付ける第3の表示部品をシステム領域に表示するステップと、
を有することを特徴とするウィルススキャンプログラム実行方法。
【請求項9】
コンピュータウィルスを検出するウィルススキャンプログラムが動作する組み込み機器を、
ウィルススキャンを開始すると共に、前記ウィルススキャンの一時停止を受け付ける第1の表示部品を表示する表示制御手段と、
前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段が前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付けた場合、ウィルススキャンを中断する制御手段、として機能させ、
ウィルススキャンを開始する際、前記表示制御手段は、ウィルススキャンプログラムに割り当てられるリソースが抑制された状態で実行されるバックグラウンドにおけるウィルススキャンプログラムの実行を受け付ける第2の表示部品を表示し、
ウィルススキャンプログラムがバックグラウンドで実行されている場合、前記表示制御手段は、前記ウィルススキャンの中止を受け付ける第3の表示部品をシステム領域に表示することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み込み機器、ウィルススキャンプログラム実行方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに侵入したコンピュータウィルス(以下、単にウィルスという)を検出する技術の1つとしてウィルススキャンという方法が知られている。ウィルススキャンとは、ハードディスクなどの記憶装置に保存されたプログラムファイル又はデータファイルを順番に読み込んで、パターンファイルに記述されたシグネチャなどのウィルスの情報と照らし合わせて一致したらウィルスを検出したと判断する処理である。
【0003】
しかし、ウィルススキャンの実行中、コンピュータのリソース(CPU、メモリなど)はウィルススキャンにより圧迫されるため、コンピュータで同時に動作している各種アプリケーションソフトの動作が遅くなってしまうことがある。
【0004】
複合機などの組み込み機器にもコンピュータが搭載されているが、複合機は、ユーザが印刷ジョブを投入したら、ユーザの待機時間をできるだけ少なくして印刷物を出力する動作が要求されている組み込み機器である。このように特定の出力が要求される組み込み機器は、汎用のPC(Personal Computer)よりも、動作遅延が許容されにくい。
【0005】
そこで、ウィルススキャンがコンピュータのリソースを圧迫することを抑制する技術が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、ウィルススキャンの停止、中断、再開、又は、ウィルススキャン動作に振り分けるリソースの低減などが可能なウィルススキャン方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のウィルススキャン方法は、組み込み機器の利便性とウィルススキャンの効率を向上させることが考慮されていないという問題があった。
【0007】
例えば、ユーザが組み込み機器を操作しているケースでは、ウィルススキャンにより組み込み機器の動作が遅いと感じる可能性があるが、従来は、定義に基づく実行が優先されウィルススキャンを停止できず組み込み機器の利便性を欠いてしまう場合があった。
【0008】
また、ユーザが組み込み機器から離れているケース(例えば、組み込み機器を操作しない状態やPCからジョブを投入したため動作が遅いと感じにくい場合など)では、ウィルススキャンにより組み込み機器の動作が遅いとユーザが感じにくいにもかかわらず、定義に基づいてウィルススキャン処理に割り当てられるリソースが抑制されながら実行され、ウィルススキャンの効率性が低下してしまう場合があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、組み込み機器の利便性及びウィルススキャンの効率性を向上してウィルススキャンを実行する組み込み機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コンピュータウィルスを検出するウィルススキャンプログラムが動作する組み込み機器であって、ウィルススキャンを開始すると共に、前記ウィルススキャンの一時停止を受け付ける第1の表示部品を表示する表示制御手段と、前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付ける操作受付手段と、前記操作受付手段が前記第1の表示部品に対するユーザの操作を受け付けた場合、ウィルススキャンを中断する制御手段と、を有し、ウィルススキャンを開始する際、前記表示制御手段は、ウィルススキャンプログラムに割り当てられるリソースが抑制された状態で実行されるバックグラウンドにおけるウィルススキャンプログラムの実行を受け付ける第2の表示部品を表示し、ウィルススキャンプログラムがバックグラウンドで実行されている場合、前記表示制御手段は、前記ウィルススキャンの中止を受け付ける第3の表示部品をシステム領域に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
組み込み機器の利便性及びウィルススキャンの効率性を向上してウィルススキャンを実行する組み込み機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】組み込み機器がどのようにウィルススキャンを実行するかを説明する図の一例である。
図2】複合機のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】複合機のソフトウェア構成の一例を示す模式図である。
図4】組み込み機器の機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
図5】ホーム画面又はアプリケーションソフトが生成するアプリ画面にポップアップ表示されるウィルススキャン実行中画面の一例を示す図である。
図6】バックグラウンドでウィルススキャンが実行中であることを示すホーム画面の一例を示す図である。
図7】組み込み機器がウィルススキャンを実行する手順を示すフローチャート図の一例である。
図8】従来のウィルススキャンと比較した本実施形態のウィルススキャンの効果を示す図の一例である。
図9】組み込み機器がウィルススキャンを実行する手順を示すフローチャート図の一例である。
図10】バックグラウンドでウィルススキャンが実行中であることを示すホーム画面の一例を示す図である。
図11】ウィルススキャン実行中画面の一例を示す図である。
図12】組み込み機器がウィルススキャンを実行する手順を示すフローチャート図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、組み込み機器と組み込み機器が行うウィルススキャンプログラム実行方法について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
<ウィルススキャンの実行制御の概略>
図1を用いて、本実施形態の組み込み機器によるウィルススキャンの実行制御の概略を説明する。図1は、組み込み機器がどのようにウィルススキャンを実行するかを説明する図の一例である。
【0015】
まず、図1(a)はウィルススキャンを開始する条件を示している。一例として組み込み機器100は、予め定められた「ウィルススキャン実行時間帯」かつ「組み込み機器がアイドル状態に移行」する際にウィルススキャンを開始する。
【0016】
図1(b)は、ウィルススキャンの開始後に操作パネル27に表示されるウィルススキャン実行中画面301の一例を示す図である。ウィルススキャンを開始すると同時に、組み込み機器100はウィルススキャン実行中画面301を表示する。ウィルススキャン実行中画面301には「バックグラウンドに移行」ボタン302と「一時停止」ボタン303が表示されている。
【0017】
「バックグラウンドに移行」ボタン302が押下されると、組み込み機器100はウィルススキャンをバックグラウンドで実行する。バックグラウンドで実行されると、ウィルススキャン動作に振り分ける組み込み機器100のリソース(CPU、メモリなど)が抑制されるので、ユーザの待機時間をそれほど長くせずに組み込み機器100はジョブを実行できる。バックグラウンドの実行では組み込み機器100の動作が遅いと感じるユーザは次回から「一時停止」ボタン303を選択することができる。「一時停止」ボタン303はウィルススキャンを中断するためのボタンである。本実施形態では「中断」と「一時的に停止」を厳密に区別しない。また、後述するように「バックグラウンドに移行」ボタン302が押下された後でもユーザはウィルススキャンを中止することができる。
【0018】
このように、バックグラウンドのウィルススキャンが遅いと感じないユーザはウィルススキャンを必ずしも停止しないでよく、バックグラウンドのウィルススキャンが遅いと感じるユーザはウィルススキャンの一時停止を選択することができるので、組み込み機器100の利便性を向上できる。また、ユーザが組み込み機器100を使用しない場合、組み込み機器100はリソースを抑制しないでウィルススキャンを実行できるので効率的なウィルススキャンが可能である。
【0019】
したがって、本実施形態の組み込み機器100は、ユーザが組み込み機器100を使用する際の利便性を満足させながら、効率の良いウィルススキャンを行うことができる。
【0020】
<用語について>
コンピュータウィルスとは、第三者のプログラムやデータベースに対して意図的に何らかの被害を及ぼすように作られたプログラムであり、自己伝染機能、潜伏機能、又は、発病機能の少なくとも1つの機能を有するプログラムをいう。本実施形態では単にウィルスという。また、ウィルスはマルウェアの一種であるが、本実施形態ではマルウェアがウィルスに含まれているものとする。したがって、ウィルスにはワーム(ファイルに寄生するのでなく単独で存在するマルウェア)、トロイの木馬(画像ファイル等に偽装するマルウェア)も含まれる。
【0021】
組み込み機器とは、特定の機能を実現するためにコンピュータシステムが組み込まれた機械、装置、又は機器をいう。汎用用途向けに多種多様な機能を果たすPCと対比して用いられる場合がある。したがって、PC以外でプログラムが実行される機器であれば組み込み機器となりうる。例えば、複合機(MFP:Multi-Function Peripheral、複写機、コピー機)、プリンタ、FAX装置、スキャナ装置、プロジェクタ、テレビ会議端末、電子黒板、ドローン、デジタルサイネージ等も組み込み機器である。また、組み込み機器はこれらに制限されるものではない。
【0022】
<ハードウェア構成例>
図2を用いて組み込み機器100のハードウェア構成例を説明する。図2では、組み込み機器100の一例として複合機9を例にして説明する。
【0023】
図2は、複合機9のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、複合機9は、本体装置10と、操作部20と、を備える。本体装置10と操作部20は、専用の通信路300を介して相互に通信可能に接続されている。通信路300は、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格のものを用いることもできるが、有線か無線かを問わず任意の規格のものであってよい。
【0024】
なお、本体装置10は、操作部20で受け付けた操作に応じた動作を行うことができる。また、本体装置10は、クライアントPC(パーソナルコンピュータ)等の外部装置とも通信可能であり、外部装置から受信した指示に応じた動作を行うこともできる。
【0025】
次に、本体装置10のハードウェア構成について説明する。図2に示すように、本体装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、HDD(Hard Disk Drive)14と、通信I/F(Interface)15と、接続I/F16と、エンジン部17と、時計18とを備え、これらがシステムバス19を介して相互に接続されている。説明の便宜上、図3では、本体装置10はHDD14を有している構成を例に挙げて説明したが、例えばHDD14を有しておらず、十分な記憶領域を確保できない構成もあり得る。
【0026】
CPU11は、本体装置10の動作を統括的に制御する。CPU11は、RAM13をワークエリア(作業領域)としてROM12又はHDD14等に格納されたプログラムを実行することで、本体装置10全体の動作を制御し、コピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、及びプリンタ機能などの各種機能を実現する。
【0027】
通信I/F15は、ネットワーク8と接続するためのインタフェースである。接続I/F16は、通信路300を介して操作部20と通信するためのインタフェースである。
【0028】
エンジン部17は、コピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、及び、プリンタ機能を実現させるための、汎用的な情報処理及び通信以外の処理を行うハードウェアである。例えば、原稿の画像をスキャンして読み取るスキャナ、用紙等のシート材への印刷を行うプロッタ(画像形成部)、ファクス通信を行うファクス部などを備えている。更に、印刷済みシート材を仕分けるフィニッシャや、原稿を自動給送するADF(自動原稿給送装置)のような特定のオプションを備えることもできる。時計18は現在時刻を保持する例えばRTC(Real Time Clock)である。
【0029】
次に、操作部20のハードウェア構成について説明する。図2に示すように、操作部20は、CPU21と、ROM22と、RAM23と、フラッシュメモリ24と、通信I/F25と、接続I/F26と、操作パネル27と、時計28とを備え、これらがシステムバス29を介して相互に接続されている。説明の便宜上、図2では、操作部20はフラッシュメモリ24を有している構成を例に挙げて説明したが、例えばフラッシュメモリ24を有していない構成もあり得る。
【0030】
図2に示す構成から明らかなように、操作部20及び本体装置10はコンピュータ又は情報処理装置の機能を有している。このため、ウィルスが侵入する可能性があり、ウィルススキャンが適切に行われることが好ましい。
【0031】
<ソフトウェア構成例>
次に、図3を用いて複合機9のソフトウェア構成について説明する。図3は、複合機9のソフトウェア構成の一例を示す模式図である。本体装置10は、アプリ層101と、サービス層102と、OS(Operating System)層103とを有する。アプリ層101、サービス層102、及び、OS層103の実体は、ROM12やHDD14等に格納されている各種ソフトウェアである。CPU11が、これらのソフトウェアを実行することにより、各種の機能が提供される。
【0032】
アプリ層101のソフトウェアは、ハードウェア資源を動作させて所定の機能を提供するためのアプリケーションソフトウェアである。例えばアプリとしては、コピー機能を提供するためのコピーアプリ、スキャナ機能を提供するためのスキャナアプリ、ファクス機能を提供するためのファクスアプリ、プリンタ機能を提供するためのプリンタアプリなどが挙げられる。
【0033】
サービス層102のソフトウェアは、アプリ層101とOS層103との間に介在し、アプリに対し、本体装置10が備えるハードウェア資源を利用するためのインタフェースを提供するためのソフトウェアである。より具体的には、ハードウェア資源に対する動作要求の受付、動作要求の調停を行う機能を提供するためのソフトウェアである。サービス層102が受け付ける動作要求としては、スキャナによる読み取りやプロッタによる印刷等の要求がある。
【0034】
なお、サービス層102によるインタフェースの機能は、本体装置10のアプリ層101だけではなく、操作部20のアプリ層201に対しても提供される。すなわち、操作部20のアプリ層201のアプリも、サービス層102のインタフェース機能を介して、本体装置10のハードウェア資源(例えばエンジン部17)を利用した機能を実現することができる。
【0035】
OS層103のソフトウェアは、本体装置10が備えるハードウェアを制御する基本機能を提供するための基本ソフトウェア(オペレーティングシステム)である。サービス層102のソフトウェアは、各種アプリからのハードウェア資源の利用要求を、OS層103が解釈可能なコマンドに変換してOS層103に渡す。そして、OS層103のソフトウェアによりコマンドが実行されることで、ハードウェア資源は、アプリの要求に従った動作を行う。
【0036】
同様に、操作部20は、アプリ層201と、サービス層202と、OS層203とを有する。操作部20が備えるアプリ層201、サービス層202及びOS層203も、階層構造については本体装置10と同様である。ただし、アプリ層201のアプリにより提供される機能や、サービス層202が受け付け可能な動作要求の種類は、本体装置10とは異なる。アプリ層201のアプリは、主として本体装置10が備える機能(コピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、プリンタ機能)に関する操作や表示を行うためのユーザインタフェースの機能を提供するためのソフトウェアである。なお、アプリ層201のアプリは操作部20が備えるハードウェア資源を動作させて所定の機能を提供するためのソフトウェアであってもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、本体装置10のOS層103のソフトウェアと、操作部20のOS層203のソフトウェアが互いに異なる。つまり、本体装置10と操作部20は、別々のオペレーティングシステムで互いに独立して動作する。例えば、本体装置10のOS層103のソフトウェアとしてLinux(登録商標)を用い、操作部20のOS層203のソフトウェアとしてAndroid(登録商標)を用いることが可能である。なお、本体装置10と操作部20のOSは同じものでもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態の複合機9では、本体装置10と操作部20が別々のオペレーティングシステムで動作するため、本体装置10と操作部20との間の通信は、共通の装置内のプロセス間通信ではなく、異なる装置間の通信として行われる。操作部20が受け付けた情報(ユーザからの指示内容)を本体装置10へ伝達する動作(コマンド通信)や、本体装置10が操作部20へイベントを通知する動作などがこれに該当する。操作部20が本体装置10へコマンド通信を行うことにより、本体装置10の機能を使用することができる。また、本体装置10から操作部20に通知する情報の内容には、本体装置10における動作の実行状況、本体装置10側で設定された内容などが挙げられる。
【0039】
また、操作部20に対する電力供給は、本体装置10から通信路300を経由して行われているので、操作部20の電源制御を、本体装置10の電源制御とは別に(独立して)行うことができる。
【0040】
図示するように、本実施形態では本体装置10のアプリ層101と操作部20のアプリ層201のそれぞれでウィルススキャンプログラム104、204が実行される。ウィルススキャンプログラム104は、OS層103、サービス層102、及び、アプリ層101に含まれるファイル(プログラムファイル又はデータファイル)をパターンファイルに記述されたシグネチャなどのウィルス情報と照らし合わせて(パターンマッチング)、一致するか否かによりウィルスを検出する。シグネチャとは特定のウィルスに共通する一続きのバイト(バイトシーケンス)のことをいう。
【0041】
ウィルススキャンプログラム204は、OS層203、サービス層202、及び、アプリ層201に含まれるファイルから同様にウィルスを検出する。
【0042】
ウィルススキャンプログラムの動作は本体装置10と操作部20とで同じであるとし、以下では、操作部20のウィルススキャンプログラム及び実行制御について説明する。また、図3では本体装置10でウィルススキャンが実行されると説明したが、本体装置10ではウィルススキャンが実行されなくてもよい。
【0043】
<機能について>
図4を用いて組み込み機器100の詳細な機能について説明する。図4は、組み込み機器100の機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。まず、組み込み機器100はアプリケーションソフト1~N及びウィルススキャンプログラム204を有する。これらのうち任意のアプリケーションソフトをアプリケーションソフト30と称する。ウィルススキャンプログラム204もアプリケーションソフト30の1つである。
【0044】
また、組み込み機器100は、サービス層202又はOS層203に、動作モード制御部31、アプリ制御部32、ホーム画面生成部33、表示制御部34、リソース制御部35、及び、操作受付部36を有している。組み込み機器100が有するこれら各機能部は、図2に示された各構成要素のいずれかが、フラッシュメモリ24からRAM23に展開されたプログラムに従ったCPU21からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。このプログラムは、プログラム配信用のサーバから配信されるか又は記憶媒体に記憶された状態で配布される。
【0045】
また、組み込み機器100は、図2に示されたフラッシュメモリ24、RAM23、及びROM22の少なくとも1つに構築される実行スケジュール記憶部39を有している。実行スケジュール記憶部39にはウィルススキャンを実行するスケジュールが記憶されている。
【0046】
動作モード制御部31は、組み込み機器100の動作モードを制御する。動作モードには、少なくとも二種類ある。1つは消費電力を抑えない動作モードであり、通常モードという。もう1つは、組み込み機器100の一部機能を制限することにより消費電力を抑える動作モードであり、省エネモードという。省エネモードは、消費電力を抑制する程度の違いに応じて更に複数の動作モードに区分されていてもよい。例えば、ウィルススキャンを行う特別な動作モードが用意されていてもよい。本実施形態では説明の便宜上、動作モードは2つであるとする。
【0047】
動作モード制御部31は、予め定められている復帰条件に基づいて、省エネモードから通常モードに復帰させ、予め定められている移行条件に基づいて、通常モードから省エネモードに移行させる。動作モード制御部31は復帰条件及び移行条件を保持している(フラッシュメモリ24などに記憶されている)。
・復帰条件
ハードキーの押下、ソフトキーの押下、原稿カバーの開閉、又は、手差しトレイへの用紙セットなどのユーザ操作が検出されること。また、例えば、印刷ジョブを受信すること。USBメモリが接続されること、又は、人体検知センサ(赤外線、音波など)がユーザを検知すること。
・移行条件
通常モードの組み込み機器100が動作を完了してからタイマ設定時間が経過したこと。最後に操作されてからタイマ設定時間が経過したこと。タイマ設定時間とは、通常モードから省エネモードに移行するまでの移行時間(操作が検出されない時間)である。
【0048】
なお、省エネモードでは、エンジン部17の定着ユニットなど消費電力が大きいハードウェア要素への電力供給が停止される。また、CPU11、21などの動作クロックを遅くする、操作パネル27の表示をOFFにする又は輝度を下げるなどの制御も行われる。動作モード制御部31は動作モードの復帰又は移行に伴ってこれらの電源制御も行う。
【0049】
更に、動作モード制御部31は、アイドル状態と非アイドル状態のいずれであるかを判断する。アイドル状態とは、アクティブなアプリ(実行中のアプリ)が1つもない状態をいう。アイドル状態であるかどうかはOSに問い合わせることで判断できる。あるいは、以下のように判断してもよい。例えば、CPU負荷率及びRAM(メモリ)の使用率がいずれも閾値未満である場合にアイドル状態であると判断し、CPU負荷率及びRAM(メモリ)の使用率の少なくとも一方が閾値以上である場合に非アイドル状態と判断する。
【0050】
アプリを実行中でないことは、組み込み機器100が何らかのジョブを実行していない状態ともいえる。したがって、アイドル状態は、例えば、ジョブを実行していない状態、外部と通信していない状態、又は、自己診断などの内部処理を行っていない状態ということができる。以上から、アイドル状態はウィルススキャンの実行に適している。
【0051】
アイドル状態が、通常モードと省エネモードのどちらに含まれるかは、アイドル状態の移行時に省エネモードに移行するかどうかによる。アイドル状態は、通常モードと省エネモードのどちらに含まれてもよいものとする。
【0052】
アプリ制御部32は、アプリケーションの実行、停止、監視などのアプリケーションソフト30の動作に関する制御を行う。本実施形態ではウィルススキャンプログラム204の実行を制御する。実行スケジュール記憶部39のスケジュールにはウィルススキャンを実行する時間帯が記載されている。例えば以下のようなスケジュールである。
12:00~12:55 ウィルススキャン実行
18:00~18:30 ウィルススキャン実行
21:00~06:00 ウィルススキャン実行
アプリ制御部32は、ウィルススキャンの実行時間帯に、動作モード制御部31からアイドル状態移行の通知を取得した場合、ウィルススキャンプログラム204の実行を開始する。また、ウィルススキャンをいつ行ったかも記録する。
【0053】
ホーム画面生成部33は、アプリケーションソフト1~Nが動作していない場合に、ホーム画面と呼ばれるアプリの選択画面を生成する。ホーム画面の一例を図6に示す。アプリケーションソフト1~Nが動作している場合は、アプリケーションソフト1~Nがそれぞれ専用の画面を生成する。
【0054】
表示制御部34は、操作パネル27へ表示に関する処理を行う。アプリケーションソフト1~N、ウィルススキャンプログラム204、アプリ制御部32、及び、ホーム画面生成部33がそれぞれ生成する画面、ポップアップ画面、又は、メッセージなどを操作パネル27に表示する。
【0055】
リソース制御部35は、アプリケーションが使用する組み込み機器100のリソースを抑制する。例えば、CPU21がシングルコアでマルチタスクに対応している場合、リソース制御部35はCPU21にアプリケーションを割り当てる時間(タイムスライス)を制御する。また、CPU21がマルチコアの場合は、アプリケーションが実行されるコアを任意の1つ以上のコアに制限できる。こうすることで、ウィルススキャン動作に振り分けるリソースを低減できる。CPU21が制限されるとCPU21が使用するRAM23も制限されるが、ウィルススキャンプログラム204が使用できるRAM23の容量を直接、制限してよい。
【0056】
操作受付部36は、組み込み機器100に対する各種の操作を受け付ける。例えば、アプリケーションソフト1~Nに対する操作を受け付ける場合もあるし、ウィルススキャンプログラム204の一時停止、バックグラウンドへ移行、又は、中止などのボタンの押下を受け付ける場合がある。
【0057】
<ウィルススキャンプログラムが表示する画面例>
図5図6を用いてウィルススキャンプログラム204又はアプリ制御部32が操作パネル27に表示する画面例を説明する。
【0058】
図5は、図6のようなホーム画面401又はアプリケーションソフトが生成するアプリ画面にポップアップ表示されるウィルススキャン実行中画面301(ポップアップ画面)の一例である。ウィルススキャン実行中画面301は、「ウィルススキャン実行中」というメッセージ304、「バックグラウンドに移行」ボタン302、及び、「一時停止」ボタン303を有している。いずれかのボタンも押下されることにより、ウィルススキャンプログラム204がウィルススキャン実行中画面301を非表示にする。ウィルススキャン実行中画面301は「バックグラウンドに移行」ボタン302又は「一時停止」ボタン303の選択を促すボタンである。
【0059】
「バックグラウンドに移行」ボタン302は、ウィルススキャンをバックグラウンドで実行させるためのボタンである。バックグラウンドの実行とは、画面に表示されている実行中のアプリケーションソフトとしてではなくユーザから見えない形で実行されることをいう。バックグラウンドで実行される場合は、バックグラウンドで実行されない場合よりもウィルススキャンプログラム204に割り当てられるリソースが抑制される。
【0060】
「一時停止」ボタン303は、ウィルススキャンを中断させるためのボタンである。中断であるので、中断時のウィルススキャン実行位置(所定のファイル)が記録され、再開された場合には、中断したウィルススキャン実行位置からウィルススキャンが開始(再開)される。ウィルススキャンの順番は、ファイルシステムのルートディレクトリから開始し、サブディレクトリがある場合にはディレクトリ名のアルファベット順にスキャンしていくなど、予め任意に決定しておくか又は定められている。中断された場合、ウィルススキャンプログラム204は、どのファイルまで行ったかを記録している。
【0061】
なお、ウィルススキャンが再開される条件は、ウィルススキャンが開始される条件と同じでよい。しかし、例えばウィルススキャンが長期間、中断されているような場合はウィルススキャンが再開される条件を緩和してもよい。例えば、スケジュール時刻であればアイドル状態でなくても開始するなどである。
【0062】
図6は、バックグラウンドでウィルススキャンが実行中であることを示すホーム画面401の一例を示す。操作パネル27の上端と下端はシステム領域404であり、それ以外の中央部分がアプリ領域である。図6では、システム領域404に「ウィルスチェック中」というメッセージ402と「中止する」ボタン403が表示されている。システム領域404とはアプリケーションソフトではなくOSなどのシステムが管理する領域である。したがって、アプリケーションソフトが動作してもしていなくても、又は、どのようなアプリケーションソフトが実行されていても(操作パネル27の中央部でアプリケーションソフトのユーザインタフェースが表示されていても)、組み込み機器100はバックグラウンドでウィルススキャンが実行中であることを表示できる。
【0063】
図5で「バックグラウンドに移行」ボタン302が押下されると図6のように、システム領域404にバックグラウンドでウィルススキャンが実行中であることが表示される。図5で「一時停止」ボタン303が押下された場合、ホーム画面401又はアプリケーションソフトのユーザインタフェースが表示されるが、システム領域404にバックグラウンドでウィルススキャンが実行中であることは表示されない。
【0064】
<動作手順>
図7を用いて、組み込み機器100の動作手順を説明する。図7は、本実施形態の組み込み機器100がウィルススキャンを実行する手順を示すフローチャート図の一例である。図7の処理は、組み込み機器100の電源がONの場合に繰り返し実行される。
【0065】
アプリ制御部32は、定期的に時計28から時刻を取得して実行スケジュール記憶部39に記憶されている実行スケジュールの時間帯か否かを判断し、また、動作モード制御部31にアイドル状態に移行したか否かを問い合わせて、アイドル状態かつ現在の時刻が実行スケジュールに記憶されている時間帯の場合、ウィルススキャンプログラム204の実行を開始する(S101)。
【0066】
なお、ウィルススキャンプログラム204がRAM23に常駐する常駐型のアプリの場合、アプリ制御部32でなくウィルススキャンプログラム204がステップS101の判断を行うことができる。
【0067】
ステップS101の条件を満たした場合、アプリ制御部32はウィルススキャンプログラム204を実行する(S102)。ウィルススキャンプログラム204は最初から又は前回の中断箇所からウィルススキャンを開始する。なお、中断していたかどうかは中断箇所の記録があるかどうかにより判断できる。実行に際し、アプリ制御部32はリソース制御部35にウィルススキャンプログラム204に対するリソースの割り当てを抑制させる。リソースを抑制するのは、ウィルススキャンプログラム204が実行される前に、他のアプリケーションソフト1~Nが実行されている可能性があるためであり、実行中のアプリケーションソフトの動作に与える影響を少なくするためである。
【0068】
次に、アプリ制御部32は他のアプリケーションソフト1~Nがアクティブになっているか否かを判断する(S103)。アプリケーションソフトがアクティブとはアプリケーションソフトが実行中であることをいう。したがって、操作パネル27にはアクティブなアプリケーションソフトのユーザインタフェースが表示されている。
【0069】
アクティブなアプリケーションソフトがある場合(S103のYes)、アクティブなアプリケーションが操作パネル27を占有しているが、ウィルススキャン中であることを表示するため、処理はステップS112に進む。したがって、図6のようにシステム領域にウィルススキャン中であることが表示される。
【0070】
アクティブなアプリケーションソフトがない場合(S103のNo)、アプリ制御部32は省エネモードにより表示OFF状態か否かを動作モード制御部31に問い合わせて判断する(S104)。
【0071】
操作パネル27が表示OFFである場合は(S104のYes)、図5のウィルススキャン実行中画面301を表示すべきでないので、処理はステップS106に進む。
【0072】
操作パネル27が表示OFFでない場合は(S104のNo)、アプリ制御部32は操作パネル27が表示OFFでないことをウィルススキャンプログラム204に通知するので、ウィルススキャンプログラム204は表示制御部34を介してウィルススキャン実行中画面301を操作パネル27に表示する(S105)。したがって、ホーム画面401にウィルススキャン実行中画面301がポップアップ表示される。
【0073】
次に、アクティブなアプリケーションソフトがないので、アプリ制御部32はリソース制御部35に対しリソースの抑制を解除させる(S106)。なお、完全に抑制を解除するのでなく、抑制を緩和するだけでもよい。
【0074】
次に、アプリ制御部32は、図5のウィルススキャン実行中画面301でユーザが「バックグラウンドに移行」ボタン302を押下した旨を操作受付部36から受け取ったか否かを判断する(S107)。
【0075】
ユーザが「バックグラウンドに移行」ボタン302を押下した場合(S107のYes)、ウィルススキャンプログラム204に割り当てるリソースを抑制するため処理はステップS111に進む。
【0076】
ユーザが「バックグラウンドに移行」ボタン302を押下しない場合(S107のNo)、アプリ制御部32は、ユーザが「一時停止」ボタン303を押下した旨を操作受付部36から受け取ったか否かを判断する(S108)。
【0077】
ユーザが「一時停止」ボタン303を押下しない場合(S108のNo)、処理はステップS107に戻る。
【0078】
ユーザが「一時停止」ボタン303を押下した場合(S108のYes)、ウィルススキャンプログラム204は現在スキャン中のファイルパスを不揮発性メモリに記憶し、ウィルススキャン処理を終了する(S109)。
【0079】
ウィルススキャンの位置を記録すると、ウィルススキャンプログラム204は終了する(S110)。
【0080】
ステップS107で、ユーザが「バックグラウンドに移行」ボタン302を押下した場合(S107のYes)、ステップS111で、アプリ制御部32はリソース制御部35に対しウィルススキャンプログラム204に割り当てるリソースを抑制させ、ウィルススキャンプログラム204がウィルススキャンを継続する(S111)。このように、「バックグラウンドに移行」ボタン302を押下することで、ユーザはウィルススキャンを継続しながら組み込み機器100を使用できる。
【0081】
また、アクティブなアプリケーションソフトがある場合(S103のYes)、アプリ制御部32は表示制御部34を介してウィルススキャン中である旨と「中止」ボタン403をシステム領域404に表示する(S112)。
【0082】
アプリ制御部32は、図6のシステム領域404の「中止」ボタン403を押下した旨を操作受付部36から受け取ったか否かを判断する(S113)。
【0083】
「中止」ボタン403が押下された場合(S113のYes)、アプリ制御部32は「中止」ボタン403が押下された旨をウィルススキャンプログラム204に通知するので、ウィルススキャンプログラム204はウィルススキャンを終了する(S110)。
【0084】
「中止」ボタン403が押下されない場合(S113のNo)、すべてファイルパスのウィルススキャンが終了するまでウィルススキャンプログラム204はウィルススキャンを継続する。
【0085】
<本実施形態のウィルススキャンの効果>
図8を用いて、本実施形態のウィルススキャンの効果を説明する。図8は、従来のウィルススキャンと比較した本実施形態のウィルススキャンの効果を示す図の一例である。
【0086】
図8(a)は従来のウィルススキャンの課題を説明している。
1.ウィルススキャン動作時間帯にアイドル状態であれば実行
2.利用者が操作パネル27で操作を開始
3.他のアプリケーションソフトを起動
4.非アイドル状態とならずウィルススキャンの動作継続
5.他のアプリケーションソフトの動作が遅くなる
このように、従来のウィルススキャンでは他のアプリケーションソフトを起動しても、ウィルススキャン動作が継続されたままなので、利用者の作業が停滞し、組み込み機器100の利便性が低下してしまった。
【0087】
図8(b)は本実施形態のウィルススキャンの効果を説明している。
1.ウィルススキャンのスケジュール時間帯にアイドル状態であれば実行
2.利用者が操作パネル27で操作を開始
3.利用者は利用するアプリケーションソフトの操作性を重視し、スキャン動作を一時停止、中止、又はバックグラウンドで実行
4.利用者はアプリケーションソフトを起動・利用
まず、「1.」のように非アイドル状態であればウィルススキャンプログラム204を実行しないので、ユーザの作業を阻害しにくい。また、「3.」のようにウィルススキャンをバックグラウンドで実行したり、一時停止又は中止させたりすることができるので、アプリケーションソフトの動作が軽快になり組み込み機器100の利便性が低下しない。バックグラウンドでの実行、一時停止又は中止しなかった場合、効率的にウィルススキャンすることができる。
【実施例2】
【0088】
本実施例では、組み込み機器100がウィルススキャンを実行する手順の変形例を説明する。
【0089】
図9は、組み込み機器100がウィルススキャンを実行する手順を示すフローチャート図の一例である。なお、図9の説明では主に図7との相違を説明する場合がある。
【0090】
ステップS201~S204の処理は図7のステップS101~S104と同様でよい。
【0091】
本実施例では、操作パネル27が表示OFFモードでない場合(S204のNo)、アプリ制御部32は表示制御部34を介して図6のような画面を表示する(S205)。すなわち、ウィルススキャン実行中画面301でなく、システム領域404にウィルスチェック中である旨、及び、「中止」ボタン403を表示する。ウィルススキャンプログラム204は割り当てられるリソースが抑制されるバックグラウンドで実行されている(ステップS202)。
【0092】
ステップS205では、アクティブなアプリケーションソフトがないので、ホーム画面401が表示されそのシステム領域404にウィルスチェック中である旨、及び「中止」ボタン403が表示される。
【0093】
操作パネル27が表示OFFモードの場合(S204のYes)、システム領域404にウィルスチェック中である旨を表示できないので、処理はステップS206に進む。
【0094】
ステップS206では、アクティブなアプリケーションソフトがないので、アプリ制御部32はリソース制御部35に対しリソースの抑制を解除させる(S206)。なお、完全に抑制を解除するのでなく、抑制を緩和するだけでもよい。
【0095】
アプリ制御部32は、図6のシステム領域404の「中止」ボタン403を押下した旨を操作受付部36から受け取ったか否かを判断する(S207)。
【0096】
「中止」ボタン403が押下された場合(S207のYes)、アプリ制御部32は「中止」ボタン403が押下された旨をウィルススキャンプログラム204に通知するので、ウィルススキャンプログラム204はウィルススキャンを終了する(S208)。
【0097】
「中止」ボタン403が押下されない場合(S207のNo)、すべてファイルパスのウィルススキャンが終了するまでウィルススキャンプログラム204はウィルススキャンを継続する。
【0098】
ステップS203で、アクティブなアプリケーションソフトがあると判断された場合、アプリ制御部32はリソース制御部35に対しリソースの割り当てを抑制させたまま、ウィルススキャンプログラム204がウィルススキャンを継続する(S209)。
【0099】
次に、アプリ制御部32はシステム領域404にウィルスチェック中である旨と「中止」ボタン403を表示する(S210)。ステップS210ではアクティブなアプリケーションソフトがあるので、アプリケーションソフトが生成するアプリ画面が表示されそのシステム領域404にウィルスチェック中である旨と「中止」ボタン403が表示される。この後、処理はステップS207に進む。
【0100】
したがって、ウィルススキャンプログラム204は当初、バックグラウンドで動作し、操作パネル27の端(システム領域404)に操作の邪魔にならないように「中止」ボタン403を表示する。ユーザがウィルススキャンによる動作速度の低下を感じた場合、すぐに「中止」ボタン403を押下して改善できる。また、図5に示したウィルススキャン実行中画面301が表示されないのでユーザの操作を妨げることがない。
【0101】
本実施例のような処理は、例えば、ウィルススキャンによる速度低下の影響が限定的な組み込み機器100で有効な処理である。つまり、バックグラウンドでウィルススキャンプログラム204が動作しても、ユーザが遅いと感じないようなCPU21(高性能なCPU)が搭載されている組み込み機器100では、強制的にバックグラウンドで実行させ、ユーザが必要に応じて中止させるという使い方を提供できる。
【0102】
<システム領域の表示例>
本実施例のように図5のウィルススキャン実行中画面301が表示されない場合、ユーザが一時停止することが困難になる。このため、図6のシステム領域404に「一時停止」ボタン303を表示するとなおよい。
【0103】
図10は、バックグラウンドでウィルススキャンが実行中であることを示すホーム画面401の一例を示す。図10ではシステム領域404に「一時停止」ボタン303が表示されている。ユーザは中止するか、中断するかを任意に選択できる。
【0104】
この場合、図9のフローチャート図では、「中止」ボタン403又は「一時停止」ボタン303の押下が判断され、「一時停止」ボタン303が押下された場合、中断時のウィルススキャン実行位置(所定のファイル)が記録される。
【0105】
また、図10のようなシステム領域404は実施例1にも適用できる。つまり、図7のステップS112で図10のシステム領域404を表示する。ユーザがウィルススキャン実行中画面301で「バックグラウンドに移行」ボタン302を選択したが、遅いと感じた場合に「中止」ボタン403でなく「一時停止」ボタン303を選択することができる。
【0106】
<まとめ>
したがって、本実施例の組み込み機器100によれば、実施例1の効果に加えて、ウィルススキャン実行中画面301を表示することなくバックグラウンドでウィルススキャンを実行し、ホーム画面401等のシステム領域404でユーザがウィルススキャンを中止できる。
【実施例3】
【0107】
本実施例では、図5のウィルススキャン実行中画面301に「中止」ボタン403がある場合の処理について説明する。
【0108】
まず、図11は、本実施例のウィルススキャン実行中画面301の一例である。なお、図11の説明では、主に図5との相違を説明する。図11のウィルススキャン実行中画面301には「中止」ボタン403が表示されている。「中止」ボタン403は、ウィルススキャンを中止するためのボタンである、すなわち、図6のシステム領域404の「中止」ボタンと同様の機能を有している。ウィルススキャン実行中画面301が「中止」ボタン403を有することで、ユーザは一時停止で中断することなく、ウィルススキャンを中止して最初からウィルススキャンを開始できる。
【0109】
図12は、組み込み機器100がウィルススキャンを実行する手順を示すフローチャート図の一例である。なお、図12の説明では主に図7との相違を説明する場合がある。
【0110】
図12では、ステップS308-2が追加されている。ステップS308-2では、アプリ制御部32は、ユーザが「中止」ボタン403を押下した旨を操作受付部36から受け取ったか否かを判断する(S308-2)。
【0111】
ユーザが「中止」ボタン403を押下しない場合(S308-2のNo)、処理はステップS307に戻る。ユーザが「中止」ボタン403を押下した場合(S308-2のYes)、ステップS309でウィルススキャン実行位置を記憶し、ウィルススキャンプログラムはウィルススキャンを終了する(S310)。
【0112】
したがって、本実施例の組み込み機器100によれば、実施例1の効果に加えて、ウィルススキャン実行中画面301においてユーザがウィルススキャンを中止できる。
【0113】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0114】
例えば、ウィルススキャンプログラム204を組み込み機器100がサーバ上から適宜、ダウンロードして実行してよい。
【0115】
また、ウィルススキャンの方法にはシグネチャを用いたパターンマッチングの他、ウィルスの挙動などの特徴とファイルの挙動を比較して検出するヒューリスティック、検査対象のファイルを実行してその振る舞いを実際に確認する振る舞い検知などの方法もある。
【0116】
また、図4等の構成例は、組み込み機器100による処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。組み込み機器100の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0117】
なお、「一時停止」ボタン303は第1の表示部品の一例であり、「バックグラウンドに移行」ボタン302は第2の表示部品の一例であり、「中止」ボタン303は第3の表示部品の一例であり、表示制御部34は表示制御手段の一例であり、操作受付部36は操作受付手段の一例であり、アプリ制御部32は制御手段の一例である。
【符号の説明】
【0118】
9 複合機
10 本体装置
20 操作部
27 操作パネル
28 時計
30 アプリケーションソフト
100 組み込み機器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【文献】特表2015‐508927号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12