(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】給紙装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/24 20060101AFI20221004BHJP
B65H 9/14 20060101ALI20221004BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221004BHJP
B65H 11/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B65H1/24 J
B65H9/14
G03G15/00 405
B65H11/00 G
(21)【出願番号】P 2018135750
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】藤田明宏
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020892(JP,A)
【文献】特開2015-016932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0168920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
B65H 9/00
B65H 11/00
B41J 11/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙コロを回転させる駆動軸と、
記録材を載置する底板
と、
前記底板を押し上げる付勢手段と、
前記底板と当接し、前記付勢手段の付勢力に逆らって前記底板を下降させるカム部材と、
前記駆動軸の駆動に連動するレバー部材
と、を備えた給紙装置であって、
前記駆動軸を駆動することで、前記レバー部材と連動して
前記カム部材が前記底板から離間し、前記底板が前記付勢手段により上昇して前記記録材を前記給紙コロに押圧し、前記給紙コロの回転により前記記録材を前記給紙コロよりも搬送方向下流のレジストローラ対に突き当てると、
前記給紙コロの回転を一時停止し、その後、前記給紙コロと前記レジストローラ対とを回転させ、前記カム部材が前記底板を下降
させる給紙装置において、
前記レバー部材の位相を検出する待機位置センサを備え、
前記待機位置センサは、前記レバー部材が所定の待機位置にあるときにONを出力し、前記レバー部材が前記待機位置にないときにOFFを出力するように構成され、
イニシャル動作の際、前記待機位置センサがOFFを出力した場合、前記駆動軸は、前記待機位置センサが2回のONを出力するまで回転を継続することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記カム部材と前記レバー部材は、いずれも前記駆動軸の左右位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記底板に、前記カム部材を停止させる停止手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給紙装置。
【請求項4】
手差し給紙として用いられることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項5】
自動原稿給紙装置として用いられることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項6】
給紙トレイとして用いられることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の給紙装置を備える画像形成装置。
【請求項8】
複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置、及び画像読取装置の内、2つ以上を組み合わせた複合機として構成されたことを特徴とする
請求項7に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写装置、ファクシミリなどの画像形成装置は、用紙を搬送する給紙装置(供給装置)を備える。この給紙装置には、上下に昇降可能な底板に用紙を積載し、底板を上昇して給紙コロに押し当て用紙を搬送する機構が採用されている。
【0003】
具体的に、給紙コロは単独の電磁クラッチを介して駆動し、底板を上下に移動させる手段として、(a)ユーザがロックレバー部材を操作して、底板を上昇させたり、(b)底板に当接可能なカム部材を別途専用の電磁クラッチを介して駆動し、底板を下降位置に押し下げて、用紙セット後に底板を上昇させたりする技術が知られている。
【0004】
他の技術として、特許文献1には、給紙コロを半月状(一方は底板と接触するが、他方は接触しない)とし、1回転で停止する電磁クラッチを介して駆動することで、用紙を搬送する構成が開示されている。また、特許文献2には、給紙コロ軸と、底板を押し下げるカム部材とをギアで連結し、そのギアを専用の駆動モータで正逆回転させることで、給紙コロに用紙を押し当てる構成が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3は、給紙コロの回転により底板のストッパ部材を解除し、底板を上昇させる構成を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、(a)及び特許文献3の構成では、ユーザの誤操作による用紙のセットミスで、用紙のスキューやジャムなどが発生するおそれがある。また、(b)及び特許文献2の構成では、専用部品(クラッチ、モータなど)が別途必要であり、コストアップと省スペースの問題があった。さらに特許文献1の構成では、レジスト補正(用紙先端の整列)を実施できないという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、ユーザによる底板の昇降が不要で、比較的低コスト、及び記録材の補正が可能な給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、給紙コロを回転させる駆動軸と、記録材を載置する底板と、前記底板を押し上げる付勢手段と、前記底板と当接し、前記付勢手段の付勢力に逆らって前記底板を下降させるカム部材と、前記駆動軸の駆動に連動するレバー部材と、を備えた給紙装置であって、前記駆動軸を駆動することで、前記レバー部材と連動して前記カム部材が前記底板から離間し、前記底板が前記付勢手段により上昇して前記記録材を前記給紙コロに押圧し、前記給紙コロの回転により前記記録材を前記給紙コロよりも搬送方向下流のレジストローラ対に突き当てると、前記給紙コロの回転を一時停止し、その後、前記給紙コロと前記レジストローラ対とを回転させ、前記カム部材が前記底板を下降させる給紙装置において、前記レバー部材の位相を検出する待機位置センサを備え、前記待機位置センサは、前記レバー部材が所定の待機位置にあるときにONを出力し、前記レバー部材が前記待機位置にないときにOFFを出力するように構成され、イニシャル動作の際、前記待機位置センサがOFFを出力した場合、前記駆動軸は、前記待機位置センサが2回のONを出力するまで回転を継続することを特徴とする給紙装置によって解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の給紙装置は、カム部材が底板を上下に移動させるので、ユーザによる底板の昇降が不要である。したがって、ユーザの誤操作による記録材のセットミスを防止できる。また、給紙コロ軸によりカム部材と給紙コロの両方を駆動するので、比較的低コストである。さらに、レジスト補正も実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る手差し給紙部の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る手差し給紙部の構成図である。
【
図5】
図4のレバー部材及びカム部材の構成を示す拡大図である。
【
図6】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の待機状態を示す構成図である。
【
図7】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の給紙開始動作を示す構成図である。
【
図8】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の記録材分離搬送を示す構成図である。
【
図9】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のレジスト補正動作を示す構成図である。
【
図10】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の底板待機状態を示す構成図である。
【
図11】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のジャム処理を示す構成図である。
【
図12】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のイレギュラー停止状態(その1)を示す構成図である。
【
図13】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のイレギュラー停止状態(その2)を示す構成図である。
【
図14】
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置の斜視図であり、
図2は同装置の概略構成図である。
図1の画像形成装置1の本体上部には、原稿読取部(スキャナ部)5が設置されて、正面側には操作パネル6が配置されている。この原稿読取部5は、
図2の原稿が載置される原稿台としてのコンタクトガラス5aと、原稿を照明する照明光源5bと、原稿からの反射光を反射する第1ミラー5c、第2ミラー5d、第3ミラー5eとを備える。また、原稿からの反射光を結像する結像レンズ5fと、その結像位置に設置され原稿画像を読み取る読取手段としてのCCDなどのイメージセンサ5gとを備える。
【0013】
この原稿読取部5の上には、コンタクトガラス5aに載置された原稿を押さえる圧板、又はコンタクトガラス5aに原稿を自動給紙する自動原稿給紙装置(ADF)などを設けてもよい。
【0014】
装置本体の中央部には画像形成部2が設けられている。画像形成部2には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)の各色の画像を形成する4つの画像形成ユニットと、無端ベルト状の中間転写体(以下、中間転写ベルトという)17aを有する中間転写ベルトユニット17とが設置されている。これら4つの画像形成ユニットの下側には光書込装置13が設置されている。
【0015】
各画像形成ユニットの構成は同じであり、像担持体としての感光体ドラム11Y、11C、11M、11Bをそれぞれ有する。その回りにはそれぞれ専用の帯電装置12Y、12C、12M、12B、現像装置14Y、14C、14M、14B、一次転写ローラ15Y、15C、15M、15B、クリーニング装置16Y、16C、16M、16Bが設置されている。
【0016】
光書込装置13は中央に1つの偏向器を有し、4つの光源からの光束を一つの偏向器で4系統に振り分けて偏向走査し、4つの感光体ドラム11Y、11C、11M、11Bに潜像を書き込む。
【0017】
具体的に光書込装置13は、色毎に用意されたレーザダイオード(LD)方式の4つの光源と、光源から出射されたレーザ光束をコリメートする光学系と、ポリゴンミラー(回転多面鏡)及びポリゴンモータから構成される偏向器(ポリゴンスキャナ)とを備える。また、各光源の光路に設置されたfθレンズなどの走査・結像用のレンズと、補正用レンズ、ミラーなどからなる光学系とを備える。
【0018】
そして、各色の画像情報に応じてレーザダイオードから射出されたレーザ光は、ポリゴンスキャナにより偏向走査され、各色の感光体ドラム11Y、11C、11M、11Bに照射される。
【0019】
画像形成部2と胴内排紙部4の間には、各画像形成ユニットの現像装置14Y、14C、14M、14Bにトナーを補給するためのトナーボトル32Y、32C、32M、32Bが設けられている。各トナーボトル32Y、32C、32M、32Bには、
図2中左からイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)のトナーが充填されている。ここから搬送経路を通って、所定の補給量だけ各色の現像装置14Y、14C、14M、14Bに各色のトナーが補給される。
【0020】
中間転写ベルトユニット17の中間転写ベルト17aは、駆動ローラと従動ローラ及び一次転写ローラに支持されており、
図2中の矢印の向きに回動される。この中間転写ベルト17aの右側には二次転写ローラ22が設けられ、中間転写ベルト17aの左側には中間転写ベルトクリーニング装置18が設けられている。
【0021】
装置本体下部の給紙部3には、記録媒体としての記録材Sが収納された2段の給紙カセット3a、3bが設置されている。いずれか一方の給紙カセットから給紙装置19a、19bにより記録材Sが給紙され、搬送ローラ20a、20bを介してレジストローラ対21に向けて給紙される。また、レジストローラ対21に給紙された記録材Sは、所定のタイミングで二次転写ローラ22に向けて送り出される。
【0022】
装置側面には手差し給紙部39が設けられており、手差し給紙部39からの記録材Sは、給紙コロ47によりレジストローラ対21に向けて給送される。
【0023】
二次転写ローラ22の上方には、定着ユニット9が設置されている。この定着ユニット9内には、例えば定着ローラ9aと加熱ローラ9bに支持された定着ベルト9cと、当該定着ベルト9cに圧接する加圧ローラ9dが設けられている。また、定着ユニット9の上方には、胴内排紙部4へ向けて用紙を搬送排紙する搬送ローラ23と、排紙ローラ24が設けられている。さらにその上には、両面プリント時に搬送路を切り換える切換爪25と、スイッチバック式に用紙の向きを反転するための反転搬送ローラ26と、反転搬送路27とが設けられている。
【0024】
この反転搬送路27に一時的にスタックされた用紙は、反転搬送ローラ26で向きを反転されて、両面用搬送路を搬送ローラ28、29により搬送され、レジストローラ対21に再給紙される。
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係る、用紙分離機構を備えた給紙装置としての手差し給紙部39の構成を説明する。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態に係る手差し給紙部の斜視図である。
図3に示すように、手差し給紙部39は、記録材を載置する用紙載置部としての底板41と、その記録材を給紙する給紙手段とを有し、先の
図1に示した画像形成装置1の本体右側面に設けられている。
【0027】
具体的に、手差し給紙部39は、手差しカバー40と、手差しカバー40に回転軸を介して回転可能に取り付けられた底板41と、手差しカバー40に取り付けられ、記録材の幅方向を規制するサイドフェンス42a、bとを備える。ここで、底板41と手差しカバー40の間には、底板41を押し上げる付勢手段である加圧バネが設けられている。また、サイドフェンス42a、bは、左右均等に開閉するように構成されている。なお、サイドフェンス42a、bは、底板41に取り付けられていてもよい。
【0028】
この手差しカバー40は、画像形成装置1に開閉可能に取り付けられており、手差し給紙部39から記録材を給紙する場合、手差しカバー40を開いて使用する。また、使用しない場合は、閉じて収納できる。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態に係る手差し給紙部の構成図である。
図4に示すように、手差し給紙部39は、給紙方向(矢印方向)に対し垂直方向に延びる駆動軸である給紙コロ軸45を備える。給紙コロ軸45には、ワンウェイクラッチ46を介して給紙コロ47が回転可能に取り付けられている(支持されている)。給紙コロ軸45が図中矢印A1方向に回転すると、給紙コロ47も同じ方向(矢印A1方向)に回転し、記録材を給紙方向へ搬送する。また、給紙コロ軸45が停止しても、ワンウェイクラッチ46により給紙コロ47は同じ方向(矢印A1方向)に回転可能である。
【0030】
給紙コロ軸45の両端部には、カム部材48a、bが、それぞれ給紙コロ軸45に対し回転自在に取り付けられている。すなわち、カム部材48a、bの穴に給紙コロ軸45が緩みをもって挿入されており、カム部材48a、bは給紙コロ軸45により回転されない。また、カム部材48a、bの外側にレバー部材49a、bが、それぞれ給紙コロ軸45に取り付けられている。すなわち、レバー部材49a、bの穴に、その穴と異形状の給紙コロ軸45が挿入されており、給紙コロ軸45とともにレバー部材49a、bが回転される。
【0031】
図5は、
図4のレバー部材及びカム部材の構成を示す拡大図である。
図5に示すように、レバー部材49aは、回転軸穴部65と、回転軸穴部65から垂直方向に延びるレバー部66と、レバー部66の先端に設けられ、回転軸穴部65と平行に突出する突起部50aとを有する。一方、カム部材48aは、回転軸穴部67と、回転軸穴部67から垂直方向に延びるカム部68とを有する。
【0032】
レバー部材49aとカム部材48aとは同一の駆動軸(給紙コロ軸45)上に隣接して取り付けられ、レバー部材49aが回転することで、レバー部材49aの突起部50aは、カム部材48aのカム部68に当接可能である。
【0033】
このように構成されているので、レバー部材49aは、自身の回転時にカム部材48aを連動して回転できる。そして、カム部材48aのカム部68は、回転時に底板41に当接可能である。この一連の作用は、後に詳細に説明する。
【0034】
なお、
図5ではカム部材48a、レバー部材49aを示したが、カム部材48b、レバー部材49bも同様の構成である。また、
図5は一例である。レバー部材49aは、自身の回転時にカム部材48aを連動して回転できる構成であれば、これ以外の形状であってもよい。
【0035】
図4に戻り、説明を続ける。カム部材48a、bの給紙コロ47側は、それぞれEリングの規制部材を用いて軸方向への移動が規制されている。また、レバー部材49a、bは、給紙コロ軸45の断面をDカット形状とし、レバー部材49a、bも同様にDカット溝形状を形成した上で、給紙コロ軸45に挿入されている。したがって、給紙コロ軸45の回転にともない、レバー部材49a、bも回転する。なお、レバー部材49a、bの給紙コロ47に対し反対側は、それぞれEリングが留められている。
【0036】
給紙コロ軸45に各種の部品が取り付けられた状態で、給紙コロ軸45は、画像形成装置1の本体フレームの穴70に滑り軸受け71を介して挿入される。なお、滑り軸受け71に挿入された給紙コロ軸45の端部には、Eリングが留められている。
【0037】
また、手差し給紙部39は、本体フレームに取り付けられた給紙コロ軸45の右側の画像形成装置奥側に、位相検知フィラー52と、第1電磁クラッチ53とを備える。これらの両サイドの給紙コロ軸45に、Eリングが留められている。
【0038】
さらに手差し給紙部39は、位相検知フィラー52の位相を検知する待機位置センサ54と、第1電磁クラッチ53のギアと噛み合うアイドラーギア55と、アイドラーギア55を駆動するモータ56とを備える。モータ56の回転によりアイドラーギア55が回転し、第1電磁クラッチ53がON(電圧印加)されることで、給紙コロ軸45が回転される。
【0039】
なお、記録材Sの供給先であるレジストローラ対21には、第2電磁クラッチ57が取り付けられ、第2電磁クラッチ57のON(電圧印加)でレジストローラ対21が別途のモータ58により回転する。また、第1電磁クラッチ53、第2電磁クラッチ57、及びモータ56、58などは、画像形成装置1内に設けられた制御装置によって制御される。
【0040】
続いて、このように構成された手差し給紙部39の一連の給紙動作、及びレジスト補正について説明する。
【0041】
(待機状態)
図6は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の待機状態を示す構成図である。分かり易くするため、給紙コロ47は破線で描写している。なお、これ以降の図面において、
図3~5と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、説明の都合上、一方側(カム部材48a、レバー部材49aなど)のみを示すが、特に断らない限り、他方側(カム部材48b、レバー部材49bなど)も同じ構成である。
【0042】
図6に示すように、手差しカバー40と底板41の間には、底板41を押し上げる付勢手段である加圧バネ59が設けられている。カム部材48aは鉛直に底板41に当接することで、加圧バネ59の付勢力に逆らって底板41を最も下降させている。この待機状態において、ユーザは記録材Sを底板41に載置(セット)できる。
【0043】
この待機状態におけるレバー部材49aの位置(位相)を待機位置という。手差し給紙部39は、位相検知フィラー52(
図4参照)の位相を検知する待機位置センサ54により、レバー部材49aが待機位置にあるか否かを判定できる。本実施形態では、レバー部材49aが所定の待機位置にある場合、待機位置センサ54はONを出力し、レバー部材49aが待機位置にない場合、待機位置センサ54はOFFを出力する。
【0044】
(給紙開始)
図7は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の給紙開始動作を示す構成図である。給紙動作(印刷動作)の際、給紙コロ軸45の回転は、第1電磁クラッチ53(
図4参照)がON/OFFされることによって制御される。
【0045】
第1電磁クラッチ53がONされると、
図7の給紙コロ軸45は図中時計回りに回転する。そして、回転するレバー部材49aの突起部50aがカム部材48aに当接することにより、レバー部材49aと連動して、カム部材48aが底板41から離間する。底板41は、加圧バネ59により付勢されて上昇し、底板41に載置された記録材Sを給紙コロ47に当接し押圧する。給紙コロ軸45の回転とともに給紙コロ47も回転し、記録材Sを給紙方向に送り出す。
【0046】
(記録材分離搬送)
図8は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の記録材分離搬送を示す構成図である。給紙コロ47により搬送された記録材Sは、給紙コロ47と分離パッド60の間に搬送され、給紙コロ47と分離パッド60により上方の1枚に分離され、さらに給紙コロ47が回転し搬送される。ここで、給紙コロ47の回転と連動してレバー部材49aやカム部材48aも回転する。なお、分離パッド60は加圧バネ61により給紙コロ47に圧接されている。そのため、記録材Sは底板41による押圧が解除されても、継続して搬送されるようになっている。
【0047】
(レジスト補正動作)
図9は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のレジスト補正動作を示す構成図である。レジストローラ対21の手前にはレジストセンサ(図示せず)が設けられている。手差し給紙部39は、記録材Sをさらに搬送し、レジストセンサが記録材Sを検出して所定時間経過後に、第1電磁クラッチ53をOFFする。これにより、供給先であるレジストローラ対21のニップ部に記録材Sの先端を突き当て、所定のたるみ(ΔS)を生成する。それとともに、給紙コロ軸45を一時停止(第1電磁クラッチ53をOFF)することで、記録材Sの先端をレジストローラ対21のニップ部で整列する(レジスト補正)。
【0048】
レジスト補正した後には、レジストローラ対21を回転(第2電磁クラッチ57をON)するとともに、給紙コロ軸45を回転(第1電磁クラッチ53をON)し、記録材Sを画像形成装置1の作像部へ搬送する。
【0049】
(底板待機状態)
図10は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の底板待機状態を示す構成図である。レジスト補正した後に、給紙コロ軸45を回転(第1電磁クラッチ53をON)し、
図10に示すように、給紙コロ軸45は、底板41が待機状態となる位置(
図6参照)にて回転を停止(第1電磁クラッチ53をOFF)する。給紙コロ軸45は停止する一方、給紙コロ47はワンウェイクラッチ46(
図4参照)によりレジストローラ対21の回転による給紙の搬送に連動して回転可能である。したがって、記録材Sはレジストローラ対21により、レジストローラ対21の搬送方向下流の画像形成装置1内に搬送される。そして、手差し給紙部39は次の給紙に備えるため、
図6のような待機状態となる。
【0050】
このように、本実施形態の手差し給紙部39は、カム部材48aを用いて底板41を上下に移動させるので、ユーザによる底板41の昇降が不要である。したがって、ユーザの誤操作による記録材のセットミスを防止できる。また、カム部材48aと記録材Sを搬送する給紙コロ47が他部材の駆動も兼ねる1つの駆動源(モータ56及び第1電磁クラッチ53など)で駆動されるので、比較的低コストである。さらに、本実施形態の手差し給紙部39は、レジスト補正も実施可能である。
【0051】
給紙装置において、例えば記録材の端が折れ曲がっていたり、シワになっていたりする場合、記録材の詰まり(いわゆるジャム)が発生する場合がある。以下より、ジャム処理及びイレギュラー時の処理について説明する。
【0052】
(ジャム処理)
図11は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のジャム処理を示す構成図である。
図11に示すように、ジャムが発生した際、本実施形態の手差し給紙部39は、レバー部材49aを待機位置(待機位置センサ54がONを出力する)まで移動して停止し、底板41を下降させる。すなわち、ジャムが発生しても、直ぐに第1電磁クラッチ53をOFFせず、底板41が下降位置に移動した後に、第1電磁クラッチ53をOFFする。
【0053】
次に、ユーザが、引き抜き方向(給紙方向の逆)にジャム紙を引き抜いて取り除く。給紙コロ47と給紙コロ軸45はワンウェイクラッチ46(
図4参照)で連結されているので、給紙コロ47が図中反時計回りに回転(給紙を搬送する方向とは逆の回転)すると給紙コロ軸45及びレバー部材49aも同様に回転する。一方、カム部材48aは給紙コロ軸45に固定されておらず、また、反時計回りに回転するレバー部材49aとは連動しないため、レバー部材49aの突起部50aがカム部材48aと当接していない範囲でカム部材48aは、そのまま待機位置に停止している。したがって、底板41は下降したままに維持される。
【0054】
このように、記録材Sを引き抜く際に給紙コロ47も回転するため、記録材Sの引き抜き負荷を小さくでき、作業性がよい。
【0055】
(イニシャル動作)
画像形成装置1などの給紙装置を備える装置は、ジャムの発生や装置の異常(カバーがオープンしたなど)が発生した場合、動作を停止する。その後、ジャムや異常を解消した後、動作するのに異常がないことを確認するためにイニシャル動作(ジャム解除動作)を行う。すなわち、ジャム紙の有無や、カバーの開閉などをチェックする。
【0056】
このイニシャル動作は、レバー部材49aの待機位置、すなわち待機位置センサ54の出力結果により異なる。具体的に、レバー部材49aが待機位置(
図6参照)にある場合(待機位置センサ54がON)は、そのままの状態で待機する。一方、レバー部材49aが待機位置にない場合(待機位置センサ54がOFF)は、給紙コロ軸45を回転し、待機位置まで移動した後に停止する。
【0057】
(イレギュラー停止状態)
装置の電源が突然切れた場合や、カム部材48aが非待機位置で停止した可能性がある場合、底板41は待機位置にない可能性がある。この場合、記録材Sが底板41上にないことを確認(例えば、別途ペーパセンサで有無を確認するなど)した上で、イニシャル動作を開始する。
【0058】
図12は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のイレギュラー停止状態(その1)を示す構成図である。
図12に示すように、レバー部材49aが非待機位置(待機位置センサ54はOFF)にあり、かつレバー部材49aがカム部材48aに対し図中右側(給紙コロ軸45の回転によりレバー部材49aがカム部材48aとともに回転する位置)にあるとする。この場合、イニシャル動作として、レバー部材49aは図中時計回りに回転し、待機位置まで移動して停止する(待機位置センサ54はON)。
【0059】
なお、記録材Sが底板41にある(ペーパセンサが記録材を検知した)場合、イニシャル動作は開始しない。また、操作パネル6(
図1参照)などに記録材の除去を促すメッセージを表示することが望ましい。これにより、イニシャル動作時に記録材を搬送することを防止できる。
【0060】
図13は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部のイレギュラー停止状態(その2)を示す構成図である。
図13に示すように、レバー部材49aが非待機位置(待機位置センサ54はOFF)にあり、かつレバー部材49aがカム部材48aに対し図中左側(給紙コロ軸45の回転によりレバー部材49aが回転し、カム部材48aが回転しない位置)にあるとする。この場合、イニシャル動作として、レバー部材49aは図中時計回りに回転し、待機位置まで移動して停止する(待機位置センサ54はON)。
【0061】
しかし、このままでは底板41が下降位置にないため、記録材Sの載置性が悪い。そのため、再度レバー部材49aを回転させ、カム部材48aを待機位置に移動する。すなわち、給紙コロ軸45は、待機位置センサ54が2回のONを出力するまで回転を継続する。レバー部材49aは、1回転目でカム部材48aに対し図中右側に位置するので、2回転目にカム部材48aを待機位置で停止させることになる。
【0062】
なお、記録材Sが底板41にある(ペーパセンサが記録材を検知した)場合、イニシャル動作は開始しない。また、操作パネル6(
図1参照)などに記録材の除去を促すメッセージを表示することが望ましい。これにより、イニシャル動作時に記録材を搬送することを防止できる。
【0063】
このように、本実施形態の手差し給紙部39は、ユーザがジャム処理を容易に実施できる。また、イレギュラー停止状態において、イニシャル動作を実施する際、給紙コロ軸45を2回転する(待機位置センサ54が2回ONを出力する)ことにより、底板41を待機状態にすることができる。
【0064】
ここまでについて、補足的な説明を加える。
【0065】
レジスト補正動作において、所定のたるみを生成することを説明した。本発明において、レイアウト構成(特に、レジストローラ対21と給紙コロ47との間の距離)は、限定されない。その理由は、たるみが生成されるまで給紙コロ47は回転可能であり、また、記録材Sは底板41による押圧が解除されても、分離パッド60によって継続して押圧されるためである。
【0066】
また、給紙コロ47の線速は、レジストローラ対21の線速よりも速い。しかし、記録材Sのたわみが生成された後、給紙コロ軸45は停止するので、たわみは解消される。また、分離パッド60があるため、給紙コロ47が回転しているかぎり、たわみが給紙方向の端部で解消されることはない(レジストローラ対21のニップ部にて整列される)。
【0067】
続いて、本発明の有利な構成及び変形例について説明する。
【0068】
カム部材48a、bとレバー部材49a、bは、いずれも給紙コロ軸45の左右位置にそれぞれ設けられていることが望ましい。これにより、底板41が左右均等に下降するため、記録材Sの載置がより容易になる。
【0069】
図14は、
図4の矢印B1方向から見た手差し給紙部の変形例を示す構成図である。
図14に示すように、底板41にカム部材48aを停止させる停止手段62を設けることが望ましい。この停止手段62として、ゴム製のストッパを用いたり、底板41にU形状の溝設けたりすることができる。この停止手段62により、カム部材48aが振動などで底板41から外れることを防止できる。なお、停止手段62は、一方のカム部材48aに用いてもよいし、両方のカム部材48a、bに用いてもよい。
【0070】
本実施形態の手差し給紙部39は、手差し給紙として用いること以外にも、自動原稿給紙装置(ADF)、又は給紙トレイ(給紙カセット)として用いることができる。また、本実施形態の手差し給紙部39を、画像読取装置に用いることもできる。さらに、手差し給紙部39を備える画像形成装置1は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置、及び画像読取装置の内、2つ以上を組み合わせた複合機として構成されていてもよい。
【0071】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明した。この実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して使用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成装置
2 画像形成部
3 給紙部
3a、3b 給紙カセット
4 胴内排紙部
5 原稿読取部
5a コンタクトガラス
5b 照明光源
5c 第1ミラー
5d 第2ミラー
5e 第3ミラー
5f 結像レンズ
5g イメージセンサ
6 操作パネル
9 定着ユニット
9a 定着ローラ
9b 加熱ローラ
9c 定着ベルト
9d 加圧ローラ
11B、11C、11M、11Y 感光体ドラム
12B、12C、12M、12Y 帯電装置
13 光書込装置
14B、14C、14M、14Y 現像装置
15B、15C、15M、15Y 一次転写ローラ
16B、16C、16M、16Y クリーニング装置
17 中間転写ベルトユニット
17a 中間転写ベルト
18 中間転写ベルトクリーニング装置
19a、19b 給紙装置
20a、20b、23、28、29 搬送ローラ
21 レジストローラ対
22 二次転写ローラ
24 排紙ローラ
25 切換爪
26 反転搬送ローラ
27 反転搬送路
32B、32C、32M、32Y トナーボトル
39 手差し給紙部
40 手差しカバー
41 底板
42a サイドフェンス
45 給紙コロ軸
46 ワンウェイクラッチ
47 給紙コロ
48a、48b カム部材
49a、49b レバー部材
50a 突起部
52 位相検知フィラー
53 第1電磁クラッチ
54 待機位置センサ
55 アイドラーギア
56 モータ
57 第2電磁クラッチ
58 モータ
59、61 加圧バネ
60 分離パッド
62 停止手段
65、67 回転軸穴部
66 レバー部
68 カム部
70 穴
71 滑り軸受け
S 記録材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【文献】特開2009-107801号公報
【文献】特許第5217842号明細書
【文献】特許第5843811号明細書