(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、および解析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/367 20200101AFI20221004BHJP
G06F 30/398 20200101ALI20221004BHJP
G06F 119/10 20200101ALN20221004BHJP
【FI】
G06F30/367
G06F30/398
G06F119:10
(21)【出願番号】P 2018215039
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2018048321
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 和希
(72)【発明者】
【氏名】中根 信夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 美代子
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-003654(JP,A)
【文献】特開2000-035984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板が備える半導体パッケージ上に設けられた、出力バッファ回路と入力バッファ回路との間のデジタル信号伝送におけるデジタル信号波形を解析する解析装置であって、
前記出力バッファ回路の動作周期および動作パターンの入力を受け付ける第1入力部と、
前記出力バッファ回路および前記入力バッファ回路の特性を示す、第1のモデルの入力を受け付ける第2入力部と、
前記プリント基板および前記半導体パッケージの特性を示す、第2のモデルの入力を受け付ける第3入力部と、
前記出力バッファ回路の動作周期および動作パターンと、前記第1のモデルと、前記第2のモデルとに基づいて、デジタル信号波形を生成するための各種算出値を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された各種算出値に基づいて、前記デジタル信号波形を生成するデジタル信号波形生成部と
、
前記第2のモデルに基づいて、前記プリント基板および前記半導体パッケージにおける、キャパシタンス値およびインダクタンス値を含むLC値を算出するLC値算出部と、
前記LC値算出部によって算出された前記LC値に基づいて、クロストークノイズ波形を生成するクロストークノイズ波形生成部と
を備え、
前記クロストークノイズ波形生成部は、前記クロストークノイズ波形として、NEXT波形およびFEXT波形の少なくともいずれか一方を生成する
ことを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記第1のモデルは、IBISモデルである
ことを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記第2のモデルは、Sparameterモデルである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記各種算出値として、前記デジタル信号波形に関する振幅量、傾き、遅延値、および減衰量を算出し、
前記デジタル信号波形生成部は、
前記算出部によって算出された前記振幅量、前記傾き、前記遅延値、および前記減衰量
に基づいて、前記デジタル信号波形を生成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記算出部は、
前記第1のモデルに示されている半導体の外部との入出力端子における電流値と電圧値との関係に基づいて、前記振幅量を算出し、
前記第1のモデルに示されている前記出力バッファ回路に信号を入力した時点からの出力端子における電圧値対時間に基づいて、前記傾きと、前記出力バッファ回路における前記遅延値とを算出し、
前記第2のモデルに基づいて、前記半導体パッケージおよび前記プリント基板における前記遅延値を算出し、
前記第2のモデルに基づいて、前記半導体パッケージおよび前記プリント基板における前記減衰量を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記デジタル信号波形生成部によって生成された前記デジタル信号波形を判定するデジタル信号波形判定部
をさらに備えることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記デジタル信号波形判定部は、
前記デジタル信号波形が、前記入力バッファ回路がH信号として認識する電位よりも高い電位になっている期間が、予め定められた時間以上になっているか否かを判定し、
前記デジタル信号波形が、前記入力バッファ回路がL信号として認識する電位よりも低い電位になっている期間が、予め定められた時間以上になっているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項
6に記載の解析装置。
【請求項8】
前記デジタル信号波形生成部によって生成された前記デジタル信号波形に対し、前記クロストークノイズ波形生成部によって生成された前記クロストークノイズ波形を合成する波形合成部
をさらに備えることを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項9】
前記クロストークノイズ波形生成部は、
ノイズ源の伝送線路における入力波形と、前記LC値算出部によって算出された前記LC値とに基づいて、ノイズを受ける伝送線路における前記NEXT波形を生成し、
前記ノイズ源の伝送線路における出力波形と、前記LC値算出部によって算出された前記LC値とに基づいて、前記ノイズを受ける伝送線路における前記FEXT波形を生成する
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項10】
プリント基板が備える半導体パッケージ上に設けられた、出力バッファ回路と入力バッファ回路との間のデジタル信号伝送におけるデジタル信号波形を解析する解析方法であって、
前記出力バッファ回路の動作周期および動作パターンの入力を受け付ける第1入力工程と、
前記出力バッファ回路および前記入力バッファ回路の特性を示す、第1のモデルの入力を受け付ける第2入力工程と、
前記プリント基板および前記半導体パッケージの特性を示す、第2のモデルの入力を受け付ける第3入力工程と、
前記出力バッファ回路の動作周期および動作パターンと、前記第1のモデルと、前記第2のモデルとに基づいて、デジタル信号波形を生成するための各種算出値を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出された各種算出値に基づいて、前記デジタル信号波形を生成するデジタル信号波形生成工程と
、
前記第2のモデルに基づいて、前記プリント基板および前記半導体パッケージにおける、キャパシタンス値およびインダクタンス値を含むLC値を算出するLC値算出工程と、
前記LC値算出工程において算出された前記LC値に基づいて、クロストークノイズ波形を生成するクロストークノイズ波形生成工程と
を含み、
前記クロストークノイズ波形生成工程は、前記クロストークノイズ波形として、NEXT波形およびFEXT波形の少なくともいずれか一方を生成する
ことを特徴とする解析方法。
【請求項11】
プリント基板が備える半導体パッケージ上に設けられた、出力バッファ回路と入力バッファ回路との間のデジタル信号伝送におけるデジタル信号波形を解析する解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記出力バッファ回路の動作周期および動作パターンの入力を受け付ける第1入力部、
前記出力バッファ回路および前記入力バッファ回路の特性を示す、第1のモデルの入力を受け付ける第2入力部、
前記プリント基板および前記半導体パッケージの特性を示す、第2のモデルの入力を受け付ける第3入力部、
前記出力バッファ回路の動作周期および動作パターンと、前記第1のモデルと、前記第2のモデルとに基づいて、デジタル信号波形を生成するための各種算出値を算出する算出部、
前記算出部によって算出された各種算出値に基づいて、前記デジタル信号波形を生成するデジタル信号波形生成部
、
前記第2のモデルに基づいて、前記プリント基板および前記半導体パッケージにおける、キャパシタンス値およびインダクタンス値を含むLC値を算出するLC値算出部、および、
前記LC値算出部によって算出された前記LC値に基づいて、クロストークノイズ波形を生成するクロストークノイズ波形生成部
として機能させ、
前記クロストークノイズ波形生成部は、前記クロストークノイズ波形として、NEXT波形およびFEXT波形の少なくともいずれか一方を生成する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法、および解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル信号伝送技術に関係する、半導体集積回路の入出力バッファ設計と、半導体集積回路のパッケージ設計と、プリント基板設計とにおいて、出力バッファから入力バッファまでの回路網に対して、キルヒホッフの法則を用いて立式した時間を変数とする回路方程式を解くことで、回路網中の任意の節点での過渡応答を求める動的な信号波形解析技術が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の動的な信号波形解析技術では、設計完了後の詳細な配線形状を考慮したデジタル信号波形解析に時間を要するという問題があった。また、解析対象が多くなると、さらに解析時間を要するため、解析範囲を限定せざるを得ず、網羅的に確認することが困難であるという問題があった。
【0004】
なお、下記特許文献1には、デジタル信号伝送技術に関係するプリント配線基板の配線設計のやり直し過程を無くす目的で、設計前の段階において、配線長制約、接続バッファ数制約、終端方式制約等を作成する方法が開示されている。しかしながら、下記特許文献1に開示されている技術では、設計完了後の詳細な配線形状を考慮したデジタル信号波形解析を、高速且つ網羅的に実施することができない。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するため、設計完了後の詳細な配線形状を考慮したデジタル信号波形解析を、高速且つ網羅的に実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の解析装置は、出力バッファ回路の動作周期および動作パターンの入力を受け付ける第1入力部と、出力バッファ回路および入力バッファ回路の特性を示す、第1のモデルの入力を受け付ける第2入力部と、プリント基板および半導体パッケージの特性を示す、第2のモデルの入力を受け付ける第3入力部と、出力バッファ回路の動作周期および動作パターンと、第1のモデルと、第2のモデルとに基づいて、デジタル信号波形を生成するための各種算出値を算出する算出部と、算出部によって算出された各種算出値に基づいて、デジタル信号波形を生成するデジタル信号波形生成部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設計完了後の詳細な配線形状を考慮したデジタル信号波形解析を、高速且つ網羅的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプリント基板の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る解析装置の機能構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る解析装置によって生成されるデジタル信号波形の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る解析装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る解析装置による理想的な振幅量の算出方法を説明するための図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る解析装置による実際の振幅量の算出方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る解析装置による出力バッファ回路の特性に応じた傾きの算出方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る解析装置による出力バッファ回路内部の遅延値の算出方法を説明するための図である。
【
図9】発明の第1実施形態に係る解析装置による半導体パッケージにおける伝送線路の遅延値の算出方法を説明するための図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る解析装置によるデジタル信号波形の変動量の算出方法を説明するための図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る解析装置によるデジタル信号波形の傾きの変動量の算出方法を説明するための図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る解析装置によるデジタル信号波形の判定方法を説明するための図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る解析装置の機能構成を示す図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る解析装置によるデジタル信号波形の傾きの算出方法を説明するための図である。
【
図15】2つの伝送線路間に生じるクロストークノイズを説明するための概念図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る解析装置の機能構成を示す図である。
【
図17】ノイズ源となる伝送経路における信号の入力波形と、ノイズを受ける伝送経路におけるNEXT波形とを示す図である。
【
図18】ノイズ源となる伝送経路における信号の出力波形と、ノイズを受ける伝送経路におけるFEXT波形とを示す図である。
【
図19】
図15に示すSignalAおよびSignalBのそれぞれについて、入力端側および出力端側の各々のデジタル信号波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0010】
(プリント基板10の概略構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプリント基板10の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るプリント基板10は、半導体パッケージ11と、半導体パッケージ15とを備えている。半導体パッケージ11は、半導体集積回路12を備えており、当該半導体集積回路12には、複数の出力バッファ回路13が設けられている。一方、半導体パッケージ15は、半導体集積回路16を備えており、当該半導体集積回路16には、複数の入力バッファ回路17が設けられている。複数の出力バッファ回路13の各々は、複数の入力バッファ回路17の各々に対して、プリント基板10および半導体パッケージ11,15上に形成された配線パターンからなる伝送線路14によって接続されている。伝送線路14は、特に、高速デジタル信号伝送に使用される配線パターンである。
【0011】
このように構成されたプリント基板10において、送信側の半導体集積回路12の出力バッファ回路13に入力されたデジタル信号は、出力バッファ回路13内を通過し、半導体集積回路12の端子から、半導体パッケージ11へと出力される。このとき、デジタル信号波形は、出力バッファ回路13の特性に応じた振幅量および傾きを有する。そして、半導体パッケージ11へ出力されたデジタル信号は、伝送線路14を通過し、受信側の半導体集積回路16に設けられた入力バッファ回路17に入力される。入力バッファ回路17に入力されたデジタル信号波形は、伝送線路14における反射波、近接する他の伝送線路14からのクロストーク等の影響により、ノイズが重畳された波形となり得る。
【0012】
ここで、ノイズが重畳されていない理想的なデジタル信号波形は、周期のほぼ全期間において、安定したHigh電圧およびLow電圧を維持する。しかしながら、実際のデジタル信号波形は、入力バッファ回路17および出力バッファ回路(以下、「入出力バッファ回路」と示す)の特性、伝送線路14における各種ノイズ等の影響により、High電圧期間およびLow電圧期間が短くなる場合があり、振幅が小さくなる場合もある。また、デジタル信号が入力バッファ回路17に到達するタイミングも、各種ノイズおよび伝送線路14の長さによって変化する場合がある。
【0013】
本実施形態の解析装置100は、設計段階において、これらの影響を考慮したデジタル信号波形解析を実施し、回路が正常に動作するものであることを確認することが可能な装置である。特に、本実施形態の解析装置100は、設計完了後の詳細な配線形状を考慮したデジタル信号波形解析を、高速且つ網羅的に実施することができるというものである。以下、この点について、具体的に説明する。
【0014】
(解析装置100の機能構成)
図2は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100の機能構成を示す図である。
図2に示す解析装置100は、
図1に示したプリント基板10におけるデジタル信号波形を解析することが可能な装置である。
【0015】
図2に示すように、解析装置100は、第1入力部102、第2入力部104、第3入力部106、算出部108、デジタル信号波形生成部110、およびデジタル信号波形判定部112を備える。
【0016】
第1入力部102は、デジタル信号波形の解析条件として、出力バッファ回路13の動作周期および動作データパターンの入力を受け付ける。なお、第1入力部102が入力を受け付けるデータは、解析装置100が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよく、外部の情報処理装置(例えば、サーバ等)が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよい。
【0017】
第2入力部104は、入出力バッファ回路の特性を示す第1のモデルとして、IBIS(Input/Output Buffer Information Specification)モデルの入力を受け付ける。なお、第2入力部104が入力を受け付けるデータは、解析装置100が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよく、外部の情報処理装置(例えば、サーバ等)が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよい。
【0018】
第3入力部106は、半導体パッケージ11,15およびプリント基板10の特性を示すモデルとして、Sparameter(Scattering parameters)モデルの入力を受け付ける。なお、第3入力部106が入力を受け付けるデータは、解析装置100が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよく、外部の情報処理装置(例えば、サーバ等)が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよい。
【0019】
算出部108は、第1入力部102が入力を受け付けた出力バッファ回路13の動作周期および動作データパターンと、第2入力部104が入力を受け付けたIBISモデルと、第3入力部106が入力を受け付けたSparameterモデルとに基づいて、デジタル信号波形を生成するための各種算出値を算出する。
【0020】
具体的には、算出部108は、IBISモデルに示されている、入出力バッファ回路の特性に基づいて、出力バッファ回路13の出力インピーダンスと、出力バッファ回路13の特性に応じたデジタル信号波形の傾きと、出力バッファ回路13内部での遅延値と、チップ内部終端抵抗値と、入出力端子容量とを算出する。
【0021】
また、算出部108は、Sparameterモデルに示されている、伝送線路14の特性に基づいて、伝送線路14における遅延値と、伝送線路14における減衰量とを算出する。
【0022】
デジタル信号波形生成部110は、算出部108によって算出された各種算出値に基づいて、デジタル信号波形を生成する。
【0023】
デジタル信号波形判定部112は、デジタル信号波形生成部110によって生成されたデジタル信号波形について、High電圧値、Low電圧、High電圧期間、およびLow電圧期間の各々について、適正値であるか否かを判定する。
【0024】
なお、上記した解析装置100の各機能は、例えば、解析装置100において、各種記憶装置(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等)記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することにより実現される。このプログラムは、予め解析装置100に導入された状態で提供されてもよく、外部から提供されて解析装置100に導入されるようにしてもよい。後者の場合、このプログラムは、外部記憶媒体(例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード、CD-ROM等)によって提供されてもよく、ネットワーク(例えば、インターネット等)上のサーバからダウンロードすることによって提供されるようにしてもよい。
【0025】
(解析装置100によって生成されるデジタル信号波形の構成)
図3は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100(デジタル信号波形生成部110)によって生成されるデジタル信号波形の構成を示す図である。
【0026】
図3において、出力バッファ回路13から出力されるデジタル信号波形301は、理想的な振幅量W1を有する。また、伝送線路14を通過して入力バッファ回路17に到達したデジタル信号波形301は、出力バッファ回路13内部の遅延値と、伝送線路14における遅延値とを合算した総遅延値T1と、理想的な周期T2とを持つ。
【0027】
一方、
図3において、伝送線路14を通過して入力バッファ回路17に到達したデジタル信号波形302は、出力バッファ回路13の特性に応じた傾きを有し、チップ内部終端抵抗値と出力バッファ回路13の出力インピーダンスとに応じて分圧された実際の振幅量W2を有する。
【0028】
また、伝送線路14を通過して入力バッファ回路17に到達したデジタル信号波形303は、伝送線路14における減衰量によって、デジタル信号波形302に対して遅延値と傾きと振幅量とが変動したものとなる。
【0029】
したがって、本実施形態の解析装置100(デジタル信号波形生成部110)は、理想的な振幅量W1と、実際の振幅量W2と、出力バッファ回路13の特性に応じた傾きと、出力バッファ回路13内部の遅延値と、伝送線路14における遅延値と、伝送線路14における減衰量(振幅変動量)とに基づいて、これらすべてのパラメータの影響を受けた、デジタル信号波形303を生成することができるのである。
【0030】
(解析装置100による処理の手順)
図4は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100による処理の手順を示すフローチャートである。
【0031】
まず、第1入力部102が、デジタル信号波形の解析条件として、出力バッファ回路13の動作周期および動作データパターンの入力を受け付ける(ステップS401)。次に、第2入力部104が、入出力バッファ回路の特性を示す第1のモデルとして、IBISモデルの入力を受け付ける(ステップS402)。次に、第3入力部106が、半導体パッケージ11,15およびプリント基板10の特性を示すモデルとして、Sparameterモデルの入力を受け付ける(ステップS403)。
【0032】
続いて、算出部108が、ステップS401で入力を受け付けた出力バッファ回路13の動作周期および動作データパターンと、ステップS402で入力を受け付けたIBISモデルと、ステップS403で入力を受け付けたSparameterモデルとに基づいて、デジタル信号波形を生成するための各種算出値を算出する(ステップS404)。
【0033】
そして、デジタル信号波形生成部110が、ステップS404で算出された各種算出値に基づいて、デジタル信号波形を生成する(ステップS405)。さらに、デジタル信号波形判定部112が、ステップS405で生成されたデジタル信号波形について、High電圧値、Low電圧値、High電圧期間、およびLow電圧期間の各々について、適正値であるか否かを判定する(ステップS406)。その後、解析装置100は、
図4に示す一連の処理を終了する。
【0034】
(理想的な振幅量W1の算出方法)
図5は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100による理想的な振幅量W1の算出方法を説明するための図である。
図5(a)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13の電流対電圧特性のプルダウン特性を示す。
図5(b)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13の電流対電圧特性のプルアップ特性を示す。
【0035】
理想的な振幅W1におけるLow電圧Vl_idealは、プルダウン特性の0Aに対応する電圧となる。例えば、
図5(a)に示す例では、プルダウン特性の0Aに対応する電圧「0V」が、Low電圧Vl_idealとなる。
【0036】
理想的な振幅W1におけるHigh電圧Vh_idealは、プルアップ特性の0Aに対応する電圧となる。例えば、
図5(b)に示す例では、プルアップ特性の0Aに対応する電圧「1.35V」が、High電圧Vh_idealとなる。
【0037】
したがって、解析装置100(算出部108)は、Low電圧Vl_ideal(0V)とHigh電圧Vh_ideal(1.35V)との差分を、理想的な振幅量W1として算出する。
【0038】
(実際の振幅量W2の算出方法)
図6は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100による実際の振幅量W2の算出方法を説明するための図である。
図6(a)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13および入力バッファ回路17の電流対電圧特性のプルダウン特性を示す。
図6(b)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13および入力バッファ回路17の電流対電圧特性のプルアップ特性を示す。
図6(a)および
図6(b)において、実線は、入力バッファ回路17の電流対電圧特性を示す。
図6(a)および
図6(b)において、点線は、出力バッファ回路13の電流対電圧特性を示す。
【0039】
図6(a)に示すように、出力バッファ回路13の電流対電圧特性(プルダウン特性)に対し、入力バッファ回路17の電流対電圧特性(プルダウン特性)を重ねたときの交点の電圧値が、実際の振幅におけるLow電圧Vl_realとなる。また、上記交点の電流値が、実際の振幅におけるLow出力時の出力電流Il_realとなる。例えば、
図6(a)に示す例では、上記交点の電圧値「0.22V」が、Low電圧Vl_idealとなり、上記交点の電流値「-6mA」が、出力電流Il_realとなる。
【0040】
また、
図6(b)に示すように、出力バッファ回路13の電流対電圧特性(プルアップ特性)に対し、入力バッファ回路17の電流対電圧特性(プルアップ特性)を重ねたときの交点の電圧値が、実際の振幅におけるHigh電圧Vh_realとなる。また、上記交点の電流値が、実際の振幅におけるHigh出力時の出力電流Ih_realとなる。例えば、
図6(b)に示す例では、上記交点の電圧値「1.14V」が、High電圧Vh_realとなり、上記交点の電流値「6mA」が、出力電流Ih_realとなる。
【0041】
したがって、解析装置100(算出部108)は、Low電圧Vl_real(0.22V)とHigh電圧Vh_real(1.14V)との差分を、実際の振幅量W2として算出する。
【0042】
なお、伝送線路14上に終端抵抗が設けられている場合は、抵抗器の端子における電流対電圧特性を、
図5に示す出力バッファ回路13の特性に重ねることによって得られた交点の電圧を、Low電圧Vl_idealおよびHigh電圧Vh_realとすればよい。
【0043】
(出力バッファ回路13の特性に応じた傾きの算出方法)
図7は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100による出力バッファ回路13の特性に応じた傾きの算出方法を説明するための図である。
図7(a)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13の出力端子における立ち上がり時の電流対電圧特性を示す。
図7(b)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13の出力端子における立ち下がり時の電流対電圧特性を示す。
【0044】
図7に示すように、IBISモデルには、出力バッファ回路13の出力端子における電圧対時間特性が示されている。解析装置100の算出部108は、この電圧対時間特性から、ある一定期間における電圧変動量を算出し、当該電圧変動量に基づいて、出力バッファ回路13の特性に応じた傾きを算出することができる。または、解析装置100の算出部108は、この電圧対時間特性から、ある一定の電位差における遷移時間を導出し、当該遷移時間に基づいて、出力バッファ回路13の特性に応じた傾きを算出することができる。例えば、
図7に示す例では、算出部108は、振幅の20%から80%までの遷移時間として、立ち上がり時は0.55V/100PS、立ち下がり時は0.55v/110PSを得ることができる。なお、算出部108は、立ち上がり時の傾きと立ち下がり時の傾きとを、それぞれ別個に算出してもよく、立ち上がり時の傾きと立ち下がり時の傾きとを、同一の値としてもよい。また、IBISモデルに出力バッファ回路13の出力波形の傾きが示されている場合、算出部108は、その傾きを算出結果としてもよい。
【0045】
(出力バッファ回路13内部の遅延値の算出方法)
図8は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100による出力バッファ回路13内部の遅延値の算出方法を説明するための図である。
図8(a)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13の出力端子における立ち上がり時の電流対電圧特性を示す。
図8(b)は、IBISモデルに示されている、出力バッファ回路13の出力端子における立ち下がり時の電流対電圧特性を示す。
【0046】
図8に示すように、IBISモデルには、出力バッファ回路13の出力端子における電圧対時間特性が示されている。解析装置100の算出部108は、この電圧対時間特性から、出力バッファ回路13内部の遅延値を算出することができる。例えば、算出部108は、この電圧対時間特性において振幅の半分の電位になるまで時間を、チップ内部遅延Tioとする。なお、算出部108は、立ち上がり時の遅延値と立ち下がり時の遅延値とを、それぞれ別個に算出してもよく、立ち上がり時の遅延値と立ち下がり時の遅延値とを、同一の値としてもよい。
【0047】
なお、IBISモデルには、半導体パッケージモデルとして、伝送線路14のRLC値を記載することができる。算出部108は、このRLC値から、下記数式(1)を用いて半導体パッケージ11における遅延値Tpkg[s]を導出することができる。
【0048】
Tpkg=√LC・・・(1)
【0049】
なお、半導体パッケージモデルとしてSparameterモデルがある場合、算出部108は、後述するSparameter解析処理により、半導体パッケージ11における遅延値を算出してもよい。
【0050】
(半導体パッケージ11における伝送線路14の遅延値の算出方法)
図9は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100による半導体パッケージ11における伝送線路14の遅延値の算出方法を説明するための図である。
【0051】
Sparameterモデルは、伝送線路14の周波数特性が複素数で記載されている。例えば、解析装置100の算出部108は、この伝送線路14の周波数特性に基づいて、半導体パッケージ11における伝送線路14の遅延値として、位相遅延値または群遅延値を算出することができる。
【0052】
例えば、解析装置100の算出部108は、伝送線路14の一端に入力された周波数f[Hz]の交流波が伝送線路14の他端に到達した際の位相S21Phase[deg]から、下記数式(2)を用いて、位相遅延値Tpd[s]を算出することができる。
【0053】
Tpd=(-1/f)*(S21Phase/360)・・・(2)
【0054】
また、例えば、解析装置100の算出部108は、下記数式(3)を用いて、郡遅延値Tgd[s]を算出することができる。
【0055】
Tgd=(-1/Δf)*(ΔS21Phase/360)・・・(3)
【0056】
このように、半導体パッケージモデルとしてのSparameterモデルから導出された位相遅延値Tpdまたは郡遅延値Tgdは、半導体パッケージ11における伝送線路14の遅延値Tpkgとなる。なお、解析装置100の算出部108は、同様の算出方法により、プリント基板モデルとしてのSparameterモデルから、プリント基板10における伝送線路14の遅延値Tpcbとして、位相遅延値Tpdまたは郡遅延値Tgdを算出することができる。
【0057】
(デジタル信号波形の変動量の算出方法)
図10は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100によるデジタル信号波形の変動量の算出方法を説明するための図である。
図10(a)は、振幅変動量ΔVl_lineの算出方法を説明するための図である。
図10(b)は、振幅変動量ΔVh_lineの算出方法を説明するための図である。
【0058】
入力バッファ回路17に到達したデジタル信号波形の振幅は、伝送線路14の抵抗値と伝送線路14内の電流値とによって変化する。例えば、解析装置100の算出部108は、Sparameterモデルの0Hzにおける|S21|から、下記数式(4)を用いて、伝送線路14の抵抗値Rline[Ω]を算出する。但し、|S21(0)|は、0HzにおけるS21の絶対値を示す。また、Zportは、Sparameterモデルのポートインピーダンスを示す。
【0059】
Rline=2*Zport/|S21(0)|-2*Zport・・・(4)
【0060】
さらに、解析装置100の算出部108は、下記数式(5)を用いて、伝送線路14の両端の電位差Vlineを算出する。但し、Ilineは、伝送線路14内の電流を示す。
【0061】
Vline=Iline*Rline
=Iline*2*Zport/|S21(0)|-2*Zport・・・(5)
【0062】
なお、IBIS解析処理ではIBISモデルの入出力バッファの電流対電圧特性から、デジタル信号波形の振幅量を求めたが、伝送線路14を考慮すると、伝送線路14の抵抗値Rlineによって、デジタル信号波形の振幅量が変動する。
【0063】
プルダウンでは、伝送線路14の抵抗値Rlineによって、出力バッファ端と入力バッファ端との間で、電位差Vd_lineが生じ、出力電流Il_realが減少してより0に近くなる。この電位差Vd_lineと、出力電流Il_realを上記数式(5)のIlineに代入して得られる電位差Vlineとが等しくなるとき、入力バッファ端での電位とLow電圧Vl_realとの差が振幅変動量ΔVl_lineとなる。
【0064】
また、プルアップでは、伝送線路14の抵抗値Rlineによって出力バッファ端と入力バッファ端との間で、電位差Vd_lineが生じ、出力電流Il_realが減少してより0に近くなる。この電位差Vd_lineと、出力電流Il_realを上記数式(5)のIlineに代入して得られる電位差Vlineとが等しくなるとき、入力バッファ端での電位とHigh電圧Vh_realとの差が振幅変動量ΔVh_lineとなる。
【0065】
(デジタル信号波形の傾きの変動量の算出方法)
図11は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100によるデジタル信号波形の傾きの変動量の算出方法を説明するための図である。
図11は、理想的な矩形波および傾きを持つ矩形波の周波数スペクトルを示す。
図11において実線で示すように、理想的な矩形波の周波数スペクトルは、両対数グラフで-20DB/decの直線となり、下記数式(6)で表される。但し、Vpulse(f)は、理想的な矩形波のスペクトルを結んだ線を示す。また、Fbaseは、矩形波の基本周波数を示す。
【0066】
【0067】
一方、傾きを持つ矩形波は、
図11において破線で示すように、ある周波数からスペクトルが小さくなる。この境となる周波数をknee frequencyといい、一般的には理想的な矩形波のスペクトルよりも3dB小さくなる周波数とする。Knee frequencyは、下記数式(7)で簡易的に求めることができる。但し、Fkneeは、knee frequencyを示す。また、Trfは、矩形波の立ち上がり時間または立ち下がり時間を示す。
【0068】
Fknee = 0.35 / Trf・・・(7)
【0069】
IBISから出力される波形は、傾きTrf_ibisを持ち、伝送線路14の一端に入力される。この波形のknee frequencyをFknee_inとした場合、Fknee_inは、下記数式(8)を用いて算出することができる。
【0070】
Fknee_in=0.35/Trf_ibis・・・(8)
【0071】
伝送線路14に入力された波形は、伝搬するにつれて減衰しつつ、伝送線路14の他端から出力される。伝送線路14における減衰は、Sparameterモデルの|S21|で表される。伝送線路14から出力される波形の周波数スペクトルは下記数式(9)で表される。但し、|S21(f)|は、周波数fにおけるS21の絶対値を示す。
【0072】
【0073】
伝送線路14から入力された波形のknee frequencyをFknee_inとする。また、伝送線路14から出力された波形のknee frequencyをFknee_outとする。Fknee_outは、|S21(f)|=-3dBになる周波数と考えられる。ただし、|S21(f)|=-3dBとなる周波数が、Fknee_inより大きい場合は、Fknee_out=Fknee_inとなる。下記数式(10)により、|S21(Fspara)|=-3dBであるときの、伝送線路14から出力される波形の立ち上がりまたは立ち下がり時間Trf_lineを算出することができる。
【0074】
【0075】
(デジタル信号波形の判定方法)
図12は、本発明の第1実施形態に係る解析装置100によるデジタル信号波形の判定方法を説明するための図である。
【0076】
図12において、伝送線路14を通過して入力バッファに到達したデジタル信号波形401は、解析装置100のデジタル信号波形判定部112により、H信号として認識される電位402よりも高い電位になっているか判定される。さらに、デジタル信号波形401は、デジタル信号波形判定部112により、L信号として認識される電位403よりも低い電位になっているか判定される。
【0077】
さらに、デジタル信号波形401は、デジタル信号波形判定部112により、H信号として認識される期間が、予め定められた時間T3以上になっているか判定される。さらに、デジタル信号波形401は、デジタル信号波形判定部112により、L信号として認識される期間が、予め定められた時間T3以上になっているか判定される。
【0078】
なお、電位402,403および時間T3は、解析装置100に対して入力された値を用いてもよく、IBISモデル内に記載された値を用いてもよい。
【0079】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態からの変更点について説明する。
【0080】
(解析装置100Aの機能構成)
図13は、本発明の第2実施形態に係る解析装置100Aの機能構成を示す図である。第2実施形態に係る解析装置100Aは、第3入力部106の代わりに第3入力部106Aを備える点、および、算出部108の代わりに算出部108Aを備える点で、第1実施形態に係る解析装置100と異なる。
【0081】
第3入力部106Aは、半導体パッケージ11,15およびプリント基板10の特性を示すSparameterモデルの代わりに、伝送経路14の物理情報の入力を受け付ける。なお、第3入力部106Aが入力を受け付けるデータは、解析装置100が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよく、外部の情報処理装置(例えば、サーバ等)が備えるデータベース等の記憶部に記憶されているものであってもよい。
【0082】
算出部108Aは、伝送線路14の物理情報に基づく物理情報解析処理を行うことで、伝送線路14における遅延値と、伝送線路14における減衰量(振幅変動量)と、デジタル信号波形の傾きとを算出する。これにより、解析装置100Aは、第1実施形態に係る解析装置100と同様に、デジタル信号波形を静的に生成することができる。
【0083】
(伝送線路14における遅延値の算出方法)
第3入力部106Aを介して入力される、伝送経路14の物理情報は、伝送線路14の長さ、伝送線路14の幅、伝送線路14の厚さ、伝送線路14の導体の導電率、伝送線路14の周囲の誘電体の誘電正接、伝送線路14の周囲の誘電体の実効比誘電率を含む。
【0084】
例えば、解析装置100Aの算出部108Aは、下記数式(11)により、伝送線路14における遅延値Td[s]を算出する。但し、ε0は、真空中の誘電率を示す。また、εrは、材料の比誘電率を示す。また、μ0は、真空中の透磁率を示す。また、μrは、材料の比透磁率を示す。また、Lenは、配線長[m]を示す。
【0085】
Td=(√ε0εrμ0μr)*Len・・・(11)
【0086】
なお、ほとんどの配線用材料の比透磁率μrは1であり、したがって、μrとε0とμ0とのそれぞれに数値を代入して上記数式(11)を整理すると、下記数式(12)が導き出される。
【0087】
【0088】
また、例えば、解析装置100Aの算出部108Aは、物理情報解析処理により、伝送線路14における減衰量(振幅変動量)を算出する。この際、算出部108Aは、下記数式(13)により、伝送線路14の抵抗値Rline[Ω]を算出する。但し、Lenは、伝送線路14の長さ[m]を示す。また、Wは、伝送線路14の幅[m]を示す。また、Tは、伝送線路14の厚さ[m]を示す。また、σは、伝送線路14の導体の導電率を示す。
【0089】
Rline=Len/σWT・・・(13)
【0090】
なお、算出部108Aは、伝送線路14の抵抗値Rline以外の算出値については、第1実施形態で説明したSparameter解析処理と同じ算出方法によって算出することができる。
【0091】
(デジタル信号波形の傾きの算出方法)
図14は、本発明の第2実施形態に係る解析装置100Aによるデジタル信号波形の傾きの算出方法を説明するための図である。
図14において、デジタル信号波形501およびデジタル信号波形502の傾きに着目すると、デジタル信号波形502は、伝送線路14での減衰により、デジタル信号波形501よりも傾きが減少している。デジタル信号波形502の傾きSlewRateは、下記数式(14)によって算出することができる。但し、dVは、IBIS出力波形の電圧変動量を示す。また、dtは、IBIS出力波形の遷移時間を示す。また、dt'は、伝送線路14での遷移時間増加量を示す。
【0092】
SlewRate=dV/(dt+dt')・・・(14)
【0093】
なお、デジタル信号波形501,502のdVおよびdtは、IBIS解析処理における傾き導出によって算出することができる。また、デジタル信号波形501,502のdt'は、下記数式(15)に示す一般的な近似式を用いて算出することができる。但し、dt'は、伝送線路14での遷移時間増加量[ns]を示す。また、Lenは、伝送線路14の長さ[mm]を示す。また、tan(δ)は、伝送線路14の周囲の誘電体の誘電正接を示す。また、εrは、伝送線路14の周囲の誘電体の実効比誘電率を示す。
【0094】
dt'=0.01063×tan(δ)×√εr×Len・・・(15)
【0095】
例えば、誘電正接0.02、実効比誘電率4.2、伝送線路の長さ25[mm]とすると、dt'≒0.1[ns]となる。このdt'を上記数式(14)に代入すれば、デジタル信号波形502の傾きSlewRateが求められる。
【0096】
以上説明したように、上記各実施形態の解析装置100,100Aは、出力バッファ回路13の動作周期および動作パターンと、出力バッファ回路13および入力バッファ回路17の特性を示すIBISモデル(第1のモデル)と、プリント基板10および半導体パッケージ11の特性を示すSparameterモデル(第2のモデル)とに基づいて、デジタル信号波形を生成するための各種算出値を算出し、算出された各種算出値に基づいて、デジタル信号波形を生成する。これにより、上記各実施形態の解析装置100,100Aによれば、動的な解析を実施することなく、デジタル信号波形を確認することができる。したがって、上記各実施形態の解析装置100,100Aによれば、設計完了後の詳細な配線形状を考慮したデジタル信号波形解析を、高速且つ網羅的に実施することができる。
【0097】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態からの変更点について説明する。
【0098】
上記各実施形態の解析装置100,100Aは、これまでに説明した解析手法だけでは、高速デジタル信号の主要なノイズであるクロストークノイズによるデジタル信号波形への影響を考慮できず楽観的な解析結果となるため、不具合を見逃す虞がある。そこで、第3実施形態に係る解析装置100Bは、上記第1実施形態の解析装置100に対し、以下に説明するとおり、クロストークノイズによる影響を考慮して、デジタル信号波形を生成する機能を追加で設けた構成を有することにより、より高精度なデジタル信号波形を生成することができる。
【0099】
図15は、2つの伝送線路間に生じるクロストークノイズを説明するための概念図である。
図15に示す例において、伝送線路1および伝送線路2は、それぞれリターン導体4との間の自己キャパシタンスCと、自己インダクタンスLとを持つ。また、伝送線路1伝送線路2との間には、相互インダクタンスLmおよび相互キャパシタンスCmが存在する。一般的には、クロストークノイズ波形は、これらのLC値と、入力信号の振幅と、立ち上がりまたは立ち下り時間Trf等のパラメータで決まることが知られている。従来のIBIS解析処理およびSparameter解析処理では、伝送線路のLC値を導出する手段が無く、クロストークノイズを考慮することができなかった。
【0100】
そこで、第3実施形態に係る解析装置100Bは、Sparameter解析処理において、伝送線路のSparameterからLC値を算出する。そして、解析装置100Bは、クロストークノイズ波形作成処理において、LC値と、入力信号の振幅と、立ち上がりまたは立ち下がり時間と、伝送線路遅延値とを用いて、クロストークノイズ波形を作成する。さらに、解析装置100Bは、波形合成処理において、クロストークノイズ波形を、デジタル信号波形に足し合わせる。これにより、解析装置100Bは、クロストークノイズを考慮したデジタル信号波形を生成することができる。
【0101】
(解析装置100Bの機能構成)
図16は、本発明の第3実施形態に係る解析装置100Bの機能構成を示す図である。第3実施形態に係る解析装置100Bは、LC値算出部114、クロストークノイズ波形生成部116、および波形合成部118をさらに備える点で、第1実施形態に係る解析装置100と異なる。
【0102】
LC値算出部114は、伝送線路のSparameterから、LC値を算出する。
【0103】
クロストークノイズ波形生成部116は、LC値算出部114によって算出されたLC値と、入力信号の振幅と、立ち上がりまたは立ち下がり時間と、伝送線路遅延値とを用いて、クロストークノイズ波形を生成する。
【0104】
波形合成部118は、デジタル信号波形生成部110によって生成されたデジタル信号波形に対し、クロストークノイズ波形生成部116によって生成されたクロストークノイズ波形を合成することにより、クロストークノイズを考慮したデジタル信号波形を生成する。
【0105】
(LC値算出部114によるLC値の算出方法)
以下、LC値算出部114による、伝送線路のSparameterからの、LC値算出方法を説明する。まず、LC値算出部114は、Sparameterから、下記数式(16)および(17)により、特性インピーダンスZcと伝搬定数γとを導出する。但し、ZoはSparameterの基準インピーダンス、S11は反射特性、S21は挿入損失を表す。
【0106】
【0107】
【0108】
次に、LC値算出部114は、特性インピーダンスZcおよび伝搬定数γから、下記数式(18)および(19)により、LC値を導出する。
【0109】
L(ω)=Im{γZc}/ω・・・(18)
【0110】
C(ω)=Im{γ/Zc}/ω・・・(19)
【0111】
(クロストークノイズ波形生成部116によるクロストークノイズ波形の生成方法)
図17は、ノイズ源となる伝送経路における信号の入力波形と、ノイズを受ける伝送経路におけるNEXT波形とを示す図である。
図18は、ノイズ源となる伝送経路における信号の出力波形と、ノイズを受ける伝送経路におけるFEXT波形とを示す図である。
【0112】
クロストークノイズ波形は、ノイズ源となる信号を伝送線路のどの端に入力するかによって変化する。例えば、
図15に示す例において、伝送線路1の左端にノイズ源となる信号を入力した場合、ノイズを受ける伝送線路2では、左端と右端でノイズ波形が異なる。ノイズ源の入力に近い端に表れるクロストークノイズは、NEXT(Near End XTalk)と呼ばれ、遠い端に現れるクロストークノイズは、FEXT(Far End XTalk)と呼ばれる。
【0113】
図17に示す入力波形において、Vinは、ノイズ源となる信号の入力波形の振幅を示す。また、SRinは、ノイズ源となる信号の入力波形の傾きを示す。また、Tinit_aは、ノイズ源となる信号の初期遅延時間を示す。また、Trfinは、ノイズ源となる信号の入力波形のHLの遷移期間を示す。また、UIaは、ノイズ源となる信号のユニットインターバルを示す。
【0114】
また、
図18に示す出力波形において、Tdlyaは、ノイズ源となる信号配線の伝送線路遅延時間を示す。また、Trfoutは、ノイズ源となる信号の出力波形のHLの遷移期間を示す。
【0115】
なお、
図17および
図18に示す各パラメータ値は、解析条件として入力されるか、もしくは、IBIS解析処理またはSparameter解析処理によって算出される。
【0116】
また、
図17に示すNEXT波形において、Vnextは、NEXTの電圧を示す。また、SRnext1は、NEXTの第一の遷移期間の傾きを示す。また、SRnext2は、NEXTの第二の遷移期間の傾きを示す。また、Tnextは、NEXTの期間を示す。また、tn1およびtn2は、NEXTの開始時間を示す。
【0117】
図18に示すNEXT波形において、VfextはFEXTの電圧を示す。また、SRfext1は、FEXTの第一の遷移期間の傾きを示す。また、SRfext2は、FEXTの第二の遷移期間の傾きを示す。また、Tfextは、FEXTの期間を示す。また、tf1およびtf2は、FEXTの開始時間を示す。また、Tdlybは、ノイズを受ける信号配線の伝送線路遅延時間を表す。
【0118】
クロストークノイズ波形生成部116は、クロストークノイズ波形作成処理において、Vnext、SRnext1、SRnext2、Tnext、tn1、tn2、Vfext、SRfext1、SRfext2、Tfext、tf1、およびtf2を算出することにより、クロストークノイズ波形を生成することができる。
【0119】
具体的には、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(20)により、Vnextを算出する。但し、Vnextは、下記関係式(21)を満たす。また、下記数式(20)において、C、Cm、L、およびLmは、LC値算出部114によって算出された値が用いられる。
【0120】
【0121】
【0122】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(22)により、SRnext1を算出する。
【0123】
SRnext1=SRin・・・(22)
【0124】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(23)により、Tnextを算出する。
【0125】
Tnext=2Td・・・(23)
【0126】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(24)により、tn1を算出する。
【0127】
tn1=Tinit_a・・・(24)
【0128】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(25)により、tn2を算出する。
【0129】
tn2=Tinit_a+UIa・・・(25)
【0130】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(26)により、Vfextを算出する。但し、Vfextは、下記関係式(27)を満たす。また、下記数式(26)において、C、Cm、L、およびLmは、LC値算出部114によって算出された値が用いられる。
【0131】
【0132】
【0133】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(28)により、Tfextを算出する。
【0134】
Tfext=Trfout/2・・・(28)
【0135】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(29)により、tf1を算出する。
【0136】
tf1=Tinit_a+Tdlyb・・・(29)
【0137】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、下記数式(30)により、tf2を算出する。
【0138】
tf2=Tinit_a+Tdlyb+UIa・・・(30)
【0139】
なお、Tdは、2本の伝送配線が並走する区間の伝送線路遅延時間を表す。但し、Tdの代わりに、TdlyaおよびTdlybのうちの大きいほうの値を使用して、より悲観的なノイズ波形を作成してもよい。
【0140】
また、クロストークノイズ波形生成部116は、従来のSparameter解析処理における傾き変動量の導出手法を用いて、スルーレートVin/Trf_lineを、SRfext1およびSRfext2として導出する。但し、Trf_lineには、ノイズの影響を受ける伝送線路の挿入損失を代入する。また、SRfext1は、ノイズ源の伝送線路における波形のスルーレートと正負が反転したものとなる。なお、Vinは、従来のSparamter解析処理における振幅変動量の導出手法を用いて、より精度の高い値を用いてもよい。
【0141】
同様に、クロストークノイズ波形生成部116は、従来のSparameter解析処理における傾き変動量の導出手法を用いて、SRnext2を算出する。但し、パラメータS21には、ノイズの影響を受ける伝送線路の挿入損失を2倍して代入する。また、SRnext2は、ノイズ源の伝送線路におけるスルーレートと正負が反転したものとなる。
【0142】
クロストークノイズ波形生成部116は、このように算出された各パラメータを用いて、FEXT波形およびNEXT波形を有するクロストークノイズ波形を生成する。そして、波形合成部118は、クロストークノイズ波形生成部116によって生成されたクロストークノイズ波形を、デジタル信号波形生成部110によって生成されたデジタル信号波形に対して合成する。これにより、波形合成部118は、クロストークノイズを考慮したデジタル信号波形を生成する。
【0143】
なお、n本の伝送配線があるとき、ある1本の伝送配線は他の全ての伝送配線にクロストークノイズをもたらす。1本の伝送配線につき、n-1のクロストークノイズが存在する。したがって、n本の伝送配線があるとき、全クロストークノイズ数は、n(n-1)となる。このため、n本の伝送配線を持つSparamterでは、n(n-1)のクロストークノイズ波形が作成される。
【0144】
(波形合成部118によるクロストークノイズ波形の合成方法の具体例)
図19は、
図15に示すSignalAおよびSignalBのそれぞれについて、入力端側および出力端側の各々のデジタル信号波形の一例を示す図である。
図19において、クロストークノイズの影響を考慮しないデジタル信号波形を実線で示す。また、クロストークノイズの影響を受けたデジタル信号波形を破線で示す。また、クロストークノイズの影響を受けたデジタル信号波形におけるアイパターンの内側部分をハッチングで示す。
【0145】
図19に示すように、SignalAとSignalBとの間で、相互にクロストークノイズが発生する。このため、SignalAは、SignalBからのクロストークノイズの影響を受けたものとなる。また、SignalBは、SignalAからのクロストークノイズの影響を受けたものとなる。
【0146】
既に説明したとおり、第3実施形態に係る解析装置100Bは、クロストークノイズ波形を生成し、当該クロストークノイズ波形をデジタル信号波形に合成する。例えば、解析装置100Bは、SignalAに対し、SignalBからのクロストークノイズに相当するクロストークノイズ波形を合成する。また、例えば、解析装置100Bは、SignalBに対し、SignalAからのクロストークノイズに相当するクロストークノイズ波形を合成する。
【0147】
これにより、第3実施形態に係る解析装置100Bは、SignalAおよびSignalBの各々に対し、実際に影響を受けたクロストークノイズと、デジタル信号波形に合成されたクロストークノイズ波形とを相殺し、その結果、クロストークノイズの影響を受けた後のデジタル信号波形を、理想的なデジタル信号波形(
図19に示す、クロストークノイズの影響を考慮しないデジタル信号波形)とすることができる。
【0148】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0149】
10 プリント基板
11,15 半導体パッケージ
12,16 半導体集積回路
13 出力バッファ回路
14 伝送線路
17 入力バッファ回路
100,100A,100B 解析装置
102 第1入力部
104 第2入力部
106,106A 第3入力部
108,108A 算出部
110 デジタル信号波形生成部
112 デジタル信号波形判定部
114 LC値算出部
116 クロストークノイズ波形生成部
118 波形合成部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0150】