(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】現像剤収容容器、現像剤補給装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20221004BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G03G15/08 342
G03G21/18
(21)【出願番号】P 2018220553
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】北 恵美
(72)【発明者】
【氏名】仁枝 弘晃
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-197636(JP,A)
【文献】特開2013-160795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収納する現像剤収容部と、
前記現像剤収容部内の現像剤を現像装置へ排出する排出口と、
前記現像剤収容部内の現像剤を前記排出口へ搬送するための現像剤搬送路と、
前記現像剤収容部内の現像剤を前記現像剤搬送路へ供給する供給口と、
前記現像剤搬送路内に配置され、現像剤を前記排出口へ搬送する搬送部材と、
前記現像剤搬送路と前記現像剤収容部とを仕切る仕切り部材と、
前記仕切り部材に設けられ、前記現像剤搬送路と前記現像剤収容部とを連通する連通口と、を備え
、
前記搬送部材は、
前記供給口から前記排出口に現像剤を搬送する第一羽根と、
前記第一羽根と逆方向に現像剤を搬送して前記排出口に現像剤を搬送する第二羽根と、を有する現像剤収容容器において、
前記連通口を、前記排出口と前記供給口との間
であって前記第一羽根と対応する位置に設けたことを特徴とする現像剤収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の現像剤収容容器において、
前記連通口は、連通方向と直交する方向が縁部で囲われた穴形状であることを特徴とする現像剤収容容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像剤収容容器において、
前記連通口の現像剤搬送方向長さが、前記排出口の現像剤搬送方向長さよりも短いことを特徴とする現像剤収容容器。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の現像剤収容容器において、
前記搬送部材は、軸部と少なくとも前記供給口に供給された現像剤を前記排出口へ搬送するための螺旋状の羽部とを有しており、
前記連通口の現像剤搬送方向長さが、前記羽部の1ピッチよりも短いことを特徴とする現像剤収容容器。
【請求項5】
請求項4に記載の現像剤収容容器において、
前記羽部の1ピッチは、前記排出口の現像剤搬送方向長さよりも長く、
前記排出口の現像剤搬送方向長さは、前記連通口の現像剤搬送方向長さよりも長いことを特徴とする現像剤収容容器。
【請求項6】
現像剤収容容器を備え、
前記現像剤収容容器内の現像剤を現像装置に補給する現像剤補給装置において、
前記現像剤収容容器として、請求項1乃至5いずれか一項に記載の現像剤収容容器を用いたことを特徴とする現像剤補給装置。
【請求項7】
潜像担持体と、
前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置と、
前記現像装置に補給する現像剤を収容した現像剤収容容器とを備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
前記現像剤収容容器として、請求項1乃至5いずれか一項に記載の現像剤収容容器を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
潜像担持体と、
前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置と、
前記現像装置に補給する現像剤を収容した現像剤収容容器とを備えた画像形成装置において、
前記現像剤収容容器として、請求項1乃至5いずれか一項に記載の現像剤収容容器を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤収容容器、現像剤補給装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、現像剤を収納する現像剤収容部と、現像剤収容部内の現像剤を現像装置へ排出する排出口と、現像剤収容部内の現像剤を排出口へ搬送するための現像剤搬送路と、現像剤収容部内の現像剤を現像剤搬送路へ供給する供給口と、現像剤搬送路内に配置され、現像剤を排出口へ搬送する搬送部材と、現像剤搬送路と現像剤収容部とを仕切る仕切り部材と、仕切り部材に設けられ、現像剤搬送路と現像剤収容部とを連通する連通口とを備えた現像剤収容容器が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記現像剤収容容器として、現像剤搬送内で現像剤が凝集するのを防ぐ目的で、排出口よりも現像剤搬送方向下流側に連通口を設け、排出口から排出されなかった余剰現像剤を上記連通口から現像剤収容部へ還流させるものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現像剤収容部内の現像剤量が少なくなったときに排出口から現像装置へ排出される現像剤の量が減少するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、現像剤を収納する現像剤収容部と、前記現像剤収容部内の現像剤を現像装置へ排出する排出口と、前記現像剤収容部内の現像剤を前記排出口へ搬送するための現像剤搬送路と、前記現像剤収容部内の現像剤を前記現像剤搬送路へ供給する供給口と、前記現像剤搬送路内に配置され、現像剤を前記排出口へ搬送する搬送部材と、前記現像剤搬送路と前記現像剤収容部とを仕切る仕切り部材と、前記仕切り部材に設けられ、前記現像剤搬送路と前記現像剤収容部とを連通する連通口と、を備え、前記搬送部材は、前記供給口から前記排出口に現像剤を搬送する第一羽根と、前記第一羽根と逆方向に現像剤を搬送して前記排出口に現像剤を搬送する第二羽根と、を有する現像剤収容容器において、前記連通口を、前記排出口と前記供給口との間であって前記第一羽根と対応する位置に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、現像剤収容部内の現像剤量が少なくなったときの排出口から現像装置へ排出される現像剤量の減少を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】軸方向と直交する方向に切ったトナーカートリッジの断面図。
【
図4】トナー補給口よりも現像剤搬送方向下流側に連通口を設けた例を示す図。
【
図5】トナー補給口の真上に連通口を設けた例を示す図。
【
図6】
図4に示す構成における現像剤収容部のトナーが少なくなったときのトナー補給量の減少について説明する図。
【
図7】
図5に示す構成における現像剤収容部のトナーが少なくなったときのトナー補給量の減少について説明する図。
【
図8】本実施形態における現像剤収容部のトナーが少なくなったときのトナーの補給と、現像装置から流れてきた空気の流れについて、説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式で画像を形成する電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
図1に示すプリンタは、モノクロプリンタである。その装置本体100には、着脱ユニットとしてのプロセスカートリッジ1が着脱可能に装着されている。プロセスカートリッジ1は、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体2上の潜像を可視画像化する現像手段としての現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード5等を備える。また、感光体2の周囲には表面を露光する露光手段としてのLEDヘッドアレイ6が配設されている。
【0009】
また、プロセスカートリッジ1には、現像剤収容容器としてのトナーカートリッジ7が着脱可能に設けられている。トナーカートリッジ7は、その容器本体22に、現像装置4へ補給する現像剤であるトナーを収容する現像剤収容部8を有する。さらに、本実施形態のトナーカートリッジ7は、クリーニングブレード5で除去されたトナー(廃トナー)を回収する現像剤回収部9も一体的に有している。
【0010】
また、プリンタは、転写体としての用紙に画像を転写する転写ユニット10と、用紙を供給する給紙装置11と、用紙に転写された画像を定着させる定着装置12と、用紙を装置外へ排出する排紙装置13とを備える。
【0011】
転写ユニット10は、転写フレーム30に回転自在に支持された転写部材としての転写ローラ14を備える。転写ローラ14は、プロセスカートリッジ1を装置本体100に装着した状態で感光体2と当接しており、両者の当接部において転写ニップが形成されている。また、転写ローラ14は、電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加されるようになっている。
【0012】
給紙装置11は、用紙Pを収容した給紙カセット15や、給紙カセット15に収容されている用紙Pを給送する給紙ローラ16を備える。また、給紙ローラ16に対して用紙搬送方向下流側には、搬送タイミングを計って用紙を二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ17が設けてある。なお、用紙Pには、厚紙、はがき、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。また、用紙以外の記録媒体として、OHPシートやOHPフィルム等を用いることも可能である。
【0013】
定着装置12は、定着部材としての定着ローラ18と、加圧部材としての加圧ローラ19とを備える。定着ローラ18は、定着ローラ内部に設置された赤外線ヒータ23によって加熱されるようになっている。加圧ローラ19は、定着ローラ18側へ加圧されて定着ローラ18に当接し、その当接箇所において定着ニップが形成されている。
【0014】
排紙装置13は、一対の排紙ローラ20を備える。排紙ローラ20によって装置外に排出された用紙は、装置本体100の上面を凹ませて形成された排紙トレイ21上に積載されるようになっている。
【0015】
続いて、
図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。作像動作が開始されると、プロセスカートリッジ1の感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電ローラ3によって感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。外部の機器から入力される画像情報に基づいて、LEDヘッドアレイ6から感光体2の帯電面に光が照射されて、感光体2の表面に静電潜像が形成される。
【0016】
このように感光体2上に形成された静電潜像に、現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0017】
また、作像動作が開始されると、転写ローラ14が回転駆動し、転写ローラ14に、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加されることによって、転写ローラ14と感光体2との間において転写電界が形成される。
【0018】
装置本体100の下部では、給紙ローラ16が回転駆動を開始し、給紙カセット15から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ17によって搬送を一旦停止される。
【0019】
その後、所定のタイミングでレジストローラ17の回転駆動を開始し、感光体上のトナー画像が転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを転写ニップへ搬送する。そして、上記転写電界によって、感光体2上のトナー画像が転写体たる用紙P上に一括して転写される。また、用紙Pに転写しきれなかった感光体上の残留トナーは、クリーニングブレード5によって除去され、除去されたトナーは、現像剤回収部9へ搬送され回収される。
【0020】
その後、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置12へと搬送され、定着装置12において用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、一対の排紙ローラ20によって装置外に排出され、排紙トレイ21上にストックされる。
【0021】
また、装置本体100の側面(図中右側側面)には、図中矢印方向に開閉可能な開閉カバー37が設けられている。開閉カバー37は、リンク機構などによりLEDヘッドアレイ6が接続されており、開閉カバー37の開らく動作にあわせて、LEDヘッド6が、プロセスカートリッジ1の着脱の邪魔とならない退避位置へ移動するようになっている。これにより、開閉カバー37を開けることで、開いた開口部から、プロセスカートリッジ1が装置本体から取り出される。
【0022】
図2は、軸方向と直交する方向に切ったトナーカートリッジ7の断面図である。
図2に示すように、トナーカートリッジ7の容器本体22には、現像装置4へ補給する現像剤であるトナーを収容する現像剤収容部8と、クリーニングブレード5で除去されたトナー(廃トナー)を回収する現像剤回収部9とを有している。また、容器本体22には、現像剤収容部8内のトナーを現像装置4へ搬送するための現像剤搬送路44を有している。
【0023】
現像剤収容部8には、現像剤収容部内のトナーを攪拌する攪拌部材としての第一アジテータ41と、第二アジテータ42とを備えている。各アジテータ41,42は、アジテータ軸41b,42bと、アジテータ軸に取り付けられた樹脂シートからなる羽部41a,42aとを備えている。各アジテータ41,42は、駆動部によって図の矢印方向(図中時計回り)に回転しながら現像剤収容部内のトナーを攪拌する。
【0024】
現像剤搬送路44内には、搬送部材たる搬送スクリュー43が設けられている。また、現像剤回収部9には、クリーニングブレード5によって除去されたトナーを現像剤回収部9へ搬入する搬入スクリュー9aが設けられている。
【0025】
図3は、
図2の線分αの断面図である。
図3に示すように、現像剤搬送路44は、現像剤収容部8の軸方向一端側(図中左側)に設けられている。現像剤搬送路44は、仕切り部材としての仕切り部45により現像剤収容部8を仕切ることで形成されている。現像剤搬送路44の軸方向他端には、現像剤収容部内トナーが供給されるトナー供給口44bが設けられている。また、現像剤搬送路44には、現像剤収容部内のトナーを、現像装置4へ補給する排出口としてのトナー補給口44aが設けられている。
【0026】
搬送スクリュー43は、現像剤搬送路44を貫通しており、軸部43Bと、トナーを図中矢印B1方向に搬送する(トナーをトナー供給口44bからトナー補給口44aへ搬送する)螺旋状の第一羽部43a1と、トナー補給口44aよりも軸方向一端側(図中左側)に設けられ、現像剤搬送路44内のトナーを図中矢印B2方向に搬送する(第一羽部43a1の搬送方向とは逆方向に搬送する)螺旋状の第二羽部43a2とを有している。第一羽部43a1のピッチは、第二羽部43a2のピッチよりも大きくなっている。
【0027】
また、仕切り部45のトナー補給口44aよりも第一羽部43a1によるトナー搬送方向(以下、現像剤搬送方向という)上流側、かつ、トナー供給口44bよりも現像剤搬送方向下流側(トナー供給口44bとトナー補給口44aとの間)には、現像剤搬送路44と現像剤収容部8とを連通する連通口45dが設けられている。
【0028】
連通口45dは、現像剤搬送路44と現像剤収容部8との連通方向(図中上下方向)と直交するいずれの方向にも縁を有する(連通方向と直交する方向が縁で囲われた)穴形状である。同様に、トナー補給口44a、トナー供給口44bも連通方向と直交する方向が縁で囲われた穴形状である。
【0029】
また、トナー補給口44aの現像剤搬送方向長さL1は、搬送スクリュー43の第一羽部43a1のピッチPよりも短くなっている。また、連通口45dの現像剤搬送方向長さL2は、トナー補給口44aの現像剤搬送方向長さL1よりも短くなっている。すなわち、本実施形態では、第一羽部43a1のピッチP>トナー補給口44aの現像剤搬送方向長さL1>連通口45dの現像剤搬送方向長さL2となっている。
【0030】
また、
図3に示すように容器本体22の軸方向一端側(図中左側)には、各アジテータ41,42や搬送スクリュー43に駆動力を伝達する駆動伝達部50が設けられている。駆動伝達部50は、搬送スクリュー43の一端に固定されたスクリューギヤ52や、段ギヤ51などを有している。スクリューギヤ52は、第一ギヤ部51aと第二ギヤ部51bとからなる段ギヤ51の第二ギヤ部51bに噛み合っている。
【0031】
第二ギヤ部51bからスクリューギヤ52に駆動力が伝達されると、搬送スクリュー43が回転駆動し、現像剤収容部8内のトナーが、第一羽部43a1によりトナー供給口44bへ向けて搬送される(図中矢印B1方向)。トナー搬送スクリューによりトナー供給口から現像剤搬送路へ供給されたトナーは、引き続き第一羽部43a1により現像剤搬送路内をトナー補給口へ向けて搬送される(図中矢印B1方向)。そして、図中矢印Cに示すように、トナー補給口44aから落下して現像装置4へ補給される。
【0032】
また、トナー補給口44aから落下しなかった一部のトナーは、第二羽部43a2により、トナー補給口44aへ戻され(図中矢印B2方向)、トナー補給口44aへ落下する。現像装置4へのトナー補給量は、搬送スクリュー43の駆動時間により制御される。このように本実施形態のトナーカートリッジ7は、現像装置4へ現像剤たるトナーを補給する補給装置としての機能を有している。
【0033】
従来、現像剤搬送路44の上部に、仕切り部45が形成されていないトナーカートリッジがあった。このように上部に仕切り部45を形成しない理由は次のとおりである。すなわち、現像装置内にトナーが補給されて現像装置内の現像剤の嵩が増したり、現像ローラの回転に伴って現像装置内に空気が取り込まれたりするなどして現像装置内の圧力(以下、装置内圧という)が高くなることがある。トナー補給口44aは、現像装置の内部と連通しているため、装置内圧が現像剤搬送路に及ぶ。現像剤搬送路44の上部も塞がれており、現像剤搬送路の開口がトナー補給口44aとトナー供給口44bのみの場合、現像剤搬送路内のトナーには、搬送スクリュー43のトナー搬送圧力と、このトナー搬送力とは逆方向の装置内圧とがかかる。このように、現像剤搬送路44内のトナーには、両側から互いに逆方向の圧力がかかるため、トナーに高い圧力がかかる。
【0034】
トナーに高い圧力がかかると、トナー粒子同士が凝集しやすい物性のトナーを使用していたり、輸送による振動でトナーが固く締まっていたり、高温高湿環境で保管したトナーを使用したりする場合など、現像剤搬送部内でトナーが流れにくい状態の場合に、現像剤搬送路内でトナーの固まりができることがある。現像剤搬送路44の上部に仕切り部45を形成せずに、現像剤搬送路44の上部を開放することで、現像剤搬送路内のトナーが、両側から互いに逆方向の圧力を受けた際は、上部の開放された部分から現像剤搬送路内のトナーの一部が還流し、現像剤搬送路内のトナーにかかる圧力を低減することができる。これにより、現像剤搬送路内でトナーの固まりができるのを防ぐことができる。
【0035】
しかし、かかる従来構成においては、現像剤収容部内の現像剤の量が少なくなると、一回の補給動作により現像装置へ補給されるトナー補給量が規定のトナー補給量に対して1/3以下に減少するという課題が発生した。
【0036】
本出願人は、次のような理由でトナー補給量が減少していると考えている。すなわち、現像剤収容部内が十分にトナーで満たされているときは、現像収容部内のトナーの高さに応じた圧力(以下、剤圧という)により、装置内圧が多少高まったくらいでは、現像剤搬送路の上部からトナーが還流することがない。しかし、現像剤収容部内のトナー量が減って剤圧が低下すると、装置内圧により現像剤搬送路内の多くのトナーが現像剤収容部へ還流する。その結果、トナー補給口44aから落下するトナー量が減少し、トナー補給量が減少したと考えている。
【0037】
そこで、本出願人は、
図4に示すトナーカートリッジ7を試作した。
図4に示す試作品は、現像剤搬送路44の上部にも仕切り部45を設けるとともに、仕切り部45のトナー補給口44aよりも下流側に連通口45dを設けたものである。仕切り部45で現像剤搬送路44の上部を塞ぐことで、現像剤収容部へのトナー還流を防げる。また、完全に仕切り部45で現像剤搬送路44の上部を塞いでしまうと、上述したように現像搬送路内でトナーが固まるおそれがある。そのため、トナー補給口44aよりも現像剤搬送下流に連通口45dを設けて、現像剤搬送路内のトナーを適度に還流できるようにした。
【0038】
しかしながら、この
図4に示す試作品で実験を行ったところ、現像剤収容部8のトナーが少なくなったときのトナー補給量の減少を十分抑制できず、従来構成に比べて、1~2割程度の改善効果しか得られなかった。
【0039】
そこで、本出願人は、
図5に示すように、トナー補給口44aの真上に連通口を設けたものや、トナー供給口44bとトナー補給口44aとの間に連通口を設けたもの(本実施形態:
図3参照)についても実験を行った。その結果、
図3のトナー供給口44bとトナー補給口44aとの間に連通口45dを設けたものが、現像剤収容部のトナーが少なくなったときのトナー補給量の減少を最も抑制することができた。
【0040】
本出願人は、次のような理由でトナー供給口44bとトナー補給口44aとの間に連通口45dを設けたものが、現像剤収容部内のトナーが少なくなったときのトナー補給量の減少を最も抑制することができたと考えている。
装置内圧が高くなると、現像剤搬送路内のトナーには、搬送スクリュー43のトナー搬送方向とは逆方向の装置内圧が加わる。そのため、現像剤搬送路内のトナーは、トナー補給口44aへ向かって移動し難くなる。
【0041】
現像剤収容部内のトナーの量が多いときは、トナー供給口44bの搬送方向手前では、剤圧(トナーの高さに応じた圧力)が高いため、現像剤収容部内のトナーが移動し難くなっていても、搬送スクリューの搬送力で規定のトナーがトナー供給口44bから供給され、トナー供給口44bから供給されたトナーで現像剤搬送路内のトナーを装置内圧に抗して押し出すようにして移動させることができ、現像剤搬送路内でのトナーの移動量が減少しない。
【0042】
しかし、現像剤収容部内のトナーの量が少なくなり、トナー供給口44bの手前の剤圧が低下すると、搬送スクリュー43によってトナー供給口44bに搬送されるトナーの一部がトナー供給口44bから現像剤搬送路44へ入らず、現像剤収容部へ還流してしまう。その結果、トナー供給口44bから供給されるトナー量が減り、トナー供給口44bから供給されたトナーにより、現像搬送路内のトナーをトナー補給口44aへ向けて装置内圧に抗して押し出す効果も低下する。そのため、現像剤搬送路内のトナー補給口44aへの移動量が減る。その結果、一回の補給動作時間内でトナー補給口から落下するトナー量が減り、トナー補給量が減少すると考えている。
【0043】
連通口45dを設けることで、装置内圧が高まった際には、連通口45dからトナーが現像剤収容部へ還流し、連通口45dとトナー補給口44aとの間に隙間ができる。その隙間を通って現像装置内の空気が連通口45dから排出されることで、現像剤搬送路内でのトナーにかかる圧力が低減し、トナーの移動し難さが低減されると考えられるが、
図4に示した構成や
図5に示す構成では、連通口45dから現像装置内の空気が排出されることによる現像剤搬送路内のトナー移動し難さを十分に改善できなかったと考えられる。
【0044】
図4に示した連通口45dをトナー補給口44aよりも現像剤搬送方向下流側に設けたものの場合は、トナー補給口44aから現像剤搬送下流側の領域のトナーが、連通口45dから還流し、トナー補給口44aから現像剤搬送下流側の領域で隙間ができ、現像装置内の空気は、
図6の矢印E1に示すように流れる。このような隙間ができることで、トナー補給口44aよりも現像剤搬送下流側の領域でトナーが流れやすくなる。これにより、トナー補給口44aよりも現像剤搬送下流側の領域でトナーがトナー補給口44aへ向かって移動しやすくなる。
【0045】
しかし、トナー補給口44aよりも現像剤搬送下流側の領域は、トナー補給口から落下しなかったトナーが移動してくるだけである。また、トナー補給口44aよりも現像剤搬送下流側の領域の第二羽部43a2のピッチは、第一羽部43a1のピッチよりも狭く、搬送スクリュー一回転当たりのトナー移動量も少ない。また、トナー補給口44aよりも現像剤搬送下流側の領域のトナー搬送方向は、トナー供給口44bからトナー補給口44aの間のトナー搬送方向とは逆方向である。その結果、トナー供給口44bからトナー補給口44aの間のトナーの移動し難さは、あまり改善されず、搬送スクリュー43によってトナー供給口44bに搬送されるトナーの一部が図中矢印Fに示すように、トナー供給口44bから現像剤搬送路44へ入らず、現像剤収容部へ還流してしまう。よって、連通口45dをトナー補給口44aよりも現像剤搬送方向下流側に設けたものの場合は、一回の補給動作におけるトナー補給量の減少を十分に抑制できかったのではないかと考えている。
【0046】
図5に示した連通口45dをトナー補給口44aの真上に設けたものでは、トナー補給口44a付近のトナーが連通口45dへ還流し、現像装置内の空気は、
図7の矢印E1に示すように流れる。トナー補給口44a付近のトナーが連通口45dへ還流することで、トナー補給口付近のトナー量が減少する。トナー補給口付近のトナー量が減少することで、上流側からトナーが流れ込んでくる。その結果、連通口45dよりも上流側のトナーの移動し難さが徐々に改善されていく。しかしながら、
図5に示す連通口45dからトナー供給口44bまでの距離が長いため、トナー供給口44bからトナー補給口44aまでの全体の領域で、トナーの移動し難さが改善されるまで時間を要する。その結果、補給動作開始からトナー供給口44bからトナー補給口44aまでの全体の領域で、トナーの移動し難さが改善されるまで時間がかかり、一回の補給動作時間におけるトナー補給量の減少を、十分に改善できなかったのではないかと考えている。
【0047】
一方、連通口45dを、トナー供給口44bからトナー補給口44aの間に設けた本実施形態の場合は、現像剤収容部内のトナー量が少なくなったときの、トナー補給量の減少を2割程度に抑えることができた。2割程度の減少であれば、現像剤収納部のトナーが少なくなったときでも、ほぼ規定のトナー量を補給することが可能となる。
【0048】
図8は、本実施形態における現像剤収容部のトナーが少なくなったときのトナーの補給と、現像装置から流れてきた空気の流れについて、説明する図である。
本実施形態においては、現像剤収容部8のトナーが少なくなったとき、装置内圧により連通口45dから現像搬送路内のトナーが現像剤収容部8へ還流し、トナー補給口44aと連通口45dとの間に現像装置内の空気が流れる隙間が生じる。その結果、現像装置内の空気は、
図8の矢印E1に示すように流れる。このように現像装置内の空気が流れる隙間ができることで、トナー補給口44aから連通口45dの間でトナーが移動しやすくなり、搬送スクリューの回転で、良好にトナーがトナー補給口44aへ移動しやすくなる。また、連通口45dからトナーが還流して連通口付近のトナーが少なくなることで、上流側からトナーが流れ込んでくる。その結果、連通口45dよりも上流側でのトナーの移動しやすさも徐々に改善されていく。本実施形態では、連通口45dとトナー供給口44bとの間の距離が、トナー補給口44aの真上に連通口45dを設けたものに比べて短い。従って、短い時間で、トナー供給口44bからトナー補給口44aまでの全体の領域で、トナーの移動し難さが改善される。このように、トナー補給動作開始後、比較的短い時間で、現像剤搬送内のトナー移動し難さが改善されることで、一回の補給動作におけるトナー補給量の減少を抑制できたのではないかと考えている。
【0049】
また、連通口45dの現像剤搬送方向下流側端部は、少なくともトナー補給口44aの現像剤搬送方向上流側端部よりも上流側に位置することが好ましい。これは、連通口45dの現像剤搬送方向下流側端部が、トナー補給口44aの現像剤搬送方向上流側端部よりも下流側に位置し、連通口45dの一部がトナー補給口44aの上方にあると、トナー補給口落下直前のトナーが、連通口から現像剤収容部へ還流してしまい、トナー補給量の減少に繋がるおそれがある。従って、連通口45dの現像剤搬送方向下流側端部を、少なくともトナー補給口44aの現像剤搬送方向上流側端部よりも上流側に位置させることで、トナー補給量の減少を抑制できる。
【0050】
また、連通口45dの現像剤搬送方向上流側端部は、トナー供給口44bよりも下流側に位置させ、連通方向と直交する方向は縁で囲われた穴形状であることが好ましい。これは、連通口45dの現像剤搬送方向上流側端部がトナー供給口44bに位置し、連通口45dとトナー供給口44bとが繋がった構成にすると、現像剤搬送路へ供給されるトナー量が管理し難くなり、搬送スクリューの駆動制御でトナー補給量を良好に制御することができなくなるからである。
【0051】
また、連通口45dが大きいと連通口45dから還流するトナー量が多くなり、トナー補給量が減少するおそれがあるため、連通口45dはあまり大きくしない方が好ましい。
【0052】
また、
図3に示すように、連通口45dの現像剤搬送方向長さL2は、トナー補給口44aの現像剤搬送方向長さL1や、搬送スクリュー43の第一羽部43a1のピッチPよりも短く(狭く)するのが好ましい。かかる構成とすることで、トナー供給口を通らずに、連通口45dから直接、現像剤搬送路へ流れ込むトナーを減らすことができる。これにより、搬送スクリューの駆動制御でトナー補給量を良好に制御することができる。
【0053】
また、本実施形態では、トナー補給口44aの現像剤搬送方向長さL1を、搬送スクリュー43の第一羽部43a1のピッチPよりも短く(狭く)している。トナーカートリッジには、トナー補給口44aを開閉するシャッターが設けられており、トナーカートリッジ7が装置本体に装着されると、シャッターが開く構成となっている。トナー補給口44aの現像剤搬送方向長さL1を、搬送スクリュー43の第一羽部43a1のピッチPよりも短く(狭く)することで、シャッターが開いたときにトナー補給口から落下するトナー量を抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態のトナーカートリッジ7は、現像剤収容部8と現像剤回収部9とを備えているが、現像剤回収部9は、別体でも差し支えない。
【0055】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
トナーなどの現像剤を収納する現像剤収容部8と、現像剤収容部内の現像剤を現像装置4へ排出するトナー補給口44aなどの排出口と、現像剤収容部内の現像剤を前排出口へ搬送するための現像剤搬送路44と、現像剤収容部内の現像剤を現像剤搬送路へ供給するトナー供給口44bなどの供給口と、現像剤搬送路内に配置され、現像剤を排出口へ搬送する搬送スクリュー43などの搬送部材と、現像剤搬送路44と現像剤収容部8とを仕切る仕切り部45などの仕切り部材と、仕切り部材に設けられ、現像剤搬送路44と現像剤収容部8とを連通する連通口45dと、を備えたトナーカートリッジ7などの現像剤収容容器において、連通口45dを、排出口と供給口との間に設けた。
これによれば、上述したように、連通口を、排出口と供給口との間に設けることで、現像剤収容部内の現像剤量が少なくなったときの排出口から現像装置へ排出される現像剤量の減少を効果的に抑制することができる。
【0056】
(態様2)
態様1において、連通口45dは、連通方向と直交する方向が縁部で囲われた穴形状である。
これによれば、連通口45dから現像剤が現像剤搬送路44へ入り混んだり、連通口から還流する現像剤量が多くなったりするのを抑制することができる。
【0057】
(態様3)
態様1または2において、連通口45dの現像剤搬送方向長さが、トナー補給口44aなどの排出口の現像剤搬送方向長さよりも短い。
これによれば、実施形態で説明したように、連通口45dから現像剤が現像剤搬送路44へ入り混んだり、連通口から還流する現像剤量が多くなったりするのを抑制することができる。
【0058】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、搬送スクリュー43などの搬送部材は、軸部43bと少なくともトナー供給口44bなどの供給口に供給された現像剤をトナー補給口44aなどの排出口へ搬送するための第一羽部43a1などの螺旋状の羽部とを有しており、連通口の現像剤搬送方向長さが、羽部の1ピッチよりも短い。
これによれば、実施形態で説明したように、連通口45dから現像剤が現像剤搬送路44へ入り混んだり、連通口から還流する現像剤量が多くなったりするのを抑制することができる。
【0059】
(態様5)
態様4において、第一羽部43a1などの羽部の1ピッチは、トナー補給口44aなどの排出口の現像剤搬送方向長さよりも長く、排出口の現像剤搬送方向長さは、連通口45dの現像剤搬送方向長さよりも長い。
これによれば、実施形態で説明したように、シャッターが開いたときにトナー補給口44aなどの排出口から落下する現像剤量を抑え、かつ、連通口45dから現像剤が現像剤搬送路44へ入り混んだり、連通口から還流する現像剤量が多くなったりするのを抑制することができる。
【0060】
(態様6)
トナーカートリッジ7などの現像剤収容容器を備え、現像剤収容容器内の現像剤を現像装置に補給する現像剤補給装置において、現像剤収容容器として、態様1乃至5いずれかの現像剤収容容器を用いた。
これによれば、実施形態で説明したように、現像剤収容容器内の現像剤量が少なくなった際の現像装置4へ補給する現像剤量の減少を抑制することができる。
【0061】
(態様7)
感光体2などの潜像担持体と、潜像担持体上の潜像を現像する現像装置4と、現像装置4に補給するトナーなどの現像剤を収容したトナーカートリッジ7などの現像剤収容容器とを備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ1において、現像剤収容容器として、態様1乃至5いずれかの現像剤収容容器を用いた。
これによれば、現像剤収容容器内の現像剤量が少なくなった際の現像装置4へ補給する現像剤量の減少を抑制することができる。
【0062】
(態様8)
感光体2などの潜像担持体と、潜像担持体上の潜像を現像する現像装置4と、現像装置4に補給するトナーなどの現像剤を収容したトナーカートリッジ7などの現像剤収容容器とを備えた画像形成装置において、現像剤収容容器として、態様1乃至5いずれかの現像剤収容容器を用いた。
これによれば、現像剤収容容器内の現像剤量が少なくなった際の現像装置4へ補給する現像剤量の減少を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 :プロセスカートリッジ
2 :感光体
4 :現像装置
7 :トナーカートリッジ
8 :現像剤収容部
9 :現像剤回収部
9a :搬入スクリュー
22 :容器本体
41 :第一アジテータ
42 :第二アジテータ
43 :搬送スクリュー
43B :軸部
43a1 :第一羽部
43a2 :第二羽部
43b :軸部
44 :現像剤搬送路
44a :トナー補給口
44b :トナー供給口
45 :仕切り部
45d :連通口
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】