(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/225 20060101AFI20221004BHJP
H04N 5/335 20110101ALI20221004BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H04N5/225 430
H04N5/335
H04N5/225 200
H05K7/20 B
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2019029669
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018138084
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】加賀 良太
【審査官】大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095825(JP,A)
【文献】特開2015-023344(JP,A)
【文献】特開2015-012050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
H04N 5/335
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材と、
前記外装部材の内側に配置される撮像素子と、
前記撮像素子で発する熱を放熱するためのシート部材と、
前記シート部材を保持する、弾性変形可能な弾性部材と、
前記弾性部材を保持する保持部材と、
を備え、
前記シート部材は、前記撮像素子の基板に貼着される受熱部と、前記弾性部材に貼着される放熱部とを有し、
前記弾性部材が前記外装部材と前記保持部材との間で圧縮変形して、前記放熱部が前記外装部材の内面に圧接することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
互いに撮像面と反対側の基板面を対向させて配置される複数の前記撮像素子を備え、複数の前記撮像素子に対応する複数の前記シート部材を備え、それぞれの前記シート部材の前記放熱部が同じ方向に向いて前記外装部材に圧接する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記外装部材に固定されて前記保持部材を支持する金属製の内部フレームを備え、前記放熱部が前記内部フレームに接触する請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記放熱部は、前記保持部材と前記内部フレームの間に挟持されるフレーム接触部を有する請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記保持部材は蓄熱部材を備え、前記放熱部が前記蓄熱部材に接触する請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記放熱部は、前記弾性部材と前記蓄熱部材の間に挟持される蓄熱部材接触部を有する請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
外装部材と、
前記外装部材の内側に配置される撮像素子と、
前記撮像素子で発する熱を放熱するためのシート部材と、
前記シート部材を保持する保持部材と、
弾性変形可能な熱伝導性の弾性部材と、
を備え、
前記シート部材は、前記撮像素子の基板に貼着される受熱部と、前記保持部材に貼着される放熱部とを有し
前記弾性部材は前記放熱部上に保持され、前記弾性部材が圧縮変形して前記外装部材の内面に圧接することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
前記外装部材の内側に配置される、前記撮像素子とは別の発熱体を備え、前記発熱体から前記外装部材に放熱させる熱伝導経路を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記発熱体は、前記内部フレームに固定される、前記撮像素子の前記基板とは異なる基板であり、前記熱伝導経路は前記内部フレームを含む請求項3を引用する請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記外装部材は、前記基板を前記内部フレームに固定するネジが螺合するボスを有し、前記基板が前記ボスに接触する請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記内部フレームを構成する板状部を挟んだ両側に、前記基板とバッテリが位置する請求項9又は請求項10に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に撮像素子を備えた撮像装置の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光学系により形成された像を撮像素子で光電変換する撮像装置では、撮像素子で発生する熱を適切に放散させる必要がある。近年では、撮像装置の小型化と高画質化が進んでおり、コンパクトな筐体内に発熱量の大きい撮像素子が配される傾向にあるため、限られたスペースで効率的に撮像素子からの放熱処理を行うことが求められている。その対策として、撮像装置の外面を構成する外装部材と撮像素子とを可撓性のある放熱シートで熱接続して、撮像素子が発した熱を放熱シートにより外装部材まで導いて放散させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像装置に内蔵した撮像素子による発熱量が多くなると、いかに効率よく熱処理を行うかが課題となる。特許文献1では、放熱シート24の一端側がセンサ基板20のリジット部201に貼り付けられて熱接続されており、放熱シート24の他端側が、折り曲げ部241で光軸方向に折り曲げられ、フロントカバー40の裏面に貼り付けられて熱接続される放熱構造についての記載がある。しかし、特許文献1の当該構成だけでは効率的に熱を放熱することができない。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、撮像素子で発生する熱を効率的に外装部材に放散させることが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、外装部材と、外装部材の内側に配置される撮像素子と、撮像素子で発する熱を放熱するためのシート部材と、シート部材を保持し弾性変形可能な弾性部材と、弾性部材を保持する保持部材と、を備え、シート部材は、撮像素子の基板に貼着される受熱部と、弾性部材に貼着される放熱部とを有し、弾性部材が外装部材と保持部材との間で圧縮変形して、放熱部が外装部材の内面に圧接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾性部材の復元力によって、放熱用のシート部材を、外装部材の内面に圧接させて熱接続状態にすることで、撮像素子で発生する熱を外装部材に効率的に放散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の撮像装置の外観を示す図であり、(A)は前方斜視図、(B)は後方斜視図である。
【
図2】撮像装置の前カバーを外した状態の斜視図である。
【
図3】撮像装置に搭載される光学ユニットの斜視図である。
【
図4】光学ユニットが備える撮像素子ユニットを示す図であり、(A)は撮像素子の撮像面側、(B)は撮像面と反対の基板面側から見た図である。
【
図5】撮像装置の後カバーの内面側を示す斜視図である。
【
図6】撮像装置の後カバーの内面側を示す斜視図である。
【
図7】撮像装置内の放熱シート付近を示す斜視図である。
【
図8】撮像装置の後カバーの内面側の正面図である。
【
図10】撮像装置の放熱構造の第1の変形例を示す斜視図である。
【
図11】
図10の矢印XI方向から見た放熱シート付近の断面図である。
【
図12】撮像装置の放熱構造の第2の変形例を示す斜視図である。
【
図13】
図12の矢印XIII方向から見た放熱シート付近の断面図である。
【
図15】第2の変形例で一部を断面視した斜視図である。
【
図17】撮像装置の放熱構造の第3の変形例を示す断面図である。
【
図18】撮像装置の前カバーを外した状態の斜視図である。
【
図19】撮像装置の前カバーを外した状態の正面図である。
【
図23】
図19のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施形態の撮像装置を説明する。以下の説明中の前、後、上、下、左、右の各方向は、各図に記載した矢線方向を基準とする。
【0010】
本実施形態の撮像装置10は、同一形状の2つの鏡筒11A、11Bを対称に組み合わせて構成した光学ユニット11(
図3参照)を備えている。個々の鏡筒11A、11Bは、物体側に位置する前群Fから撮像素子12A、12Bの撮像面に至る撮像光学系を有しており、撮像素子12A、12Bの撮像面に被写体光束を導いて結像させる。鏡筒11Aと鏡筒11Bは、互いの前群Fが前後逆向きになり、且つ互いの前群Fの光軸が同軸上に並ぶように組み合わされる。鏡筒11Aの撮像素子12Aは撮像面を左方に向けて配置され、鏡筒11Bの撮像素子12Bは撮像面を右方に向けて配置される。
【0011】
撮像素子12A、12Bは撮像素子基板13A、13B上に支持されている。撮像素子12Aと撮像素子基板13Aを組み合わせたものが撮像素子ユニット14Aであり、撮像素子12Bと撮像素子基板13Bを組み合わせたものが撮像素子ユニット14Bである。
図4は撮像素子ユニット14Bを示している。撮像素子ユニット14Aは撮像素子ユニット14Bと左右対称の構成である。撮像素子基板13A、13Bの下端付近に設けたコネクタにフレキシブル基板15が接続している。
【0012】
鏡筒11Aと鏡筒11Bは、互いの撮像素子基板13A、13Bの基板面(撮像素子12A、12Bの撮像面とは反対側の面)が対向するように配置されている。すなわち、撮像素子ユニット14A、14Bが互いに背中合わせになるように配置されている。鏡筒11A、11Bの各々の撮像光学系により形成された被写体像は、撮像素子12A、12Bの撮像面上に結像し、光電変換されて画像信号が生成される。撮像素子基板13A、13Bからフレキシブル基板15を介して、撮像装置10内に設けた第1基板60(
図20、
図23、
図25参照)へ画像信号が送られる。
【0013】
各鏡筒11A、11Bの撮像光学系は、180度より広い画角を有しており、撮像素子12A、12Bの撮像面内にイメージサークルが収まる全周(円周)魚眼レンズである。光学ユニット11は、各鏡筒11A、11Bの撮像素子12A、12Bに結像した2つの像を合成することにより4πラジアンの立体角内の像を得る、全天球型の撮像システムとなっている。
【0014】
各鏡筒11A、11Bの撮像光学系は、複数のプリズム(図示略)を用いて光路を複数回屈曲させることにより、前後方向に薄型に構成されている。また、各鏡筒11A、11Bは互いの撮像素子ユニット14A、14Bを左右方向に並べて背中合わせに配置し、且つ撮像素子12A、12Bの撮像面の短辺方向が前後方向に向き長辺方向が上下方向に向くように配置されている。これにより、2つの鏡筒11A、11Bを含む光学ユニット11全体が前後方向に薄型になり、鏡筒11A、11B間の視差を少なくして高品質な全天球画像を得ることが可能となっている。
【0015】
撮像装置10は、外面を構成する外装部材として、前カバー20と後カバー21を有している。前カバー20と後カバー21はいずれもマグネシウムやアルミニウム等の金属製である。
図1に示すように、前カバー20と後カバー21は概ね前後対称な形状である。
【0016】
図1(B)に示すように、撮像装置10の後面側には、上下方向の中間部よりやや下方にシャッタボタン22が設けられており、後カバー21にはシャッタボタン22を露出させるための開口が形成されている。シャッタボタン22は、撮像(静止画撮像と動画撮像のいずれも含む)のトリガとなる操作部材である。シャッタボタン22の下方には、撮像装置10の操作画面や設定画面等の各種情報を表示する表示ユニット24が設けられている。表示ユニット24は、例えば、有機ELディスプレイから構成することができる。撮像装置10の右側面の上下方向の中間部には、撮像装置10の電源のオンオフを切り替えるための操作部材である電源ボタン28が設けられている。電源ボタン28の下方には、撮影モードや無線接続モードの設定操作を行うための複数の操作ボタン29が設けられている。撮像装置10は、下端に設けた外部コネクタ16を通じて外部機器(パーソナルコンピュータ等)との通信を行うことが可能である。
【0017】
撮像装置10は上下方向に長い形状であり、
図2に示すように、撮像装置10の内部には長手方向に分かれる2つの区画を有している。上方の区画には上述の光学ユニット11が収容される。下方の区画には、バッテリ23や制御用の第1基板60及び第2基板61(
図20、
図23参照)等が収容される。撮像装置10を組み立てる際には、光学ユニット11やバッテリ23を含む内蔵物を後カバー21側に組み付けて(
図2参照)、続いて後カバー21に対して前カバー20を被せてネジ留めで固定する。前カバー20と後カバー21には、前後方向の互いの位置関係を定める当て付け部が設けられている。
【0018】
後カバー21の内面側の構造を
図5、
図6、
図8に示した。後カバー21は、上下方向に長い板状をなしており、鏡筒11Bの前群Fを露出させるレンズ用開口21aを上方に有する。後カバー21の内面側には、側方板金25と側方板金26と横断板金27からなる金属フレームが配されている。側方板金25、26と横断板金27はいずれも金属製であり、後カバー21や前カバー20に対して固定的に取り付けられることにより、撮像装置10の剛性を向上させる。
【0019】
側方板金25は、後カバー21の右側の縁部に沿って上下方向に延設されており、上下方向の異なる複数位置で側方板金25が後カバー21に対してネジ留めされている。より詳しくは、
図5に示すように、後カバー21の右側の縁部付近に、前方へ突出する板状の締結部21bが設けられており、側方板金25が締結部21bに対して複数箇所で、固定ネジ73によってネジ留めされている。具体的には、側方板金25の上端付近と下端付近が締結されている。
【0020】
側方板金26は、後カバー21の左側の縁部に沿って上下方向に延設されており、上下方向の異なる複数位置で側方板金26が後カバー21に対してネジ留めされている。より詳しくは、
図6に示すように、後カバー21の左側の縁部付近に、前方へ突出する板状の締結部21cが設けられており、側方板金26が締結部21cに対して、固定ネジ74によって複数箇所でネジ留めされている。具体的には、側方板金26の上端付近と下端付近と中央付近が締結されている。
【0021】
図示を省略しているが、側方板金25、26はそれぞれ、後カバー21に対して前カバー20を組み付けた後で、前カバー20に対してもネジ留めされる。従って、側方板金25、26は、後カバー21と前カバー20の両方に対して、金属同士の接触で熱伝達可能な状態で締結される。
【0022】
側方板金25と側方板金26には、長手方向の途中に位置する締結部25a、26aが設けられている。締結部25aは、側方板金25の本体部分から上方に突出して左方に屈曲する形状を有しており、締結部26aは、側方板金26の本体部分から上方に突出して右方に屈曲する形状を有している。締結部25aと締結部26aの屈曲部分に対して横断板金27の左右方向の端部付近が、固定ネジ70によるネジ留めで固定される。
【0023】
横断板金27は、左右方向に延びて側方板金25と側方板金26を接続している。横断板金27のうち前面板部27aは、締結部25a、26aに対して固定ネジ70でネジ留めされており、撮像装置10の前後方向に表裏の面を向けている。区画板部27bは、前面板部27aの下方の縁部から後方に向けて延びており、撮像装置10の上下方向に表裏の面を向けている。区画板部27bによって、上述した撮像装置10内の上下2つの区画が仕切られる。横断板金27はさらに、区画板部27bの後方縁部から下方に向けて延びる底板部27cを有している。底板部27cは前後方向に表裏の面を向けており、底板部27cの前面側にバッテリ23が支持される(
図2参照)。
【0024】
撮像装置10は、前後方向に薄型の筐体内に、大型の撮像素子12A、12Bを有する撮像素子ユニット14A、14Bを背中合わせに近接して配置されている。このような条件下において、撮像素子12A、12Bから発生する熱を効率良く放散させるための放熱構造を備えている。以下、撮像装置10における放熱構造について説明する。
【0025】
撮像装置10の放熱構造は、撮像素子ユニット14A、14Bから外装部材である前カバー20や後カバー21に放熱することが可能であり、熱を伝える手段として放熱シート30を備える。放熱シート30は、撮像素子ユニット14A用の放熱シート30Aと撮像素子ユニット14B用の放熱シート30Bを独立して備えており、これらは折り曲げの方向等が異なるが、基本的な構成は共通している。以下では、放熱シート30Aと放熱シート30Bの異なる点を説明する場合は個別の符号「30A」、「30B」を用い、それ以外の共通する点を説明する際には、共通の符号「30」を用いる。また、撮像素子12A、12B及び撮像素子基板13A、13Bについても、共通する点を説明する際には、共通の符号「12」、「13」を用いる。
【0026】
放熱シート30は、熱伝導性に優れる材質で形成されたシート部材であり、可撓性を有する。例えば、グラファイト製のシート材で放熱シート30を構成することが好ましい。
図4に示すように、放熱シート30は、撮像素子基板13の背面に貼着される受熱部31と、受熱部31に続く中間部32と、中間部32の一端に位置する放熱部33とを有している。放熱シート30の片側の面には粘着層が形成されている。放熱シート30の粘着層は、
図4(A)で見える側の面に形成されており、
図4(B)で見える側の面には粘着層が形成されていない。放熱シート30のうち、粘着層が形成されていない側を表面、粘着層が形成されている側を裏面、とする。
【0027】
図4に示すように、受熱部31は、上下方向に細長い帯状をなし、撮像素子基板13の背面のうち前後方向の中央付近に沿って、粘着層で裏面が貼り付けられる。中間部32は、前後方向に細長い帯状をなし、受熱部31の下方の端部に中間部32の長手方向の中央付近が接続している。中間部32も撮像素子基板13の背面に対して粘着層で裏面が貼り付けられる。放熱部33は、中間部32の前方の端部に連続する部分であり、放熱部33の下方の端部付近に中間部32が接続している。中間部32と放熱部33の間には折曲部34がある。放熱シート30の初期状態では、折曲部34は折り曲げられておらず、放熱部33は撮像素子12及び撮像素子基板13よりも前方に大きく突出する形状である(
図4参照)。折曲部34を折り曲げると、放熱部33の表裏の面が前後方向に向く形状に変化する。
【0028】
撮像素子ユニット14Aに接続する放熱シート30Aと撮像素子ユニット14Bに接続する放熱シート30Bは、折曲部34が互いに逆方向に折り曲げられる。具体的には、撮像素子基板13Aに接続する放熱シート30Aでは、折曲部34が左方(撮像素子12A側)に折り曲げられ、撮像素子基板13Bに接続する放熱シート30Bでは、折曲部34が右方(撮像素子12B側)に折り曲げられる。これにより、2つの放熱部33が左右方向に並列した関係になる(
図2参照)。言い換えれば、それぞれの折曲部34を折り曲げた状態の放熱シート30Aと放熱シート30Bは、左右方向に対称の構成になる。折曲部34の折り曲げによって、放熱シート30A、30Bのいずれの放熱部33も、表面が前方を向き、裏面が後方を向くようになる。
【0029】
図4に示すように、折曲部34における折り曲げ線は、前後方向に傾斜しながら上下方向へ延びている。そのため、折曲部34を折り曲げた状態の放熱部33は、上下方向の位置の違いに応じて前後方向への突出量が変化する傾斜形状になる(
図7参照)。具体的には、放熱部33のうち中間部32が接続する基端部分(下方の端部)よりも、放熱部33の先端部分(上方の端部)の方が、前方への突出量が大きくなる。
【0030】
放熱部33の裏面の粘着層が弾性部材35の前面に貼り付けられる。弾性部材35は弾性変形可能で耐熱性に優れた材質からなる。弾性部材35は、受台36による支持を受ける。受台36は、後カバー21に設けられた固定支持座37に対してネジ留めで固定された金属製の板材である。左側の放熱シート30Aと右側の放熱シート30Bに対応して、左右一対の弾性部材35と受台36と固定支持座37がそれぞれ設けられている。
【0031】
放熱シート30B側の放熱部33の支持に関与する受台36は、固定支持座37に対するネジ留め箇所から上方に突出して左方に曲げられて、弾性部材35の後方に支持板部36aを位置させている(
図5から
図7参照)。放熱シート30A側の放熱部33の支持に関与する受台36は、固定支持座37に対するネジ留め箇所から上方に突出して右方に曲げられて、弾性部材35の後方に支持板部36aを位置させている(
図2参照)。弾性部材35の後面(放熱部33が貼着される面とは反対側の面)には粘着層が設けられており、この粘着層を介して弾性部材35が支持板部36aの前面に貼り付けられる。支持板部36aの下端付近は、横断板金27の前面板部27aと前後方向に重なる配置になっており、後方から横断板金27による支持を受ける(
図7、
図9参照)。従って、左右の受台36はそれぞれ、固定支持座37と横断板金27に跨って支持されている。
【0032】
放熱部33と弾性部材35と受台36の支持板部36aが積層している箇所の断面構造を
図9に示した。弾性部材35と支持板部36aはそれぞれ、上述した放熱部33の傾斜形状に対応する傾斜形状を有しており、下端側よりも上端側の方が前方への突出量が大きくなっている。
【0033】
以上のようにして撮像素子ユニット14Aと撮像素子ユニット14Bに接続する放熱シート30Aと放熱シート30Bをそれぞれ支持させた状態で、後カバー21に対して前カバー20を前方から組み付ける。
図9に部分的に示す前カバー20は、後カバー21に対して固定した状態での位置を示している。
図9は弾性部材35が圧縮変形されていない初期状態を示しており、この初期状態において、支持板部36aから前カバー20の内面までの距離Q1と、支持板部36aから放熱部33の表面までの距離Q2(弾性部材35及び放熱部33の厚みの和)は、Q1<Q2の関係になる。つまり、初期状態の放熱部33は、前カバー20と後カバー21を組み合わせたときの前カバー20の内面位置よりも前方に突出している。
【0034】
放熱部33と弾性部材35と支持板部36aが積層されている方向と、後カバー21に対する前カバー20の組み付け方向が同じ(前後方向)である。従って、後カバー21に前カバー20を組み付けると、前カバー20の内面が放熱部33の表面に当接し、弾性部材35を圧縮変形させながら放熱部33を後方へ押し込む。圧縮変形から復元しようとする弾性部材35が放熱部33を前方へ押圧して、放熱部33の表面が前カバー20の内面に押し付けられて圧接(密着)する。前カバー20と後カバー21が互いに固定されている間はこの圧接状態が維持され、放熱シート30から前カバー20への効率的な熱伝導が可能になる。従って、撮像素子12で発生した熱を、放熱シート30によって、金属製の前カバー20を含む外装部材へ広範囲に放散させることができる。
【0035】
放熱部33と弾性部材35は、金属製の受台36によって後方から支持されている。受台36は、固定支持座37と横断板金27に跨って支持されていて支持強度に優れるため、前カバー20側からの押圧力によって過度に撓むことがない。従って、放熱部33が前カバー20に圧接する状態を安定維持させることができ、放熱部33が前カバー20から離間してしまうおそれがない。
【0036】
以上のように、撮像装置10では、撮像素子12A、12Bで発生する熱を、放熱シート30A、30Bを介して金属製の前カバー20に放散させるので、筐体内の狭いスペースに近接配置された撮像素子12A、12Bからの放熱効率に優れている。また、2つの撮像素子12A、12Bに対応する2つの放熱シート30A、30Bを、それぞれの放熱部33の表面が同じ方向(前方)に向くように配設し、前カバー20を共通の熱接続の対象としているので、放熱構造の複雑化を防ぐことができる。
【0037】
各放熱シート30A、30Bの受熱部31は、撮像素子ユニット14A、14Bの対向する基板面(撮像素子基板13A、13Bのうち撮像面と反対側の面)に接続している。これにより、撮像素子ユニット14A、14Bの間からの放熱が放熱シート30A、30Bによって促進され、撮像素子12A、12B間における互いの熱の影響を小さくさせることができる。
【0038】
各放熱シート30A、30Bの放熱部33は、前カバー20に対して貼り付け等の固定を行わず、前カバー20の組み付けに応じて積層方向への弾性部材35の圧縮変形を利用して前カバー20に圧接する。従って、前カバー20を組み付ける際には、放熱部33と前カバー20を接続させるための特別な作業を要さない。また、
図1に示す撮像装置10の完成状態から前カバー20を取り外しても、放熱部33から前カバー20が離間するのみであり、放熱シート30A、30Bは損傷せずに後カバー21側に完全な形で残る。従って、前カバー20の取り外し時に放熱シート30の交換が不要であり、再び前カバー20を組み付ければ、放熱効率に優れた上述の放熱構造を得ることができる。
【0039】
上記の特許文献1(特許第6218469号公報)の撮像装置では、放熱シート24の一端側がセンサ基板20のリジット部201に貼り付けられ、放熱シート24の他端側がフロントカバー40の裏面に貼り付けられて、それぞれの貼り付け部分で熱接続されている。しかし、放熱シート24の他端側をフロントカバー40の裏面に対して適正な位置で確実に密着させることは難しい。例えば、フロントカバー40をカメラ本体に取り付ける前の段階で、放熱シート24の他端側をフロントカバー40の裏面に貼り付けるには、放熱シート24の長さに余裕が必要であり、放熱シート24を収容するためのスペース増大によって撮像装置の小型化が妨げられる。一方、放熱シート24を短くして、カメラ本体へのフロントカバー40の取り付けと同時に放熱シート24の他端側を貼り付けると、放熱シート24の貼り付け不良(適正でない位置への付着、部分的な未付着)が生じて、フロントカバー40への熱伝達性能が低下するおそれがある。
【0040】
また、特許文献1の放熱構造では、撮像装置の修理や調整等を行う際にフロントカバー40を取り外すと、フロントカバー40の裏面に貼り付けられている放熱シート24が破損する。そのため、新たな放熱シート24に交換する必要があり、部品のコストがかかってしまう。さらに、放熱シート24を交換する場合、放熱シート24のうちセンサ基板20のリジット部201側に貼り付けられた一端側を剥がしてから新たな放熱シート24を貼り付けるので、センサ基板20やその周辺部分も取り外す必要が生じる。センサ基板20を取り外すと、再度取り付ける際に光学的な調整等を行わなければならず、作業の手間とコストが増大してしまう。
【0041】
これに対して、本実施形態の放熱構造は、放熱シート30A、30Bが占めるスペースを抑えつつ、前カバー20を組み付けるだけで放熱部33を適切な位置で確実に前カバー20に対して熱接続させることができる。また、放熱シート30A、30Bにダメージを与えずに前カバー20を自由に着脱させることができ、前カバー20を組み付けた状態では放熱部33からの確実な熱伝導が保証される。放熱シート30の交換を要さないため、部品コストがかからず、作業にかかる手間やコストも低く抑えることができる。特に、本実施形態の撮像装置10は、2つの撮像素子ユニット14A、14Bが、互いの撮像素子基板13A、13Bの基板面を対向させて近接配置されており、光学ユニット11を組んだ状態では、撮像素子基板13A、13Bに対する放熱シート30の受熱部31の貼着部分へのアクセスが困難である。そのため、放熱シート30の交換は、撮像素子ユニット14A、14Bを含む光学ユニット11の取り外しも伴うことになり、光学ユニット11の再度の取り付けには鏡筒11Aと鏡筒11Bの光学的調整が必要であるため、大掛かりな作業を要する。本実施形態の放熱構造では、前カバー20の着脱では放熱シート30の交換が生じないので、こうした手間やコストの発生を防ぐことができる。
【0042】
前カバー20は、光学ユニット11を含む撮像装置10の内部構造を後カバー21側に支持させた上で(
図2参照)、組み立ての最終段階で取り付けられるものである。そして、前カバー20の組み付け直前で各放熱シート30A、30Bの放熱部33が露出しているので、放熱部33の状態確認(折れ曲がりや変形等)を容易にチェックでき、放熱不良を未然に防ぐことができる。
【0043】
続いて、撮像装置10における放熱構造の変形例を説明する。
図10及び
図11は第1の変形例を示し、
図12から
図16は第2の変形例を示し、
図17は第3の変形例を示している。これらの変形例において、上述の実施形態と共通する部分については、図中に同じ符号で示して説明を省略する。また、各変形例で図示を省略している部分については、上述の実施形態と共通する構成を備えるものとする。
【0044】
図10及び
図11に示す第1の変形例は、放熱シート30A、30Bがそれぞれ放熱部133を有している。放熱部133は、外装接触部133aとフレーム接触部133bを備えている。
【0045】
外装接触部133aは、上記実施形態の放熱部33に相当する部分であり、裏面側の粘着層が弾性部材35の前面に貼り付けられ、表面側には粘着層が形成されていない。後カバー21に対して組み付けた状態の前カバー20の内面位置を、
図11に二点鎖線で示した。弾性部材35が圧縮変形していない初期状態で、外装接触部133aは前カバー20の内面よりも前方に位置している。そのため、後カバー21に対して前カバー20を組み付けると、前カバー20の内面に放熱シート30A、30Bのそれぞれの外装接触部133aが当接し、弾性部材35を圧縮変形させながら外装接触部133aが後方へ押し込まれる。そして、外装接触部133aが前カバー20に圧接して、撮像素子12A、12Bで発生した熱を前カバー20に放散させる熱伝達経路が形成される。
【0046】
フレーム接触部133bは、外装接触部133aの下方の端部を後方に折り曲げ、さらに上方に折り返してU字状に形成したものであり、受台36の支持板部36aと横断板金27の前面板部27aとの間に挟まれている。フレーム接触部133bの裏面(折返しによって前方を向く面になっている)には、外装接触部133aの裏面に連続して粘着層が形成されており、該粘着層が支持板部36aの後面に貼り付けられる。フレーム接触部133bの表面(折返しによって後方を向く面になっている)は、前面板部27aの前面に対向する。フレーム接触部133bの表面には粘着層が形成されておらず、前面板部27aに対して貼り付けられない。上述したように、前面板部27aは、受台36の支持板部36aの下端部分を支持する部位である。
【0047】
後カバー21を前カバー20に組み付けて弾性部材35が圧縮変形するときに、弾性部材35の背後に位置する支持板部36aが後方に押圧される。すると、支持板部36aの下端付近がフレーム接触部133bを後方に押圧して、フレーム接触部133bが前面板部27aに圧接する。これにより、上述の外装接触部133aから前カバー20への熱伝導経路に加えて、フレーム接触部133bから横断板金27への熱伝導経路が形成される。横断板金27は側方板金25及び側方板金26に締結固定され、側方板金25及び側方板金26は後カバー21及び前カバー20に締結固定される。従って、筐体内の金属フレーム(側方板金25、26及び横断板金27)を経由して後カバー21や前カバー20に熱を放散させることができ、放熱性の向上を図ることができる。
【0048】
フレーム接触部133bは、前カバー20の組み付けに伴って支持板部36aと前面板部27aの間で挟圧保持される構成であるため、外装接触部133aや上記実施形態の放熱部33と同様に、熱を放散させる対象である横断板金27に対して粘着等で固定していなくても、前面板部27aに対して安定した接触状態を維持できる。よって、前カバー20だけでなく横断板金27の取り外しも、放熱部133を損傷させずに行うことができ、放熱シート30を交換する手間やコストをかけずに済む。
【0049】
図12から
図16に示す第2の変形例は、放熱シート30A、30Bにより熱を伝達する対象として、筐体内に蓄熱部材40を備えている。蓄熱部材40は蓄熱性の高い(熱容量が大きく吸熱効率に優れた)材質からなる。撮像装置10の内部には、左右の固定支持座37の下方に隣接する位置に、左右一対の蓄熱部材40が設けられている。左右の固定支持座37には、左右一対の受台38がネジ留めされている。各受台38は金属製の板材からなり、対応する蓄熱部材40の側面部分を囲む側壁部38aと、対応する蓄熱部材40の後面部分を支持する底壁部38bとを有する(
図16参照)。受台38の前面側は開放されており、蓄熱部材40の前面部分が前方に向けて露出する。受台38と蓄熱部材40によって、弾性部材35を保持する保持部材が構成される(
図15参照)。
【0050】
放熱シート30A、30Bはそれぞれ放熱部233を有している。放熱部233は、外装接触部233aと蓄熱部材接触部233bを備えている。外装接触部233aは、上記実施形態の放熱部33や第1の変形例の外装接触部133aに相当する部分であり、裏面側の粘着層が弾性部材35の前面に貼り付けられ、表面側には粘着層が形成されていない。
【0051】
蓄熱部材接触部233bは、外装接触部233aの側縁部(放熱シート30Aでは左側の縁部、放熱シート30Bでは右側の縁部)を後方に折り曲げ、さらに外装接触部233aの裏側に向けて折り返してU字状に形成したものであり、弾性部材35の後面と蓄熱部材40の前面との間に挟まれている。蓄熱部材接触部233bの裏面(折返しによって前方を向く面になっている)には、外装接触部233aの裏面に連続して粘着層が形成されており、該粘着層が弾性部材35の後面に貼り付けられる。蓄熱部材接触部233bの表面(折返しによって後方を向く面になっている)は、蓄熱部材40の前面に対向する。蓄熱部材接触部233bの表面には粘着層が形成されておらず、蓄熱部材40に対して貼り付けられない。
【0052】
図13及び
図14には、後カバー21に対して前カバー20が組み付けられる前の状態(弾性部材35が圧縮変形していない初期状態)での外装接触部233aの位置を示している。この状態で、外装接触部233aは前カバー20の内面よりも前方に位置している。そのため、後カバー21に対して前カバー20を組み付けると、前カバー20の内面に放熱シート30A、30Bのそれぞれの外装接触部233aが当接して、外装接触部233aが後方へ押し込まれる。弾性部材35は蓄熱部材40及び受台38に保持されて後方への移動が規制されるため、外装接触部233aが押し込まれると、弾性部材35が圧縮変形して外装接触部233aを前カバー20の内面に圧接させる。これにより、外装接触部233aから前カバー20への熱伝達経路が形成され、撮像素子12A、12Bで発生した熱を前カバー20に放散させることができる。
【0053】
後カバー21を前カバー20に組み付けて弾性部材35が圧縮変形するときに、弾性部材35の背後に位置する蓄熱部材接触部233bが後方に押圧される。すると、蓄熱部材接触部233bが蓄熱部材40の前面に圧接する。これにより、上述の外装接触部233aから前カバー20への熱伝導経路に加えて、蓄熱部材接触部233bから蓄熱部材40への熱伝導経路が形成される。従って、放熱シート30A、30Bからそれぞれ対応の蓄熱部材40にも熱を放散させることができ、放熱性の向上を図ることができる。蓄熱部材40に蓄えられた熱は、周囲へ徐々に放出される。
【0054】
蓄熱部材接触部233bは、前カバー20の組み付けに伴って弾性部材35と蓄熱部材40の間で挟圧保持される構成であるため、外装接触部233aや上記実施形態の放熱部33と同様に、熱を放散させる対象である蓄熱部材40に対して粘着等で固定していなくても、蓄熱部材40との安定した接触状態を維持できる。よって、前カバー20だけでなく蓄熱部材40の取り外しも、放熱部233を損傷させずに行うことができ、放熱シート30を交換する手間やコストをかけずに済む。
【0055】
第2の変形例でさらに、横断板金27へ接続する形状(
図7に示す受台36の支持板部36aのような部位)を受台38に追加し、蓄熱部材40の熱を、受台38から金属フレーム(側方板金25、26及び横断板金27)へ積極的に放散させるような構造を採用することも可能である。
【0056】
以上の実施形態や第1及び第2の変形例で説明したように、撮像装置10では、前カバー20を組み付けることにより保持部材(受台36や、受台38及び蓄熱部材40)との間で弾性部材35の圧縮変形を生じさせ、この弾性部材35の変形に応じて放熱シート30A、30Bの放熱部33、133、233が前カバー20の内面に圧接する。当該構成により、放熱シート30A、30Bを前カバー20に貼り付けることなく、放熱効率に優れた熱伝達経路を形成することができる。その結果、前カバー20の組み付け時には放熱シート30A、30Bと前カバー20を接続させる手間がかからず、しかも前カバー20の取り外しの際に放熱シート30A、30Bを交換する必要がなく、簡単でメンテナンスが容易な放熱構造を得ることができる。
【0057】
特に、撮像装置10では、2つの撮像素子ユニット14A、14Bが、互いの基板面(撮像素子基板13A、13B)を対向させて近接配置されているので、高い放熱性能を備えつつ省スペースに構成可能でメンテナンス性に優れる本発明の放熱構造の有用性が高い。2つの放熱シート30A、30Bは、それぞれの放熱部33(133、233)を同じ方向(前方)に向けて並列配置されており、前カバー20を組み付けるだけで2つの放熱シート30A、30Bから前カバー20へ至る2つの熱伝達経路が完成する。そのため、複数の撮像素子12A、12Bを内蔵する構成でありつつ、放熱構造を含めた撮像装置10の組み立てや分解の手間を簡略化させることができる。
【0058】
以上の実施形態や第1及び第2の変形例はいずれも、前カバー20の内面から近い順に、放熱シート30(30A、30B)の放熱部33、133(外装接触部133a)、233(外装接触部233a)、弾性部材35、保持部材(受台36、受台38及び蓄熱部材40)の順で重なっており、放熱シート30の放熱部33、133(外装接触部133a)、233(外装接触部233a)を前カバー20の内面に当接させる構成である。これと異なる形態として、弾性部材50を前カバー20の内面に当接させる第3の変形例を
図17に示した。第3の変形例では、放熱シート30の放熱部333と弾性部材50以外の部分は、
図9等に示す実施形態と共通しており、共通箇所の説明は省略する。また、
図17には一組の放熱シート30及び弾性部材50のみを図示しているが、上記実施形態と同様に、2つの撮像素子12A、12Bに対応する二組の放熱シート30(放熱部333)及び弾性部材50が並列して配置されているものとする。
【0059】
放熱シート30は、放熱部333の裏面の粘着層が、受台36の支持板部36aに貼着されている。すなわち、放熱部333は弾性部材を介さずに支持板部36aにより直接に保持されている。
【0060】
弾性部材50は、弾性変形可能であると共に、高い熱伝導率を有する熱伝導性の材質からなる。弾性部材50の裏面に形成された粘着層が放熱部333の表面に貼着され、放熱部333から弾性部材50に熱を伝えることができる。弾性部材50の表面には粘着層が形成されておらず、前カバー20を取り付けていない状態で、弾性部材50の表面が前方に向けて露出する。
【0061】
図17に部分的に示す前カバー20は、後カバー21に対して固定した状態での位置を示している。
図17は弾性部材50が圧縮変形されていない初期状態を示しており、この初期状態において、支持板部36aから前カバー20の内面までの距離Q1と、支持板部36aから弾性部材50の表面までの距離Q3(弾性部材50及び放熱部333の厚みの和)は、Q1<Q3の関係になる。つまり、初期状態の弾性部材50の表面は、前カバー20と後カバー21を組み合わせたときの前カバー20の内面位置よりも前方に突出している。
【0062】
後カバー21に前カバー20を組み付けると、前カバー20の内面が弾性部材50の表面に当接し、放熱部333を挟んで支持板部36aによって後方への移動が制限されている弾性部材50を圧縮変形させながら押し込む。圧縮変形から復元しようとする弾性部材50の表面が、前カバー20の内面に押し付けられて圧接(密着)する。前カバー20と後カバー21が互いに固定されている間はこの圧接状態が維持される。従って、放熱部333から弾性部材50を経て前カバー20への熱伝導が可能になり、撮像素子12で発生した熱を、放熱シート30及び弾性部材50によって、金属製の前カバー20を含む外装部材へ広範囲に放散させることができる。
【0063】
また、放熱部333の裏面が受台36の支持板部36aに接しているため、放熱部333から支持板部36aを経て横断板金27の前面板部27aへの熱伝導も可能になる。すなわち、
図10及び
図11に示す第1の変形例のように、金属フレーム(側方板金25、26及び横断板金27)を経由する放熱ルートも形成され、放熱性を向上させることができる。
【0064】
第3の変形例では、弾性部材50は前カバー20に対して圧接しているのみであり、接着等の固定はされていないため、前カバー20を取り外したときに、放熱シート30や弾性部材50が破損することがない。従って、上記実施形態等や第1及び第2の変形例と同様に、簡単でメンテナンスが容易な構造によって、撮像素子12で発生する熱を前カバー20等の外装部材に効率的に放散させることができる。
【0065】
続いて、主に
図18から
図26を参照して、撮像装置10における撮像素子12A、12B以外の熱源からの放熱について説明する。
図18以降において、撮像素子12A、12Bからの放熱については、先に説明した第1の変形例(放熱シート30A、30Bがそれぞれ放熱部133を備える構成)を用いている。すなわち、放熱部133の外装接触部133aが前カバー20の内面に接触し、フレーム接触部133bが、支持板部36aと前面板部27aの間に挟まれる。
【0066】
図20及び
図21に示すように、撮像装置10の内部には、第1基板60と第2基板61が組み込まれている。上述したように、横断板金27の底板部27cの前面側にバッテリ23が支持される。底板部27cの後面に接して熱拡散体62が設置され、熱拡散体62の後面に接して第1基板60が設置されている。さらに、第1基板60の後面に接して熱拡散体63が設置され、熱拡散体63の後面に接して第2基板61が設置されている。
【0067】
第1基板60は、撮像装置10を統括制御する制御部や、光学ユニット11で撮像された画像の処理を行う画像処理部等の機能を備えた電子基板である。第2基板61は、各種操作部材(シャッタボタン22、電源ボタン28、操作ボタン29等)の操作信号の入力や、外部コネクタ16を介した信号の入出力や、表示ユニット24の表示制御等に関与する電子基板である。
【0068】
図23及び
図24に示すように、後カバー21には、前方へ向けて突出するボス21dが設けられている。ボス21dは、左右方向に位置を異ならせて複数(一対)設けられており、各ボス21dの内部にネジ穴が形成されている。各ボス21dの先端面に第1基板60が支持され、第1基板60の前面に樹脂製のスペーサ65が載せられ、スペーサ65の前面に横断板金27の底板部27cが載せられる。底板部27c、スペーサ65、第1基板60にはそれぞれ、ボス21d内のネジ穴に連通する貫通穴が形成されており、これらの貫通穴を通して前方から固定ネジ71の軸部が挿入される。固定ネジ71の軸部に形成した雄ネジが、ボス21d内のネジ穴に螺合する。固定ネジ71の頭部が底板部27cに当て付いた状態で固定ネジ71を所定のトルクで締め付けると、固定ネジ71の頭部とボス21dとの間に、底板部27cとスペーサ65と第1基板60が挟持される。固定ネジ71による固定箇所は、撮像装置10の下方寄りに位置している(
図5、
図6、
図8参照)。
【0069】
図25及び
図26に示すように、後カバー21にはさらに、ボス21dよりも上方の位置にボス21eを有する。ボス21eの内部にネジ穴が形成されている。側方板金26には、撮像装置10の内部側(右方)に向けて屈曲する屈曲部26bが形成されている。屈曲部26bがボス21eの先端面に重なり、屈曲部26bの前面に第1基板60の後面が重なっている。第1基板60と屈曲部26bには、ボス21e内のネジ穴に連通する貫通穴が形成されており、これらの貫通穴を通して前方から固定ネジ72の軸部が挿入される。固定ネジ72の軸部には雄ネジが形成されており、この雄ネジがボス21e内のネジ穴に螺合する。固定ネジ72の頭部が第1基板60に当て付いた状態で固定ネジ72を所定のトルクで締め付けると、固定ネジ72の頭部とボス21eとの間に、第1基板60と屈曲部26bが挟持される。
【0070】
図20及び
図23に示すように、第2基板61は、第1基板60よりも後方に位置しており、後カバー21の内面に沿って支持されている。第1基板60を上記のネジ留めによって固定すると、第1基板60と第2基板61の間に熱拡散体63が挟まれて保持される。熱拡散体63は、第1基板60と第2基板61の両方に対して密着状態で接触する。また、第1基板60を上記のネジ留めによって固定すると、横断板金27の底板部27cと第1基板60の間に熱拡散体62が挟まれて保持される。熱拡散体62は、底板部27cと第1基板60の両方に対して密着状態で接触する。
【0071】
第1基板60と第2基板61はいずれも、搭載されている回路等の処理中に熱を発する発熱源となり、特に第1基板60における発熱量が大きい。また、バッテリ23も発熱源となる。第1基板60で発した熱は、第1基板60を挟んだ前後位置にある熱拡散体62と熱拡散体63で吸収及び拡散される。第2基板61で発した熱は、第2基板61の前側に接触する熱拡散体63で吸収及び拡散される。熱拡散体62の前面に横断板金27の底板部27cが接触しており、熱拡散体62で吸収した熱は底板部27cから横断板金27に伝わる。また、バッテリ23で発した熱も底板部27cから横断板金27に伝わる。
【0072】
先に述べたように、横断板金27は、側方板金25、26の締結部25a、26aに対して固定ネジ70を介して固定されており、底板部27cで受けた熱を側方板金25、26に受け渡すことができる。側方板金25、26は、後カバー21に対して固定ネジ73、74でネジ留めされ、さらに前カバー20に対しても熱伝達可能な状態で締結される。
【0073】
また、横断板金27の前面板部27aに対して放熱部133のフレーム接触部133bが接触しており、横断板金27で受けた熱は、放熱シート30A、30Bの放熱部133を経由して前カバー20に伝達される。
【0074】
従って、第1基板60と第2基板61とバッテリ23から、熱拡散体62、63、横断板金27、側方板金25、26、放熱シート30A、30Bを経由して、前カバー20及び後カバー21に至る熱伝導経路が形成される。
【0075】
また、
図24に示すように、第1基板60の後面がボス21dの先端面に接触しており、ボス21dを経由して、第1基板60の熱が後カバー21に直接的に伝達される。また、固定ネジ71の頭部が横断板金27の底板部27cに接触しており、固定ネジ71を経由して横断板金27に熱を伝達することができる。
【0076】
さらに、
図26に示すように、第1基板60の後面が、側方板金26の屈曲部26bに接触しており、第1基板60の前面が、固定ネジ72の頭部に接触している。そのため、屈曲部26bと固定ネジ72を経由して、第1基板60の熱を後カバー21のボス21e等に伝達することができる。
【0077】
このように、撮像装置10では、撮像素子12A、12Bだけでなく、別の発熱源である第1基板60や第2基板61やバッテリ23についても、これらの発熱源が発した熱を、外装部材である後カバー21や前カバー20まで効率良く導いて放散させることができる。
【0078】
特に、発熱量が大きい第1基板60に関して、複数の熱伝導経路を形成して優れた放熱性を確保している。具体的には、熱拡散体62や固定ネジ71を介した横断板金27の底板部27cへの放熱経路、後カバー21のボス21dへの放熱経路、側方板金26の屈曲部26bへの放熱経路、固定ネジ71を介した後カバー21のボス21eへの放熱経路、等によって、第1基板60からの放熱を行うことができる。
【0079】
また、第2基板61については、熱拡散体63を介して第1基板60に接するので、上記の複数の放熱経路は、第2基板61からの放熱にも寄与する。
【0080】
バッテリ23は、横断板金27によって形成される空間(底板部27cの前面側)に収容され、底板部27cを挟んだ両側(前後)にバッテリ23と第1基板60が位置している。第1基板60だけでなくバッテリ23も横断板金27へ放熱するので、放熱対象である底板部27cを挟んで、2つの発熱源(第1基板60とバッテリ23)がスペース効率良く配置されている。
【0081】
撮像装置10の内部フレームを構成している横断板金27は、先に説明したように、放熱シート30A、30Bを経由して撮像素子12A、12Bからの熱を受けることができる。さらに、各基板60、61とバッテリ23からの熱も、横断板金27に伝えられる。従って、撮像素子12A、12Bと、別の発熱源である各基板60、61及びバッテリ23とが、内部フレーム(横断板金27)を熱伝導経路として共用している。これにより、複数の発熱源からの放熱構造を、撮像装置10の限られた内部スペースで効率良く構成することができる。
【0082】
図18から
図26に示す構成では、横断板金27の前面板部27aに対して、放熱シート30A、30Bのフレーム接触部133bが接触している。この構成は、横断板金27に対して放熱シート30A、30Bが直接に接触するので、撮像素子12A、12B側からの熱を横断板金27に伝える場合と、別の発熱源(各基板60、61、バッテリ23)側からの熱を横断板金27を介して放熱シート30A、30Bに伝える場合のいずれにおいても、効率の良い熱伝達を行いやすい。しかし、放熱シート30A、30Bに対して熱伝導可能なものであれば、フレーム接触部133b以外を、横断板金27の前面板部27aに接触させてもよい。例えば、
図5から
図9に示す構成でも、熱伝導率が高いタイプの弾性部材35を用いれば、受台36の支持板部36aと弾性部材35を介して、放熱部33と前面板部27aとの間で相互に放熱させることが可能である。
【0083】
以上、図示実施形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、発明の要旨内における変更や改良が可能である。例えば、本発明は、上記実施形態のように全天球型の撮像システムを備える撮像装置において特に有用であり、特に複数の撮像素子が互いの基板面を対向させて配置されている構成における有用性が高い。但し、全天球型以外の撮像システムを備える撮像装置にも適用が可能である。
【0084】
図示実施形態の撮像装置10は前後方向に薄型であるため、放熱シート30A、30Bの放熱部33、133、233や弾性部材50を圧接させる面積を確保しやすいのは、外装部材のうち前カバー20や後カバー21である。そして、撮像装置10では前カバー20が最後に組み付けられるため、放熱部33、133、233や弾性部材50を圧接させる対象として前カバー20を選択することで、メンテナンス性や作業性の向上を図っている。但し、後カバー21に対して放熱部33、133、233や弾性部材50を圧接させることも可能である。また、撮像装置の全体的な形状によっては、前カバーや後カバーではなく、左右や上下の側部を覆う外装部材に対して放熱部や熱伝導性の弾性部材を圧接させる構成を選択してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 :撮像装置
11 :光学ユニット
11A、11B :鏡筒
12(12A、12B) :撮像素子
13(13A、13B) :撮像素子基板
14A、14B :撮像素子ユニット
20 :前カバー(外装部材)
21 :後カバー(外装部材)
23 :バッテリ(別の発熱源)
25 :側方板金(内部フレーム)
26 :側方板金(内部フレーム)
27 :横断板金(内部フレーム)
27c :底板部(板状部)
30(30A、30B) :放熱シート(シート部材)
31 :受熱部
32 :中間部
33 :放熱部
34 :折曲部
35 :弾性部材
36 :受台(保持部材)
36a :支持板部
38 :受台(保持部材)
40 :蓄熱部材(保持部材)
50 :弾性部材
60 :第1基板(別の発熱源)
61 :第2基板(別の発熱源)
62 :熱拡散体
63 :熱拡散体
133 :放熱部
133a :外装接触部
133b :フレーム接触部
233 :放熱部
233a :外装接触部
233b :蓄熱部材接触部
333 :放熱部