IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業車両 図1
  • 特許-作業車両 図2
  • 特許-作業車両 図3
  • 特許-作業車両 図4
  • 特許-作業車両 図5
  • 特許-作業車両 図6
  • 特許-作業車両 図7
  • 特許-作業車両 図8
  • 特許-作業車両 図9
  • 特許-作業車両 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A01B69/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019157316
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021029230
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】石田 智之
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-254553(JP,A)
【文献】特開平09-154315(JP,A)
【文献】特開2014-212765(JP,A)
【文献】特開2019-066980(JP,A)
【文献】特開2019-004842(JP,A)
【文献】実開昭58-189711(JP,U)
【文献】特開2009-000080(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/033752(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0144702(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01C 11/02
G05D 1/00 - 1/12
B62D 6/00 - 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体に取り付けられた走行車輪と、
前記走行車輪の操舵量を調整するステアリング装置と、
前記ステアリング装置を駆動させるモータと、
測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて前記走行車体の現在の位置情報を取得する位置取得装置と、
前記走行車体の左右方向にそれぞれ設けられ、次工程の走行目安となる溝を圃場に形成する線引きマーカと、
自動旋回の実行を可能とするか否かを切り替える切替操作部と、
前記モータを制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
直進走行経路に沿って前記走行車体を走行させる自動直進モードと、
旋回走行経路に沿って前記走行車体が走行するように、前記モータを制御し、前記走行車体を旋回させる自動旋回モードとを有し、
前記線引きマーカが作業状態である場合には、前記自動旋回モードによる旋回を禁止し、前記線引きマーカが非作業状態である場合には、前記自動直進モードによる直進を禁止し、
前記切替操作部の状態が前記自動旋回の実行を可能とする状態であり、前記線引きマーカが作業状態である場合に、前記自動旋回の開始操作を受け付け、その後、前記線引きマーカが非作業状態になると、前記自動旋回を開始し、
自動旋回終了条件を満たし、かつ前記線引きマーカが前記作業状態となった前記走行車体の位置を、前記自動旋回モードにおける旋回位置として記憶する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
圃場に作業を行う圃場作業装置
を備え、
前記制御装置は、
前記線引きマーカが前記作業状態であり、かつ前記圃場作業装置が所定の上昇位置に上昇した場合の前記走行車体の位置、および前記線引きマーカが前記作業状態であり、かつ前記圃場作業装置が所定の降下位置に降下した場合の前記走行車体の位置を前記旋回位置として記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記線引きマーカが左右方向の両側において前記作業状態である場合には、前記旋回位置を記憶しない
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記自動旋回モードによる旋回が終了し、前記圃場作業装置が降下した場合に、前工程における前記旋回位置を記憶する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記走行車体の旋回中において、前記位置情報に関わらず前記操舵量が所定の値になるよう前記モータを制御して実行する第1旋回動作モードと、前記位置情報に基づいて、前記旋回走行経路上における所望の方位に機体が到達するよう前記モータを制御して実行する第2旋回動作モードとを前記自動旋回モードとして有し、
前記直進走行経路に対する、前記自動旋回モードによる旋回後の方位が、所定角度よりも大きい場合には、前工程における前記旋回位置を記憶しない
ことを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記走行車体が後進した後に前記自動旋回モードによる旋回を開始し、前記自動旋回モードによる旋回が終了して前記圃場作業装置が降下した場合に、前工程における前記旋回位置を記憶する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記走行車体の旋回中において、前記位置情報に関わらず前記操舵量が所定の値になるよう前記モータを制御して実行する第1旋回動作モードと、前記位置情報に基づいて、前記旋回走行経路上における所望の方位に機体が到達するよう前記モータを制御して実行する第2旋回動作モードとを前記自動旋回モードとして有し、
前記自動直進モード中に前記走行車体が旋回位置に到達し、前記線引きマーカによる作業が行われていた方向へ、前記第2旋回動作モードによって旋回を開始し、
前記第2旋回動作モードによる旋回によって前記走行車体の方位が、前記自動直進モードによる走行経路に対して、第1所定方位になると、前記ステアリング装置が中央位置となるように前記モータを制御し、
前記ステアリング装置が前記中央位置となり、前記第1旋回動作モードによって前記走行車体が所定距離走行した後に、前記線引きマーカによる作業が行われていた方向へ、前記第2旋回動作モードによる旋回を開始し、
前記第2旋回動作モードによる旋回によって前記走行車体の方位が、次工程における走行経路に対して、第2所定方位になると、前記ステアリング装置が前記中央位置となるように前記モータを制御し、
前記ステアリング装置が前記中央位置になると、前記自動直進モードによる直進を開始する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら作業を行う作業車両に、操舵部材を直進位置に保持して自動走行を行い、自動走行中に自動的に進行方向を修正する制御装置が設けられることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-24541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記する作業車両は、自動旋回については考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、自動旋回における安全性を向上させる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、走行車体(2)に取り付けられた走行車輪(10)と、走行車輪(10)の操舵量を調整するステアリング装置(35)と、ステアリング装置(35)を駆動させるモータ(95)と、測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて走行車体(2)の現在の位置情報を取得する位置取得装置(150)と、走行車体(2)の左右方向にそれぞれ設けられ、次工程の走行目安となる溝を圃場に形成する線引きマーカ(65)と、自動旋回の実行を可能とするか否かを切り替える切替操作部(48)と、モータ(95)を制御する制御装置(100)とを備え、制御装置(100)は、直進走行経路に沿って走行車体(2)を走行させる自動直進モードと、旋回走行経路に沿って走行車体(2)が走行するように、モータ(95)を制御し、走行車体(2)を旋回させる自動旋回モードとを有し、線引きマーカ(65)が作業状態である場合には、自動旋回モードによる旋回を禁止し、線引きマーカ(65)が非作業状態である場合には、自動直進モードによる直進を禁止し、切替操作部(48)の状態が前記自動旋回の実行を可能とする状態であり、線引きマーカ(65)が作業状態である場合に、自動旋回の開始操作を受け付け、その後、線引きマーカ(65)が非作業状態になると、自動旋回を開始し、自動旋回終了条件を満たし、かつ線引きマーカ(65)が作業状態となった走行車体(2)の位置を、自動旋回モードにおける旋回位置として記憶する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、自動旋回における安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、作業車両を示す側面図である。
図2図2は、作業車両を示す平面図である。
図3図3は、苗移植機の制御装置を中心とした制御系を示すブロック図である。
図4図4は、苗移植機の圃場における自律走行の説明図である。
図5図5は、実施形態に係る自動直進処理を説明するフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係る自動旋回開始処理を説明するフローチャートである。
図7図7は、変形例に係る苗移植機の側面図である。
図8図8は、変形例に係る苗移植機の一部を示す図である。
図9図9は、変形例に係る苗移植機の一部を示す側面図である。
図10図10は、変形例に係る苗移植機の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<作業車両の概要>
まず、図1および図2を参照して実施形態に係る作業車両1の概要について説明する。図1は、作業車両1を示す側面図である。図2は、作業車両1を示す平面図である。
【0011】
なお、以下の説明では、前後方向とは、作業車両1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。作業車両1の進行方向とは、直進時において、操縦席41からハンドル35(ステアリング装置)に向かう方向である(図1および図2参照)。
【0012】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者(作業者ともいう)が操縦席41に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0013】
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
また、以下の説明では、作業車両1を指して「機体」という場合がある。実施形態では、作業車両を、圃場作業装置として苗植付部4を備え、圃場に苗を受け付ける乗用型の苗移植機1として説明する。図1および図2に示すように、苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して、圃場に苗を植え付ける昇降可能な苗植付部4を備える。
【0015】
走行車体2の後部上側には施肥装置5の本体部分が配置される。なお、作業車両が苗移植機1ではない場合、種子を供給する播種装置などを作業装置として備える場合がある。
【0016】
走行車体2は、走行車輪であり駆動輪である、左右の前輪10および後輪11を備える四輪駆動車両である。走行車体2の車体骨格を構成するメインフレーム15の前側には、苗植付部4などに駆動力を伝達するミッションケース13と、エンジン30から供給される駆動力、すなわち、エンジン30で発生した回転をミッションケース13に出力する油圧式の無段変速装置14とが設けられる。
【0017】
無段変速装置14は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。以下では、無段変速装置がHST14である場合を説明する。
【0018】
ミッションケース13内には、高速モードでの路上走行時や、低速モードでの苗の植え付け時などにおける走行車体2の走行モードを切り替える副変速機構16が設けられる。ミッションケース13の左右側方には、前輪ファイナルケース10aが設けられ、左右の前輪ファイナルケース10aの操向方向を変更可能な前輪支持部からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸10bに前輪10が取り付けられる。
【0019】
また、メインフレーム15の後部側には、機体横方向に設けられた後部フレーム22(図2参照)の左右両側に後輪ギヤケース11aが取付けられ、後輪ギヤケース11aからそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸11bに後輪11(走行車輪)がそれぞれ取り付けられる。
【0020】
また、後部フレーム22の上部には、昇降リンク機構3を支持する左右のリンク支持フレーム23が上方に向けて突設される。左右のリンク支持フレーム23の下部側で、かつ、左右の間には、左右一対のロワリンクアーム24が設けられる。左右のロワリンクアーム24の左右の間に、油圧により作動する昇降シリンダ25(昇降装置)が設けられる。
【0021】
昇降シリンダ25の上方には、アッパリンクアーム26が設けられ、平行リンク機構である昇降リンク機構3が構成される。なお、それぞれ一端が走行車体2側に連結された、左右のロワリンクアーム24と、昇降シリンダ25と、アッパリンクアーム26の他端側とは、苗植付部4の前部に装着される。
【0022】
また、メインフレーム15上には、エンジン30が搭載される。エンジン30の回転動力が、ベルト伝動装置21およびHST14を介してミッションケース13に伝達される。ミッションケース13に伝達された回転動力は、ミッションケース13内の副変速機構16により変速された後、走行動力と外部取り出し動力に分けられる。
【0023】
また、エンジン30の回転動力は、図示しない油圧ポンプに伝達される。油圧ポンプで発生した油圧は、HST14や、ハンドル35のパワーステアリング機構88(図3参照)や、昇降シリンダ25などに供給される。
【0024】
ミッションケース13に伝達された回転動力から取り出される外部取り出し動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチケース27に伝達され、植付クラッチケース27から植付伝動軸67によって苗植付部4に伝達される。
【0025】
一方、ミッションケース13の後部には、左右のドライブシャフト42が設けられる。エンジン30からの回転動力は、ミッションケース13およびドライブシャフト42を介して左右の後輪ギヤケース11aに伝動される。
【0026】
なお、左右のドライブシャフト42よりも伝動方向上手側には、左右のドライブシャフト42に対する動力伝達を入切するサイドクラッチ44(図3参照)が配置される。図1に示すように、操縦席41の前側下部であり、かつ、左右一側には、左右のサイドクラッチ44を入切操作するサイドクラッチペダル43aが設けられる。
【0027】
左右のサイドクラッチペダル43aのうち、旋回内側のサイドクラッチペダル43aを踏み込んでサイドクラッチ44を切状態にしてからハンドル35を操作して旋回走行すると、旋回内側の後輪11の駆動回転を完全に遮断することができる。
【0028】
走行車体2の前側上部には、各部の操作を行う操縦パネル38を上部に配置されたボンネット39が設けられる。操縦パネル38には、モニタ86(図3参照)などが設けられる。
【0029】
また、ボンネット39には、機体を操舵するハンドル35、HST14や苗植付部4を操作する変速操作レバー36、副変速機構16(車速調整機構)を操作する副変速操作レバー37などが設けられる。
【0030】
また、ボンネット39の前側には、開閉可能なフロントカバー40が設けられる。フロントカバー40の内部には、燃料タンクやバッテリ、ハンドル35の操舵に左右の前輪10および左右の前輪ファイナルケース10aの下部側を回動させる連動機構が設けられる。
【0031】
ボンネット39よりも機体後側で、かつ、エンジン30の上方位置には、エンジン30の上部および側部を覆うエンジンカバー30aが設けられ、エンジンカバー30aの上部には操縦者が着席する操縦席41が設けられる。
【0032】
操縦席41の後側であって、メインフレーム15の後端側には、施肥装置5が設けられる。施肥装置5の駆動力は、左右の後輪ギヤケース11aの左右一側から施肥装置5に臨むように設けられる、施肥伝動機構によって伝達される。
【0033】
エンジンカバー30aおよびボンネット39の下部における左右両側は、略水平なフロアステップ33が形成される。フロアステップ33は、図2に示すように、一部格子状であり、たとえば、フロアステップ33を歩く操縦者の靴などについた泥が落ちても、落ちた泥などが圃場に落下する。
【0034】
また、フロアステップ33の後方には、図2に示すように、リヤステップ330が連接される。リヤステップ330の表面には、作業時に足が滑りにくくなるように、たとえば、複数の突起パターンが形成された滑り止め加工が施されることが好ましい。
【0035】
また、走行車体2の前側であり、かつ、左右両側には、苗枠支柱51に複数の予備苗載せ台52を上下方向に間隔を空けて配置する予備苗枠50がそれぞれ設けられ、苗植付部4に補充される苗や肥料袋などの作業資材が載置可能となっている。
【0036】
また、昇降リンク機構3の後端部には、圃場に植え付ける苗を積載する苗タンク53が、左右方向に摺動させる摺動機構と共に装着されている。苗タンク53には、上下方向に長い苗仕切フェンス54を左右方向に所定間隔を空けてそれぞれ配置される。苗タンク53の下方には、積載された苗を掻き取って圃場に植え付ける苗植付装置55が配置される。
【0037】
苗植付装置55は、苗仕切フェンス54により区切られた植付作業条数と同数、すなわち、8条同時に植え付けるものであり、植付伝動ケース56が苗タンク53の下方に間隔を空けて4つ配置され、植付伝動ケース56の左右両側に回転しながら植込杆58により苗を取って圃場に植え付ける植付ロータリ57がそれぞれ装着される。
【0038】
施肥装置5は、肥料が貯留される施肥ホッパ70が、苗植付部4の作業条数と同数(図2に示す例では、8条分)に仕切られている。なお、8条分の施肥ホッパ70は、左右方向に長いため肥料の投入や着脱の利便性が低下するので、4条ずつに仕切られたものを左右にそれぞれ並べる、いわゆるサイド施肥構造であってもよい。
【0039】
施肥ホッパ70の下部には、肥料を設定量ずつ供給する繰出装置71が1条ごとに設けられる。繰出装置71の下方には、肥料を移動させる搬送風が通過する通風ダクト72が機体の左右方向に設けられる。繰出装置71の下方には、苗植付部4の苗植付位置の近傍に肥料を案内する施肥ホース73が設けられる。また、通風ダクト72の機体の一側端部には、ブロア用電動モータ76により作動して搬送風を発生するブロア74が設けられる。
【0040】
図1および図2に示すように、苗植付部4の下方には、圃場面に接地して滑走するセンターフロート62Cと、左右2つずつのサイドフロート62L、62Rとが、軸まわりに回動自在に設けられる。なお、センターフロート62Cおよび左右のサイドフロート62L、62Rを総称してフロート62という場合がある。
【0041】
また、苗植付部4の下方において、フロート62よりも機体前側には、圃場面の凹凸を整地する整地ロータ63が設けられる。など、整地ロータ63には、左右他側の後輪ギヤケース11aからロータ伝動シャフト63aを介して駆動力が伝達される。
【0042】
また、図1に示すように、苗植付部4の左右両側には、左右いずれか一方が圃場面に接地して、次の作業条(次工程)における走行の目安とする溝を形成する線引きマーカ65がそれぞれ設けられる。左右の線引きマーカ65は、例えば、旋回時に苗植付部4を上昇させたときには左右両側共に上方に離間し、旋回後に苗植付部4が下降すると、左右一側が上方に離間して他側が接地する。
【0043】
また、図1および図2に示すように、走行車体2の左右中央部であり、かつ、ボンネット39の前方には、上下方向に長いセンターマスコット66が設けられる。センターマスコット66を左右の線引きマーカ65により圃場に形成された溝に合わせることにより、直前の作業条の作業位置に合わせた走行が可能になり、作業精度の向上や、非作業の発生防止を図ることができる。
【0044】
なお、圃場の土質によっては、左右の線引きマーカ65により形成されたガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このような場合には、左右の線引きマーカ65よりも機体前側に設けられた左右のサイドマーカ19を用いるとよい。すなわち、左右のサイドマーカ19を機体外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方にサイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能になる。
【0045】
また、図1に示すように、苗移植機1は、位置取得装置150を備える。位置取得装置150は、苗移植機1の現在の位置を取得する。位置取得装置150は、圃場における旋回位置を取得し、旋回位置までの距離を検出する。位置取得装置150は、例えば、カメラや、超音波センサや、方位センサである。また、位置取得装置150は、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位手段から測位情報を受け取ってもよい。位置取得装置150は、複数の装置によって構成されてもよい。
【0046】
例えば、位置取得装置150は、畦までの距離や、旋回位置までの距離を計測する。また、例えば、位置取得装置150は、測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて機体の現在の位置情報を作成し、取得する。位置取得装置150は、たとえば、取付ステー59に取り付けられ、走行車体2の上方に配置される。
【0047】
位置取得装置150による位置情報に基づいて作成される、直進制御用プログラムと、旋回制御用プログラムとは、互いに別の場所に格納される。直進制御用プログラムは、たとえば、位置取得装置150内の直進制御用ECU(Electronic Control Unit)100aに格納され、旋回制御用プログラムは、たとえば、ボンネット39に収容された旋回制御用ECU100bに格納される。なお、直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、後述する制御装置100(図3参照)に含まれる。
【0048】
<作業車両の制御系>
次に、図3を参照して苗移植機1の制御系について説明する。図3は、苗移植機1の制御装置100を中心とした制御系を示すブロック図である。苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能なものであり、各部を制御する制御装置(以下、コントローラという。)100を備える。
【0049】
コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。コントローラ100は、記憶部に格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
【0050】
コントローラ100には、たとえば、アクチュエータ類として、スロットルモータ80、油圧制御弁81,82、植付クラッチ作動ソレノイド83、サイドクラッチ作動ソレノイド84、HSTモータ85、線引きマーカ昇降モータ87、ステアリングモータ95(モータ)などが接続される。
【0051】
スロットルモータ80は、エンジン30の吸気量を調節するスロットルを作動させることにより、エンジン30の出力軸の回転数を増減させる。油圧制御弁81は、昇降シリンダ25の伸縮動作を制御する。油圧制御弁82は、パワーステアリング機構88を制御する。植付クラッチ作動ソレノイド83は、植付クラッチ27aを作動させる。
【0052】
サイドクラッチ作動ソレノイド84は、後輪11(図1参照)への動力伝達状態を切り替えるサイドクラッチ44を作動させる。なお、サイドクラッチ44は、左右の後輪11にそれぞれ設けられ、サイドクラッチ作動ソレノイド84は、各サイドクラッチ44に対応して2つ設けられる。
【0053】
HSTモータ85は、HST14のトラニオンの回動角度を変更することで、HST14の斜板の傾斜角を変更する。ステアリングモータ95は、自動旋回制御が行われる場合に、走行車輪である前輪10(図1参照)の操舵量(舵角)を調整するステアリング装置であるハンドル35を駆動するモータである。ステアリングモータ95は、ハンドル35を回動させる。線引きマーカ昇降モータ87は、線引きマーカ65を昇降させる。
【0054】
コントローラ100には、検出装置である、回転数センサ90、操舵量センサ91、傾斜センサ92、線引きマーカ検知センサ93などが接続される。回転数センサ90は、走行車輪である左右の後輪11に対応して2つ設けられ、左右の後輪11の回転数をそれぞれ検出する。なお、回転数センサ90は、左右の前輪10の回転数を検出してもよい。
【0055】
操舵量センサ91は、ステアリング装置であるハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量(舵角)を検出する。なお、操舵量は、ハンドル35の操作量がゼロの場合を基準位置(中央位置)として、すなわち、走行車体2の直進走行時を基準位置として、左右方向それぞれに検出される。傾斜センサ92は、走行車体2の傾きである傾斜角を検出する。傾斜センサ92は、前後方向における走行車体2の傾斜角を検出する。
【0056】
線引きマーカ検知センサ93は、左右の線引きマーカ65毎に設けられ、線引きマーカ65の位置を検知する。線引きマーカ検知センサ93は、線引きマーカ65が所定の上昇位置にある場合に、線引きマーカ65が非作業状態であると検知する。線引きマーカ検知センサ93は、線引きマーカ65が所定の上昇位置から降下した場合に、線引きマーカ65が接地しており、作業状態であると検知する。
【0057】
また、コントローラ100には、操作信号として、変速操作レバー36、副変速操作レバー37、直進モードスイッチ46、植付部昇降スイッチ47、自動旋回切替スイッチ48などから信号が入力される。
【0058】
直進モードスイッチ46は、自動直進を実行するか否かを切り替えるスイッチである。具体的には、直進モードスイッチ46は、ハンドル35を作業者が操作するマニュアル操作とするか、ステアリングモータ95が制御されてハンドル35を操作する自動直進とするかを選択するスイッチである。直進モードスイッチ46が、「ON」の場合には、自動直進が実行されうる。直進モードスイッチ46が、「OFF」の場合には、自動直進は行われず、マニュアル操作が行われる。
【0059】
植付部昇降スイッチ47は、苗植付部4を昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。植付部昇降スイッチ47は、「上昇」、および「降下」位置に変更される。
【0060】
植付部昇降スイッチ47が「上昇」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の上昇位置(非作業位置)まで上昇し、苗植付装置55が停止する。植付部昇降スイッチ47が「降下」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の降下位置(作業位置)まで降下し、苗植付装置55が作動する。
【0061】
自動旋回切替スイッチ48(切替操作部)は、自動旋回の実行を可能とするか否かを切り替えるスイッチである。自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされている場合には、自動旋回を実行可能となる。自動旋回切替スイッチ48が「OFF」にされている場合には、自動旋回を実行不能となる。自動旋回切替スイッチ48が「OFF」にされている場合には、自動旋回は実行されない。
【0062】
また、コントローラ100には、位置取得装置150から機体の現在の位置情報などが入力される。コントローラ100は、機体が自動で走行しながら作業を行う自律走行モードを実行する。
【0063】
<自律走行モード>
ここで、図4を参照して、苗移植機1による、圃場における自動旋回を含む自動走行(自律走行)について説明する。図4は、苗移植機1の圃場における自律走行の説明図である。コントローラ100(図3参照)は、前輪10(図1参照)の操舵量をフィードバックしながらステアリングモータ95(図3参照)を制御してハンドル35(図3参照)を操作する自律走行モードを有する。自律走行モードは、自動直進モードと、自動旋回モードとを含む。
【0064】
図4に示すように、自律走行モードにおいては、苗移植機1は、圃場において、予定走行経路に沿って直進および旋回を繰り返しながら苗の植え付け作業を自動で行う。なお、コントローラ100は、上記したように、走行車体2の上方に配置された位置取得装置150によって苗移植機1の現在の位置情報や、旋回位置に関する情報を取得する。
【0065】
苗移植機1は、圃場における所定の作業エリア内を往復しながら、苗の植付を行う。この場合、直進走行については、コントローラ100が自動直進モードを実行することにより、設定された直進走行経路L1に沿って自動走行を行う。また、旋回走行については、コントローラ100が自動旋回モードを実行することにより、旋回走行経路L2に沿った自動旋回が実行される。
【0066】
直進走行経路L1は、走行基準となる基準線L0に対して平行である。基準線L0は、苗の植え付け方向にあわせて、圃場において設定される。コントローラ100は、直進走行の開始位置および終了位置をそれぞれ基準始点(A点)および基準終点(B点)として取得し、A点およびB点を結ぶ線分を基準線L0として記憶する。
【0067】
基準線L0は、直進走行の開始位置(A点)および終了位置(B点)が更新されると更新される。また、次工程における直進走行経路L1は、更新された基準線L0に対して平行に設定される。
【0068】
苗移植機1は、自動直進モードによって直進走行を行う場合には、直進走行を開始してからA点およびB点を結ぶ線分の距離に基づいて設定された所定の自動走行距離を走行すると、例えば、ブザーを鳴らし、直進走行の終了位置に近づいたことを報知する。所定の自動走行距離は、A点およびB点を結ぶ線分の距離よりも短い距離である。
【0069】
なお、上述した直進走行経路L1は、或る基準線L0、例えば、圃場において最初に設定される基準線L0に対して平行に設定されてもよい。この場合、更新される開始位置(A点)および終了位置(B点)は、次工程における所定の自動走行距離を設定するために用いられる。
【0070】
コントローラ100は、自動旋回切替スイッチ48が作業者によって「ON」にされ、自動旋回受け付け条件を満たす場合に、自動旋回モードによる自動旋回を受け付ける。そして、コントローラ100は、自動旋回受け付け条件を満たした後に、自動旋回開始条件を満たす場合に、自動旋回モードによる自動旋回を開始する。
【0071】
コントローラ100は、(1)線引きマーカ65が作業状態であり、かつ(2)直進走行において所定の自動走行距離を走行している場合に、自動旋回受け付け条件を満たすと判定する。また、コントローラ100は、(1)または(2)のいずれか一方を満たさない場合には、自動旋回受け付け条件を満たさないと判定する。
【0072】
コントローラ100は、線引きマーカ65が非作業状態である場合に、自動旋回開始条件を満たすと判定し、自動旋回モードによる自動旋回を開始する。すなわち、コントローラ100は、線引きマーカ65が作業状態である場合に、自動旋回を受け付け、その後、線引きマーカ65が非作業状態になると、自動旋回を開始する。
【0073】
なお、自動旋回受け付け条件が満たされた走行車体2の位置は、旋回開始位置(旋回位置)として記憶される。旋回開始位置は、自動直進における直進走行の終了位置でもある。
【0074】
また、コントローラ100は、自動旋回モードとして、第1旋回動作モードと、第2旋回動作モードとを有する。コントローラ100は、第1旋回動作モードおよび第2旋回動作モードを組み合わせることで、自動旋回モードによる自動旋回を実行する。
【0075】
第1旋回動作モードでは、コントローラ100は、苗移植機1の旋回中において、ハンドル35の操舵量が所定の値になるようステアリングモータ95を制御する。この場合、コントローラ100は、位置取得装置150が取得した位置情報に関わらず処理を実行する。所定の値は、旋回走行経路L2に沿った旋回を実現する値である。
【0076】
第2旋回動作モードでは、コントローラ100は、苗移植機1の旋回中において、位置取得装置150が取得した位置情報に基づいて、旋回走行経路L2上の所定の方位に苗移植機1が到達するようステアリングモータ95を制御する。
【0077】
コントローラ100は、第1旋回動作モードと、第2旋回動作モードとを組み合わせて自動旋回を実行する。コントローラ100は、旋回に応じて、第1旋回動作モードと、第2旋回動作モードとを作動させる順番、およびタイミングを変更することができる。第1旋回動作モードと、第2旋回動作モードとを作動させる順番、およびタイミングは、作業者によって設定することができる。
【0078】
作業者は、操縦パネル38に設けられた操作部や、端末装置による操作によって、第1旋回動作モードと、第2旋回動作モードとを作動させる順番、およびタイミングを自動旋回コースとして複数設定することができる。そして、設定された自動旋回コースを、作業者が選択することで、コントローラ100は、選択された自動旋回コースに基づいて、自動旋回を実行する。なお、自動旋回コースは、予め設定されてもよい。
【0079】
例えば、自動旋回コースでは、第2旋回動作モード、第1旋回動作モード、および第2旋回動作モードの順で旋回が実行される。また、第1旋回動作モードと第2旋回動作モードとを変更するタイミングが設定される。旋回動作モードを変更するタイミングは、例えば、走行車体2の方位や、後輪11の回転数や、旋回を開始してからの時間や、旋回を開始してからの走行距離である。
【0080】
上記自動旋回コースでは、コントローラ100は、自動直進モードによる直進走行中に、走行車体2が旋回位置に到達し、線引きマーカ65による作業が行われていた方向へ第2旋回動作モードによって、旋回を開始する。そして、コントローラ100は、第2旋回動作モードによる旋回によって走行車体2の方位が、直進走行経路L1に対し第1所定方位(例えば、70°)になると、旋回動作モードを第2旋回動作モードから第1旋回動作モードに変更し、ハンドル35が基準位置となるようにステアリングモータ95を制御する。
【0081】
そして、コントローラ100は、第1旋回動作モードによって走行車体2が所定距離走行した後に、旋回動作モードを第1旋回動作モードから第2旋回動作モードに変更し、線引きマーカ65による作業が行われていた方向へ、旋回を開始する。
【0082】
そして、コントローラ100は、第2旋回動作モードによる旋回によって走行車体2の方位が、次工程における直進走行経路L1に対し第2所定方位(例えば、30°)になると、ハンドル35が基準位置となるようにステアリングモータ95を制御する。
【0083】
また、上記した自動旋回コースとは、別の自動旋回コースとして、例えば、第1旋回動作モード、および第2旋回動作モードの順で旋回が実行されるように設定される。また、第1旋回動作モードから第2旋回動作モードへ変更するタイミングが設定される。なお、自動旋回コースとして、1つの旋回動作モード、例えば、第1旋回動作モードのみが設定されてもよい。
【0084】
コントローラ100は、自動旋回終了条件を満たす場合に、自動旋回モードによる自動旋回を終了する。コントローラ100は、自動旋回を開始した後に、走行車体2の方位が、次工程における直進走行経路L1に沿う場合に、自動旋回終了条件を満たすと判定する。コントローラ100は、自動旋回終了条件を満たし、かつ線引きマーカ65が作業状態となった走行車体2の位置を、旋回終了位置(旋回位置)として記憶する。旋回終了位置は、自動直進における直進走行の開始位置でもある。
【0085】
<自動直進処理>
次に、実施形態に係る自動直進処理について図5のフローチャートを用いて説明する。図5は、実施形態に係る自動直進処理を説明するフローチャートである。
【0086】
コントローラ100は、直進モードスイッチ46が「ON」であるか否かを判定する(S100)。コントローラ100は、直進モードスイッチ46が「ON」である場合には(S100:Yes)、線引きマーカ65が作業状態であるか否かを判定する(S101)。
【0087】
コントローラ100は、線引きマーカ65が作業状態である場合には(S101:Yes)、自動直進モードによる自動走行を実行する(S102)。
【0088】
コントローラ100は、直進モードスイッチ46が「OFF」である場合には(S100:No)、今回の処理を終了する。
【0089】
また、コントローラ100は、直進モードスイッチ46が「ON」の場合であっても(S100:Yes)、線引きマーカ65が非作業状態である場合には(S101:No)、今回の処理を終了する。すなわち、コントローラ100は、直進モードスイッチ46が「ON」の場合であっても(S100:Yes)、線引きマーカ65が非作業状態である場合には(S101:No)、自動直進モードの実行を禁止する。
【0090】
<自動旋回開始処理>
次に、実施形態に係る自動旋回開始処理について図6のフローチャートを用いて説明する。図6は、実施形態に係る自動旋回開始処理を説明するフローチャートである。
【0091】
コントローラ100は、自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされたか否かを判定する(S200)。コントローラ100は、自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされていない場合には(S200:NO)、今回の処理を終了する。
【0092】
コントローラ100は、自動旋回切替スイッチ48が操縦者によって「ON」にされた場合には(S200:Yes)、自動旋回受け付け条件を満たすか否かを判定する(S201)。
【0093】
コントローラ100は、自動旋回受け付け条件を満たさない場合には(S201:No)、自動旋回受け付け条件を満たすまで、ステップS201の処理を繰り返す。
【0094】
コントローラ100は、自動旋回受け付け条件を満たす場合には(S201:Yes)、線引きマーカ65の上昇を開始する(S202)。線引きマーカ65は、例えば、苗植付部4の上昇(上昇操作)に伴い、上昇する。
【0095】
コントローラ100は、自動旋回開始条件を満たすか否かを判定する(S203)。コントローラ100は、自動旋回開始条件を満たさない場合には(S203:No)、自動旋回開始条件を満たすまで、ステップS203の処理を繰り返す。すなわち、コントローラ100は、自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされた場合であっても、線引きマーカ65が作業状態である場合には、自動旋回の実行を禁止する。
【0096】
コントローラ100は、自動旋回開始条件を満たす場合には(S203:Yes)、自動旋回を実行する。コントローラ100は、設定された自動旋回コースに基づいて自動旋回を実行する(S204)。
【0097】
<効果>
苗移植機1は、走行車体2に取り付けられた前輪10と、前輪10の操舵量を調整するハンドル35と、ハンドル35を駆動させるステアリングモータ95と、測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて走行車体2の現在の位置情報を取得する位置取得装置150と、走行車体2の左右方向にそれぞれ設けられ、次工程の走行目安となる溝を圃場に形成する線引きマーカ65と、ステアリングモータ95を制御するコントローラ100とを備える。コントローラ100は、直進走行経路L1に沿って走行車体2を走行させる自動直進モードと、旋回走行経路L2に沿って走行車体2が走行するように、ステアリングモータ95を制御し、走行車体2を旋回させる自動旋回モードとを有する。コントローラ100は、線引きマーカ65が作業状態である場合には、自動旋回モードによる旋回を禁止し、線引きマーカ65が非作業状態である場合には、自動直進モードによる直進を禁止する。
【0098】
これにより、苗移植機1は、旋回の準備が整っていない場合には、自動旋回モードによる旋回を禁止する。すなわち、苗移植機1は、旋回の準備が整っている場合にのみ、自動旋回モードによる旋回を実行させる。そのため、苗移植機1は、自動旋回における安全性を向上させることができる。
【0099】
また、苗移植機1は、自動旋回を開始するか否かを切り替える自動旋回切替スイッチ48を備える。コントローラ100は、線引きマーカ65が作業状態である場合に、自動旋回切替スイッチ48による自動旋回の開始操作を受け付ける。
【0100】
これにより、苗移植機1は、次工程の方向、すなわち次工程への旋回方向が決まっている場合に、自動旋回の開始操作を受け付け、自動旋回を開始させることができる。
【0101】
コントローラ100は、線引きマーカ65が作業状態である場合に、自動旋回モードにおける旋回位置を記憶する。
【0102】
これにより、コントローラ100は、植え付け作業の準備が整った位置を、自動直進モードによって直進走行をするための開始位置および終了位置として記憶することができる。すなわち、苗移植機1は、自動直進における直進走行の開始位置となる旋回終了位置、および自動直進における直進走行の終了位置となる旋回開始位置を正確に記憶することができる。そのため、苗移植機1は、直進走行経路L1を正確に設定することができ、例えば、次工程における所定の自動走行距離を正確に算出し、適切なタイミングで直進走行の終了位置に近づいたことを報知することができる。
【0103】
また、苗移植機1は、走行車体2に取り付けられた前輪10と、前輪10の操舵量を調整するハンドル35と、ハンドル35を駆動させるステアリングモータ95と、測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて走行車体2の現在の位置情報を取得する位置取得装置150と、ステアリングモータ95を制御するコントローラ100とを備える。コントローラ100は、走行車体2の旋回中において、位置情報に関わらず操舵量が所定の値になるようステアリングモータ95を制御して実行する第1旋回動作モードと、位置情報に基づいて、旋回走行経路L2上における所定の方位に走行車体2が到達するようステアリングモータ95を制御して実行する第2旋回動作モードとを自動旋回モードとして有する。コントローラ100は、旋回中に実行される自動旋回モードの順番、およびタイミングを変更可能である。
【0104】
これにより、苗移植機1は、圃場の状況に合わせて、自動旋回モードの順番、およびタイミングを変更し、圃場の状況に合った自動旋回を行うことができる。そのため、苗移植機1は、精度良く自動旋回を行うことができる。
【0105】
(変形例)
コントローラ100は、自動旋回コースとして、以下の旋回を実行してもよい。コントローラ100は、走行車体2が旋回位置(直進走行の終了位置)に到達し、苗植付部4が上昇操作されると、線引きマーカ65による作業が行われていた方向へ第2旋回動作モードによって、旋回を開始する。そして、コントローラ100は、第2旋回動作モードによる旋回によって走行車体2の方位が、直進走行経路L1に対し第1所定方位(例えば、60°)になると、旋回動作モードを第2旋回動作モードから第1旋回動作モードに変更し、ハンドル35が基準位置となるようにステアリングモータ95を制御する。
【0106】
そして、コントローラ100は、ハンドル35が基準位置となった後の後輪11の回転数が所定の回転数になると、旋回動作モードを第1旋回動作モードから第2旋回動作モードに変更し、旋回を開始する。
【0107】
そして、コントローラ100は、第2旋回動作モードによる旋回によって走行車体2の方位が、次工程における直進走行経路L1に対し第2所定方位(例えば、30°)になると、自動直進モードによる直進走行をする。
【0108】
これにより、苗移植機1は、次工程の直進走行経路L1の開始位置への到達精度を向上させることができる。また、苗移植機1は、自動旋回に対する安全性を向上させることができる。また、作業者の操作に基づいて、苗移植機1は、速やかに旋回動作を開始することができ、自動旋回モードから自動直進モードへ自動的に移行するため、操縦性や、作業性を向上させることができる。
【0109】
コントローラ100は、自動旋回受け付け条件を満たし、かつ苗植付部4が所定の上昇位置まで上昇した場合の走行車体2の位置を、旋回開始位置(旋回位置)として記憶してもよい。また、コントローラ100は、自動旋回終了条件を満たし、線引きマーカ65が作業状態となり、かつ苗植付部4が所定の降下位置まで降下した場合の走行車体2の位置を、旋回終了位置(旋回位置)として記憶してもよい。
【0110】
これにより、苗移植機1は、自動直進における直進走行の開始位置となる旋回終了位置、および自動直進における直進走行の終了位置となる旋回開始位置を正確に記憶することができる。そのため、苗移植機1は、直進走行経路L1を正確に設定することができ、例えば、次工程における所定の自動走行距離を正確に算出し、適切なタイミングで直進走行の終了位置に近づいたことを報知することができる。
【0111】
コントローラ100は、左右の線引きマーカ65がともに作業状態である場合には、旋回開始位置を記憶しない。左右の線引きマーカ65がともに作業状態である場合には、コントローラ100は、走行車体2を左右のどちらに自動旋回すればよいか判定することができない。そのため、このような場合には、コントローラ100は、旋回開始位置を記憶しない。これにより、苗移植機1は、正確ではない旋回開始位置を記憶することを抑制することができる。
【0112】
コントローラ100は、前工程における旋回終了位置(前工程における直進走行の開始位置)、および前工程における旋回開始位置(前工程における直進走行の終了位置)を、自動旋回が終了し、次工程において苗を植え付けるために苗植付部4が降下した場合に、記憶する。
【0113】
なお、苗移植機1は、走行車体2が畦まで前進し、一旦、後進した後に、自動旋回を開始する場合にも、同様に、前工程における旋回終了位置(前工程における直進走行の開始位置)、および前工程における旋回開始位置(前工程における直進走行の終了位置)を記憶してもよい。
【0114】
これにより、苗移植機1は、自動旋回が正常に行われた場合に、前工程における旋回終了位置(前工程における直進走行の開始位置)、および前工程における旋回開始位置(前工程における直進走行の終了位置)を記憶する。そのため、苗移植機1は、正確な旋回終了位置、および正確な旋回開始位置を記憶することができ、次工程における所定の自動走行距離を正確に算出し、適切なタイミングで直進走行の終了位置に近づいたことを報知することができる。
【0115】
コントローラ100は、自動旋回を行い、旋回後の走行車体2の方位が、次工程における直進走行経路L1に対して所定ずれ角度よりも大きい場合、すなわち、方位のずれが所定ずれ角度(所定角度)よりも大きい場合には、前工程における旋回終了位置(前工程における直進走行の開始位置)、および前工程における旋回開始位置(前工程における直進走行の終了位置)を記憶しない。
【0116】
これにより、苗移植機1は、自動旋回が正常に行われなかった場合の旋回終了位置、および旋回開始位置を記憶することを防止することができる。
【0117】
コントローラ100は、圃場の一方側の端における旋回中に実行される自動旋回コースと、一方側の端とは反対側の他方側の端における旋回中に実行される自動旋回コースとをそれぞれ変更可能であってもよい。
【0118】
コントローラ100は、例えば、図4において走行する場合に、一方側の端における自動旋回(左回りの旋回)と、他方側の端における自動旋回(右回りの旋回)とを別の自動旋回コースとしてもよい。
【0119】
例えば、一方側の端における自動旋回コースは、第2旋回動作モード、第1旋回動作モード、および第2旋回動作モードの順で旋回が実行されるように設定される。また、他方側の端における自動旋回コースは、第1旋回動作モード、および第2旋回動作モードの順で旋回が実行されるように設定される。なお、各旋回動作モードを変更するタイミングもそれぞれ設定される。
【0120】
また、コントローラ100は、各旋回中に実行される自動旋回コースをそれぞれ変更可能であってもよい。すなわち、コントローラ100は、旋回毎に自動旋回コースを変更可能であってもよい。
【0121】
これにより、苗移植機1は、圃場の端の状態、例えば、圃場の固さや、圃場の深さ(圃場の表土面と水面との高さ)に応じて、自動旋回コースを設定することができ、圃場の状態に合った自動旋回を行うことができる。そのため、苗移植機1は、自動旋回による旋回精度を向上させることができる。
【0122】
コントローラ100は、第2旋回動作モードの所定の方位を変更可能であってもよい。例えば、コントローラ100は、各旋回における第2旋回動作モードの所定の方位をそれぞれ変更可能であってもよい。
【0123】
これにより、苗移植機1は、圃場の状態に合った自動旋回を行うことができ、自動旋回による旋回精度を向上させることができる。
【0124】
コントローラ100は、第2旋回動作モードによる自動旋回において、旋回パラメータが所定値となった時に、走行車体2の方位が所定の方位に達していない場合には、自動旋回を終了してもよい。旋回パラメータは、例えば、第2旋回動作モードを開始してからの後輪11の回転数や、第2旋回動作モードを開始してからの時間や、第2旋回動作モードを開始してからの走行距離である。所定値は、予め設定された値であり、旋回走行経路L2から逸脱していると判定可能な値である。
【0125】
これにより、苗移植機1は、旋回走行経路L2から外れて自動旋回が行われている場合に、自動旋回が継続されることを防止する。そのため、苗移植機1は、例えば、苗移植機1が圃場外へ出ることを防止し、安全性を向上させることができる。
【0126】
コントローラ100は、自動旋回後の走行車体2の方位が、次工程における直進走行経路L1に対して所定の方位範囲外である場合には、自動直進モードによる直進走行を行わなくてもよい。所定の方位範囲は、予め設定された範囲であり、直進走行経路L1に対して、左右方向に設定される範囲である。
【0127】
また、コントローラ100は、自動旋回後の舵角が、所定角範囲外である場合には、自動直進モードによる直進走行を行わなくてもよい。所定角範囲は、予め設定された範囲であり、直進走行経路L1に対して、左右方向に設定される範囲である。
【0128】
これにより、苗移植機1は、直進走行経路L1から外れて自動直進が行われることを防止することができる。また、苗移植機1は、作業者による次工程の植え付けを行うための位置合わせ(条合わせ)を容易に行わせることができる。
【0129】
また、苗移植機1は、ハンドル35の操作量を検出する操舵量センサ91に加えて、前輪10の舵角を検出するセンサを設けてもよい。コントローラ100は、操舵量センサ91によって検出される操作量に基づいて、自動直進モードによる直進走行を実行する。また、コントローラ100は、前輪10の舵角を検出するセンサによって検出される舵角に基づいて、自動旋回モードによる自動旋回を実行する。コントローラ100は、自動旋回後の走行車体2の方位が、次工程における直進走行経路L1に対して所定の方位範囲外であるか否かの判定を、操舵量センサ91によって検出された値に基づいて判定する。
【0130】
これは、直進時には前輪10の舵角が小さいためである。これにより、苗移植機1は、自動旋回後の走行車体2の方位が、次工程における直進走行経路L1に対して所定の方位範囲外であるか否かの判定精度を向上させることができる。
【0131】
コントローラ100は、副変速機構16が走行位置(非走行位置以外の位置)であり、苗植付部4が降下しており、線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、エンジン30を停止させてもよい。
【0132】
また、コントローラ100は、フロート62が接地状態であり、線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、エンジン30を停止させてもよい。所定傾き角度は、予め設定された角度である。
【0133】
また、コントローラ100は、圃場に種をまく播種部を有する作業車両である場合には、播種部が作動状態であり、線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、エンジン30を停止させてもよい。
【0134】
また、コントローラ100は、舵角(またはハンドル35の操作量)が所定角以内であり、線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、エンジン30を停止させてもよい。
【0135】
これにより、苗移植機1(作業車両)は、例えば、苗移植機1が圃場外へ出ることを防止し、安全性を向上させることができる。また、苗移植機1は、例えば、枕時処理後の植えじまいと区別して、エンジン30を停止させることができる。
【0136】
また、コントローラ100は、副変速機構16が走行位置(非走行位置以外の位置)であり、苗植付部4が降下しており、線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、減速後にエンジン30を停止させてもよい。
【0137】
また、コントローラ100は、フロート62が接地状態であり、かつ線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、減速後にエンジン30を停止させてもよい。
【0138】
また、コントローラ100は、圃場に種をまく播種部を有する作業車両である場合には、播種部が作動状態であり、線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、減速後にエンジン30を停止させてもよい。
【0139】
また、コントローラ100は、舵角(またはハンドル35の操作量)が所定角以内であり、線引きマーカ65が作業状態であり、かつ走行車体2の傾きが所定傾き角度以上である場合に、減速後にエンジン30を停止させてもよい。
【0140】
これにより、苗移植機1(作業車両)は、エンジン30の停止に対する作業者の安全性を向上させることができる。
【0141】
また、苗移植機1は、旋回時に左右の前輪10を同じ回転速度で回転させるデファレンシャルロック機構を自動で作動させてもよい。
【0142】
これにより、苗移植機1は、旋回時に前輪10がスリップすることを抑制することができる。
【0143】
また、苗移植機1(作業車両)と通信可能な端末装置(例えば、スマートフォンや、タブレット)で作動するアプリケーションにおいて、苗移植機1の現在位置から、オープンデータである土壌図の土壌データを取得し、圃場情報として作業記録に記録してもよい。
【0144】
これにより、作業者は、土壌情報から、施肥量や、耕耘の深さなどの設定を容易に行うことができる。
【0145】
また、苗移植機1は、上記アプリケーションを用いて、苗移植機1の現在位置から、オープンデータである土壌図の土壌データを取得し、可変施肥田植えの際の減肥率に土壌成分を係数として反映させて可変施肥を行ってもよい。例えば、土壌が砂質の場合には、肥料が抜けやすく、減肥率を大きくすると、肥料が足りなくなる。そのため、苗移植機1は、減肥率を大きくしないように、係数を設定し、自動的に反映させる。なお、減肥率の代わりに施肥量が用いられてもよい。
【0146】
また、苗移植機1は、上記アプリケーションを用いて、苗移植機1の現在位置から、これから作業を行う圃場の土壌図の土壌データを取得し、可変施肥田植えの際の減肥率に土壌成分を係数として反映させて可変施肥を行ってもよい。
【0147】
また、苗移植機1は、昨年の収量情報と収量結果に作業者などが満足したか否かがわかる情報を、施肥設定画面に表示してもよい。
【0148】
これにより、苗移植機1は、土壌にあった施肥設定を実施することができる。
【0149】
また、苗移植機1は、図7に示すように、走行車体2の前側であり、かつハンドル35よりも上方に透過液晶モニタ200を備える。図7は、変形例に係る苗移植機1の側面図である。透過液晶モニタ200には、例えば、センターマスコットや、畦クラッチの入り切り情報や、苗切れを知らせる情報などが表示される。なお、透過液晶モニタ200は、ボンネット39に取り付けられてもよい。
【0150】
これにより、作業者は、作業中に目線を下げることなく、各情報を確認することができる。また、透過液晶モニタ200は、透明であるため、前方の視界を遮ることがない。そのため、苗移植機1は、安全性を向上させることができる。
【0151】
また、苗移植機1は、GNSSなどの測位手段による検出された座標、および走行車体2の方位と、苗移植機1の型式に応じた走行車体2の寸法とに基づいて、植込杆58の位置を割り出し、圃場に植え付けた株位置をマッピングしてもよい。
【0152】
例えば、苗移植機1は、図8に示すように、植込杆58に反射シール210を設け、植付伝動ケース56に発光検出装置211を設ける。図8は、変形例に係る苗移植機1の一部を示す図である。発光検出装置211は、光を出射する発光器、および光センサの機能を有する。苗移植機1は、発光検出装置211から出射され、反射シール210によって反射された光を発光検出装置211によって検出することによって、植込杆58による植え付けタイミングを検出する。これにより、苗移植機1は、圃場に植え付けた株位置を正確に検出することができる。
【0153】
なお、苗移植機1は、植付ロータリ57の回転軸に反射シール210を設けてもよい。また、苗移植機1は、磁気センサを用いて、植込杆58による植え付けタイミングを検出してもよい。植込杆58による植え付けタイミングを検出する方法は、上記方法に限定されず、例えば、植付ロータリ57の回転軸に、スリットや、突出部を設けた回転部材を取り付け、スリットなどが通過するタイミングを検出してもよい。
【0154】
これにより、作業者は、刈り取り時の計画を容易に立てることができる。また、作業者は、植えた株総数と収量とを管理し、次年度以降の植え付け計画の基礎データとして用いることができる。
【0155】
また、圃場に植え付けた株位置のマップと、コンバインの型式による入力に基づいて、手刈りを必要な株が色分けされてもよい。
【0156】
これにより、作業者などは、手刈りが必要な株を容易に確認することができる。
【0157】
また、苗移植機1は、施肥装置5において、電動の試し繰り出しを可能としてもよい。電動の試し繰り出しは、例えば、試し繰り出しスイッチが操作されることによって、肥料が施肥ホッパ70から排出される。施肥装置5は、試し繰り出し開始時には、自動で条切を行わず、繰出装置71の施肥ロールを回転させる。
【0158】
これにより、苗移植機1は、試し繰り出しを開始することによって、全条の施肥ロールを回転させて、肥料を排出することができる。
【0159】
また、苗移植機1は、試し繰り出しを開始した後に、畦クラッチスイッチ操作による条切を受け付けるように構成されてもよい。
【0160】
これにより、試し繰り出しが開始された後に、作業者は、条切操作を行うことができ、任意の条の施肥ロールを回転させて、肥料を排出させることができる。
【0161】
また、苗移植機1は、畦クラッチスイッチ操作による条切操作が行われた後に、畦クラッチセンサにより、畦クラッチスイッチ操作に応じた条切状態になったことを検出するまで、繰り出しモータを停止させてもよい。
【0162】
これにより、苗移植機1は、作業者が所望する施肥ロールとは異なる施肥ロールが回転することや、作業者が所望する施肥ロールが回転しないことを抑制することができる。
【0163】
また、苗移植機1は、試し繰り出しスイッチが長押し(例えば、3秒)されて、肥料の充填が完了した後も、試し繰り出しスイッチが長押し(例えば、10秒)された場合に、全条入りの状態で繰り出しモータを回転させてもよい。
【0164】
これにより、苗移植機1は、全条の施肥ロールを回転させて、肥料を排出させることができる。
【0165】
なお、苗移植機1は、試し繰り出しスイッチが押されている間、繰り出しモータを回転させてもよい。また、苗移植機1は、作業者が試し繰り出しスイッチを離した後も、繰り出しモータを回転させてもよい。この場合、苗移植機1は、試し繰り出しスイッチが再度押された場合に、繰り出しモータを停止させる。
【0166】
また、苗移植機1は、HST14が後進位置にあることを検出するバック検出スイッチを備えてもよい。苗移植機1は、HST14が後進位置にある場合には、変速操作レバー36に設けられた植付スイッチが押されても、植付クラッチ27aを「ON」にしないように構成してもよい。
【0167】
苗移植機1が後進している場合に、植付クラッチ27aが「ON」になると、植込杆58が逆回転し、植込杆58が破損するおそれがある。苗移植機1は、HST14が後進位置にある場合には、変速操作レバー36に設けられた植付スイッチが押されても、植付スイッチの操作を受け付けないため、植込杆58の逆回転を防止し、植込杆58の破損を防止することができる。
【0168】
また、苗移植機1は、HST14が後進位置にあり、バック旋回を行っている場合には、変速操作レバー36に設けられた植付スイッチが押されても、バック旋回をキャンセルしないように構成してもよい。バック旋回は、走行車体2が畦まで前進し、その後、後進して停止した後に、旋回を開始する旋回である。
【0169】
また、苗移植機1は、HST14が後進位置にある場合には、植付スイッチの操作を受け付けないように構成してもよい。
【0170】
これにより、苗移植機1は、バック旋回時に、植付スイッチが押された場合であっても、バック旋回のキャンセルを防止し、バック旋回を継続することができる。
【0171】
また、苗移植機1は、次工程における直進走行経路L1を、任意のタイミングで取得可能とし、現在の工程における位置から旋回方向に、条間と条数と乗算した距離、平行移動した位置に次工程における直進走行経路L1を設定してもよい。
【0172】
また、苗移植機1は、自動旋回切替スイッチ48が「ON」の場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、バック旋回制御を行う場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、線引きマーカ65が自動的に上昇、または降下する場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、フロート62が接地している場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。
【0173】
また、苗移植機1は、苗植付部4が降下している場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、フロート62による検知に基づいて苗植付部4が自動昇降する場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、エンジン30が始動している場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。
【0174】
また、苗移植機1は、基準線L0が取得されている場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、GPSや、GNSSにより位置情報を取得している場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、ハンドル35の操作量が走行車体2の直進を示す場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、目標方位のずれが一定角(例えば、30°)未満の場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、走行車体2の傾きが所定角(例えば、8°)未満の場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。
【0175】
また、苗移植機1は、副変速機構16が移動速(高速モード)ではない場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。
【0176】
これらにより、苗移植機1は、直進走行経路L1がずれることを抑制し、また、意図しないタイミングで自動旋回が開始されることを抑制することができる。
【0177】
また、苗移植機1は、バック旋回時に、バック検出スイッチが「ON」になった場合に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。
【0178】
これにより、苗移植機1は、畦の端を基準に直進走行経路L1を設定することができる。
【0179】
また、苗移植機1は、バック旋回時に、後進後に停止し、前進を開始する時に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。また、苗移植機1は、Uターンの旋回を行う場合には、苗植付部4が上昇した時に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。
【0180】
これにより、苗移植機1は、実際に旋回を開始する直前のタイミングで、次工程の直進走行経路L1を設定するため、例えば、GPSの精度のずれに起因する直進走行経路L1のずれを抑制することができる。そのため、苗移植機1は、直進走行経路L1を精度良く設定することができる。
【0181】
また、苗移植機1は、バック旋回を行う場合には、自動直進モードによる直進走行において、畦接近警報による報知がされた時に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。例えば、曲がっている畦に対して、バック旋回を行う場合に、作業者は、畦を基準に苗移植機1を後進させて、苗移植機1を曲がって後進させることがある。このような状態で、次工程の直進走行経路L1が設定されると、次工程の直進走行経路L1の精度が悪くなるおそれがある。
【0182】
これに対し、苗移植機1は、直進走行時に次工程の直進走行経路L1を設定することで、次工程の直進走行経路L1の精度を向上させることができる。
【0183】
また、苗移植機1は、自動直進モードによる直進走行において、畦接近警報による報知がされた時に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定し、バック旋回時に、後進後に停止してから、前進を開始するまでに、所定停止時間(例えば、5分)以上停止した場合には、前進を開始する時に、直進走行経路L1を設定してもよい。
【0184】
これにより、苗移植機1は、長時間停止した場合に、直進走行経路L1を再設定することができる。
【0185】
また、苗移植機1は、バック旋回を行う場合、またはUターンの旋回を行う場合には、自動直進モードによる直進走行において、走行車体2の方位と目標方位とのずれが、所定のずれ角(例えば、3°)未満の時に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。なお、苗移植機1は、直進走行経路L1を設定した後は、自動直進モードがいったん停止されるか、または自動旋回モードによる旋回を開始するまで、新たに直進走行経路L1が設定されないようにしてもよい。これにより、苗移植機1は、複数回、直進走行経路L1が設定されることを抑制することができる。
【0186】
また、苗移植機1は、バック旋回を行う場合、またはUターンの旋回を行う場合には、自動直進モードによる直進走行において、現在の工程の直進走行経路L1に対するずれ幅が、所定のずれ幅(例えば、2cm)未満の時に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。なお、苗移植機1は、直進走行経路L1を設定した後は、自動直進モードがいったん停止されるか、または自動旋回モードによる旋回を開始するまで、新たに直進走行経路L1が設定されないようにしてもよい。これにより、苗移植機1は、複数回、直進走行経路L1が設定されることを抑制することができる。
【0187】
これらにより、苗移植機1は、次工程の直進走行経路L1の精度を向上させることができる。
【0188】
また、苗移植機1は、Uターンの旋回を行う場合には、自動直進モードによる直進走行において、畦接近警報による報知がされた時に、上記する方法によって直進走行経路L1を設定してもよい。
【0189】
これにより、苗移植機1は、次工程の直進走行経路L1の精度を向上させることができる。
【0190】
また、苗移植機1は、Uターンの旋回を行う場合に、畦接近警報による報知がされて、次工程の直進走行経路L1を設定してから、苗植付部4が上昇するまでに、所定停止時間(例えば、5分)以上停止した場合には、苗植付部4を開始する時に、直進走行経路L1を再設定してもよい。
【0191】
これにより、苗移植機1は、長時間停止した場合に、直進走行経路L1を再設定することができる。
【0192】
また、苗移植機1は、バック旋回時に、後進後に停止し、前進を開始してから一定距離(例えば、20cm)進んだ後に、実際の旋回を開始してもよい。
【0193】
これにより、苗移植機1は、前進開始直後に、トルク不足の状態で実際の旋回が開始されることを抑制することができる。そのため、苗移植機1は、ステアリングモータ95の脱調を抑制することができる。
【0194】
また、苗移植機1は、図9に示すように、苗補給時などに作業者が落下することを抑制するための柵220を備えてもよい。図9は、変形例に係る苗移植機1の一部を示す側面図である。柵220を支持する支柱221は、苗タンク53が最接近した場合であっても干渉せず、また、作業者の足元にスペースを設けるように、湾曲部221aを備える。
【0195】
これにより、苗移植機1は、安全性を向上させることができる。また、苗移植機1は、作業スペースを確保し、作業性を向上させることができる。
【0196】
また、苗移植機1は、柵220に非常停止ボタン222を備えてもよい。非常停止ボタン222は、走行車体2を停止させるボタンである。非常停止ボタン222は、左右方向に沿って複数設けられる。例えば、非常停止ボタン222は、左右方向の中央部、および左右方向の端部に設けられる。
【0197】
これにより、作業者は、苗補給時などに、走行車体2を直ぐに停止させることができる。そのため、苗移植機1は、安全性を向上させることができる。
【0198】
また、苗移植機1は、図10に示すように、柵220の中央部付近に、畦クラッチスイッチ230、油圧感度スイッチ231、ロータ高さ調整ダイヤル232、植え付け始め調整ダイヤル233、覆土調整ダイヤル234、およびローリング調整ダイヤルを備えてもよい。図10は、変形例に係る苗移植機1の一部を示す平面図である。
【0199】
これにより、作業者は、苗移植機1が自動直進モードによって直進走行している場合に、後方の植え付け確認を行いながら、畦クラッチを操作することができる。そのため、苗移植機1は、作業性を向上させることができる。
【0200】
また、作業者は、苗移植機1が自動直進モードによって直進走行している場合に、後方の植え付け確認を行いながら、油圧感度や、ロータの高さを調整することができる。そのため、苗移植機1は、植え付け精度を向上させ、作業性を向上させることができる。
【0201】
また、作業者は、苗移植機1が自動直進モードによって直進走行している場合に、後方の植え付け確認を行いながら、植え付け開始位置を調整することができる。そのため、苗移植機1は、作業性を向上させることができる。
【0202】
また、作業者は、苗移植機1が自動直進モードによって直進走行している場合に、後方の覆土状態を確認しながら、覆土を調整することできる。そのため、苗移植機1は、播種精度を向上させ、作業性を向上させることができる。
【0203】
また、作業者は、苗移植機1が自動直進モードによって直進走行している場合に、後方の左右の植え付け深さを確認しながら、苗植付部4のローリングを調整することができる。そのため、苗移植機1は、植え付け精度を向上させ、作業性を向上させることができる。
【0204】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0205】
1 苗移植機(作業車両)
2 走行車体
4 苗植付部(圃場作業装置)
10 前輪(走行車輪)
14 無段変速装置
16 副変速機構
35 ハンドル(ステアリング装置)
46 直進モードスイッチ
48 自動旋回切替スイッチ(切替操作部)
65 線引きマーカ
92 傾斜センサ
95 ステアリングモータ(モータ)
100 コントローラ(制御装置)
150 位置取得装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10