(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】空調システム、プログラム、情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
F24F 1/008 20190101AFI20221004BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20221004BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F24F1/008
F24F11/89
B01D46/42 A
(21)【出願番号】P 2017247053
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ケ田 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰治
(72)【発明者】
【氏名】下舞 賢一
(72)【発明者】
【氏名】服部 将志
(72)【発明者】
【氏名】恩田 陽介
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137010(JP,A)
【文献】特開平11-156131(JP,A)
【文献】特開2016-125718(JP,A)
【文献】特開2004-291864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0105494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/008
F24F 11/00-11/89
B01D 46/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナと、
前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段または後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出するセンサ装置と、
前記エアーコンディショナの内部の部材を発生源とする匂いを判定する判定部を有する情報処理装置と、
を備え
、
前記判定部は、前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値との差に基づき、前記センサ装置よりも前段に設けられた部材を発生源とする匂いを判定する
空調システム。
【請求項2】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナと、
前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第1センサ装置と、
前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第2センサ装置
と、
前記エアーコンディショナの内部の部材を発生源とする匂いを判定する判定部を有する情報処理装置と、
を備え、
前記判定部は、前記ファンの動作時における前記第1センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記第2センサ装置の検出値との差に基づき、前記フィルタを発生源とする匂いを判定する
空調システム。
【請求項3】
前
記センサ装置は、匂いの原因物質の量を検出する少なくとも1つの検出素子を含み、
前記情報処理装置は、複数の種類の匂い毎に、1以上の基準パターンを紐付けて記憶するパターン記憶部をさらに有し、
前記基準パターンは、前記少なくとも1つの検出素子のそれぞれの、対応する匂いの空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表し、
前記判定部は、前記ファンの停止時における前
記センサ装置に含まれる前記少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第1パターンと、前記ファンの動作時における前
記センサ装置に含まれる前記少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第2パターンとの差を表す第1差分パターンと、前記基準パターンとをマッチングして、匂いの種類を判定する
請求項
1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1パターンおよび前記第2パターンと、前記第1パターンおよび前記第2パターンの取得時刻とに基づき、前記取得時刻より後の第1時刻における前記第1パターンと前記第2パターンとの差を推定し、前記第1時刻における匂いの発生源および発生している匂いの種類を判定する
請求項
3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記判定部は、判定した匂いの種類および匂いの強さに応じて、匂いの発生源における汚染度を判定し、
前記情報処理装置は、判定した汚染度を表す情報を出力する出力部をさらに有する
請求項1から
4の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の後段において、空気の圧力を検出する圧力センサ装置をさらに備え、
前記判定部は、前記ファンの動作時において前記圧力センサ装置により検出された前記圧力に基づき、前記フィルタの目詰まりの状態を判定する
請求項1から
5の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記エアーコンディショナと別体であり、
前記
センサ装置は、前記エアーコンディショナに対して着脱自在であり、
前記
センサ装置は、前記情報処理装置に、
検出結果を無線通信により送信する
請求項
1に記載の空調システム。
【請求項8】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナにおける内部の匂いを、情報処理装置に判定させるためのプログラムであって、
前記エアーコンディショナは、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段または後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出するセンサ装置が取り付けられ、
前記情報処理装置に、
前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値とを取得する取得ステップと、
前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値との差に基づき、前記センサ装置よりも前段に設けられた部材を発生源とする匂いを判定する判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナにおける内部の匂いを、情報処理装置に判定させるためのプログラムであって、
前記エアーコンディショナは、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第1センサ装置と、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第2センサ装置とが取り付けられ、
前記情報処理装置に、
前記ファンの動作時における前記第1センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記第2センサ装置の検出値とを取得する取得ステップと、
前記ファンの動作時における前記第1センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記第2センサ装置の検出値との差に基づき、前記フィルタを発生源とする匂いを判定する判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナにおける内部の匂いを判定する情報処理装置であって、
前記エアーコンディショナは、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段または後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出するセンサ装置が取り付けられ、
前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値とを取得する取得部と、
前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値との差に基づき、前記センサ装置
よりも前段に設けられた部材を発生源とする匂いを判定する判定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項11】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナにおける内部の匂いを判定する情報処理装置であって、
前記エアーコンディショナは、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第1センサ装置と、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第2センサ装置とが取り付けられ、
前記ファンの動作時における前記第1センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記第2センサ装置の検出値とを取得する取得部と、
前記ファンの動作時における前記第1センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記第2センサ装置の検出値との差に基づき、前記フィルタを発生源とする匂いを判定する判定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項12】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナにおける内部の匂いを判定する情報処理方法であって、
前記エアーコンディショナは、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段または後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出するセンサ装置が取り付けられ、
前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値を取得し、
前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値との差に基づき、前記センサ装置よりも前段に設けられた部材を発生源とする匂いを判定する
情報処理方法。
【請求項13】
ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナにおける内部の匂いを判定する情報処理方法であって、
前記エアーコンディショナは、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第1センサ装置と、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する第2センサ装置とが取り付けられ、
前記ファンの動作時における前記第1センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記第2センサ装置の検出値とを取得し、
前記ファンの動作時における前記第1センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記第2センサ装置の検出値との差に基づき、前記フィルタを発生源とする匂いを判定する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム、プログラム、情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアーコンディショナは、様々な環境で用いられている。例えば、エアーコンディショナは、車両の中の空気の温度および湿度の調整、部屋の中の空気の温度および湿度の調整に用いられている。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、空気清浄装置のフィルタの交換時期を通知する技術が記載されている。特許文献3には、汚れ感知センサによる検出結果に応じて吸気口カバーの開閉を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-156131号公報
【文献】特開2000-210518号公報
【文献】特開平4-35715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エアーコンディショナの内部は、温度が高くなったり、湿度が高くなったりするため、長期間使用すると、カビおよびバクテリア等が繁殖してしまう。エアーコンディショナの内部にカビおよびバクテリア等が繁殖すると、異臭が発生してしまう。従って、エアーコンディショナを使用する場合、使用者は、定期的に、内部のクリーニングおよびフィルタ交換をしなければならない。しかし、エアーコンディショナは、例えば異臭がしたとしても発生源がどこであるのかを判断するのは、非常に困難であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エアーコンディショナにおける内部の部材を発生源とする匂いを簡易に特定する空調システム、プログラム、情報処理装置および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空調システムは、ファンと、前記ファンから送風された空気を外部に排出する通風経路と、前記通風経路を通過する空気に含まれる塵を除去するフィルタとを有するエアーコンディショナと、前記通風経路における前記フィルタが設けられた位置より送風方向の前段または後段において、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出するセンサ装置と、前記エアーコンディショナの内部の部材を発生源とする匂いを判定する判定部を有する情報処理装置と、を備え、前記判定部は、前記ファンの停止時における前記センサ装置の検出値と、前記ファンの動作時における前記センサ装置の検出値との差に基づき、前記センサ装置よりも前段に設けられた部材を発生源とする匂いを判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアーコンディショナにおける内部の部材を発生源とする匂いを簡易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空調システムを示す図である。
【
図2】
図2は、第1センサ装置および第2センサ装置の外観の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1センサ装置および第2センサ装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、センサユニットの構成を示す図である。
【
図5】
図5は、匂いの判定処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、エアーコンディショナの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示す図である。
【
図8】
図8は、情報処理装置によるエアーコンディショナの匂いの検出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、情報処理装置の表示例を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る情報処理装置の機能構成を示す図である。
【
図11】
図11は、情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る空調システム10について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る空調システム10を示す図である。空調システム10は、エアーコンディショナ18と、情報処理装置20とを備える。
【0012】
エアーコンディショナ18は、部屋の中の空気の状態を調整する。例えば、エアーコンディショナ18は、部屋の中を温かくしたり(暖房)、部屋の中を冷やしたり(冷房)して、部屋の中の空気の温度を調整する。また、エアーコンディショナ18は、部屋の中の空気の湿度を調整したり、部屋の中の空気の清浄(塵の除去)をしたりしてもよい。また、エアーコンディショナ18は、部屋の中に空気を送風したり、部屋の中の空気と部屋の外の空気と入れ替えたり(換気)してもよい。
【0013】
情報処理装置20は、データ処理機能、無線通信機能および表示機能を有するコンピュータである。例えば、情報処理装置20は、エアーコンディショナ18と別体であり、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話またはノート型パソコン等であってよい。また、情報処理装置20は、部屋に設けられた空調制御専用または汎用のコンピュータであってもよいし、エアーコンディショナ18を操作および制御するために設けられた回路であってもよい。また、情報処理装置20は、通信装置を介して接続可能なサーバ等であってもよい。情報処理装置20は、エアーコンディショナ18を使用または管理するユーザにより使用される。
【0014】
エアーコンディショナ18は、匂い検出部30を備える。匂い検出部30は、エアーコンディショナ18の内部の空気の匂いを、異なる2つの位置または異なる2つのタイミングで検出する。
【0015】
本実施形態においては、匂い検出部30は、第1センサ装置32および第2センサ装置34を含む。第1センサ装置32および第2センサ装置34のそれぞれは、少なくとも1つの検出素子を含む。第1センサ装置32および第2センサ装置34に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれは、エアーコンディショナ18の内部の空気に含まれる、匂いを感じさせる匂いの原因物質の量を検出する。第1センサ装置32および第2センサ装置34は、同一の構成であってよい。
【0016】
本実施形態においては、検出素子は、原因物質の量として、原因物質の質量を検出する。これに代えて、検出素子は、原因物質の量として、原因物質の体積または分子量を検出してもよい。
【0017】
第1センサ装置32および第2センサ装置34のそれぞれは、エアーコンディショナ18に対して着脱自在である。第1センサ装置32および第2センサ装置34は、エアーコンディショナ18を製造した後に(例えば工場出荷後に)、エアーコンディショナ18の内部に取り付けることができる。第1センサ装置32および第2センサ装置34の取り付け位置は、詳細を後述する。
【0018】
第1センサ装置32および第2センサ装置34は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を、無線通信により情報処理装置20に送信する。例えば、第1センサ装置32および第2センサ装置34は、IEEE802.11等の無線LAN(Local Area Network)またはIEEE802.15等のデジタル機器用の近距離無線通信等により情報処理装置20と通信可能である。また、第1センサ装置32および第2センサ装置34は、エアーコンディショナ18に接続されたネットワークまたは通信ケーブル等を介して、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を有線により情報処理装置20に送信してもよい。そして、情報処理装置20は、このような匂い検出部30からの2つの検出結果の差に基づき、エアーコンディショナ18の内部の部材を発生源とする匂いを判定する。
【0019】
図2は、第1センサ装置32および第2センサ装置34の外観の一例を示す図である。第1センサ装置32および第2センサ装置34は、片手で持ち運び可能な程度の大きさである。例えば、第1センサ装置32および第2センサ装置34は、1辺が数mmから数cm程度の大きさの筐体内に収納される。
図2に示す第1センサ装置32および第2センサ装置34の形状は一例であり、どのようであってもよい。
【0020】
図3は、第1センサ装置32および第2センサ装置34の構成を示す図である。
【0021】
第1センサ装置32および第2センサ装置34は、センサ内ファン38と、センサユニット40と、通信部48と、制御部50と、電池52とを有する。
【0022】
センサ内ファン38は、外部の空気を取り込んで、取り込んだ空気をセンサユニット40に供給する。例えば、センサ内ファン38は、取り込み口とセンサユニット40との間に配置され、取り込み口の外の空気をセンサユニット40に送り出す。
【0023】
センサユニット40は、上述の検出素子を少なくとも1つ含む。検出素子は、センサ内ファン38から送風された空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する。そして、センサユニット40は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を出力する。
【0024】
なお、センサユニット40が複数の検出素子を含む場合、複数の検出素子は、互いに異なる種類の素子である。
【0025】
例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、互いに異なる種類の匂いの原因物質の量を検出する。例えば、第1の検出素子は、物質Xの量を検出し、第2の検出素子は、物質Yの量を検出する。また、例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、同一の種類の匂いの原因物質の量を、異なる感度で検出してもよい。例えば、第1の検出素子は、物質Xの量を第1の感度で検出し、第2の検出素子は、物質Xの量を第1の感度より低い第2の感度で検出する。
【0026】
また、例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、互いに異なる種類の組み合わせの複数の匂いの原因物質の量を検出してもよい。例えば、第1の検出素子は、物質Xと物質Yとの合計量を検出し、第2の検出素子は、物質Xと物質Zとの合計量を検出する。また、例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、同一の種類の組み合わせの複数の匂いの原因物質の量を、異なる感度で検出してもよい。例えば、第1の検出素子は、物質Xと物質Yとの合計量を第1の感度で検出し、第2の検出素子は、物質Xと物質Yとの合計量を第1の感度より低い第2の感度で検出してもよい。
【0027】
通信部48は、センサユニット40から出力された信号を、無線通信により情報処理装置20に送信する。制御部50は、センサ内ファン38、センサユニット40および通信部48の動作を管理および制御する。例えば、制御部50は、センサ内ファン38の動作開始タイミングおよび動作終了タイミングを制御する。
【0028】
電池52は、センサ内ファン38、センサユニット40、通信部48および制御部50へ動作電力を供給する。なお、第1センサ装置32および第2センサ装置34は、電池52に代えて、外部から電力源を取得する電力取得部を有してもよい。電力取得部は、センサ内ファン38、通信部48および制御部50へ動作電力を供給する。
【0029】
図4は、センサユニット40の構成を示す図である。本実施形態において、センサユニット40は、空気に含まれる微小物質の質量を検出可能なQCMセンサである。なお、センサユニット40は、QCMセンサに限らず、半導体薄膜を用いたガスセンサ等の他の方式のセンサであってもよい。
【0030】
本実施形態において、センサユニット40は、支持部58と、少なくとも1つのガス検出素子60と、駆動検出回路62とを有する。支持部58は、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれが取り付けられる。
【0031】
ガス検出素子60は、検出素子の一例である。
図4の例では、センサユニット40は、異なる種類の6個のガス検出素子60-A~60-Fを有する。例えば、6個のガス検出素子60-A~60-Fのそれぞれは、異なる種類の匂いの原因物質を検出する。
【0032】
少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれは、圧電効果により振動可能にカットされた水晶振動子と、水晶振動子の両側の平面に設けられた2つの電極と、水晶振動子の平面の少なくとも一方に設けられた吸着膜とを含む。
【0033】
水晶振動子は、側面の一部が、振動可能に支持部58に保持される。2つの電極は、駆動検出回路62から交流電圧が印加される。吸着膜は、周囲の空気に含まれる特定の原因物質を吸着する。少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれは、互いに異なる物質を吸着する吸着膜を含む。具体的には、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれは、第1センサ装置32および第2センサ装置34の検出対象となる原因物質を吸着する吸着膜を含む。
【0034】
このようなガス検出素子60は、2つの電極に共振周波数の交流電圧が印加されると、圧電効果により水晶振動子が振動する。水晶振動子の基本共振周波数は、質量および粘弾性により定まる。従って、吸着膜に原因物質が吸着されて質量が変化した場合、ガス検出素子60は、吸着した質量の変化に応じて、基本共振周波数が変化する。
【0035】
駆動検出回路62は、センサ内ファン38の送風時において、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれに交流電圧を印加して、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれの基本共振周波数の変化を検出する。これにより、駆動検出回路62は、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれ毎に、センサ内ファン38による送風により与えられた空気に含まれる匂いの原因物質の質量を検出することができる。駆動検出回路62は、検出値を通信部48に与える。
【0036】
【0037】
情報処理装置20は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を、第1センサ装置32および第2センサ装置34のそれぞれから取得する。例えば、
図5の例においては、情報処理装置20は、ガス検出素子60-A、ガス検出素子60-B、ガス検出素子60-C、ガス検出素子60-D、ガス検出素子60-Eおよびガス検出素子60-Fのそれぞれの検出値を表す信号を取得する。
【0038】
また、情報処理装置20は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの、所定の種類の匂いの空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す基準パターンを記憶している。例えば、
図5の例においては、情報処理装置20は、カビ臭、バクテリア臭およびタバコ臭のそれぞれが検出された場合におけるガス検出素子60-A~60-Fのそれぞれの検出値を表す基準パターンを記憶している。
【0039】
情報処理装置20は、第1センサ装置32および第2センサ装置34から取得した信号に含まれる、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す検出パターンと、予め記憶している所定の種類の匂いが発生した場合の少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す基準パターンとをマッチングする。そして、情報処理装置20は、第1センサ装置32および第2センサ装置34から取得した検出パターンが、基準パターンとマッチングする場合、第1センサ装置32および第2センサ装置34に与えられた空気の匂いが、所定の種類の匂いであると判定する。情報処理装置20は、複数の種類の匂いについて基準パターンを記憶しておき、1つの検出パターンが何れの匂いの基準パターンにマッチングするかを判定してもよい。例えば、
図5の例においては、情報処理装置20は、第1センサ装置32および第2センサ装置34に与えられた空気の匂いが、バクテリア臭であると判定している。
【0040】
さらに、情報処理装置20は、それぞれの種類の匂いについて、匂いの強さもマッチングにより判定してもよい。例えば、情報処理装置20は、匂いの種類毎且つ匂いの強さ毎に基準パターンを記憶しておき、第1センサ装置32および第2センサ装置34から取得した検出パターンと、予め記憶している匂いの種類毎且つ匂いの強さ毎の基準パターンとをマッチングしてもよい。
【0041】
また、情報処理装置20は、所定の種類の匂いが発生しているとユーザが感じた時に得られた検出パターンを教師データとして、予め記憶している基準パターンを、学習処理により更新してもよい。情報処理装置20は、複数の匂いの種類毎および匂いの強さ毎の基準パターンをサーバ等から定期的に取得して、記憶している基準パターンを更新してもよい。
【0042】
情報処理装置20は、このようなパターンマッチングに代えて、他の方法で匂いの種類および強さを判定してもよい。例えば、情報処理装置20は、ニューラルネットワーク等の技術を用いて匂いの種類および匂いの強さを判定してもよい。
【0043】
なお、
図5の例では、第1センサ装置32および第2センサ装置34が、6種類のガス検出素子60-A~60-Fの検出値を出力する例を示している。しかし、第1センサ装置32および第2センサ装置34は、6種類よりも少ない数、または、6種類よりも多い数の検出素子の検出値を出力してもよい。また、
図5の例では、カビ臭、バクテリア臭およびタバコ臭を判定する例を示している。しかし、情報処理装置20は、これら以外の匂いを判定してもよい。また、本実施形態の第1センサ装置32および第2センサ装置34は、1個の検出素子の検出値を出力してもよい。
【0044】
図6は、エアーコンディショナ18の構成を示す図である。エアーコンディショナ18は、熱交換器64と、ファン66と、通風経路68と、フィルタ70と、第1センサ装置32と、第2センサ装置34と、圧力センサ装置72とを有する。
【0045】
熱交換器64は、例えば、液冷媒を蒸発させ、空気を冷却または除湿するエバポレータである。熱交換器64は、エバポレータに限らず、エアーコンディショナ18内での熱交換に用いられる他の機器であってもよい。
【0046】
ファン66は、空気を送風して、熱交換器64を通過させる。ファン66は、熱交換器64の送風方向の前段側にあってもよいし、送風方向の後段側にあってもよいし、送風方向の前段側および後段側の両方にあってもよい。
【0047】
通風経路68は、ファン66から送風され、熱交換器64を通過した空気を外部に排出する。通風経路68は、例えばパイプ状であってもよいし、例えば開口部分が広い孔であってもよい。
【0048】
フィルタ70は、通風経路68における空気を通過させる孔を塞ぐように設けられる。フィルタ70は、通風経路68を通過する空気に含まれる塵(ほこりおよび微小物質等)を除去する。フィルタ70は、ユーザにより取り替え可能である。
【0049】
第1センサ装置32は、通風経路68におけるフィルタ70が設けられた位置より送風方向の前段に配置される。第1センサ装置32は、配置された位置において、少なくとも1つの検出素子のそれぞれを用いて、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する。すなわち、第1センサ装置32は、フィルタ70を通過する前の空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する。第1センサ装置32は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を情報処理装置20に無線通信により送信する。
【0050】
第2センサ装置34は、通風経路68におけるフィルタ70が設けられた位置より送風方向の後段に配置される。第2センサ装置34は、配置された位置において、少なくとも1つの検出素子のそれぞれを用いて、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する。すなわち、第2センサ装置34は、フィルタ70を通過した後の空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する。第2センサ装置34は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を情報処理装置20に無線通信により送信する。
【0051】
このような第1センサ装置32および第2センサ装置34は、エアーコンディショナ18の内部の空気の匂いを、異なる2つの位置または異なる2つのタイミングで検出する匂い検出部30として機能する。
【0052】
圧力センサ装置72は、通風経路68におけるフィルタ70が設けられた位置より送風方向の後段に配置される。圧力センサ装置72は、配置された位置において、空気の圧力を検出する。すなわち、圧力センサ装置72は、フィルタ70を通過した後の空気の圧力を検出する。圧力センサ装置72は、検出した圧力を表す信号を情報処理装置20に無線通信により送信する。
【0053】
図7は、実施形態に係る情報処理装置20の機能構成を示す図である。情報処理装置20は、所定のアプリケーションプログラムを実行することにより、
図7に示す各ブロックに示す機能を実現する。
【0054】
このような機能を実現した情報処理装置20は、第1取得部74と、第2取得部76と、第3取得部78と、第4取得部80と、第5取得部82と、第1差分算出部84と、第2差分算出部86と、第3差分算出部88と、パターン記憶部90と、判定部92と、出力部94とを有する。
【0055】
第1取得部74は、ファン66の停止時における第1センサ装置32に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を取得する。第2取得部76は、ファン66の動作時における第1センサ装置32に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を取得する。
【0056】
第3取得部78は、ファン66の停止時における第2センサ装置34に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を取得する。第4取得部80は、ファン66の動作時における第2センサ装置34に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を取得する。なお、第1取得部74、第2取得部76、第3取得部78および第4取得部80は、全てが共通のハードウェアにより実現されてもよいし、何れか2つまたは3つが共通のハードウェアにより実現されてもよいし、それぞれが別々のハードウェアにより実現されてもよい。第5取得部82は、ファン66の動作時において、圧力センサ装置72により検出された空気の圧力を表す信号を取得する。
【0057】
第1差分算出部84は、第1取得部74により取得された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第1パターンと、第2取得部76により取得された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第2パターンとの差を表す第1差分パターンを算出する。すなわち、第1差分算出部84は、ファン66の停止時におけるフィルタ70の前段で検出された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第1パターンと、ファン66の動作時におけるフィルタ70の前段で検出された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第2パターンとの差を表す第1差分パターンを算出する。
【0058】
例えば、第1差分算出部84は、第1パターンに含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す値から、第2パターンに含まれる対応する検出素子の検出値を表す値を減算する。このように算出された第1差分パターンは、ファン66を動作させることにより増加した、フィルタ70の前段での少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。従って、第1差分パターンは、フィルタ70よりも前段に設けられた部材(例えば、熱交換器64)を発生源とする少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。
【0059】
第2差分算出部86は、第3取得部78により取得された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第3パターンと、第4取得部80により取得された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第4パターンとの差を表す第2差分パターンを算出する。すなわち、第2差分算出部86は、ファン66の停止時におけるフィルタ70の後段で検出された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第3パターンと、ファン66の動作時におけるフィルタ70の後段で検出された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第4パターンとの差を表す第2差分パターンを算出する。
【0060】
例えば、第2差分算出部86は、第3パターンに含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す値から、第4パターンに含まれる対応する検出素子の検出値を表す値を減算する。このように算出された第2差分パターンは、ファン66を動作させることにより増加した、フィルタ70の後段での少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。従って、第2差分パターンは、フィルタ70およびフィルタ70よりも前段に設けられた部材の何れかを発生源とする少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。
【0061】
第3差分算出部88は、第2取得部76により取得された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第2パターンと、第4取得部80により取得された少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第4パターンとの差を表す第3差分パターンを算出する。すなわち、第3差分算出部88は、ファン66の動作時における第1センサ装置32に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第2パターンと、ファン66の動作時における第2センサ装置34に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第4パターンとの差を表す第3差分パターンを算出する。
【0062】
例えば、第3差分算出部88は、第2パターンに含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す値から、第4パターンに含まれる対応する検出素子の検出値を表す値を減算する。このように算出された第3差分パターンは、フィルタ70を通過することにより増加した少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。従って、第3差分パターンは、フィルタ70を発生源とする少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。
【0063】
パターン記憶部90は、複数の種類の匂いおよび強さ毎に、1以上の基準パターンを紐付けて記憶する。基準パターンは、対応する匂いの空気が与えられた場合における少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。より具体的には、基準パターンは、対応する種類の匂いおよび対応する匂いの強さが発生した場合に第1センサ装置32および第2センサ装置34に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれから出力される検出値を表す。例えば、パターン記憶部90は、所定の強さのカビ臭、所定の強さのバクテリア臭および所定の強さのタバコ臭のそれぞれが検出された場合における、第1センサ装置32および第2センサ装置34により取得される少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す基準パターンを記憶する。なお、パターン記憶部90は、このような種類の匂いに限らず、他の匂いのパターンを記憶してもよい。
【0064】
判定部92は、第1差分パターンと、パターン記憶部90に記憶されている1または複数の基準パターンとの間でマッチングを行う。そして、判定部92は、第1差分パターンが、何れかの基準パターンとマッチングする場合、フィルタ70よりも前段に設けられた部材(例えば、熱交換器64)を発生源とする匂いが、何れかの種類の匂いであると判定する。より具体的には、判定部92は、1または複数の基準パターンのうち、差分パターンと一致または所定の範囲内となる何れかの基準パターンを選択する。そして、判定部92は、選択した基準パターンに対応する種類の匂いであると判定する。
【0065】
なお、パターンがマッチングする場合とは、2つのパターンが完全に一致した場合のみならず、所定の誤差以下で一致する場合、または、複数の基準パターンのうち最も近い基準パターンを選択する場合等を含む。さらに、判定部92は、それぞれの種類の匂いについて、匂いの強さを判定してもよい。これにより、判定部92は、フィルタ70よりも前段に設けられた部材において発生している匂いの種類および匂いの強さを判定することができる。
【0066】
さらに、判定部92は、第2差分パターンと、パターン記憶部90に記憶されている1または複数の基準パターンとの間でマッチングを行う。そして、判定部92は、第2差分パターンが、何れかの基準パターンとマッチングする場合、フィルタ70およびフィルタ70よりも前段に設けられた部材の何れかを発生源とする匂いが、所定の種類の匂いであると判定する。さらに、判定部92は、それぞれの種類の匂いについて、匂いの強さを判定してもよい。これにより、判定部92は、フィルタ70およびフィルタ70よりも前段に設けられた部材の何れかにおいて発生している匂いの種類および匂いの強さを判定することができる。
【0067】
また、さらに、判定部92は、第3差分パターンと、パターン記憶部90に記憶されている1または複数の基準パターンとの間でマッチングを行う。そして、判定部92は、第3差分パターンが、何れかの基準パターンとマッチングする場合、フィルタ70を発生源とする匂いが、所定の種類の匂いであると判定する。さらに、判定部92は、それぞれの種類の匂いについて、匂いの強さを判定してもよい。これにより、判定部92は、フィルタ70において発生している匂いの種類および匂いの強さを判定することができる。
【0068】
また、判定部92は、第5取得部82により取得された圧力に基づき、フィルタ70の目詰まりの状態を判定してもよい。例えば、判定部92は、第5取得部82により取得された圧力が所定の閾値よりも低い場合、すなわち、ファン66の動作時におけるフィルタ70の後段の空気の圧力が所定の閾値より低い場合、フィルタ70が塵により目詰まりしていると判定する。
【0069】
なお、判定部92は、このようなパターンマッチングに限らず、他の方法で匂いの種類および匂いの強さを判定してもよい。例えば、判定部92は、ニューラルネットワーク等を用いて差分パターンにマッチングする匂いの種類および匂いの強さを判定してもよい。
【0070】
出力部94は、判定部92により判定された匂いの発生源を示す情報を出力する。さらに、出力部94は、匂いの種類および匂いの強さを出力してもよい。例えば、出力部94は、表示部に、判定された匂いの発生源、匂いの種類および匂いの強さを表示させる。なお、出力部94は、匂いの発生源、匂いの種類および匂いの強さを示す情報を、音声により出力させてもよいし、ネットワークを介して他の装置に送信してもよい。
【0071】
また、出力部94は、匂いの発生源の匂いの種類および匂いの強さに基づき、匂いの発生源の汚染度を推定して出力してもよい。例えば、出力部94は、フィルタ70より前段の部材(例えば、熱交換器64)およびフィルタ70のそれぞれについて、匂いの強さに応じた汚染度を表示する。また、さらに出力部94は、フィルタ70が目詰まりしているか否かを示す情報も出力してもよい。
【0072】
図8は、情報処理装置20によるエアーコンディショナ18の匂いの検出処理の流れを示すフローチャートである。情報処理装置20は、例えば、エアーコンディショナ18の匂いを検出する指示を受け付けた場合、または、定期的に(1日毎または1週間毎等)、
図8のステップS11からステップS22の処理を実行する。
【0073】
まず、ステップS11において、情報処理装置20は、ファン66を停止させる指示をエアーコンディショナ18に送信する。続いて、ステップS12において、情報処理装置20は、第1センサ装置32に指示を与えて、ファン66の停止時における第1センサ装置32に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第1パターンを取得する。続いて、ステップS13において、情報処理装置20は、第2センサ装置34に指示を与えて、ファン66の停止時における第2センサ装置34に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第3パターンを取得する。
【0074】
続いて、ステップS14において、情報処理装置20は、ファン66を動作させる指示をエアーコンディショナ18に送信する。続いて、ステップS15において、情報処理装置20は、第1センサ装置32に指示を与えて、ファン66の動作時における第1センサ装置32に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第2パターンを取得する。続いて、ステップS16において、情報処理装置20は、第2センサ装置34に指示を与えて、ファン66の動作時における第2センサ装置34に含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第4パターンを取得する。
【0075】
続いて、ステップS17において、情報処理装置20は、圧力センサ装置72に指示を与えて、ファン66の動作時において圧力センサ装置72により検出された、フィルタ70の後段の空気の圧力を取得する。
【0076】
続いて、ステップS18において、情報処理装置20は、第1パターンと第2パターンとの差を表す第1差分パターンを算出する。すなわち、情報処理装置20は、ファン66を動作させることにより増加した、フィルタ70の前段での少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第1差分パターンを算出する。
【0077】
続いて、ステップS19において、情報処理装置20は、第3パターンと第4パターンとの差を表す第2差分パターンを算出する。すなわち、情報処理装置20は、ファン66を動作させることにより増加した、フィルタ70の後段での少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第2差分パターンを算出する。
【0078】
続いて、ステップS20において、情報処理装置20は、第2パターンと第4パターンとの差を表す第3差分パターンを算出する。すなわち、情報処理装置20は、空気がフィルタ70を通過することにより増加した少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す第3差分パターンを算出する。
【0079】
続いて、ステップS21において、情報処理装置20は、第1差分パターン、第2差分パターンおよび第3差分パターンのそれぞれを、基準パターンとマッチングすることにより、匂いの発生源、匂いの種類および匂いの強さを判定する。例えば、情報処理装置20は、第1差分パターンに基づき、フィルタ70よりも前段に設けられた部材(例えば、熱交換器64)において発生している匂いの種類および匂いの強さを判定する。また、情報処理装置20は、第2差分パターンに基づき、フィルタ70およびフィルタ70よりも前段に設けられた部材(例えば、熱交換器64)の何れかにおいて発生している匂いの種類および匂いの強さを判定する。また、情報処理装置20は、第3差分パターンに基づき、フィルタ70において発生している匂いの種類および匂いの強さを判定する。
【0080】
続いて、ステップS22において、情報処理装置20は、ファン66の動作時において圧力センサ装置72により検出されたフィルタ70の後段の空気の圧力に基づき、フィルタ70の目詰まりの状態を判定する。例えば、情報処理装置20は、検出された圧力が所定の閾値より低い場合、フィルタ70が目詰まりしていると判定する。
【0081】
続いて、ステップS23において、情報処理装置20は、判定された匂いの発生源、匂いの種類および匂いの強さを示す情報を表示する。例えば、情報処理装置20は、匂いの発生源毎に、匂いの強さに応じて汚染度を判定し、判定した汚染度を表示してもよい。さらに、情報処理装置20は、フィルタ70の目詰まりの状態の判定結果を表示してもよい。そして、情報処理装置20は、ステップS23の処理を終えると、本フローを終了する。
【0082】
図9は、情報処理装置20の表示例を示す図である。情報処理装置20は、例えば
図9に示すように、匂いの発生源毎に判定した汚染度を表示する。例えば、情報処理装置20は、エバポレータ、フィルタ70および全体(エバポレータおよびフィルタ70を含む全体)のそれぞれについて、匂いの強さに応じて汚染度を判定し、判定した汚染度を表示する。また、さらに、情報処理装置20は、フィルタ70の目詰まりの状態も表示する。
【0083】
以上のように実施形態に係る空調システム10によれば、エアーコンディショナ18の内部の匂いの発生源を簡易に特定することができる。例えば、空調システム10によれば、エアーコンディショナ18のフィルタ70よりも前段の部材を発生源とする匂いおよびフィルタ70を発生源とする匂いを簡易に特定することができる。
【0084】
(変形例)
つぎに、変形例に係る空調システム10について説明する。変形例に係る空調システム10は、
図1から
図9を参照して説明した実施形態に係る空調システム10と略同一の機能および構成を有するので、略同一の機能および構成を有するブロックに同一の符号を付けて、相違点を除き詳細な説明を省略する。
【0085】
図10は、変形例に係る情報処理装置20の機能構成を示す図である。変形例に係る情報処理装置20は、ログ記憶部102と、推定部104と、環境指定部106と、学習データ取得部108とをさらに有する。
【0086】
ログ記憶部102は、第1差分算出部84により算出された第1差分パターンを、第1差分パターンの基となる第1パターンおよび第2パターンの取得時刻に対応付けて記憶する。また、ログ記憶部102は、第2差分算出部86により算出された第2差分パターンを、第2差分パターンの基となる第3パターンおよび第4パターンの取得時刻に対応付けて記憶する。また、ログ記憶部102は、第3差分算出部88により算出された第3差分パターンを、第3差分パターンの基となる第2パターンおよび第4パターンの取得時刻に対応付けて記憶する。なお、ログ記憶部102は、第1差分パターン、第2差分パターンおよび第3差分パターンに代えて、第1パターン、第2パターン、第3パターンおよび第4パターンを記憶してもよい。
【0087】
推定部104は、ログ記憶部102に記憶されている第1差分パターンおよび対応する取得時刻に基づき、取得時刻より後の第1時刻において算出されると予測される第1差分パターンを推定する。例えば、推定部104は、第1時刻より後の複数の取得時刻に対応する複数の第1差分パターンに基づき、第1時刻における第1差分パターンを推定する。例えば、推定部104は、第1差分パターンに含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値について、時間変化を表す関数を同定し、同定した関数に第1時刻を代入する。これにより、推定部104は、第1時刻における第1差分パターンを推定することができる。
【0088】
また、推定部104は、第2差分パターンおよび第3差分パターンについても、第1差分パターンと同様に、第1時刻において算出されると予測される第1差分パターンを推定する。
【0089】
さらに、推定部104は、推定した第1時刻における第1差分パターン、第2差分パターンおよび第3差分パターンと、パターン記憶部90に記憶された基準パターンとのマッチングを行い、第1時刻において発生する匂いの発生源、匂い種類および匂いの強さを推定する。そして、出力部94は、第1時刻における匂いの発生源、匂いの種類および匂いの強さを出力する。
【0090】
また、さらに、推定部104は、ログ記憶部102に記憶されている複数の第1差分パターン、複数の第2差分パターンおよび複数の第3差分パターン、並びに、これらの取得時刻に基づき、発生源毎に、所定の種類の匂いが閾値以上の強さとなる時刻を推定してもよい。
【0091】
例えば、推定部104は、第1差分パターン、第2差分パターンおよび第3差分パターンのそれぞれについて、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値の時間変化を表す関数を同定する。そして、推定部104は、推定される第1差分パターン、第2差分パターンおよび第3差分パターンが、パターン記憶部90に記憶されている所定の種類の匂いに対応する基準パターンにマッチングする時刻を算出する。そして、出力部94は、発生源毎に、所定の種類の匂いが所定の強さとなる時刻を出力する。
【0092】
このように変形例に係る空調システム10は、将来の時刻における匂いの発生を推定することができる。これにより、空調システム10によれば、ユーザに対して、エアーコンディショナ18の内部の部材(例えば、熱交換器64およびフィルタ70等)のクリーニング時期および交換時期を提供することができる。
【0093】
環境指定部106は、ユーザから、エアーコンディショナ18が設けられた環境または装置等を指定する情報を受け付ける。例えば、環境指定部106は、エアーコンディショナ18の汚染原因となる情報を受け付ける。例えば、環境指定部106は、油が多い環境、または、所定の種類の匂いを発する塵が多い環境等を指定する情報を受け付ける。
【0094】
学習データ取得部108は、例えば、サーバまたは情報処理装置20が記憶しているデータベース等から、指定された環境に対応する基準パターンを取得する。例えば、取得する基準パターンは、指定された環境において使用した場合に、熱交換器64およびフィルタ70に発生する匂いを学習したデータである。そして、学習データ取得部108は、取得した基準パターンをパターン記憶部90に記憶させる。
【0095】
このように変形例に係る空調システム10は、エアーコンディショナ18の使用環境に応じた適切な基準パターンを用いて、エアーコンディショナ18の内部の匂いを判定する。これにより、空調システム10によれば、エアーコンディショナ18の内部の匂いの発生源等を精度良く判定することができる。
【0096】
(情報処理装置20のハードウェア構成)
図11は、情報処理装置20のハードウェア構成を示す図である。情報処理装置20は、一例として、一般のコンピュータと同様のハードウェア構成により実現される。情報処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)201と、操作装置202と、表示装置203と、マイクロフォン204と、ROM(Read Only Memory)205と、RAM(Random Access Memory)206と、記憶装置207と、通信装置208と、バス209とを備える。各部は、バス209により接続される。
【0097】
CPU201は、RAM206の所定領域を作業領域としてROM205または記憶装置207に予め記憶された各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、情報処理装置20を構成する各部の動作を統括的に制御する。また、CPU201は、ROM205または記憶装置207に予め記憶されたプログラムとの協働により、操作装置202、表示装置203、マイクロフォン204および通信装置208等を動作させる。
【0098】
操作装置202は、タッチパネル、マウスやキーボード等の入力デバイスであって、ユーザから操作入力された情報を指示信号として受け付け、その指示信号をCPU201に出力する。
【0099】
表示装置203は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部である。表示装置203は、CPU201からの表示信号に基づいて、各種情報を表示する。例えば、表示装置203は、匂いの種類、匂いの強さおよび推定時期等を表示する。
【0100】
マイクロフォン204は、音声信号を入力するデバイスである。予め記録された音声信号または通信装置208から入力される音声信号を認識する場合には、情報処理装置20は、マイクロフォン204を備えなくてもよい。
【0101】
ROM205は、情報処理装置20の制御に用いられるプログラムおよび各種設定情報等を書き換え不可能に記憶する。RAM206は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体である。RAM206は、CPU201の作業領域として機能する。
【0102】
記憶装置207は、フラッシュメモリ等の半導体による記憶媒体、磁気的または光学的に記録可能な記憶媒体等の書き換え可能な記録装置である。記憶装置207は、情報処理装置20の制御に用いられるプログラムを記憶する。また、記憶装置207は、パターン記憶部90として機能する。
【0103】
通信装置208は、第1センサ装置32および第2センサ装置34とデータの送受信をする。また、通信装置208は、ネットワークを介してサーバ等とデータの送受信をしてもよい。
【0104】
本実施形態の情報処理装置20で実行されるプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供される。また、本実施形態の情報処理装置20で実行されるプログラムは、持ち運び可能な記憶媒体等に予め組み込んで提供されてもよい。
【0105】
本実施形態の情報処理装置20で実行されるプログラムは、第1取得モジュールと、第2取得モジュールと、第3取得モジュールと、第4取得モジュールと、第5取得モジュールと、第1差分算出モジュールと、第2差分算出モジュールと、第3差分算出モジュールと、判定モジュールと、出力モジュールとを含むモジュール構成となっている。CPU201(プロセッサ)は、記憶媒体等からこのようなプログラムを読み出して、上記各モジュールをRAM206(主記憶装置)にロードする。そして、CPU201(プロセッサ)は、このようなプログラムを実行することにより、第1取得部74、第2取得部76、第3取得部78、第4取得部80、第5取得部82、第1差分算出部84、第2差分算出部86、第3差分算出部88、判定部92および出力部94として機能する。なお、第1取得部74、第2取得部76、第3取得部78、第4取得部80、第5取得部82、第1差分算出部84、第2差分算出部86、第3差分算出部88、判定部92および出力部94の一部または全部がハードウェアにより構成されていてもよい。
【0106】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0107】
10 空調システム
18 エアーコンディショナ
20 情報処理装置
30 匂い検出部
32 第1センサ装置
34 第2センサ装置
38 センサ内ファン
40 センサユニット
48 通信部
50 制御部
52 電池
58 支持部
60 ガス検出素子
62 駆動検出回路
64 熱交換器
66 ファン
68 通風経路
70 フィルタ
72 圧力センサ装置
74 第1取得部
76 第2取得部
78 第3取得部
80 第4取得部
82 第5取得部
84 第1差分算出部
86 第2差分算出部
88 第3差分算出部
90 パターン記憶部
92 判定部
94 出力部
102 ログ記憶部
104 推定部
106 環境指定部
108 学習データ取得部