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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】コーヒー組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A23F5/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020123603
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020225
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】397018187
【氏名又は名称】東京アライドコーヒーロースターズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592025616
【氏名又は名称】株式会社ニッセー
(74)【代理人】
【識別番号】110002778
【氏名又は名称】弁理士法人IPシーガル
(72)【発明者】
【氏名】中井 真理
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久喜
(72)【発明者】
【氏名】川村 憲久
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】川村 一範
(72)【発明者】
【氏名】石川 元昭
(72)【発明者】
【氏名】竹田 翔
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-247839(JP,A)
【文献】特開2011-225455(JP,A)
【文献】特開2014-036632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0113077(US,A1)
【文献】特開2013-252112(JP,A)
【文献】生豆ブレンドの缶コーヒーを飲んだ,MASログ, 2011年,p.1-2,mas-log.jugem.jp/?eid=637, 検索日:2022年2月4日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物からコーヒー抽出物を調製する工程(イ)と、
コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物からコーヒー抽出物を調製する工程(ロ)と、
前記工程(イ)で得られたコーヒー抽出物と前記工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物を、質量比で、工程(イ)で得られたコーヒー抽出物:工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物=10:90~75:25となるように混合する工程(ハ)と、
前記工程(ハ)で得られたコーヒー混合抽出物に対して加熱処理を行う工程(ニ)
を含み、
前記加熱処理において、加熱温度は111~130℃であり、加熱時間は下記式(1)を満たし、殺菌強度F0値は8.0以下であること
を特徴とするコーヒー組成物の製造方法。
【数1】
【請求項2】
コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物と、コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物を、質量比で、コーヒー生豆の粉砕物:焙煎コーヒー豆の粉砕物=10:90~75:25となるように混合する工程(ホ)と、
前記工程(ホ)で得られた混合物からコーヒー抽出物を調製する工程(ヘ)と、
前記工程(ヘ)で得られたコーヒー抽出物に対して加熱処理を行う工程(ト)
を含み、
前記加熱処理において、加熱温度は111~130℃であり、加熱時間は下記式(1)を満たし、殺菌強度F0値は8.0以下であること
を特徴とするコーヒー組成物の製造方法。
【数2】
【請求項3】
前記加熱処理は、
コーヒー抽出物又はコーヒー混合抽出物を容器に充填し、密封された状態で行われること
を特徴とする請求項1又は2に記載のコーヒー組成物の製造方法。
【請求項4】
前記コーヒー生豆は、
アラビカ種のコーヒー生豆を含むこと
を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコーヒー組成物の製造方法。
【請求項5】
前記コーヒー生豆は、
アラビカ種のコーヒー生豆のみで構成されていること
を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコーヒー組成物の製造方法。
【請求項6】
前記工程(イ)は、
コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物から水を用いた抽出処理によってコーヒー抽出物を調製する工程であり、
前記工程(ロ)は、
コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物から水を用いた抽出処理によってコーヒー抽出物を調製する工程(ロ)であり、
前記工程(イ)で得られたコーヒー抽出物と前記工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物の混合比率は、
質量比で、工程(イ)で得られたコーヒー抽出物:工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物=25:75~70:30であること
を特徴とする請求項1に記載のコーヒー組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(ヘ)は、
前記工程(ホ)で得られた混合物から水を用いた抽出処理によってコーヒー抽出物を調製する工程であり、
前記コーヒー生豆の粉砕物と前記焙煎コーヒー豆の粉砕物の混合比率は、
質量比で、コーヒー生豆の粉砕物:焙煎コーヒー豆の粉砕物=25:75~70:30であること
を特徴とする請求項2に記載のコーヒー組成物の製造方法。
【請求項8】
前記加熱温度は、
119~130℃であること
を特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のコーヒー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーヒー組成物の製造方法に関するものである。
より詳しくは、良好な芳香を有するコーヒー組成物を、簡単に製造することを可能にするコーヒー組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー生豆を焙煎して所定の粉末に挽いたものを、種々の方法でドリップして抽出して得られるコーヒー抽出液が、コーヒー飲料として飲用に供されている。
【0003】
このようなコーヒー飲料、特に容器詰めコーヒー飲料において、香気成分は、その製造工程や、流通過程などにおいて、香気成分が劣化してしまう、という問題があった。
そこで、コーヒー飲料に風味を付与する手段として、香料を添加することが知られている。
しかしながら、香料を添加したコーヒー飲料は、香りの質において不十分なもので、コーヒー本来の風味を有するものとは言い難いものであった。
【0004】
そこで、殺菌工程における香気成分の損失が抑制された、淹れ立てのコーヒーに近い香りを有するコーヒー飲料を製造できるコーヒー飲料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このコーヒー飲料の製造方法は、
コーヒー抽出液から香気成分を回収する工程と、
香気成分を回収した後の抽出液を加熱殺菌する工程と、
回収した香気成分を膜濾過により除菌する工程と、
加熱殺菌後の抽出液と除菌後の香気成分を無菌条件下で混合する工程と
からなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-20441号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に開示されているコーヒー飲料の製造方法においては、コーヒー抽出液から香気成分を回収する工程や、回収した香気成分を膜濾過により除菌する工程が必要とされる。
したがって、コーヒー飲料の製造の工程が煩雑であるため、良好な風味を有するコーヒー抽出液を簡単に製造することにおいて、さらなる改善が求められる。
【0008】
この発明はかかる現状に鑑み、適当な濃度と良好な芳香を有するコーヒー組成物、特に容器詰めのコーヒー組成物を、簡単に製造することを可能にするコーヒー組成物の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物からコーヒー抽出物を調製する工程(イ)と、
コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物からコーヒー抽出物を調製する工程(ロ)と、
前記工程(イ)で得られたコーヒー抽出物と前記工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物を、質量比で、工程(イ)で得られたコーヒー抽出物:工程(ロ)で得られたコーヒー抽 出物=10:90~75:25となるように混合する工程(ハ)と、
前記工程(ハ)で得られたコーヒー混合抽出物に対して加熱処理を行う工程(ニ)
を含み、
前記加熱処理において、加熱温度は111~130℃であり、加熱時間は下記式(1)を満たし、殺菌強度F0値は8.0以下であること
を特徴とするコーヒー組成物の製造方法である。
【0010】
【数1】
【0011】
この発明の請求項2に記載の発明は、
コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物と、コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物を、質量比で、コーヒー生豆の粉砕物:焙煎コーヒー豆の粉砕物=10:90~75:25となるように混合する工程(ホ)と、
前記工程(ホ)で得られた混合物からコーヒー抽出物を調製する工程(ヘ)と、
前記工程(ヘ)で得られたコーヒー抽出物に対して加熱処理を行う工程(ト)
を含み、
前記加熱処理において、加熱温度は111~130℃であり、加熱時間は下記式(1)を満たし、殺菌強度F0値は8.0以下であること
を特徴とするコーヒー組成物の製造方法である
【0012】
【数2】
【0013】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のコーヒー組成物の製造方法において、
前記加熱処理は、
コーヒー抽出物又はコーヒー混合抽出物を容器に充填し、密封された状態で行われること
を特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1~3のいずれかに記載のコーヒー組成物の製造方法において、
前記コーヒー生豆は、
アラビカ種のコーヒー生豆を含むこと
を特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1~3のいずれかに記載のコーヒー組成物の製造方法において、
前記コーヒー生豆は、
アラビカ種のコーヒー生豆のみで構成されていること
を特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1に記載のコーヒー組成物の製造方法において、
前記工程(イ)は、
コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物から水を用いた抽出処理によってコーヒー抽出物を調製する工程であり、
前記工程(ロ)は、
コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物から水を用いた抽出処理によってコーヒー抽出物を調製する工程(ロ)であり、
前記工程(イ)で得られたコーヒー抽出物と前記工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物の混合比率は、
質量比で、工程(イ)で得られたコーヒー抽出物:工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物=25:75~70:30であること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項2に記載のコーヒー組成物の製造方法において、
前記工程(ヘ)は、
前記工程(ホ)で得られた混合物から水を用いた抽出処理によってコーヒー抽出物を調製する工程であり、
前記コーヒー生豆の粉砕物と前記焙煎コーヒー豆の粉砕物の混合比率は、
質量比で、コーヒー生豆の粉砕物:焙煎コーヒー豆の粉砕物=25:75~70:30であること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1~7のいずれかに記載のコーヒー組成物の製造方法において、
前記加熱温度は、
119~130℃であること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明のコーヒー組成物の製造方法は、コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物から、好ましくは水を用いた抽出処理によって、コーヒー抽出物(特にコーヒー抽出液)を調製する工程(イ)と、コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物から、好ましくは水を用いた抽出処理によって、コーヒー抽出物(特にコーヒー抽出液)を調製する工程(ロ)と、前記工程(イ)で得られたコーヒー抽出物と前記工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物を、質量比で、工程(イ)で得られたコーヒー抽出物:工程(ロ)で得られたコーヒー抽出物=10:90~75:25、好ましくは25:75~70:30となるように混合する工程(ハ)と、前記工程(ハ)で得られたコーヒー混合抽出物に対して加熱処理を行う工程(ニ)を含むもので、前記加熱処理において、加熱温度は111~130℃、好ましくは119~130℃であり、加熱時間は下記式(1)を満たすものである。
したがって、このコーヒー組成物の製造方法によれば、香料を使用しなくても、良好な芳香を有する適当な濃度のコーヒー組成物を、簡単に製造することが可能となる。
なお、この発明において、前記加熱処理における殺菌強度F0値は、8.0以下である。
【0020】
【数3】
【0021】
なお、コーヒー組成物の製造方法を、コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物と、コーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物を、質量比で、コーヒー生豆の粉砕物:焙煎コーヒー豆の粉砕物=10:90~75:25、好ましくは25:75~70:30となるように混合する工程(ホ)と、前記工程(ホ)で得られた混合物から、好ましくは水を用いた抽出処理によって、コーヒー抽出物(特にコーヒー抽出液)を調製する工程(ヘ)と、前記工程(ヘ)で得られたコーヒー抽出物に対して加熱処理を行う工程(ト)を含むように構成し、前記加熱処理において、加熱温度が111~130℃、好ましくは119~130℃であり、加熱時間が上記式(1)を満たすように構成した場合にも、香料を使用しなくても、良好な芳香を有する適当な濃度のコーヒー組成物を、簡単に製造することが可能である。
なお、この発明において、前記加熱処理における殺菌強度F0値は、8.0以下である。
【0022】
さらに、前記コーヒー組成物の製造方法においては、前記加熱処理を、コーヒー抽出物又はコーヒー混合抽出物が容器に充填され、密封された状態で行うことができる。
このような構成によって、加熱処理中の芳香の飛散を抑制することができるので、良好な芳香を有する適当な濃度のコーヒー組成物を、確実かつ簡単に製造することができる。
【0023】
さらに、前記コーヒー組成物の製造方法においては、前記コーヒー生豆を、アラビカ種のコーヒー生豆を含むように構成することができ、より好ましくはアラビカ種のコーヒー生豆のみで構成することができる。
このような構成によって、より優れた芳香を有するコーヒー組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明のコーヒー組成物の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2】試験例1において、コーヒー組成物中に含まれるコーヒー生豆成分の割合(コーヒー生豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出液の使用割合)とコーヒー組成物の芳香の強さとの関係を示すグラフ図である。
図3】この発明のコーヒー組成物の製造方法の他の例を示すフロー図である。
図4】試験例3において、加熱処理時の温度と時間を変化させて良好な芳香を有するコーヒー組成物が得られる場合の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明に係るコーヒー組成物の製造方法の実施の形態について、説明する。
なお、この発明について、好ましい代表的な例を中心に説明するが、この発明はこのような代表例に限定されるものではない。
【0026】
この発明のコーヒー組成物の製造方法は、所定のコーヒー抽出物、特にコーヒー抽出液に対して、所定の条件下で加熱処理を行うことを含むものである。
かかる構成の製造方法は、香料を使用していないにもかかわらず、良好な芳香を有する適当な濃度のコーヒー組成物を、簡単に得ることを可能とするものである。
【0027】
前記コーヒー抽出物としては、コーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物から調製されたコーヒー抽出物とコーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物から調製されたコーヒー抽出物との混合物(混合抽出物)を選択することができる。
或いはコーヒー生豆を粉砕して得られるコーヒー生豆の粉砕物とコーヒー生豆を焙煎したのち粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物との混合物(混合粉砕物)から調製されたコーヒー抽出物を選択してもよい。
【0028】
前記コーヒー生豆の豆種としては、例えば、アラビカ種、カネフォラ種(一般的にロブスタ種)、リベリカ種を挙げることができる。
また、前記コーヒー生豆の産地としては、例えば、コロンビア、ブラジル、エチオピアを挙げることができる。
前記コーヒー生豆については、1種を用いても、2種以上をブレンドして用いてもよいが、芳香に富んでいることから、好ましくはアラビカ種のものを含むよう構成され、より好ましくはアラビカ種のもののみで構成される。
なお、前記コーヒー生豆がアラビカ種のものを含む場合には、アラビカ種のものが70%以上含まれていることが好ましい。
【0029】
前記コーヒー生豆の焙煎処理については、公知の方法を利用して行うことができる。
前記方法として、例えば、直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方法を選択して、コーヒー生豆の種類に応じて、所望の焙煎度になるよう焙煎処理を行うことができる。
【0030】
前記コーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆の粉砕処理については、ロールグラインダーなどの公知の又は将来開発されうる粉砕機を用いて行うことができる。
なお、前記粉砕に際して、前記コーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆の粉砕粒度については、抽出処理を行うことが可能なものであればよく、特段の制限はない。
したがって、前記コーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆の粉砕物としては、粗挽き、中挽き、細挽きなどの各種粉砕粒度のものを使用することができる。
なお、粉砕粒度として細挽きのものを選択した場合には、抽出効率が高くなり、濃度(Brix値(%))が高いコーヒー抽出液が得られる傾向にある。
【0031】
この発明において、前記混合抽出物又は混合粉砕物の混合比率については、果実様の良好な芳香が弱く感じられるという観点から、質量比で、コーヒー生豆の抽出物ないし粉砕物:焙煎コーヒー豆の抽出物ないし粉砕物=10:90~75:25が選択される。
前記混合比率は、良好な芳香がやや強く感じられるという観点から、好ましくは、質量比で、コーヒー生豆の抽出物ないし粉砕物:焙煎コーヒー豆の抽出物ないし粉砕物=25:75~70:30であり、強い芳香を明瞭に感じることができ、かつ風味のバランスが良いという観点から、より好ましくは、40:60~55:45である。
【0032】
前記粉砕物からのコーヒー抽出物の調製については、抽出溶媒を用いた抽出処理によって行うことができる。
前記抽出処理については、抽出溶媒を用いて、浸漬式、ドリップ式(ペーパーやネル等)などの公知の方法によって行うことができ、バッチ式、半バッチ式、連続式の各種様式によって行うことができる。
その際、前記コーヒー生豆の粉砕物と焙煎コーヒー豆の粉砕物を、それぞれ別々に抽出してもよいし、ブレンドして抽出してもよい。
また、前記コーヒー生豆の粉砕物と焙煎コーヒー豆の粉砕物を、それぞれ別々に抽出する場合には、それぞれを層状に形成して積層してもよい。
【0033】
前記抽出溶媒については、前記コーヒー抽出物を調製することを可能とするものであればよく、特段の制限はない。
【0034】
前記抽出溶媒としては、水を主成分とするものを選択することができ、例えば、水、含水アルコール、炭酸水などを挙げることができる。
風味の観点から、好ましくは水が選択される。
【0035】
前記抽出溶媒の温度については、コーヒー生豆ないし焙煎コーヒー豆の種類や粉砕粒度などに応じて適宜選択すればよく、特段の制限はない。
したがって、前記抽出溶媒として、例えば、温度0~200℃の水を選択することができる。
【0036】
前記抽出処理に際して、時間や抽出溶媒の使用量、特に水量(水の使用量)などの各種の条件については、コーヒー生豆ないし焙煎コーヒー豆の種類や粉砕粒度などに応じて適宜選択すればよく、特段の制限はない。
例えば、前記水量については、抽出槽中の水量が、コーヒー生豆ないし焙煎コーヒー豆の粉砕物の質量に換算して、所定の倍数になるように調整して抽出処理を行うことができる。
なお、前記水量(加水量)が増える(コーヒー生豆ないし焙煎コーヒー豆の粉砕物の質量に換算して所定の倍数を超える)と、得られるコーヒー抽出液の濃度(Brix値(%))は低くなるが、芳香の質の良さは維持される。
【0037】
前記抽出処理によって得られたコーヒー抽出物については、加熱処理前に、pH調整剤を用いてpH調整を行ってもよい。
前記pH調整については、コーヒー抽出物のpH(20℃)が、例えば4~10になるように、風味の観点から、好ましくは5~7になるように行うことができる。
【0038】
この発明において、前記得られたコーヒー抽出物又はコーヒー混合物(混合抽出物)については、所定の条件下で加熱処理が行われる。
【0039】
具体的には、前記抽出処理によって得られた抽出物又は混合抽出物を、温度をT(単位:℃)とし、時間をt(単位:分)として、以下の式(1)及び式(2)を共に満足するような条件で加熱することで、香料を含んでいないにもかかわらず、良好な芳香を有するコーヒー組成物、すなわち、この発明のコーヒー組成物を得ることができる。
【0040】
【数4】
【0041】
前記加熱処理の方法については、特段の制限はなく、例えば、恒温水蒸気を用いる加熱装置や、熱風などによる恒温器、直火式や電熱式などの加熱器などを用いる公知の方法によって行うことができる。
【0042】
なお、コーヒー組成物の芳香を飛散させない観点から、前記加熱処理は、好ましくは、得られたコーヒー抽出物又は混合抽出物に対して密封した状態で行われる。
例えば、前記加熱処理を、コーヒー抽出物又は混合抽出物を所定の容器や加圧加熱釜などに充填、封入した状態で行うことができる。
【0043】
前記容器の形態については、特に制限はなく、金属やガラス、紙などで構成される缶や、瓶、袋体などの容器を目的に応じて適宜使用することができる。
前記容器を構成する材料としては、好ましくは耐熱性を有する材料が選択される。
なお、この発明のコーヒー組成物については、容器に充填された形態で提供することができるものであるので、その場合には、前記加熱処理においては、金属缶や、耐熱ガラス瓶、紙容器、レトルトパウチ(耐熱性を有する樹脂や金属シートを用いて製袋した袋体)など、製品の提供に際して使用される容器を選択することが簡便である。
【0044】
前記容器や釜の大きさや、容量については、充填されるコーヒー抽出物又は混合抽出物の量などに応じて、適宜選択することができ、特段の制限はない。
【0045】
この発明において、加熱温度については、上記式(2)に示されるように、温度111~130℃が選択され、好ましくは119~130℃、より好ましくは121~130℃が選択される。
加熱温度が111℃未満の場合には、この発明の効果が十分に得られず、加熱温度が130℃を超えると、過加熱による加熱劣化臭が顕著に発生し、品質が悪くなる傾向にある。
【0046】
ここで、上記式(1)は、本発明者らが、加熱処理の際の加熱温度と、加熱時間と、をそれぞれ変化させながら、得られるコーヒー組成物が本発明の作用効果(良好な芳香など)を有するものであるか否かについて検証を行うことで、実験的に得られたものである。
すなわち、本発明者らは、後述する実施例に示すように、加熱処理の際の加熱温度T[℃]と、加熱時間t[分]と、をそれぞれ変化させながら、コーヒー組成物を調製し、得られたコーヒー組成物が良好な芳香を有するものであるか否かを検証した。
【0047】
具体的には、加熱温度T[℃]及び加熱時間t[分]で規定される座標平面に対して、各コーヒー抽出物の加熱条件に対応する位置に、得られた検証結果をプロットしていった。
【0048】
一方、コーヒーの場合では、メイラード反応などによって芳香が発生し、芳香が発生する反応においては、反応速度をr、濃度をCとすると、下記反応式(3)が満たされること、並びに温度をT、反応速度をrとすると、温度と反応速度の関係が、下記アレニウスの式(4)に従い、温度差による反応速度がr値の比で求められ、温度上昇で反応速度が速くなる。
【0049】
【数5】
【0050】
【数6】
【0051】
そこで、この発明の範囲内となる領域の境界を得るために、座標平面上のプロットに対して、加熱温度と加熱時間の関係を直線回帰で設定した。
このような事前の検証により、本発明者らは、上記式(1)で表される関係を得ることができ、加熱処理における加熱温度T[℃]及び加熱時間t[分]は、上記式(1)を満足することが好ましいことが明らかとなった。
【0052】
かかる製造方法によって得られるコーヒー組成物は、そのまま液体の状態で飲料として使用することもできるが、所望により適宜公知の処理方法を利用して、スラリーや、半固体、固体などの種々の形態で使用することもできる。
例えば、製品形態として液体が望ましい場合には、減圧濃縮、逆浸透膜濃縮などにより濃縮することが可能であり、固体が望ましい場合には、噴霧乾燥や凍結乾燥などにより粉体にすることもできる。
【0053】
なお、前記コーヒー組成物には、この発明の作用効果を損なわない範囲内で、必要に応じてコーヒー飲料として含有させることが可能な周知の添加物を配合してもよい。
前記添加物としては、水、糖類、糖アルコール類、油脂類(食用油脂や食品加工油脂など)、澱粉及び加工澱粉、食物繊維、牛乳、加工乳、豆乳、果汁、野菜汁、果実・野菜及びその加工品、タンパク質、ペプチド、アミノ酸類、動物及び植物生薬エキス、
天然由来高分子(コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチンなど)、ビタミン類、ミネラル類、苦味抑制剤、酸化防止剤、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、増粘剤、乳化剤、保存料、着色料、調味料、甘味料、酸味料、品質安定剤、ゲル化剤、pH調整剤、香料など
が挙げられる。
【0054】
かかる製造方法によって得られるコーヒー組成物中には、トリゴネリンが比較的多く含まれているにもかかわらず、このコーヒー組成物は、良好な風味を有する。
したがって、この発明にかかるコーヒー組成物には、有効成分としてトリゴネリンが含まれているので、生体内に摂取されることによって、このトリゴネリンが有する作用効果が発揮され得る。
すなわち、前記コーヒー組成物は、トリゴネリン含有機能性素材として有効利用できる。
【0055】
具体的には、前記コーヒー組成物については、アルツハイマー病などの脳神経病、脳の老化などの予防、治療及び改善の効果が期待できる。
【0056】
この発明の製造方法においては、必要により前記トリゴネリンを単離・精製する工程や、含有されているトリゴネリンの濃度を高めるため前記加熱処理された抽出物や混合抽出物に対して濃縮処理を行う工程などを付加しても、この発明の目的や効果を阻害しない限り、前記付加工程を併せて、この発明に含めることができる。
【0057】
前記コーヒー組成物を、飲食品の素材として、利用することができる。
なお、このような飲食品は、公知の方法に従って製造すればよい。
その際、飲食品の形態としては、公知の又は将来開発される、様々な飲食品の形態を適宜採用することができる。
【0058】
様々な飲食品の製品の形態として、例えば、
清涼飲料水、緑茶飲料、紅茶飲料、コーヒー飲料、発酵茶飲料(ウーロン茶など)、乳飲料、発酵乳飲料、ココア飲料、ドリンク剤、スポーツ飲料、ゼリー飲料、アルコール飲料などの飲料、ヨーグルト、冷菓、ゼリー状食品、キャンディー、チョコレート、ケーキ、デザート、チューイングガム、和菓子、スナック菓子、焼き菓子、グミ、プリンなどの菓子類、菓子パン
などの各種製品を挙げることができる。
【0059】
かかる構成の製造方法によって製造されるコーヒー組成物は、所定の容器に充填して、容器詰めのコーヒー組成物としても提供可能なものである。
【実施例
【0060】
以下に、実施例を挙げて、この発明のコーヒー組成物の製造方法を詳細に説明する。
なお、この発明は、これら実施例により制限されることはない。
【0061】
[実施例1~4及び比較例1~3]
(コーヒー組成物の製造)
コーヒー生豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出液と焙煎コーヒー豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出液との混合比率を、質量比で、下記表1に示される値に設定して、図1に示したフロー図に基づく下記製造方法に従い、各種のコーヒー組成物を得た。
【0062】
<製造方法>
(1)コーヒー生豆(コロンビア産アラビカ種)を粉砕機で粉砕し、コーヒー粉末(on 1,400μmメッシュ 80%)を得た。
(2)(1)で得られたコーヒー粉末1000gを、密閉式抽出器に充填し、所定の温度の、質量換算でコーヒー粉末の6倍量の熱湯を加えながら、質量換算でコーヒー粉末の4倍量の抽出液を引き抜いて、抽出操作を終了した。
(3)コーヒー生豆(コロンビア産アラビカ種)を焙煎機で焙煎した後、粉砕機で粉砕し、焙煎コーヒー粉末(細挽き)を得た。
(4)(3)で得られた焙煎コーヒー粉末1000gを、密閉式抽出器に充填し、所定の温度の、質量換算でコーヒー粉末の6倍量の熱湯を加えながら、質量換算でコーヒー粉末の4倍量の抽出液を引き抜いて、抽出操作を終了した。
(5)(2)で得られたコーヒー抽出液と(4)で得られたコーヒー抽出液を、その混合比率が質量比で所定の値になるように混合して、コーヒー混合抽出液を得た。
(6)(5)で得られたコーヒー混合抽出液のpHを所定の値になるよう調整し、得られた混合抽出液を缶コーヒー用缶(SOT)に充填した。
(7)(6)で得られた缶入りのコーヒー混合抽出液に対して、121.1℃、16分で加熱処理を行い、コーヒー組成物を得た。
【0063】
【表1】
【0064】
[試験例1]
上記実施例1~4及び比較例1~3において得られたコーヒー組成物について、下記評価方法に基づき、下記の評価基準に従って、芳香の強さの評価を行った。
その結果を表2及び図2に示す。
【0065】
<評価方法>
得られたコーヒー組成物について、カッピング評価トレーニングを受けた専門パネル4名に、その芳香の判定をしてもらい、下記の評価基準に従って官能評価を行った。
【0066】
<評価基準>
5:非常に強い
4:強い
3:ふつう
2:弱い
1:非常に弱い
0:芳香を全く感じない
【0067】
【表2】
【0068】
<結 果>
実施例1~4において得られたコーヒー組成物では、柑橘系の芳香が認められた。
図2は、コーヒー生豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出液の使用割合と得られたコーヒー組成物の芳香の強さとの関係を示すグラフ図である。
図2から、コーヒー生豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出液と焙煎コーヒー豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出液との混合比率を、10:90~75:25としたときには、芳香の存在が認められ、25:75~70:30としたときには、芳香を弱く感じることができ、40:60~55:45としたときには、芳香を明瞭に感じることができた。
以上のことから、この発明にかかるコーヒー組成物の製造方法においては、コーヒー生豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出物(抽出液)と焙煎コーヒー豆の粉砕物から抽出されたコーヒー抽出物とを、特定の混合比率(質量比)で混合し、加熱処理しているので、良好な芳香を有するコーヒー組成物を得ることができることは、明らかである。
【0069】
[実施例5~10]
(コーヒー組成物の製造)
コーヒー生豆の粉砕物と焙煎コーヒー豆の粉砕物との混合比率を質量比で1:1に設定し、コーヒー抽出液を、下記表3に示される加熱処理条件で加熱して、図3に示したフロー図に基づく下記製造方法に従い、各種のコーヒー組成物を得た。
【0070】
<製造方法>
(1)コーヒー生豆(コロンビア産アラビカ種)を粉砕機で粉砕し、コーヒー粉末(on 1,400μmメッシュ 80%)を得た。
(2)コーヒー生豆(コロンビア産アラビカ種)を焙煎機で焙煎した後、粉砕機で粉砕し、焙煎コーヒー粉末(細挽き)を得た。
(3)(1)で得られたコーヒー粉末と(2)で得られた焙煎コーヒー粉末を、その混合比率が質量比で1:1になるように混合して、コーヒー混合粉末を得た。
(4)(3)で得られたコーヒー混合粉末1000gを、密閉式抽出器に充填し、所定の温度の、質量換算でコーヒー粉末の6倍量の熱湯を加えながら、質量換算でコーヒー粉末の4倍量の抽出液を引き抜いて、抽出操作を終了した。
(5)(4)で得られたコーヒー抽出液のpHを所定の値になるよう調整し、得られた抽出液を缶コーヒー用缶(SOT)に充填した。
(6)(5)で得られた缶入りのコーヒー混合抽出液に対して、所定の加熱温度及び加熱時間で加熱処理を行い、コーヒー組成物を得た。
【0071】
【表3】
【0072】
[試験例2]
上記実施例5~10において得られたコーヒー組成物について、下記評価方法に基づき、下記の評価基準に従って、芳香の強さ及び芳香の質の評価を行った。
さらに、上記実施例5~10において得られたコーヒー組成物について、下記評価方法に基づき、下記の評価基準に従って、加熱処理(工程(6))を行わないこと以外は実施例5~10と同様の製造方法により製造したコーヒー抽出物との対比を行うことによって、芳香の差異の評価を行った。
これらの結果を表4に示す。
【0073】
<評価方法>
得られたコーヒー組成物について、カッピング評価トレーニングを受けた専門パネル4名に、その芳香の判定をしてもらい、下記の評価基準に従って官能評価を行った。
【0074】
<芳香の強さの評価基準>
5:非常に強い
4:強い
3:ふつう
2:弱い
1:非常に弱い
0:芳香を全く感じない
【0075】
<芳香の質の評価基準>
4:良い
3:やや良い
2:やや良くない
1:良くない
【0076】
<芳香の差異の評価基準>
【0077】
【表4】
【0078】
<結 果>
実施例5~10において得られたコーヒー組成物は、いずれも良好な芳香を有するものであった。
ここで、F0値は、加圧加熱条件下、レトルト食品などの殺菌強度を規定するもので、加熱温度と加熱時間から算出されるものである。
例えば、コーヒーのみ飲料の殺菌は、F0値が約16以上になる条件で行われる。
しかしながら、この発明においては、加熱条件については、加熱温度111~130℃に設定し、加熱時間を、短い時間を下限値として、F0値が約16を下回る時間に設定して、その領域から芳香を発生させる。
したがって、この発明にかかるコーヒー組成物の製造方法において、加熱処理は、殺菌処理とは全く異なるものであることは、明らかである。
【0079】
[試験例3]
上記試験例2で得られた評価結果に基づき、上記実施例5~10のうち、各加熱温度に対する加熱時間が最も短い場合(実施例5、9及び10)において得られたコーヒー組成物の加熱温度及び加熱時間の組み合わせを、加熱温度[℃]と加熱時間[分]で規定される座標平面にプロットした。
その結果を図4に示す。
【0080】
<結 果>
図4から、コーヒー生豆の粉砕物と焙煎コーヒー豆の粉砕物を特定の混合比率(質量比)で混合した混合物から抽出されたコーヒー抽出液に対して、この発明において規定した条件の範囲内で加熱処理を行った場合、すなわち下記式(1)及び(2)を共に満足するような条件で加熱処理を行った場合には、良好な芳香を有するコーヒー組成物を得ることができることがわかる。
【0081】
【数7】
【0082】
以上のことから、この発明にかかるコーヒー組成物の製造方法によれば、コーヒー生豆の成分と焙煎コーヒー豆の成分とを特定の混合比率(質量比)で含むコーヒー抽出物に対して、特定の条件下で加熱処理しているので、良好な芳香を有するコーヒー組成物を得ることができることは、明らかである。
【0083】
[評価例]コーヒー組成物の分析
上記実施例5~10において得られたコーヒー組成物について、下記調製方法に基づき標品及び試料を調製し、下記の測定条件でHPLC分析を行った。
さらに、上記実施例5~10において得られたコーヒー組成物について、pHを、pHメータ(F-72(株式会社堀場製作所製))を用いてガラス電極法で測定し、濃度(Brix値(%))を、屈折計(RX-5000i(株式会社アタゴ製))を用いて光屈折臨界角検出方式で測定した。
これらの結果を表5に示す。
【0084】
<標品の調製方法>
(1)トリゴネリンを、10mg測り取った。
(2)(1)で測り取ったトリゴネリンを、純水で20mLにメスアップした。
(3)(2)でメスアップしたトリゴネリンを、純水で50μg/mL又は25μg/mLに希釈し、0.45μmマイクロフィルターでろ過して、標品を得た。
【0085】
<試料の調製方法>
(1)コーヒー組成物を、0.45μmシリンジフィルターでろ過した。
(2)(1)でろ過したコーヒー組成物を移動相Aで10倍希釈したものを、試料とした。
【0086】
<HPLCの条件>
1)使用機器 :Shimadzu LC-20A(株式会社島津製作所製)
2)カラム :VP-ODS(φ4.6×250mm)(株式会社島津製作所製)
3)流 速 :1.0mL/分
4)インジェクション量:10μL
5)カラム温度:温度40℃
6)検出波長 :265nm
6)測定時間 :16分
7)移動相A :10mM リン酸緩衝液:メタノール=75:25
【0087】
【表5】
【0088】
<結 果>
表5から、実施例5~10において得られたコーヒー組成物はいずれも、焙煎コーヒー豆の粉砕物25gを、熱湯400mLでドリップ抽出して得られたレギュラーコーヒーに比べて約1.3~1.5倍のトリゴネリンを含有していた。
したがって、この発明にかかるコーヒー組成物の製造方法によれば、トリゴネリンを豊富に含むコーヒー組成物を得ることができることは、明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
この発明によれば、香料を使用しなくても、良好な芳香を有する適当な濃度のコーヒー組成物を、簡単に製造することが可能となるので、食品業界、特にコーヒーやコーヒー飲料を取り扱う業界において幅広く利用されるものである。
図1
図2
図3
図4