(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 13/30 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B66B13/30 E
(21)【出願番号】P 2021131623
(22)【出願日】2021-08-12
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207570(JP,A)
【文献】特開平08-245140(JP,A)
【文献】実開昭62-074673(JP,U)
【文献】特開2010-180053(JP,A)
【文献】特開2007-176691(JP,A)
【文献】特開平06-156953(JP,A)
【文献】特開平04-338090(JP,A)
【文献】中国実用新案第213112143(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/30
B66B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片開きまたは両開きの開閉体を備え、前記開閉体は、開閉単位当たりで移動速度の速い1枚以上のファストドア及び移動速度の遅い1枚以上のスロードアを含み、
前記ファストドア及び前記スロードアは
、各ドアの上方に設けられた1本のガイドレールに案内されることで開閉され
、
前記ガイドレールに囲まれること、または、前記ガイドレールを挟むことにより、前記ガイドレールに対して取り付けられていて、前記ガイドレールの長手方向に沿って移動する複数の移動ブロックを有し、
前記ファストドア及び前記スロードアの各々は、前記移動ブロックに連結されており、
前記移動ブロックは、側面に出没可能な一対の可動片を備え、
前記可動片を突出した状態とすることで、前記ガイドレールに対し、前記移動ブロックの長手方向への移動は許容しつつ、前記移動ブロックの離脱を規制でき、
前記可動片を没した状態とすることで、前記ガイドレールに対して離脱させられるエレベータ。
【請求項2】
前記ガイドレールは、横断面形状が「コ」の字状であって、取り付け状態で前方に開口するように設けられており、
前記移動ブロックは、
前記ガイドレールに囲まれることにより前記ガイドレールに対して取り付けられ、前記ガイドレールの長手方向に沿って移動するものであって、
前記一対の可動片を操作し、当該移動ブロックを前後方向に移動させることで前記ガイドレールに対して着脱できる、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記ファストドアがハンガーを介して取り付けられた前記移動ブロックであるファストドア用移動ブロック及び前記ファストドア用の前記ハンガーと、前記スロードアがハンガーを介して取り付けられた前記移動ブロックであるスロードア用移動ブロック及び前記スロードア用の前記ハンガーの移動範囲は一部が重なっており、
前記開閉体の全開状態及び全閉状態では、前記ファストドア用移動ブロック及び前記ファストドア用の前記ハンガーと、前記スロードア用移動ブロック及び前記スロードア用の前記ハンガーの位置はずれており、
前記開閉体が開く途中、または、前記開閉体が閉じる途中では、前記ファストドア用移動ブロック及び前記ファストドア用の前記ハンガー、前記スロードア用移動ブロック及び前記スロードア用の前記ハンガーのうち一方が移動した後の空いた領域に、他方が移動する、請求項
1または2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記ガイドレールに対して不動に固定される固定ブロックを有し、
前記ファストドア及び前記スロードアの各々に開閉駆動力を与えるプーリーが、前記固定ブロックに設けられている、請求項1~3のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項5】
前記プーリーが、径寸法の大きい大径プーリーと径寸法の小さい小径プーリーとを有し、
前記大径プーリーは前記ファストドアを駆動するものであり、前記小径プーリーは前記スロードアを駆動するものであり、
前記大径プーリーと前記小径プーリーの回転中心軸が同じ位置にある、請求項4に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動速度の速いファストドア及び移動速度の遅いスロードアの組み合わせを備えたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファストドア及びスロードアの組み合わせから構成される開閉体を備えたエレベータが存在する(例えば特許文献1)。両開きの開閉体では、開閉体に正対した場合、ファストドアは中央側に配置され、スロードアは端側に配置されており、開閉体が開こうとすると中央側に開放領域(乗降用の空間)を速やかに形成できる。この従来のエレベータでは、ファストドアとスロードアが、各ドアの上方に配置された別々のガイドレールに案内され移動していた。
【0003】
しかしこのような構成では、ファストドア用のガイドレールとスロードア用のガイドレールとがそれぞれ必要であったため、エレベータの開閉体を開閉させるための構成が複雑となっていた。そしてこのような構成であることによって、メンテナンス作業にかかる手間が大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明は、開閉体を開閉させるための構成を単純化したエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、片開きまたは両開きの開閉体を備え、前記開閉体は、開閉単位当たりで移動速度の速い1枚以上のファストドア及び移動速度の遅い1枚以上のスロードアを含み、前記ファストドア及び前記スロードアは1本のガイドレールに案内されることで開閉されるエレベータである。
【0007】
この構成では、ファストドアとスロードアが、1本のガイドレールに案内され移動する。このため、1台の開閉体が備えるガイドレールの数量を少なくできる。
【0008】
また、前記ガイドレールに対して包囲または挟持の関係で取り付けられていて、前記ガイドレールの長手方向に沿って移動する複数の移動ブロックを有し、前記ファストドア及び前記スロードアの各々は、前記移動ブロックに連結されているものとできる。
【0009】
この構成では、ガイドレールの長手方向に沿って移動する複数の移動ブロックを用いることで、ファストドアとスロードアを1本のガイドレールに沿い移動させることができる。
【0010】
また、前記ファストドアがハンガーを介して取り付けられた前記移動ブロックであるファストドア用移動ブロック及び前記ファストドア用の前記ハンガーと、前記スロードアがハンガーを介して取り付けられた前記移動ブロックであるスロードア用移動ブロック及び前記スロードア用の前記ハンガーの移動範囲は一部が重なっており、前記開閉体の全開状態及び全閉状態では、前記ファストドア用移動ブロック及び前記ファストドア用の前記ハンガーと、前記スロードア用移動ブロック及び前記スロードア用の前記ハンガーの位置はずれており、前記開閉体が開く途中、または、前記開閉体が閉じる途中では、前記ファストドア用移動ブロック及び前記ファストドア用の前記ハンガー、前記スロードア用移動ブロック及び前記スロードア用の前記ハンガーのうち一方が移動した後の空いた領域に、他方が移動するものとできる。
【0011】
この構成では、複数の移動ブロックが1本のガイドレールに設けられていても、移動ブロック及びハンガーを互いに衝突させずにファストドアとスロードアを開閉させられる。
【0012】
また、前記ガイドレールに対して不動に固定される固定ブロックを有し、前記ファストドア及び前記スロードアの各々に開閉駆動力を与えるプーリーが、前記固定ブロックに設けられているものとできる。
【0013】
この構成では、固定ブロックを介してプーリーを設けることで、プーリーを設置しやすい。
【0014】
また、前記プーリーが、径寸法の大きい大径プーリーと径寸法の小さい小径プーリーとを有し、前記大径プーリーは前記ファストドアを駆動するものであり、前記小径プーリーは前記スロードアを駆動するものであり、前記大径プーリーと前記小径プーリーの回転中心軸が同じ位置にあるものとできる。
【0015】
この構成では、大径プーリーと小径プーリーの回転中心軸が同じ位置にあることから、ファストドアとスロードアを移動させるための構成を単純化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、1台の開閉体が備えるガイドレールの数量を少なくできる。よって、開閉体を開閉させるための構成を単純化したエレベータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るエレベータの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、前記エレベータのかごドアオペレータを説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、前記エレベータのガイドレールと移動ブロックとの関係を説明するための、横断面形状を示した模式図であって、
図4(a)は移動ブロックの一部がガイドレールに囲まれた例を示し、
図4(b)は移動ブロックがガイドレールの一部を挟んだ例を示す。
【
図5】
図5は、前記エレベータの乗場ドアオペレータを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。
【0019】
エレベータ1は、
図1に示すように、建物内を複数の階床(フロア)にわたって上下方向に延びる昇降路2と、昇降路2を昇降するかご3と、を備える。かご3は、昇降路2内を昇降して建物の各階に設けられる乗場4に停止可能である。以下、かご3に関して主に説明し、乗場4に関してはかご3と異なる点について主に説明する。
【0020】
かご3は、開閉によりかご3の内外を連通させる開閉体としてのかごドア31を備える。本実施形態のかごドア31は、開閉単位(一枚のドア、または、開閉の際の移動方向が同じ複数枚のドアから構成される単位)が対称に一対(二つ)設けられた両開きとされている。
【0021】
エレベータ1は、
図2にも示すように、かごドア31を開閉するためのドアオペレータ5(かごドアオペレータ33)と、ドアオペレータ5の構成部品を収納し、かご3に属する部品取付面32に設けられた収納部6(二点鎖線で図示)と、を備える。乗場4では、収納部6は、乗場4に属する部品取付面42に設けられる。部品取付面32は、上下方向(かご3の昇降方向)に略沿う面(垂直面または鉛直面を含む)である。ただし、部品取付面32は、垂直または鉛直方向に対して下側に45度以下で傾斜した面であってもよい。また、「かご3に属する部品取付面32」とは、かご3を構成する各部が有する面を広く含む。つまり、この部品取付面32は、かご3の内壁を構成する面(かご3の内部空間に露出した面)が、最も一般的な面として例示できるが、この面に限定されるものではなく、例えばかご3の内壁を構成する面に取り付けられた構造物や部品における垂直面も含まれる。乗場4に属する部品取付面42に関しても同様である。ドアオペレータ5は、かごドア31又は乗場ドア41を開閉する開閉力を生じさせるドア開閉装置7と、かごドア31や乗場ドア41を開閉のために案内するガイドレール51と、を含む(
図2参照)。
【0022】
ここで、前記構成部品は、例えば、かごドア31を吊り下げるハンガー57、駆動力の発生、伝達に関連するドアモーター52、インバーター59、駆動プーリー53、従動プーリー54、ドア駆動ベルト55、かごドア31を物理的抵抗により閉じ位置で保持させる終端保持装置(戸閉力保持装置)71、かごドア31の開閉に関する制御を行うコントローラー(制御部)58(マイコンが含まれることもある)、位置検出器等の各種センサー類、停電時にかご3に電力を供給する非常電源装置70が挙げられる。乗場4の構成部品として、
図5に示すように、戸閉状態を保持するための戸閉力補助用スプリング72が設けられる。戸閉力補助用スプリング72は、例えば、一方のファストドア410用のブロック56と、乗場ドアオペレータ34の開閉方向における中央位置との間に、一つ配置されている。ただし、構成部品は、前記列挙した部品のみに限定されるものではなく、ドアオペレータ5を構成する部品であって、かごドア31を開閉駆動、開閉保持させるための駆動力や付勢力の発生、伝達、及びこれらの制御、かごドア31に対する安全対策(不意の開閉の防止)等、通常時または非常時においてかごドア31の開閉に関係して機能する種々の構造部品、電気部品が該当する。後述する乗場ドア41を開閉するためのドアオペレータ5に関しても同様である。なお、複数の構成部品のうち電気部品で、相互に関連するものは電線等により接続されている。
【0023】
このエレベータ1では、かご3に属する部品取付面32は、例えば、かご3の内面であって、かごドア31の上方に位置している(
図1、
図2参照)。具体的に、かご3に属する部品取付面32のうち、収納部6が設けられた面は、かごドア31の上方でかごドア31に隣接している。また、乗場4に属する部品取付面42も、かご3に属する部品取付面32と同様であり、例えば、乗場4の外面であって、乗場ドア41の上方に位置している(
図1、
図5参照)。具体的に、乗場4に属する部品取付面42は、乗場ドア41の上方で乗場ドア41に隣接している。なお、本実施形態の収納部6は、
図2に示すように、かご3内に突出して設けられているが、部品取付面32の内部に埋め込むように設けることもできる。また、収納部6を設けず、構成部品を、かご3の壁内部の空間に配置することもできる。
【0024】
開閉体のかごドア31及び乗場ドア41は、それぞれ、開閉方向に接離可能な4枚のドアパネル(2枚のファストドア310及び2枚のスロードア311)を有する。これら4枚のドアパネルは、それぞれ上下に長尺な矩形のパネル状である。
【0025】
かごドア31は、移動速度(開閉速度)の異なるファストドア310及びスロードア311を含む。本実施形態では、1枚のファストドア310と1枚のスロードア311との組が開閉体(かごドア31又は乗場ドア41)における開閉単位を構成する。開閉体に正対した場合、ファストドア310は開放を開始する側に近い側に位置し、スロードア311は、開放を終了する側に近い側に位置する。本実施形態のような両開きでは、ファストドア310は中央側に位置し、スロードア311は左右の端側に位置する。開閉時の移動速度に関し、ファストドア310は相対的に速く、スロードア311は相対的に遅い。ファストドア310の移動速度はスロードア311の移動速度に対し整数倍、具体的に本実施形態では2倍に設定されている。乗場ドア41についても同様に、ファストドア410及びスロードア411を含み、かごドア31と係合して連動することにより、同じ移動速度になる。
【0026】
収納部6は、例えば、箱状である。また、収納部6は、かご3に属する部品取付面32基準で手前側(かご3の内部側)である前方に開口した開口部60を有する。なお、かご3に関する「前後」の説明はこの方向により行う。つまり「後方」は前記「前方」の逆であり、部品取付面32基準で奥側(かご3の外部側、または乗場4側)である。乗場4に関してはかご3と前後方向が逆になる。例えば、収納部6は、収納部6の開口部60を開閉可能なカバーパネル61を含む。このエレベータ1では、メンテナンスを行わないときに、カバーパネル61で収納部6の開口部60を閉じておくことで、雨水が昇降路2に流入した際に、かご3に伝ってきた雨水が収納部6に入り込み、ドアオペレータ5の構成部品が雨水で濡れることを防ぐことができる。
【0027】
より具体的に、収納部6は、一面が開口部60として開口した箱体62と、開口部60を開閉可能なカバーパネル61とを含む。なお、カバーパネル61の箱体62に対する開閉態様は特に限定されない。例えば、ヒンジ支持により、カバーパネル61が箱体62に対して回動して開閉するものであってもよい。この際、ストッパーによりカバーパネル61の開放状態を保持できるようにすることが好ましい。また、カバーパネル61を着脱式とし、カバーパネル61を箱体62から取り外すことで開放状態としてもよい。
【0028】
本実施形態のエレベータ1では、ドアオペレータ5の構成部品として、かご3の出入口の上方において戸開閉方向に延び、かごドア31のドアパネルを案内するガイドレール51を含む。また、ファストドア310及びスロードア311の両方の開閉を案内する一本のガイドレール51と、ファストドア310及びスロードア311の各々に連結され、長手方向に直交する横断面視で、
図4(a)に示すようにガイドレール51に囲まれること、又は、
図4(b)に示すようにガイドレール51を挟むことにより、ガイドレール51に対して取り付けられるブロック56(移動ブロック561、固定ブロック562(
図2参照))と、を含む。すなわち、ブロック56は、ガイドレール51に対して包囲または挟持の関係で取り付けられる。
【0029】
ブロック56のうち移動ブロック561は、ガイドレール51の長手方向に沿って移動し、固定ブロック562は、ガイドレール51に対して長手方向に不動に固定されている。移動ブロック561はファストドア310及びスロードア311の総数(本実施形態では4枚)に対応した数量が設けられている。本実施形態の移動ブロック561はドアの数量に一致した4個が設けられているが、ドアの数量の倍数が設けられていてもよい。また、ファストドア310とスロードア311とで異なる数量の移動ブロック561が設けられていてもよい。固定ブロック562は、
図3に示すように、ガイドレール51の各端部に1個(合計2個)、中央部に2個設けられている。
【0030】
ガイドレール51は、収納部6を介して部品取付面32に取り付けられている。また、ガイドレール51は、長手方向に連続した1本のものである。ファストドア310及びスロードア311は1本のガイドレール51に、移動ブロック561及びハンガー57を介して案内されることで開閉される。本実施形態ではファストドア310がそれぞれ2枚ずつ、スロードア311がそれぞれ2枚ずつ用いられているが、前記ドアの全て(計4枚)が1本のガイドレール51に案内される。
【0031】
図3に示すように、ファストドア310が取り付けられた移動ブロック561をファストドア用移動ブロック561fとし、スロードア311が取り付けられた移動ブロック561をスロードア用移動ブロック561sとすると、ガイドレール51が1本であることから、前記各移動ブロック561f,561sの移動範囲は一部が重なっている。なお、各移動ブロック561f,561sに対応したハンガー57も同様に、移動範囲の一部が重なっている。そして、かごドア31の全開状態及び全閉状態では、ファストドア用移動ブロック561fと、スロードア用移動ブロック561sの位置は、ガイドレール51の長手方向でずれている。つまり、ファストドア用移動ブロック561fの開放端(ガイドレール51における端部)側端面とスロードア用移動ブロック561sの閉鎖端(ガイドレール51における中央部)側端面は当接しないようにされている。なお、両移動ブロック561f,561sが緩衝材を介して当接することはありえる。そして、かごドア31が開く途中、または、かごドア31が閉じる途中では、ファストドア用移動ブロック561f、スロードア用移動ブロック561sのうち一方が移動した後の空いた領域に、他方が移動する(言い換えると、移動ブロック561の一方に対して他方が追いかけるように移動する)。このため、かごドア31の全開状態から全閉状態に至る経過で(その逆の経過についても)、ファストドア用移動ブロック561fとスロードア用移動ブロック561sとは衝突することがない。各移動ブロック561f,561sに対応したハンガー57も同様に、各々衝突することがない。各ドア310,311に対する移動ブロック561及びハンガー57の位置は、特に全開状態の各ドア310,311において、ガイドレール51の長手方向でずれるように設定される。
【0032】
本実施形態のガイドレール51は、例えば
図2、
図5に略示するように、横断面形状が「コ」の字状であって、取り付け状態で前方に開口するように設けられている(ブロック56等の配置の関係で、ガイドレール51を上方または下方に開口させることもできる)。取り付け状態のブロック56は、ガイドレール51の前記「コ」の字状部分の内部空間に入り込むようにして、ガイドレール51に囲まれる。これにより、一本のガイドレール51がファストドア310及びスロードア311の両方の開閉を案内するため、ドアオペレータ5をコンパクト化することができる。また、このエレベータ1では、メンテナンス時のガイドレール51の脱着を、前後方向に行うことができる。
【0033】
このエレベータ1では、ドアオペレータ5の構成部品のうち、駆動力を発生させて伝達する部品として、ガイドレール51、かごドア31の開閉の動力源であるドアモーター52、ドアモーター52により回転駆動される駆動プーリー53、駆動プーリー53に従動する従動プーリー54が取り付けられている。ドアモーター52は、ガイドレール51に設けられた固定ブロック562(
図3に示す右側のもの)に収納されている。
【0034】
駆動プーリー53は
図2、
図3に示す右側に位置しており、大径プーリー531と小径プーリー532とが一体とされた二段プーリーである。ファストドア310の移動速度はスロードア311の移動速度に対し整数倍(具体的に本実施形態では2倍)に設定されている。このため、大径プーリー531の直径に対する小径プーリー532の直径はこの設定に対応した整数倍(本実施形態では2倍)となっている。駆動プーリー53の回転中心軸は前後方向に延びている。大径プーリー531に対し、小径プーリー532は前方に位置している。ドアモーター52及び駆動プーリー53は、ガイドレール51に設けられた固定ブロック562に支持されている。
【0035】
従動プーリー54は、
図2、
図3に示す左側に位置する第1従動プーリー54Aと、図示中央側に位置する一対の第2従動プーリー54Bとから構成されている。各従動プーリー54A,54Bの回転中心軸は前後方向に延びている。各従動プーリー54A,54Bは、ガイドレール51に設けられた各固定ブロック562に支持されている。第1従動プーリー54Aは、駆動プーリー53と同様、大径プーリー541と小径プーリー542とが一体とされた二段プーリーである。第1従動プーリー54Aは、少なくともドア駆動ベルト55を掛ける部分で駆動プーリー53と同一形状とされている。第2従動プーリー54Bは、駆動プーリー53及び第1従動プーリー54Aにおける小径プーリー542の部分と同径のプーリー(シングルプーリー)である。また、第2従動プーリー54Bは、駆動プーリー53及び第1従動プーリー54Aにおける小径プーリー542の部分と前後方向で同一位置に設けられている。
【0036】
駆動プーリー53における大径プーリー531の部分と第1従動プーリー54Aにおける大径プーリー541の部分とには、ドア駆動ベルト55のうち1本のファストドア用ベルト551が掛け渡されている。図示右側にて、駆動プーリー53における小径プーリー532の部分と第2従動プーリー54Bとには、ドア駆動ベルト55のうち1本のスロードア用ベルト552が掛け渡されている。また、図示左側にて、従動プーリーにおける小径プーリー部分と第2従動プーリーとには1本のスロードア用ベルト552が掛け渡されている。つまり本実施形態では、かご3の1台当たり、1本のファストドア用ベルト551と、2本のスロードア用ベルト552が用いられている。ドア駆動ベルト55(ファストドア用ベルト551、スロードア用ベルト552)のテンション調整は、個々の固定ブロック562のガイドレール51に対する位置を調整(スライド調整)することによって行うことができる。具体的には、ガイドレール51の各端部に設けられた固定ブロック562(2個)の各々で、ファストドア用ベルト551のテンション調整をでき、ガイドレール51の中央部に設けられた固定ブロック562(2個)の各々で、スロードア用ベルト552(2本)の各々のテンション調整をできる。すなわち、合計4個の固定ブロック562のうち任意のものを選択してガイドレール51に対して移動させることにより、ファストドア用ベルト551(1本)と、スロードア用ベルト552(2本)につき、最適なテンションとなるように、別個に調整できる。なお、テンション調整用のねじ機構を固定ブロック562に設けておくこともできる。
【0037】
ここで、乗場4においては、乗場ドア41は、対応する階床(フロア)に到着したかご3のかごドア31から開閉駆動力を受け、連動して開閉する。従って、ドアモーター52は設けられておらず、これに伴い駆動プーリー53もなく、その代わりに第1従動プーリー54Aと同形のプーリーが設けられている。
【0038】
本実施形態のエレベータ1では、ガイドレール51に他の構成部品(例えば、ドアモーター52、駆動プーリー53、従動プーリー54、及び、ドア駆動ベルト55)が取り付けられており、一本のガイドレール51がファストドア310及びスロードア311の両方の開閉を案内する。そのため、メンテナンス時に一回の動作で、ガイドレール51に取り付けられた構成部品(例えば、ドアモーター52、駆動プーリー53、従動プーリー54、及び、ドア駆動ベルト55)を一度に脱着可能であり、ファストドア310、スロードア311を別々にガイドレール51に設けた場合と比べて、簡単にメンテナンスを行うことができる。
【0039】
また、この部品取付面32に、ドアオペレータ5の構成部品として、ドア駆動ベルト55に案内されてガイドレール51に沿って走行する移動ブロック561、及び、移動ブロック561とかごドア31とを接続するハンガー57が取り付けられる。
【0040】
ハンガー57は折り曲げられた板状であって、後面が移動ブロック561に連結され、下面がかごドア31(各ファストドア310、各スロードア311)に連結されている。ハンガー57は前面にクリップ状部分を有しており、この部分でドア駆動ベルト55を挟んでいる。
図3に示された左側のファストドア310のハンガー57は、ファストドア用ベルト551のうち、開放時に左方向に移動する上方部J1に接続されている。図示右側のファストドア310のハンガー57は、ファストドア用ベルト551のうち、開放時に右方向に移動する下方部J2に接続されている。図示左側のスロードア311のハンガー57は、図示左側のスロードア用ベルト552のうち、開放時に左方向に移動する上方部J3に接続されている。図示右側のスロードア311のハンガー57は、図示右側のスロードア用ベルト552のうち、開放時に右方向に移動する下方部J4に接続されている。
【0041】
この構成により、ドア駆動ベルト55から開閉駆動力がハンガー57に伝達され、この開閉駆動力が連結された移動ブロック561及びかごドア31に伝達されてドア開閉動作がなされる。ブロック56は図示しないガイドローラーを備え、このガイドローラーがガイドレール51に対して回転することで、ブロック56をガイドレール51の内面に対してスムーズに走行させることができる。ハンガー57は、かごドア31のドアパネル(例えば、ファストドア310やスロードア311)を吊り下げた状態で、ガイドレール51に沿って往復動可能である。
【0042】
ファストドア310とスロードア311とが前後方向にずれて配置されるため、ファストドア310用のハンガー57とスロードア311用のハンガー57は形状が異なっている。さらに、ファストドア310用のハンガー57へのファストドア310の取付位置は、スロードア311用のハンガー57へのスロードア311の取付位置に対して、前後方向にずれた位置となっている。
【0043】
また、本実施形態の移動ブロック561は、
図4(a)(b)に示すように、側面に出没可能な一対の可動片56aを備えている。
図4(a)に示した移動ブロック561では、可動片56aを没した状態でガイドレール51前方の開口部分を通すことができる。そして、可動片56aを突出した状態とすることで、ガイドレール51に対し、移動ブロック561の長手方向への移動は許容しつつも、前後方向への移動を規制した状態で留めることができる。このように構成することで、ガイドレール51及び部品取付面32に対して移動ブロック561を前後方向に移動させることで移動ブロック561を着脱できる。
着脱は、可動片56aの出没により、ワンタッチで簡単に行うことができる。このため、メンテナンス時の移動ブロック561の操作が容易である。固定ブロック562に関しても同様に、可動片を設けておくことができる。
図4(
b)に示した移動ブロック561も、ガイドレール51との内外関係が逆になるだけで、機能は同じである。
【0044】
なお、本発明のエレベータは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0045】
例えば、開閉体(かごドア31、乗場ドア41)は前記実施形態のような両開きに限らず片開きであってもよい。また、開閉単位当たりのファストドア310,410、スロードア311,411の枚数も適宜設定できる。
【0046】
また、ガイドレール51は、長手方向に連続した一本のものに限らず、長手方向に分割されており、部品取付面32への取り付け後に一本として機能するように構成されていてもよい。また、前記実施形態のガイドレール51ではなく、従来から用いられている、ドアを移動可能に吊り下げるためのレール(一本)をそのまま使用することもできる。
【0047】
また、前記実施形態では、かご3の1台当たり、1本のファストドア用ベルト551と、2本のスロードア用ベルト552が用いられていたが、これに限定されず、ファストドア用ベルト551と同様にスロードア用ベルト552を1本だけ用いることもできる。
【0048】
また、かごドア31を駆動させるための伝動手段は、前記実施形態のベルトに限定されるものではなく、例えばチェーンや歯車等の種々の手段を採用できる。また、ファストドア310,410とスロードア311,411の伝動手段として別種のものを採用することもできる。
【0049】
また、前記実施形態のかごドア31は、高速(ファスト)、低速(スロー)の二段階に設定されていたが、例えば中速を加える等して三段階以上に設定することもできる。このようにする場合は、駆動プーリー53、従動プーリー54の各々の段数が三段以上とされる。各プーリーは多段プーリーとして実施できる。
【0050】
また、前記実施形態では、駆動プーリー53、従動プーリー54の回転中心軸は前後方向に延びているものとされていたが、これに限定されず、上下方向や傾斜方向に延びているものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…エレベータ、2…昇降路、3…かご、4…乗場、5…ドアオペレータ、6…収納部、7…ドア開閉装置、31…かごドア、32…部品取付面、33…かごドアオペレータ、34…乗場ドアオペレータ、41…乗場ドア、42…部品取付面、51…ガイドレール、52…ドアモーター、53…駆動プーリー、54(54A,54B)…従動プーリー、55…ドア駆動ベルト、56…ブロック、56a…可動片、57…ハンガー、58…コントローラー(制御部)、59…インバーター、60…開口部、61…カバーパネル、62…箱体、70…非常電源装置、71…終端保持装置(戸閉力保持装置)、72…戸閉力補助用スプリング、310…ファストドア、311…スロードア、410…ファストドア、411…スロードア、531…大径プーリー、532…小径プーリー、541…大径プーリー、542…小径プーリー、551…ファストドア用ベルト、552…スロードア用ベルト、561(561f,561s)…移動ブロック、562…固定ブロック
【要約】
【課題】開閉体を開閉させるための構成を単純化したエレベータを提供する。
【解決手段】片開きまたは両開きの開閉体を備え、前記開閉体は、開閉単位当たりで移動速度の速い1枚以上のファストドア及び移動速度の遅い1枚以上のスロードアを含み、前記ファストドア及び前記スロードアは1本のガイドレールに案内されることで開閉されるエレベータである。
【選択図】
図3