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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
C03C27/12 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022016184
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2021201779の分割
【原出願日】2021-12-13
【審査請求日】2022-02-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 美菜子
(72)【発明者】
【氏名】野原 敦
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6475616(JP,B2)
【文献】特開2015-116680(JP,A)
【文献】特表2017-501953(JP,A)
【文献】国際公開第2021/079886(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C
B32B
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
下記式(X12)又は下記式(X13)で表される紫外線吸収剤と、金属塩とを含む、合わせガラス用中間膜
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む層を備える、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記金属塩が、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記金属塩が、分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記金属塩が、分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩以外の金属塩であって、炭素数が2以上8以下である有機酸の金属塩を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
第1の層と、前記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層とを備える、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第2の層が、中間膜の表面層であり、
前記第2の層が、前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む、請求項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置された第3の層を備える、請求項又はに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第3の層が、中間膜の表面層であり、
前記第3の層が、前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む、請求項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む層を備え、
前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む層において、前記金属塩に含まれている金属の含有量の、前記紫外線吸収剤の含有量に対する重量比が、4以上50以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率の最大値が、0.1%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
中間膜の紫外線透過率Tuvが、0.5%以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
中間膜の波長400nmにおける透過率が、1.5%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1~13のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。合わせガラスは、一対のガラス板の間に中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
紫外線の透過を抑制するために、ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤を含む中間膜が用いられることがある(例えば、下記の特許文献1)。また、合わせガラスにおいて、中間膜と合わせガラス部材(ガラス板等)との接着力を高めるために、金属塩を含む中間膜が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015/088866A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線の透過を抑制し、かつ中間膜と合わせガラス部材との接着力を高めるために、紫外線吸収剤と金属塩との双方を含む中間膜を用いることが考えられる。しかしながら、従来のベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤と金属塩との組み合わせでは、中間膜に黄変が生じることがある。金属塩の含有量を少なくすれば、黄変をある程度抑えることができるものの、中間膜と合わせガラス部材との接着力が低下する。
【0006】
したがって、ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤及び金属塩を含む従来の中間膜では、黄変を生じ難くすることと、中間膜と合わせガラス部材との接着力を高めることとの双方の効果を発揮することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、黄変を生じ難くすることができ、かつ中間膜と合わせガラス部材との接着力を高めることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、下記式(X)で表される紫外線吸収剤と、金属塩とを含む、合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)が提供される。
【0009】
【化1】
【0010】
前記式(X)中、Rは、任意の基を表し、R~Rはそれぞれ、水素原子、水素原子以外の原子、又は任意の基を表す。
【0011】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む層を備える。
【0012】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記式(X)中、Rが、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基である。
【0013】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記紫外線吸収剤の分子量が、355以上である。
【0014】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記紫外線吸収剤が、下記式(X11)、下記式(X12)又は下記式(X13)で表される紫外線吸収剤を含む。
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記金属塩が、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む。
【0019】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記金属塩が、分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩を含む。
【0020】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記金属塩が、分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩以外の金属塩であって、炭素数が2以上8以下である有機酸の金属塩を含む。
【0021】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、第1の層と、前記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層とを備える。
【0022】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層が、中間膜の表面層であり、前記第2の層が、前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む。
【0023】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置された第3の層を備える。
【0024】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第3の層が、中間膜の表面層であり、前記第3の層が、前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む。
【0025】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む層を備え、前記紫外線吸収剤と前記金属塩とを含む層において、前記金属塩に含まれている金属の含有量の、前記紫外線吸収剤の含有量に対する重量比が、4以上50以下である。
【0026】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率の最大値が、0.1%以下である。
【0027】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜の紫外線透過率Tuvが、0.5%以下である。
【0028】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜の波長400nmにおける透過率が、1.5%以上である。
【0029】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜のイエローインデックスYIと、金属塩を含まないこと以外は該中間膜と同一の層構成及び厚みを有する比較用中間膜のイエローインデックスYIとの差の絶対値が、0.1以下である。
【0030】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラスが提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、式(X)で表される紫外線吸収剤と、金属塩とを含む。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、黄変を生じ難くすることができ、かつ中間膜と合わせガラス部材との接着力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0034】
(合わせガラス用中間膜)
本発明に係る合わせガラス用中間膜(本明細書において、「中間膜」と略記することがある)は、合わせガラスに用いられる。
【0035】
本発明に係る中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、2層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよく、3層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、第1の層のみを備えていてもよい。本発明に係る中間膜は、第1の層と、上記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層とを備えていてもよい。本発明に係る中間膜は、第1の層と、上記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層と、上記第1の層の該第1の表面とは反対の第2の表面側に配置された第3の層とを備えていてもよい。本発明に係る中間膜は、単層の中間膜であってもよく、多層の中間膜であってもよい。本発明に係る中間膜の構造は、部分的に異なっていてもよい。例えば、本発明に係る中間膜は、1層の構造を有する部分と、多層の構造を有する部分とを有していてもよい。
【0036】
本発明に係る中間膜は、下記式(X)で表される紫外線吸収剤(本明細書において、「紫外線吸収剤(X)」と略記することがある)と、金属塩とを含む。したがって、本発明に係る中間膜は、紫外線吸収剤(X)と、金属塩とを含む。
【0037】
【化5】
【0038】
上記式(X)中、Rは、任意の基を表し、R~Rはそれぞれ、水素原子、水素原子以外の原子、又は任意の基を表す。
【0039】
従来のベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤と金属塩との組み合わせでは、中間膜に黄変が生じることがある。また、ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤として、ベンゼン環に水酸基が直接結合した骨格(フェノール骨格)を有する紫外線吸収剤が用いられることがある。本発明者らは、中間膜に黄変が生じることの原因が、ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤の上記水酸基と金属塩とが反応するためであることを見出した。なお、金属塩の含有量を少なくすれば、黄変をある程度抑えることができるものの、中間膜と合わせガラス部材との接着力が低下する。
【0040】
これに対して、本発明に係る中間膜では、ベンゾトリアゾール骨格の特定の位置(式(X)中、Rの位置)に任意の基を有する紫外線吸収剤(X)が用いられているので、ベンゼン環に直接結合した水酸基と金属塩との反応性を低下させることができる。そのため、中間膜に黄変を生じ難くすることができる。さらに、本発明に係る中間膜では、金属塩が用いられているので、合わせガラスにおいて、中間膜と合わせガラス部材との接着力を高めることができる。
【0041】
すなわち、本発明に係る中間膜では、ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤及び金属塩が含まれているにもかかわらず、黄変を生じ難くすることができ、かつ中間膜と合わせガラス部材との接着力を高めることができる。
【0042】
また、本発明に係る中間膜では、該中間膜が2層以上の構造を有する場合に、中間膜における各層間の接着力を高めることもできる。
【0043】
上記中間膜は、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層を備えることが好ましい。上記中間膜が1層の構造を備える単層の中間膜である場合に、該中間膜は、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む第1の層のみを備える。上記中間膜が2層以上の構造を備える多層の中間膜である場合に、該中間膜は、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層を少なくとも1層備えることが好ましい。上記中間膜が2層以上の構造を備える多層の中間膜である場合に、中間膜の少なくとも一方の表面層が、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層であることがより好ましく、中間膜の2つの表面層が、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層であることが更に好ましい。上記中間膜が2層以上の構造を備える多層の中間膜である場合に、上記第2の層が中間膜の表面層であり、該第2の層が、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層であることがより好ましい。上記中間膜が3層以上の構造を備える多層の中間膜である場合に、上記第3の層が中間膜の表面層であり、該第3の層が、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層であることがより好ましい。上記中間膜が2層以上の構造を備える多層の中間膜である場合に、中間膜の全ての層が、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層であることが最も好ましい。
【0044】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0045】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。図1では、中間膜11の厚み方向の断面が示されている。
【0046】
図1に示す中間膜11は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。中間膜11は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11は、合わせガラス用中間膜である。中間膜11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。第1の層1の第1の表面1aに、第2の層2が配置されており、積層されている。第1の層1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第3の層3が配置されており、積層されている。第1の層1は中間層である。第2の層2及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜11は、第2の層2と第1の層1と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第2の層2/第1の層1/第3の層3)を有する。
【0047】
第1の層1は、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む。第2の層2は、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む。第3の層3は、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む。中間膜11では、中間膜11に備えられている各層が、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む。
【0048】
なお、第2の層2と第1の層1との間、及び、第1の層1と第3の層3との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。他の層として、ポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。第2の層2と第1の層1、及び、第1の層1と第3の層3とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。
【0049】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。図2では、中間膜11Aの厚み方向の断面が示されている。
【0050】
図2に示す中間膜11Aは、1層の構造を有する単層の中間膜である。中間膜11Aは、第1の層である。中間膜11Aは、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11Aは、合わせガラス用中間膜である。中間膜11Aは、紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む。
【0051】
以下、本発明に係る中間膜を構成する上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0052】
<式(X)で表される紫外線吸収剤(紫外線吸収剤(X))>
上記中間膜は、紫外線吸収剤(X)を含む。上記中間膜は、紫外線吸収剤(X)を含む層を備える。紫外線吸収剤(X)は、下記式(X)で表される紫外線吸収剤である。上記第1の層は、紫外線吸収剤(X)を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線吸収剤(X)を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線吸収剤(X)を含むことが好ましい。紫外線吸収剤(X)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記第1の層に含まれる紫外線吸収剤(X)と、上記第2の層に含まれる紫外線吸収剤(X)と、上記第3の層に含まれる紫外線吸収剤(X)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
【化6】
【0054】
上記式(X)中、Rは、任意の基を表し、R~Rはそれぞれ、水素原子、水素原子以外の原子、又は任意の基を表す。
【0055】
上記式(X)中、Rは、炭素数1以上の基であることが好ましく、炭素数3以上の基であることがより好ましく、炭素数20以下の基であることが好ましく、炭素数10以下の基であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収剤(X)におけるベンゼン環に直接結合した水酸基と金属塩との反応性をより一層低下させることができるので、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0056】
上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。上記式(X)中、Rは、プロピル基、下記式(R11)で表される基又は下記式(R12)で表される基であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収剤(X)におけるベンゼン環に直接結合した水酸基と金属塩との反応性を更により一層低下させることができるので、黄変を更により一層生じ難くすることができる。
【0057】
【化7】
【0058】
上記式(R11)中、*は、ベンゼン環を構成する炭素原子との結合位置を表す。
【0059】
【化8】
【0060】
上記式(R12)中、*は、ベンゼン環を構成する炭素原子との結合位置を表す。
【0061】
上記式(X)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。黄変をより一層生じ難くする観点からは、上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。紫外線吸収剤(X)の入手の容易性と黄変の抑制性とのバランスの観点からは、上記式(X)中、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0062】
上記式(X)中、Rは、炭素数1以上の基であることが好ましく、炭素数3以上の基であることがより好ましく、炭素数30以下の基であることが好ましく、炭素数20以下の基であることがより好ましく、炭素数10以下の基であることが更に好ましい。この場合には、紫外線吸収性能を高く維持しつつ、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0063】
上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。上記式(X)中、Rは、プロピル基、上記式(R11)で表される基又は上記式(R12)で表される基であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収剤(X)におけるベンゼン環に直接結合した水酸基と金属塩との反応性を更により一層低下させることができるので、黄変を更により一層生じ難くすることができる。
【0064】
上記式(X)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。黄変をより一層生じ難くする観点からは、上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。紫外線吸収剤(X)の入手の容易性と黄変の抑制性とのバランスの観点からは、上記式(X)中、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0065】
上記式(X)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。黄変をより一層生じ難くする観点からは、上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。紫外線吸収剤(X)の入手の容易性と黄変の抑制性とのバランスの観点からは、上記式(X)中、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0066】
上記式(X)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。黄変をより一層生じ難くする観点からは、上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。紫外線吸収剤(X)の入手の容易性と黄変の抑制性とのバランスの観点からは、上記式(X)中、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0067】
上記式(X)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。黄変をより一層生じ難くする観点からは、上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。紫外線吸収剤(X)の入手の容易性と黄変の抑制性とのバランスの観点からは、上記式(X)中、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0068】
上記式(X)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。黄変をより一層生じ難くする観点からは、上記式(X)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。紫外線吸収剤(X)の入手の容易性と黄変の抑制性とのバランスの観点からは、上記式(X)中、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0069】
紫外線吸収剤(X)は、下記式(X1)で表される紫外線吸収剤を含むことが好ましく、下記式(X1)で表される紫外線吸収剤であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収性能を高く維持しつつ、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0070】
【化9】
【0071】
上記式(X1)中、Rは、任意の基を表し、Rは、炭素数1以上の基を表し、Rは、水素原子、又はハロゲン原子を表す。
【0072】
上記式(X1)中、Rは、炭素数1以上の基であることが好ましく、炭素数3以上の基であることがより好ましく、炭素数20以下の基であることが好ましく、炭素数10以下の基であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収剤(X)におけるベンゼン環に直接結合した水酸基と金属塩との反応性をより一層低下させることができるので、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0073】
上記式(X1)中、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であることが好ましい。上記式(X1)中、Rは、プロピル基、上記式(R11)で表される基又は上記式(R12)で表される基であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収剤(X)におけるベンゼン環に直接結合した水酸基と金属塩との反応性を更により一層低下させることができるので、黄変を更により一層生じ難くすることができる。
【0074】
上記式(X1)中、Rは、炭素数1以上の基であることが好ましく、炭素数30以下の基であることが好ましく、炭素数10以下の基であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収性能を高く維持しつつ、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0075】
上記式(X1)中、Rは、水素原子、又は塩素原子であることが好ましい。この場合には、紫外線吸収性能を高く維持しつつ、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0076】
紫外線吸収剤(X)は、下記式(X11)、下記式(X12)又は下記式(X13)で表される紫外線吸収剤を含むことが好ましく、下記式(X11)、下記式(X12)又は下記式(X13)で表される紫外線吸収剤であることがより好ましい。この場合には、紫外線吸収性能を高く維持しつつ、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0077】
【化10】
【0078】
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
紫外線吸収剤(X)の分子量は、好ましくは350以上、より好ましくは355以上、更に好ましくは380以上、好ましくは600以下、より好ましくは500以下である。紫外線吸収剤(X)の分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、紫外線吸収性能を高く維持しつつ、黄変をより一層生じ難くすることができる。
【0081】
紫外線吸収剤(X)の市販品としては、BASF社製「Tinuvin234」及び「Tinuvin640」、Rianlon社製「RIASORB UV-234」及び「RIASORB UV-928」、Everlight Chemical社製「Eversorb 88」及び「Eversorb 89」、共同薬品社製「Viosorb234」、Songwon社製「SONGSORB 2340」及び「SONGSORB 9280」、Eutec社製「Eusorb UV-234」、Chitec社製「CHIGUARD 234」及び「CHIGUARD 5228」等が挙げられる。
【0082】
紫外線吸収剤(X)を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、紫外線吸収剤(X)の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.4重量%以上であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは6重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは4重量%以下である。紫外線吸収剤(X)の含有量が上記下限以上であると、中間膜の紫外線透過率Tuvをより一層低くすることができ、また、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率の低下をより一層抑えることができる。特に、紫外線吸収剤(X)を含む層100重量%中、紫外線吸収剤(X)の含有量が0.1重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。紫外線吸収剤(X)の含有量が上記上限以下であると、紫外線吸収剤(X)を含む層中での紫外線吸収剤(X)の分散性をより一層高めることができる。
【0083】
上記中間膜100重量%中、紫外線吸収剤(X)の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.4重量%以上であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは6重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは4重量%以下である。紫外線吸収剤(X)の含有量が上記下限以上であると、中間膜の紫外線透過率Tuvをより一層低くすることができ、また、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率の低下をより一層抑えることができる。特に、上記中間膜100重量%中、紫外線吸収剤(X)の含有量が0.1重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。紫外線吸収剤(X)の含有量が上記上限以下であると、上記中間膜中での紫外線吸収剤(X)の分散性をより一層高めることができる。
【0084】
紫外線吸収剤(X)を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、該紫外線吸収剤(X)を含む層中の紫外線吸収剤(X)の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、更に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは3重量部以下、より好ましくは2.5重量部以下、更に好ましくは2重量部以下である。紫外線吸収剤(X)の含有量が上記下限以上であると、中間膜の紫外線透過率Tuvをより一層低くすることができ、また、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率の低下をより一層抑えることができる。紫外線吸収剤(X)の含有量が上記上限以下であると、紫外線吸収剤(X)を含む層中での紫外線吸収剤(X)の分散性をより一層高めることができる。
【0085】
(金属塩)
上記中間膜は、金属塩を含む。上記中間膜は、金属塩を含む層を備える。上記第1の層は、上記金属塩を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩を含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、上記金属塩を含むことが好ましい。上記金属塩の使用により、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記第1の層に含まれる金属塩と、上記第2の層に含まれる金属塩と、上記第3の層に含まれる金属塩とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
上記金属塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含むことが好ましい。この場合には、中間膜と合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。
【0087】
なお、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaの6種の金属を意味する。
【0088】
上記金属塩は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0089】
上記金属塩は、分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩(P)を含むことが好ましい。この場合には、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。
【0090】
上記分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩(P)は、分岐構造を有するカルボン酸のマグネシウム塩であることが好ましい。この場合には、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することがより一層容易になる。
【0091】
上記金属塩は、分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩以外の金属塩であって、炭素数が2以上8以下である有機酸の金属塩(Q)を含むことが好ましい。上記炭素数が2以上8以下である有機酸の金属塩(Q)は、上記分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩(P)とは異なる。この場合にも、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することがより一層容易になる。
【0092】
上記炭素数が2以上8以下である有機酸の金属塩(Q)は、上記炭素数が2以上8以下である有機酸のマグネシウム塩又はカリウム塩であることが好ましい。この場合には、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが更により一層容易になる。
【0093】
なお、上記金属塩は、上記分岐構造を有する有機酸のマグネシウム塩(P)と、上記炭素数が2以上8以下である有機酸の金属塩(Q)とを含むことも好ましい。
【0094】
また、上記金属塩として、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩、及び炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩を用いることができる。上記金属塩は、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩、又は、炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩を含んでいてもよい。
【0095】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0096】
紫外線吸収剤(X)と金属塩とを含む層において、上記金属塩に含まれている金属の含有量の、上記紫外線吸収剤(X)の含有量に対する重量比(金属塩に含まれている金属の含有量/紫外線吸収剤(X)の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは4以上、特に好ましくは5以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは35以下である。上記重量比(金属塩に含まれている金属の含有量/紫外線吸収剤(X)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0097】
上記金属塩を含む中間膜、又は上記金属塩を含む層(第1の層、第2の層、第3の層又は紫外線吸収剤(X)を含む層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上であり、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜と合わせガラス部材(ガラス板等)との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0098】
(熱可塑性樹脂)
中間膜は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。中間膜は、熱可塑性樹脂(0)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、熱可塑性樹脂(4)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂(1)と上記熱可塑性樹脂(2)と上記熱可塑性樹脂(3)と上記熱可塑性樹脂(4)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記熱可塑性樹脂(1)は、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と上記ポリビニルアセタール樹脂(4)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(0)、上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)、上記熱可塑性樹脂(3)及び上記熱可塑性樹脂(4)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(0)、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0100】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70モル%~99.9モル%の範囲内である。
【0101】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上であり、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0102】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0103】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は4又は5であってもよい。
【0104】
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。上記アルデヒドは、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドであることが好ましく、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドであることがより好ましく、n-ブチルアルデヒドであることが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上であり、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0106】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは22モル%以上であり、好ましくは28モル%以下、より好ましくは27モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が20モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また28モル%以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0107】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合の上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率の好ましい範囲は、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率の好ましい範囲と同じである。
【0108】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31.5モル%以上、更に好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは38モル%以下、より好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36.5モル%以下、特に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0109】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合の上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率の好ましい範囲は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率の好ましい範囲と同じである。
【0110】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値を絶対値Aとし、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値を絶対値Bとする。遮音性を更に一層高める観点からは、絶対値A及び絶対値Bはそれぞれ、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。絶対値A及び絶対値Bはそれぞれ、好ましくは20モル%以下である。
【0111】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合に、遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合に、遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値を絶対値Cとし、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値を絶対値Dとする。遮音性を更に一層高める観点からは、絶対値C及び絶対値Dはそれぞれ、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。絶対値C及び絶対値Dはそれぞれ、好ましくは20モル%以下である。
【0112】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合に、遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合に、遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
【0113】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0114】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0115】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、より一層好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上25モル%以下であると、耐貫通性に優れる。
【0116】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合の上記ポリビニルアセタール樹脂(4)のアセチル化度の好ましい範囲は、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度の好ましい範囲と同じである。
【0117】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上であり、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0118】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合の上記ポリビニルアセタール樹脂(4)のアセチル化度の好ましい範囲は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)のアセチル化度の好ましい範囲と同じである。
【0119】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0120】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上であり、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0121】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0122】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合の上記ポリビニルアセタール樹脂(4)のアセタール化度の好ましい範囲は、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度の好ましい範囲と同じである。
【0123】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0124】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合の上記ポリビニルアセタール樹脂(4)のアセタール化度の好ましい範囲は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)のアセタール化度の好ましい範囲と同じである。
【0125】
上記アセタール化度は、以下のようにして求める。先ず、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を求める。得られた値を、主鎖の全エチレン基量で除算してモル分率を求める。このモル分率を百分率で示した値がアセタール化度である。
【0126】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0127】
上記中間膜中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。上記中間膜中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは100重量%以下である。上記中間膜の熱可塑性樹脂の主成分(50重量%以上)は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0128】
上記第1の層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。上記第1の層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは100重量%以下である。上記第1の層の熱可塑性樹脂の主成分(50重量%以上)は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0129】
上記第2の層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。上記第2の層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは100重量%以下である。上記第2の層の熱可塑性樹脂の主成分(50重量%以上)は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0130】
上記第3の層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。上記第3の層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは100重量%以下である。上記第3の層の熱可塑性樹脂の主成分(50重量%以上)は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0131】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。上記紫外線吸収剤(X)を含む層中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは100重量%以下である。上記紫外線吸収剤(X)を含む層の熱可塑性樹脂の主成分(50重量%以上)は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0132】
(可塑剤)
中間膜の接着力をより一層高める観点からは、本発明に係る中間膜は、可塑剤(以下、可塑剤(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、可塑剤(以下、可塑剤(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。中間膜に含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、中間膜(各層)は、可塑剤を含むことが特に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂を含む層は、可塑剤を含むことが好ましい。
【0133】
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0134】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は有機エステル可塑剤であることが好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0135】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸、デシル酸及び安息香酸等が挙げられる。
【0136】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0137】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。上記有機エステル可塑剤として、これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。また、アジピン酸エステルとして、上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0138】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0139】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0140】
【化13】
【0141】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基であることが好ましく、炭素数6~10の有機基であることがより好ましい。
【0142】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートを含むことが好ましい。上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)を含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を含むことが更に好ましい。
【0143】
上記中間膜における上記熱可塑性樹脂(0)100重量部に対する上記可塑剤(0)の含有量を、含有量(0)とする。上記含有量(0)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは25重量部以上、更に好ましくは30重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。上記含有量(0)が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記含有量(0)が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0144】
上記第1の層において、上記熱可塑性樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量を、含有量(1)とする。上記含有量(1)は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上である。上記含有量(1)は、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは85重量部以下、特に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0145】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合に、上記紫外線吸収剤(X)を含む層において、上記熱可塑性樹脂(4)100重量部に対する上記可塑剤(4)の含有量(以下、含有量(4)と記載することがある)の好ましい範囲は、含有量(1)の好ましい範囲と同じである。
【0146】
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量を、含有量(2)とする。上記第3の層において、上記熱可塑性樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量を、含有量(3)とする。上記含有量(2)及び上記含有量(3)はそれぞれ、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、より一層好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、特に好ましくは24重量部以上、最も好ましくは25重量部以上である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)はそれぞれ、好ましくは45重量部以下、より好ましくは40重量部以下、更に好ましくは35重量部以下、特に好ましくは32重量部以下、最も好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0147】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合に、上記紫外線吸収剤(X)を含む層において、上記熱可塑性樹脂(4)100重量部に対する上記可塑剤(4)の含有量(以下、含有量(4)と記載することがある)の好ましい範囲は、上記含有量(2)及び上記含有量(3)の好ましい範囲と同じである。
【0148】
合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0149】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合に、合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(4)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(4)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0150】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合に、合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(4)よりも多いことが好ましい。
【0151】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0152】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層ではない場合に、合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(4)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(4)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(4)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(4)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0153】
上記紫外線吸収剤(X)を含む層が中間膜の表面層である場合に、合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(4)と上記含有量(1)との差の絶対値は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(4)と上記含有量(1)との差の絶対値は、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0154】
(遮熱性物質)
上記中間膜は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記遮熱性物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0155】
上記遮熱性物質は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記遮熱性物質は、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
【0156】
成分X:
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性物質である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0157】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0158】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0159】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0160】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0161】
上記中間膜100重量%中又は上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層、第3の層又は紫外線吸収剤(X)を含む層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層、第3の層又は紫外線吸収剤(X)を含む層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0162】
遮熱粒子:
上記中間膜は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性物質である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0163】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0164】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0165】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0166】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0167】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0168】
上記遮熱粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上であり、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0169】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0170】
上記中間膜100重量%中又は上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層、第3の層又は紫外線吸収剤(X)を含む層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量(特に酸化タングステン粒子の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層、第3の層又は紫外線吸収剤(X)を含む層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量(特に酸化タングステン粒子の含有量)は、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0171】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記紫外線吸収剤(X)を含む層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0172】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0173】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0174】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0175】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0176】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H-BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0177】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記中間膜100重量%中又は酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層、第3の層又は紫外線吸収剤(X)を含む層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.03重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記中間膜100重量%中又は上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0178】
(他の成分)
上記中間膜、上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記紫外線吸収剤(X)を含む層はそれぞれ、必要に応じて、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、紫外線吸収剤(X)以外の紫外線吸収剤、着色剤(顔料及び染料等)、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等が挙げられる。これらの他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0179】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
上記中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率の最大値は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.09%以下、更に好ましくは0.08%以下である。上記透過率の最大値が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。なお、上記中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率の最大値は、0%以上であってもよい。
【0180】
上記中間膜の波長400nmにおける透過率は、好ましくは1.5%以上、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。上記透過率が上記下限以上であると、可視光線透過率をより一層高めることができる。
【0181】
上記中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率、及び波長400nmにおける透過率は、以下のようにして測定することができる。上記中間膜を、JIS R3202:1996に準拠した厚み2.5mmのクリアガラス2枚の間に配置して合わせガラスAを得る。得られた合わせガラスAの波長300nm以上350nm以下における透過率、及び波長400nmにおける透過率を測定する。合わせガラスAにおける波長300nm以上350nm以下における透過率、及び波長400nmにおける透過率をそれぞれ、上記中間膜における波長300nm以上350nm以下における透過率、及び波長400nmにおける透過率と定義する。上記透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製「U-4150」)を用いて、JIS R3211:1998に準拠して測定することができる。
【0182】
上記中間膜の紫外線透過率Tuvは、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下、更に好ましくは0.1%以下である。上記紫外線透過率Tuvが上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。なお、上記中間膜の紫外線透過率Tuvは、0%以上であってもよい。
【0183】
上記中間膜の紫外線透過率Tuvは、以下のようにして測定することができる。上記中間膜を、JIS R3202:1996に準拠した厚み2.5mmのクリアガラス2枚の間に配置して合わせガラスAを得る。得られた合わせガラスAの波長300nm以上400nm以下における透過率を測定する。合わせガラスAの波長300nm以上400nm以下における透過率から、ISO9050に準拠した方法で算出した値を、上記中間膜の紫外線透過率Tuvと定義する。上記紫外線透過率Tuvは、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製「U-4150」)を用いて、JIS R3211:1998に準拠して測定することができる。
【0184】
上記中間膜のイエローインデックスYIと、金属塩を含まないこと以外は該中間膜と同一の層構成及び厚みを有する比較用中間膜のイエローインデックスYIとの差の絶対値(ΔYIの絶対値)を求める。上記差の絶対値(ΔYIの絶対値)は、紫外線吸収剤と金属塩との反応性の指標となる。上記差の絶対値(ΔYIの絶対値)は、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.08以下、更に好ましくは0.05以下である。上記差の絶対値(ΔYIの絶対値)が上記上限以下であると、金属塩の添加量の変動によって中間膜の色味の変化が生じ難く、接着力の調整を容易に行うことができる。
【0185】
上記中間膜のイエローインデックスYIは、全光線透過率から算出されるイエローインデックスである。上記中間膜におけるイエローインデックスは、以下のようにして測定することができる。上記中間膜を、JIS R3202:1996に準拠した厚み2.5mmのクリアガラス2枚の間に配置して合わせガラスAを得る。得られた合わせガラスAの全光線透過率を測定する。合わせガラスAの全光線透過率から、JIS K7373に準拠して、合わせガラスAのイエローインデックスYIを算出する。合わせガラスAのイエローインデックスYIを、上記中間膜のイエローインデックスYIと定義する。なお、上記比較用中間膜のイエローインデックスYIも同様にして求められる。
【0186】
なお、合わせガラスAの全光線透過率は以下のようにして測定される。
【0187】
分光光度計を用いて、透過した光が積分球へ受光するように、光源と積分球との光路上で光軸の法線に平行に、かつ積分球に接する位置に、上記合わせガラスAを設置する。上記全光線透過率は、この状態で測定された分光透過率から算出された可視光線透過率を意味する。上記全光線透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製「U-4150」)を用いて測定することができる。
【0188】
合わせガラスAの作製方法は特に限定されない。合わせガラスAの作製方法の一例を以下に示す。合わせガラスAは、中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率、波長400nmにおける透過率、紫外線透過率Tuv、及びイエローインデックスYIを測定するために作製される。
【0189】
JIS R3202:1996に準拠した厚み2.5mmのクリアガラス2枚の間に中間膜を挟み、積層体を得る。得られた積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着する。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスAを得る。
【0190】
なお、本発明に係る中間膜を用いて、合わせガラス製品を得る際に、JIS R3202:1996に準拠した厚み2.5mmのクリアガラスを用いてもよく、JIS R3202:1996に準拠した厚み2.5mmのクリアガラス以外のクリアガラスを用いてもよく、クリアガラス以外の合わせガラス部材を用いてもよい。
【0191】
上記中間膜は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有する。上記一端と上記他端とは、中間膜において対向し合う両側の端部である。
【0192】
上記中間膜は、上記一端の厚みと上記他端の厚みとが同じである中間膜であってもよく、上記他端の厚みが上記一端の厚みよりも大きい中間膜であってもよい。上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0193】
上記中間膜の最大厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.8mm以上であり、好ましくは3.8mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。
【0194】
実用面の観点、及び接着力及び耐貫通性を充分に高める観点からは、上記中間膜の表面層の最大厚みは、好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。
【0195】
実用面の観点、及び耐貫通性を充分に高める観点からは、2つの表面層の間に配置される層(中間層)の最大厚みは、好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.2mm以上であり、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下、更に好ましくは0.3mm以下である。
【0196】
上記中間膜の一端と他端との距離は、好ましくは3.0m以下、より好ましくは2.0m以下、特に好ましくは1.5m以下であり、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1.0m以上である。
【0197】
中間膜は、巻かれて、中間膜のロール体とされてもよい。ロール体は、巻き芯と、該巻き芯の外周に巻かれた中間膜とを備えていてもよい。
【0198】
上記中間膜の製造方法は特に限定されない。上記中間膜の製造方法としては、単層の中間膜の場合に、樹脂組成物を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。上記中間膜の製造方法としては、多層の中間膜の場合に、例えば、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、得られた各層を積層する方法が挙げられる。さらに、上記中間膜の製造方法としては、各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0199】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0200】
上記中間膜は、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記中間膜は、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法(メルトフラクチャー法)、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。
【0201】
(合わせガラス)
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記中間膜が配置されている。
【0202】
図3は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0203】
図3に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11とを備える。中間膜11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0204】
中間膜11の第1の表面に、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11の第1の表面とは反対の第2の表面に、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第2の層2の外側の表面に第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面に第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0205】
図4は、図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0206】
図4に示す合わせガラス31Aは、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11Aとを備える。中間膜11Aは、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0207】
中間膜11Aの第1の表面に、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11Aの第1の表面とは反対の第2の表面に、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0208】
上記合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイであってもよい。上記合わせガラスがヘッドアップディスプレイである場合には、該合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイの表示領域を有する。上記表示領域は、情報を良好に表示させることができる領域である。
【0209】
上記ヘッドアップディスプレイを用いて、ヘッドアップディスプレイシステムを得ることができる。ヘッドアップディスプレイシステムは、上記合わせガラスと、画像表示用の光を合わせガラスに照射するための光源装置とを備える。上記光源装置は、例えば、車両において、ダッシュボードに取り付けることができる。上記光源装置から、上記合わせガラスの上記表示領域に光を照射することで、画像表示を行うことができる。
【0210】
上記第1の合わせガラス部材は、第1のガラス板であることが好ましい。上記第2の合わせガラス部材は、第2のガラス板であることが好ましい。
【0211】
上記第1,第2の合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスは、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方として、ガラス板を備えることが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
【0212】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代わる合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0213】
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の各厚みは、好ましくは1mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上であり、好ましくは0.5mm以下である。
【0214】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。先ず、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、積層体を得る。次に、例えば、得られた積層体を押圧ロールに通したり又はゴムバックに入れて減圧吸引したりすることにより、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70℃~110℃で予備接着して予備圧着された積層体を得る。次に、予備圧着された積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120℃~150℃及び1MPa~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0215】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築物用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス又はバックライト用ガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記中間膜は、自動車の合わせガラスを得るために好適に用いられる。
【0216】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0217】
用いたポリビニルアセタール樹脂では、アセタール化に、炭素数4のn-ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0218】
以下の材料を用意した。
【0219】
(熱可塑性樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度1700、水酸基の含有率30モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)69モル%)
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度3000、水酸基の含有率22モル%、アセチル化度13モル%、アセタール化度(ブチラール化度)65モル%)
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)68.5モル%)
【0220】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
【0221】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤(X):
上記式(X11)で表される紫外線吸収剤(BASF社製「Tinuvin234」) 上記式(X12)で表される紫外線吸収剤(BASF社製「Tinuvin640」) 上記式(X13)で表される紫外線吸収剤(Everlight Chemical社製「Eversorb88」)
【0222】
紫外線吸収剤(X)に相当しない紫外線吸収剤:
2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin329」)
2-(5-tert-ブチル-2ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinPS」)
2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成社製「SEESORB106」、ベンゾトリアゾール骨格を有さずかつベンゾフェノン骨格を有する紫外線吸収剤)
【0223】
(金属塩)
金属塩1:2-エチル酪酸マグネシウムと酢酸マグネシウムとの50:50(重量比)混合物
金属塩2:酢酸カリウム
【0224】
(酸化防止剤)
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0225】
(実施例1)
中間膜を形成するための組成物の作製:
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、中間膜を形成するための組成物を得た。
【0226】
ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、水酸基の含有率30モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)69モル%):100重量部
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO):40重量部
上記式(X12)で表される紫外線吸収剤:0.4重量部
マグネシウム量が0.038重量部となる量の金属塩1(得られる中間膜中でマグネシウム量が60ppmとなる量の金属塩1)
得られる中間膜中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(BHT)
【0227】
中間膜の作製:
中間膜を形成するための組成物を、押出機を用いて押出しすることにより、第1の層のみを備える単層の中間膜(厚み760μm)を作製した。
【0228】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜を、JIS R3202:1996に準拠した厚み2.5mmのクリアガラス(縦300mm×横300mm)2枚の間に挟み、積層体を得た。得られた積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスを得た。得られた合わせガラスは、上述した合わせガラスAに相当する。
【0229】
(実施例2~4、参考例5、実施例6及び比較例1~9)
紫外線吸収剤の種類及びその含有量、並びに、金属塩の種類及びその含有量を表2~4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、単層の中間膜(厚み760μm)を作製した。なお、酸化防止剤は、実施例1と同一の種類及び配合量で用いた。
【0230】
(実施例7)
第1の層を形成するための樹脂組成物の作製:
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための樹脂組成物を得た。
【0231】
ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度3000、水酸基の含有率22モル%、アセチル化度13モル%、アセタール化度65モル%):100重量部
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO):40重量部
上記式(X12)で表される紫外線吸収剤:0.4重量部
マグネシウム量が0.038重量部となる量の金属塩1(得られる第1の層中でマグネシウム量が60ppmとなる量の金属塩1)
得られる第1の層中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(BHT)
【0232】
第2の層及び第3の層を形成するための樹脂組成物の作製:
下記の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、第2の層及び第3の層を形成するための樹脂組成物を得た。
【0233】
ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度68.5モル%):100重量部
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO):40重量部
上記式(X12)で表される紫外線吸収剤:0.4重量部
マグネシウム量が0.038重量部となる量の金属塩1(得られる第2,第3の層中でマグネシウム量が60ppmとなる量の金属塩1)
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(BHT)
【0234】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための樹脂組成物と、第2,第3の層を形成するための樹脂組成物とを、共押出機を用いて共押出することにより、3層の構造(第2の層/第1の層/第3の層)を有する中間膜(厚み760μm)を得た。
【0235】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。得られた合わせガラスは、上述した合わせガラスAに相当する。
【0236】
参考例8及び実施例9)
紫外線吸収剤の種類及びその含有量、並びに、金属塩の種類及びその含有量を表5に示すように変更したこと以外は、実施例7と同様にして、3層の構造(第2の層/第1の層/第3の層)を有する中間膜(厚み760μm)を作製した。なお、酸化防止剤は、実施例7と同一の種類及び配合量で用いた。
【0237】
(評価)
(1)中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率の最大値
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4150」)を用いて、上述した方法により、得られた合わせガラス(合わせガラスA)の波長300nm以上350nm以下における透過率を測定することにより、中間膜の波長300nm以上350nm以下における透過率の最大値を求めた。
【0238】
(2)中間膜の波長400nmにおける透過率
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4150」)を用いて、上述した方法により、得られた合わせガラス(合わせガラスA)の波長400nmにおける透過率を測定することにより、中間膜の波長400nmにおける透過率を求めた。
【0239】
(3)中間膜の紫外線透過率Tuv
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4150」)を用いて、上述した方法により、得られた合わせガラス(合わせガラスA)の波長300nm以上400nm以下における透過率を測定することにより、中間膜の紫外線透過率Tuvを求めた。
【0240】
[中間膜の紫外線透過率Tuvの判定基準]
○:中間膜の紫外線透過率Tuvが0.5%以下
×:中間膜の紫外線透過率Tuvが0.5%を超える
【0241】
(4)中間膜のイエローインデックスYI
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4150」)を用いて、上述した方法により、得られた合わせガラス(合わせガラスA)の全光線透過率を測定することにより、中間膜のイエローインデックスYIを求めた。
【0242】
(5)紫外線吸収剤と金属塩との反応性(ΔYIの絶対値)
同一の種類の紫外線吸収剤が含まれる中間膜同士で、金属塩の有無による中間膜のイエローインデックスYIの変化量(ΔYI)を求めた。すなわち、ΔYIは、評価対象の中間膜のイエローインデックスYIから、基準となる中間膜(金属塩を含まない中間膜)のイエローインデックスYIを差し引いた値である。より具体的には、ΔYIは、下記式で求められる値である。評価対象の中間膜と、基準となる中間膜との組み合わせは以下の通りである。なお、ΔYIの絶対値が0に近いほど、紫外線吸収剤と金属塩との反応性が低く抑えられ、中間膜に黄変が生じ難くできていることを意味する。
【0243】
ΔYI=(評価対象の中間膜のYI)-(基準となる中間膜のYI)
【0244】
より具体的には、以下の通りである。
【0245】
ΔYI=(実施例1~4で得られた中間膜のYI)-(比較例1で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(参考例5で得られた中間膜のYI)-(比較例2で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(実施例6で得られた中間膜のYI)-(比較例3で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(実施例7で得られた中間膜のYI)-(比較例1で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(参考例8で得られた中間膜のYI)-(比較例2で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(実施例9で得られた中間膜のYI)-(比較例3で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(比較例4で得られた中間膜のYI)-(比較例5で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(比較例6で得られた中間膜のYI)-(比較例7で得られた中間膜のYI)
ΔYI=(比較例8で得られた中間膜のYI)-(比較例9で得られた中間膜のYI)
【0246】
[紫外線吸収剤と金属塩との反応性(ΔYIの絶対値)の判定基準]
○:ΔYIの絶対値が0.1以下
×:ΔYIの絶対値が0.1を超える
【0247】
(6)中間膜と合わせガラス部材との接着性(パンメル値の測定)
得られた合わせガラスを-18℃±0.6℃の温度の環境下に16時間静置し、静置後の合わせガラスの中央部(縦150mm×横150mmの部分)を頭部が0.45kgのハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕した。ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を測定し、下記表1によりパンメル値を求めた。なお、パンメル値とは、中間膜とガラス板との接着力の度合いを調べる値であり、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度(面積%)により規定した値であり、表1で定義される。得られたパンメル値が2~7の場合を「○」、それ以外の場合を「×」と評価した。
【0248】
【表1】
【0249】
中間膜の構成及び結果を下記の表2~5に示す。
【0250】
【表2】
【0251】
【表3】
【0252】
【表4】
【0253】
【表5】
【符号の説明】
【0254】
1…第1の層
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第2の層
3…第3の層
11,11A…中間膜
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31,31A…合わせガラス
【要約】
【課題】黄変を生じ難くすることができ、かつ中間膜と合わせガラス部材との接着力を高めることができる合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、下記式(X)で表される紫外線吸収剤と、金属塩とを含む。
【化1】

前記式(X)中、Rは、任意の基を表し、R~Rはそれぞれ、水素原子、水素原子以外の原子、又は任意の基を表す。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4