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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ラベルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
B41J15/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018213245
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020078904
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(72)【発明者】
【氏名】佐野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 晃治
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-130800(JP,A)
【文献】特開昭63-071063(JP,A)
【文献】特開昭62-152768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12- 29/24
B65H 29/32
B65H 20/00- 20/40
B41J 15/00- 15/24
B41J 11/00- 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙レスラベルの粘着面に接して回転する駆動ローラと、該駆動ローラに前記台紙レスラベルを押し付けて回転するアシストローラとでもって、ラベルロールから前記台紙レスラベルを引き出すようにした搬送機構であって、
前記アシストローラは、前記台紙レスラベルの縁からはみ出る粘着材を避けて前記台紙レスラベルを前記駆動ローラに押し付ける接触部を有していることを特徴とする搬送機構。
【請求項2】
前記駆動ローラは、前記台紙レスラベルの搬送方向と直交する方向の全幅に亘って接している請求項1に記載の搬送機構。
【請求項3】
前記アシストローラには、前記台紙レスラベルからはみ出る粘着材を接触させない周方向の溝が設けられている請求項1に記載の搬送機構。
【請求項4】
前記溝が、前記アシストローラの軸方向に沿って複数設けられている請求項3に記載の搬送機構。
【請求項5】
前記ラベルロールが装着される装着部と、前記装着部から台紙レスラベルを引き出す請求項1から4の何れかに記載の搬送機構と、前記搬送機構から送り出された台紙レスラベルに印字する印字部と、前記印字部の下流において、印字された台紙レスラベルを発行する発行部とを備えたラベルプリンタ。
【請求項6】
前記台紙レスラベルの搬送経路において、前記粘着材が接触する箇所には、非粘着コーティングが施されている請求項5に記載のラベルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルロールから引き出された台紙レスラベルを、駆動ローラとアシストローラとの間に挟んで引き出すアシストローラの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
台紙レスラベルは、粘着面を露出させたままロール状に巻かれるため、巻かれたロール端面から粘着材がはみ出ていることがある。このラベルロールから台紙レスラベルを引き出すときは、台紙レスラベルの粘着面に接して回転する駆動ローラと、印字面に接して回転するアシストローラとの間に挟んで引き出すが、このとき、駆動ローラの表面は、剥離性があるため、台紙レスラベルからはみ出た粘着材は、アシストローラに付着する。
【0003】
アシストローラに付着した粘着材は、駆動ローラに繰り返し押されることにより、アシストローラの端部に移動し、そこで回転軸に絡み付く。絡み付いた粘着材は、アシストローラの自由な回転を阻害するため、台紙レスラベルの正常な送り制御ができない問題がある。そのため、粘着材がはみ出たラベルロールを使用する場合は、アシストローラに付着した粘着材を除去する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-78839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題を解消するため、上記特許文献1に記載の発明では、図8に示すように、回転軸61と平行なローラ部62の外周面に小径部63とその小径部63より外側の鍔部64とで凹部65を形成し、その凹部65に粘着材を溜めて、粘着材が鍔部64を乗り越えて回転軸61まで移動しないようにした補助ローラ60が開示されている。
【0006】
この特許文献1に記載の発明は、台紙レスラベルを扱ったものではなく、ラベルから剥離された後の台紙に付着する糊が、台紙を巻き取る手前の補助ローラに付着してしまう問題を解決しようとするものである。したがって、ローラに付着する糊の問題を解決したいという点では、本発明と共通するが、特許文献1に記載の発明は、糊を補助ローラ60の凹部65に溜め、溜まった糊は、後から除去する構成であるから、糊を補助ローラ60に付着させたくないという要求を満足させるものではない。
【0007】
本発明は、特許文献1とは異なり、台紙レスラベルの縁からはみ出た粘着材がローラに付着する問題を解決せんとするもので、台紙レスラベルを、駆動ローラとアシストローラとの間に挟んで送り出す場合に、これらのローラに粘着材を付着させずに送り出すことのできる新たな搬送機構と、それを搭載したラベルプリンタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る搬送機構は、
台紙レスラベルの粘着面に接して回転する駆動ローラと、該駆動ローラに前記台紙レスラベルを押し付けて回転するアシストローラとでもって、ラベルロールから前記台紙レスラベルを引き出すようにした搬送機構であって、
前記アシストローラは、前記台紙レスラベルの縁からはみ出る粘着材を避けて前記台紙レスラベルを前記駆動ローラに押し付ける接触部を有していることを特徴とする。
【0009】
台紙レスラベルは、駆動ローラとアシストローラとに挟まれて、駆動ローラの回転によって送り出されるが、台紙レスラベルの粘着面に接して回転する駆動ローラは、例えばシリコーンゴム等の離形性に優れた素材で構成されているのに対し、印字面に接して回転するアシストローラは、例えば樹脂製のローラで構成されている。そのため、台紙レスラベルの縁からはみ出た粘着材は、駆動ローラには付着せずに、アシストローラに付着する。
【0010】
そこで、本発明では、アシストローラに、台紙レスラベルの縁からはみ出た粘着材を避けて台紙レスラベルを駆動ローラに押し付ける接触部を設けた構成としている。
具体的には、台紙レスラベルの縁に対応するアシストローラの外周に、周方向の溝を設けて、縁からはみ出た粘着材が、アシストローラに接触しないようにしている。これにより、縁からはみ出た粘着材は、アシストローラには付着せずに、台紙レスラベルの縁からはみ出たまま下流へ送り出される。
【0011】
また、この周方向の溝を設ける代わりに、アシストローラの端部を台紙レスラベルの縁より少し内側(印字面側)に配置する構成であっても良い。この場合も、はみ出た粘着材は、アシストローラには接触しないから、周方向の溝の場合と同様な効果を奏する。ただし、アシストローラの端部を台紙レスラベルの縁に近接させる場合は、台紙レスラベルの横幅(搬送方向と直交する方向の長さ)が変わると、それに応じてアシストローラの端部を幅方向に移動させるか、長さの異なるアシストローラと交換しなければならない。
【0012】
これに対し、溝を設ける場合は、アシストローラの軸方向にラベルのサイズに対応させた複数の溝を設けておけば、アシストローラを移動させたり、交換したりせずに、横幅の異なるラベルに対応させることができる。例えば横幅の大きいラベルの場合は、ラベルの縁を外側の溝に対応させて配置し、横幅の小さいラベルの場合は、ラベルの縁を内側の溝に対応させて配置すれば良い。
【0013】
また、台紙レスラベルをアシストローラの中央に位置決めするか、片側に寄せて位置決めするかによって、アシストローラに設ける溝の構成が異なる。すなわち、中央で位置決めする場合は、アシストローラの両サイドに複数の溝を面対称に設けることになるが、片側に寄せて位置決めする場合は、寄せる側のアシストローラの端部近くに一つの溝を設ける、あるいは、溝の代わりに、ローラ端部を直接ラベルの縁に臨ませても良い。
【0014】
また、溝のエッジから台紙レスラベルの縁までの距離、あるいは、アシストローラの端部を台紙レスラベルの縁に臨ませる場合の、アシストローラの端部から台紙レスラベルの縁までの距離は、概ね2~3mmであるのが好ましい。それは、駆動ローラが、例えば柔軟なシリコーンゴムで構成されているのに対し、アシストローラが、固い素材で構成されている場合は、台紙レスラベルの横幅よりも、アシストローラの接触部の長さの方が短すぎると、台紙レスラベルが駆動ローラに押し付けられたときに、台紙レスラベルの両端が接触部から浮き上がって、台紙レスラベルに皺や筋が生ずることがあるためである。ただし、こうした不具合は、アシストローラが台紙レスラベルを駆動ローラに押し付けるときの強さと、駆動ローラの凹み具合に関係するから、前記距離は、絶対的なものではない。
【0015】
一方、駆動ローラは、台紙レスラベルの搬送方向と直交する方向の全幅に亘って台紙レスラベルに接するように構成されている。これにより、駆動ローラは、台紙レスラベルの全幅に亘る粘着面に接して台紙レスラベルを均等に引っ張るから、送り出される台紙レスラベルが蛇行することはない。
【0016】
また、台紙レスラベルの縁から粘着材がはみ出るのは、主にラベルロールの製造工程に起因するが、ラベルメーカによっては、ラベルロールの片側のロール端面だけに粘着材がはみ出る場合と、両側のロール端面から粘着材がはみ出る場合とがある。そこで、粘着材のはみ出る側が特定されている場合は、アシストローラの、粘着材がはみ出る側の、台紙レスラベルの縁に対応する位置に溝を設けることができる。
【0017】
本発明に係るラベルプリンタは、前記ラベルロールが装着される装着部と、前記ラベルロールから台紙レスラベルを引き出す前記搬送機構と、その搬送機構から搬送されてくる台紙レスラベルに印字する印字部とを備えたラベルプリンタであって、前記印字部の下流には、印字された台紙レスラベルを発行する発行部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
これにより、ラベルロールから引き出された台紙レスラベルは、縁からはみ出た粘着材を保持したまま印字部に搬送されて印字され、さらに下流の発行部に搬送されて、所定の長さに切断されて、商品ラベルとして発行される。
【0019】
このようにして送り出される台紙レスラベルの縁には、はみ出た粘着材が付着しているから、本発明に係るラベルプリンタでは、台紙レスラベルが搬送される搬送経路の、特にはみ出た粘着材が接触する箇所に非粘着コーティングを施したことを特徴とする。
【0020】
具体的には、ラベルロールから駆動ローラまでの間に配置されるターンローラ部と、駆動ローラから印字部までの間に配置されるセンサ部と、印字部を出てラベルを発行する発行部の、それぞれのラベル接触箇所に、非粘着コーティングを施している。
【0021】
発行部には、例えば印字されたラベルをカッターに送り出すラベルガイド部と、台紙レスラベルを所定長さで切断する切断機構と、切断する際に、ラベルの切断される境界付近を押えるラベル押えと、切断されたラベルを保持する待機ローラとが設けられ、それらのラベル接触箇所に、非粘着コーティングが施されている、
【0022】
これにより、台紙レスラベルの縁からはみ出た粘着材は、商品ラベルとして貼付されるまでラベルプリンタには付着しないから、これまで清掃が必要であった粘着材の除去作業を皆無にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、台紙レスラベルの印字面に接して回転するアシストローラに、台紙レスラベルからはみ出た粘着材を避けて、台紙レスラベルを駆動ローラに押し付ける接触部を設けたから、アシストローラに粘着を付着させずに送り出すことのできる搬送機構を提供することができる。したがって、搬送機構から粘着材を除去する作業を無くすことができる。
【0024】
また、粘着材が付着しない搬送機構を台紙レスラベルのラベルプリンタに搭載するとともに、粘着材がはみでたラベルの搬送経路には、非粘着コーティングを施したから、ラベルプリンタから粘着材の除去作業を無くして、メンテナンス作業の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の搬送機構を搭載したラベルプリンタの一実施形態の要部斜視図。
図2図1の印字部を跳ね上げて、搬送機構を露出させた状態の要部斜視図。
図3図2の搬送機構の要部拡大斜視図。
図4図1ラベルプリンタを向かって左側から見た要部斜視図。
図5図1のラベルプリンタにおける台紙レスラベルの搬送経路の説明図。
図6】第1実施形態に係るアシストローラの拡大正面図。
図7】第2実施形態に係るアシストローラの拡大正面図。
図8】特許文献1に開示された補助ローラの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る搬送機構の一実施形態と、その搬送機構を搭載したラベルプリンタの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここに示す実施形態は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0027】
図1図5において、ラベルプリンタ1は、ラベルロールRRの装着部2と、装着部2のラベルロールRRから台紙レスラベルRを引き出す搬送機構3と、搬送機構3によって引き出された台紙レスラベルRに所定事項を印字する印字部4と、印字された台紙ラベルRを発行する図5の発行部5とを備えている。
【0028】
ラベルプリンタ1は、図示しない筐体内に収納され、印字部4の下流に配置される図5の切断機構50を側方へ退避させれば、ラベルプリンタ1が前方へ引き出すことができるようになっている。そのため、図示しない筐体内に固定された、左右の上部レール10には、ラベルプリンタ1を支持する支持フレーム11が、矢印で示す前後方向にスライド可能に取り付けられている。また、支持フレーム11の上部前面には、取手12が取り付けられ、その取手12を前方へ引けば、支持フレーム11を介してラベルプリンタ1全体が筐体から前方へ引き出せるようになっている。
なお、ここでの前後方向は、図1に示すように、上部レール10に沿う方向であり、それと直交する方向を左右方向としている。
【0029】
図示しない筐体から引き出されたラベルプリンタ1は、装着部2より後側の背面板11aまで露出するため、露出した装着部2の側面(左右方向)からラベルロールRRが装着できるようになっている。
【0030】
ラベルロールRRの装着は、右サイドのガイドプレート20を、下部の回転軸21を中心として前方へ回動させて、紙管ホルダー22の右サイドを開放してから、ラベルロールRRの紙管23を紙管ホルダー22に挿入すれば、装着部2にラベルロールRRが装着できるようになっている。また、起こしたガイドプレート20を、回転軸21周りに後方へ回して元の位置に戻せば、ガイドプレート20に形成された下向きU字状の図示しない切欠きが、紙管ホルダー22を支持するシャフト24と係合して、ラベルロールRRの開放側端面がガイドプレート20で規制されるようになっている。
【0031】
紙管ホルダー22は、シャフト24の周りに対向配置された4個の支持板25と、各支持板25の間に設けられて、紙管23を外側に向けて広げる4枚の板バネ26とで構成されている。また、装着されたラベルロールRRの左サイドには、ラベルロールRRに左側を規制する水平ロッド27が取り付け位置調整可能に固定されている。また、その水平ロッド27とガイドプレート20を左右方向に移動させて固定すれば、ラベルロールRRの両側ロール端面が規制されて、所定位置で位置決めできるようになっている。また、その位置を変更するときは、ガイドプレート20の回転軸21を固定している右側プレート28を外して、回転軸21に複数個挿入されたワッシャ・カラー29を増減すれば、ガイドプレート20の取り付け位置が左右方向(軸方向)へ移動できるようになっている。
【0032】
ラベルロールRRは、台紙レスラベルRの粘着面を内側に、印字面を外側にしてロール状に巻かれており、そこから引き出された台紙レスラベルRは、図5に示すように、印字面側がターンローラTRに沿い、粘着面側が下向きになって、搬送機構3へ送り込まれるようになっている。
【0033】
ターンローラTRは、拡大した図3に示すように、ガイドプレート20を支持する回転軸21の下部に配置され、その回転軸21を中心として所定の回転角度だけ前後方向に揺動する左右のプレート28a、28b間に取り付けられている。具体的には、ターンローラTRを回転自在に支持する支持軸S1が、左右のプレート28a、28b間に取り付けられ、それらのプレート28a、28bが、ターンローラTR上方の回転軸21を中心として所定の回転角度だけ前後方向に回動するようになっている。また、向かって左側のプレート28bには、該プレート28bを後方へ回動させる図示しないコイルバネが取り付けられ、台紙レスラベルRが弛んだときに、コイルバネによってターンローラTRが後方に移動するようになっている。これにより、バックフィードされた台紙レスラベルRの弛みが、解消されるようになっている。また、ターンローラTRの両サイドには、軸方向(左右方向)に取付位置が変更可能なガイドリングGRが取り付けられている。
【0034】
搬送機構3は、図2図3に示すように、台紙レスラベルRの粘着面に接して回転する駆動ローラDRと、駆動ローラDRに台紙レスラベルRを押し付けて回転するアシストローラARとを備え、これらのローラの間に台紙レスラベルRを挟んだ状態で駆動ローラDRの回転でもって台紙レスラベルRが、ラベルロールRRから強制的に引き出されるようになっている。なお、図1では、印字ヘッド部40が閉じた状態を示し、図2では、印字ヘッド部40が開放され、アシストローラARが台紙レスラベルRを駆動ローラDRに押し付けている状態を示し、図3では、印字ヘッド部40が開放されたことによって、アシストローラARが駆動ローラDRから離れた状態を示している。この切り替えについては、後述する。
【0035】
駆動ローラDRは、剥離性に優れたシリコーンゴムで構成され、その駆動軸S2が、図2図3のモータMの回転軸と噛み合って回転するようになっている。そのため、駆動ローラDRの回転軸S2の左側端部には、図3図4に示すギアGが取り付けられ、そのギアGがモータMの回転軸に取り付けられたギアG0に噛み合って回転するようになっている。また、モータMは、図示しない筐体に固定されているが、駆動ローラDRは、ラベルプリンタ1の支持フレーム11に取り付けられて、ラベルプリンタ1が前方へ引き出されると、駆動ローラDRの駆動軸S2のギアGがモータMの回転軸のギアG0から離れるようになっている。また、前方へ引き出したラベルプリンタ1を後方へ戻すと、駆動ローラDRのギアGがモータMのギアG0に噛み合うようになっている。
【0036】
アシストローラARは、合成樹脂製のローラで構成され、図3図6に示すように、台紙レスラベルRを駆動ローラDRに押し付ける円柱状の接触部30と、その両サイドに位置して、台紙レスラベルRの縁からはみ出る粘着材を逃がす溝31とが設けられている。なお、合成樹脂に代えて、ゴム製のローラで構成しても良い。
【0037】
左右の溝31は、台紙レスラベルRの横幅Wに対応させている。具体的には、図6に示す内側左右の溝31aは、ラベルの横幅W1が、例えば44mmの台紙レスラベルRの縁Eに対応する位置に設けられ、外側の左右の溝31bは、ラベルの横幅W2が、例えば60mmの台紙レスラベルRの縁Eに対応する位置に設けられている。そのため、横幅W1が44mmの台紙レスラベルRが装着されると、内側の左右の溝31aが、台紙レスラベルRの左右の縁Eに被さり、横幅W2が60mmの台紙レスラベルRが装着されると、外側の左右の溝31bが、台紙レスラベルRの左右の縁Eに被さるようになっている。また横幅W2が60mmの台紙レスラベルRが装着されたときは、中央の円柱状の接触部30と、その両サイドの大径リング部30aが、台紙レスラベルRを駆動ローラDRに押し付ける接触部となる。これにより、台紙レスラベルRの縁Eからはみ出た粘着材は、アシストローラARに付着せずに、印字部4へ送り出される。
【0038】
図6に示すアシストローラARは、台紙レスラベルRの中心をアシストローラARの中央で位置決めする形態である。これに対し、台紙レスラベルRをアシストローラARの一方の端部、例えば右端に寄せて位置決めする場合は、図7に示すように、向かって右端のアシストローラARの溝を無くし、左側に複数の溝31を設けた構成としとしても良い。また、右端に一つの溝31を設け、左側に複数の溝31を設ける構成でも良い。なお、図7のように、3つの溝31を設ける場合は、横幅の異なる3種類の台紙レスラベルRが使用可能となる。また、これらの実施形態では、溝31の側部に設けられた大径リング部30aと、中央の円柱状の接触部30が、台紙レスラベルRを駆動ローラDRに押し付ける接触部となる。この場合、台紙レスラベルRの左右どちら側に粘着材がはみ出ていても、粘着材をアシストローラに付着させずに送り出すことができる。
【0039】
図2図3に戻って、アシストローラARは、ターンローラTRの上方に配置された支持軸32を中心として、上下に揺動するように構成されている。すなわち、アシストローラARを回転自在に支持する支持軸33の両端部は、ベースプレート34の両端部に形成された下向きブラケット34Bに固定されている。また、ベースプレート34の上部四隅には、カラーが挿入された4本のコイルスプリング35が取り付けられ、このコイルスプリング35内のカラーが、上方の可動プレート36の四隅に設けられた孔に、上下動可能に取り付けられている。また、可動プレート36は、左右のL字形ブラケット36Bを介して前記固定軸32に揺動可能に取り付けられている。したがって、可動プレート36が下向きに押されると、アシストローラARは、支持軸32周りに下向きに回動して駆動ローラDRを押し付けるようになっている。そのとき、カラーが挿入されたコイルスプリング35が圧縮され、それに伴って、カラーが可動プレート36の四隅の孔から飛び出して、圧縮されたコイルスプリング35の反発力でもってアシストローラARが駆動ローラDRを押し付けるようになっている。
【0040】
また、可動プレート36を回転可能に支持する支持軸32は、左側の支持フレーム11に片持ち状態に支持され、その支持フレーム11と左側L字形ブラケット36Bとの間には、トーションバネ37が取り付けられ、このバネ37の反発力でもって可動プレート36が駆動ローラDRから離れる方向、すなわち、上向きに付勢されるようになっている。また、図2の印字ヘッド部40が、図1のように、水平状態でロックされると、印字ヘッド部40の後端から後方へ飛び出た押えプレート41が、可動プレート36を下向きに押えて、アシストローラARを駆動ローラDRに所定の力で押し付けるようになっている。
【0041】
なお、印字ヘッド部40の右端には、印字ヘッド部40を水平状態に保持するロック機構が設けられている。このロック機構は、右端に設けられたL字状のレバー42と、そのレバー42の下端部切欠き42aに係合するピン43とで構成され、レバー42を上向きに跳ね上げると、切欠き42aのピン43との結合が解除されて、印字ヘッド部40が、図2のヒンジ44を中心として回動することにより、側方へ跳ね上がるように構成されている。印字ヘッド部40が側方へ跳ね上がると、それに伴って、アシストローラARが駆動ローラDRから離れるが、それが所定距離離れた時点で、支持フレーム11の左側のストッパ38によって、可動プレート36の回動が阻止されるようになっている。
【0042】
一方、印字部4は、周知構成のもので、従来の印字部と同様、台紙レスラベルRを送り出すプラテンローラ45と、このプラテンローラ45に台紙レスラベルRを押し付けて印字する印字ヘッド46とを備えているが、この印字部4は、図2に示すヒンジ44を介して図示しない筐体に取り付けられている。したがって、この印字部4をヒンジ44の軸周りに側方へ跳ね上げてラベルプリンタ1の前面を開放すると、ラベルプリンタ1が前方へ引き出せるようになっている。
【0043】
プラテンローラ45を回転させる駆動軸47の右端には、タイミングプーリー48が取り付けられ、また、駆動ローラDRの駆動軸S2の右端にもタイミングプーリー39が取り付けられ、それらのプーリー39、48にタイミングベルト49が架け渡されることにより、モータMの回転が駆動ローラDRを介してプラテンローラ45に伝達されるようになっている。したがって、駆動ローラDRとプラテンローラ45は、同期して回転する。なお、図1図2において、タイミングベルト49の下部には、タイミングベルト49にテンションを付与するテンションローラTSRが取り付けられている。
【0044】
図5は、ラベルロールRRから引き出された台紙レスラベルRの搬送経路を一点鎖線で示したものである。この図では、駆動ローラDRとプラテンローラ45との間に台紙レスラベルRの有無を検出するセンサ部7を設け、印字部4の前方には、発行部5を設けている。この発行部5は、周知構成のものである。具体的には、印字された台紙レスラベルRを前方の切断機構50に案内する図示しないラベルガイド部と、台紙レスラベルRを所定長さで切断する切断機構50と、切断する際に、ラベル後端の切断される境界付近を押えるラベル押えと、切断された商品ラベルを保持する待機ローラ51とが備えられている。
【0045】
切断機構50も周知構成のものであるが、この切断機構50は、図示しない筐体に取り付けられた鉛直軸を中心として水平面内で回転するように取り付けられている。したがって、ラベルプリンタ1を前方へ引き出すときは、切断機構50を側方へ退避させてから引き出され、続いて印字ヘッド部40が側方へ跳ね上げられるようになっている。
【0046】
こうしてラベルプリンタ1の装着部2が筐体から引き出されると、ラベルロールRRの装着や交換が可能になる。そのときは、図2に示すように、印字ヘッド部40が跳ね上がり、アシストローラARも駆動ローラDRから浮き上がるから、ラベルロールRRから引き出された台紙レスラベルRを、ターンローラTRに沿わせながら、開放された右側面から、台紙レスラベルRをアシストローラARと駆動ローラDRとの間に挿入する。続いて露出したプラテンローラ45上に台紙レスラベルRの先端部を載せて、印字ヘッド部40を水平状態に戻す。このとき、駆動ローラDRとプラテンローラ45との間の台紙レスラベルRが水平になるように台紙レスラベルRを引き戻してテンションを加えておく。
【0047】
次に、ラベルプリンタ1を後方へ移動させて筐体内に戻してから、側方へ退避させた切断機構50を印字部4の前方へ戻す。次に空送りキーを操作して、台紙レスラベルを空送りすると、所定長さでラベル送りが終了して切断機構50が台紙レスラベルを切断し、続いて後続ラベルの先端部が、所定長さだけ後方へ搬送されて待機状態に入る。これで、台紙レスラベルRの装着が完了する。そのとき、アシストローラARは、台紙レスラベルRを駆動ローラDRに押し付けた状態になっており、その状態で逆方向に若干引き戻された台紙レスラベルRは、ターンローラTRに引っ張られてテンションが掛かった状態になっている。
【0048】
そして、ラベル発行が指示されると、モータMの駆動によって、駆動ローラDRとプラテンローラ45とが同時に回転して、台紙レスラベルRに所定事項が印字され、印字が終了すると、印字された台紙レスラベルRは、切断機構50を通って所定位置でカットされた後、発行部5の待機ローラ51上に送り出される。また切断された後続の台紙レスラベルRは、その印字開始位置がプラテンローラ45の上端に位置するまでバックフィードされる。
【0049】
一方、台紙レスラベルRの縁Eからはみ出た粘着材は、アシストローラARに付着せずに搬送されるから、台紙レスラベルRが接触する箇所、例えば、ターンローラTR,センサ部7の下面、切断機構50の上流に設けられる図示しないラベルガイド部、切断機構50が動作するときに、台紙レスラベルRの後端を押えるラベル押え、さらに、切断された後のラベルを保持しておく待機ローラ51には、非粘着コーティングが施されている。これにより、ラベルプリンタ1への粘着材の付着が防止される。
【0050】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されず、その他の構成も採用可能である。例えば、アシストローラARを、支持軸33の軸方向にスライド可能に取り付けるとともに、位置決め手段を設けて、アシストローラARに設けた溝31が台紙レスラベルの縁に被るように、また、アシストローラARの端部が台紙レスラベルの縁に近接するように位置決めする構成も採用可能である。
【符号の説明】
【0051】
R 台紙レスラベル
DR 駆動ローラ
AR アシストローラ
E 台紙レスラベルの縁
1 ラベルプリンタ
2 装着部
3 搬送部
4 印字部
5 発行部
30 接触部
30a 接触部(大径リング部)
31 溝
31a 内側の溝
31b 外側の溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8