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特許7155147内燃エンジンを洗浄するための装置の改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】内燃エンジンを洗浄するための装置の改善
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/04 20060101AFI20221011BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F02B77/04
B08B7/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019551628
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2018051818
(87)【国際公開番号】W WO2018172907
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】17/70269
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518106319
【氏名又は名称】フレックス フューエル - エナジー デベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ル ポール セバスチャン アラン
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-138623(JP,A)
【文献】特開2010-090833(JP,A)
【文献】特開2014-163363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/04
B08B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンと、ガス循環回路と、を備える動力化システムの洗浄装置であって、前記エンジンが、空気、燃料、及び排気ガスの一部を含むガス混合物を受け入れるように構成された複数の入口と、排気ガス出口と、を備え、前記ガス循環回路が、前記エンジンの前記入口の1つに燃焼に適したガス混合物を供給するために共に配置された、複数のパイプ及び複数の可動部と、を備えるところ、前記エンジンの前記入口の1つに洗浄流体を注入するように適合された注入装置を備えており、さらに、前記動力化システムの固有パラメータの関数として前記動力化システムの汚れのレベルを測定するように適合された診断手段と、前記動力化システムの汚れのレベルの関数として前記注入装置に洗浄パラメータを供給するように適合された前記注入装置の制御手段と、を備えることを特徴とする、動力化システムの洗浄装置。
【請求項2】
前記診断手段が、前記動力化システムの前記固有パラメータ及び前記動力化システムの使用条件に関するパラメータの関数として前記動力化システムの汚れのレベルを測定するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記動力化システムの前記使用条件に関する前記パラメータが、
・前記動力化システムの使用期間及び/又は
・使用時間数及び/又は
・走行キロメートル数及び/又は
・走行距離
を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記動力化システムの前記使用条件に関する前記パラメータが、前記動力化システムの起こりうる使用状況を代表する1組の定性値のそれぞれの定性値を重み係数に関連付ける状態テーブルによって決定される重み係数を備える、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
車両の動力化システムの洗浄のために、前記車両の起こりうる使用状況の前記定性値の全てが{都市、道路、高速道路、混合}と定義される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御手段が、
・前記動力化システムの汚れのレベルの関数として、複数の洗浄サイクルについて、それぞれのサイクルにおける前記洗浄サイクルの期間を備える洗浄パラメータ、及び/又は前記洗浄サイクル中に注入される流体の量を備える洗浄シーケンスの洗浄パラメータを決定すること
・前記汚れのレベルに関連付けられた前記洗浄シーケンスの実行のために決定された前記洗浄パラメータを前記注入装置に送ること
に適合された、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記洗浄パラメータが、洗浄サイクルの数を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記洗浄パラメータが、それぞれの洗浄サイクルについて、さらに、
・前記注入される流体の温度及び/又は圧力、及び/又は
・注入される前記流体の組成、水素の割合
を含む、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段が、前記固有パラメータ及び前記動力化システムの前記使用条件の関数として、次の洗浄が望ましい前記動力化システムの使用期間を決定することにも適合されている、請求項2~8のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンを備える動力化システムを洗浄するための装置に関し、当該装置は、運転中に当該エンジンの入口に洗浄流体を注入するように適合された注入装置を備えるタイプのものである。本発明は、特に、車、オートバイ、ボートなどの自動車のメンテナンスに役立ち、エネルギー生産に使用されるエンジンなどの産業用エンジンのメンテナンスにも役立つ。
【背景技術】
【0002】
動力化システムの動作を最適化する目的は、多くの場合、燃焼温度を低下させ、運転中にエンジンにおいて利用可能である最適な空気/燃料化学量論比を有することである。燃焼温度を低下させることによって、動力化システムのパフォーマンスが改善し、特にディーゼル動力化システムの場合、NOx、特に汚染窒素化合物の生成が減少する。
【0003】
1970年代に開発された燃焼温度を低下させるための技術の1つは、不活性排気ガスの一部をエンジンの燃料‐空気混合物入口に向け直すことである。流量可変であるEGR(exhaust gas recirculation, 排気ガス再循環)バルブは、排気出口と吸気入口との間の再循環回路上に配置され、バルブの開度は、排気ガスの測定温度、エンジンからの要求出力などの動力化システムのパラメータの関数として、車両のコンピュータによって制御されている。窒素酸化物の生成は、特に燃焼中の温度及び酸素の存在に依存しており、既燃ガスの導入は、両方のパラメータ(温度及び酸素の割合)に作用する。
【0004】
燃焼温度を低下させることによって、NOxの生成を低コストで削減し、動力化システムのパフォーマンスを向上させるが、それは欠点がある。
【0005】
エンジン内の燃焼は、(酸素含有量が減少する他の理由の中でも)減少し、そして、より多くの未燃炭化水素と、より多くの粒子及び煤と、を生じる。これの顕著な結果は、ガス入口回路、既燃ガス排気回路、及び排気ガス再循環回路を汚すことである。そのため、かなりの量の固体炭素残留物(コークス又はカラミンとしても知られる)が吸気マニホールド、ターボ圧縮機、及びEGR調節バルブに形成され、しばしばエンジン障害及びその他のメッセージを発生させる。EGR調節バルブもまた、開位置に刺さっていてもよく、その結果、全負荷時に大量の排気ガスが燃焼空気と混合される。自動車の場合、車両が加速する時に黒煙の雲及び出力の損失が観察される。そのため、低温における燃焼は、動力化システムの効率を低下させ、動力化システムによって生じる汚染を増加させる。
【0006】
動力化システム及びその回路を洗浄するための既知の技術は、エンジン運転中に水素と酸素との混合物などの洗浄流体を入口回路に注入することである。水素の酸化は燃焼を高め、水蒸気と二酸化炭素ガスとを生じ、高温では、水蒸気及び二酸化炭素がカラミンと反応するためカラミンを除去することができる。同じ出願人の特許出願FR15/02059には、この技術を実施する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】仏国特許出願第FR15/02059号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、動力化システムを洗浄する既知の装置の効率を改善することを目的とし、動力化システムは、内燃エンジンと、ガス循環回路と、を備え、前記エンジンが、燃えている製品を受け入れるように構成された複数の入口と、排気ガス出口と、を備え、前記ガス循環回路が、前記エンジンの前記入口の1つに適したガス混合物を供給するために共に配置された、複数のパイプ及び複数の可動部と、を備える。
【0009】
本発明に係る洗浄装置は、前記エンジンの前記入口の1つに洗浄流体を注入するように適合された注入装置を備えるタイプである。
【0010】
本発明に係る装置は、さらに、前記動力化システムの固有パラメータの関数として前記動力化システムの汚れのレベルを測定するように適合された診断手段と、前記動力化システムの汚れのレベルの関数として前記注入装置に洗浄パラメータを制御するように適合された前記注入装置の制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
したがって、流体の注入は、例えばエンジンのジオメトリ、シリンダの数及び直径などの動力化システムの特有なパラメータに応じて、動力化システムの汚れのレベルを考慮して、洗浄の効果を高めるために調節される。
【0012】
好ましくは、洗浄の効果をさらに高めるために、前記診断手段が、前記動力化システムの前記固有パラメータ及び前記動力化システムの使用条件の関数として前記動力化システムの汚れのレベルを測定するように適合されている。動力化システムの使用条件に関連するパラメータについては、後に詳述する。
【0013】
本発明に係る装置では、
前記制御手段が、
・前記動力化システムの汚れのレベルの関数として、複数の洗浄サイクル、特にそれぞれのサイクルにおける前記洗浄サイクルの期間を備える洗浄パラメータ、及び/又は前記洗浄サイクル中に注入される流体の量を備える洗浄シーケンスの洗浄パラメータを決定すること
・前記汚れのレベルに関連付けられた前記洗浄シーケンスの実行のために決定された前記洗浄パラメータを前記注入装置に送ること
に適合されている。
【0014】
したがって、洗浄シーケンスのパラメータは、扱われる動力化システムによく適しており、動力化システムの一般的な状態(general state)も考慮されて適用され、当該状態は、それから成る使用に依存する。
【0015】
洗浄シーケンスのパラメータは、洗浄サイクルの数を備えることができる。それらは、それぞれの洗浄サイクルについて、さらに、
・前記注入される流体の温度及び/又は圧力、及び/又は
・注入される流体の流量及び/又は
・注入される前記流体の組成、特に水素の割合
・洗浄サイクルの期間
を含むことができる。
【0016】
したがって、最も汚れた動力化システムでは、洗浄シーケンスは、例えば異なるサイクル期間及び/又は注入される流体の量などの異なるパラメータを有することができる複数のサイクルを備えることができる。洗浄された動力化システムの汚れのレベルを最初に判断することによって、様々な採掘のパラメータを最適化することができる。
【0017】
最後に、本発明に係る装置では、前記制御手段が、前記固有パラメータ及び前記動力化システムの前記使用条件の関数として、次の洗浄が望ましい前記動力化システムの使用期間を決定することにも適合されていてもよい。動力化システムに依存して、使用期間は、動作時間数又は走行キロメートル数によって定義されてもよい。これによって、動力化システムの汚れが性能の低下及び動力化システムによって生じる汚染の増加をきたす前に、動力化システムの将来の予防的な洗浄のためのプログラミングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、その動作環境における本発明に係る装置の全体図である。
図2図2は、図1に係る設置動作モードの説明に使用される図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
動力化システムを洗浄するための本発明に係る装置の例の以下の説明に照らして、本発明はより理解され、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるだろう。これらの例は、非限定的な例である。説明は、添付の図面と併せて読まれるべきである。
【0020】
前述のように、本発明に係る装置は、内燃エンジン及びガス循環回路を有する動力化システム1を備える動力化システムを洗浄する装置である。
【0021】
既知の方法では、エンジンは、燃えている製品を受け入れるように構成された複数の入口と、排気ガス出口と、を備え、その部分のガス循環回路は、エンジンの入口の1つに燃焼に適したガス混合物を供給するために共に配置された、複数のパイプ及び複数の可動部と、を備える。一実施形態によれば、エンジンは、単一の入口を備え、当該入口は、特に空気、燃料、及び場合によっては排気ガスの一部を含むガス混合物を受け入れるように適合される。他の実施形態によれば、エンジンは、少なくとも2つの入口を備え、当該入口は、特に空気、燃料、及び場合によっては排気ガスの一部を含むガス混合物を受け入れるように構成された入口、及び燃料を受け入れるように構成された入口(いわゆる直接噴射エンジン)である。
【0022】
可動部は、特に入口バルブを備え、当該入口バルブは、ガスを受け入れるように構成された入口を介してエンジンに注入されるガス混合物の量を調節することができ、一般的に誘導入口と称される。動力化システムのコンピュータは、動力化システムの可動部の動きを制御し、特に、動力化システムの期待される性能の関数として入口バルブの開度を制御する。時間が経ちエンジンが使用されるにつれて、煤の堆積物が、次第に可動部及びエンジンにガスを供給するガスパイプの使用可能な部分の動作を制限する。
【0023】
洗浄装置は、注入装置を備え、当該注入装置は、エンジンの入口の1つに洗浄流体を注入するように適合されている。一実施形態では、洗浄流体は、水素及び酸素の混合物であり、装置は、それが使用する洗浄流体をそれ自体が製造するという意味で完全に自律している。この目的のために、装置は、箱状構造体2内に、水のタンクと、水の電気分解プロセスによって水素及び酸素を製造する手段であって他において既知のものと、を備える。装置は、また、流体注入装置を備え、当該流体注入装置は、洗浄されるエンジンの入口の1つに洗浄流体を注入するように適合されている。エンジンが特に空気及び燃料を含むガス混合物を受け入れるように適合された単一の入口を備える場合、洗浄装置の注入装置の出口は、入口バルブの上流側において前記入口に接続される。エンジンが少なくとも2つの入口を備える場合、洗浄装置の注入装置の出口は、特に空気を含むガス混合物を受け入れるように構成された入口、又は燃料を受け入れるように構成された入口(いわゆる直接噴射エンジン)のいずれかに接続されてもよい。
【0024】
ユーザインターフェース3(ヒューマン/マシンインターフェース又はH/Mインターフェースとしても知られる)によって、ユーザ4は、装置を調節し、装置の動作に必要なパラメータ(特に洗浄される車両に関する情報)を入力し、洗浄シーケンスを起こし、進行中の洗浄シーケンスの進捗などを通知される。ユーザインターフェースは、特に情報表示画面、洗浄装置に情報を送信する手段、及び所定の時刻に画面上に表示される情報を選択する手段を備える。一実施形態では、ユーザインターフェースは、洗浄装置の構造体(箱)上に配置されてもよく、選択手段は、画面上のカーソルの移動を可能にするマウス、表示画面を覆うタッチセンシティブ層などである。他の実施形態によると、ユーザインターフェースは、スマートフォン、タッチスクリーンタブレット、又はラップトップコンピュータなどの好ましくは無線で構造体に接続される電子装置であってもよい。
【0025】
より詳細には、本発明の文脈において、装置は、動力化システムを診断する手段と、得られた診断に適切な動力化システムの処理を行う注入装置を制御する手段と、を備える。
【0026】
実際の実施の観点から、採用された例において、診断手段及び制御手段は、プログラムメモリに紐づいたマイクロプロセッサであり、マイクロプロセッサ及びプログラムメモリは、本発明に係る装置の構造体(箱)又はリモートユーザインターフェースに設置される。マイクロプロセッサは、洗浄される動力化システムの全体的な動作、特に可動部の動きを制御するコンピュータに接続可能である。マイクロプロセッサは、それが動作を制御する注入装置にも接続される。マイクロプロセッサは、複数の動力化システムの技術的特徴のデータベースにも接続可能である。データベースは、データメモリ、洗浄装置、リモートユーザインターフェース、又はリモートデータセーバ5に格納される。
【0027】
プログラムメモリは、マイクロプロセッサによって実行可能なプログラムを格納し、当該プログラムは、本発明の文脈において、診断手段の技術的関数及び制御手段の関数を実施するのに適した複数のコード行を備える。
【0028】
本発明に係る診断手段は、動力化システムの固有パラメータの関数として動力化システムの汚れのレベルを測定するのに適合されており、採用された例では、診断手段は、前記動力化システムの使用条件に関するパラメータも考慮する。
【0029】
以下の動力化システムの固有パラメータ及び前記動力化システムの使用条件に関するパラメータを考慮することができる。
・エンジンのジオメトリ、エンジン排気量、シリンダ数、シリンダ容積、燃料のタイプなどのエンジンの固有パラメータ
・わずかな動作で入る、空気流量、排気ガス流量
・動力化システムに紐づいた汚染除去システムの固有パラメータ(例えば、EGRバルブ及び/又は粒子フィルタFAPを有する排気ガス再循環回路)
・ターボ圧縮機の固有パラメータ
【0030】
動力化システムの固有パラメータは、装置のユーザが診断を起こす前に供給され、供給後に洗浄される。あるいは、診断手段は、動力化システムのデータベースへのアクセス健を有し、当該データベースは、一意の参照によって識別されるそれぞれの動力化システムについて、動力化システムの製造によって供給されるすべてのパラメータを格納する。この場合、ユーザは、データベース内の動力化システムの参照を選択するだけで、診断手段に動力化システムのすべてのパラメータを送ることができる。
【0031】
特に、以下の動力化システムの使用条件に関するパラメータを考慮することができる。
・動力化システムの使用期間、例えば、動力化システムが設置されている車両の走行キロメートル数、動力化システムが設置されている産業用期間の動作時間数、などによって定義される期間
・動力化システムの動作開始日(又は車両の循環開始日)
・動力化システムが最も頻繁に使用される通常の状況の関数として決定される重み付け係数(例えば車両の場合、都市、道路上、高速道路上、混合、での使用)
・動力化システムにおいて使用される燃料のタイプの関数として決定される重み付け係数
・その汚れのレベルを制限する観点から動力化システムの燃料に追加された任意の添加剤の関数として決定される重み付け係数
【0032】
重み付け係数などのパラメータは、ユーザによって提供される。洗浄される動力化システムの使用期間などのパラメータは、動力化システムに紐づいたメータ上に表示された時間数又はキロメートル数を読み取った後、H/Mインターフェースを介してユーザによって供給される。代わりに、使用期間は、動力化システムに紐づいた時間又はキロメートルメータに連結されたデータ転送デバイス、車両の場合は当該車両のOBD(On Board Diagnostic)システムに連結されたデータ転送デバイスによって、診断手段に直接転送可能である。
【0033】
動力化システムが最も頻繁に使用される通常の状況の関数として、重み付け係数は、例えば動力化システムの使用可能状況を表す定性値のセットからそれぞれの定性値に重み付け係数を紐づける状態テーブルから決定される。定性値のセットにおける定性値の選択は、例えばユーザインターフェースを介してユーザが手動で行う。次に、診断手段は、選択された定性値の関数として重み付け係数の値を与える。
【0034】
例えば、個人使用車又は小型有用車両(small utility vehicle)などのいわゆる“軽量”車両は、以下の4つの定性値のセット{都市、道路、高速道路、混合}によって、3つの通常の走行状況を定義可能である。“都市”値は、車両が都市環境において最も頻繁に使用されるときに選択され、そのような使用は、速度及びエンジン速度の、非常に頻繁で急速かつかなり大きな振幅変動によって特徴付けられ、動力化システムの深刻な汚れにつながる。“道路”値は、車両が道路上及び広域都市圏外において最も頻繁に使用されるときに選択され、そのような使用は、より安定した速度及びエンジン速度によって特徴付けられ、速度又はエンジン速度の変化が頻繁及び急速ではなく、動力化システムの中程度の汚れに反映される。
【0035】
“高速道路”値は、車両が高速道路上及び広域都市圏外において最も頻繁に使用されるときに選択され、そのような使用は、より安定した速度及びエンジン速度、及びより速い速度によって特徴付けられ、動力化システムの軽度の汚れに反映される。“混合”値は、車両が広域都市の圏内及び圏外のいずれにおいても使用されるときに選択される。例えば、状態テーブルは、下記のようになる。
・定性値 高速道路 道路 混合 都市
・使用に関連する重み付け係数 0.25 0.35 0.5 0.75
【0036】
使用に関連する重み付け係数は、定性値の数を増やし、それぞれの定性値に関連する重み付け係数をより正確に定義することによって、改善可能である。
【0037】
注入装置の制御手段は、動力化システムの汚れのレベルの関数として、注入装置を制御するように適合されている。より正確には、動力化システムの汚れのレベルの関数として、制御手段は、動力化システムの汚れのレベルに適した洗浄シーケンスを決定し、そのように決定した洗浄シーケンスを実行するために適した制御信号を洗浄装置に送る。
【0038】
洗浄シーケンスは、特に洗浄流体の注入期間及び/又は注入された流体の量によって定義される少なくとも1つの洗浄サイクルを備える。任意で、洗浄サイクルは、例えば注入された流体の温度及び/又は圧力、及び/又は注入される流体の組成(水素の割合など)などの補完的なパラメータによって指定可能である。洗浄シーケンスは、さらに複数のサイクルを備え、それぞれの洗浄サイクルは、他のサイクルと異なる洗浄パラメータによって特徴付けられてもよい。
【0039】
例えば、中程度に汚れた車両動力化システムは、50から70%程度の汚れのレベルを有し、洗浄シーケンスは、30分から4時間程度のサイクル期間であり、250l/hから1000l/h程度の流体流量であり、流体が水素及び酸素の化学量論的混合物である、1つのサイクルを備えることができる。
【0040】
他の例では、よりひどく汚れた車両動力化システムは、70から90%程度の汚れのレベルを有し、洗浄シーケンスは、サイクルごとに、サイクル期間及び流体流量を増やして行われる複数のサイクルを備えることができる。第1のサイクルは、直近の煤の堆積物すなわち最も粘着力が弱いものを除去することができ、続くサイクルは、EGRバルブの壁、シリンダなどにより強く粘着する、より古い煤の堆積物を攻撃する。
【0041】
制御手段は、任意で、固有パラメータ及び動力化システムの使用条件の関数として、予防保全の観点から、次の洗浄が望まれる使用期間を決定するように適合されていてもよい。これは、汚れのレベルを測定した後、洗浄シーケンスの前、中、又は後に行われてもよい。情報は、例えばユーザインターフェース上に表示されてもよい。
【0042】
添付の図面において、太線の矢印は、本発明に係る方法を実行する際に関連する種々の実体(車両、洗浄装置、ユーザ、サーバ)間におけるデータの流れを示している。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
2 洗浄装置
3 ヒューマン/マシンインターフェース
4 ユーザ
5 サーバ
図1
図2