(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】組成物、医療用接着剤又は被覆剤、収容容器、医療用シート、及び医療用シート作製装置
(51)【国際特許分類】
A61L 24/06 20060101AFI20221012BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20221012BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20221012BHJP
A61L 15/58 20060101ALI20221012BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20221012BHJP
C08F 20/58 20060101ALI20221012BHJP
C09J 4/02 20060101ALN20221012BHJP
C09J 7/30 20180101ALN20221012BHJP
【FI】
A61L24/06
A61L15/24 100
A61L15/44 100
A61L15/58 100
A61L24/00 210
C08F20/58
C09J4/02
C09J7/30
(21)【出願番号】P 2018142151
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】森田 充展
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅秀
(72)【発明者】
【氏名】野口 宗
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇
(72)【発明者】
【氏名】末永 武範
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜輝
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080321(JP,A)
【文献】特表2006-516544(JP,A)
【文献】特開2015-013980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
A61L15/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び下記一般式(4)の少なくともいずれかで表されるエステル構造を有するアクリルアミド化合物、重合開始剤、及び粘度調整成分を含有することを特徴とする
医療用接着剤又は被覆剤。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化4】
ただし、前記一般式(4)中、環Xは窒素原子を含む炭素数2~5の環構造を表し、R
4は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
5は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。ただし、環X、R
4及びR
5の炭素数の合計は3~6である。
【請求項2】
前記粘度調整成分が重合性官能基を有する重合性オリゴマーである請求項1に記載の
医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項3】
更に多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する請求項1から2のいずれかに記載の
医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項4】
前記エステル構造を有するアクリルアミド化合物が前記一般式(1)で表される化合物である請求項1から3のいずれかに記載の
医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項5】
前記エステル構造を有するアクリルアミド化合物が前記一般式(1)で表され、前記一般式(1)中のYが前記一般式(3)で表される請求項4に記載の
医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項6】
前記一般式(3)のR
2が炭素数1~2のアルキル基である請求項5に記載の
医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項7】
前記重合開始剤の分子量が800以上である請求項1から6のいずれかに記載の
医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項8】
活性エネルギー線硬化型組成物である請求項1から7のいずれかに記載の
医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の
医療用接着剤又は被覆剤が容器中に収容されてなることを特徴とする収容容器。
【請求項10】
下記一般式(1)及び下記一般式(4)の少なくともいずれかで表されるエステル構造を有するアクリルアミド化合物、重合開始剤、及び粘度調整成分を含有する組成物を収容する収容部と、
前記組成物を付与する付与手段と、
を有することを特徴とする医療用シート作製装置。
【化5】
ただし、前記一般式(1)中、R
1
は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化6】
ただし、前記一般式(2)中、R
2
は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化7】
ただし、前記一般式(3)中、R
2
は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化8】
ただし、前記一般式(4)中、環Xは窒素原子を含む炭素数2~5の環構造を表し、R
4
は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
5
は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。ただし、環X、R
4
及びR
5
の炭素数の合計は3~6である。
【請求項11】
更に、波長365nm以上405nm以下にピークを有する紫外線を照射するUV-LEDである照射手段を有する請求項10に記載の医療用シート作製装置。
【請求項12】
基材と、該基材上に下記一般式(1)及び下記一般式(4)の少なくともいずれかで表されるエステル構造を有するアクリルアミド化合物、重合開始剤、及び粘度調整成分を含有する組成物、又は該組成物の硬化物を含む層と、を有することを特徴とする医療用シート。
【化9】
ただし、前記一般式(1)中、R
1
は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化10】
ただし、前記一般式(2)中、R
2
は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化11】
ただし、前記一般式(3)中、R
2
は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化12】
ただし、前記一般式(4)中、環Xは窒素原子を含む炭素数2~5の環構造を表し、R
4
は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
5
は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。ただし、環X、R
4
及びR
5
の炭素数の合計は3~6である。
【請求項13】
更に、生物学的作用物質、治療薬、及び消毒薬から選択される少なくとも1種を含有する請求項1から8のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項14】
外科手術用接着剤である請求項1から8及び13のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項15】
外科手術用シート状接着剤である請求項1から8及び13のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項16】
創傷保護剤である請求項1から8及び13のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項17】
接着性を有する消毒剤である請求項1から8及び13のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤。
【請求項18】
エステル構造を有する単官能アクリルアミド化合物及び粘度調整成分を含む組成物Aと、重合開始剤を含む組成物Bとからなる請求項1から8及び13から17のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、医療用接着剤又は被覆剤、収容容器、医療用シート、及び医療用シート作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷や外科手術部位の処置方法としては、一般的な縫合糸を用いた縫合、ステープラーを用いた縫合、医療用接着剤又は被覆剤による傷口の接着や被覆が行われている。
【0003】
従来より、医療用接着剤としては、シアノアクリレート系接着剤、ゼラチン-アルデヒド系接剤、フィブリノーゲル系接着剤が用いられている。シアノアクリレート系接着剤やゼラチン-アルデヒド系接着剤は生体に対して毒性を有しているという懸念がある。また、シアノアクリレート系接着剤は瞬間接着剤として知られているように水分によって硬化が進行し強固な接着層を形成することから、一旦、接着操作で失敗が生じた場合に容易に接着し直すことが困難であるという欠点がある。フィブリノーゲル系接着剤は毒性が低いものの感染の危険性を有していると言われている。
このような状況を受けて安全性に優れ、水溶性を有することで生体の接着性に有利な紫外線硬化型キトサン誘導体や天然物のタンニンとポリエチレングリコールを含む接着剤が医療用接着剤として提案されている(例えば、特許文献1から3及び非特許文献1参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生体を接着するのに適した親水性を有し、かつ硬化性、柔軟性、及び接着性に優れる硬化物が得られる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の組成物は、下記一般式(1)及び下記一般式(4)の少なくともいずれかで表されるエステル構造を有するアクリルアミド化合物、重合開始剤、及び粘度調整成分を含有する。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化4】
ただし、前記一般式(4)中、環Xは窒素原子を含む炭素数2~5の環構造を表し、R
4は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
5は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。ただし、環X、R
4及びR
5の炭素数の合計は3~6である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、生体を接着するのに適した親水性を有し、かつ硬化性、柔軟性、及び接着性に優れる硬化物が得られる組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、本発明の医療用シートの一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である
【
図3】
図3は、組成物を用いて立体造形を行う方法の一例について説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(組成物)
本発明の組成物は、下記一般式(1)及び下記一般式(4)の少なくともいずれかで表されるエステル構造を有するアクリルアミド化合物、重合開始剤、及び粘度調整成分を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【化5】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化6】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化7】
ただし、前記一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化8】
ただし、前記一般式(4)中、環Xは窒素原子を含む炭素数2~5の環構造を表し、R
4は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
5は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。ただし、環X、R
4及びR
5の炭素数の合計は3~6である。
【0009】
本発明の組成物は、従来技術の紫外線硬化型キトサン誘導体や天然物のタンニンとポリエチレングリコールを含む接着剤では、接着に時間がかかってしまうという知見に基づくものである。
【0010】
本発明の組成物に含まれる上記一般式(1)及び一般式(4)の少なくともいずれかで表される化合物は比較的分子量の小さい3級アクリルアミド化合物であり分子内にエステル構造を有することを特徴としている。これらの化合物は粘度が低く紫外線照射などによる光重合性に優れるものであるが、小さな分子構造に極性の官能基を有していることから親水性が高く化合物によっては水溶性を示すものがあり、重合したもの(硬化物)自身も親水性を示す特徴を有している。そのため、本発明の組成物は、水分を保持している生体との相性が良く接着機能に優れており、医療用接着剤や医療用被覆剤に好適である。
【0011】
上記一般式(1)及び一般式(4)の少なくともいずれかで表されるアクリルアミド化合物は粘度が低く流動しやすい性質を有していることから、医療用接着剤や医療用被覆剤に用いるためには粘度調整成分によって粘度を大きくして流動しにくいようにする必要がある。このため、粘度調整成分としては各種増粘剤、凝集剤なども用いることができるが、ポリマー成分やオリゴマー成分、更には重合性官能基を有する反応性オリゴマーのように比較的分子量の大きな化合物を含有するのが好ましい。更に、多官能の(メタ)アクリレート化合物のように官能基を多数有する反応性モノマー化合物を含有することもでき、架橋構造を形成することによって活性エネルギー線で硬化した後の状態がより維持されやすくなる。
【0012】
このように本発明の組成物は、親水性の高い一般式(1)及び一般式(4)の少なくともいずれかで表されるアクリルアミド化合物に加え、粘度調整成分としてのポリマー、オリゴマー類、更には多官能(メタ)アクリレート化合物を配合することによって、硬化前のハンドリングに優れ、硬化後も適度な親水性を有し、ポリマー類、オリゴマー類、更には多官能モノマーによる架橋構造を形成することによって、接着剤としての形状を維持し、水分の多い生体に適した接着性を発現することができる。
更に、本発明で用いる上記一般式(1)及び一般式(4)の少なくともいずれかで表される化合物は皮膚感作性の懸念が少ないと考えられることを代表的な化合物の試験によって確認している。また、粘度調整成分としては分子量の大きなポリマー類、オリゴマー類を用いている。更に多官能(メタ)アクリレートとして用いる化合物も皮膚感作性の懸念の少ない材料を選定することが可能であることから、本発明の組成物は皮膚感作性リスクの少ない材料によって形成することができ、生体に与えるダメージが小さく医療用途に適していると考えられる。
【0013】
本発明の組成物としては、硬化型組成物が好ましい。硬化型組成物としては、熱硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型組成物などが挙げられるが、活性エネルギー線硬化型組成物がより好適である。
【0014】
<エステル構造を有するアクリルアミド化合物>
エステル構造を有するアクリルアミド化合物としては、上記一般式(1)及び上記一般式(4)の少なくともいずれかで表される。
前記一般式(1)におけるR1は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
前記炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
前記一般式(1)におけるXは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~6のアルキレン基を表す。
前記炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
前記一般式(1)におけるYは、前記一般式(2)又は前記一般式(3)を表す。
【0015】
前記一般式(2)におけるR2は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。
前記炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
前記一般式(2)における*は、前記Xとの結合部位を表す。
【0016】
前記一般式(3)におけるR2は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。
前記炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
前記一般式(3)における*は、前記Xとの結合部位を表す。
前記エステル構造を有するアクリルアミド化合物が前記一般式(1)で表され、前記一般式(1)中のYが前記一般式(3)で表されることが好ましい。
前記一般式(3)のR2が炭素数1~2のアルキル基であることが好ましい。
【0017】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、単官能で環構造を有しない3級アクリルアミドの末端にエステル構造を有している。一般に、低分子量の3級アクリルアミド化合物は、揮発性を有していることからモノマー独特の臭気を強く感じ、これらの化合物を含む組成物を扱う上で不快感が生じることになる。
【0018】
そこで、前記一般式(1)で表される3級アクリルアミド化合物は、末端部にエステル構造を有している。そのため、エステル構造による揮発性の低下により、臭気を抑制することができる。また、エステル構造の存在による分子間の相互作用により、硬化性も向上すると考えられる。
【0019】
前記一般式(4)において、環Xは窒素原子を含む炭素数2~5の環構造を表す。環Xとしては、例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジンなどが挙げられ、ピロリジン、ピペリジンが好ましい。
一般式(4)において、R4は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表す。R4としては、例えば、単結合、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基などが挙げられる。
一般式(4)において、R5は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。R5としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
ただし、環X、R4及びR5の炭素数の合計は3~6である。
【0020】
次に、前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の具体例として、例示化合物a群からh群を示すが、これらに限定されるものではない。
前記一般式(1)で表される化合物のa群としては、例えば、以下に示すa1からa6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
前記一般式(1)で表される化合物のb群としては、例えば、以下に示すb1からb6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
前記一般式(1)で表される化合物のc群としては、例えば、以下に示すc1からc6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
前記一般式(1)で表される化合物のd群としては、例えば、以下に示すd1からd6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
前記一般式(1)で表される化合物のe群としては、例えば、以下に示すe1からe6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
前記一般式(1)で表される化合物のf群としては、例えば、以下に示すf1からf8群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
前記一般式(4)で表される化合物g群としては、例えば、以下に示すg1からg2群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
【0066】
【0067】
前記アクリルアミド化合物の中でも、例えば、a1-1、d1-1、g1-2について、OECD TG442B(局所リンパ節増殖試験/濃度50%)を実施したところ、皮膚感作性の評価指標であるSI値は3未満の値を示しており、これらの化合物が皮膚感作性を発現するリスクが低いと考えられる。
【0068】
本発明の上記一般式(1)及び一般式(4)で表されるアクリルアミド化合物は、異なる化合物同士を2種以上混合して用いることができ、この場合の異なる化合物には構造異性体も含まれる。混合比は特に限定されない。
アクリルアミド化合物の含有量は、組成物の全量に対して、10質量%以上98質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0069】
<粘度調整成分>
粘度調整成分は、粘度を高くする添加剤であり、例えば、増粘剤、増粘安定剤、各種ポリマー、オリゴマー、重合性官能基を有する重合性オリゴマーなどが挙げられる。
これらの中でも、分子量が大きく柔軟性に優れるとともに、架橋構造を形成することで硬化した後の形状や強度を維持できる点から、重合性官能基を有する重合性オリゴマーが好ましい。
【0070】
増粘剤としては、例えば、動物性のゼラチン等や植物性の多糖類やセルロースの化学的誘導体などが挙げられる。
ポリマーとしては、例えば、ポリアミン、セルロース、アミロース、デンプン、キチン、天然ゴム、ポリペプチド、タンパク質、DNA、RNA、一部の脂質、リグニン、アスファルテン等の天然高分子、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フェノール樹脂、シリコン樹脂(シリコーンゴム、シリコンオイル)、合成繊維(ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート等)合成ゴム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオール類、ポリビニルアルコール類、ポリシアノアクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル等の合成高分子などが挙げられる。
オリゴマーとしては、上記ポリマーに対して重合度が10から100程度の比較的分子量の小さいものを挙げることができ、通常市販されているものを使用することができる。
【0071】
重合性官能基を含有する重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アミン変性オリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、柔軟性の点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、硬化反応性の点からアミン変性オリゴマーが好ましい。
重合性オリゴマーとしては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、サートマー社(機能性/特殊モノマー&オリゴマーver.4.0 2016.06)に記載されているウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、疎水性オリゴマー、アミン変性オリゴマー等の特殊タイプノオリゴマー、ポリエチレングリコール(東京化成工業株式会社製)などが挙げられる。
粘度調整成分の含有量は、組成物の全量に対して、1質量%以上80質量%以下が好ましく、5質量%以上70質量%以下がより好ましく、10質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
粘度調整成分の含有量が1質量%以上80質量%以下であると、接着性に優れる硬化物が得られる。
【0072】
<多官能(メタ)アクリレート化合物>
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、市販されている各種(メタ)アクリレート化合物から適宜選択することができる。
多官能(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社、日本化薬株式会社、サートマー・ジャパン株式会社などのモノマーメーカーから発行されているカタログに記載されているものを使用することができる。
カタログの具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。また、下記カタログなどに記載されていないものも含むことができる。
サートマー社(機能性/特殊モノマー&オリゴマーver.4.0 2016.06)
日本化薬株式会社(Radiation Curable Products 第1版 2009年11月発行)
新中村化学工業株式会社(製品カタログ 131205第二版)
東亜合成株式会社(光硬化型樹脂 H21.7.2000)
共栄社化学株式会社(機能性化学品 2008.2.1000)
第一工業製薬株式会社(ニューフロンティア 0607143A20R)
【0073】
更に、一部市販されていないものを含むが以下に例示するモノマー化合物を用いることができる。これらについて、OECD TG442B(局所リンパ節増殖試験/濃度50%)を実施したところ、皮膚感作性の評価指標であるSI値は3以下の値を示しており、これらの化合物が皮膚感作性を発現するリスクが低いと考えられ、これらは医療用接着剤、医療用被覆剤の用途に好ましい。
皮膚感作性を発現するリスクが低いとは、LLNA法による皮膚感作性試験において、感作性の程度を示すSI値が3以下であることを示す。上記「LLNA法」とは、OECDテストガイドラインとして定められる皮膚感作性試験であり、文献(例えば、「機能材料」2005年9月号、Vol.25、No.9、P55)に示されるように、皮膚感作性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3以下の場合に感作性について問題なしと判断するものである。
【0074】
【化49】
(n=1~23)
商品名:h1-1-1~12(ポリエチレングリコールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製)
【0075】
【化50】
(n=1~12)
商品名:h1-2-1~12(ポリプロピレングリコールジメタクリレート、サートマー社製)
【0076】
【化51】
商品名:h1-3(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製)
【0077】
【化52】
商品名:h1-4(グリセリンジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製)
【0078】
【化53】
商品名:h1-5(2-アセチルグリセリン-1,3-ジメタクリレート、自社合成品)
【0079】
【化54】
(m+n=2~30)
商品名:h1-6(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
【0080】
【0081】
【化56】
商品名:h1-8(カプロラクトン変性ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPCA-60)、日本化薬株式会社製)
【0082】
これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、異なる化合物同士を2種以上混合して用いることができ、混合比は特に限定されない。
多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、組成物の全量に対して、1質量%以上80質量%以下が好ましく、5質量%以上70質量%以下がより好ましく、10質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
【0083】
<重合開始剤>
本発明の組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。なお、重合開始剤のことを単に開始剤とも称することがある。重合開始剤としては、熱重合開始剤と光重合開始剤とがある。
光重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。光重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも、ラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0084】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン/DETX(東京化成工業株式会社製)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン株式会社製)「イルガキュア184」)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(BASFジャパン株式会社製)「イルガキュア379」)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASFジャパン株式会社製、「イルガキュア819」)、2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(BASFジャパン株式会社製、「イルガキュア907」)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製、「イルガキュアTPO」)、ポリエチレングリコール200-ジ(β-4(4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノニルフェニル)ピペラジン)(IGM社製、「Omnipol 910」、分子量1032)、1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパン(Lambson社製、「Speedcure7010」、分子量1899)、1,3-ジ({α-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパンと{α-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ(オキシエチレン)-ポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]-ポリ(オキシエチレン)}4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートの混合物(Lambson社製、「Speedcure7040」、分子量1066)、ポリブチレングリコールビス(9-オキソ-9H-チオキサンチニルオキシ)アセテート(IGM社製、「Omnipol TX」、分子量820)、高分子型チオキサンテン化合物(Lahn AG社製、「Genepol TX-2」、分子量980)、ベンゼン,(1-メチルエチニル)-,ホモポリマー,ar-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)誘導体(IGM社製、「Esacure ONE」、分子量1000以上)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、分子量が800以上の重合開始剤は、安全性が高いことから、医療用接着剤又は被覆剤として好適である。
重合開始剤の含有量は、十分な硬化速度を得るために、組成物の全量に対して、5質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0085】
本発明の組成物は、活性エネルギー線照射による光重合開始剤の分解を促進させるため、更に増感剤を含んでいてもよい。
増感剤は活性エネルギー線を吸収して電子励起状態となり、その状態で重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱等の作用により重合開始剤の化学変化(分解、ラジカル、酸又は塩基の生成)を促進する。光重合開始剤に対する増感剤の質量比は、5×10-3以上200以下が好ましく、0.02以上50以下がより好ましい。
【0086】
増感剤としては、特に限定されないが、波長が350nm以上450nm以下の領域に吸収波長を有する増感色素を用いることができる。増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリリウム類(例えば、スクアリリウム)、クマリン類(例えば、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン)などが挙げられる。
【0087】
本発明の組成物は、更に共増感剤を含んでいてもよい。共増感剤は、増感色素の活性エネルギー線に対する感度を一層向上させたり、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制したりする。
共増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、p-メチルチオジメチルアニリン等のアミン系化合物、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリン、β-メルカプトナフタレン等のチオール及びスルフィド類などが挙げられる。
【0088】
本発明の組成物は、更に重合禁止剤を含んでいてもよい。これにより、組成物の保存性(保管安定性)を高めることができる。また、組成物を加熱し粘度を低下させて吐出する場合の熱重合によるヘッド詰まりを防ぐことができる。
重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p-メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、アルミニウムのクペロン錯体などが挙げられる。重合禁止剤の含有量は、組成物の全量に対して、200ppm以上20,000ppm以下が好ましい。
【0089】
<その他の成分>
本発明の組成物は、更に必要に応じて、その他の成分として、例えば、色材、有機溶媒、安定剤、可塑剤、防腐剤、放熱剤、生体適合性物質、繊維強化材料などが挙げられる。
【0090】
色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。
色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましい。なお、本発明の組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(例えば、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤を更に含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
<有機溶媒>
本発明の組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0092】
可塑剤は、モノマーにより形成されるポリマーに柔軟性を付与することができ、例えば、ポリエチレングリコールエステル、末端がキャップされたポリエステル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸、グルタル酸ジオクチル、トリグリセリド、シュウ酸ジオクチル、リン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチルなどが挙げられる。
防腐剤は、従来から使用されモノマーの重合を開始させないもの、例えば、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、クロロクレゾールなどが挙げられる。
繊維強化材料は、特に限定されないが、組成物の耐衝撃性を増強するための、スチレン、アクリロニトリル等の天然ゴム又は合成ゴムを含む。
安定剤としては、貯蔵中のモノマーの重合を抑制する目的を果たし、アニオン性安定剤及びフリーラジカル安定剤が挙げられる。前者は、メタリン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アルキルスルホン酸、五酸化リン、塩化鉄(III)、酸化アンチモン、2,4,6-トリニトロフェノール、チオール、アルキルスルホニル、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、亜硫酸アルキル、スルトン、二酸化硫黄、三酸化硫黄等を含み、後者は、ヒドロキノン、カテコール、又はこれらの誘導体を含む。
【0093】
なお、組成物中の各成分について、重合性モノマーや重合開始剤などの低分子量成分はガスクロマトグラム質量分析法などで同定することが可能であり、ポリマー成分はメタノールなどの貧溶媒にて沈殿分離させて単離することで、赤外分光法や元素分析法により主骨格や塩素原子の含有量を同定することができる。
【0094】
<組成物の調製>
本発明の組成物は、上述した各種成分を用いて調製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、アクリルアミド化合物、粘度調整成分、多官能(メタ)アクリレート化合物、重合開始剤、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液に、更に重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0095】
<粘度>
本発明の組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃~65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3mPa・s以上40mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下がより好ましく、6mPa・s以上12mPa・s以下が特に好ましい。また、当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0096】
<硬化手段>
本発明の組成物を硬化させる硬化手段としては、加熱硬化又は活性エネルギー線による硬化が挙げられ、これらの中でも活性エネルギー線による硬化が好ましい。
組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
これらの中でも、省エネルギー化や装置小型化の観点から、紫外線発光ダイオード(以下、UV-LEDともいう)から照射される波長285nm以上405nm以下(好ましくは365nm以上405nm以下)にピークを有する紫外線が好ましい。なお、重合開始剤の光吸収スペクトルは一般にブロードであって、狭小な特定波長域を照射するUV-LEDを用いることは、組成物の硬化性向上を困難にする。そのため、UV-LEDを用いたとしても硬化性に優れる本発明の組成物を用いることが好ましい。
【0097】
<用途>
本発明の組成物の用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、被覆剤、医療用シート、医療用接着剤、医療用被覆剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
更に、本発明の組成物は、2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、
図2や
図3に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。なお、
図2は、本発明の組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、
図3は、本発明の組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
本発明の組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
また、本発明は、組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0098】
(医療用シート)
本発明の医療用シートは、基材と、該基材上に本発明の組成物、又は該組成物の硬化物を含む層とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
医療用シートは、創傷、外科手術部位の保護、接着や被覆、生体修復材料、人工膜などに好適に用いられる。
【0099】
<基材>
基材の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。なお、基材としては、平面な基材に限定されるものではなく、曲面を有する基材、凹凸を有する基材などであってもよい。
【0100】
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、布、不織布、紙、合成樹脂製シート(フィルム)などが挙げられる。
前記合成樹脂製シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン12等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、又はこれらの共重合体などが挙げられる。
【0101】
<本発明の組成物又は該組成物の硬化物を含む層>
本発明の組成物又は該組成物の硬化物を含む層は、基材の全面又は一部に設けられる。
本発明の組成物又は該組成物の硬化物を含む層の厚さは、10μm以上5,000μm以下が好ましい。
この層は使用するまでその形状を維持しておく必要がある。この場合、例えば、層に対して後述する医療用シート作製装置における照射手段を用いて硬化させることでその形状を維持しやすくすることもできる。その場合の硬化の程度は適宜選択することができ、完全に硬化した状態に対してその途中段階、いわゆる半硬化の状態をとることもできる。
【0102】
<その他の部材>
その他の部材としては、例えば、カバー材、中間層などが挙げられる。
【0103】
ここで、
図1Aは、本発明の医療用シートの一例を示す平面図、
図1Bは、本発明の医療用シートの一例を示す断面図である。
図1Aの医療用シート10は、基材11上に、本発明の組成物、又は該組成物の硬化物を含む層12が設けられている。
なお、図示を省略しているが、本発明の組成物の硬化物を含む層12上の保護のためのガバー材を設けてもよい。
【0104】
(医療用シート作製装置)
本発明の医療用シート作製装置は、本発明の組成物を収容する収容部と、前記組成物を付与する付与手段とを有し、波長365nm以上405nm以下にピークを有する紫外線を照射するUV-LEDである照射手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0105】
<収容部>
収容部は、本発明の組成物が収容された状態の部材を意味し、袋、カートリッジ、ボトル等の容器などが挙げられる。これにより、組成物の搬送や組成物交換等の作業において、組成物に直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、組成物へのごみ等の異物の混入を防止することができる。
容器それ自体の形状、大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、又は容器が遮光性シート等で覆われていることが好ましい。
【0106】
<付与手段>
付与手段は、本発明の組成物を付与する手段である。
付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法、スプレー塗装法、ハケ塗り法、ローラー塗り法、吹付塗装法、エアレススプレー法、ロールコーター法、焼付け塗装法、浸漬塗装法、電着塗装法、紫外線硬化塗装法などが挙げられる。
【0107】
<照射手段>
照射手段としては、波長365nm以上405nm以下にピークを有する紫外線を照射するUV-LEDである。
照射手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の紫外線照射装置などが挙げられる。
【0108】
<その他の手段>
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、制御手段などが挙げられる。
【0109】
(医療用接着剤又は被覆剤)
本発明の医療用接着剤又は被覆剤は、本発明の組成物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明の医療用接着剤又は被覆剤は、エステル構造を有する単官能アクリルアミド化合物及び粘度調整成分を含む組成物Aと、重合開始剤を含む組成物Bとからなることが利便性の点から好ましい。
医療用接着剤又は被覆剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外科手術用接着剤、外科手術用シート状接着剤、創傷保護剤、接着性を有する消毒剤などが挙げられる。
【0110】
本発明の医療用接着剤又は被覆剤は、生物学的作用物質、治療薬、及び消毒薬から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0111】
生物学的作用物質及び治療薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗炎症性鎮痛剤、鎮静剤、局所麻酔薬、非ステロイド性抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗潰瘍剤、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、免疫抑制剤、天然由来のタンパク質、遺伝子操作タンパク質、多糖類、糖タンパク質又はリポタンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド薬、抗体、抗原、化学療法剤、凝固剤と止血剤、例えば、プロトロンビン、トロンビン、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、凝固因子、組織因子、コラーゲン、ゼラチン、バソプレシン、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター、血小板活性化因子、止血活性を有する合成ペプチドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
消毒薬としては、特に制限はなく、各種消毒薬を用いることができ、例えば、グルタルアルデヒド等のアルデヒド系消毒薬、次亜塩素酸ナトリウム、ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系消毒薬、過酸化水素等の酸化剤系消毒薬、ポピドンヨード、ボロクサマーヨード等のヨウ素系消毒薬、エタノール、イソプロパノール、クロルヘキシジン含有エタノール等のアルコール系消毒薬、クロルヘキシジン等のビクアナイド系消毒薬、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩系消毒薬、アルキルポリアミノエチルグリシン等の両性界面活性剤系消毒薬、アクリノール等の色素系消毒薬などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
(収容容器)
本発明の収容容器は、本発明の組成物が容器内に充填されたものである。
本発明の収容容器は、本発明の組成物と、容器とを有し、更に必要に応じて、組成物袋等のその他の部材を有してなる。これにより、組成物交換などの作業において、組成物に直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、また組成物へのごみ等の異物混入を防止できる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成された組成物袋などを有するものなどが好適である。
【0114】
<<像の形成方法、形成装置>>
本発明の像の形成方法は、活性エネルギー線を用いてもよいし、加熱なども挙げられる。本発明の組成物を活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。更に、本発明の組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式などが挙げられる。
【0115】
図2は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。
図2の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の組成物とは組成が異なる第二の組成物を吐出し、隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。より具体的には、例えば、造形物支持基板37上に、第二の組成物を支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、
図2では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。1H-NMRスペクトルは、1H-NMR(500MHz)(JEOL社製)を用いて測定した。
【0117】
(合成例1)
<モノマーd1-1の合成>
東京化成工業株式会社製のサルコシン酸メチルエステル・塩酸塩(8.37g、60mmol)を脱水ジクロロメタン100mL中に加え、トリエチルアミン17.49g(172mmol)を加えた。
次に、氷-NaCl混合物中で約-15℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製アクリル酸クロリド6.52g(72mmol)を脱水ジクロロメタン4mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温(25℃)下で3時間撹拌した。析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。
次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製シリカゲルC-300を300g充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1-1)で表される化合物の淡黄色油状物4.69g(収率約50%)を得た。
【0118】
【化57】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ3.05-3.16(m,3H),3.75-3.78(m,3H),4.13-4.20(m,2H),5.70-5.76(m,1H),6.36-6.39(m,1H),6.61-6.63(m,1H)
【0119】
(合成例2)
<モノマーd1-2の合成>
東京化成工業株式会社製のサルコシン酸エチルエステル・塩酸塩(12.29g、80mmol)を脱水ジクロロメタン110mL中に加え、トリエチルアミン22.34g(220mmol)を加えた。次に、氷-NaCl混合物中で約-15℃まで冷却した後、和光純薬工業社製アクリル酸クロリド8.69g(96mmol)を脱水ジクロロメタン5mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温(25℃)下で3時間撹拌した。析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業製シリカゲルC-300を300g充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1―2)で表される化合物の淡黄色油状物7.58g(収率約55%)を得た。
【0120】
【化58】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.26-1.30(m,3H),3.06-3.16(m,3H),4.11-4.25(m,4H),5.68-5.76(m,1H),6.28-6.39(m,1H),6.61-6.66(m,1H)
【0121】
(合成例3)
<モノマーd1-5の合成>
東京化成工業株式会社製メチルアミン7%THF溶液(31.05g、70mmol)、THF(15mL)に炭酸カリウム(9.68g、70mmol)を加えて室温(25℃)下で撹拌し、東京化成工業株式会社製クロロ酢酸イソプロピル(10.52g、77mmol)をTHF(5mL)に溶かした溶液を滴下した。反応液を濾過して得られた濾液に炭酸カリウム(9.68g、70mmol)を水(50mL)に溶かした溶液を加えて氷浴中で冷却した。アクリル酸クロリド(6.96g、77mmol)をゆっくり滴下した後、室温(25℃)下で2時間撹拌した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで無色溶液8.4gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1-5)で表される化合物の無色液体3.9g(収率:約30%)を得た。
【0122】
【化59】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.26(d,6H),3.05/3.15(s,3H),4.07/4.16(s,2H),5.04-5.10(m,1H),5.67-5.75(m,1H),6.28-6.44/6.61-6.66(m,2H)
【0123】
(合成例4)
<モノマーd1-4の合成>
東京化成工業株式会社製メチルアミン7質量%テトラヒドロフラン(THF)溶液(31.05g、70mmol)、THF(15mL)に炭酸カリウム(9.68g、70mmol)を加えて室温(25℃)下で撹拌し、東京化成工業株式会社製クロロ酢酸ノリマルブチル(11.60g、77mmol)をTHF(5mL)に溶かした溶液を滴下した。反応液を濾過して得られた濾液に炭酸カリウム(9.68g、70mmol)を水(50mL)に溶かした溶液を加えて氷浴中で冷却した。アクリル酸クロリド(6.96g、77mmol)をゆっくり滴下した後、室温(25℃)下で2時間撹拌した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで無色溶液13.3gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1-4)で表される化合物の無色液体5.5g(収率:約39%)を得た。
【0124】
【化60】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ0.93(t,3H),1.34-1.42(m,2H),1.59-1.66(m,2H),3.06/3.16(s,3H),4.11-4.19(m,4H),5.68-5.76(m,1H),6.28-6.44/6.60-6.66(m,2H)
【0125】
(合成例5)
<モノマーf2-1の合成>
Combi-Blocks社製のN-メチル-DL-アラニン(6.19g、60mmol)をメタノール(40mL)と混合して得られたスラリーを氷浴中で冷却した後、塩化チオニル(14.28g、120mmol)をゆっくり滴下した。滴下途中で反応液は透明な溶液となり、そのまま室温(25℃)下で一晩撹拌した。反応液を濃縮し、N-メチル-DL-アラニンのメチルエステル塩酸塩を無色粘調性液体(8.3g)として得た。得られたN-メチル-DL-アラニンのメチルエステル塩酸塩はそのまま次の反応に用いた。
N-メチル-DL-アラニンのメチルエステル塩酸塩(8.3g、54mmol)を水20mLに溶解し、炭酸カリウム(11.94g、86.5mmol)を水(20mL)に溶かした水溶液を加え、室温(25℃)下で1時間撹拌した。氷浴中で冷却した後、アクリル酸クロリド(5.38g、59.4mmol)をゆっくり滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して淡黄色液体6.0gを得た。更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(f2-1)で表される化合物の無色液体4.1g(収率:約44%)を得た。
【0126】
【化61】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.43/1.49(d,3H),2.91/3.03(s,3H),3.72/3.75(s,3H),4.68/5.29(q,1H),5.68-5.76(m,1H),6.22-6.39(m,1H),6.49-6.63(m,1H)
【0127】
(合成例6)
<モノマーf2-2の合成>
Combi-Blocks社製のN-メチル-DL-アラニン(6.19g、60mmol)をエタノール(40mL)と混合して得られたスラリーを氷浴中で冷却した後、塩化チオニル(14.28g、120mmol)をゆっくり滴下した。滴下途中で反応液は透明な溶液となり、その後白色固体が析出してスラリー状態となった。そのまま室温(25℃)下で一晩撹拌すると白色固体が溶解して透明になった。反応液を濃縮し、N-メチル-DL-アラニンのエチルエステル塩酸塩の無色固体10.3gを得た。得られたN-メチル-DL-アラニンのエチルエステル塩酸塩はそのまま次の反応に用いた。
N-メチル-DL-アラニンのエチルエステル塩酸塩(10.3g、61.4mmol)を水12mLに溶解し、炭酸カリウム(15.28g、110.6mmol)を水(25ml)に溶かした水溶液を加え、室温(25℃)下で1時間撹拌した。氷浴中で冷却した後、アクリル酸クロリド(6.11g、67.5mmol)をゆっくり滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して淡黄色液体11.5gを得た。更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(f2-2)で表される化合物の無色液体8.1g(収率:約71%)を得た。
【0128】
【化62】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.27(t,3H),1.43/1.48(d,3H),2.91/3.03(s,3H),4.14-4.22(m,2H),4.66/5.29(q,1H),5.67-5.75(m,1H),6.22-6.38(m,1H),6.50-6.63(m,1H)
【0129】
(合成例7)
<モノマーd4-1の合成>
東京化成工業株式会社製イソプロピルアミン(2.95g、50mmol)を酢酸エチル(50mL)に溶解し、炭酸カリウム(6.91、50mmol)を加えて室温(25℃)下で撹拌した。東京化成工業株式会社製クロロ酢酸メチル(5.43g、50mmol)を酢酸エチル(5mL)に溶かした溶液を室温(25℃)下で滴下して2時間撹拌した。反応液を濾過して析出した塩を除去した後、炭酸カリウム(6.91g、50mmol)を水50mLに溶かした水溶液を加えた。氷浴で冷却した後、アクリル酸クロリド(4.98g、55mmol)をゆっくり滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで無色溶液9.8gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d4-1)で表される化合物の無色液体3.7g(収率:約40%)を得た。
【0130】
【化63】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.11/1.22(d,6H),3.74/3.77(s,3H),3.99(s,2H),4.26-4.32(m,1H),5.66-5.73(m,1H),6.31-6.35/6.62-6.67(m,2H)
【0131】
(合成例8)
<モノマーd4-5の合成>
東京化成工業株式会社製のイソプロピルアミン(2.95g、50mmol)、酢酸エチル(50mL)、炭酸カリウム(6.91g、50mmol)の混合物に東京化成工業製のイソプロピルクロロアセテート(6.83、50mmol)を酢酸エチル(5mL)で希釈した溶液を滴下した。反応液を濾過して析出した塩を除去した後、炭酸カリウム(6.91g、50mmol)を水50mLに溶かした水溶液を加えた。氷浴で冷却した後、アクリル酸クロリド(4.98g、55mmol)をゆっくり滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで無色溶液8.5gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d4-5)で表される化合物の無色液体1.3g(収率:約12%)を得た。
【0132】
【化64】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.11/1.21(d,6H),1.25(d,6H),3.95(s,2H),4.28/4.93(m,1H),5.05(m,1H),5.65-5.71(m,1H),6.29-6.34/6.61-6.67(m,2H)
【0133】
(合成例9)
<モノマーd3-2の合成>
東京化成工業株式会社製n-プロピルアミン(5.25g、88.8mmol)を酢酸エチル(60mL)に溶解し、炭酸カリウム(12.27g、88.8mmol)を加えた。東京化成工業株式会社製クロロ酢酸エチル(10.88g、88.8mmol)を酢酸エチル(10mL)に溶かした溶液を室温(25℃)下で滴下し4時間撹拌した。反応液を濾過して析出した塩を除去した後、濃縮して無色溶液を12.3g得た。この溶液を室温(25℃)下で放置しておき、析出した無色結晶を酢酸エチルで洗って乾燥させることで、N-プロピルサルコシンエチルエステルを5.8g得た。この化合物をそのまま下記反応に用いた。
N-プロピルサルコシンエチルエステル(5.8g、40mmol)に水(10mL)を加え、次いで、炭酸カリウム(6.08g、44mmol)を水(20mL)に溶かした溶液を加えて氷浴中で冷却した。アクリル酸クロリド(3.98g、44mmol)をゆっくり滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで無色溶液7.0gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d3-2)で表される化合物の無色液体4.9g(収率:約62%)を得た。
【0134】
【化65】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ0.90-0.95(m,3H),1.26-1.30(m,3H),1.56-1.71(m,2H),3.37-3.44(m,2H),4.08/4.12(s,2H)4.18-4.25(m,2H),5.67-5.74(m,1H),6.28-6.42/6.58-6.63(m,2H)
【0135】
(合成例10)
<モノマーd6-1の合成>
東京化成工業株式会社製のn-ヘキシルアミン(8.10g、80mmol)、酢酸エチル(55mL)、炭酸カリウム(11.3g、81.8mmol)の混合物に東京化成工業製のクロロ酢酸メチル(9.55、88mmol)を滴下した。反応液を濾過して析出した塩を除去した後、炭酸カリウム(11.05g、80mmol)を水80mLに溶かした水溶液を加えた。氷浴で冷却した後、アクリル酸クロリド(8.0g、88mmol)をゆっくり滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで無色溶液16.1gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC-300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d6-1)で表される化合物の無色液体3.5g(収率:約19%)を得た。
【0136】
【化66】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ0.89(t,3H),1.26-1.33(m,6H),1.58-1.61(m,2H),3.40/3.44(t,2H),3.74/3.77(s,3H),4.10/4.13(s,2H),5.67-5.75(m,1H),6.29-6.42/6.57-6.62(m,2H)
【0137】
(合成例11)
<モノマーg1-2の合成>
4-ピペリジンカルボン酸エチル(7.9g、50mmol)を脱水ジクロロメタン(100mL)中に加え、フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、トリエチルアミン(7.3g、72mmol)を加えた。混合物を約-10℃に冷却した後、アクリル酸クロライド(5.4g、60mmol)を、系内温度が-10℃~-5℃になるようにゆっくりと滴下し、その後、2時間室温(25℃)下で撹拌した。析出物を濾過によって取り除き、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して茶色油状物を得た。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(Wakogel C300 300g)により精製して、淡黄色油状物(5.4g)を得た。この淡黄色油状物は、下記1H-NMRの結果から、下記の構造式(g1-2)で表される化合物であることが確認された。精製後の収率は約51%であった。
【0138】
【化67】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.26(t,3H),1.70(m,2H),1.94(m,2H),2.56(m,1H),2.91(t,1H),3.16(t,1H),3.90(d,1H),4.14(m,2H),4.44(d,1H),5.67(dd,1H),6.25(dd,1H),6.54-6.61(m,1H)
【0139】
(合成例12)
<モノマーg2-2の合成>
ニペコチン酸エチル(12.6g、80mmol)を脱水ジクロロメタン(100mL)中に加え、フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、トリエチルアミン(11.6g、115mmol)を加えた。混合物を約-10℃に冷却した後、アクリル酸クロライド(8.7g、96mmol)を、系内温度が-10℃~-5℃になるようにゆっくりと滴下し、その後、2時間室温(25℃)下で撹拌した。析出物を濾過によって取り除き、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して茶色油状物を得た。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(Wakogel C300 300g)により精製して、淡黄色油状物(9.1g)を得た。この淡黄色油状物は、下記1H-NMRの結果から、下記の構造式(g2-2)で表される化合物であることが確認された。精製後の収率は約53%であった。
【0140】
【化68】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.26(s,2H),1.43-1.59(m,1H),1.63-1.88(m,2H),2.00-2.20(m,2H),2.44-2.54(m,1H),3.06-3.24(m,1H),3.48-3.58(m,1H),3.82-3.94(d,1H),4.14(q,2H),5.69(d,1H),6.27(d,1H),6.53-6.71(m,1H)
【0141】
(合成例13)
<モノマーa1-1の合成>
東京化成工業株式会社製の2-(メチルアミノ)エタノール(15.02g,200mmol)を脱水ジクロロメタン200mL中に加え、トリエチルアミン46.8g(462mmol)を加えた。次に、ドライアイス-アセトン混合物中で約-60℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製アクリル酸クロリド15.39g(170mmol)を脱水ジクロロメタン8mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。再度、ドライアイス-アセトン混合物中で約-60℃に冷却し、アセチルクロリド(15.7g,200mmol)を脱水ジクロロメタン8mLで希釈してゆっくりと滴下した後に、室温(25℃)下で約2時間撹拌した。析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製シリカゲルC-300を300g充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(a1-1)で表される化合物の淡茶色油状物6.1g(収率約21%)を得た。
【0142】
【化69】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ2.04-2.08(m,3H),3.04-3.15(m,3H),3.63-3.71(m,2H),4.20-4.27(m,2H),5.69-5.72(m,1H),6.32-6.37(m,1H),6.56-6.63(m,1H)
【0143】
(合成例14)
<モノマーa1-4の合成>
東京化成工業株式会社製の2-(メチルアミノ)エタノール(6.01g,80mmol)を脱水ジクロロメタン120mL中に加え、トリエチルアミン18.7g(185mmol)を加えた。次に、氷-NaCl混合物中で約-15℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製アクリル酸クロリド6.15g(68mmol)を脱水ジクロロメタン4.5mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温(25℃)下で2.5時間撹拌した。再度、氷-NaCl混合物中で約-15℃に冷却し、イソブチルクロリド(8.52g、80mmol)を脱水ジクロロメタン4.5mLで希釈してゆっくりと滴下した後に、室温(25℃)下で約3.5時間撹拌した。析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製シリカゲルC-300を360g充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(a1-4)で表される化合物の淡黄色油状物2.2g(収率約16%)を得た。
【0144】
【化70】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.15-1.20(m,6H),2.52-2.57(m,1H),3.05-3.15(m,3H),3.65-3.71(m,2H),4.20-4.27(m,2H),5.69-5.72(m,1H),6.31-6.38(m,1H),6.55-6.65(m,1H)
【0145】
(合成例15)
<モノマーh1-5の合成>
東京化成工業株式会社製のグリセロールジメタクリレート5.7g(25mmol)を脱水ジクロロメタン100mL中に加え、フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、トリエチルアミン3.6g(36mmol)を加えた。次に、約-10℃まで冷却した後、酢酸クロライド2.4g(30mmol)を、系内温度が-10℃~-5℃になるようにゆっくりと滴下し、室温(25℃)下で2時間撹拌した。更に、析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して黄色油状物を得た。更に、Wakogel C300(和光純薬工業株式会社製)200gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより、黄色油状物を精製して、下記構造式(h1-5)で表される化合物の無色油状物3.2g(収率約47%)を得た。
【0146】
【化71】
同定データは次に示すとおりである。
1H-NMR(CDCl
3):δ1.95(s,6H),2.09(d,3H),4.23-4.42(m,4H),5.35-5.42(m,1H),5.59-5.63(m,2H),6.10-6.15(m,2H)
【0147】
(実施例1~37及び比較例1~6)
<組成物の調製>
表1-1から表1-3に記載の化合物を、表2-1から表2-5に記載の配合比(質量比)で調合して組成物を調製した。なお、実施例37は実施例1と同じ配合であるが、実施例1の重合開始剤を含まないもの(組成A)と重合開始剤を含むもの(組成B)を別々に準備し、評価の直前に両者を混ぜ合わせて調製したものである。
【0148】
<LED硬化性>
各組成物をコロナ処理済のPETフィルム(厚さ100μm)にセレクトローラー(オーエスジーシステムプロダクツ社製)OSP-13を用いて約10μmの厚さの膜を形成した。この膜にLED光(395nm)を、照射装置を用いて2,000mJ/cm2の照射エネルギーで硬化させた。水平な台上に置いた硬化膜を指で触って、硬化膜の状態を以下の基準で評価した。結果を表2-1から表2-5に示した。
[評価基準]
◎:タックがない
○:タックは残っているが固体の状態を維持している
△:タックは残っていて柔らかい感触があるが固体状態を維持している
×:硬化が不十分で液状状態である
【0149】
<硬化膜柔軟性>
上記硬化性評価で作製した各硬化膜を基材(PETフィルム)ごと折り曲げたときの状態を目視観察して、下記基準で評価した。結果を表2-1から表2-5に示した。
[評価基準]
◎:二つ折りにしてもひび割れが発生しない
○:直径5mmの金属棒に360°巻きつけてもひび割れが発生しない
△:直径10mmの金属棒に360°巻きつけてもひび割れが発生しない
×:直径10mmの金属棒に360°巻きつけてひび割れが発生する
【0150】
<生肉接着性>
市販の豚肉(3mm厚さのロース肉)にカッターナイフで約1cmの切れ目を入れた。この豚肉の切れ込み部分に調製した各組成物(約1g)を置き、スパチラで切れ込みの周囲に広がるように軽くならした。次に、前述の条件でLED光(波長:395nm)を照射し、裏面も同様に照射して生肉接着性評価用サンプルを作製した。
このサンプルを手で左右に引っ張った後にピンセットで接着部分を摘まみ上げたときの接着状態を観察して、以下の基準で評価した。結果を表2-1から表2-5に示した。
[評価基準]
◎:左右の引っ張り、摘まみ上げによっても接着状態を維持
○:左右の引っ張りに堪えるが、摘まみ上げによって接着状態が破壊される
△:左右の引っ張りでわずかに接着部に浮きが生じる
×:左右の引っ張りで接着部が剥がれたり、破壊される
【0151】
<臭気の評価>
各組成物の臭気を次の(1)~(3)の手順で評価した。評価基準は下記のとおりである。結果を表2-1から表2-5に示した。
(1)50ccのサンプル瓶(ガラス瓶)に、約100mg(0.1g)の各組成物を秤り取り、フタをした。
(2)室温(25℃)条件下で、30分間放置した。
(3)サンプル瓶(ガラス瓶)に鼻を近づけて、フタを開けた時の臭気を嗅いだ。
〔評価基準〕
◎:臭いをほとんど感じない
○:臭いを感じるが不快ではない
△:特有の臭気により不快感が生じる
×:特有の臭気により強い不快感が生じる
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
表2-1から表2-5の結果から、実施例1~37の組成物は、比較例1~6に比べて、硬化性、硬化膜柔軟性、生肉への接着性、及び臭気の少なさのバランスに優れるものである。更に、皮膚感作性リスクの少ない材料で構成することが可能性あることから医療用途に適したものであると言える。
【0161】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)及び下記一般式(4)の少なくともいずれかで表されるエステル構造を有するアクリルアミド化合物、重合開始剤、及び粘度調整成分を含有することを特徴とする組成物である。
【化72】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化73】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化74】
ただし、前記一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化75】
ただし、前記一般式(4)中、環Xは窒素原子を含む炭素数2~5の環構造を表し、R
4は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
5は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。ただし、環X、R
4及びR
5の炭素数の合計は3~6である。
<2> 前記粘度調整成分が重合性官能基を有する重合性オリゴマーである前記<1>に記載の組成物である。
<3> 前記粘度調整成分の含有量が、5質量%以上70質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の組成物である。
<4> 更に多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の組成物である。
<5> 前記多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が、5質量%以上70質量%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の組成物である。
<6> 前記エステル構造を有するアクリルアミド化合物が前記一般式(1)で表される化合物である前記<1>から<5>のいずれかに記載の組成物である。
<7> 前記エステル構造を有するアクリルアミド化合物が前記一般式(1)で表され、前記一般式(1)中のYが前記一般式(3)で表される前記<6>に記載の組成物である。
<8> 前記一般式(3)のR
2が炭素数1~2のアルキル基である前記<7>に記載の組成物である。
<9> 前記重合開始剤の分子量が800以上である前記<1>から<8>のいずれかに記載の組成物である。
<10> 有機溶剤を含まない前記<1>から<9>のいずれかに記載の組成物である。
<11> 活性エネルギー線硬化型組成物である前記<1>から<10>のいずれかに記載の組成物である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の組成物が容器中に収容されてなることを特徴とする収容容器である。
<13> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の組成物を収容する収容部と、
前記組成物を付与する付与手段と、
前記組成物を硬化させる硬化手段と、
を有することを特徴とする2次元又は3次元の像形成装置である。
<14> 前記硬化手段が、波長365nm以上405nm以下にピークを有する紫外線を照射するUV-LEDである前記<13>に記載の像形成装置である。
<15> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の組成物を付与する付与工程と、
前記組成物を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とする2次元又は3次元の像形成方法である。
<16> 前記硬化工程において、波長365nm以上405nm以下にピークを有する紫外線をUV-LEDで照射する前記<15>に記載の像形成方法である。
<17> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の組成物を収容する収容部と、
前記組成物を付与する付与手段と、
を有することを特徴とする医療用シート作製装置である。
<18> 更に、波長365nm以上405nm以下にピークを有する紫外線を照射するUV-LEDである照射手段を有する前記<17>に記載の医療用シート作製装置である。
<19> 基材と、該基材上に前記<1>から<11>のいずれかに記載の組成物、又は該組成物の硬化物を含む層と、を有することを特徴とする医療用シートである。
<20> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする医療用接着剤又は被覆剤である。
<21> 更に、生物学的作用物質、治療薬、及び消毒薬から選択される少なくとも1種を含有する前記<20>に記載の医療用接着剤又は被覆剤である。
<22> 外科手術用接着剤である前記<20>から<21>のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤である。
<23> 外科手術用シート状接着剤である前記<20>から<21>のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤である。
<24> 創傷保護剤である前記<20>から<21>のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤である。
<25> 接着性を有する消毒剤である前記<20>から<21>のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤である。
<26> エステル構造を有する単官能アクリルアミド化合物及び粘度調整成分を含む組成物Aと、重合開始剤を含む組成物Bとからなる前記<20>から<25>のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤である。
【0162】
前記<1>から<11>のいずれかに記載の組成物、前記<12>に記載の収容容器、前記<13>から<14>のいずれかに記載の2次元又は3次元の像形成装置、前記<15>から<16>のいずれかに記載の2次元又は3次元の像形成方法、前記<17>から<18>のいずれかに記載の医療用シート作製装置、前記<19>に記載の医療用シート、及び前記<20>から<26>のいずれかに記載の医療用接着剤又は被覆剤によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0163】
1 貯留プール(収容部)
3 可動ステージ
4 活性エネルギー線
5 組成物
6 硬化層
30 造形物用吐出ヘッドユニット
31、32 支持体用吐出ヘッドユニット
33、34 紫外線照射手段
35 立体造形物
36 支持体積層部
37 造形物支持基板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0164】
【文献】特開2005-154477号公報
【文献】特開2010-180377号公報
【文献】特表2013-538280号公報
【非特許文献】
【0165】
【文献】Trends in Glycoscience and Glycotechnology Vol.14 No.80 pp.331-341