(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】発光素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20221012BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20221012BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20221012BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01S5/042 610
H01S5/183
H01S5/343 610
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2018146139
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川島 毅士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊一
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174906(JP,A)
【文献】特開平10-321952(JP,A)
【文献】国際公開第02/045223(WO,A1)
【文献】特開2012-119409(JP,A)
【文献】特開昭59-094485(JP,A)
【文献】国際公開第2010/027016(WO,A1)
【文献】特表2009-503823(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078595(WO,A1)
【文献】特開2003-218453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1のn型半導体層と、
前記第1のn型半導体層上の一部に形成されたトンネル接合層と、
前記第1のn型半導体層上に形成され、前記トンネル接合層を被覆するp型半導体層と、
前記p型半導体層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2のn型半導体層と、
を備え
、
前記p型半導体層は、
前記トンネル接合層を被覆すると共に、前記トンネル接合層に由来する段差部を有し、第1の屈折率を有する第1の層と、
前記第1の層上に形成され、前記第1の屈折率より低い第2の屈折率を有する第2の層と、
を備え、
平面視で前記トンネル接合層と重なり合う第1の領域における前記第2の層の厚さが、平面視で前記トンネル接合層から離隔した第2の領域における前記第2の層の厚さより小さく、前記p型半導体層の実効屈折率が、前記第1の領域において前記第2の領域よりも大きいことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記トンネル接合層は、p型InGaN層及びn型InGaN層を含み、
前記p型半導体層は、p型GaN層を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記トンネル接合層を含む前記基板に平行な面内で、
前記トンネル接合層の屈折率よりも前記p型半導体層の屈折率の方が小さいことを特徴とする請求項1
又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記トンネル接合層と前記活性層との間の距離が120nm以下であることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記トンネル接合層の上方において、前記活性層と前記第2のn型半導体層とが前記基板に平行な面内で隣り合い、平面視で前記トンネル接合層と前記第2のn型半導体層との間に前記活性層が位置し、
前記活性層の屈折率は、前記p型半導体層の屈折率及び前記第2のn型半導体層の屈折率より高いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記活性層と前記p型半導体層の間にInを含む層を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1のn型半導体層が第1の多層膜反射鏡を含み、
前記第2のn型半導体層が第2の多層膜反射鏡を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法であって、
基板上に第1のn型半導体層を形成する工程と、
前記第1のn型半導体層上の一部分にトンネル接合層を形成する工程と、
前記第1のn型半導体層上に、前記トンネル接合層を被覆するp型半導体層を形成する工程と、
前記p型半導体層上に活性層を形成する工程と、
前記活性層上に第2のn型半導体層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記p型半導体層を形成する工程及び前記活性層を形成する工程において、前記トンネル接合層に由来する凸形状を残して前記p型半導体層及び前記活性層を形成することを特徴とする請求項8に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記p型半導体層を形成する工程の温度が、前記活性層を形成する工程の温度より100℃以上高いことを特徴とする請求項8又は9に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端面発光レーザや面発光レーザでは、効率的に光を増幅するために、電流を狭い領域に絞り反転分布を起こし、そこに光を閉じ込めて増幅させる。例えば、ウェハ表面側のp型半導体層にリッジを形成した構造や、p型半導体層中の電流を流さない領域に屈折率の低いn型半導体層を埋め込んだ構造がある。GaAs系材料ではAl(Ga)Asを酸化させた酸化狭窄構造などがある。
【0003】
電流を狭い領域に絞る構造は電流狭窄構造とよばれ、電流狭窄構造は一般にp型半導体層に形成される。p型半導体層はn型半導体層と比べて電気抵抗が高いため、p型半導体層に電流狭窄構造を形成することで、電流狭窄構造から活性層に注入されるまでの間にキャリアが基板面内方向に広がるのを抑えることができる。しかし、p型半導体層での抵抗の大きさが発光素子の特性に大きく影響することがあり、特に、窒化物半導体を用いた発光素子にて顕著である。例えば、p-GaNの電気抵抗はn-GaNの電気抵抗の2~3桁も高く、発光素子の特性への影響が大きい。
【0004】
特許文献1には、電流狭窄構造にトンネル接合を利用した窒化物半導体発光素子が開示されている。トンネル接合とはp型不純物及びn型不純物を高濃度に添加したpn接合で、従来のpn接合と比べてp型半導体とn型半導体の界面近傍に形成される空乏層が非常に薄くなる。pn接合間に逆バイアスを印加するとキャリアが空乏層を通り抜け、n型半導体からp型半導体へ電流を流すことができる。特許文献1には、p型半導体層の上部の一部分にトンネル接合が形成された素子が記載されている。この窒化物半導体発光素子には、トンネル接合によって電流が流れる部分と、空乏層の厚いpn接合で電流が流れない部分とが含まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の窒化物半導体発光素子によっても電気抵抗を十分に低減することはできない。
【0006】
本発明は、電気抵抗を低減することができる発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の一態様によれば、発光素子は、基板上に形成された第1のn型半導体層と、前記第1のn型半導体層上の一部に形成されたトンネル接合層と、前記第1のn型半導体層上に形成され、前記トンネル接合層を被覆するp型半導体層と、前記p型半導体層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成された第2のn型半導体層と、を備え、前記p型半導体層は、前記トンネル接合層を被覆すると共に、前記トンネル接合層に由来する段差部を有し、第1の屈折率を有する第1の層と、前記第1の層上に形成され、前記第1の屈折率より低い第2の屈折率を有する第2の層と、を備え、平面視で前記トンネル接合層と重なり合う第1の領域における前記第2の層の厚さが、平面視で前記トンネル接合層から離隔した第2の領域における前記第2の層の厚さより小さく、前記p型半導体層の実効屈折率が、前記第1の領域において前記第2の領域よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、電気抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図2A】第1の実施形態に係る発光素子の製造方法の第1例を示す断面図(その1)である。
【
図2B】第1の実施形態に係る発光素子の製造方法の第1例を示す断面図(その2)である。
【
図3A】第1の実施形態に係る発光素子の製造方法の第2例を示す断面図(その1)である。
【
図3B】第1の実施形態に係る発光素子の製造方法の第2例を示す断面図(その2)である。
【
図4】第2の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図5A】第2の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図5B】第2の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図6】第3の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図7A】第3の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図7B】第3の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図8】第4の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図9A】第4の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図9B】第4の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図9C】第4の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図9D】第4の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図10】第5の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図11A】第5の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図11B】第5の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図11C】第5の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図11D】第5の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図12】第6の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図13A】第6の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図13B】第6の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図13C】第6の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図13D】第6の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図14】第7の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図15A】第7の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図15B】第7の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図15C】第7の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図15D】第7の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図16】第8の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図17A】第8の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図17B】第8の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図17C】第8の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図17D】第8の実施形態に係る発光素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、本開示では、構成要素間の位置関係の説明において、基板を基準とし、基板から離れる方向を上方向ということがある。例えば、基板の下面に接するように形成された膜を、基板の下面上に形成された膜ということがある。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、窒化物半導体を用いた発光素子に関する。
図1は、第1の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0012】
第1の実施形態に係る発光素子100は、基板101上に形成された第1のn型半導体層102と、第1のn型半導体層102上の一部に形成された凸部103と、第1のn型半導体層102上に形成され、凸部103を被覆するp型半導体層104と、p型半導体層104上に形成された活性層105と、活性層105上に形成された第2のn型半導体層106と、を含む。凸部103はトンネル接合層を含む。例えば、第1のn型半導体層102、凸部103、p型半導体層104、活性層105及び第2のn型半導体層106には窒化物半導体が用いられる。
【0013】
基板101の材料は、窒化物半導体の半導体層を成長できる材料である。基板101は、例えば、GaN基板や、GaNを異種基板上に成長したGaNテンプレートでもよい。異種基板の材料としては、サファイア、Si、GaAs、SiC等を用いることができる。
【0014】
第1のn型半導体層102は、例えば、n型不純物としてSi、Ge等を含む。第1のn型半導体層102上の電流を流す領域に凸部103が設けられている。p型半導体層104は、例えば、p型不純物としてMg等を含む。凸部103はトンネル接合層を備え、第1のn型半導体層102からp型半導体層104へ電流を流すことができる。凸部の形成されていない領域では、第1のn型半導体層102とp型半導体層104とが接触して空乏層の厚いpn接合が形成されるため、電流が流れない。
【0015】
活性層105には、p型半導体層104及び第2のn型半導体層106から注入されたキャリアを閉じ込め、高い発光効率を得るために、例えば、InGaN/GaNやInGaN/InGaNの多重量子井戸構造等が用いられる。p型不純物として用いられるMgは、積層方向(基板から離隔する方向)に特に拡散しやすい。従って、p型半導体層104中のMgが活性層105へ混入するおそれがある。活性層105にMgが混入すると発光効率が低下するため、Mgの拡散を抑制することが好ましい。このため、Mgの拡散を抑制するために、例えば、p型半導体層104と活性層105との間にInGaN、AlInN、AlGaInN等のInを含む層が設けられていることが好ましく、これらのうちでも特にInGaNの層が設けられていることが好ましい。
【0016】
凸部103に含まれるトンネル接合層は、少なくとも高濃度の不純物をドーピングした2層の半導体層からなる。例えば、基板101側にSi、Ge等を1020cm-3程度ドーピングした高濃度n型半導体層が設けられ、活性層105側にMg等を1020cm-3程度ドーピングした高濃度p型半導体層が設けられる。
【0017】
次に、第1の実施形態に係る発光素子100の製造方法の第1例について説明する。
図2A~
図2Bは、第1の実施形態に係る発光素子100の製造方法の第1例を示す断面図である。
【0018】
まず、
図2Aに示すように、基板101上に、第1のn型半導体層102及び凸部103の元となる積層構造153を形成する。積層構造153はトンネル接合層を含む。第1のn型半導体層102及び積層構造153は、例えば、有機金属化学気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシー(molecular beam epitaxy:MBE)法、ハイドライド気相成長(hydride vapor phase epitaxy:HVPE)法、スパッタ法等により形成することができる。次いで、同じく
図2Aに示すように、発光素子100の電流を流す領域、つまり凸部103の形成予定領域、を覆うドライエッチング用マスク191を積層構造153上に形成する。
【0019】
その後、
図2Bに示すように、ドライエッチング用マスク191を用いて積層構造153のドライエッチングを行うことにより、凸部103を形成する。
【0020】
続いて、ドライエッチング用マスク191を除去する。次いで、第1のn型半導体層102上に、p型半導体層104、活性層105及び第2のn型半導体層106を形成する(
図1参照)。p型半導体層104、活性層105及び第2のn型半導体層106は、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0021】
このようにして、第1の実施形態に係る発光素子100を製造することができる。
【0022】
次に、第1の実施形態に係る発光素子100の製造方法の第2例について説明する。
図3A~
図3Bは、第1の実施形態に係る発光素子100の製造方法の第2例を示す断面図である。
【0023】
まず、
図3Aに示すように、基板101上に、第1のn型半導体層102を形成する。第1のn型半導体層102は、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。次いで、同じく
図3Aに示すように、発光素子100の電流を流さない領域、つまり凸部103の形成予定領域を除く領域、を覆う成長阻害マスク192を第1のn型半導体層102上に形成する。成長阻害マスク192は、発光素子100の電流を流す領域、つまり凸部103の形成予定領域、を露出する。
【0024】
その後、
図3Bに示すように、成長阻害マスク192を用いて、第1のn型半導体層102上に、凸部103を形成する。凸部103は、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0025】
続いて、成長阻害マスク192を除去する。次いで、第1のn型半導体層102上に、p型半導体層104、活性層105及び第2のn型半導体層106を形成する(
図1参照)。p型半導体層104、活性層105及び第2のn型半導体層106は、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0026】
このようにして、第1の実施形態に係る発光素子100を製造することができる。
【0027】
発光素子100では、トンネル接合層を含む凸部103を被覆するp型半導体層104が第1のn型半導体層102上に形成され、活性層105がp型半導体層104上に形成される。つまり、本実施形態では、トンネル接合層を含む凸部103を形成した後に活性層105を形成することができる。特許文献1に記載された方法のように、活性層の形成後にトンネル接合層を形成するためのエッチングを行う場合には、活性層にダメージが生じるおそれがある。このようなダメージはリーク電流を増加させかねないが、本実施形態によれば、このようなダメージ及びリーク電流を抑制することができる。
【0028】
特許文献1には、ドライエッチングに伴う活性層へのダメージによるリーク電流を抑制するために、電流を流さない部分におけるp-GaN層の表面から活性層までの厚さを130nm以上とすることが記載されている。一方、本実施形態では、このようなダメージ及びリーク電流の発生を抑制できるため、トンネル接合層と活性層105との間のp型半導体層104を薄くすることができ、発光素子100の電気抵抗を低減することができる。
【0029】
また、基板上に下部n型半導体層、活性層及びp型半導体層がこの順で形成される従来の発光素子と比べると、p型半導体層104を高温で形成することができ、良好な活性層105を得ながら、p型半導体層104の電気抵抗を低減することができる。
【0030】
一般に、成長温度が高いほど、p型半導体層の電気抵抗は低くなる。従って、電気抵抗の観点からは、p型半導体層は高温で成長させることが好ましい。ところが、p型半導体層より先に活性層が形成されている場合、p型半導体層を上記のような高温で形成すると、p型半導体層の形成中に活性層も高温となり、活性層が熱によるダメージを受ける。特に、活性層にInGaNが用いられている場合、In組成が高いほどダメージを受けやすい。発光帯域が400nm帯の発光素子に用いられるIn組成が10%程度のInGaN層は比較的ダメージを受けにくいが、長波長の発光素子に含まれるInGaN層はダメージを受けやすい。例えば、発光帯域が450nm帯の発光素子に用いられるIn組成が20%程度のInGaN層及び発光帯域が530nm帯の発光素子に用いられるIn組成が30%程度のInGaN層はダメージを受けやすく、品質が劣化したり、InGaN層そのものが熱で分解したりしてしまう。p型半導体層の成長温度を下げることで、これらダメージを抑制することはできるが、それでは電気抵抗が大きくなってしまう。
【0031】
一方、本実施形態では、p型半導体層104の形成後に活性層105を形成することができる。従って、p型半導体層104を高温で形成しても活性層105に熱によるダメージは生じない。このため、p型半導体層104は高温で成長させることが好ましい。具体的には、p型半導体層104の成長温度は、活性層105の成長温度より100℃以上高いことが好ましく、200℃以上高いことがより好ましく、1000℃以上であることが特に好ましい。
【0032】
なお、活性層105の後に形成される第2のn型半導体層106の電気抵抗は、p型半導体層104と比較して成長温度の影響を受けにくい。従って、第2のn型半導体層106は活性層105に熱によるダメージが生じにくい温度で形成することができる。活性層105と第2のn型半導体層106との間での成長温度の差は200℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
【0033】
更に、上述のように、p型不純物として用いられるMgは、積層方向(基板から離隔する方向)に拡散しやすい。例えば、基板上に下部n型半導体層、活性層、p型半導体層、トンネル接合層及び上部n型半導体層がこの順で形成される従来の発光素子では、トンネル接合層に高濃度で含まれるMgが上部n型半導体層に向かって拡散しやすい。この構造では、トンネル接合層に、p型半導体層側の高濃度p型半導体層及び上部n型半導体層側の高濃度n型半導体層が含まれるため、高濃度p型半導体層に含まれるMgは高濃度p型半導体層及び上部n型半導体層に拡散しやすい。また、トンネル接合層を部分的に形成した電流狭窄構造が設けている場合は、トンネル接合層がない部分でもp型半導体層から上部n型半導体層へとMgが拡散しやすい。上部n型半導体層にMgが混入すると、Mgから発生したホールが電子を補償するため、上部n型半導体層の電子濃度が低下する。
【0034】
また、Mgは活性化エネルギーが深く、室温で数%~10%程度しか活性化しないことから、Si等のn型不純物と比べて1~2桁ほど高い1019cm-3~1020cm-3の濃度でドーピングされる。このため、上部n型半導体層にはn型不純物より高濃度でMgが混入することもあり、不純物によるキャリア散乱がより増加し電子移動度が低下し得る。
【0035】
基板上に下部n型半導体層、活性層、p型半導体層、トンネル接合層及び上部n型半導体層がこの順で形成される従来の発光素子では、これらの電子濃度の低下及び電子移動度の低下によって上部n型半導体層の電気抵抗が大きく増加しやすい。
【0036】
更に、トンネル接合層における不純物プロファイルが急峻であるほど、トンネル接合層の電気抵抗が低くなるが、不純物プロファイルが急峻であるほど、Mgが積層方向に拡散して上部n型半導体層に混入しやすい。
【0037】
一方、本実施形態では、第1のn型半導体層102及びトンネル接合層の高濃度n型半導体層を高濃度p型半導体層よりも基板101側に形成することができるため、高濃度p型半導体層からのMgの第1のn型半導体層102及び高濃度n型半導体層への混入を著しく抑制することができる。
【0038】
従って、不純物濃度が高く、不純物プロファイルが急峻なトンネル接合層を用いても、Mgの混入に伴う第1のn型半導体層102の電気抵抗の上昇を抑制することができる。
【0039】
なお、発光素子100の製造方法に関し、連続した半導体層の形成(結晶成長)の回数から、上記の第1例(
図2A~
図2B)が第2例(
図3A~
図3B)よりも好ましい。第1例では、ドライエッチング用マスク191の形成前の第1のn型半導体層102及び積層構造153の形成、並びにドライエッチング用マスク191の除去後のp型半導体層104、活性層105及び第2のn型半導体層106の形成が行われる。一方、第2例では、成長阻害マスク192の形成前の第1のn型半導体層102の形成、成長阻害マスク192の形成後かつ除去前の凸部103の形成、並びに、成長阻害マスク192の除去後のp型半導体層104、活性層105及び第2のn型半導体層106の形成が行われる。このように、連続した半導体層の形成(結晶成長)の回数が、第1例では2であるのに対し、第2例では3である。従って、第1例が第2例より好ましい。
【0040】
凸部103の厚さは特に限定はされない。凸部103の厚さが50nm未満であると、その後に、p型半導体層104を平坦に形成し、p型半導体層104上に形成する活性層105等の半導体層の厚さ及び混晶組成等を制御しやすい。凸部103の厚さが50nm以上であっても、原子がマイグレーションしやすい条件でp型半導体層104を形成することで、p型半導体層104を平坦に形成し、活性層105等の半導体層の厚さ及び混晶組成等を制御することができる。半導体層の厚さ及び混晶組成等が安定していることは、発光素子の特性の安定につながる。
【0041】
なお、凸部103の上方に形成する半導体層に凸部103に由来する段差(凹凸)があってもなくてもよい。p型半導体層104をMOCVD法により形成する場合、V族(窒素)原料及びIII族原料の供給比であるV/III比を高くしたり、チャンバ内を減圧したりすることで、原子のマイグレーションを促進し、段差(凹凸)を緩和することができる。また、p型半導体層104の形成後に窒素原料を供給したまま熱処理をすることで、原子のマイグレーションを促進し、段差(凹凸)を緩和することもできる。
【0042】
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
【0043】
本変形例では、p型半導体層104の屈折率が凸部103の平均屈折率より小さい。例えば、凸部103に含まれるトンネル接合層がp型GaN層及びn型GaN層から構成され、p型半導体層104がp型AlGaN層であってもよい。また、例えば、凸部103に含まれるトンネル接合層がp型InGaN層及びn型InGaN層から構成され、p型半導体層104がp型GaN層又はp型AlGaN層であってもよい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0044】
本変形例によれば、屈折率の相違により光閉じ込め構造を実現することができる。すなわち、この変形例によれば、基板101の面内方向での光閉じ込め構造を実現することができる。光閉じ込め構造の実現により、閾値の低い発光素子100を得ることができる。
【0045】
更に、本変形例では、薄いp型半導体層104を用いて、光閉じ込め構造を活性層105の近傍に形成することができる。活性層105の近傍に光閉じ込め構造を形成することで、活性層105の増幅部(電流を流して光が増幅する部分)との間で光の重なりを大きくすることができる。光閉じ込め構造を有するトンネル接合層と活性層105の距離は、好ましくは120nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。
【0046】
また、トンネル接合層の活性層105側若しくは基板101側又はこれらの両方にp型半導体層104より屈折率の高い半導体層を設けることで、凸部103の平均屈折率が高くなり、面内方向に光をより強く閉じ込めることができる。また、トンネル接合層の活性層105側若しくは基板101側又はこれらの両方に設ける半導体層の屈折率を、発光素子100の光閉じ込め構造に合わせることでも光閉じ込めを強くできる。例えば、端面発光レーザの場合は、活性層105に近いトンネル接合層の上部に屈折率の高い半導体層を設けることで、凸部の103の平均屈折率も高められるため、積層方向の光閉じ込めを強くしつつ、基板101の面内方向の光閉じ込めも強くできる。また、凸部103の平均屈折率がp型半導体層104の屈折率より低くならない程度に、活性層105から遠いトンネル接合層の下部に低屈折率の半導体層を設けることもできる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、p型半導体層の構成の点で第1の実施形態と相違する。
図4は、第2の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0048】
第2の実施形態に係る発光素子200は、p型半導体層104に代えてp型半導体層204を含む。p型半導体層204は、p型半導体層104と同様に、凸部103を被覆する。p型半導体層204は、第1の屈折率を備えた高屈折率層204a、及びその上の第2の屈折率を備えた低屈折率層204bを含む。第2の屈折率は第1の屈折率よりも低い。例えば、高屈折率層204aはGaN層であり、低屈折率層204bはAlGaN層である。また、高屈折率層204aの表面は凸部103に由来する段差(凹凸)を有するが、低屈折率層204bの表面は実質的に平坦である。従って、凸部103の上方での低屈折率層204bの厚さは、平面視で凸部103から離隔した部分における低屈折率層204bの厚さよりも小さい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0049】
発光素子200においては、低屈折率層204bが、平面視で、凸部103と重なり合う領域(第1の領域)において、凸部103から離隔した領域(第2の領域)よりも薄い。このため、凸部103の上方の実効屈折率が、平面視で凸部103から離隔した領域における実効屈折率よりも高く、光の閉じ込め構造が実現される。光閉じ込め構造の実現により、閾値の低い発光素子200を得ることができる。
【0050】
なお、p型半導体層204に含まれる、互いに屈折率が相違する半導体層の数は3以上であってもよい。また、p型半導体層204に代えて、第1のn型半導体層102側から活性層105側にかけて屈折率が連続的に低下するp型半導体の組成傾斜層を用いてもよい。
【0051】
次に、第2の実施形態に係る発光素子200の製造方法について説明する。
図5A~
図5Bは、第2の実施形態に係る発光素子200の製造方法を示す断面図である。
【0052】
まず、
図5Aに示すように、第1の実施形態と同様にして、基板101上に、第1のn型半導体層102及び凸部103を形成する。凸部103は、第1例、第2例のいずれで形成してもよい。次いで、同じく
図5Aに示すように、第1のn型半導体層102上に高屈折率層204aを形成する。このとき、高屈折率層204aは、その表面が凸部103に由来する段差(凹凸)を有するような条件で形成する。高屈折率層204aは、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0053】
その後、
図5Bに示すように、高屈折率層204a上に低屈折率層204bを形成する。このとき、低屈折率層204bは、その表面が実質的に平坦になるような条件で形成する。低屈折率層204bは、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0054】
続いて、低屈折率層204b上に活性層105及び第2のn型半導体層106を形成する(
図4参照)。活性層105及び第2のn型半導体層106は、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0055】
このようにして、第2の実施形態に係る発光素子200を製造することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、凸部、p型半導体層、活性層及び第2のn型半導体層の構成の点で第1の実施形態と相違する。
図6は、第3の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0057】
第3の実施形態に係る発光素子300では、凸部103が第1の実施形態よりも厚く形成されている。例えば、凸部103の厚さは50nm以上である。第1の実施形態では、p型半導体層104の表面が実質的に平坦であるが、第3の実施形態では、p型半導体層104の表面が凸部103に由来する段差(凹凸)を有する。同様に、活性層105及び第2のn型半導体層106も凸部103に由来する段差(凹凸)を有する。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0058】
発光素子300では、凸部103の上方において、基板101の面内方向で活性層105と第2のn型半導体層106とが隣り合い、この隣り合う部分では、平面視で凸部103と第2のn型半導体層106との間に活性層105が位置する。従って、活性層105の屈折率が、p型半導体層104及び第2のn型半導体層106の屈折率よりも高ければ、凸部103の上方の活性層105においては、基板101の面内方向にも屈折率の分布が生じ、光閉じ込め構造が実現される。光閉じ込め構造の実現により、閾値の低い発光素子300を得ることができる。
【0059】
なお、第2のn型半導体層106の表面が実質的に平坦になっていてもよい。
【0060】
次に、第3の実施形態に係る発光素子300の製造方法について説明する。
図7A~
図7Bは、第3の実施形態に係る発光素子300の製造方法を示す断面図である。
【0061】
まず、
図7Aに示すように、第1の実施形態と同様にして、基板101上に、第1のn型半導体層102及び凸部103を形成する。凸部103は、第1の実施形態よりも厚く、例えば50nm以上の厚さで形成する。凸部103は、第1例、第2例のいずれで形成してもよい。
【0062】
次いで、
図7Bに示すように、第1のn型半導体層102上にp型半導体層104を形成する。このとき、p型半導体層104は、その表面が凸部103に由来する段差(凹凸)を有するような条件で形成する。p型半導体層104は、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0063】
その後、p型半導体層104上に活性層105及び第2のn型半導体層106を形成する(
図6参照)。活性層105及び第2のn型半導体層106は、例えば、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタ法等により形成することができる。
【0064】
このようにして、第3の実施形態に係る発光素子300を製造することができる。
【0065】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、窒化物半導体を用いた発光素子に関する。
図8は、第4の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0066】
第4の実施形態に係る発光素子400は、サファイア基板401、サファイア基板401上のn-GaN層402、n-GaN層402上のn++-GaN層403a、及びn++-GaN層403a上のp++-GaN層403bを含む。例えば、p++-GaN層403bにMgが1020cm-3程度ドーピングされ、n++-GaN層403aにSi又はGeが1020cm-3程度ドーピングされ、p++-GaN層403b及びn++-GaN層403aがトンネル接合層を構成する。p++-GaN層403b、n++-GaN層403a、及びn-GaN層402の一部がエッチングされ、凸部403が形成されている。つまり、凸部403は、n-GaN層402の一部(表層部)及びトンネル接合層を含む。なお、凸部403にn-GaN層402が含まれず、凸部403がトンネル接合層から構成されていてもよい。
【0067】
発光素子400は、更に、n-GaN層402上のp-GaN層404、p-GaN層404上のp-AlGaN層407、p-AlGaN層407上の多重量子井戸層405、及び多重量子井戸層405上のn-GaN層406を有する。例えば、p-GaN層404は凸部403を上方及び側方から被覆する。多重量子井戸層405は、活性層の一例であり、互いに交互に積層されたInGaN層及びGaN層を含む。p-AlGaN層407は、電子ブロック層として機能し、多重量子井戸層405からp-GaN層404への電子の移動をブロックする。
【0068】
n-GaN層406、多重量子井戸層405、p-AlGaN層407、p-GaN層404、及びn-GaN層402の一部がエッチングされ、素子分離構造としてメサ構造408が形成されている。メサ構造408の周囲において、n-GaN層402の上面上にアノード電極409が形成されている。例えば、アノード電極409は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。平面視で凸部403から離隔した領域において、n-GaN層406の上面上にカソード電極410が形成されている。カソード電極410は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0069】
次に、第4の実施形態に係る発光素子400の製造方法について説明する。
図9A~
図9Dは、第4の実施形態に係る発光素子400の製造方法を示す断面図である。
【0070】
まず、
図9Aに示すように、MOCVD装置を用いて、サファイア基板401上に低温バッファ層(図示せず)を介してn-GaN層402、n
++-GaN層403a及びp
++-GaN層403bを成長させる。例えば、成長温度は1150℃とし、n-GaN層402の厚さは5μmとし、n
++-GaN層403aの厚さは10nmとし、p
++-GaN層403bの厚さは5nmとする。
【0071】
次いで、
図9Bに示すように、凸部403を形成する。凸部403の形成では、
図9Aに示す積層構造(サファイア基板401等)をMOCVD装置から取り出し、フォトリソグラフィーにより、発光素子400の電流を流す領域、つまり凸部403の形成予定領域、を覆うドライエッチング用マスク(図示せず)をp
++-GaN層403b上に形成する。ドライエッチング用マスクとしては、例えば、平面形状が円で、直径が10μmのSiO
2膜を形成する。次いで、ドライエッチング用マスクを用いてp
++-GaN層403b、n
++-GaN層403a及びn-GaN層402のドライエッチングを行うことにより、凸部403を形成する。電流を流さない部分のトンネル接合層を確実に除去するため、例えばエッチング深さは30nmとするが、n
++-GaN層403aのエッチングが完了しn-GaN層402が露出した時点でエッチングを終了してもよい。つまり、n-GaN層402はエッチングしなくてもよい。凸部403の形成後、ドライエッチング用マスクを除去する。
【0072】
その後、
図9Cに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN層402上に、p-GaN層404、p-AlGaN層407、多重量子井戸層405及びn-GaN層406を成長させる。例えば、p-GaN層404及びp-AlGaN層407の成長温度は1150℃とし、p-GaN層404の厚さは凸部403上で50nmとし、p-AlGaN層407の厚さは20nmとする。p-GaN層404の形成中に、凸部403に由来する段差(凹凸)が解消されていき、凸部403の側方において、p-GaN層404の厚さは80nmとなる。例えば、多重量子井戸層405の成長温度は800℃とし、多重量子井戸層405の成長では、厚さが3nmのInGaN層及び厚さが7nmのGaN層を交互に5周期形成する。例えば、n-GaN層406の成長温度は900℃とし、n-GaN層406の厚さは200nmとする。
【0073】
続いて、
図9Dに示すように、素子分離構造としてメサ構造408を形成する。メサ構造408の形成では、
図9Cに示す積層構造(サファイア基板401等)をMOCVD装置から取り出し、n-GaN層406、多重量子井戸層405、p-AlGaN層407、p-GaN層404及びn-GaN層402の一部のドライエッチングを行う。例えば、メサ構造408の平面形状は、直径が50μmの円とする。次いで、酸素雰囲気中で
図9Dに示す積層構造(サファイア基板401等)の熱処理を行い、p
++-GaN層403b、p-GaN層404、p-AlGaN層407に含まれる水素を脱離させ、Mgを活性化させる。
【0074】
その後、メサ構造408の周囲において、n-GaN層402の上面上にアノード電極409を形成し、平面視で凸部403から離
隔した領域において、n-GaN層406の上面上にカソード電極410を形成する(
図8参照)。例えば、アノード電極409及びカソード電極410は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0075】
このようにして、第4の実施形態に係る発光素子400を製造することができる。
【0076】
第4の実施形態によれば、発光素子400では、トンネル接合層を含む凸部403を被覆するp-GaN層404がn-GaN層402上に形成され、多重量子井戸層405がp-GaN層404上に形成される。つまり、本実施形態では、トンネル接合層を含む凸部403を形成した後に多重量子井戸層405を形成することができる。従って、本実施形態によれば、従来の発光素子で生じるようなダメージ及びリーク電流を抑制することができる。このため、トンネル接合層と多重量子井戸層405との間のp-GaN層404を薄くすることができ、発光素子400の電気抵抗を低減することができる。
【0077】
また、p-GaN層404は高温で形成することができ、良好な多重量子井戸層405を得ながら、p-GaN層404の電気抵抗を低減することができる。
【0078】
更に、不純物濃度が高く、不純物プロファイルが急峻なトンネル接合層を用いても、Mgの混入に伴うn-GaN層402の電気抵抗の上昇を抑制することができる。
【0079】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、窒化物半導体を用いた発光素子の一例としての端面発光レーザに関する。
図10は、第5の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0080】
第5の実施形態に係る発光素子500は、n-GaN基板501、n-GaN基板501上のn-AlGaN層507、n-AlGaN層507上のn-GaN層502、n-GaN層502上のn++-InGaN層503a、及びn++-InGaN層503a上のp++-InGaN層503bを含む。例えば、p++-InGaN層503bにMgが1020cm-3程度ドーピングされ、n++-InGaN層503aにSi又はGeが1020cm-3程度ドーピングされ、p++-InGaN層503b及びn++-InGaN層503aがトンネル接合層を構成する。p++-InGaN層503b、n++-InGaN層503a、及びn-GaN層502の一部がエッチングされ、凸部503が形成されている。つまり、凸部503は、n-GaN層502の一部(表層部)及びトンネル接合層を含む。なお、凸部503にn-GaN層502が含まれず、凸部503がトンネル接合層から構成されていてもよい。
【0081】
発光素子500は、更に、n-GaN層502上のp-GaN層504、p-GaN層504上のp-AlGaN層512、p-AlGaN層512上の多重量子井戸層505、多重量子井戸層505上のn-GaN層506、及びn-GaN層506上のn-AlGaN層509を有する。例えば、p-GaN層504は凸部503を上方及び側方から被覆する。多重量子井戸層505は、活性層の一例であり、互いに交互に積層されたInGaN層及びGaN層を含む。p-AlGaN層512は、電子ブロック層として機能し、多重量子井戸層505からp-GaN層504への電子の移動をブロックする。
【0082】
n-AlGaN層509、n-GaN層506、多重量子井戸層505、p-AlGaN層512、p-GaN層504、n-GaN層502、及びn-AlGaN層507の一部がエッチングされ、素子分離構造としてメサ構造508が形成されている。n-GaN基板501の下面上にアノード電極510が形成されている。例えば、アノード電極510は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。n-AlGaN層509の上面上にカソード電極511が形成されている。カソード電極511は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0083】
次に、第5の実施形態に係る発光素子500の製造方法について説明する。
図11A~
図11Dは、第5の実施形態に係る発光素子500の製造方法を示す断面図である。
【0084】
まず、
図11Aに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN基板501上に、n-AlGaN層507、n-GaN層502、n
++-InGaN層503a及びp
++-InGaN層503bを成長させる。例えば、n-AlGaN層507及びn-GaN層502の成長温度は1150℃とし、n-AlGaN層507の厚さは600nmとし、n-GaN層502の厚さは100nmとする。例えば、n
++-InGaN層503a及びp
++-InGaN層503bの成長温度は850℃とし、n
++-InGaN層503aの厚さは10nmとし、p
++-InGaN層503bの厚さは10nmとする。
【0085】
次いで、
図11Bに示すように、凸部503を形成する。凸部503の形成では、
図11Aに示す積層構造(n-GaN基板501等)をMOCVD装置から取り出し、フォトリソグラフィーにより、発光素子500の電流を流す領域、つまり凸部503の形成予定領域、を覆うドライエッチング用マスク(図示せず)をp
++-InGaN層503b上に形成する。ドライエッチング用マスクとしては、例えば、平面形状が長方形で、幅が5μmのSiO
2膜を形成する。次いで、ドライエッチング用マスクを用いてp
++-InGaN層503b、n
++-InGaN層503a及びn-GaN層502のドライエッチングを行うことにより、凸部503を形成する。電流を流さない部分のトンネル接合層を確実に除去するため、例えばエッチング深さは40nmとするが、n
++-InGaN層503aのエッチングが完了しn-GaN層502が露出した時点でエッチングを終了してもよい。つまり、n-GaN層502はエッチングしなくてもよい。凸部503の形成後、ドライエッチング用マスクを除去する。
【0086】
その後、
図11Cに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN層502上に、p-GaN層504、p-AlGaN層512、多重量子井戸層505、n-GaN層506及びn-AlGaN層509を成長させる。例えば、p-GaN層504及びp-AlGaN層512の成長温度は1000℃とし、p-GaN層504の厚さは凸部503上で20nmとし、p-AlGaN層512の厚さは20nmとする。p-GaN層504の形成中に、凸部503に由来する段差(凹凸)が解消されていき、凸部503の側方において、p-GaN層504の厚さは60nmとなる。例えば、多重量子井戸層505の成長温度は750℃とし、多重量子井戸層505の成長では、厚さが3nmのInGaN層及び厚さが7nmのGaN層を交互に5周期形成する。例えば、n-GaN層506及びn-AlGaN層509の成長温度は850℃とし、n-GaN層506の厚さは120nmとし、n-AlGaN層509の厚さは500nmとする。
【0087】
続いて、
図11Dに示すように、素子分離構造としてメサ構造508を形成する。メサ構造508の形成では、
図11Cに示す積層構造(n-GaN基板501等)をMOCVD装置から取り出し、n-AlGaN層509、n-GaN層506、多重量子井戸層505、p-AlGaN層512、p-GaN層504、n-GaN層502、及びn-AlGaN層507の一部のドライエッチングを行う。例えば、メサ構造508の平面形状は、幅が200μmの長方形とする。次いで、酸素雰囲気中で
図11Dに示す積層構造(n-GaN基板501等)の熱処理を行い、p
++-InGaN層503b、p-GaN層504、p-AlGaN層512に含まれる水素を脱離させ、Mgを活性化させる。
【0088】
その後、n-GaN基板501の下面上にアノード電極510を形成し、n-AlGaN層509の上面上にカソード電極511を形成する(
図10参照)。例えば、アノード電極510及びカソード電極511は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0089】
このようにして、第5の実施形態に係る発光素子500を製造することができる。
【0090】
発光素子500では、トンネル接合層を構成するn++-InGaN層503a及びp++-InGaN層503bの屈折率がp-GaN層504の屈折率より高い。従って、凸部503で基板501の面内方向での光閉じ込め構造が実現することができる。このため、端面発光型レーザにて強い光閉じ込め効果を得ることができる。
【0091】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、窒化物半導体を用いた発光素子の一例としての端面発光レーザに関する。
図12は、第6の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0092】
第6の実施形態に係る発光素子600は、n-GaN基板601、n-GaN基板601上のn-AlGaN層602、n-AlGaN層602上のn++-GaN層603a、及びn++-GaN層603a上のp++-GaN層603bを含む。例えば、p++-GaN層603bにMgが1020cm-3程度ドーピングされ、n++-GaN層603aにSi又はGeが1020cm-3程度ドーピングされ、p++-GaN層603b及びn++-GaN層603aがトンネル接合層を構成する。p++-GaN層603b、n++-GaN層603a、及びn-AlGaN層602の一部がエッチングされ、凸部603が形成されている。つまり、凸部603は、n-AlGaN層602の一部(表層部)及びトンネル接合層を含む。なお、凸部603にn-AlGaN層602が含まれず、凸部603がトンネル接合層から構成されていてもよい。
【0093】
発光素子600は、更に、n-AlGaN層602上のp-GaN層604a、p-GaN層604a上のp-AlGaN層604b、p-AlGaN層604b上のp-AlGaN層607、p-AlGaN層607上の多重量子井戸層605、多重量子井戸層605上のn-GaN層606、及びn-GaN層606上のn-AlGaN層609を有する。p-GaN層604a及びp-AlGaN層604bがp型半導体層604に含まれる。例えば、p型半導体層604は凸部603を上方及び側方から被覆する。多重量子井戸層605は、活性層の一例であり、互いに交互に積層されたInGaN層及びGaN層を含む。p-AlGaN層607は、電子ブロック層として機能し、多重量子井戸層605からp型半導体層604への電子の移動をブロックする。
【0094】
n-AlGaN層609、n-GaN層606、多重量子井戸層605、p-AlGaN層607、p-AlGaN層604b、p-GaN層604a、及びn-AlGaN層602の一部がエッチングされ、素子分離構造としてメサ構造608が形成されている。n-GaN基板601の下面上にアノード電極610が形成されている。例えば、アノード電極610は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。n-AlGaN層609の上面上にカソード電極611が形成されている。カソード電極611は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0095】
次に、第6の実施形態に係る発光素子600の製造方法について説明する。
図13A~
図13Dは、第6の実施形態に係る発光素子600の製造方法を示す断面図である。
【0096】
まず、
図13Aに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN基板601上に、n-AlGaN層602、n
++-GaN層603a及びp
++-GaN層603bを成長させる。例えば、n-AlGaN層602、n
++-GaN層603a及びp
++-GaN層603bの成長温度は1100℃とし、n-AlGaN層602の厚さは600nmとし、n
++-GaN層603aの厚さは10nmとし、p
++-GaN層603bの厚さは10nmとする。
【0097】
次いで、
図13Bに示すように、凸部603を形成する。凸部603の形成では、
図13Aに示す積層構造(n-GaN基板601等)をMOCVD装置から取り出し、フォトリソグラフィーにより、発光素子600の電流を流す領域、つまり凸部603の形成予定領域、を覆うドライエッチング用マスク(図示せず)をp
++-GaN層603b上に形成する。ドライエッチング用マスクとしては、例えば、平面形状が長方形で、幅が5μmのSiO
2膜を形成する。次いで、ドライエッチング用マスクを用いてp
++-GaN層603b、n
++-GaN層603a及びn-AlGaN層602のドライエッチングを行うことにより、凸部603を形成する。電流を流さない部分のトンネル接合層を確実に除去するため、例えばエッチング深さは40nmとするが、n
++-GaN層603aのエッチングが完了しn-AlGaN層602が露出した時点でエッチングを終了してもよい。つまり、n-AlGaN層602はエッチングしなくてもよい。凸部603の形成後、ドライエッチング用マスクを除去する。
【0098】
その後、
図13Cに示すように、MOCVD装置を用いて、n-AlGaN層602上に、p-GaN層604a及びp-AlGaN層604bを成長させる。例えば、p-GaN層604a及びp-AlGaN層604bの成長温度は1100℃とし、p-GaN層604aの厚さは凸部603上で50nmとし、p-AlGaN層604bの厚さは凸部603上で50nmとする。p-GaN層604aの形成中に、凸部603に由来する段差(凹凸)が解消されていき、凸部603の側方において、p-GaN層604aの厚さは70nmとなり、段差(凹凸)の大きさは20nm程度まで小さくなる。p-AlGaN層604bの形成中に、凸部603に由来する段差(凹凸)が更に解消されていき、凸部603の側方において、p-AlGaN層604bの厚さは70nmとなり、実質的に段差(凹凸)が消失し、p-AlGaN層604bの表面は平坦になる。
【0099】
続いて、同じく
図13Cに示すように、MOCVD装置を用いて、p-AlGaN層604b上に、p-AlGaN層607、多重量子井戸層605、n-GaN層606及びn-AlGaN層609を成長させる。例えば、p-AlGaN層607の成長温度は1100℃とし、p-AlGaN層607の厚さは20nmとする。例えば、多重量子井戸層605の成長温度は800℃とし、多重量子井戸層605の成長では、厚さが3nmのInGaN層及び厚さが7nmのGaN層を交互に5周期形成する。例えば、n-GaN層606及びn-AlGaN層609の成長温度は900℃とし、n-GaN層606の厚さは120nmとし、n-AlGaN層609の厚さは500nmとする。
【0100】
次いで、
図13Dに示すように、素子分離構造としてメサ構造608を形成する。メサ構造608の形成では、
図13Cに示す積層構造(n-GaN基板601等)をMOCVD装置から取り出し、n-AlGaN層609、n-GaN層606、多重量子井戸層605、p-AlGaN層607、p-AlGaN層604b、p-GaN層604a、及びn-AlGaN層602の一部のドライエッチングを行う。例えば、メサ構造608の平面形状は、幅が200μmの長方形とする。その後、酸素雰囲気中で
図13Dに示す積層構造(n-GaN基板601等)の熱処理を行い、p
++-GaN層603b、p-GaN層604a、p-AlGaN層604b、p-AlGaN層607に含まれる水素を脱離させ、Mgを活性化させる。
【0101】
続いて、n-GaN基板601の下面上にアノード電極610を形成し、n-AlGaN層609の上面上にカソード電極611を形成する(
図12参照)。例えば、アノード電極610及びカソード電極611は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0102】
このようにして、第6の実施形態に係る発光素子600を製造することができる。
【0103】
発光素子600では、凸部603の上方にてp-AlGaN層604bが薄く、平面視で凸部603の外側ではp-AlGaN層604bが厚い。このため、凸部603上での実効屈折率が凸部の外側より高くなり、光閉じ込め構造が実現される。このため、端面発光型レーザにて強い光閉じ込め効果を得ることができる。
【0104】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、窒化物半導体を用いた発光素子の一例としての端面発光レーザに関する。
図14は、第7の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0105】
第7の実施形態に係る発光素子700は、n-GaN基板701、n-GaN基板701上のn-AlGaN層707、n-AlGaN層707上のn-GaN層702、n-GaN層702上のn++-InGaN層703a、及びn++-InGaN層703a上のp++-InGaN層703bを含む。例えば、p++-InGaN層703bにMgが1020cm-3程度ドーピングされ、n++-InGaN層703aにSi又はGeが1020cm-3程度ドーピングされ、p++-InGaN層703b及びn++-InGaN層703aがトンネル接合層を構成する。p++-InGaN層703b、n++-InGaN層703a、及びn-GaN層702の一部がエッチングされ、凸部703が形成されている。つまり、凸部703は、n-GaN層702の一部及びトンネル接合層を含む。
【0106】
発光素子700は、更に、n-GaN層702上のp-GaN層704、p-GaN層704上のp-AlGaN層708、p-AlGaN層708上の多重量子井戸層705、多重量子井戸層705上のn-GaN層706、及びn-GaN層706上のn-AlGaN層709を有する。例えば、p-GaN層704は凸部703を上方及び側方から被覆する。多重量子井戸層705は、活性層の一例であり、互いに交互に積層されたInGaN層及びGaN層を含む。p-AlGaN層708は、電子ブロック層として機能し、多重量子井戸層705からp-GaN層704への電子の移動をブロックする。
【0107】
第5の実施形態では、p-GaN層504の表面が実質的に平坦であるが、第7の実施形態では、p-GaN層704の表面が凸部703に由来する段差(凹凸)を有する。同様に、p-AlGaN層708、多重量子井戸層705、n-GaN層706及びn-AlGaN層709の各表面も凸部703に由来する段差(凹凸)を有する。
【0108】
n-AlGaN層709、n-GaN層706、多重量子井戸層705、p-AlGaN層708、p-GaN層704、n-GaN層702、及びn-AlGaN層707の一部がエッチングされ、素子分離構造としてメサ構造710が形成されている。n-GaN基板701の下面上にアノード電極711が形成されている。例えば、アノード電極711は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。n-AlGaN層709の上面上にカソード電極712が形成されている。カソード電極712は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0109】
次に、第7の実施形態に係る発光素子700の製造方法について説明する。
図15A~
図15Dは、第7の実施形態に係る発光素子700の製造方法を示す断面図である。
【0110】
まず、
図15Aに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN基板701上に、n-AlGaN層707、n-GaN層702、n
++-InGaN層703a及びp
++-InGaN層703bを成長させる。例えば、n-AlGaN層707及びn-GaN層702の成長温度は1000℃とし、n-AlGaN層707の厚さは600nmとし、n-GaN層702の厚さは100nmとする。例えば、n
++-InGaN層703a及びp
++-InGaN層703bの成長温度は900℃とし、n
++-InGaN層703aの厚さは10nmとし、p
++-InGaN層703bの厚さは10nmとする。
【0111】
次いで、
図15Bに示すように、凸部703を形成する。凸部703の形成では、
図15Aに示す積層構造(n-GaN基板701等)をMOCVD装置から取り出し、フォトリソグラフィーにより、発光素子700の電流を流す領域、つまり凸部703の形成予定領域、を覆うドライエッチング用マスク(図示せず)をp
++-InGaN層703b上に形成する。ドライエッチング用マスクとしては、例えば、平面形状が長方形で、幅が5μmのSiO
2膜を形成する。次いで、ドライエッチング用マスクを用いてp
++-InGaN層703b、n
++-InGaN層703a及びn-GaN層702のドライエッチングを行うことにより、凸部703を形成する。例えばエッチング深さは100nmとし、凸部703にn-GaN層702の一部を含ませる。
【0112】
その後、
図15Cに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN層702上に、p-GaN層704、p-AlGaN層708、多重量子井戸層705、n-GaN層706及びn-AlGaN層709を成長させる。例えば、p-GaN層704及びp-AlGaN層708の成長温度は1000℃とし、p-GaN層704の厚さは凸部703上で20nmとし、p-AlGaN層708の厚さは凸部703上で20nmとする。例えば、多重量子井戸層705の成長温度は750℃とし、多重量子井戸層705の成長では、厚さが3nmのInGaN層及び厚さが7nmのGaN層を交互に5周期形成する。例えば、n-GaN層706及びn-AlGaN層709の成長温度は850℃とし、n-GaN層506の厚さは120nmとし、n-AlGaN層509の厚さは500nmとする。凸部の膜厚が100nmあるため、凸部由来の段差がそのまま残りリッジ構造となる。
【0113】
続いて、
図15Dに示すように、素子分離構造としてメサ構造710を形成する。メサ構造710の形成では、
図15Cに示す積層構造(n-GaN基板701等)をMOCVD装置から取り出し、n-AlGaN層709、n-GaN層706、多重量子井戸層705、p-AlGaN層708、p-GaN層704、n-GaN層702、及びn-AlGaN層707の一部のドライエッチングを行う。例えば、メサ構造710の平面形状は、幅が200μmの長方形とする。次いで、酸素雰囲気中で
図15Dに示す積層構造(n-GaN基板701等)の熱処理を行い、p
++-InGaN層703b、p-GaN層704、p-AlGaN層708に含まれる水素を脱離させ、Mgを活性化させる。
【0114】
その後、n-GaN基板701の下面上にアノード電極711を形成し、n-AlGaN層709の上面上にカソード電極712を形成する(
図14参照)。例えば、アノード電極711及びカソード電極712は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0115】
発光素子700では、トンネル接合層を構成するn++-InGaN層703a及びp++-InGaN層703bの屈折率がp-GaN層704の屈折率より高い。従って、凸部703で基板701の面内方向での光閉じ込め構造が実現することができる。更に、基板701の面内方向において、多重量子井戸層705の側方に多重量子井戸層705より屈折率の低いn-GaN層706が形成されている。従って、ここでも、基板701の面内方向の光閉じ込め構造を実現することができる。このため、端面発光型レーザにてより強い光閉じ込め効果を得ることができる。
【0116】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、窒化物半導体を用いた発光素子の一例としての面発光レーザに関する。
図16は、第8の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【0117】
第8の実施形態に係る発光素子800は、n-GaN基板801、n-GaN基板801上の下部n型多層膜反射鏡810、下部n型多層膜反射鏡810上のn-GaN層802、n-GaN層802上のn++-GaN層803a、n++-GaN層803a上のp++-GaN層803b、p++-GaN層803b上のp-InGaN層807を含む。例えば、p++-GaN層803bにMgが1020cm-3程度ドーピングされ、n++-GaN層803aにSi又はGeが1020cm-3程度ドーピングされ、p++-GaN層803b及びn++-GaN層803aがトンネル接合層を構成する。p-InGaN層807、p++-GaN層803b、n++-GaN層803a、及びn-GaN層802の一部がエッチングされ、凸部803が形成されている。つまり、凸部803は、n-GaN層802の一部(表層部)、トンネル接合層及びp-InGaN層807を含む。なお、凸部803にn-GaN層802が含まれず、凸部803がトンネル接合層及びp-InGaN層807から構成されていてもよい。
【0118】
発光素子800は、更に、n-GaN層802上のp-GaN層804、p-GaN層804上のp-AlGaN層808、p-AlGaN層808上のInGaN層809、InGaN層809上の多重量子井戸層805、多重量子井戸層805上のn-GaN層806、及びn-GaN層806上の上部n型多層膜反射鏡811を有する。例えば、p-GaN層804は凸部803を上方及び側方から被覆する。多重量子井戸層805は、活性層の一例であり、互いに交互に積層されたInGaN層及びGaN層を含む。p-AlGaN層808は、電子ブロック層として機能し、多重量子井戸層805からp-GaN層804への電子の移動をブロックする。InGaN層809は、Mg拡散防止層として機能し、p++-GaN層803b等から多重量子井戸層805へのMgの拡散を防止する。
【0119】
下部n型多層膜反射鏡810及び上部n型多層膜反射鏡811は、例えば、AlN/GaN超格子からなる低屈折率層と、InGaNからなる高屈折率層とが交互に積層された構造を有する。低屈折率層の平均屈折率は高屈折率層の平均屈折率よりも小さい。
【0120】
上部n型多層膜反射鏡811、n-GaN層806、多重量子井戸層805、InGaN層809、p-AlGaN層808、p-GaN層804、及びn-GaN層802の一部がエッチングされ、素子分離構造としてメサ構造812が形成されている。n-GaN基板801の下面上にアノード電極813が形成されている。例えば、アノード電極813は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。平面視で凸部803から離隔した領域において、上部n型多層膜反射鏡811の上面上にカソード電極814が形成されている。カソード電極814は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0121】
次に、第8の実施形態に係る発光素子800の製造方法について説明する。
図17A~
図17Dは、第8の実施形態に係る発光素子800の製造方法を示す断面図である。
【0122】
まず、
図17Aに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN基板801上に、下部n型多層膜反射鏡810、n-GaN層802、n
++-GaN層803a、p
++-GaN層803b及びp-InGaN層807を成長させる。例えば、下部n型多層膜反射鏡810の成長温度は850℃とする。例えば、n-GaN層802、n
++-GaN層803a及びp
++-GaN層803bの成長温度は1000℃とし、n-GaN層802の厚さは105nmとし、n
++-GaN層803aの厚さは10nmとし、p
++-GaN層803bの厚さは10nmとする。例えば、p-InGaN層807の成長温度は900℃とし、p-InGaN層807の厚さは30nmとする。
【0123】
次いで、
図17Bに示すように、凸部803を形成する。凸部803の形成では、
図17Aに示す積層構造(n-GaN基板801等)をMOCVD装置から取り出し、フォトリソグラフィーにより、発光素子800の電流を流す領域、つまり凸部803の形成予定領域、を覆うドライエッチング用マスク(図示せず)をp-InGaN層807上に形成する。ドライエッチング用マスクとしては、例えば、平面形状が円で、直径が5μmのSiO
2膜を形成する。次いで、ドライエッチング用マスクを用いてp-InGaN層807、p
++-GaN層803b、n
++-GaN層803a及びn-GaN層802のドライエッチングを行うことにより、凸部803を形成する。電流を流さない部分のトンネル接合層を確実に除去するため、例えばエッチング深さは70nmとするが、n
++-GaN層803aのエッチングが完了しn-GaN層802が露出した時点でエッチングを終了してもよい。つまり、n-GaN層802はエッチングしなくてもよい。凸部803の形成後、ドライエッチング用マスクを除去する。
【0124】
その後、
図17Cに示すように、MOCVD装置を用いて、n-GaN層802上に、p-GaN層804、p-AlGaN層808、InGaN層809、多重量子井戸層805、n-GaN層806及び上部n型多層膜反射鏡811を成長させる。例えば、p-GaN層804及びp-AlGaN層808の成長温度は1000℃とし、p-GaN層804の厚さは凸部803上で20nmとし、p-AlGaN層808の厚さは10nmとする。p-GaN層804の形成では、例えば、Ga原料であるトリメチルガリウムの供給量を10μmol/min、窒素原料であるNH
3の供給量を100mmol/min、V/III比を10000とする。このような条件でp-GaN層804が形成される場合、原子のマイグレーションが促進され、凸部803に由来する段差(凹凸)が解消されていき、凸部803の側方において、p-GaN層804の厚さは90nmとなる。例えば、InGaN層809の成長温度は750℃とし、InGaN層809の厚さは30nmとする。例えば、多重量子井戸層805の成長温度は750℃とし、多重量子井戸層805の成長では、厚さが6nmのInGaN層及び厚さが4nmのGaN層を交互に5周期形成する。例えば、n-GaN層806の成長温度は850℃とし、n-GaN層806の厚さは55nmとする。例えば、上部n型多層膜反射鏡811の成長温度は850℃とする。
【0125】
続いて、
図17Dに示すように、素子分離構造としてメサ構造812を形成する。メサ構造812の形成では、
図17Cに示す積層構造(n-GaN基板801等)をMOCVD装置から取り出し、上部n型多層膜反射鏡811、n-GaN層806、多重量子井戸層805、InGaN層809、p-AlGaN層808、p-GaN層804、及びn-GaN層802の一部のドライエッチングを行う。例えば、メサ構造812の平面形状は、直径が30μmの円とする。次いで、酸素雰囲気中で
図17Dに示す積層構造(n-GaN基板801等)の熱処理を行い、p
++-GaN層803b、p-InGaN層807、p-GaN層804、p-AlGaN層808に含まれる水素を脱離させ、Mgを活性化させる。
【0126】
その後、n-GaN基板801の下面上にアノード電極813を形成し、平面視で凸部803から離
隔した領域において、上部n型多層膜反射鏡811の上面上にカソード電極814を形成する(
図16参照)。例えば、アノード電極813及びカソード電極814は、Ti膜及びその上のAl膜を含む。
【0127】
このようにして、第8の実施形態に係る発光素子800を製造することができる。
【0128】
発光素子800では、凸部803がp-GaN層804よりも屈折率が高いp-InGaN層807を含むため、凸部803で基板801の面内方向での光閉じ込め構造が実現することができる。このため、面発光型レーザにて強い光閉じ込め効果を得ることができる。
【0129】
また、Inを含むInGaN層809が、p++-GaN層803b等から多重量子井戸層805へのMgの混入を抑制する。このため、Mgの混入に伴う発光効率の低下を抑制することができる。
【0130】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0131】
例えば、凸部の平面形状は円又は長方形(ストライプ状)に限定されず、他の多角形等、電流を流したい領域に任意の平面形状で凸部を形成することができる。
【0132】
また、多層膜反射鏡の構造として、AlGaNとGaNとの組み合わせ、AlInNとGaNとの組み合わせ等、他の窒化物半導体を用いた構造を採用してもよい。また、SiO2とSiNとの組み合わせ、SiO2とTa2O5との組み合わせ等、誘電体を用いた構造を採用してもよい。誘電体には通電できないが、公知の電極構造を採用することで、第1のn型半導体層及び第2のn型半導体層に電圧を印加することができる。
【符号の説明】
【0133】
100、200、300、400、500、600、700、800 発光素子
101 基板
102 第1のn型半導体層
103、403、503、603、703、803 凸部
104、204、604 p型半導体層
105 活性層
106 第2のn型半導体層
204a 高屈折率層
204b 低屈折率層
401 サファイア基板
402、406、502、506、606、702、706、802、806 n-GaN層
403a、603a、803a n++-GaN層
403b、603b、803b p++-GaN層
404、504、604a、704、804 p-GaN層
405、505、605、705、805 多重量子井戸層
407、512、604b、607、708、808 p-AlGaN層
408、508、608、710、812 メサ構造
409、510、610、711、813 アノード電極
410、511、611、712、814 カソード電極
501、601、701、801 n-GaN基板
503a、703a n++-InGaN層
503b、703b p++-InGaN層
507、509、602、609、707、709 n-AlGaN層
807 p-InGaN層
809 InGaN層
810 下部n型多層膜反射鏡
811 上部n型多層膜反射鏡
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】