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特許7155936無線通信装置、無線通信装置の周波数設定方法、及び、無線通信装置の周波数設定プログラム
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  • 特許-無線通信装置、無線通信装置の周波数設定方法、及び、無線通信装置の周波数設定プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信装置の周波数設定方法、及び、無線通信装置の周波数設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0803 20220101AFI20221012BHJP
【FI】
H04L41/0803
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018218670
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020088544
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】江森 基倫
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-071725(JP,A)
【文献】特開2016-163115(JP,A)
【文献】特開2004-274723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0223477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
無線通信を行う通信部と、
前記通信部による無線通信で用いる周波数情報を設定する周波数設定部と、
当該無線通信装置が販売され、使用されることが想定される、少なくとも1つの国・地域を含む仕向け地に関する仕向け情報を保持する記憶部と、を備え、
前記周波数設定部は、
当該無線通信装置が現在配置されている国・地域で使用が許可されている第1の周波数情報を取得し、
前記記憶部に記憶されている前記仕向け情報と、当該無線通信装置が現在配置されている国・地域に関する国・地域情報とに基づき、当該無線通信装置が前記国・地域で使用可能な第2の周波数情報を取得し、
前記第1の周波数情報と前記第2の周波数情報に差異がある場合は、当該無線通信装置が使用可能な周波数が制限されている旨をユーザに警告し、前記第2の周波数情報を前記通信部が使用可能な周波数として設定する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記国・地域情報を検出する国・地域情報検出部を備える、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
ユーザによる当該無線通信装置が現在配置されている国・地域の設定操作を受け付ける操作部を備え、
前記周波数設定部は、
前記操作部を介してユーザが設定した第1の国・地域情報と、前記国・地域情報検出部により検出された第2の国・地域情報とが異なる場合にユーザに確認し、
前記確認に対するユーザの応答に基づいて、前記第1の国・地域情報及び前記第2の国・地域情報の一方を当該無線通信装置が使用する国・地域情報として選択する
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記周波数設定部は、前記第1の国・地域情報及び前記第2の国・地域情報が異なる場合に、前記第1の国・地域情報及び前記第2の国・地域情報の一方を選択する旨をユーザに促し、ユーザの選択操作に応じて前記第1の国・地域情報及び前記第2の国・地域情報の一方を当該無線通信装置が使用する国・地域情報として選択する、
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
無線通信装置の周波数設定方法であって、
前記無線通信装置は、
無線通信を行う通信部と、
前記通信部による無線通信で用いる周波数情報を設定する周波数設定部と、
当該無線通信装置が販売され、使用されることが想定される、少なくとも1つの国・地域を含む仕向け地に関する仕向け情報を保持する記憶部と、を備え
当該無線通信装置が現在配置されている国・地域で使用が許可されている第1の周波数情報を取得する第1周波数取得ステップと、
前記記憶部に記憶されている前記仕向け情報と、当該無線通信装置が現在配置されている国・地域に関する国・地域情報とに基づき、当該無線通信装置が前記国・地域で使用可能な第2の周波数情報を取得する第2周波数取得ステップと、
前記第1の周波数情報と前記第2の周波数情報に差異がある場合は、当該無線通信装置が使用可能な周波数が制限されている旨をユーザに警告し、前記第2の周波数情報を前記通信部が使用可能な周波数として設定する周波数設定ステップと、
を含む無線通信装置の周波数設定方法。
【請求項6】
無線通信装置の周波数設定プログラムであって、
前記無線通信装置は、
無線通信を行う通信部と、
前記通信部による無線通信で用いる周波数情報を設定する周波数設定部と、
当該無線通信装置が販売され、使用されることが想定される、少なくとも1つの国・地域を含む仕向け地に関する仕向け情報を保持する記憶部と、を備え
当該無線通信装置が現在配置されている国・地域で使用が許可されている第1の周波数情報を取得する第1周波数取得機能と、
前記記憶部に記憶されている前記仕向け情報と、当該無線通信装置が現在配置されている国・地域に関する国・地域情報とに基づき、当該無線通信装置が前記国・地域で使用可能な第2の周波数情報を取得する第2周波数取得機能と、
前記第1の周波数情報と前記第2の周波数情報に差異がある場合は、当該無線通信装置が使用可能な周波数が制限されている旨をユーザに警告し、前記第2の周波数情報を前記通信部が使用可能な周波数として設定する周波数設定機能と、
をコンピュータに実現させるための無線通信装置の周波数設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信装置の周波数設定方法、及び、無線通信装置の周波数設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信装置が配置される国や地域、仕向け地(当該無線通信装置が販売され、使用されることが想定される、少なくとも1つの国や地域を含むエリア)ごとに、無線通信に利用できる周波数が異なる場合がある。
【0003】
特許文献1には、通信アダプターを交換したときに法律違反となる周波数を使用することになるのを防ぐ目的で、通信アダプターの仕向け地情報と、初期設定の仕向け地情報とを比較し、値が異なる場合は警告する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1などの従来の無線通信装置では、複数の仕向け地が設定された(重複した仕向け地が存在した)場合に、使用可能な周波数の判断や新たな周波数の設定についての言及はされておらず、ユーザにとっては十分なサポートが期待できない。例えば、ある国で当該国の国コードを正しく設定しても、仕向け機(所定の仕向け地で使用可能に構成される装置)によっては、期待する周波数が使えないことがあり、ユーザに不具合として認識される場合がある。これにより、無線LAN設定に関するユーザからのサポート区への問合せが増える場合がある。
【0005】
本発明は、無線LAN設定に関するユーザからのサポート区への問合せを減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る無線通信装置は、無線通信を行う通信部と、前記通信部による無線通信で用いる周波数情報を設定する周波数設定部と、当該無線通信装置が販売され、使用されることが想定される、少なくとも1つの国・地域を含む仕向け地に関する仕向け情報を保持する記憶部と、を備え、前記周波数設定部は、当該無線通信装置が現在配置されている国・地域で使用が許可されている第1の周波数情報を取得し、前記記憶部に記憶されている前記仕向け情報と、当該無線通信装置が現在配置されている国・地域に関する国・地域情報とに基づき、当該無線通信装置が前記国・地域で使用可能な第2の周波数情報を取得し、前記第1の周波数情報と前記第2の周波数情報に差異がある場合は、当該無線通信装置が使用可能な周波数が制限されている旨をユーザに警告し、前記第2の周波数情報を前記通信部が使用可能な周波数として設定する。
【発明の効果】
【0007】
無線LAN設定に関するユーザからのサポート区への問合せを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】仕向け地と国・地域の関係を示す模式図
図2】複数の仕向け地を含む国の例を示す図
図3】実施形態に係る無線通信装置の機能ブロック図
図4】記憶部に格納される法定周波数テーブルの一例を示す図
図5】記憶部に格納される仕様テーブルの一例を示す図
図6】記憶部に格納される使用可能周波数テーブルの一例を示す図
図7】無線通信装置のハードウェア構成図
図8】無線通信装置の周波数設定処理のフローチャート
図9】ステップS06にて表示される確認画面の一例を示す図
図10】ステップS13にて表示される警告画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
本実施形態に係る無線通信装置は、複数の国・地域や仕向け地に応じて使用可能な周波数情報を設定して、この設定した周波数情報を用いて他の機器と通信を行うものである。まず以下の説明で用いる周波数情報について説明する。
【0011】
周波数情報は、2.4GHz帯と5GHz帯とを含む。2.4GHz帯は1~14chが規定され、5GHz帯は36~181chが規定される。14chは日本でのみ使用可能である。5GHz帯は4ch刻みである(例:36、40、44、48、…)。5GHz帯は、W52、W53、W56、W58という国際標準準拠の規格があり、W52:36~48ch、W53:52~64ch、W56:100~140ch、W58:149~181chである。
【0012】
チャンネル(ch)とは、データ送受信に必要な周波数の範囲のことであり、無線LANによる通信上の区分といえる。ユーザは周波数ではなくチャンネルを指定して無線LANを使用する。電波法では、無線LANだけを意識するわけではないので、使用可能な範囲は周波数で指定している。本実施形態では、無線LANの使用やユーザによる使用を意識する場合はチャンネルという用語を、通信部(無線LANチップ)のような内部の処理や電波法を意識する場合は周波数という用語を用いている。
【0013】
図1図2を参照して、仕向け、国・地域、周波数情報の関係について説明する。
【0014】
図1は、仕向け地と国・地域の関係を示す模式図である。図1では、国・地域が実線で示され、仕向け地が点線で示されている。また、図1では、各国で使用可能な周波数が図示されている。
【0015】
「仕向け地」とは、当該無線通信装置が販売され、使用されることが想定される、少なくとも1つの国や地域を含むエリアである。図1の例では、国A、国B、国Cが仕向け地Xに含まれ、国A、国D、国Eが仕向け地Yに含まれる。また、各仕向け地で用いられることを想定して製造された無線通信装置を含む機器は、以下の説明では「仕向け機」とも表記する。例えば、仕向け地X向けの無線通信装置は「仕向けX機」と表記する。
【0016】
図1に示す国Aのように、複数の仕向け地に含まれる国・地域がある。これは、国・地域内の場所によって電源電圧が異なる場合に、当該国・地域で無線通信装置を販売するため必要な措置である。
【0017】
また、図1に示すように、使える周波数は国ごとに異なる。例えば国A、国B、国D、国EではW56(5470~5725Hz(100~140ch))が使えるのに対して、国Cでは、W56のうち120~128chは使えない。
【0018】
国Aで仕向けX機と仕向けY機が販売される場合を考える。国Aでは120chが使えるが、仕向けX内の国Cでは120chが使えない。この場合、国Bの規定によっては、仕向けX機では120chが使えない仕様となる可能性がある。仕向けY機ではそのような制約がないものとする。すると、同じ国コード(A)を設定しても、仕向けX機と、仕向けY機で使えるチャンネルが異なる結果となる。
【0019】
これにより、無線LANの国コード設定に起因するサポート区への問い合わせが増える場合がある。また、無線LANの国コード設定に起因する問題の原因をすばやく特定できない場合がある。
【0020】
図2は、複数の仕向け地を含む国Aの例を示す図である。図2には、図1中の国Aの詳細を示す。図1で2つの仕向け地X、Yの両方に含まれていた国Aは、図2に示すように、電源の電圧で2つの地域1,2に区分できる。地域1の電源電圧は120V、地域2の電源電圧は220Vである。
【0021】
地域1は電源電圧の関係で、国B、国Cと同じ仕向け地Xに属し、仕向け地X向けの機器(仕向けX機)が販売されている。
【0022】
一方、地域2は電源電圧の関係で、国D、国Eと同じ仕向け地Yに属し、仕向け地Y向けの機器(仕向けY機)が販売されている。
【0023】
国Aの電波法では、2.4GHz帯は1~13ch、5GHz帯は、W52(36~48ch)、W53(52~64ch)、W56(100~140ch)、W58(149~165ch)の使用が許可されている。
【0024】
一方、国Cの電波法では、2.4GHz帯は1~11ch、5GHz帯は、W52(36~48ch)、W53(52~64ch)、W56(100~140ch、ただし、120~128ch除く)、W58(149~165ch)の使用が許可されている。
【0025】
しかし、国Cの電波法では、国Cで販売される通信装置は国Cの電波法で許可された周波数以外の電波を送信する能力を有してはいけないと規定されているため、仕向けX機は国Cの電波法で許可された周波数以外の電波を送信する能力を有しない。
【0026】
つまり、仕向けX機は、ソフトウェア制御により国Cで許可されているチャンネル以外の電波を送信することができない(ハードウェア制御であるため。実構成上は、無線LANチップ上のEEPROM等に使用できる周波数情報が書き込まれる)。
【0027】
このため、仕向けX機は、国・地域を設定し、設定した国・地域に基づいて使用するチャンネルを制御する機能(ソフトウェア制御により実現される機能)を有しながら、図2に実線の下線で示すように、国Aを国・地域に設定しても、国Aで許可されているチャンネルのうちの一部(12、13、120、124、128ch)で電波を送信することができない。
【0028】
一方、仕向け地Yには、国Cのような制約を要求する電波法を規定する国がないため、このような状況は発生しない。つまり、仕向けY機は、国Aを国・地域に設定すると、図2に破線の下線で示すように、国Aで許可されているチャンネルを余すところなく使用することができる。
【0029】
なお、仕向けX機と、仕向けY機のモデルは同一とする。
【0030】
このように、従来は無線通信装置が配置される国・地域と、仕向け地との関係によって、使用可能な周波数情報に差異が生じる場合があり、周波数の設定に手間がかかるという問題があった。本実施形態に係る無線通信装置1は、この問題を解決するものである。
【0031】
次に、図3図4を参照して本実施形態に係る無線通信装置1の構成を説明する。
【0032】
図3は、実施形態に係る無線通信装置1の機能ブロック図である。図3に示すように、無線通信装置1は、周波数設定部2と、通信部3と、国・地域情報検出部4と、表示部5と、操作部6と、記憶部7と、を備える。
【0033】
周波数設定部2は、ユーザが設定した国・地域情報と、無線通信装置の仕向け情報とに基づいて使用可能な周波数の範囲を決定し、当該周波数の範囲を通信部3に設定する。
【0034】
通信部3は、周波数設定部2により設定された周波数の範囲内で、電波の送受信を行い、他の通信装置と無線通信を行う。通信部3は、無線LANやBluetooth(登録商標)による通信機能を有する。
【0035】
なお、通信部に周波数を設定するのではなく、通信部に国・地域を特定する情報(ISO 3166-1で規定される国コード等)を設定し、通信部が当該国コードに基づいて使用可能な周波数を記憶部から取得し、それに従って動作する構成としてもよい。
【0036】
国・地域情報検出部4は、無線通信装置1が存在する国・地域の情報を検出する。国・地域情報の検出手法としては、例えば下記に挙げる手法(1)~(10)の1つまたは複数を組み合わせて用いることにより、国・地域を特定することができる。
【0037】
(1)GPS(Global Positioning System)の利用
無線通信装置がGPSモジュールをさらに備え、当該GPSモジュールから位置情報を取得し、位置情報と、記憶部から取得した地図情報とに基づいて国・地域を特定する。
【0038】
(2)Beacon、Probe Responseに含まれるCountry情報の利用
AP(Access Point)が送信するBeaconフレームには、Country elementが含まれることが多い。Country elementには、国情報が含まれるため、国・地域を特定することができる。
【0039】
(3)当該無線通信装置とWi-Fi Directで接続したタブレットの送信するBeacon、Probe Requestに含まれるCountry elementの利用
当該無線通信装置がWi-Fi Directでタブレット等と接続していた場合、タブレット等から送信されるBeaconやProbe Request/Probe ResponseのフレームにCountry elementが含まれた場合、APの場合と同様に、国・地域を特定することができる。
【0040】
(4)放送波に含まれる放送局情報の利用
放送波には放送局情報が含まれるため、放送局情報を放送局情報データベースと照らし合わせて、国・地域を特定することができる。
【0041】
(5)IPアドレス・ドメイン名
IPアドレスやドメイン名から所在地情報を取得できるWebサービスを利用することで、国・地域を特定することができる。
【0042】
(6)電子証明書に含まれる国・地域情報
当該通信装置が通信で使用する電子証明書を有していた場合、当該電子証明書には国・地域情報が含まれることがあるため、これを利用して、国・地域を特定することができる。
【0043】
(7)言語設定
当該通信装置が表示部に表示される言語を変更するための言語設定を有する場合、現在設定されている言語設定から、その言語が使われる国・地域をデータベースから照会することで、国・地域を特定することができる。
【0044】
(8)印刷・スキャンした文書の言語
当該通信装置がプリンターやスキャナーである場合、印刷・スキャンした文書の言語から現在設定されている言語設定から国・地域を特定することができる。
【0045】
(9)閲覧したWebページのURL
当該通信装置がWebブラウザを備える場合、ユーザが閲覧したサイトのURLを取得することができる。IPアドレスと同様に、URLから国・地域を特定することができる。複数のサイトから総合的に判断すると正確性を高めることができる。
【0046】
(10)ユーザの国籍
当該通信装置にユーザ情報が登録されており、ユーザ情報に住所や国籍に関する情報が含まれる場合、この情報に基づいて国・地域を特定することができる。
【0047】
表示部5は、ユーザが国・地域を設定するための画面を表示したり、確認画面や警告画面を表示する。また、表示部5は、ユーザが設定した国・地域情報が、国・地域情報検出で検出した国・地域情報と異なる場合は確認画面11(図9参照)を表示する。また、当該仕向け機で使用可能な周波数の範囲と、当該国・地域で使用可能な周波数の範囲とに差異がある場合は警告画面12(図10参照)を表示する。
【0048】
操作部6は、ユーザによる国・地域の設定操作を受け付ける。また、操作部6は、上記の確認画面11に応じた操作(OKやCancelボタンの押下)を行うために使用される。
【0049】
表示部5と操作部6は、例えばタッチパネルのように両者を一体にした構成でもよい。
【0050】
記憶部7は、無線通信装置1の周波数設定に係る各種情報を格納する。
【0051】
記憶部7は、国・地域で許可された周波数(以下では「法定周波数」という)の範囲についての情報、当該通信装置の仕向け情報、ユーザが設定した国・地域情報、仕向け+国・地域と当該通信装置で使用可能な周波数(以下では「使用可能周波数」という)の範囲に関する情報、を少なくとも有する。本実施形態では、記憶部7は、これらの情報に関して、法定周波数テーブル8と、仕様テーブル9と、使用可能周波数テーブル10とを有する。
【0052】
図4は、記憶部7に格納される法定周波数テーブル8の一例を示す図である。図4に示すように、法定周波数テーブル8には、国・地域ごとに、各国・地域の電波法(あるいは、電波法に類する法令)で許可された法定周波数の範囲を保持することができる。
【0053】
図5は、記憶部7に格納される仕様テーブル9の一例を示す図である。図5に示すように、仕様テーブル9には、マシン名や仕向け地など無線通信装置1の仕様に関する各種情報が含まれる。
【0054】
図6は、記憶部7に格納される使用可能周波数テーブル10の一例を示す図である。使用可能周波数テーブル10には、仕向け地、国・地域、使用可能周波数情報との対応関係が保持される。また、使用可能周波数テーブル10には、ユーザ設定欄も含まれる。図6の例では、ユーザが国Aを指定し、無線通信装置1の仕向け地はXなので、使用可能周波数テーブル10の1行目にチェックがついている。つまり、当該無線通信装置1では、2.4GHz帯は1~11chのみ使え、W56は120、124、128chが使えないことを意味している。
【0055】
図7は、無線通信装置1のハードウェア構成図である。図7に示すように、無線通信装置1は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102およびROM(Read Only Memory)103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、無線LANカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、補助記憶装置107、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0056】
図1に示す無線通信装置1の各機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェア(周波数設定プログラム)を読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール106、入力装置104、出力装置105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態の周波数設定プログラムをコンピュータ上で実行させることで、無線通信装置1は、図1の周波数設定部2、通信部3、国・地域情報検出部4、表示部5、操作部6、記憶部7として機能する。
【0057】
図8図10を参照して、本実施形態の無線通信装置1の周波数設定方法を説明する。図8は、無線通信装置1の周波数設定処理のフローチャートである。
【0058】
ステップS01では、国・地域情報設定イベントが発生するまで、以降の処理が待機される。無線通信装置1は、国・地域情報設定イベントが発生するとステップS02に進む。イベント発生タイミングは、例えば下記のタイミング(i)~(vi)が挙げられる。
【0059】
(i)ユーザが国コードを設定・変更したとき
(ii)無線通信装置のIPアドレス、ドメイン名、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレス等が設定・変更されたとき
(iii)無線通信装置内部の電子証明書が設定・変更されたとき
(iv)無線通信装置が位置検出部を備え、位置検出部が無線通信装置の移動を検知したとき
(v)ユーザ情報を設定・変更したとき
(vi)言語設定を設定・変更したとき
【0060】
ステップS02では、操作部6により、ユーザが設定した国・地域情報が取得される。
【0061】
ステップS03では、国・地域情報検出部4により、無線通信装置1が存在する国・地域情報が自動的に検出される。国・地域情報検出部4は、例えば上記に挙げた手法(1)~(10)の1つまたは複数を組み合わせて用いることにより、国・地域を特定することができる。
【0062】
ステップS04では、周波数設定部2により、ステップS02にてユーザが設定した国・地域情報(ユーザ設定情報)と、ステップS03にて国・地域情報検出部4が検出した国・地域情報(検出情報)とが同一か否かが判定される。
【0063】
ステップS04の判定の結果、ユーザ設定情報(第1の国・地域情報)と検出情報(第2の国・地域情報)とが同一の場合(ステップS04のYes)には、ステップS05に進み、ユーザ設定情報が以降で用いる国・地域情報として設定される。
【0064】
一方、ステップS04の判定の結果、ユーザ設定情報と検出情報とが非同一の場合(ステップS04のNo)には、ステップS06に進み、両情報が非同一であることをユーザに提示する確認画面11が表示部5に表示される。
【0065】
図9は、ステップS06にて表示される確認画面11の一例を示す図である。図9では、ユーザ設定情報が「設定値」として示され、検出情報が「推定値」として示されている。図9の例では、設置値が国A、推定値が国Bとなって異なっており、「設定した国・地域が誤っている可能性があります。このまま設定してよいですか?」とのメッセージが表示される。ユーザは、この確認画面11で、設定値が正しいと判断した場合にはOKボタン11Aを押下する。設定値が誤りであると判断した場合には「推定値に修正」ボタン11Bを押下する。キャンセルボタン11Cが押下されると処理が中断される。
【0066】
ステップS07では、周波数設定部2により、ユーザが設定した国・地域情報(ユーザ設定情報)でOKか否かが判定される。図9の確認画面11でOKボタン11Aが押下された場合には、ユーザ設定情報が正しいとユーザにより判断されたので(ステップS07のYes)ステップS05に進み、ユーザ設定情報が以降で用いる国・地域情報として設定される。
【0067】
一方、図9の確認画面11で修正ボタン11Bが押下された場合には、ユーザ設定情報が誤っているとユーザにより判断されたので(ステップS07のNo)ステップS08に進み、周波数設定部2により、検出情報が以降で用いる国・地域情報として設定される。
【0068】
なお、図9の確認画面11でキャンセルボタン11Cが押下された場合にはステップS01に戻る。
【0069】
ステップS09では、周波数設定部2により、記憶部7から無線通信装置1の仕向け情報が取得される。周波数設定部2は、例えば記憶部7に格納されている仕様テーブル9から仕向け地の情報を取得することができる。
【0070】
ステップS10では、周波数設定部2により、ステップS05またはS08で設定された国・地域情報に基づき、無線通信装置1が現在設置されている国・地域で使用が許可されている周波数情報、すなわち法定周波数情報(第1の周波数情報)が取得される(第1周波数取得ステップ)。周波数設定部2は、例えば記憶部7に格納されている法定周波数テーブル8から、国・地域情報を引数として法定周波数情報を取得することができる。
【0071】
ステップS11では、周波数設定部2により、ステップS09で取得された無線通信装置1の仕向け情報と、ステップS05またはS08で設定された国・地域情報に基づき、無線通信装置1が現在設置されている国・地域で実際に使用できる周波数情報、すなわち使用可能周波数情報(第2の周波数情報)が決定される(第2周波数取得ステップ)。周波数設定部2は、例えば記憶部7に格納されている使用可能周波数テーブル10から、仕向け情報と国・地域情報と引数として仕様可能周波数情報を取得することができる。
【0072】
ステップS12では、周波数設定部2により、ステップS10にて取得した法定周波数情報と、ステップS11にて決定した使用可能周波数情報とが同一か否かが判定される。
【0073】
法定周波数情報と使用可能周波数情報とが非同一の場合(ステップS12のNo)には、ステップS13に進み、両情報が非同一であることをユーザに提示する警告画面12が表示部5に表示される。
【0074】
図10は、ステップS13にて表示される警告画面12の一例を示す図である。図10の例では、「この通信装置では、使用できる周波数が制限されています」とのメッセージが表示され、制限されているチャンネル領域を実線の下線で強調表示している。
【0075】
ステップS14では、周波数設定部2により、ステップS13にて警告画面12に表示した周波数情報、すなわち、使用可能周波数情報が、通信部3が用いる周波数情報として設定される(周波数設定ステップ)。ステップS14の処理が完了するとステップS01に戻る。
【0076】
一方、法定周波数情報と仕向け機使用周波数情報とが同一の場合(ステップS12のYes)には、ステップS15に進み、周波数設定部2により、法定周波数情報が、通信部3が用いる周波数情報として設定される。ステップS15の処理が完了するとステップS01に戻る。
【0077】
本実施形態に係る無線通信装置1の効果を説明する。本実施形態の無線通信装置1では、周波数設定部2は、当該無線通信装置1が現在配置されている国・地域で使用が許可されている法定周波数情報を取得し、記憶部7に記憶されている仕向け情報と、当該無線通信装置1が現在配置されている国・地域に関する国・地域情報とに基づき、当該無線通信装置1が現在の国・地域で使用可能な使用可能周波数情報を取得する。そして、法定周波数情報と使用可能周波数情報に差異がある場合は、当該無線通信装置1が使用可能な周波数が制限されている旨をユーザに警告し、使用可能周波数情報を通信部3が使用可能な周波数として設定する。
【0078】
この構成により、国コードが正しく設定されて正しい法定周波数情報が取得されても、仕向け地の事情によって法定周波数情報に無線通史装置が使用できない帯域が含まれている場合でも、自動的に使用可能周波数情報を通信部3が使用する周波数として設定できるので、無線通信に使用可能な周波数を容易に設定可能にできる。これにより、実際の通信実行時に使用不可の帯域が使用されるのを防止できるので、ユーザが無線通信装置1の不具合と認識することも回避でき、ユーザにとって使いやすい装置を提供できる。この結果、無線LAN設定に関するユーザからのサポート区への問合せを減らすことができる。また、ユーザが自力で解決できなくても、サポート区でも無線LAN設定に起因する問題の原因をすばやく特定できるようになり、サポート区が開発区に問い合わせることなく自力で解決できる。
【0079】
また、本実施形態の無線通信装置1は、国・地域情報を検出する国・地域情報検出部4と、ユーザによる当該無線通信装置1が現在配置されている国・地域の設定操作を受け付ける操作部6とを備える。周波数設定部2は、操作部6を介してユーザが設定した第1の国・地域情報と、国・地域情報検出部4により検出された第2の国・地域情報とが異なる場合にユーザに確認し、確認に対するユーザの応答に基づいて、第1の国・地域情報及び第2の国・地域情報の一方を当該無線通信装置1が使用する国・地域情報として選択する。
【0080】
より詳細には、周波数設定部2は、第1の国・地域情報及び第2の国・地域情報が異なる場合に、表示部5に表示する確認画面11を介して、第1の国・地域情報及び第2の国・地域情報の一方を選択する旨をユーザに促し、確認画面11上でのユーザの選択操作に応じて第1の国・地域情報及び第2の国・地域情報の一方を当該無線通信装置が使用する国・地域情報として選択する。
【0081】
この構成により、ユーザによる国・地域の設定と、国・地域情報検出部4による国・地域の検出の一方に誤検知が有った場合でも、より適切なものを選択できるので、選択された国・地域情報を用いて実施する周波数設定をより精度良く行うことができる。
【0082】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0083】
上記実施形態では、操作部6を介してユーザによる現在の国・地域の設定と、国・地域情報検出部4による国・地域の自動検出とを併用する構成を例示したが、いずれか一方のみを適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 無線通信装置
2 周波数設定部
3 通信部
4 国・地域情報検出部
5 表示部
6 操作部
7 記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【文献】特開2016-163115号公報
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