(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】記録媒体加熱装置、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221012BHJP
B41J 11/02 20060101ALI20221012BHJP
B65H 23/34 20060101ALI20221012BHJP
B41F 23/00 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 305
B41J11/02
B65H23/34
B41F23/00
(21)【出願番号】P 2018222223
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】山田 征史
(72)【発明者】
【氏名】木崎 修
(72)【発明者】
【氏名】片平 静穂
(72)【発明者】
【氏名】中井 順二
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-052577(JP,A)
【文献】特開2012-135890(JP,A)
【文献】特開2012-020550(JP,A)
【文献】特開2009-279877(JP,A)
【文献】特開2018-094769(JP,A)
【文献】特開2013-193222(JP,A)
【文献】特開2015-024647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0036255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 11/02
B65H 23/34
B41F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を吐出する液体吐出部よりも、前記記録媒体の搬送方向上流に設けられ、前記記録媒体を加熱する第1ヒータ部と、
前記液体吐出部に対応する位置に設けられ、前記記録媒体を加熱する第2ヒータ部と、
前記第2ヒータ部よりも、前記記録媒体の搬送方向下流に設けられ、前記記録媒体を加熱する第3ヒータ部と、
前記第1ヒータ部、前記第2ヒータ部、および、前記第3ヒータ部のそれぞれの温度を制御する温度制御部と、
を備え、
前記温度制御部は、
前記第1ヒータ部において前記第2ヒータ部と隣接する第1隣接箇
所の温度が、前記第1ヒータ部において前記記録媒体の搬送方向上流側に向かって前記第2ヒータ部から離間した第1離間箇
所の温度
より高く、前記第2ヒータ部の温度
より低くなるように制御
し、
前記第3ヒータ部において前記第2ヒータ部と隣接する第2隣接箇所の温度が、前記第3ヒータ部において前記記録媒体の搬送方向下流側に向かって前記第2ヒータ部から離間した第2離間箇所の温度より低く、前記第2ヒータ部の温度より高くなるように制御する
ことを特徴とする記録媒体加熱装置。
【請求項2】
前記温度制御部は、
前記第1隣接箇所または前記第2隣接箇所の温度が、前記第1離間箇所または前記第2離間箇所の温度と、前記第2ヒータ部の温度との間の中間値の温度になるように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項3】
前記第1ヒータ部および前記第3ヒータ部の少なくとも一方は、
熱伝導率が異なる周辺部材を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項4】
前記第1ヒータ部には、
前記第2ヒータ部に向かって前記熱伝導率が大きくなるように前記周辺部材が設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項5】
前記第3ヒータ部には、
前記第2ヒータ部に向かって前記熱伝導率が小さくなるように前記周辺部材が設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項6】
前記第1ヒータ部および前記第3ヒータ部の少なくとも一方は、
複数の加熱体を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項7】
前記温度制御部は、
前記第1ヒータ部に備えられた複数の前記加熱体のうち、前記第2ヒータ部と隣接する第1隣接加熱体の温度が、前記第1ヒータ部に供えられた他の前記加熱体の温度と、前記第2ヒータ部の温度との間の温度になるように制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項8】
前記温度制御部は、
前記第3ヒータ部に備えられた複数の前記加熱体のうち、前記第2ヒータ部と隣接する第2隣接加熱体の温度が、前記第3ヒータ部に供えられた他の前記加熱体の温度と、前記第2ヒータ部の温度との間の温度になるように制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項9】
前記温度制御部は、
前記第1ヒータ
部に備えられた複数の前記加熱体のうち、前記第1ヒータ部において前記記録媒体の搬送方向上流側に向かって前記第2ヒータ部と離間する第1離間加熱
体の温度が、前記第1ヒータ
部の他の前記加熱体より低い温度となるように制御
し、
前記第3ヒータ部に備えられた複数の前記加熱体のうち、前記第3ヒータ部において前記記録媒体の搬送方向下流側に前記第2ヒータ部と離間する第2離間加熱体の温度が、前記第3ヒータ部の他の前記加熱体より高い温度となるように制御する
ことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の記録媒体加熱装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の記録媒体加熱装置を備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体加熱装置、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に印刷などの画像形成を行う画像形成装置では、記録媒体に張力を加えることにより、記録媒体を搬送経路に沿って移動させる。このような画像形成装置の内部には、記録媒体の搬送経路に沿って設置される搬送ローラや、この搬送ローラを回転駆動させる駆動装置および記録媒体に吐出されたインクを乾燥させる乾燥装置が備えられている。
【0003】
このような乾燥装置として、記録媒体の搬送経路に複数のヒータを設けて、画像が形成された記録媒体の表面の特性に応じて乾燥を行う技術がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、ラインヘッド式のインクジェットヘッドプリンタにおいて、記録媒体の搬送経路上流に配置されているヒータの温度を搬送経路下流に配置されているヒータの温度よりも高くする構成が開示されている。このような構成により、特許文献1では、記録媒体の変形(コックリング)の発生を低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術をシリアル式のインクジェットヘッドプリンタに適用した場合、記録媒体に対してインクが吐出されてから乾燥装置に搬送されるまでの時間がラインヘッド式のインクジェットヘッドプリンタと比較して長くなる。
【0006】
ゆえに、搬送経路の途中で記録媒体の温度が急激に変化するため、記録媒体の膨張や温度ムラによってコックリングが発生してしまう。さらに、コックリングが生じた状態のままの記録媒体を搬送すると、ジャムの発生を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、搬送経路における記録媒体の急激な温度変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、記録媒体に対して液体を吐出する液体吐出部よりも、前記記録媒体の搬送方向上流に設けられ、前記記録媒体を加熱する第1ヒータ部と、前記液体吐出部に対応する位置に設けられ、前記記録媒体を加熱する第2ヒータ部と、前記第2ヒータ部よりも、前記記録媒体の搬送方向下流に設けられ、前記記録媒体を加熱する第3ヒータ部と、前記第1ヒータ部、前記第2ヒータ部、および、前記第3ヒータ部のそれぞれの温度を制御する温度制御部と、を備え、前記温度制御部は、前記第1ヒータ部において前記第2ヒータ部と隣接する第1隣接箇所の温度が、前記第1ヒータ部において前記記録媒体の搬送方向上流側に向かって前記第2ヒータ部から離間した第1離間箇所の温度とより高く、前記第2ヒータ部の温度との間の温度より低くなるように制御し、前記第3ヒータ部において前記第2ヒータ部と隣接する第2隣接箇所の温度が、前記第3ヒータ部において前記記録媒体の搬送方向下流側に向かって前記第2ヒータ部から離間した第2離間箇所の温度より低く、前記第2ヒータ部の温度より高くなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、後処理装置において、搬送経路における記録媒体の急激な温度変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す斜視透視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置を側面方向から示す模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係る画像形成部の概略構成を示す平面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る加熱乾燥部の概略構成を示す断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る制御部の概要を示す機能ブロック図。
【
図6】本発明の実施形態に係る乾燥部の温度制御の態様を説明するための説明図。
【
図7】本発明の実施形態に係る加熱乾燥部の概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明において同一の構成箇所については図面上にて同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるインクジェット記録装置100の概略構成を斜め上方向から一部透視して示す図である。
図2は、インクジェット記録装置100を側面方向から示す模式図である。
図3は、インクジェット記録装置100が備える画像形成部104の要部を一部透視して示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、装置本体101と、給送装置102と、巻取装置103と、を備える。なお、媒体である被搬送物は、ロール状に巻くことが可能なシート状のものである。例えば、用紙、コート紙、厚紙、OHP、プラスチックフイルム、プリプレグ、銀箔などが含まれる。本実施形態では、紙をロール状にしたロール紙120を例として取り上げて説明を行う。
【0013】
給送装置102には、中空軸部115に用紙が巻かれたロール体112が保持されている。巻取装置103には、用紙を巻き取る中空軸部114が備えられていて、この中空軸部114にロール体112が巻き取られる。なお、給送装置102および巻取装置103は、装置本体101と別体でなく一体的に構成してもよい。
【0014】
給送装置102は、ロール紙120を装置本体101の内部に供給する。装置本体101の内部には、
図1中の矢印のB方向で示される搬送方向に供給されたロール紙120に画像を形成する画像形成部104が配置されている。
【0015】
画像形成部104は、両側板にガイド部材であるガイドロッド1及びガイドステー2が掛け渡され、これらのガイドロッド1及びガイドステー2にキャリッジ5が
図1中の矢印のA方向で示される主走査方向へ移動可能に支持される。巻取装置103は、画像が形成されたロール紙120を巻き取る。
【0016】
主走査方向の一方側にはキャリッジ5を往復移動させる駆動源である主走査モータ8が配置されている。この主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ9と主走査方向の他方側に配置された従動プーリ10との間にタイミングベルト11が掛け回されている。このタイミングベルト11にキャリッジ5のベルト保持部が固定され、主走査モータ8を駆動することによってキャリッジ5を主走査方向に往復移動させる。
【0017】
キャリッジ5には、液体吐出ヘッド及びヘッドに液体を供給するヘッドタンクを一体にした複数(ここでは4個)の記録ヘッド6a~6dおよびキャリッジ5から液体が吐出される位置にロール紙120などの記録媒体があるか否かを検知するメディア検知センサ6sが搭載されている。したがって、キャリッジ5が液体吐出部である。
【0018】
ここで、記録ヘッド6aと記録ヘッド6b~6dとは、主走査方向と直交する副走査方向に1ヘッド分(1ノズル列分)位置をずらして配置されている。また、記録ヘッド6a~6dは、液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列を副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて搭載している。
【0019】
また、記録ヘッド6a~6dは何れも複数(例えば2列)のノズル列を有している。そして、記録ヘッド6a、6bについては、何れのノズル列からも同色である黒色の液体を吐出する。記録ヘッド6cは、一方のノズル列からシアンの液体を吐出し、他方のノズル列は未使用ノズル列としている。また、記録ヘッド6dは、一方のノズル列からイエローの液体を、他方のノズル列からマゼンタの液体を吐出する。
【0020】
これにより、モノクロ画像については記録ヘッド6a、6bを使用して1スキャンの主走査方向で2ヘッド分の幅の画像形成を行うことができ、カラー画像については例えば記録ヘッド6b~6dを使用して画像形成を行うことができる。なお、ヘッド構成はこれに限定されるものではなく、複数の記録ヘッドを主走査方向に全て並べて配置する構成でもよい。
【0021】
また、キャリッジ5の移動方向に沿ってエンコーダシート12が配置され、キャリッジ5にはエンコーダシート12を読み取るエンコーダセンサ13が設けられている。これらのエンコーダシート12及びエンコーダセンサ13によってリニアエンコーダ14を構成し、リニアエンコーダ14の出力からキャリッジ5の位置及び速度を検出する。
【0022】
キャリッジ5の主走査領域のうち、記録領域では、給送装置102からロール紙120が給送される。その後、搬送手段21によってキャリッジ5の主走査方向と直交する副走査方向(紙搬送方向)に間欠的にロール紙120が搬送される。
【0023】
記録ヘッド6a~6dのヘッドタンクには、装置本体101に対して交換可能に装着されるメインタンクであるインクカートリッジ70から供給チューブを介して各色インクが供給される。また、キャリッジ5の主走査方向の一方側には、搬送ガイド部材25の側方に記録ヘッド6a~6dの維持回復を行う維持回復機構80が配置されている。
【0024】
図2に示すように、搬送手段21は、給送装置102から給紙されるロール紙120を搬送する搬送ローラ23と、これに対向して配置された加圧ローラ24と、ロール紙120の搬送量を検知するエンコーダなどからなる副走査センサ21a(
図5参照)と、搬送ローラ23を回転させる副走査モータ21b(
図5参照)とを有する。
【0025】
搬送ローラ23および加圧ローラ24は搬送制御手段を構成する。そして、搬送ローラ23の下流側に複数の吸引穴が形成された搬送ガイド部材25と、搬送ガイド部材25の吸引穴から吸引を行う吸引手段としての吸引ファン26と、が備えられる。また、搬送手段21の下流側には、記録ヘッド6a~6dで画像形成されたロール紙120を所定の長さで切断する切断手段としてのカッタ27が配置されている。
【0026】
給送装置102のロール体112は、芯部材である紙管等の中空軸部115に長尺なシート状のロール紙120を巻き付けたものである。ここでのロール体112は、ロール紙120の終端を糊付け等の接着で中空軸部115に固定したもの、またロール紙120の終端を中空軸部115に接着していない非固定のものについて何れも装着可能である。
【0027】
給送装置102は、給送装置102によるロール紙120の給送量を検知する給送センサ102a、給送ローラ102bを備えており、給送ローラ102bは、給送モータ102c(
図5参照)の駆動により回転する。巻取装置103は、巻取装置103によるロール紙120の巻取量を検知する巻取センサ103a、巻取ローラ103bを備えており、巻取ローラ103bは、巻取モータ103c(
図5参照)の駆動により回転する。
【0028】
したがって、給送装置102から送り出されたロール紙120は、搬送手段21によって画像形成部104の直下に搬送されて画像が形成され、巻取装置103において巻き取られる。
【0029】
また、装置本体101には、ヒータなどによって構成され、ロール紙120に形成された画像を表現するインクなどを乾燥させるための液体乾燥部30が設けられている。さらに、装置本体101には、搬送中のロール紙120を加熱するヒータなどによって構成される加熱乾燥部300が設けられている。したがって、インクジェット記録装置100は、記録媒体加熱装置としても機能する。加熱乾燥部300についての詳細は、後述する。
【0030】
後述する制御部200(
図5)は、給送モータ102cおよび巻取モータ103cを駆動制御することで、ロール紙120に一定の張力が加わるようにロール紙120の搬送を制御する。このとき、搬送中のロール紙120には、一定のトルクが加わるため、ロール紙120の弛みを無くように搬送することができる。給送ローラ102bおよび巻取ローラ103bは、
図2中の円弧状の矢印方向にそれぞれ回転している。
【0031】
図2に示されるように、装置本体101側には、給送装置102のロール体112から引き出されるロール紙120をガイドするガイド部材130と搬送ガイド部材25の下流で吸引後のロール紙120をガイドする排紙ガイド部材131とが配置されている。巻取装置103は、芯部材である紙管等の中空軸部114を有している。ロール紙120の先端は中空軸部114にテープ等で接着されている。
【0032】
インクジェット記録装置100は、画像形成時にキャリッジ5を主走査方向に移動し、給送装置102のロール体112から引き出されてガイド部材130に沿って案内されるロール紙120を搬送手段21によって間欠的に搬送する。
【0033】
そして、記録ヘッド6a~6dを画像情報(印字情報)に応じて駆動して液体を吐出させることにより、ロール紙120上に所要の画像が形成される。この画像形成されたロール紙120は、排紙ガイド部材131に案内され、巻取装置103内の中空軸部114に巻きとられる。搬送ローラ23上のロール紙120は、給送装置102側、巻取装置103側のそれぞれから張力が付与されながら搬送される。
【0034】
以上の説明は、ロール体112を保持する給送装置102を備えるインクジェット記録装置100を本発明の実施形態とするものである。本発明に係る画像形成装置の形態としては、これに限定されるものではない。例えば、ロール体112を保持する給送装置102を備えた液体を吐出する装置(液体吐出装置)であってもよい。
【0035】
液体吐出装置は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0036】
この液体吐出装置は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。液体吐出装置としては、例えば、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置や、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0037】
また、液体吐出装置は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0038】
液体が付着可能なものとは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0039】
上述した液体が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材等の建材、衣料用のテキスタイル等の液体が一時的でも付着可能であればよい。液体は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液等も含まれる。
【0040】
また、液体吐出装置は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0041】
更に、液体吐出装置としては、他にも用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等もある。
【0042】
上述した液体吐出ユニットとは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、液体吐出ユニットは、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
【0043】
ここで、一体化とは、例えば液体吐出ヘッド、機能部品、機構が締結、接着、係合等で互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッド、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0044】
例えば液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているものがある。また、チューブ等で互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているものがある。
【0045】
ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているものがある。
【0046】
更に、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構とが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。因みに、主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。
【0047】
加えて、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させ、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構とが一体化されているものがある。
【0048】
その他、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンクもしくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構とが一体化されているものがある。因みに、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0049】
また、液体吐出ヘッドは、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば圧電アクチュエータ(積層型圧電素子)を使用するものでもよい。それ以外にも、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極とから成る静電アクチュエータ等を使用するものでもよい。なお、明細書中の用語における画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【0050】
次に、本実施形態に係る加熱乾燥部300の構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る加熱乾燥部300の概略構成の一例を示す図である。加熱乾燥部300は、プレ加熱部310、プリント加熱部320、ポスト加熱部330、および、液体乾燥部30を含んで構成される。
【0051】
プレ加熱部310は、加熱体としての第1プレヒータ311、第2プレヒータ312、および、加熱体の温度を検知する温度検知部としての第1プレヒータ温度センサ313、第2プレヒータ温度センサ314を含む。なお、
図4においては、2つのヒータを含む構成を示しているが、2つ以上のヒータを含んでプレ加熱部310を構成してもよい。また、プレヒータ温度センサは、1つのプレヒータに1つ設けられる。
【0052】
プレ加熱部310は、ロール紙120の搬送方向上流において、キャリッジ5が走査する範囲に搬送される前にロール紙120を加熱可能な位置に設けられている。プレ加熱部310によって画像が形成される前のロール紙120を加熱することにより、画像形成部104によって画像が形成される際に、ロール紙120上の液体などを蒸発させやすくすることができる。
【0053】
プリント加熱部320は、ロール紙120の搬送方向上流側から順に、加熱体としての第1プリントヒータ321、加熱体の温度を検知する温度検知部としての第1プリントヒータ温度センサ322を含む。プリント加熱部320についても、プレ加熱部310と同様に、2つ以上のヒータを含んでプリント加熱部320を構成してもよい。また、プリントヒータ温度センサは、1つのプリントヒータに1つ設けられる。
【0054】
プリント加熱部320は、画像形成部104において、キャリッジ5が走査する範囲の真下に設けられている。なお、搬送ガイド部材25および吸引ファン26は、プリント加熱部320よりもさらに下部に設けられている。
【0055】
プリント加熱部320によってキャリッジ5から液体が吐出されると同時にロール紙120を加熱することより、キャリッジ5から吐出された液体の表面に膜が形成される。液体に膜が形成されることにより、液体の広がりが抑制されるため、液体同士の合一やインクリークなどを防ぐことができる。
【0056】
ポスト加熱部330は、ロール紙120の搬送方向上流側から順に、加熱体としての第1ポストヒータ331、第2ポストヒータ332、第2ポストヒータ333、および、加熱体の温度を検知する温度検知部としての第1ポストヒータ温度センサ334、第2ポストヒータ温度センサ335、第3ポストヒータ温度センサ336を含む。ポスト加熱部330についても、プレ加熱部310と同様に、2つ以上のヒータを含んでポスト加熱部330を構成してもよい。また、ポストヒータ温度センサは、1つのポストヒータに1つ設けられる。
【0057】
ポスト加熱部330は、画像形成部104において、キャリッジ5が走査した後のロール紙120を加熱可能な位置に設けられている。ポスト加熱部330によって画像が形成された後のロール紙120を加熱することにより、画像形成部104によって画像が形成される際に、ロール紙120上の液体など乾燥させることができる。
【0058】
液体乾燥部30は、ファン31、赤外線ヒータ32a、32b、32c、32d、反射板33、温度センサ34を含む。液体乾燥部30は、赤外線ヒータ32a、32b、32c、32dによって、ロール紙120に吐出されたインクなどの着色剤の重合反応を促進し、これらの着色剤を硬化させる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェット記録装置100は、画像形成部104においてロール紙120に液体が吐出される前から後にかけてロール紙120を加熱した状態で搬送する。このとき、加熱乾燥部300において、搬送経路上のロール紙120における急激な温度変化を抑制し、ロール紙120の膨張や温度ムラを低減させることが本発明の要旨である。
【0060】
次に、加熱乾燥部300を構成するプレ加熱部310、プリント加熱部320、ポスト加熱部330の温度制御を行う構成について説明する。
図5は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100の制御機構を示す機能ブロック図である。なお、これまでの説明において説明した構成については、
図5に同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0061】
インクジェット記録装置100は、演算機能、液体吐出制御機能、センサ信号検知機能、モータ駆動制御機能を実現する制御部200によって制御される。制御部200は、CPU210、FPGA(Field-Programmable Gate Array)220、モータドライバ230を含んで構成される。
【0062】
インクジェット記録装置100に実装されている演算機能、液体吐出制御機能、センサ信号検知機能、モータ駆動制御機能は、CPU210とFPGA220が協働することによって実現される。また、CPU210は、インクジェット記録装置100に搭載されている各モータの動作を、それぞれのモータに対応したモータドライバ230を用いて制御する。
【0063】
制御部200には、リニアエンコーダ14およびメディア検知センサ6sの出力値が入力され、制御部200は、この値に基づいてキャリッジ5の位置および速度を検出する。そして、制御部200は、検出したキャリッジ5の位置および速度に基づいて主走査モータ8を制御する。
【0064】
また、制御部200には、副走査センサ21aが検知したロール紙120の搬送量が入力される。制御部200は、入力されたロール紙120の搬送量に基づいて副走査モータ21bを制御する。
【0065】
さらに、制御部200には、巻取センサ103aが検知したロール紙120の巻取量が入力される。制御部200は、入力されたロール紙120の巻取量に基づいて巻取モータ103cを制御する。
【0066】
さらに、制御部200には、給送センサ102aが検知したロール紙120の給送量が入力される。制御部200は、入力されたロール紙120の給送量に基づいて給送モータ102cを制御する。
【0067】
そして、制御部200には、加熱乾燥部300に含まれる各温度センサが検知した温度の値が入力される。具体的に、第1プレヒータ温度センサ313、第2プレヒータ温度センサ314がそれぞれ検知した、第1プレヒータ311、第2プレヒータ312の温度の値、第1プリントヒータ温度センサ322が検知した第1プリントヒータ321の温度の値、第1ポストヒータ温度センサ334、第2ポストヒータ温度センサ335、第3ポストヒータ温度センサ336がそれぞれ検知した、第1ポストヒータ331、第2ポストヒータ332、第2ポストヒータ333の温度の値、温度センサ34が検知した液体乾燥部30を搬送されるロール紙120の表面温度の値が制御部200に入力される。
【0068】
制御部200は、これらの温度の値に基づいて、
図6に示すように加熱乾燥部300を構成する各部の温度を制御する。
図6は、本実施形態に係る加熱乾燥部300の温度分布を例示した図である。
【0069】
制御部200は、
図6に示すように、第1プレヒータ311が第2プレヒータ312よりも低温(例えば、室温に近い温度)になるように制御し、プリント加熱部320と隣接する第2プレヒータ312(第1隣接箇所、第1隣接加熱体)が第1プリントヒータ321に近い温度となるように制御する。したがって、制御部200は、温度制御部として機能する。
【0070】
このとき、制御部200は、第2プレヒータ312の温度を、プリント加熱部320から離間した第1プレヒータ311(第1離間箇所、第1離間加熱体)の温度と第1プリントヒータ321の温度との間の値(例えば、第1プレヒータ311の温度と第1プリントヒータ321の温度との中間の温度)になるように制御する。
【0071】
このようにすると、第1ヒータ部であるプレ加熱部310を搬送されるロール紙120の温度変化が緩やかになるため、温度変化によって生じるロール紙120の膨張を低減させることができる。なお、プリント加熱部320が第2ヒータ部である。
【0072】
また、制御部200は、
図6に示すように、第1プリントヒータ321よりも第1ポストヒータ331の温度を高温にし(例えば、第1プリントヒータ321の温度+5度)、第1ポストヒータ331(第2隣接箇所、第2隣接加熱体)の温度よりも第2ポストヒータ332の温度を高温に設定する。
【0073】
このとき、制御部200は、プリント加熱部320と隣接する第1ポストヒータ331の温度を、プリント加熱部320から離間した第2ポストヒータ332(第2離間箇所、第2離間加熱体)の温度と第1プリントヒータ321の温度との間の値(例えば、第2ポストヒータ332の温度と第1プリントヒータ321の温度との中間の温度)になるように制御する。
【0074】
このようにすると、第3ヒータ部であるポスト加熱部330を搬送されるロール紙120の温度変化がゆるやかになるため、温度変化によって生じるロール紙120の膨張を低減させることができる。
【0075】
なお、
図7に示すように、プレ加熱部310およびポスト加熱部330に、ヒータとは熱伝導率の異なる材質からなる周辺部材315、337を設ける構成であってもよい。
図7は、本実施形態に係る加熱乾燥部300の概略構成の他の例を示す図である。
【0076】
図7に示す加熱乾燥部300においては、第1プレヒータ311とは熱伝導率の異なる材質(例えば、ジルコニア、ガラス綿など)が、周辺部材315として第1プレヒータ311に設けられている。さらに、第1ポストヒータ331とは熱伝導率の異なる材質が、周辺部材337として第1ポストヒータ331に設けられている。
【0077】
例えば、第1プレヒータ311、第1プリントヒータ321、第1ポストヒータ331が同じ熱伝導率である材質からなる場合には、周辺部材315、337を設けることにより、ロール紙120の温度が
図6に示した温度分布となるように制御することができる。
【0078】
図7においては、そのほかに、例えば、第1プレヒータ311、第1プリントヒータ321、第1ポストヒータ331の順に熱伝導率が小さい材質(第1ポストヒータ331の熱伝導率が最も大きい)からなる場合、第1プリントヒータ321に向かって第1プレヒータ311の熱伝導率が大きくなるように周辺部材315を設けてもよい。また、第1プリントヒータ321に向かって第1ポストヒータ331の熱伝導率が小さくなるように周辺部材337を設けてもよい。
【0079】
このようにすることにより、第1プリントヒータ321に隣接する側の第1プレヒータ311(第1隣接箇所)の温度を、第1プリントヒータ321から離間している側の第1プレヒータ311(第1離間箇所)の温度と第1プリントヒータ321の温度との中間値にすることができる。
【0080】
さらに、第1プリントヒータ321に隣接する側の第1ポストヒータ331(第2隣接箇所)の温度を、第1プリントヒータ321から離間している側の第1ポストヒータ331(第2離間箇所)の温度と第1プリントヒータ321の温度との中間値にすることができる。
【0081】
本発明は、説明した実施形態に限定されるものではなく、その他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用や効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 :ガイドロッド
2 :ガイドステー
5 :キャリッジ
6a :記録ヘッド
6b :記録ヘッド
6c :記録ヘッド
6d :記録ヘッド
6s :メディア検知センサ
8 :主走査モータ
9 :駆動プーリ
10 :従動プーリ
11 :タイミングベルト
12 :エンコーダシート
13 :エンコーダセンサ
14 :リニアエンコーダ
21 :搬送手段
21a :副走査センサ
21b :副走査モータ
23 :搬送ローラ
24 :加圧ローラ
25 :搬送ガイド部材
26 :吸引ファン
27 :カッタ
30 :液体乾燥部
31 :ファン
32:赤外線ヒータ
33 :反射板
34 :温度センサ
70 :インクカートリッジ
80 :維持回復機構
100 :インクジェット記録装置
101 :装置本体
102 :給送装置
102a :給送センサ
102b :給送ローラ
102c :給送モータ
103 :巻取装置
103a :巻取センサ
103b :巻取ローラ
103c :巻取モータ
104 :画像形成部
112 :ロール体
114 :中空軸部
115 :中空軸部
120 :ロール紙
130 :ガイド部材
131 :排紙ガイド部材
200 :制御部
210 :CPU
220 :FPGA
230 :モータドライバ
300 :加熱乾燥部
310 :プレ加熱部
311 :第1プレヒータ
312 :第2プレヒータ
313 :第1プレヒータ温度センサ
314 :第2プレヒータ温度センサ
315 :周辺部材
320 :プリント加熱部
321 :第1プリントヒータ
322 :第1プリントヒータ温度センサ
330 :ポスト加熱部
331 :第1ポストヒータ
332 :第2ポストヒータ
333 :第2ポストヒータ
334 :第1ポストヒータ温度センサ
335 :第2ポストヒータ温度センサ
336 :第3ポストヒータ温度センサ
337 :周辺部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】