特許 7156196 チェーンカシメ装置およびカシメ方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-10-11

(45)【発行日】2022-10-19

(54)【発明の名称】チェーンカシメ装置およびカシメ方法

(51)【国際特許分類】

   B21L 9/06 20060101AFI20221012BHJP

   F16G 13/06 20060101ALI20221012BHJP

   B21D 39/00 20060101ALI20221012BHJP

【ＦＩ】

B21L9/06

F16G13/06 Z

B21D39/00 B

【請求項の数】 9

(21)【出願番号】P 2019136027

(22)【出願日】2019-07-24

(65)【公開番号】P2021020223

(43)【公開日】2021-02-18

【審査請求日】2021-02-22

【前置審査】

(73)【特許権者】

【識別番号】000001258

【氏名又は名称】ＪＦＥスチール株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100099944

【弁理士】

【氏名又は名称】高山 宏志

(72)【発明者】

【氏名】長谷川 大洋

【審査官】石川 健一

(56)【参考文献】

【文献】実開昭５２－００８７４７（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開昭４９－１４３２９８（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開平０８－２２９７５６（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開平０４－０９０１４９（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２０１４－０１８８６３（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許第０２０９１７８０（ＵＳ，Ａ）

【文献】実開昭６１－０６７９４９（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開平０６－０４８９３６（ＪＰ，Ｕ）

【文献】米国特許第０４５０６５０１（ＵＳ，Ａ）

【文献】実開昭６４－０２０９３６（ＪＰ，Ｕ）

【文献】登録実用新案第３０３４３０２（ＪＰ，Ｕ）

【文献】米国特許出願公開第２０１７／００２１８７９（ＵＳ，Ａ１）

【文献】特開２００２－０３９３０１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ２１Ｌ ９／００－９／０６

Ｆ１６Ｇ １３／０６

Ｂ２１Ｄ ３９／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

チェーンのリンクにチェーンピンをセットした後カシメ作業を行うチェーンカシメ装置であって、
前記チェーンをガイドし、前記チェーンをカシメ位置に位置決めするためのガイド部材と、
前記カシメ位置にある前記チェーンの前記チェーンピンの先端部を成形する金型と、
前記ガイド部材に固定されるとともに、先端に前記金型が取り付けられ、前記金型を介して前記チェーンピンの先端を押圧する押圧機構と、
を有し、
前記ガイド部材は、前記押圧機構の下に設けられた下ガイドと、前記押圧機構の上に設けられた上ガイドに分割されており、
前記押圧機構は、前記下ガイドおよび前記上ガイドの両方に固定されることを特徴とするチェーンカシメ装置。

【請求項2】

前記押圧機構は、油圧シリンダまたはインパクトレンチであることを特徴とする請求項１に記載のチェーンカシメ装置。

【請求項3】

前記チェーンのリンクを装着する際に挿入された２つの前記チェーンピンの先端を一度に押圧することが可能なように、２つの前記押圧機構を有することを特徴とする請求項１または請求項２に記載のチェーンカシメ装置。

【請求項4】

前記金型を加熱する加熱機構をさらに有することを特徴とする請求項１から請求項３のいずれか一項に記載のチェーンカシメ装置。

【請求項5】

前記下ガイドは、前記チェーンが当接されることによりカシメ位置に位置決めする位置決め部を有しており、
前記上ガイドは、前記押圧機構と前記下ガイドの前記位置決め部とに連結されることを特徴とする請求項１から請求項４のいずれか一項に記載のチェーンカシメ装置。

【請求項6】

チェーンのリンクにチェーンピンをセットした後カシメ作業を行うチェーンカシメ方法であって、
ガイド部材により前記チェーンをガイドしてカシメ位置に位置決めし、
前記カシメ位置にある前記チェーンの前記チェーンピンの先端部に対応するように、前記チェーンピンの先端部を成形する金型を配置し、
前記ガイド部材に固定された押圧機構により前記金型を介して前記チェーンピンの先端を押圧し、前記チェーンピンの先端を成形し、
前記ガイド部材は、前記押圧機構の下に設けられた下ガイドと、前記押圧機構の上に設けられた上ガイドに分割されており、
前記押圧機構は、前記下ガイドおよび前記上ガイドの両方に固定されることを特徴とするチェーンカシメ方法。

【請求項7】

前記押圧機構は、油圧シリンダまたはインパクトレンチであることを特徴とする請求項６に記載のチェーンカシメ方法。

【請求項8】

２つの前記押圧機構により、前記チェーンのリンクを装着する際に挿入された２つの前記チェーンピンの先端を一度に押圧することを特徴とする請求項６または請求項７に記載のチェーンカシメ方法。

【請求項9】

前記チェーンピンの先端を加熱した後、または加熱しつつ、前記チェーンピンの先端を押圧することを特徴とする請求項６から請求項８のいずれか一項に記載のチェーンカシメ方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、チェーンカシメ装置およびカシメ方法に関する。

【背景技術】

【0002】

チェーンは動力伝達に一般的に用いられており、外リンクと内リンクとを交互にチェーンピンで連結して構成される。チェーンは、チェーン製作メーカーから端部が連結されない状態で使用現場に納入される。使用現場では、チェーン端部にチェーンピンをセットした後、カシメ作業を行うことにより、チェーンを完成させる。

【0003】

従来、カシメ作業は、一般的に、チェーン端部にチェーンピンをセットした後、バーナーにてチェーンピン先端を加熱し、逆側をハンマーにより衝撃を抑えつつ、熱した側をピン成形のためにハンマーで打撃することにより行われている。また、特許文献１には、チェーンの少なくとも一部を短手幅方向から挟むようにチェーンガイドを設け、これによりチェーンを固定した状態でカシメ作業を行う方法が記載されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２００２－３９３０１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

特許文献１の技術では、チェーンを固定するガイドを用いてはいるが、チェーンピンによるチェーンのカシメ作業自体は基本的に手作業である。手作業によりカシメ作業を行う場合には、非常に時間がかかる。また、手作業によるカシメ作業は、成形不良等のトラブルが発生しやすく、安全性にも問題がある。一方、チェーン製作メーカーの大型プレス機を用いればこのような問題は生じないが、通常の使用現場には大型プレス機を持ち込むことは困難である。

【0006】

したがって、本発明の課題は、手作業による不都合を生じさせることなく、かつ使用現場の制約が少ないチェーンカシメ装置およびカシメ方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上記課題を解決するため、本発明は以下の（１）～（９）を提供する。

【0008】

（１）チェーンのリンクにチェーンピンをセットした後カシメ作業を行うチェーンカシメ装置であって、
前記チェーンをガイドし、前記チェーンをカシメ位置に位置決めするためのガイド部材と、
前記カシメ位置にある前記チェーンに挿入された前記チェーンピンの先端部を成形する金型と、
前記ガイドに固定されるとともに、先端に前記金型が取り付けられ、前記金型を介して前記チェーンピンの先端を押圧する押圧機構と、
を有することを特徴とするチェーンカシメ装置。

【0009】

（２）前記押圧機構は、油圧シリンダまたはインパクトレンチであることを特徴とする上記（１）に記載のチェーンカシメ装置。

【0010】

（３）前記チェーンのリンクを装着する際に挿入された２つの前記チェーンピンの先端を一度に押圧することが可能なように、２つの前記押圧機構を有することを特徴とする上記（１）または（２）に記載のチェーンカシメ装置。

【0011】

（４）前記金型を加熱する加熱機構をさらに有することを特徴とする上記（１）から（３）のいずれかに記載のチェーンカシメ装置。

【0012】

（５）前記ガイド部材は、前記押圧機構の下に設けられた下ガイドと、前記押圧機構の上に設けられた上ガイドに分割されていることを特徴とする上記（１）から（４）のいずれかに記載のチェーンカシメ装置。

【0013】

（６）チェーンのリンクにチェーンピンをセットした後カシメ作業を行うチェーンカシメ方法であって、
ガイド部材により前記チェーンをガイドしてカシメ位置に位置決めし、
前記カシメ位置にある前記チェーンに挿入された前記チェーンピンの先端部に対応するように、前記チェーンピンの先端部を成形する金型を配置し、
前記ガイド部材に固定された押圧機構により前記金型を介して前記チェーンピンの先端を押圧し、前記チェーンピンの先端を成形することを特徴とするチェーンカシメ方法。

【0014】

（７）前記押圧機構は、油圧シリンダまたはインパクトレンチであることを特徴とする上記（６）に記載のチェーンカシメ方法。

【0015】

（８）２つの前記押圧機構により、前記チェーンのリンクを装着する際に挿入された２つの前記チェーンピンの先端を一度に押圧することを特徴とする上記（６）または（７）に記載のチェーンカシメ方法。

【0016】

（９）前記チェーンピンの先端を加熱した後、または加熱しつつ、前記チェーンピンの先端を押圧することを特徴とする上記（６）から（８）のいずれかに記載のチェーンカシメ方法。

【発明の効果】

【0017】

本発明によれば、ガイド部材によりチェーンをカシメ位置に位置決めし、ガイドに固定した押圧機構の先端に金型を取り付け、押圧機構により金型を介してチェーンピンの先端を押圧し、チェーンピンの先端を成形するようにした。このように押圧機構を用いるので、手作業による不都合を生じさせることがない。また、簡易な装置構成でかつ各部品として大型のものが不要であり、クレーン等の装置を用いなくても人力で使用現場に運搬して組み立てることができるので、使用現場の制約を大きく緩和することができる。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】チェーンカシメ装置の基本構成を示す概略平面図であり、カシメ作業を実施している状態を示す図である。

【図2】一実施形態に係るチェーンカシメ装置を示す側断面図である。

【図3】一実施形態に係るチェーンカシメ装置を示す正面図である。

【図4】一実施形態に係るチェーンカシメ装置の上ガイドを取り除いた状態を示す平面図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

図１は、チェーンカシメ装置の基本構成を示す概略図平面図であり、カシメ作業を実施している状態を示している。図１に示すように、チェーンカシメ装置１は、ガイド部材２と、押圧機構としての油圧シリンダ５と、金型６とを有しており、チェーンのリンクにチェーンピンをセットした後カシメ作業を行うものである。

【0020】

まず、チェーンについて説明する。
チェーン１０は、複数のリンクを連結して構成される。具体的には、チェーン１０は、外リンク１０ａと、内リンク１０ｂとが交互にチェーンピン１１で連結され、チェーンピン１１の外周にはローラー１３が装着されて構成されている。そして、チェーン１０は、端部のリンクが連結されていない状態で使用現場に納入され、連結されていない外リンク１０ａと内リンク１０ｂにチェーンピン１１をセットした状態で、チェーンカシメ装置１によりカシメ作業を実施することにより、これらが連結される。

【0021】

ガイド部材２は、チェーン１０をガイドし、カシメ作業を行うカシメ位置にチェーン１０を位置決めするものである。ガイド部材２は、位置決め部２０を有しており、チェーン１０が位置決め部２０に当接された状態でチェーン１０がカシメ位置に位置決めされる。

【0022】

押圧機構としての油圧シリンダ５は、カシメ位置に位置決めされたチェーン１０に対して位置決め部２０とは反対側の位置に設けられ、ガイド部材２に固定される。油圧シリンダ５の先端にはヘッド部７が設けられ、ヘッド部７に金型６が装着される。

【0023】

金型６は、カシメ位置にあるチェーン１０の外リンク１０ａおよび内リンク１０ｂにセットされたチェーンピン１１の先端部を成形するためのものである。チェーン１０は、セットされたチェーンピン１１が金型６に対応する位置になるように位置決めされる。

【0024】

このように構成されるチェーンカシメ装置１においては、チェーン１０をガイド部材２にガイドさせ、位置決め部２０により位置決めされた状態とし、連結されていない外リンク１０ａおよび内リンク１０ｂにチェーンピン１１をセットする。このとき、セットされたチェーンピン１１が金型６に対応する位置になるように、チェーン１０をセットする。

【0025】

そして、セットされたチェーンピン１１の先端部が金型６に挿入された状態で、ガイド部材２に固定された油圧シリンダ５により金型６を介してチェーンピン１１の先端部を押圧する。これにより、チェーンピン１１の先端部が金型６によって成形され、成形部１２となる。

【0026】

次に、具体的な一実施形態について説明する。
図２は一実施形態に係るチェーンカシメ装置を示す側断面図、図３は一実施形態に係るチェーンカシメ装置を示す正面図、図４は一実施形態に係るチェーンカシメ装置の平面図である。図４の平面図は上ガイドを取り除いた状態を示している。

【0027】

本実施形態のチェーンカシメ装置１００は、基本構成は図１のチェーンカシメ装置１と同じであり、ガイド部材２２と、押圧機構としての油圧シリンダ２５と、金型２６とを有している。

【0028】

ガイド部材２２は、ガイド部材２と同様、チェーン１０をガイドし、カシメ作業を行うカシメ位置にチェーン１０を位置決めするものであり、下ガイド２３と上ガイド２４とを有している。下ガイド２３は、チェーン１０を当接させることによりカシメ位置に位置決めする位置決め部４０を有している。

【0029】

押圧機構としての油圧シリンダ２５は、カシメ位置に位置決めされたチェーン１０に対して位置決め部４０とはの反対側の位置に設けられ、ガイド部材２２の下ガイド２３および上ガイド２４の両方に固定される。油圧シリンダ２５の先端にはヘッド部２７が設けられ、ヘッド部２７に金型２６が装着される。金型２６および油圧シリンダ２５は２つずつ設けられており、カシメ作業によりチェーン１０に装着しようとするリンクにセットされた２つのチェーンピン１１を同時に成形することが可能となっている。本例では、チェーン１０の両端部の内リンク１０ｂに外リンク１０ａを装着する際に、当該外リンク１０ａにセットされた２つのチェーンピン１１に対し、２つの金型２６および油圧シリンダ２５により同時にカシメ作業を行う（図４参照）。

【0030】

ガイド部材２２の上ガイド２４は、下ガイド２３の位置決め部４０と油圧シリンダ２５に連結され、油圧シリンダ２５によりチェーン１０を押圧する際に、位置決め部４０が変形するのを防止して十分な押圧力が付与される。

【0031】

このように構成されるチェーンカシメ装置１００においてもチェーンカシメ装置１と同様に、チェーン１０をガイド部材２２にガイドさせ、位置決め部４０により位置決めされた状態とする。そして、連結されていない外リンク１０ａを２つの内リンク１０ｂに対応させて、２つのチェーンピン１１をセットする。このとき、セットされた各チェーンピン１１が各金型２６に対応する位置になるように、チェーン１０をセットする。

【0032】

次に、セットされたチェーンピン１１の先端部が金型２６に挿入された状態で、ガイド部材２２に固定された油圧シリンダ２５により金型２６を介してチェーンピン１１の先端部を押圧する。これにより、チェーンピン１１の先端部が金型２６によって成形され、成形部１２となり、カシメにより外リンク１０ａが取り付けられる。

【0033】

本実施形態においては、カシメ作業に先立って、成形しようとするチェーンピン１１を加熱することが好ましい。加熱することにより成形をより容易に行うことができる。このとき、チェーンピン１１の加熱はバーナー等の加熱手段により行うことができる。また、加熱の悪影響がなければ、油圧シリンダ５または２５によりチェーンピン１１を押圧している際に加熱してもよい。このとき、チェーンカシメ装置が金型６または２６を加熱する加熱機構を有する構成であってもよい。

【0034】

このように、チェーンカシメ装置１または１００では、押圧機構である油圧シリンダ５または２５により金型６または２６を介してチェーンピン１１の先端を押圧し、チェーンピン１１の先端を成形するようにしたので、手作業による不都合を生じさせることがない。

【0035】

すなわち、手作業によるカシメの場合は、ハンマー等によりチェーンピンを叩く作業により成形するので時間がかかるが、実施形態のチェーンカシメ装置では、金型と押圧機構である油圧シリンダを用いることにより短時間で成形することができる。実際に、手作業では約２時間必要であったものを、実施形態のチェーンカシメ装置では３０分でカシメ作業を行うことができ、作業時間を約１／４に短縮することができた。

【0036】

また、手作業の場合は、一人の作業者がチェーンを固定し、他の作業者がハンマーで叩く作業を行うため、人手が多く必要であるとともに、熟練を要し、かつ作業の安全性の問題もある。これに対し、本実施形態のチェーンカシメ装置では、少ない人手で熟練を要することなく誰でも安全に作業を行うことができる。しかも、本実施形態のチェーンカシメ装置により、手作業よりもきれいな形状の成形部を毎回ほぼ同じ形状で形成することができる。

【0037】

さらに、本実施形態のチェーンカシメ装置は、ガイド部材と、チェーンピンを成形できる程度の圧力の押圧機構（油圧シリンダ）と、金型とを組み立てればよく、装置構成が簡易であるとともに、各部品として大型のものが不要である。このため、全ての部品を人力での運搬が可能な３０ｋｇ以下とすることが可能であり、各部品を人力で使用現場に運搬し、人力で組み立てることができるので、クレーン等の装置が不要であり、使用現場の制約を大きく緩和することができる。また、比較的重量物であるガイド部材が３０ｋｇ以上となる場合でも、ガイド部材を下ガイドおよび上ガイドに分割することにより、確実に人力で運搬可能な３０ｋｇ以下とすることができる。

【0038】

以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらはあくまで例示であって制限的なものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱することなく、種々の形態で、省略、置換、変更可能であることはいうまでもない。

【0039】

例えば、上記実施の形態では、押圧機構として油圧シリンダを用いた場合を示したが、これに限るものではなく、押圧力を与えてチェーンピンを成形できるものであればよい。例えば、電動モータによりねじを回して押圧力を与えるインパクトレンチも好適に用いることができる。

【符号の説明】

【0040】

１，１００ チェーンカシメ装置
２，２２ ガイド部材
５，２５ 油圧シリンダ（押圧機構）
６，２６ 金型
７，２７ ヘッド部
１０ チェーン
１０ａ 外リンク
１０ｂ 内リンク
１１ チェーンピン
１２ 成形部
２０，４０ 位置決め部
２３ 下ガイド
２４ 上ガイド

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】