(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】異なる2種類の回転角度センサーからなるセンサー装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221012BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20221012BHJP
G01D 5/14 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/12 Q
G01D5/14 D
G01D5/14 H
G01D5/245 110L
(21)【出願番号】P 2021533498
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2018084791
(87)【国際公開番号】W WO2020119905
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591114043
【氏名又は名称】ヘラ・ゲーエムベーハー・ウント・コムパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】ゴデラー、カリン
(72)【発明者】
【氏名】ガスク、エルベ
(72)【発明者】
【氏名】フュエ、シャルルアンリ
(72)【発明者】
【氏名】ラフェル、アルノー
(72)【発明者】
【氏名】マウタール、ミシェル
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-247863(JP,A)
【文献】特開2009-69148(JP,A)
【文献】独国実用新案第202007010280(DE,U1)
【文献】独国特許出願公開第19520299(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2種類の回転角度センサーからなるセンサー装置であって、ローター(2)およびステーター(1)と、ステーターに形成されるアンテナ(12)とローターに形成されるモジュレーター(22)とを有する第1回転角度センサーと、
ローターに形成されるマグネット(23)と
ステーターに形成される磁気抵抗素子(13)またはホールセンサーとを有する第2回転角度センサーと、を
有することを特徴とするセンサー装置。
【請求項2】
ローター(2)がシャフト(21)を有し、該シャフトの一端にマグネット(23)が設けられる、請求項1記載のセンサー装置。
【請求項3】
第1回転角度センサーのアンテナ(12)およびモジュレーター(22)と第2回転角度センサーの磁気抵抗素子またはホールセンサーおよびマグネットとの間に、第1回転角度センサーと第2回転角度センサーの間の相互干渉を防止するためのゾーンBが設けられる、請求項1または2記載のセンサー装置。
【請求項4】
モジュレーター(22)とシャフト(21)が相互依存性を有する、請求項2または3記載のセンサー装置。
【請求項5】
ステーター(1)は、第1回転角度センサーおよび/または第2回転角度センサーの要素に給電し、および/または、アンテナおよび
磁気抵抗素子またはホールセンサーからの信号を評価する少なくとも一の
電気部品(14,15)を有する、請求項1ないし4のいずれか記載のセンサー装置。
【請求項6】
ステーター(1)は印刷回路基板(11)を有し、該印刷回路基板にアンテナ(12)、磁気抵抗素子(13)またはホールセンサー、および少なくとも一の電気部品(14,15)が配置される、請求項1ないし5のいずれか記載のセンサー装置。
【請求項7】
磁気抵抗素子(13)またはホールセンサーは、回転軸と同心である円板の中に回転軸方向に突出して設けられる、請求項1ないし6のいずれか記載のセンサー装置。
【請求項8】
モジュレーターは、回転軸と同心である円形リングの中に回転軸方向に突出して設けられる、請求項1ないし7のいずれか記載のセンサー装置。
【請求項9】
前記円板は前記円形リングの内側に位置しており、その外径は円形リングの内径より小さいか等しい、請求項7および8記載のセンサー装置。
【請求項10】
第2回転角度センサーに給電し、および/または、磁気抵抗素子(13)またはホールセンサーからの信号を評価する少なくとも一の電気部品が前記円板の中に配置される、請求項7ないし9のいずれか記載のセンサー装置。
【請求項11】
第1回転角度センサーおよび/または第2回転角度センサーに給電し、および/または、アンテナ(12)および/または磁気抵抗素子(13)またはホールセンサーからの信号を評価する少なくとも一の電気部品が前記円形リングの外側に配置される、請求項7ないし10のいずれか記載のセンサー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる2種類の回転角度センサーからなるセンサー装置に関する。このセンサー装置は、ローターおよびステーターと、ステーターに形成されるアンテナとローターに形成されるモジュレーターとを有する第1回転角度センサーと、マグネットとステーターに形成される磁気抵抗素子またはホールセンサーとを有する第2回転角度センサーと、を有する。
【背景技術】
【0002】
このようなセンサー装置は欧州特許公開公報第2180296号に公知である。このセンサー装置のローターは歯車を介して第2のローターに連結されている。この第2のローターは第2回転角度センサーのマグネットを支持する。第1回転角度センサーと第2回転角度センサーとに共通のステーターに、第2の回転角度センサーの磁気抵抗素子が配置される。磁気抵抗素子に代えてホールセンサーを用いることができる。
【0003】
歯車機構を介して2つのローターが接続されることにより、第1ローターの回転動作が第2ローターに伝達される。第2ローターが第1ローターより高速に回転するように歯車が設計される。第1ローターが第1の角度だけ回転すると、第2ローターが異なる角度だけ回転する。このことによってセンサー信号の評価がきわめて複雑になる。加えて、歯車機構による回転動作の伝達はエラーを生じやすい。たとえば、歯車が塵や埃で塞がれると動作を伝達することができなくなり、最悪の場合は歯車を損傷または破壊させる。
【0004】
公知の繊細装置のもう一つの短所は、2つのローターを収容するために比較的大きな設置スペースを必要とすることである。
【0005】
本発明は、冒頭記載のタイプの新しいセンサー装置において、回転動作の伝達にエラーが生じやすいことを解消すると共に2つの回転角度センサーをコンパクトに収容することができる新たなセンサー装置を開発しようとする課題に基く。
【0006】
本発明によれば、上記課題はマグネットを取り囲むローターによって解決される。本発明では、2つのローターに代えて単一のローターが用いられる。これにより、歯車機構を通じての回転伝達を無くし、上述した他の短所も解消することができる。
【0007】
本発明によるセンサー装置のローターは、その一端にマグネットが配置されたシャフトを有することができる。マグネットは好ましくはシャフトの一端に取り付けられる。
【0008】
シャフトにはさらにモジュレーターを取り付けることができる。モジュレーターは円形表面を有する印刷基板上に設けることができ、該表面上に一または複数の導電トラックが設けられてモジュレーターを形成する。印刷基板に形成される穴はシャフトの外径に対応する口径を有するものとすることができる。モジュレーターは、たとえば金属シートをパンチングして形成される金属部品であっても良い。モジュレーターは、アンテナからの信号を変調する部品であっても良い。
【0009】
ステーターは、第1および/または第2回転角度センサーの素子に給電するために少なくとも一の電気部品、特に集積回路を有することができる。さらに、アンテナおよび磁気抵抗素子またはホールセンサーからの信号を評価するために少なくとも一の電気部品、特に集積回路を有することができる。該部品はフィルター素子を有するものであって良い。
【0010】
ステーターは、アンテナ、磁気抵抗素子またはホールセンサーおよび少なくとも一の電気部品が設けられる印刷基板を有することができる。アンテナは一または複数の導電トラックによって形成されるものであって良い。
【0011】
磁気抵抗素子またはホールセンサーは、回転軸に同心である円板内において回転軸方向に突出した部位に配置することができる。
【0012】
モジュレーターは、回転軸に同心である円形リング内において回転軸方向に突出した部位に配置することができる。円形リングの内部に、円形リングの内径より小さい外径を有する円板を配置することができる。円板と円形リングとの間に形成されるゾーンは、第1回転角度センサーと第2回転角度センサーとの間の相互干渉、特に混信を防止する。このゾーンは、円板と円形リングとの間に一定の距離、すなわち一方では妨害を確実に回避できる程度に大きく且つ他方ではセンサー装置のサイズを十分に小さくできる程度に小さい距離を与える。このゾーンにおいては、好ましくは、一方の回転角度センサーによる他方の回転角度センサーへの電磁干渉を生じさせる可能性のあるいかなる磁気的および/または電気的な伝導材料も存在しない。しかしながら、このゾーンに、2つの回転角度センサーの電磁デカップリングを生じさせる材料および/または構造を設けることはできる。
【0013】
第2回転角度センサーに給電し、および/または磁気抵抗素子またはホールセンサーからの信号を評価するために少なくとも一の電気部品が好ましくは円板の内部に配置される。これにより、磁気抵抗素子またはホールセンサーと該部品とを接続するケーブルを短くすることができ、結線を介して生じ得る干渉を極小化することができる。
【0014】
第1回転角度センサーおよび/または第2回転角度センサーに給電し、および/またはアンテナおよび/または磁気抵抗素子またはホールセンサーからの信号を評価するために少なくとも一の電気部品を円形リングの外側に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付図面に基いて本発明について以下に詳細に説明する。添付図面は次の通りである。
【
図2】この本発明センサー装置のステーターの全体図である。
【
図3】本発明によるセンサー装置のローターの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図示の本発明センサー装置のステーター1は印刷基板11を有し、その上に導体トラックで形成されたアンテナ12が設けられている。このアンテナ12は円形の輪郭を有し、ステーター1のゾーンCに配置されている。
【0017】
ステーター1はゾーンCの中央に円板状のゾーンAを有し、その中に磁気抵抗素子13が配置されている。磁気抵抗素子は、磁気抵抗素子にエネルギーを供給すると共に磁気抵抗素子の信号を評価する集積部品15に接続されている。該集積部品は図示されない線によって互いに接続されている。
【0018】
中央ゾーンAとゾーンCとの間に円形リング状のゾーンBが設けられる。このゾーンは円形リング形状を有する。後述するように、このゾーンBは干渉抑制用である。
【0019】
ゾーンCは、印刷基板11の縁まで延長するものであっても良いゾーンDによって囲まれている。ゾーンDには、アンテナに送信する信号を生成するために用いられる部品14が配置されている。さらに、部品14は、アンテナからの信号を受信して該信号を評価することを可能にする。
【0020】
本発明センサー装置のローター2はシャフト21を有する。図示されないが、このシャフトは回転可能に設けられる。シャフト21および該シャフトに取り付けられたローター2のすべての部分をシャフト21の長手軸を中心として回転可能とするベアリングが設けられる。
【0021】
シャフト21に取り付けられるローター2の部品には、導電トラック構造によって形成されるモジュレーターまたはPCBアンテナからの信号を変調する金属部品を担持する印刷基板22を有することができる。印刷基板22は、トラックの無い領域に切欠221を有し、これによって印刷基板の質量を低減させている。
【0022】
シャフト21に取り付けられるローター2の部品には、さらに、シャフト21の一端に取り付けたマグネット23が含まれ得る。マグネット23は平板状であって、その中心に長手軸と同心の穴が形成されて、この穴にシャフトが固着される。
【0023】
ローター2はステーター1に対して回転可能であり、ゾーンA,BおよびCはローター2の回転軸と同心状である。
【0024】
アンテナ12とモジュレーター22は本センサー装置の第1回転角度センサーを構成し、磁気抵抗素子13とマグネット23は本センサー装置の第2回転角度センサーを構成する。これらのセンサーが配置される領域は互いに空間的に隔絶されている。
【0025】
部品14の一つによって生成されてアンテナ12に伝送された信号は、モジュレーターの回転によって変化する電磁場を生成する。この変化はアンテナに影響を与え、ステーターに対するローターの回転角度に応じて信号を変化させる。信号は、部品14の一つによって受信され、評価される。
【0026】
第2回転角度センサーは、異方向性磁気抵抗効果、巨大磁気抵抗効果、トンネル磁気抵抗効果または他の磁気抵抗効果あるいはホール効果に基くものとすることができる。マグネット23と磁気抵抗要素13の相対移動により、その回転角度に応じた信号が磁気抵抗素子13から送信され、部品15の一つによって評価される。すなわち、第1回転角度センサーおよび第2回転角度センサーの両方のセンサーがステーター1に対するローター2の回転角度を検出し、これらを評価する。
【0027】
第1回転角度センサーと第2回転角度センサーとの間の干渉を防止するためにゾーンBが用いられる。このゾーンは、混信を安全に回避するに必要なだけ大きく、同時に、ローターとステーターが必要とするスペースを極小化するに十分なだけ小さい。
【0028】
ゾーンCを取り囲むゾーンDは、他のいかなる部品も第1回転角度センサーに干渉しないように形成される。
【0029】
センサー装置全体としてのまとまりがきわめて重要であるから、ゾーンBおよびゾーンDは、センサー装置が余分なスペースを取らないように、可能な限り小さい寸法を有するように設計されなければならない。
【符号の説明】
【0030】
1 ステーター
11 印刷回路基板
12 アンテナ
13 磁気抵抗素子
14 伝送信号を発生し、アンテナ信号を評価する部品
15 磁気抵抗センサーの信号を評価する部品
2 ローター
21 シャフト
22 モジュレーター
221 切欠
23 マグネット
A ステーターの印刷回路基板における磁気抵抗センサーおよび部品用のゾーン
B 第1および第2回転角度センサーを隔絶するゾーン
C ステーターの印刷回路基板におけるアンテナ用のゾーン
D ステーター1の表面によって定義されるゾーンCの外側のゾーン