(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】レーザーレーダー用の走査型の光学系及びレーザーレーダー装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20221013BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/12
(21)【出願番号】P 2018567536
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2018004755
(87)【国際公開番号】W WO2018147454
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2017022647
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 鷹彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮太
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170962(JP,A)
【文献】特開2007-214564(JP,A)
【文献】特開2010-091763(JP,A)
【文献】特開2003-004850(JP,A)
【文献】特開2014-006110(JP,A)
【文献】米国特許第05028103(US,A)
【文献】国際公開第2016/056545(WO,A1)
【文献】特開平10-003047(JP,A)
【文献】国際公開第2014/168137(WO,A1)
【文献】特開2013-068582(JP,A)
【文献】特開2018-059898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S17/00-17/95
G01C 3/06- 3/08
G01B11/00-11/30
G02B26/10-26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、前記複数の光源からの光をそれぞれ入射させる複数のコリメーターレンズとを有する投光系と、
前記投光系からの光を反射することによって投光ビームを走査する走査用ミラーと、
前記走査用ミラーからの戻り光が入射する受光レンズと、
前記受光レンズを経た戻り光が入射する受光素子とを備え、
前記複数の光源は、前記投光系から前記走査用ミラーに向かう射出光軸に対して対称的かつ副走査方向に対応する方向に異なる位置であって前記複数のコリメーターレンズに対して前記副走査方向に対応する方向に関してそれぞれ軸外し状態で配置され、
前記複数の光源の発光面は、前記副走査方向に対応する方向に相対的に長く、
前記投光ビームは、前記各光源から前記副走査方向に隣接するように出射され、
前記複数のコリメーターレンズの光軸は、光学的に互いに平行な状態で隣接し、
前記射出光軸と入射光軸とは、前記副走査方向に対応する方向に異なる位置に配置され、
前記受光素子は、前記複数の光源に対応する戻り光を検出可能に配置される、レーザーレーダー用の走査型の光学系。
【請求項2】
前記複数の光源として、2つの光源を有する、請求項1に記載のレーザーレーダー用の走査型の光学系。
【請求項3】
前記投光系は、前記複数の光源のうち少なくとも2つの光源から出射した光を前記副走査方向に対応する方向に関して交差させることにより反転させる、請求項1~
2のいずれか一項に記載のレーザーレーダー用の走査型の光学系。
【請求項4】
前記複数の光源は、異なる角度方向に設定された領域を有する前記複数のコリメーターレンズの光軸に沿った光路上に配置され、
前記複数のコリメーターレンズの光軸は、前記複数の光源の少なくとも1つからの光路の折り曲げによって光学的に互いに平行な状態で隣接して配置される領域を有する、請求項1~
3いずれか一項に記載のレーザーレーダー用の走査型の光学系。
【請求項5】
前記投光系から前記走査用ミラーに向かう前記射出光軸と、前記走査用ミラーから前記受光レンズに向かう
前記入射光軸とは、前記走査用ミラーに隣接する区間で略一致して配置され、
前記走査用ミラーと前記受光レンズとの間の光路上に配置されて、前記射出光軸が通る開口を有する光路折曲ミラーを備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載のレーザーレーダー用の走査型の光学系。
【請求項6】
前記投光系から前記走査用ミラーに向かう前記射出光軸と、前記走査用ミラーから前記受光レンズに向かう
前記入射光軸とは、所定距離だけ離間して平行に配置される、請求項1~
5のいずれか一項に記載のレーザーレーダー用の走査型の光学系。
【請求項7】
前記受光素子は、前記副走査方向に関して2画素以上を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載のレーザーレーダー用の走査型の光学系。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のレーザーレーダー用の走査型の光学系を備え、前記戻り光に基づいて対象物を検出する、レーザーレーダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光ビームを走査しつつ対象物からの戻り光を検出するためのレーザーレーダー用の走査型の光学系及びこれを組み込んだレーザーレーダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を2次元的に走査しつつ照射し、走査範囲内に存在する物体から戻ってきた反射光を検出することで、物体までの距離を検出する距離測定装置が公知となっている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の距離測定装置では、複数の光源からのレーザー出力を一点に集めてハイパワ-を得ているが、この結果、一度に照射できる範囲である視野角が狭くなっている。
【0003】
なお、複数のレーザー光源からのレーザー光を効率良く合成するための一般的な手法として、偏光ビームスプリッターを用いるものがあるが、偏光の制限を受けること、部品点数が増えること等によって、部品コストや調整コストが増大するという問題がある。また、レーザー光の透過窓を設けた保護カバーを用いる場合、湾曲したり傾斜したりする透過窓での反射によってS成分が高い反射率で反射され比較的強い迷光が発生するため、測定装置の信頼性が低下しかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、視野角を広くして広範囲の迅速な計測を可能にするレーザーレーダー用の走査型の光学系及びレーザーレーダー装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したレーザーレーダー用の走査型の光学系は、複数の光源と、複数の光源からの光をそれぞれ入射させる複数のコリメーターレンズとを有する投光系と、投光系からの光を反射することによって投光ビームを走査する走査用ミラーと、走査用ミラーからの戻り光が入射する受光レンズと、受光レンズを経た戻り光が入射する受光素子とを備え、複数の光源は、投光系から走査用ミラーに向かう射出光軸に対して対称的かつ副走査方向に対応する方向に異なる位置であって複数のコリメーターレンズに対して副走査方向に対応する方向に関してそれぞれ軸外し状態で配置され、複数の光源の発光面は、副走査方向に対応する方向に相対的に長く、投光ビームは、各光源から副走査方向に隣接するように出射され、複数のコリメーターレンズの光軸は、光学的に互いに平行な状態で隣接し、射出光軸と入射光軸とは、副走査方向に対応する方向に異なる位置に配置され、受光素子は、複数の光源に対応する戻り光を検出可能に配置される。
【0007】
上記した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したレーザーレーダー装置は、上述した走査型の光学系を備え、戻り光に基づいて対象物を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るレーザーレーダー装置の構造を説明する概略図である。
【
図2】
図2A及び2Bは、走査型の光学系の構造を説明する側面図及び平面図である。
【
図3】
図3A及び3Bは、
図2A及び2Bに対応し、投光系及び受光系を拡大した側面図及び平面図である。
【
図4】
図4A~4Cは、第1の光源の発光面周辺の正面図、側面図、及び平面図であり、
図4D~4Fは、第2の光源の発光面周辺の正面図、側面図、及び平面図である。
【
図5】
図5Aは、投光ビームの遠方への投射状態を説明する図であり、
図5Bは、投光ビームの交差や上下の反転等を説明する概念図である。
【
図7】
図7A及び7Bは、第2実施形態における走査型の光学系の構造を説明する側面図及び平面図である。
【
図8】
図8A及び8Bは、第3実施形態における走査型の光学系の構造を説明する側面図及び平面図である。
【
図9】第4実施形態に係るレーザーレーダー装置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照しつつ、第1実施形態に係る走査型の光学系及びこれを組み込んだレーザーレーダー装置について説明する。
【0010】
図1に示すレーザーレーダー装置100は、例えば屋内外監視用途や車載用途の物体検出装置であり、検出対象の存在や当該検出対象までの距離を検出する。レーザーレーダー装置100は、投光系10と、受光系20と、回転反射部30と、制御部40と、外装部品50とを備える。これらのうち、投光系10と、受光系20と、回転反射部30とは、走査型の光学系101を構成している。
【0011】
レーザーレーダー装置100又は走査型の光学系101のうち、投光系10は、後述する回転反射部30の走査用ミラー31に対して投光ビームの元になるレーザー光L1を投射する。投光系10の詳細な構造については後述する。
【0012】
受光系20は、外装部品50の光学窓53を介して入射する検出対象OBからの反射光すなわち戻り光L2であって、回転反射部30の走査用ミラー31で反射された戻り光L2を受光する。より詳細には、検出領域内に物体等の検出対象OBがあると、レーザーレーダー装置100から射出されたレーザー光(投光ビーム)L1が検出対象OBで反射等され、検出対象OBで反射等された光の一部が戻り光L2としてレーザーレーダー装置100における走査用ミラー31を介して受光系20に入射する。受光系20の詳細な構造については後述する。
【0013】
回転反射部30は、走査用ミラー31と回転駆動部32とを有する。走査用ミラー31は、2回反射型のポリゴンミラーであり、光路折り曲げ用の第1反射部31aと第2反射部31bとを有する。第1及び第2反射部31a,31bは、Z方向に平行に延びる回転軸RXに沿って上下にそれぞれ配置されている。第1及び第2反射部31a,31bは角錐状の形状を有しているが、それぞれの反射面の傾斜角は走査用ミラー31の回転位置(図示の例では90°単位で4方位を向く位置)に伴って徐々に変化するものになっている(第1及び第2反射部31a,31bの具体的な形状については、国際公開第2014/168137号参照)。走査用ミラー31において、第1反射部31aの鏡面は、Z軸に対して傾斜しており、紙面上で左方向である+X方向から入射したレーザー光(投光ビーム)L1を略直交する方向に反射し、紙面上で上方向の第2反射部31bの鏡面に導く。第2反射部31bの鏡面は、Z軸に対して傾斜しており、紙面上で下方向である-Z方向から入射したレーザー光L1を略直交する方向に反射し、紙面上で左方向の検出対象OB側へ導く。検出対象OBで反射された一部の戻り光L2は、レーザー光L1の経路と逆の経路をたどり、受光系20で検出される。つまり、走査用ミラー31は、検出対象OBで反射された戻り光L2を、第2反射部31bの鏡面で再度反射させ、第1反射部31aの鏡面に導く。続いて、戻り光L2を第1反射部31aの鏡面で再度反射させ、受光系20側へ導く。走査用ミラー31が回転すると、Z軸方向に直交する平面(つまり、XY面)内において、レーザー光L1の進行方向が変化する。つまり、レーザー光L1は、走査用ミラー31を構成する4対の反射面単位での回転に伴って、Z軸のまわりに又はY軸方向に沿って走査すなわち主走査される。レーザー光L1によって走査される角度領域が検出領域となる。投光用のレーザー光L1の進行方向である+X軸方向に対する傾斜角の範囲が投光角度であり、走査開始点でのレーザー光L1の進行方向と走査終了点でのレーザー光L1の進行方向とのなす角度が照射角度であるとする。投光角度と照射角度とによって投光視野が形成される。以上において、回転軸RXに平行な±Z方向を副走査方向と呼び、主走査に対応する回転軸RXに垂直な±Y方向を主走査方向と呼ぶ。つまり、副走査方向と主走査方向とは直交する。なお、投光視野の縦方向又はZ方向に関する投光ビームの中心角度は、上述のように、走査用ミラー31の回転位置に応じて徐々に変化し、走査用ミラー31の1回転に伴って例えば4段階移動する副走査が達成される。
【0014】
制御部40は、投光系10の光源11a,11b(
図2A等参照)、受光系20の受光素子24(
図2A等参照)、回転反射部30の回転駆動部32等の動作を制御する。また、制御部40は、受光系20の受光素子24に入射した戻り光L2の変換によって得た電気信号から検出対象OBの物体情報を得る。具体的には、受光素子24における出力信号が所定の閾値以上である場合、制御部40において、受光素子24が検出対象OBからの戻り光L2を受光したと判断される。この場合、光源11a,11bでの発光タイミングと受光素子24での受光タイミングとの差から、検出対象OBまでの距離が求められる。また、受光素子24への戻り光L2の副走査方向に関する受光位置及び走査用ミラー31の主走査方向に相当する回転角に基づいて、検出対象OBの位置、大きさ、形状等の物体情報を求めることができる。
【0015】
外装部品50は、レーザーレーダー装置100の内蔵部品を覆い、保護するためのものである。外装部品50は、蓋状の主外装部51と、円筒容器状の副外装部52とを有する。主外装部51と副外装部52とは、これらの縁部において、外装部品50の内部の機密性を保った状態でボルト等の留め具で着脱可能に固定されている。
【0016】
図2A及び2B又は
図3A及び3Bに示すように、投光系10は、複数の光源としての2つの光源11a,11bと、2つの光源11a,11bからの光SB1,SB2を個別に入射させる複数のコリメーターレンズ12a,12bと、光路合成用のミラー13とを有する。このように、投光系10が2つの光源源11a,11bを有することで、投光ビームによる受光視野の分割が簡易になり、投光系10を構成する部品点数を抑えて低コスト化を図ることができる。一方の光源11aと一方のコリメーターレンズ12aとによって第1光源要素14aが構成され、他方の光源11bと他方のコリメーターレンズ12bとによって第2光源要素14bが構成される。また、コリメーターレンズ12a,12bと光路合成用のミラー13とを合わせたものがコリメーター部18となっている。第2光源要素14b及びミラー13は、第1光源要素14aよりも上側すなわち+Z方向にシフトした位置に配置されている。
【0017】
図4A~4Cに概念的に示すように、第1の光源11aの発光面16aは、副走査方向に対応するZ方向において主走査方向に対応するY方向よりも相対的に長くなっている。つまり、発光面16aの縦寸法であるZ幅は、発光面16aの横寸法であるY幅よりも数倍以上大きくなっている。また、
図4D~4Fに概念的に示すように、第2の光源11bの発光面16bは、副走査方向に対応するZ方向に相対的に長い。つまり、発光面16bの縦寸法であるZ幅は、発光面16bの横寸法であるX幅よりも数倍以上大きくなっている。
【0018】
図3A及び3Bに戻って、第1の光源11aとコリメーターレンズ12aとを通る光源光軸SX1は、X軸に平行に延びている(図示の例では、光源光軸SX1は、コリメーターレンズ12aの光軸を通っている)。一方、第2の光源11bとコリメーターレンズ12bとを通る光源光軸SX2は、ミラー13よりも光路上流の前段領域A1でY軸に平行に延び、ミラー13よりも光路下流の後段領域A2でX軸に平行に延びている(図示の例では、光源光軸SX2は、コリメーターレンズ12bの光軸を通っている)。つまり、第1の光源11a側における光源光軸SX1は、第2の光源11b側における光源光軸SX2の前段領域A1と直交しており、両領域A1,A2は、異なる角度方向に設定されている。さらに、コリメーターレンズ12a側における光源光軸SX1とコリメーターレンズ12b側における光源光軸SX2の後段領域A2とは互いに平行に隣接して配置されており、Z方向又は副走査方向に光源11a,11bの幅程度離間している。つまり、複数の光源11a,11bは、副走査方向に対応するZ方向に異なる位置に配置されており、主走査方向に対応するY方向には後段側で平面視で同じ位置に重なって見えるように配置されている。
【0019】
図4A~4C等に示すように、第1の光源11aの発光面16aは、光源光軸SX1の近傍から副走査方向に対応する-Z方向に偏って配置されている。つまり、発光面16aの中心C1は、-Z方向に偏っており、コリメーター部18を構成するコリメーターレンズ12aに対して副走査方向に対応する-Z方向に関して軸外し状態で配置されている。また、
図4D~4F等に示すように、第2の光源11bの発光面16bは、光源光軸SX2の近傍から副走査方向に対応する+Z方向に偏って配置されている。つまり、発光面16bの中心C2は、+Z方向に偏っており、コリメーター部18を構成するコリメーターレンズ12bに対して副走査方向に対応する+Z方向に関して軸外し状態で配置されている。
【0020】
図3A及び3B等に示すように、投光系10の射出光軸AX1は、投光系10から走査用ミラー31に向かう光路上にあって、第1光源要素14aの光源光軸SX1と第2光源要素14bの光源光軸SX2の後段領域A2との中間に配置されている。ミラー13による光路の折り曲げがないとして光路を展開すると、第1の光源11aと第2の光源11bとは、射出光軸AX1の方向に沿って若干のズレはあるが射出光軸AX1に対して概ね対称的に配置されているということができる。第1光源要素14aの光源11aの発光面16aから射出された光SB1は、横方向であるY方向に比較的広い発散角を示し、縦方向であるZ方向に比較的狭い発散角を示す(
図4B及び4C参照)。一方で、光源11aの発光面16aが縦方向に長いことから、光SB1の拡がり角は、当初横のY方向に広いものの、第1反射部31aの光路下流側(具体的には、光源11aから数100mm後、すなわち光学窓53の前方50mm程度)で縦横のアスペクト比が1:1となり、その後、横のY方向よりも副走査方向に対応する縦のZ方向に広くなる。同様に、第2光源要素14bの光源11bの発光面16bから射出された光SB2は、横方向であるX方向に比較的広い発散角を示し、縦方向であるZ方向に比較的狭い発散角を示す(
図4E及び4F参照)。一方で、光源11bの発光面16bが縦方向に長いことから、光SB2の拡がり角は、当初横のX方向に広いものの、第1反射部31aの光路下流側で縦横のアスペクト比が1:1となり、その後、横のY方向よりも副走査方向に対応する縦のZ方向に広くなる。
【0021】
図3Aを参照して、下側に配置された第1光源要素14aの光源11aから射出された光SB1は、
図5Aに示すように走査用ミラー31を経た遠方において相対的に下側に投影されて下側領域を照明し、副走査方向に関して上側に配置された第2光源要素14bの光源11bから射出された光SB2は、
図5Aに示すように走査用ミラー31を経た遠方において相対的に上側に投影されて上側領域を照明する。
【0022】
図5Bに概念的に示すように、一対の光源11a,11bからの光SB1,SB2は、走査用ミラー31に入射する前後で、副走査方向に関して射出光軸AX1を挟んで交差するような光路をとる。ただし、走査用ミラー31での2回の反射によって上下が反転するので、投光される光SB1,SB2は、コリメーター部18による上下反転と、走査用ミラー31による上下反転とを受けて、
図5Aに示すように結果的に元の上下関係が維持される。両光源11a,11bからの光SB1,SB2をコリメーター部18によって副走査方向に対応する上下方向に関して交差させる構成とすることで、投光系10を副走査方向に比較的小型化することができる。以上において、交差とは、反射面での反射によって交差するものを含まないものとする。
【0023】
図5Aに示すように、走査用ミラー31の回転に伴って一対の光源11a,11bによる走査領域AR1,AR2は、光SB1,SB2を主走査方向であるY方向に移動させた軌跡を形成し、Y方向に細長く投影されている。より詳細には、光SB1,SB2からなるレーザー光(投光ビーム)L1は、物体側においてZ方向又は副走査方向に細長く延びて投光角度の範囲をカバーしている。また、光SB1,SB2からなるレーザー光(投光ビーム)L1は、走査用ミラー31の回転に伴って照射角度の範囲でY方向又は主走査方向に往復移動する。
【0024】
図3A及び3B等に戻って、受光系20は、穴あきミラー21と、受光レンズ22と、ミラー23と、受光素子24とを備える。
【0025】
穴あきミラー21は、光路折曲ミラーである。穴あきミラー21の開口21aは、穴あきミラー21の中央又はその周辺の適所に形成されている。開口21aの略中心を投光系10の射出光軸AX1及び入射光軸AX2が通っており、開口21aを通る射出光軸AX1又は入射光軸AX2の周辺において、光源11a,11bからの光SB1,SB2は、副走査方向に対応する上下のZ方向に関して絞られており、主走査方向に対応する左右のY方向に関してコリメーターレンズ12a,12bによって拡がりが抑えられている。結果的に、光SB1,SB2は、開口21aを無駄なく通過する。
【0026】
走査用ミラー31の第2反射部31bを経て第1反射部31aで反射された戻り光L2は、穴あきミラー(光路折曲ミラー)21の反射面21bで反射されて光路を直交方向に折り曲げられる。この際、開口21aによって戻り光L2の一部が光路外に漏れて損失となるが、第1反射部31aに対する開口21aの面積的な割合が比較的小さければ検出精度の低下には繋がらない。
【0027】
受光レンズ22は、戻り光L2のビーム径を絞り込む役割を有し、ミラー23は、受光レンズ22を経た戻り光L2を受光素子24に導く役割を有する。受光素子24とミラー23との間には、戻り光L2すなわちレーザー光L1の波長以外の可視光線等を遮断するバンドパスタイプのフィルター26が配置されている。これらの受光レンズ22やミラー23は、入射光軸AX2に沿って配列されている。
【0028】
受光素子24は、受光レンズ22及びミラー23を経た戻り光L2を検出する。受光素子24は、例えばCMOS、CCDその他の半導体デバイスであり、戻り光L2の強度を検出するとともに、副走査方向に対応する上下のZ方向に位置分解能を有する。つまり、受光素子24は、副走査方向に2画素以上を有し、副走査方向を2領域以上に分割して計測することができる。
【0029】
図6は、受光素子24の光検出面24aの具体例を示している。光検出面24aは、その長手方向が副走査方向となっている。光検出面24aは、6つの画素24pで構成され、6つの画素24pは、副走査方向に対応する上下のZ方向に配列されている。つまり、光検出面24aは、副走査方向に対応するZ方向に関して6画素の構成であり、主走査方向に対応する左右のY方向に関して1画素の構成である。受光素子24の光検出面24aは、上下のZ方向や左右のY方向に関してレーザー光L1の投光角度の範囲内にある物体OBによって逆行する方向に反射された戻り光L2を取り込める幅を有する。参考のため、戻り光L2のうち光源11aからの光SB1に起因する検出光L21と、光源11bからの光SB2に起因する検出光L22とを光検出面24a上に概念的に示した。
【0030】
レーザーレーダー装置100又は走査型の光学系101の動作の概要につていて説明すると、制御部40の制御下で受光系20の一対の光源11a,11bを周期的に発光させることで、コリメーター部18で合成されたレーザー光(投光ビーム)L1が穴あきミラー(光路折曲ミラー)21の開口21aを通過し、走査用ミラー31を経た上下の副走査方向に長いレーザー光L1は、横の主走査方向に主走査される。これと同期させて受光系20の受光素子24を動作させることで、物体OBからの戻り光L2を検出して、物体OBまでの距離や配置等を計測することができる。
【0031】
以上の第1実施形態によれば、複数の光源11a,11bが副走査方向に対応するZ方向に異なる位置であって複数のコリメーターレンズ12a,12bに対して副走査方向に対応する方向に関してそれぞれ軸外し状態で配置され、受光素子24は、複数の光源11a,11bに対応する戻り光L2を検出可能に配置され副走査方向に対応するZ方向に位置分解能を実現する複数画素24pを有するので、簡易に副走査方向に関して比較的広い投光視野を確保することができ、広範囲の迅速な計測が可能になる。この際、複数の光源11a,11bが副走査方向に対応するZ方向に異なる位置に配置されることで、複数の光源11a,11bによるレーザー光(投射光)L1が副走査方向に揃うことになり、主走査方向の走査範囲を限界まで広くすることができる。さらに、レーザー光(投光ビーム)L1は、受光視野を副走査方向に分割するように出射されており(
図5A参照)、コリメーター部18を簡易な構成とでき、レーザー光(投光ビーム)L1を副走査方向に関して簡易に均一化することができる。上記と異なり受光視野を分割しないで一致させる場合、発光タイミング、パルス幅、及び投光位置を完全に一致させる必要があり、システム的にも光学調整的にもハードルが高くなる。さらに、複数の光源11a,11bの発光面16a,16bは、副走査方向に対応するZ方向に相対的に長く、少ない光源であっても投光視野を副走査方向に広くすることが容易になる。第1実施形態の場合、第1光源要素14a及び第2光源要素14bのうち一方の光路を折り曲げて、光源光軸SX1,SX2が射出側で近接して平行に延びるようにしている。この場合、複数の光源11a,11bに付随する回路基板や支持体を配置する際の干渉の問題を回避しやすくなる。また、複数の光源光軸SX1,SX2を射出側で互いに平行な状態で近づけることができるので、投光側のサイズを副走査方向に関して圧縮でき、結果として受光開口を大きくできるので、検知距離を延ばすことができ、或いは走査用ミラー31を含めた装置サイズを小さくできる。第1実施形態の場合、射出光軸AX1と入射光軸AX2とが走査用ミラーに隣接する区間で略一致して配置されるとともに、レーザー光(投光ビーム)L1を通過させ戻り光L2を反射する穴あきミラー21を用いており、投光系10及び受光系20のサイズを副走査方向に関して小さく収めることができるとともに、受光光量を大きくすることができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る走査型の光学系及びこれを組み込んだレーザーレーダー装置について説明する。なお、第2実施形態に係る走査型の光学系等は、第1実施形態の走査型の光学系等を一部変更したものであり、特に説明しない事項は、第1実施形態と同様である。
【0033】
図7A及び7Bに示すように、第2実施形態の場合、投光系10と受光系20とが簡易に分離されており、投光系10と受光系20とが副走査方向又はZ方向に関して異なる位置に配置されている。つまり、投光系10の射出光軸AX1と入射光軸AX2とは、ミラー23と走査用ミラー31との間の区間において、互いに平行に隣接して配置されており、Z方向又は副走査方向に離間している。つまり、走査用ミラー31に隣接する位置で、射出光軸AX1と入射光軸AX2とは、副走査方向に対応するZ方向に異なる位置に配置されており、主走査方向に対応するY方向に関しては平面視で同じ位置に重なって見えるように配置されている。本実施形態の場合、投光系10と受光系20とを簡易に分離した構成となっており、投光ビームを射出させる光学窓53からの迷光成分が受光系20に入り難くなっている。
【0034】
受光系20は、受光レンズ22と、ミラー23と、受光素子24とを備える。この場合、射出光軸AX1と入射光軸AX2とを副走査方向に関して位置ずれさせて配置しているので、穴あきミラーは不要である。受光素子24の光検出面24aは、ミラー23による光路折り曲げにより、第1実施形態の場合と異なり、X方向に延びているが、X方向は副走査方向に対応する。
【0035】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る走査型の光学系及びこれを組み込んだレーザーレーダー装置について説明する。なお、第3実施形態に係る走査型の光学系等は、第1実施形態の走査型の光学系等を一部変更したものであり、特に説明しない事項は、第1実施形態と同様である。
【0036】
図8A及び8Bに示すように、第3実施形態の場合、投光系10において、第1光源要素14aと第2光源要素14bとが射出光軸AX1を挟んで上下の副走査方向に鏡像配置されている。つまり、第1の光源11aと第2の光源11bとは、射出光軸AX1に対して厳密に対称に配置されている。この場合、一対のコリメーターレンズ12a,12bを合わせたものがコリメーター部18となっており、光路合成用のミラーが不要となっている。また、第1光源要素14aにおいて光源11aは、コリメーター部18を構成するコリメーターレンズ12aに対して副走査方向に非対称的となるように軸外し状態で配置されており、第2光源要素14bにおいて光源11bは、コリメーター部18を構成するコリメーターレンズ12bに対して副走査方向に非対称的となるように軸外し状態で配置されている。
【0037】
図8A等に示す例では、受光系20が第1実施形態に示すものと同様であったが、受光系20を第2実施形態に示すものと同様として、投光用の光路と受光用の光路とを完全に分けることもできる。
【0038】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る走査型の光学系及びこれを組み込んだレーザーレーダー装置について説明する。なお、第4実施形態に係る走査型の光学系等は、第1実施形態の走査型の光学系等を一部変更したものであり、特に説明しない事項は、第1実施形態と同様である。
【0039】
図9に示すように、レーザーレーダー装置100は、第1実施形態と同様に、投光系10と、受光系20と、回転反射部30と、制御部40と、外装部品50とを備える。本実施形態の回転反射部30の走査用ミラー31は、1回反射型のポリゴンミラーであり、光路折り曲げ用の第1反射部31aのみを有する。走査用ミラー31において、第1反射部31aの鏡面は、Z軸に対して傾斜しており、紙面上で下方向である-Z方向から入射したレーザー光L1を略直交する方向に反射し、紙面上で左方向の検出対象OB側へ導く。検出対象OBで反射された一部の戻り光L2は、レーザー光L1の経路と逆の経路をたどり、受光系20で検出される。この場合、
図1の場合と異なり、走査用ミラー31の回転軸RXに垂直な紙面左右のX方向が副走査方向となっており、回転軸RXに垂直な紙面垂直なY方向が主走査方向となっている。
【0040】
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。例えば、受光素子24の光検出面24aを構成する画素24pは、6つに限らず、検出分解能に応じて適宜の数とできる。
【0041】
投光系10や受光系20を構成する光学素子は、
図2A等に例示されるものに限らず、用途や仕様に応じて光路折り曲げ用のミラーを増やすこと、レンズを増やすこと等、様々な変更が可能である。
【0042】
上記実施形態では、副走査方向に2つの光源11a,11bを2つのコリメーターレンズ12a,12bに対して軸外し状態で配置する例を説明したが、3つ以上の光源を対応するコリメーターレンズに対して軸外して配置したものを用いることができ、光源要素の一部については軸外し配置としないことも可能である。